(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0013】
本発明の一態様に係る生体振動センサーは、シート状の圧電体及びこの圧電体の表裏に積層される一対の電極を有し、生体振動発生部位の表面に配置される第1振動検出素子と、シート状の圧電体及びこの圧電体の表裏に積層される一対の電極を有し、前記第1振動検出素子の配置位置と異なる位置に配置される第2振動検出素子とを備えている。
【0014】
この生体振動センサーによれば、生体振動発生部位の表面に配置される第1振動検出素子と、前記第1振動検出素子の配置位置と異なる位置に配置される第2振動検出素子とを備えているため、前記第1振動検出素子の検出信号から、前記第2振動検出素子の検出信号を用いてノイズ成分を除去することにより、S/N比が大きい測定信号を得ることができる。
【0015】
前記第1振動検出素子及び第2振動検出素子が、可撓性を有する部材によって平面方向に接続されていてもよい。
【0016】
前記第1振動検出素子の生体に対向する側と反対側に、可撓性を有する緩衝材を介して前記第2振動検出素子が積層されていてもよい。
【0017】
前記第1振動検出素子又は前記第2振動検出素子が、圧電体を生体表面に直立するように配置してもよい。
【0018】
本発明の別の態様に係る生体振動検出システムは、前記生体振動センサーと、前記第1振動検出素子の検出信号から、前記第2振動検出素子の検出信号を用いてノイズ成分を除去する演算部とを備えている。
【0019】
本発明のさらに別の態様に係る生体振動検出方法は、シート状の圧電体及びこの圧電体の表裏に積層される一対の電極を有する第1振動検出素子を生体振動発生部位の表面に配置する工程と、シート状の圧電体及びこの圧電体の表裏に積層される一対の電極を有する第2振動検出素子を前記第1振動検出素子の配置位置と異なる位置に配置する工程と、前記第1振動検出素子の検出信号から、前記第2振動検出素子の検出信号を用いてノイズ成分を除去する工程とを備えている。第1振動検出素子の配置と第2振動検出素子の配置とを同時に行うことも可能である。
【0020】
本発明のさらに別の態様に係る振動検出素子は、生体表面に配置されて振動を検出する振動検出素子であって、シート状の圧電体及びこの圧電体の表裏に積層される一対の電極とを有し、前記圧電体の面が生体表面に直立するように構成されている。
【0021】
[第一実施形態]
図1に、本発明の一実施形態に係る生体振動検出システムの構成を示す。当該生体振動検出システムは、例えば人、動物等の生体の内部で発生する生体振動の波形を検出するために用いられる。
【0022】
本実施形態の生体振動検出システムは、それ自体が本発明の別の実施形態である生体振動センサー1と、生体振動センサー1の検出信号を処理する演算部2とを備える。
【0023】
〔生体振動センサー〕
生体振動センサー1は、
図2に示すように、生体振動発生部位の表面に配置されるシート状の第1振動検出素子3と、前記第1振動検出素子の配置位置と異なる位置に配置されるシート状の第2振動検出素子4とを備える。第1振動検出素子3が配置される生体振動発生部位としては、特に限定されないが、例えば橈骨動脈直上部等を挙げることができる。
【0024】
第1振動検出素子3は、生体振動発生部位の表面に配置され、生体振動の比率が比較的大きい振動波形を検出する。一方、第2振動検出素子4は、伝導する振動中に測定しようとする生体振動の成分があまり含まれず、第1振動検出素子3に伝導するノイズ成分と同じノイズ成分が比較的多く含まれる部位に配置され、ノイズ成分の比率が比較的大きい振動の波形を検出する。
【0025】
第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4に伝導するノイズ成分としては、例えば生体外部の空気を伝播する音波振動、生体を通して伝播する外部振動、検出しようとする生体振動以外の生体振動等が挙げられる。検出しようとする生体振動以外の生体振動としては、例として血流音を検出対象とする場合、例えば筋肉の伸縮に伴う音や振動、呼吸音等を挙げることができる。
【0026】
当該生体振動検出システムは、演算部2において、第2振動検出素子4の検出信号を用い、生体振動センサー1の第1振動検出素子3の検出信号からノイズ成分を除去することによって、S/N比がより大きい測定信号を得ることができる。
【0027】
