(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基またはその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。
本明細書において用いられる場合、「2価の有機基」としては、特に限定されるものではないが、炭化水素基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、分子から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素原子数1〜20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
2−6アルキニル基、C
3−10シクロアルキル基、C
3−10不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、C
6−10アリール基および5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0011】
本明細書において、アルキル基およびフェニル基は、特記しない限り、非置換であっても、置換されていてもよい。かかる基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0012】
本明細書において、「加水分解可能な基」とは、本明細書において用いられる場合、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解可能な基の例としては、−OR
h、−OCOR
h、−O−N=CR
h2、−NR
h2、−NHR
h、ハロゲン(これら式中、R
hは、置換または非置換のC
1−4アルキル基を示す)などが挙げられる。
【0013】
本開示のフルオロポリエーテル基含有化合物は、下記式(1)または(2)で表される化合物である。
【0015】
式(1)において、R
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf
1−R
F−O
q−である。
【0016】
上記式(2)において、R
F2は、−Rf
2p−R
F−O
q−である。
【0017】
上記式において、Rf
1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−16アルキル基である。
【0018】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−16アルキル基における「C
1−16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC
1−6アルキル基、特にC
1−3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC
1−6アルキル基、特にC
1−3アルキル基である。
【0019】
上記Rf
1は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC
1−16アルキル基であり、より好ましくはCF
2H−C
1−15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC
1−16パーフルオロアルキル基である。
【0020】
上記C
1−16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC
1−6パーフルオロアルキル基、特にC
1−3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC
1−6パーフルオロアルキル基、特にC
1−3パーフルオロアルキル基、具体的には−CF
3、−CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
3である。
【0021】
上記式において、Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−6アルキレン基である。
【0022】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−6アルキレン基における「C
1−6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC
1−3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC
1−3アルキレン基である。
【0023】
上記Rf
2は、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC
1−6アルキレン基であり、より好ましくはC
1−6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC
1−3パーフルオロアルキレン基である。
【0024】
上記C
1−6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC
1−3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC
1−3パーフルオロアルキル基、具体的には−CF
2−、−CF
2CF
2−、または−CF
2CF
2CF
2−である。
【0025】
上記式において、pは、0または1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0026】
上記式において、qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0027】
上記式(1)および(2)において、R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、以下の式で表されるフルオロポリエーテル基である。なお、R
Fとして記載される構造は、式(1)においては左側がRf
1で表される構造に結合し、式(2)においては左側がRf
2pで表される構造に結合する。
−(OC
6F
12)
a−(OC
5F
10)
b−(OC
4F
8)
c−(OC
3R
Fa6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−
[式中:
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、
a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、
eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも5以上であり、
添字a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり、
fに対するeの比(以下、「e/f比」と称することがある)が、0.9未満である。
【0028】
R
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、好ましくは水素原子またはフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
【0029】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。例えば、−(OC
6F
12)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF(CF
3))−等であってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
5F
10)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF(CF
3))−等であってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−(即ち、上記式中、R
Faはフッ素原子である)は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。また、−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0030】
上記aおよびbは、0であってもよい。
【0031】
一の態様において、上記a、b、c、およびdは、それぞれ独立して、好ましくは20以下の整数であり、より好ましくは10以下の整数であり、特に好ましくは5以下の整数であり、0であってもよい。
【0032】
一の態様において、a、b、cおよびdの和は、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
【0033】
一の態様において、R
Fにおける、a、b、c、d、eおよびfの和に対する、eおよびfの和の比は、0.80以上であることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、0.98以上であることがさらに好ましく、0.99以上であることが特に好ましい。
【0034】
好ましい態様において、R
Fは、−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)である。好ましくは、R
Fは、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
c−(OCF
2CF
2CF
2)
d−(OCF
2CF
2)
e−(OCF
2)
f−である。一の態様において、R
Fは、−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であってもよい。
【0035】
より好ましくは、R
Fは、−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)である。
【0036】
一の態様において、eは、10以上100以下の整数、かつ、fは、11以上100以下の整数であってもよく、eは、15以上70以下の整数、かつ、fは、21以上95以下の整数であってもよい。
【0037】
一の態様において、eおよびfの和は、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、特に好ましくは40以上である。
【0038】
別の態様において、eおよびfの和は、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、さらに好ましくは130以上、特に好ましくは140以上である。
【0039】
一の態様において、eおよびfの和は、eおよびfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは180以下、さらに好ましくは160以下、特に好ましくは150以下である。
【0040】
上記R
Fにおいて、e/f比は、0.9未満、例えば0.8以下、0.7以下であってもよい。e/f比は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上である。e/f比は、例えば、0.2以上0.9未満、具体的には0.4以上0.8以下、より具体的には0.5以上0.7以下を挙げることができる。