本実施形態の生体振動センサー1において、第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4は、平面方向に接続されている。両振動検出素子3、4は、互いに平面方向に離間しているので、異なる位置に配置されていることになる。具体的には、生体振動センサー1は、表面に第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4が配設されるベースフィルム5と、第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4の表面側を覆い、第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4の平面視外側でベースフィルム5に接着されるカバーフィルム6とをさらに備える。また、本実施形態における両振動検出素子3、4は、
図1及び
図2に示された姿勢から、生体振動センサー1の長手方向に接続されている、と言える。
【0028】
<第1振動検出素子>
第1振動検出素子3は、シート状の圧電体7及びこの圧電体7の表裏に積層される一対の電極8、9を有する。
【0029】
(圧電体)
圧電体7は、圧力を電圧に変換する圧電材料から形成され、生体振動の圧力波によって応力を受け、この応力変化の加速度に応じて電位差を生じる。
【0030】
この圧電体7を形成する圧電材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛等の無機材料であってもよいが、生体の表面に密着できるよう可撓性を有する高分子圧電材料であることが好ましい。
【0031】
前記高分子圧電材料としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体(P(VDF/TrFE))、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体(P(VDCN/VAc))等を挙げることができる。
【0032】
また、圧電体7として、圧電特性を有しない例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等に多数の扁平な気孔を形成し、例えばコロナ放電等によって扁平な気孔の対向面を分極して帯電させることによって圧電特性を付与したものを使用することもできる。
【0033】
圧電体7の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、圧電体7の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、200μmがより好ましい。圧電体7の平均厚さが前記下限に満たない場合、圧電体7の強度が不十分となるおそれがある。逆に、圧電体7の平均厚さが前記上限を超える場合、圧電体7の変形能が小さくなり、検出感度が不十分となるおそれがある。
【0034】
(電極)
電極8、9は、圧電体7の両面に積層され、圧電体7の表裏の電位差を検出するために用いられる。このため、電極8、9には、演算部2に接続するための配線が接続される。
【0035】
電極8、9の材質としては、導電性を有するものであればよく、例えばアルミニウム、銅、ニッケル等の金属や、カーボン等を挙げることができる。
【0036】
電極8、9の平均厚さとしては、特に限定されず、積層方法にもよるが、例えば0.1μm以上30μm以下とすることができる。電極8、9の平均厚さが前記下限に満たない場合、電極8、9の強度が不十分となるおそれがある。逆に、電極8、9の平均厚さが前記上限を超える場合、圧電体7への振動の伝達を阻害するおそれがある。
【0037】
電極8、9の圧電体7への積層方法としては、特に限定されず、例えば金属の蒸着、カーボン導電インクの印刷、銀ペーストの塗布乾燥等が挙げられる。
【0038】
電極8、9は、平面視で複数の領域に分割して形成され、実効的に第1振動検出素子3を複数の圧電素子として機能させるものであってもよい。
【0039】
<第2振動検出素子>
第2振動検出素子4は、シート状の圧電体10及びこの圧電体10の表裏に積層される一対の電極11、12を有する。
【0040】
第2振動検出素子4における圧電体10及び電極11、12は、第1振動検出素子3における圧電体7及び電極8、9と同様の構成とすることができる。また、第2振動検出素子4の圧電体10は、第1振動検出素子3の圧電体7と一体であってもよい。また、第2振動検出素子4は、第1振動検出素子3と面積が異なり、検出感度が異なるものであってもよい。ノイズを優先的に検出したい場合には、第2振動検出素子4の面積を第1振動検出素子3の面積よりも大きくしてもよい。
【0041】
<ベースフィルム>
ベースフィルム5は、第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4を保護するために設けられる。また、ベースフィルム5は、フィルムであるが故に可撓性を有している。
【0042】
このベースフィルム5は、第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4の平面視外側で可撓性を有するカバーフィルム6に接着されることにより、カバーフィルム6と共に第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4を挟み込んで保持する。したがって、この生体振動センサー1は、人の腕等の曲面に対しても容易に装着されうる。この生体振動センサー1では、第1振動検出素子3と第2振動検出素子4とが、互いに離間した状態で両フィルム5、6間に設置されている。この離間距離の下限としては、1mmが好ましく、3mmがより好ましい。一方、離間距離の上限としては、20mmが好ましく、10mmがより好ましい。離間距離が前記下限に満たない場合、第1振動検出素子3と第2検出素子4の間隔が狭くなるために、第1振動検出素子3と第2検出素子4との間での可撓性が低下し、人の腕等の曲面に沿って密着しにくくなるおそれがある。逆に、離間距離が前記上限を超える場合、第1振動検出素子3と第2検出素子4とが大きく離れるために、ノイズ成分を除去する効果が低下するおそれがある。
【0043】
ベースフィルム5の材質としては、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でも成形が容易な熱可塑性樹脂が好ましく、カバーフィルム6と溶着可能な樹脂が特に好ましい。つまり、ベースフィルム5とカバーフィルム6とは、例えば熱圧着、超音波溶接等により、第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4の平面視外側で互いに接着されてもよい。
【0044】
ベースフィルム5の平均厚さの下限としては、20μmが好ましく、30μmがより好ましい。一方、ベースフィルム5の平均厚さの上限としては、300μmが好ましく、150μmがより好ましい。ベースフィルム5の平均厚さが前記下限に満たない場合、強度不足により第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4を十分に保護できないおそれがある。逆に、ベースフィルム5の平均厚さが前記上限を超える場合、第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4への振動伝達が阻害されるおそれがある。
【0045】
<カバーフィルム>
カバーフィルム6は、第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4を保護するために設けられる。また、カバーフィルム6は、フィルムであるが故に可撓性を有している。
【0046】
カバーフィルム6の材質としては、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でも成形及びベースフィルム5との接着が容易な熱可塑性樹脂が好ましい。
【0047】
カバーフィルム6の平均厚さの下限としては、20μmが好ましく、30μmがより好ましい。一方、カバーフィルム6の平均厚さの上限としては、1.0mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。カバーフィルム6の平均厚さが前記下限に満たない場合、強度が不十分となるおそれがある。逆に、カバーフィルム6の平均厚さが前記上限を超える場合、当該生体振動センサーが不必要に大きくなることで被験者に不快感を与えやすくなるおそれがある。
【0048】
〔演算部〕
演算部2は、第1振動検出素子3の検出信号から、第2振動検出素子4の検出信号を用いてノイズ成分を除去するよう構成される。
【0049】
具体的には、演算部2は、第1振動検出素子3の検出信号を増幅する生体振動増幅器13と、この生体振動信号増幅器13により増幅された信号をディジタル信号に変換する生体振動AD変換器14と、第2振動検出素子4の検出信号を増幅するノイズ増幅器15と、このノイズ信号増幅器15により増幅された信号をディジタル信号に変換するノイズAD変換器16と、生体振動AD変換器14及びノイズAD変換器16の出力信号が入力され、生体振動AD変換器14の出力値からノイズAD変換器16の出力値を減じた値を算出するマイクロプロセッサー(演算装置)17とを有する構成とすることができる。