e/f比が低くなり過ぎると、本開示の化合物を用いて形成される硬化層(例えば表面処理層)の加水分解性が高くなり、該硬化層の耐久性が低くなることがある。e/f比が高くなりすぎると、本開示の化合物を用いて形成される硬化層の動摩擦係数が高くなり、十分な摩擦耐久性を有する硬化層が得られないことがある。さらに、上記のようなe/f比を有することにより、本開示の化合物を用いて形成される硬化層の摩擦耐久性が良好になり、硬化層の表面における滑り性が良好になる。また、e/f比が上記の範囲にあることにより、R
F部分の二次構造がらせん構造をとりやすくなると考えられる。その結果、単位面積当たりのポリマー密度やシランカップリング剤の架橋密度が大きくなり(e/f比が大きな場合よりも、高くなる)、硬化層の強度が高くなると考えられる。
【0041】
本開示においては、上記のようなR
Fを有する化合物を用いることにより、該化合物を用いて形成される硬化層(あるいは、硬化膜)の化学的な耐久性(耐ケミカル性)、摩擦耐久性、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、または表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)等が良好になる。これは、上記のようなR
Fを有する化合物を用いることによって、該化合物から形成される硬化層の表面の動摩擦係数が小さくなるためと考えられる。
【0042】
R
F1およびR
F2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500〜30,000、好ましくは1,500〜30,000、より好ましくは2,000〜10,000である。本明細書において、R
F1およびR
F2の数平均分子量は、
19F−NMRにより測定される値とする。
【0043】
別の態様において、R
F1およびR
F2部分の数平均分子量は、500〜30,000、好ましくは1,000〜20,000、より好ましくは2,000〜15,000、さらにより好ましくは2,000〜10,000、例えば3,000〜8,000であり得る。別の態様において、R
F1およびR
F2部分の数平均分子量は、2,000〜8,000であってもよい。
【0044】
別の態様において、R
F1およびR
F2部分の数平均分子量は、3,000〜30,000、好ましくは3,000〜15,000、より好ましくは3,500〜15,000であり得る。
【0045】
別の態様において、R
F1およびR
F2部分の数平均分子量は、5,000〜30,000、好ましくは8,000〜15,000、より好ましくは10,000〜15,000であり得る。
【0046】
一の態様において、本開示のフルオロポリエーテル基含有化合物は、R
F1およびR
F2部分の数平均分子量が2,000〜15,000の範囲にあり、かつ、e/f比が0.4以上0.9未満の範囲にあり、別の態様において、R
F1およびR
F2部分の数平均分子量が3,500〜15,000の範囲にあり、かつ、e/f比が0.4以上0.9未満の範囲にあり、さらに別の態様において、R
F1およびR
F2部分の数平均分子量が3,500〜15,000の範囲にあり、かつ、e/f比が0.5以上0.7以下の範囲にある。このようなフルオロポリエーテル基含有化合物は、極めて低い動摩擦係数を有し、良好な潤滑特性を示す硬化層の形成に寄与し得る。
【0047】
別の態様において、R
F1およびR
F2部分の数平均分子量は、5,000〜30,000、かつ、e/f比が0.5以上0.7以下、好ましくは8,000〜15,000、かつ、e/f比が0.5以上0.7以下、より好ましくは10,000〜15,000、かつ、e/f比が0.5以上0.7以下の範囲であり得る。
【0048】
本開示において、式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物は、R
F1またはR
F2で表される基と、R
Siで表される基とが、C(=O)−Nで結合される。ここで、式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および
式(2)で表される
フルオロポリエーテル基含有化合物において、R
F1またはR
F2で表される基は、主に撥水性および表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル基を含有する基であり、R
Siで表される基は、基材との結合能を提供するシラン部である。上記のように、C(=O)−Nで表される構造を含むことにより、式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物を用いて形成される硬化層の耐ケミカル性(例えば、強アルカリ水溶液や強酸水溶液に対する耐性、活性酸素種による酸化に対する耐性)が良好になり得る。
さらに、本開示の式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物は、R
F1またはR
F2に含まれるR
Fで表される基において、e/f比が特定の範囲にある。このような構造を有することにより、式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および/または
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物を用いて形成される硬化層は、極めて高い耐ケミカル性、摩擦耐久性、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)を示し得る。
【0049】
上記式(1)および(2)において、R
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0050】
式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および
式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物は、C(=O)−NのN原子に、R
Siで表される基が2つ結合する。このような構造を有することにより、本開示の化合物を用いて形成される硬化層の基材への結合力が良好になり得、その結果、耐ケミカル性(例えば、溶剤に対する耐久性、人工汗に対する耐久性、強アルカリ水溶液や強酸水溶液に対する耐性、活性酸素種による酸化に対する耐性)、摩擦耐久性、耐候性、紫外線暴露下での耐久性等が良好になり得る。
【0051】
R
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1)で表される。
【化4】
【0052】
式(S1)において、X
1は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、または2価の有機基である。
【0053】
一の態様において、X
1は単結合である。
【0054】
一の態様において、X
1は酸素原子である。
【0055】
X
1は、好ましくは2価の有機基である。
【0056】
2価の有機基であるX
1の例としては、特に限定するものではないが、例えば、
−(Z
21)
z11−(X
2)
z12−(Z
22)
z13−
で表される基を挙げることができる。
式中、Z
21、およびZ
22は、2価の有機基である。
X
2は、酸素原子である。
z11は0または1であり;z12は0または1であり;z13は0または1である。ただし、z11およびz13の少なくとも一方は1である。
【0057】
X
1は、好ましくはC
1−6アルキレン基、−(CH
2)
z5−O−(CH
2)
z6−(式中、z5は、0〜6の整数であり、例えば、1〜6の整数であり、z6は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z5とz6との合計は1以上である。)または、−(CH
2)
z7−フェニレン−(CH
2)
z8−(式中、z7は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z8は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、好ましくは、z7とz8との合計が1以上である。)である。かかるC
1−6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0058】
好ましい態様において、X
1は、C
1−6アルキレン基または−(CH
2)
z7−フェニレン−(CH
2)
z8−、好ましくは−フェニレン−(CH
2)
z8−である。X
1がかかる基である場合、形成される硬化層の光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。好ましくは、z7は、0〜6の整数であり、z8は1〜6の整数である。
【0059】
別の好ましい態様において、上記X
1は、C
1−6アルキレン基であり、より好ましくはC
1−3アルキレン基である。このような構造を有することにより、形成される硬化層の光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0060】
一の態様において、X
1は、−CH
2CH
2CH
2−であり得る。
【0061】
R
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z
1’−SiR
a1’p1’R
b1’q1’R
c1’r1’である。
【0062】
上記Z
1’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、または2価の有機基である。
【0063】
一の態様において、Z
1’は単結合である。
【0064】
一の態様において、Z
1’は酸素原子である。
【0065】
Z
1’は、好ましくは2価の有機基である。
【0066】
好ましい態様において、Z
1’は、Z
1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。即ち、式(S1)において、(Si−Z
1’−Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0067】
2価の有機基であるZ
1’の例としては、特に限定するものではないが、例えば、
−(Z
21’)
z11’−(X
2’)
z12’−(Z
22’)
z13’−
で表される基を挙げることができる。
式中、Z
21’、およびZ
22’は、2価の有機基である。
X
2’は、酸素原子である。
z11’は0または1であり;z12’は0または1であり;z13’は0または1である。ただし、z11’およびz13’の少なくとも一方は1である。
【0068】
Z
1’は、好ましくはC
1−6アルキレン基、−(CH
2)
z5’−O−(CH
2)
z6’−(式中、z5’は、0〜6の整数であり、例えば、1〜6の整数であり、z6’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z5’とz6’との合計は1以上である。)または、−(CH
2)
z7’−フェニレン−(CH
2)
z8’−(式中、z7’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z8’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、好ましくは、z7’とz8’との合計が1以上である。)である。かかるC