【0050】
演算部2は、上述の演算プログラムを記憶するROM(読み出し専用半導体メモリ)や、入力信号データや演算結果データを記憶するRAM(ランダムアクセスメモリ)を有してもよい。
【0051】
[生体振動検出方法]
図3に、本発明の別の実施形態に係る生体振動検出方法の手順を示す。本実施形態に係る生体振動検出方法は、
図1の生体振動センサー1及び演算部2を備える生体振動検出システムを用いて行うことができる。
【0052】
具体的には、本発明の実施形態に係る生体振動検出方法は、シート状の圧電体7及びこの圧電体7の表裏に積層される一対の電極8、9を有する第1振動検出素子3を生体振動発生部位の表面に配置する工程(ステップS1:第1振動検出素子配置工程)と、シート状の圧電体10及びこの圧電体10の表裏に積層される一対の電極11、12を有する第2振動検出素子4を第1振動検出素子の配置位置と異なる位置に配置する工程(ステップS2:第2振動検出素子配置工程)と、第1振動検出素子3の検出信号から、第2振動検出素子4の検出信号を用いてノイズ成分を除去する工程(ステップS3:演算工程)とを備える。
【0053】
図1の生体振動検出システムを用いる場合、ステップS1の第1振動検出素子配置工程とステップS2の第2振動検出素子配置工程とは同時に行うことができる。ステップS1の第1振動検出素子配置工程では、生体内部の振動が第1振動検出素子3に確実に伝導するよう、例えばサポーター、粘着テープ等を用いて第1振動検出素子3を生体表面の生体振動発生部位に押圧することが好ましい。
【0054】
図1の生体振動検出システムを粘着テープを用いて生体表面に配設する場合、粘着テープの基材が伸縮性を有することが好ましい。粘着テープの基材の具体例としては、例えばウレタン不織布、塩化ビニールシート、伸縮布、スポンジシート等を挙げることができる。また、粘着テープの接着剤としては、例えばアクリル系粘着剤等、皮膚に直接貼着しても皮膚の炎症等を招来しにくい材質のものを使用することが好ましい。また、
図1の生体振動検出システムは、予め粘着テープに貼着され、生体振動検出システムからはみ出した粘着テープの接着面が離型シートで覆われた状態で提供されてもよい。
【0055】
ステップS3の演算工程は、
図1の生体振動検出システムの演算部2によって行うことができる。
【0056】
[第二実施形態]
図4に、本発明の別の実施形態に係る生体振動センサー1aの構成を示す。当該生体振動センサーは、
図2の生体振動センサー1に替えて
図1の検出システムに用いることができる。
【0057】
本実施形態の生体振動センサー1aは、生体振動発生部位の表面に配置されるシート状の第1振動検出素子3と、この第1振動検出素子3の生体振動発生部位に対向する側(裏面側)と反対側(表面側)に積層される緩衝材18と、この緩衝材18を介して第1振動検出素子3に積層される第2振動検出素子4とを備える。また、本実施形態の生体振動センサー1aは、第1振動検出素子3の裏面を被覆するベースフィルム5aと、第2振動検出素子4の表面を被覆するカバーフィルム6aとをさらに備える。
【0058】
図4の生体振動センサー1aにおける第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4の構成は、その配置を除いて、
図2の生体振動センサー1における第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4の構成と同様とすることができる。両振動検出素子3、4は、緩衝材18を介して互いにその面に垂直な方向に離間している。したがって、第1振動検出素子3が生体振動発生部位の表面に配置された際、第2振動検出素子4は第1振動検出素子の配置位置とは異なる位置に配置されたことになる。
【0059】
<緩衝材>
緩衝材18は、第1振動検出素子3と第2振動検出素子4との間での振動の伝導を防止する部材である。つまり、緩衝材18は、第1振動検出素子3を通して生体振動が第2振動検出素子4に伝達されることを防止する。緩衝材18は可撓性を有している。
【0060】
緩衝材18の材質としては、発泡樹脂が好適に用いられる。緩衝材18に用いられる発泡樹脂としては、発泡ポリウレタン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等を用いることができる。