1−6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0069】
好ましい態様において、Z
1’は、C
1−6アルキレン基または−(CH
2)
z7’−フェニレン−(CH
2)
z8’−、好ましくは−フェニレン−(CH
2)
z8’−である。Z
1’がかかる基である場合、形成される硬化層の光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。好ましくは、z7’は、0〜6の整数であり、z8’は1〜6の整数である。
【0070】
別の好ましい態様において、上記Z
1’は、C
1−6アルキレン基であり、より好ましくはC
1−3アルキレン基である。このような構造を有することにより、形成される硬化層の光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0071】
一の態様において、Z
1’は、−CH
2CH
2CH
2−であり得る。別の態様において、Z
1’は、−CH
2CH
2−であり得る。
【0072】
R
a1’は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z
1”−SiR
a1”p1”R
b1”q1”R
c1”r1”である。
【0073】
上記Z
1”は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、または2価の有機基である。
【0074】
一の態様において、Z
1”は単結合である。
【0075】
一の態様において、Z
1”は酸素原子である。
【0076】
Z
1”は、好ましくは2価の有機基である。
【0077】
好ましい態様において、Z
1”は、Z
1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。即ち、式(S1)において、(Si−Z
1”−Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0078】
2価の有機基であるZ
1”の例としては、特に限定するものではないが、例えば、
−(Z
21”)
z11”−(X
2”)
z12”−(Z
22”)
z13”−
で表される基を挙げることができる。
式中、Z
21”、およびZ
22”は、2価の有機基である。
X
2”は、酸素原子である。
z11”は0または1であり;z12”は0または1であり;z13”は0または1である。ただし、z11”およびz13”の少なくとも一方は1である。
【0079】
Z
1”は、好ましくはC
1−6アルキレン基、−(CH
2)
z5”−O−(CH
2)
z6”−(式中、z5”は、0〜6の整数であり、例えば、1〜6の整数であり、z6”は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z5”とz6”との合計は1以上である。)または、−(CH
2)
z7”−フェニレン−(CH
2)
z8”−(式中、z7”は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z8”は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、好ましくは、z7”とz8”との合計が1以上である。)である。かかるC
1−6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0080】
好ましい態様において、Z
1”は、C
1−6アルキレン基または−(CH
2)
z7”−フェニレン−(CH
2)
z8”−、好ましくは−フェニレン−(CH
2)
z8”−である。Z
1”がかかる基である場合、形成される硬化層の光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。好ましくは、z7”は、0〜6の整数であり、z8”は1〜6の整数である。
【0081】
別の好ましい態様において、上記Z
1”は、C
1−6アルキレン基であり、より好ましくはC
1−3アルキレン基である。このような構造を有することにより、形成される硬化層の光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0082】
一の態様において、Z
1”は、−CH
2CH
2CH
2−であり得る。別の態様において、Z
1”は、−CH
2CH
2−であり得る。
【0083】
上記R
a1”は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z
1”’−SiR
b1”’q1”’R
c1”’r1”’である。
【0084】
上記Z
1”’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、または2価の有機基である。
【0085】
一の態様において、Z
1”’は単結合である。
【0086】
一の態様において、Z
1”’は酸素原子である。
【0087】
Z
1”’は、好ましくは2価の有機基である。
【0088】
好ましい態様において、Z
1”’は、Z
1”’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。即ち、式(S1)において、(Si−Z
1”’−Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0089】
2価の有機基であるZ
1”’の例としては、特に限定するものではないが、例えば、
−(Z
21”’)
z11”’−(X
2”’)
z12”’−(Z
22”’)
z13”’−
で表される基を挙げることができる。
式中、Z
21”’、およびZ
22”’は、2価の有機基である。
X
2”’は、酸素原子である。
z11”’は0または1であり;z12”’は0または1であり;z13”’は0または1である。ただし、z11”’およびz13”’の少なくとも一方は1である。
【0090】
Z
1”’は、好ましくはC
1−6アルキレン基、−(CH
2)
z5”’−O−(CH
2)
z6”’−(式中、z5”’は、0〜6の整数であり、例えば、1〜6の整数であり、z6”’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z5”’とz6”’との合計は1以上である。)または、−(CH
2)
z7”’−フェニレン−(CH
2)
z8”’−(式中、z7”’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、z8”’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、好ましくは、z7”’とz8”’との合計が1以上である。)である。かかるC
1−6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0091】
好ましい態様において、Z
1”’は、C
1−6アルキレン基または−(CH
2)
z7”’−フェニレン−(CH
2)
z8”’−、好ましくは−フェニレン−(CH
2)
z8”’−である。Z
1”がかかる基である場合、形成される硬化層の光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。好ましくは、z7”’は、0〜6の整数であり、z8”’は1〜6の整数である。
【0092】
別の好ましい態様において、上記Z
1”’は、C
1−6アルキレン基であり、より好ましくはC
1−3アルキレン基である。このような構造を有することにより、形成される硬化層の光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0093】
一の態様において、Z
1”’は、−CH
2CH
2CH
2−であり得る。別の態様において、Z
1”’は、−CH
2CH
2−であり得る。
【0094】
上記R
b1”’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。R
b1”’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0095】
R
b1”’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、−OR
h、−OCOR
h、−O−N=CR
h2、−NR
h2、−NHR
h、またはハロゲン(これら式中、R
hは、置換または非置換のC
1−4アルキル基を示す)であり、より好ましくは−OR
h(即ち、アルコキシ基)である。R
hとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、R
hは、メチル基であり、別の態様において、R
hは、エチル基である。
【0096】
上記R
c1”’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0097】
R
c1”’において、1価の有機基は、好ましくはC
1−20アルキル基であり、より好ましくはC
1−6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0098】
上記q1”’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり、上記r1”’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。尚、q1”’とr1”’の合計は、(SiR
b1”’q1”’R
c1”’r1”’)単位において、3である。
【0099】
好ましくはq1”’は1〜3の整数、かつ、r1”’は0〜2の整数、より好ましくは、q1”’は2または3、かつ、r1”’は0または1、特に好ましくはq1”’は3である。
【0100】
上記R
b1”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。R
b1”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0101】
R
b1”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、−OR
h、−OCOR
h、−O−N=CR
h2、−NR
h2、−NHR
h、またはハロゲン(これら式中、R
hは、置換または非置換のC
1−4アルキル基を示す)であり、より好ましくは−OR
h(即ち、アルコキシ基)である。R
hとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、R
hは、メチル基であり、別の態様において、R
hは、エチル基である。
【0102】
上記R
c1”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0103】
R
c1”において、1価の有機基は、好ましくはC
1−20アルキル基であり、より好ましくはC
1−6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0104】
上記p1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり、上記q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり、上記r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。尚、p1”、q1”およびr1”の合計は、(SiR
a1”p1”R
b1”q1”R
c1”r1”)単位において、3である。
【0105】
一の態様において、p1”は0である。
【0106】
一の態様において、p1”は、(SiR
a1”p1”R
b1”q1”R
c1”r1”)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数、2〜3の整数、または3であってもよい。好ましい態様において、p1”は、3である。
【0107】
一の態様において、q1”は、(SiR
a1”p1”R
b1”q1”R
c1”r1”)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数、より好ましくは3である。
【0108】
一の態様において、p1”は0であり、q1”は、(SiR
a1”p1”R
b1”q1”R
c1”r1”)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数、さらに好ましくは3である。
【0109】
上記R
b1’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。R
b1’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0110】
R
b1’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、−OR
h、−OCOR
h、−O−N=CR
h2、−NR
h2、−NHR
h、またはハロゲン(これら式中、R
hは、置換または非置換のC
1−4アルキル基を示す)であり、より好ましくは−OR
h(即ち、アルコキシ基)である。R
hとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。一の態様において、R
hは、メチル基であり、別の態様において、R
hは、エチル基である。
【0111】
上記R
c1’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0112】
R
c1’において、1価の有機基は、好ましくはC
1−20アルキル基であり、より好ましくはC
1−6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0113】
上記p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり、上記q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり、上記r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。尚、p1’、q1’およびr1’の合計は、(SiR
a1’p1’R
b1’q1’R
c1’r1’)単位において、3である。
【0114】
一の態様において、p1’は0である。
【0115】
一の態様において、p1’は、(SiR
a1’p1’R
b1’q1’R
c1’r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数、2〜3の整数、または3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0116】
一の態様において、q1’は、(SiR
a1’p1’R
b1’q1’R
c1’r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数、より好ましくは3である。
【0117】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR
a1’p1’R
b1’q1’R
c1’r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数、さらに好ましくは3である。
【0118】
上記R
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基である。R
b1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解可能な基である。
【0119】
上記R
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解可能な基を除く1価の有機基である。
【0120】
R
c1において、1価の有機基は、好ましくは、C
1−20アルキル基であり、より好ましくはC
1−6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0121】
上記p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり、上記q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり、上記r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。尚、p1、q1およびr1の合計は、(SiR
a1p1R
b1q1R
c1r1)単位において、3である。
【0123】
一の態様において、p1は、(SiR
a1p1R
b1q1R
c1r1)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数、2〜3の整数、または3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0124】
一の態様において、q1は、(SiR
a1p1R
b1q1R
c1r1)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数、より好ましくは3である。
【0125】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR
a1p1’R
b1q1’R
c1r1)単位毎にそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、好ましくは2〜3の整数、さらに好ましくは3である。
【0126】
上記R
Siで表される基毎に、少なくとも1つのR
b1、R
b1’、R
b1”、またはR
b1”’が存在する。即ち、式(1)または(2)において、N原子に結合したR
Siで表される基は、それぞれ、少なくとも1の水酸基または加水分解可能な基に結合したSi原子を有する。
言い換えると、R
Siで表される基は、
−X
1−SiR
a1p1R
b1q1R
c1r1で表される基(式中、q1が1〜3の整数であり、好ましくはq1が2または3、より好ましくはq1が3。ただし、p1、q1およびr1の合計は3である。)、
−Z
1’−SiR
a1’p1’R
b1’q1’R
c1’r1’で表される基(式中、q1’が1〜3の整数であり、好ましくはq1’が2または3、より好ましくはq1’が3。ただし、p1’、q1’およびr1’の合計は3である。)、または
−Z
1”−SiR
a1”p1”R
b1”q1”R
c1”r1”で表される基(式中、q1”が1〜3の整数であり、好ましくはq1”が2または3、より好ましくはq1”が3。ただし、p1”、q1”およびr1”の合計は3である。)、および
−Z
1”’−SiR
b1”’q1”’R
c1”’r1”’で表される基(式中、q1”’が1〜3の整数であり、好ましくはq1”’が2または3、より好ましくはq1”’が3。ただし、q1”’およびr1”’の合計は3である。)
の少なくとも1つを有する。
【0127】
水酸基または加水分解可能な基に結合したSi原子は、R
Siで表される基の末端部分に存在することが好ましい。言い換えると、好ましくは、式(1)および式(2)の末端部分において、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子が存在する。
【0128】
上記R
Siで表される基は、好ましくは、
−X
1−SiR
b1q1R
c1r1で表される基(式中、q1が1〜3の整数であり、好ましくはq1が2または3、より好ましくはq1が3。ただし、q1およびr1の合計は3である。)、
−Z
1’−SiR
b1’q1’R
c1’r1’で表される基(式中、q1’が1〜3の整数であり、好ましくはq1’が2または3、より好ましくはq1’が3。ただし、q1’およびr1’の合計は3である。)、
−Z
1”−SiR
b1”q1”R
c1”r1”で表される基(式中、q1”が1〜3の整数であり、好ましくはq1”が2または3、より好ましくはq1”が3。ただし、q1”およびr1”の合計は3である。)、および
−Z
1”’−SiR
b1”’q1”’R
c1”’r1”’で表される基(式中、q1”’が1〜3の整数であり、好ましくはq1”’が2または3、より好ましくはq1”’が3。ただし、q1”’およびr1”’の合計は3である。)
の少なくとも1つを有する。
【0129】
上記R
Siは、好ましくは−X
1−SiR
b12R
c1または−X
1−SiR
b13であり、より好ましくは−X
1−SiR
b13である。
【0130】
一の態様において、R
Siにおいてp1が1〜3の整数である場合、R
a1は、好ましくは−Z
1’−SiR
b1’2R
c1’または−Z
1’−SiR
b1’3であり、より好ましくは−Z
1’−SiR
b1’3である。本態様において、好ましくはp1は2または3、より好ましくは3である。
【0131】
一の態様において、R
Siにおいてp1’が1〜3の整数である場合、R
a1’は、好ましくは−Z
1”−SiR
b1”2R
c1”または−Z
1”−SiR
b1”3であり、より好ましくは−Z
1”−SiR
b1”3である。本態様において、好ましくはp1’は2または3、より好ましくは3である。
【0132】
一の態様において、R
Siにおいてp1”が1〜3の整数である場合、R
a1”は、好ましくは−Z
1”’−SiR
b1”’2R
c1”’または−Z
1”’−SiR
b1”’3であり、より好ましくは−Z
1”’−SiR
b1”’3である。本態様において、好ましくはp1”は2または3、より好ましくは3である。
【0133】
一の態様において、本開示のフルオロポリエーテル基含有化合物は、式(1)で表される基である。
【0134】
一の態様において、本開示のフルオロポリエーテル基含有化合物は、式(2)で表される基である。
【0135】
一の態様において、本開示のフルオロポリエーテル基含有化合物は、以下の式(1)または(2)で表される。
【化5】
[式中:
R
F1は、Rf
1−R
F−O
q−であり;
R
F2は、−Rf
2p−R
F−O
q−であり;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−、具体的には、式:−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり、fに対するeの比が、0.9未満であり、好ましくは0.2以上0.9未満、より好ましくは0.4以上0.8以下、さらに好ましくは0.5以上0.7以下であり);
pおよびqは、それぞれ独立して、0または1であり;
R
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1):
【化6】
で表され;
X
1は、各出現においてそれぞれ独立して、C
1−6アルキレン基または−(CH