【0061】
緩衝材18と第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4とは、特に限定されないが、例えば接着剤等を用いて積層することができる。
【0062】
材質にもよるが、緩衝材18の平均厚さの下限としては、0.2mmが好ましく、0.3mmがより好ましい。一方、緩衝材18の平均厚さの上限としては、3mmが好ましく、2mmがより好ましい。緩衝材18の平均厚さが前記下限に満たない場合、第2振動検出素子4への生体振動の伝導を十分に防止できないおそれがある。逆に、緩衝材18の平均厚さが前記上限を超える場合、当該生体振動センサーが不必要に大きくなることで被験者に不快感を与えやすくなるおそれがある。
【0063】
<ベースフィルム及びカバーフィルム>
図4の生体振動センサー1aにおけるベースフィルム5a及びカバーフィルム6aは、平面視で第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4から延出しておらず、互いに接着される代わりに第1振動検出素子3及び第2振動検出素子4に接着されている。
【0064】
図4の生体振動センサー1aにおけるベースフィルム5a及びカバーフィルム6aの材質及び厚さは、
図2の生体振動センサー1におけるベースフィルム5及びカバーフィルム6の材質及び厚さと同様とすることができる。
【0065】
本実施形態の生体振動センサー1aは、第1振動検出素子3に伝播する振動中のノイズ成分が主に空気を伝わる音波振動である場合に使用することで、効果的にノイズ成分を除去してS/N比が大きい測定信号を得ることができる。
【0066】
[第三実施形態]
図5に、本発明の別の実施形態に係る生体振動センサー1bの構成を示す。当該生体振動センサーは、
図2の生体振動センサー1に替えて
図1の検出システムに用いることができる。
【0067】
本実施形態の生体振動センサー1bは、生体振動発生部位の表面に配置される第1振動検出素子(振動検出素子)3bと、第1振動検出素子の配置位置と異なる位置に配置される第2振動検出素子4とを備える。本実施形態の生体振動センサー1bは、第1振動検出素子3b及び第2振動検出素子4の裏面を被覆するベースフィルム5と、第2振動検出素子4の表面を被覆するカバーフィルム6bとをさらに備える。
【0068】
図5の生体振動センサー1bにおける第2振動検出素子4及びベースフィルム5の構成は、
図2の生体振動センサー1における第2振動検出素子4及びベースフィルム5の構成と同様とすることができる。
【0069】
<第1振動検出素子>
第1振動検出素子3bは、それ自体が本発明の別の実施形態に係る振動検出素子である。第1振動検出素子3bは、それぞれ圧電体7b及びこの圧電体7bの表裏に積層される一対の電極8b、9bを有する複数の検出体19を備え、各検出体19が生体表面に直立するよう配置されている。また、本実施形態の第1振動検出素子3bは、複数の検出体19を間隔を空けて覆うドーム状の遮音ケース20をさらに有する。遮音ケース20の形状はドーム状には限定されない。
【0070】
図6に示すように、本実施形態の第1振動検出素子3bにおいて、検出体19は、直立して配設できるよう、それぞれ幅が比較的小さい帯状に形成されており、複数の検出体19を互いに平行に間隔を空けて並べて配設することで、検出体19の総面積を大きくし、検出感度を確保している。
【0071】
本実施形態の第1振動検出素子3bは、生体表面からベースフィルム5を介して入射する振動を主に検出し、周囲の空気を伝播する音波振動を遮音ケース20が遮断するので、空気振動ノイズに対する検出感度が小さい。このため、本実施形態の第1振動検出素子3bは、比較的S/N比が大きい生体振動の測定信号が得られる。
【0072】
図5の生体振動センサー1bにおける第1振動検出素子3bの圧電体7b及び電極8b、9bの材質及び厚さ等の構成は、上述の全体形状を除いて、
図2の生体振動センサー1における第1振動検出素子3の圧電体7及び電極8、9の材質及び厚さ等の構成と同様とすることができる。
【0073】
圧電体7b及び電極8b、9bを積層してなる検出体19の面方向(ベースフィルム5の厚さ方向)の平均高さの下限としては、2mmが好ましく、3mmがより好ましい。一方、検出体19の面方向の平均高さの上限としては、10mmが好ましく、8mmがより好ましい。検出体19の面方向の平均高さが前記下限に満たない場合、圧電体7b内を面方向に振動する振動を電気信号に変換する効率が小さくなることで検出感度が不十分となるおそれがある。逆に、検出体19の面方向の平均高さが前記上限を超える場合、検出体19を生体表面に直立して配設することが困難となるおそれや、第1振動検出素子3bが不必要に大きくなることで被験者に不快感を与えやすくなるおそれがある。