2)
z7−フェニレン−(CH
2)
z8−であり、好ましくはC
1−6アルキレン基、より好ましくはC
1−3アルキレン基であり;
z7は、0〜6の整数であり、z8は1〜6の整数であり;
R
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
p1およびr1が0、かつ、q1が3である。]
【0136】
一の態様において、本開示のフルオロポリエーテル基含有化合物は、以下の式(1)または(2)で表される。
【化7】
[式中:
R
F1は、Rf
1−R
F−O
q−であり;
R
F2は、−Rf
2p−R
F−O
q−であり;
R
F1または、R
F2で表される基の数平均分子量は、2,000〜15,000の範囲にあり、好ましくは3,000〜15,000の範囲にあり、より好ましくは3,500〜15,000の範囲にあり、8,000〜15,000の範囲にあってもよく、10,000〜15,000の範囲にあってもよく;
Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−16アルキル基であり;
Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、式:−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−、具体的には、式:−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり、fに対するeの比が、0.9未満であり、好ましくは0.2以上0.9未満、より好ましくは0.4以上0.8以下、さらに好ましくは0.5以上0.7以下であり);
pおよびqは、それぞれ独立して、0または1であり;
R
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(S1):
【化8】
で表され;
X
1は、各出現においてそれぞれ独立して、C
1−6アルキレン基または−(CH
2)
z7−フェニレン−(CH
2)
z8−であり、好ましくはC
1−6アルキレン基、より好ましくはC
1−3アルキレン基であり;
z7は、0〜6の整数であり、z8は1〜6の整数であり;
R
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり;
p1およびr1が0、かつ、q1が3である。]
【0137】
式(1)または式(2)で表される化合物は、公知の方法を組み合わせることにより製造することができる。
【0138】
一態様として、以下に、本開示のフルオロポリエーテル基含有化合物の製造に適した方法を記載する。
【0139】
本開示のフルオロポリエーテル基含有化合物は、例えば、式(1b)または(2b)で表される化合物と、HSiM
3(式中、Mは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(即ち、I、Br、Cl、F)、またはC1−6のアルコキシ基であり、好ましくはハロゲン原子、より好ましくはCl)とを反応させて末端に−SiM
3を有する化合物を得(工程(I))、所望により、R
a1L’(R
a1は上記と同意義であり、L’はR
a1と結合可能な基を表す)で表される化合物、および/または、R
b1L”(R
b1は上記と同意義であり、L”はR
b1と結合可能な基を表す)で表される化合物とを反応させる工程(工程(II))を含む方法により製造し得る。
【0141】
式(1b)および(2b)において、R
F1、およびR
F2は上記式(1)および(2)におけるR
F1、およびR
F2と同意義である。X
1’は、式(1)および(2)よりも炭素原子数が2つ少ない構造を表す。即ち、−X
1’−CH=CH
2で表される構造に由来する−X
1’−CH
2CH
2−が、式(1)および(2)におけるX
1に相当する。
【0142】
上記工程は、適切な触媒の存在下、適切な溶媒中で行われることが好ましい。
【0143】
適当な触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、Pt、Pd、Rh等が挙げられる。かかる触媒は任意の形態、例えば錯体の形態であってもよい。
【0144】
適当な溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロブチルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルメチルエーテル、パーフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン等が挙げられる。
【0145】
かかる反応における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、60〜600分、好ましくは120〜300分であり、反応圧力は、特に限定されないが、−0.2〜1MPa(ゲージ圧)であり、簡便には常圧である。
【0146】
別の態様において、上記工程(I)において得られる末端に−SiM
3を有する化合物と、Hal−J−CH=CH
2(式中、Jは、Mg、Cu、PdまたはZnを表し、Halはハロゲン原子を表す。)、所望により、R
a1L’(R
a1は上記と同意義であり、L’はR
a1と結合可能な基を表す)で表される化合物、および/または、R
b1L”(R
b1は上記と同意義であり、L”はR
b1と結合可能な基を表す)で表される化合物とを反応させ(工程(II’))、
工程(II’)で得られる化合物を、HSiM
3(式中、Mは、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはC
1−6アルコキシ基である)、および、所望により
式:R
b1’i’L’(式中、R
b1’は上記と同意義であり、L’は、R
b1’と結合可能な基を表し、i’は1〜3の整数である。)
で表される化合物、および、所望により
式:R
c1’j’L”(式中、R
c1’は上記と同意義であり、L”は、R
c1’と結合可能な基を表し、j
’は1〜3の整数である。)
で表される化合物と反応させる工程、
を含む方法により製造することができる。
【0147】
上記工程は、適切な触媒の存在下、適切な溶媒中で行われることが好ましい。
【0148】
適当な触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、Pt、Pd、Rh等が挙げられる。かかる触媒は任意の形態、例えば錯体の形態であってもよい。
【0149】
適当な溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロブチルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルメチルエーテル、パーフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン等が挙げられる。
【0150】
かかる反応における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、60〜600分、好ましくは120〜300分であり、反応圧力は、特に限定されないが、−0.2〜1MPa(ゲージ圧)であり、簡便には常圧である。
【0151】
上記式(1b)および(2b)で表される化合物は、例えば、式(1a)または(2a)で表される化合物の末端部分に、二重結合を有する基を導入することによって製造され得る。具体的には、以下の式(1a)または(2a)で表される化合物の末端のR
x部分と、アミン化合物(例えば、ジアリルアミン等)とを反応させることによって得ることができる。
【0153】
式(1a)および(2a)において、R
F1、およびR
F2は、それぞれ式(1)および(2)におけるR
F1、およびR
F2と同意義である。R
Xは、例えば、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシル基、フェノール基、スルホニル基、ハロゲン等であり、具体的には水酸基である。
【0154】
上記工程は、適切な塩基の存在下、適切な溶媒中で行われることが好ましい。
【0155】
適当な塩基としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、3級アミン(トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、2,6−ルチジン)等が挙げられる。かかる触媒は任意の形態、例えば錯体の形態であってもよい。
【0156】
適当な溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロブチルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルメチルエーテル、パーフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン等が挙げられる。
【0157】
かかる反応における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、60〜600分、好ましくは120〜240分であり、反応圧力は、特に限定されないが、−0.2〜1MPa(ゲージ圧)であり、簡便には常圧である。
【0158】
本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を製造する際の反応条件は、当業者であれば適宜好ましい範囲に調整することが可能である。
【0159】
以下、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)について説明する。
【0160】
本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(1)または式(2)で表される少なくとも1つのフルオロポリエーテル基含有化合物を含有する。
【0161】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物を含み得る。本態様の組成物(例えば、表面処理剤)は、摩擦耐久性の良好な硬化層の形成に寄与し得る。本態様の組成物を用いて形成される硬化層の摩擦耐久性が良好になり、硬化層の表面における滑り性が良好になる。また、本態様の組成物では、R
F部分の二次構造がらせん構造をとりやすく、単位面積当たりのポリマー密度やシランカップリング剤の架橋密度が大きくなるため、硬化層の強度が高くなると考えられる。
【0162】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)に含まれる、式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の合計に対する、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の比(モル比)の下限値は、好ましくは0.001、より好ましくは0.002、さらに好ましくは0.005、さらにより好ましくは0.01、特に好ましくは0.02、特別には0.05であり得る。式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の合計に対する、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の比(モル比)の上限値は、好ましくは0.35、より好ましくは0.30、さらに好ましくは0.20、さらにより好ましくは0.15または0.10であり得る。式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の合計に対する、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の比(モル比)は、好ましくは0.001以上0.30以下、より好ましくは0.001以上0.20以下、さらに好ましくは0.002以上0.20以下、さらにより好ましくは0.005以上0.20以下、特に好ましくは0.01以上0.20以下、例えば0.02以上0.20以下(具体的には0.15以下)または0.05以上0.20以下(具体的には0.15以下)である。上記範囲で含むことにより、本態様の組成物(例えば、表面処理剤)は、摩擦耐久性の良好な硬化層の形成に寄与し得る。
【0163】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)に含まれる、式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の合計に対する、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の比(モル比)の下限値は、好ましくは0.001、より好ましくは0.002、さらに好ましくは0.005、さらにより好ましくは0.01、特に好ましくは0.02、特別には0.05であり得る。式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の合計に対する、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の比(モル比)の上限値は、好ましくは、0.70、より好ましくは0.60、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.40、さらにより好ましくは0.30、例えば0.20、具体的には0.10であり得る。式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の合計に対する、式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の比(モル比)は、0.001以上0.70以下であってもよく、0.001以上0.60以下であってもよく、0.001以上0.50以下であってもよく、0.002以上0.40以下であってもよく、0.005以上0.30以下であってもよく、0.01以上0.20以下であってもよく、例えば0.02以上0.20以下(具体的には0.15以下)または0.05以上0.20以下(具体的には0.15以下)である。
【0164】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)に含まれる、式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の合計に対する、式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の比(モル比)の下限値は、好ましくは0.001、より好ましくは0.002、さらに好ましくは0.005、さらにより好ましくは0.01、特に好ましくは0.02、特別には0.05であり得る。式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の合計に対する、式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の比(モル比)の上限値は、好ましくは、0.70、より好ましくは0.60、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.40、さらにより好ましくは0.30、例えば、0.20、具体的には0.10であり得る。式(1)
で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物および式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の合計に対する、式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物の比(モル比)は、0.001以上0.70以下であってもよく、0.001以上0.60以下であってもよく、0.001以上0.50以下であってもよく、0.002以上0.40以下であってもよく、0.005以上0.30以下であってもよく、0.01以上0.20以下であってもよく、例えば0.02以上0.20以下(具体的には0.15以下)または0.05以上0.20以下(具体的には0.15以下)である。
【0165】
本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、撥水性、撥油性、防汚性、表面滑り性、摩擦耐久性を基材に対して付与することができ、特に限定されるものではないが、防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤として好適に使用され得る。
【0166】
本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、溶媒、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、まとめて「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、触媒、界面活性剤、重合禁止剤、増感剤等をさらに含み得る。
【0167】
上記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、sec−ブタノール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、tert−アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、1,1−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、ゼオローラH、HFE7100、HFE7200、HFE7300等のフッ素含有溶媒等が挙げられる。あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。
【0168】
含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf
5−(OC
4F
8)
a’−(OC
3F
6)
b’−(OC
2F
4)
c’−(OCF
2)
d’−Rf
6 ・・・(3)
式中、Rf
5は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16アルキル基(好ましくは、C
1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rf
6は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16アルキル基(好ましくは、C
1−16パーフルオロアルキル基)、フッ素原子又は水素原子を表し、Rf
5及びRf
6は、より好ましくは、それぞれ独立して、C
1−3パーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’及びd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’及びd’の和は少なくとも1、好ましくは1〜300、より好ましくは20〜300である。添字a’、b’、c’又はd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−及び(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−及び(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−及び(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0169】
上記一般式(3)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(3a)及び(3b)のいずれかで示される化合物(1種又は2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf
5−(OCF
2CF
2CF
2)
b”−Rf
6 ・・・(3a)
Rf
5−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
a”−(OCF
2CF
2CF
2)
b”−(OCF
2CF
2)
c”−(OCF
2)
d”−Rf
6 ・・・(3b)
これら式中、Rf
5及びRf
6は上記の通りであり;式(3a)において、b”は1以上100以下の整数であり;式(3b)において、a”及びb”は、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、c”及びd”はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a”、b”、c”、d”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0170】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf
3−F(式中、Rf
3はC
5−16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。
【0171】
上記含フッ素オイルは、500〜10000の平均分子量を有していてよい。含フッ素オイルの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し得る。
【0172】
含フッ素オイルは、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)に対して、例えば0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜5質量%含まれ得る。一の態様において、本開示の組成物は、含フッ素オイルを実質的に含まない。含フッ素オイルを実質的に含まないとは、含フッ素オイルを全く含まない、または極微量の含フッ素オイルを含んでいてもよいことを意味する。
【0173】
含フッ素オイルは、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)によって形成された層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0174】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状または環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0175】
本開示の組成物(例えば、表面処理剤)中、かかるシリコーンオイルは、上記本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0〜300質量部、好ましくは50〜200質量部で含まれ得る。