【0074】
検出体19の合計長さは、生体振動発生部位の面積及び要求される検出感度に応じて選択することができる。つまり、第1振動検出素子3bは、各検出体19の長さ又は検出体19の数を大きくすることで設置面積は大きくなるが、検出感度が増大する。
【0075】
遮音ケース20は、周囲の空気を伝播する音波振動の圧電体7b及び電極8b、9bの積層体への入射を低減する。遮音ケース20の材質としては、樹脂が好ましく、発泡樹脂を用いてもよい。
【0076】
遮音ケース20は、外縁部がベースフィルム5に接着されることが好ましい。
【0077】
<カバーフィルム>
カバーフィルム6bは、第2振動検出素子4のみを覆い、第2振動検出素子4の平面視外側でベースフィルム5に接着されている。
【0078】
図5の生体振動センサー1bにおけるカバーフィルム6bの材質及び厚さは、
図2の生体振動センサー1におけるカバーフィルム6の材質及び厚さと同様とすることができる。
【0079】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0080】
本発明に係る生体振動センサーにおいて、ベースフィルム及びカバーフィルムは省略することができる。特に、生体振動センサーが生体表面に固定するための粘着テープを予め貼着した状態で提供される場合、粘着テープにより第1振動検出素子の表面側が保護されるので、カバーフィルムを省略することが好ましい。
【0081】
本発明に係る生体振動センサーにおいて、第1振動検出素子と第2振動検出素子とが分離されていてもよい。なお、第1振動検出素子又は第2振動検出素子を人体へ装着する際に、ベースフィルム自体に人体に対する接合機能を付与してもよい。具体的には、ベースフィルムの人体へ密着をする面に粘着剤を配設すればよい。粘着剤がベースフィルムの全面又は大部分を覆ってしまうと人体からの振動の伝達率が低下することになるので、当該粘着剤はベースフィルムに対して離散的に、具体的には複数のライン状、複数の点状等に配置するとよい。この粘着剤によって人体とベースフィルムの間に空間が発生してもよい。例として、粘着剤をベースフィルムに対して環状に配設することで人体とベースフィルムの間に閉空間を形成するようにしてもよい。人体とベースフィルムとの間隔を正確に保ちたい場合には粘着剤と併せてスペーサを配置してもよい。また、粘着剤が配設されない領域には、人体からの振動の伝播効率が高くなるように当該粘着剤よりも剛性の高い材料を配置してもよい。このようにベースフィルムの人体へ密着する側に粘着剤を配設することで、別に固定手段がなくても人体へ装着可能な生体振動センサーにすることができる。
【0082】
本発明に係る生体振動センサーにおいて、検出しようとする生体振動によっては、第1振動検出素子として圧電体を生体表面に直立するよう配置した振動検出素子や圧電体の配置がさらに異なる振動検出素子を用いてもよく、圧電体が直立した第1振動検出素子と組み合わされる第2振動検出素子として、圧電体を生体表面に平行に配置した振動検出素子や圧電体の配置がさらに異なる振動検出素子を用いてもよい。
【0083】
本発明に係る生体振動検出システムにおいて、演算部は、生体振動検出素子及び第2振動検出素子の検出信号をアナログ信号のまま処理するアナログ回路であってもよい。このようなアナログ回路としては、例えばオペアンプを用いて第1振動検出素子の検出信号と第2振動検出素子の検出信号との差分を出力するアナログ減算回路(作動増幅回路)を挙げることができる。
【0084】
本発明に係る振動検出素子は、圧電体及び一対の電極の積層体を複数並べて生体表面に直立するよう配設したものであってもよい。また、圧電体及び電極の積層体間及び表面側空間に遮音性を有する例えば発泡樹脂、綿状体等の材料を充填してもよい。また、圧電体及び電極の積層体間及び表面側空間に発泡樹脂等を充填することで遮音ケースやベースフィルムを省略してもよい。
【0085】
また、本発明に係る振動検出素子は、遮音ケースを省略することで、周囲の空気を伝播する振動を主に検出する素子として使用してもよい。この場合、振動を効率よく伝達できる材料を圧電体及び電極の積層体間及び表面側空間に充填してもよい。