【0176】
シリコーンオイルは、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)によって形成された層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0177】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0178】
触媒は、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進し、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)により形成される層の形成を促進する。
【0179】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0180】
一の態様において、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、式(2)で表される化合物は、例えば、70モル%以下含まれていてもよく、60モル%以下含まれていてもよく、50モル%以下含まれていてもよく、0.001モル%以上含まれていてもよく、0.01モル%以上含まれていてもよく、0.1モル%以上含まれていてもよい。式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、式(2)で表される化合物は、例えば、1〜70モル%含まれていてもよく、5〜50モル%含まれていてもよい。
【0181】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
本態様において、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、含フッ素オイルは、例えば、0.001モル%以上含まれていてもよく、0.01モル%以上含まれていてもよく、1.0モル%以上含まれていてもよく、50モル%以下含まれていてもよく、40モル%以下含まれていてもよく、30モル%以下含まれていてもよく、10モル%以下含まれていてもよい。式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、含フッ素オイルは、例えば、0.001〜50モル%含まれていてもよく、0.01〜40モル%含まれていてもよい。
本態様において、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および含フッ素オイルの合計に対して、式(2)で表される化合物が0.001〜70モル%、および含フッ素オイルが0.001〜50モル%含まれることが好ましく、式(2)で表される化合物が0.01〜60モル%、および含フッ素オイルが0.01〜40モル%含まれることがより好ましく、式(2)で表される化合物が0.1〜50モル%、および含フッ素オイルが0.1〜30モル%含まれることがさらに好ましい。
本態様の組成物(例えば、表面処理剤)は、摩擦耐久性の良好な硬化層の形成に寄与し得る。さらに、本態様の組成物を用いて形成される硬化層の摩擦耐久性が良好になり、硬化層の表面における滑り性が良好になる。また、本態様の組成物では、R
F部分の二次構造がらせん構造をとりやすく、単位面積当たりのポリマー密度やシランカップリング剤の架橋密度が大きくなるため、硬化層の強度が高くなると考えられる。
【0182】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
本態様において、式(1)で表される化合物、および式(2)で表される化合物の合計に対して、式(2)で表される化合物が、0.001モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、0.1モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、1モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、例えば、10モル%以上50モル%未満含まれていてもよい。
【0183】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
本態様において、式(1)で表される化合物、および式(2)で表される化合物の合計に対して、式(1)で表される化合物が、0.001モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、0.1モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、10モル%以上50モル%未満含まれていてもよく、例えば、20モル%以上50モル%未満、30モル%以上50モル%未満含まれていてもよい。
【0184】
一の態様において、本開示の組成物(例えば、表面処理剤)は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、および含フッ素オイルを含む。
本態様において、式(1)で表される化合物、および式(2)で表される化合物の合計に対して、式(2)で表される化合物が、35モル%以上65モル%未満含まれていてもよく、40モル%以上60モル%未満含まれていてもよい。
【0185】
本開示の組成物は、基材の表面処理を行う表面処理剤として用いることができる。
【0186】
本開示の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0187】
以下、本開示の物品について説明する。
【0188】
本開示の物品は、基材と、該基材表面に本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物またはフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤(以下、これらを代表して単に「本開示の表面処理剤」という)より形成された層(表面処理層)とを含む。
【0189】
本開示において使用可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよく、板状、フィルム、その他の形態であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、任意の適切な材料で構成され得る。
【0190】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラスまたは透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO
2、SiO、ZrO
2、TiO
2、TiO、Ti
2O
3、Ti
2O
5、Al
2O
3、Ta
2O
5、CeO
2、MgO、Y
2O
3、SnO
2、MgF
2、WO
3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO
2および/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I−CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0191】
基材の形状は特に限定されない。また、本開示の表面処理剤によって形成された層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途および具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0192】
かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜または熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入または増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素−炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア−ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0193】
またあるいは、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi−H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0194】
次に、かかる基材の表面に、上記の本開示の表面処理剤の層を形成し、この層を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の表面処理剤から層を形成する。
【0195】
本開示の表面処理剤の層形成は、上記の表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法および乾燥被覆法を使用できる。
【0196】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングおよび類似の方法が挙げられる。
【0197】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVDおよび類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビームおよび類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ−CVD、光学CVD、熱CVDおよび類似の方法が挙げられる。
【0198】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0199】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本開示の表面処理剤の安定性および溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5〜12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C
6F
13CH
2CH
3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC−6000)、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C
3F
7OCH
3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C
4F
9OCH
3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C
2F
5CF(OCH
3)C
3F
7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい)、あるいはCF
3CH
2OCF
2CHF
2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE−3000))など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(C
4F
9OCH
3)および/またはパーフルオロブチルエチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)が特に好ましい。
【0200】
乾燥被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、または、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0201】
表面処理剤の層形成は、層中で本開示の表面処理剤が、加水分解および脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本開示の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本開示の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本開示の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本開示の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0202】
触媒には、任意の適切な酸または塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0203】
上記のようにして、基材の表面に、本開示の表面処理剤に由来する層が形成され、本開示の物品が製造される。これにより得られる上記層は、高い表面滑り性と高い摩擦耐久性の双方を有する。また、上記層は、高い摩擦耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0204】
すなわち本開示はさらに、本開示の表面処理剤に由来する層を最外層に有する光学材料にも関する。
【0205】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例えば、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0206】
本開示によって得られる層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu−ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。
【0207】
また、本開示によって得られる層を有する物品は、自動車内外装部材であってもよい。外装材の例には、次のものが挙げられる:ウィンドウ、ライトカバー、社外カメラカバー。内装材の例には、次のものが挙げられる:インパネカバー、ナビゲーションシステムタッチパネル、加飾内装材。
【0208】
また、本開示によって得られる層を有する物品は、医療機器または医療材料であってもよい。
【0209】
上記層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、上記層の厚さは、1〜50nm、1〜30nm、好ましくは1〜15nmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性および防汚性の点から好ましい。
【0210】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0211】
以下、実施例を通じてより具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、以下に示される化学式はすべて平均組成を示し、パーフルオロポリエーテルを構成する繰り返し単位((OCF
2CF
2)、(OCF
2)等)の存在順序は任意である。
【0212】
(合成例1)
CF
3−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOH(m≒16、n≒28)とHOCOCF
2−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOH(m≒16、n≒28)との混合物6.0g(ただし、HOCOCF
2−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOHの含有量は14mol%)を1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン6.0gに溶解し氷冷した。該溶液にチオニルクロライド0.3gを滴下した後、N,N−ジメチルホルムアミド0.01mgをさらに加え室温で一昼夜撹拌した。この反応液からチオニルクロライドを留去した後、ジアリルアミン0.18gおよびトリエチルアミン0.2gを加え、50℃に加熱し、3時間撹拌した。反応の終点は
19F−NMRによってCF
3−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOHのカルボニル基α位の−CF
2−のケミカルシフトが低磁場にシフトしたこと、および
1H−NMRによって、ジアリルアミンのアミノ基α位のメチレンプロトンが低磁場にシフトしたことにより確認した。反応液に1N−塩酸を加え分液した下相を水洗し硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濃縮した。得られた濃縮物をパーフルオロヘキサンに溶解しアセトンで3回洗浄することによりポリエーテル基含有化合物(A)およびポリエーテル基含有化合物(A’)を含む混合物を得た。
ポリエーテル基含有化合物(A):
(m≒16、n≒28)
ポリエーテル基含有化合物(A’):
(m≒16、n≒28)
【0213】
(合成例2)
合成例1で得られた混合物5.0gを、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン10mlに溶解し、トリアセトキシメチルシラン0.02g、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのPt錯体2%を含むキシレン溶液0.06mlを加えた後、トリクロロシラン1.0gを仕込み、10℃で30分間撹拌した。続いて、該溶液を60℃に加熱し4時間撹拌した。その後、得られた溶液から減圧下で揮発分を留去した後、メタノール0.1gおよびオルトギ酸トリメチル3.0gの混合溶液を加えた後、60℃に加熱し3時間撹拌した。その後、精製を行うことにより、末端にトリメトキシシリル基を有する下記のポリエーテル基含有化合物(B)およびポリエーテル基含有化合物(B’)を含む混合物4.7gを得た(e/f比は0.57)。
ポリエーテル基含有化合物(B):
(m≒16、n≒28)
ポリエーテル基含有化合物(B’):
(m≒16、n≒28)
【0214】
(合成例3)
CF
3−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOH(m≒54、n≒90)およびHOCOCF
2−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOH(m≒54、n≒90)を含む混合物6.0g(ただし、HOCOCF
2−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOHの含有量は7mol%)を用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、ポリエーテル基含有化合物(C)およびポリエーテル基含有化合物(C’)を含む混合物6.0gを得た。
ポリエーテル基含有化合物(C):
(m≒54、n≒90)
ポリエーテル基含有化合物(C’):
(m≒54、n≒90)
【0215】
(合成例4)
合成例3で得られた混合物を5.8g用いた以外は合成例2と同様の操作を行い、ポリエーテル基含有化合物(D)およびポリエーテル基含有化合物(D’)を含む混合物5.8gを得た(e/f比は0.60)。
ポリエーテル基含有化合物(D):
(m≒54、n≒90)
ポリエーテル基含有化合物(D’):
(m≒54、n≒90)
【0216】
(合成例5)
CF
3−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOH(m≒20、n≒35)、HOCOCF
2−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOH(m≒20、n≒35)およびCF
3−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−OCF
3(m≒20、n≒35)を含む混合物6.0g(ただし、HOCOCF
2−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOHの含有量は34mol%、CF
3−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−OCF
3の含有量は21mol%)を用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、ポリエーテル基含有化合物(E)、ポリエーテル基含有化合物(E’)ポリエーテル基含有化合物(E”)を含む混合物5.9gを得た。
ポリエーテル基含有化合物(E):
(m≒20、n≒35)
ポリエーテル基含有化合物(E’):
(m≒20、n≒35)
ポリエーテル基含有化合物(E”):
CF
3(OCF
2CF
2)
m(OCF
2)
nOCF
3 (m≒20、n≒35)
【0217】
(合成例6)
合成例5で得られた混合物5.9gを用いた以外は合成例2と同様の操作を行い、ポリエーテル基含有化合物(F)、ポリエーテル基含有化合物(F’)、およびポリエーテル基含有化合物(F”)を含む混合物5.8gを得た(e/f比は0.57)。
ポリエーテル基含有化合物(F):
(m≒20、n≒35)
ポリエーテル基含有化合物(F’):
(m≒20、n≒35)
ポリエーテル基含有化合物(F”):
CF
3(OCF
2CF
2)
m(OCF
2)
nOCF
3 (m≒20、n≒35)
【0218】
(合成例7)
CF
3−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOH(m≒20、n≒35)、HOCOCF
2−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOH(m≒20、n≒35)およびCF
3−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−OCF
3(m≒20、n≒35)を含む混合物6.0g(ただし、HOCOCF
2−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−COOHの含有量は48mol%、CF
3−(OCF
2CF
2)
m−(OCF
2)
n−OCF
3の含有量は17mol%)を用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、ポリエーテル基含有化合物(G)、ポリエーテル基含有化合物(G’)ポリエーテル基含有化合物(G”)を含む混合物6.0gを得た。
ポリエーテル基含有化合物(G):
(m≒20、n≒35)
ポリエーテル基含有化合物(G’):
(m≒20、n≒35)
ポリエーテル基含有化合物(G”):
CF
3(OCF
2CF
2)
m(OCF
2)
nOCF
3 (m≒20、n≒35)
【0219】
(合成例8)
合成例7で得られた混合物6.0gを用いた以外は合成例2と同様の操作を行い、ポリエーテル基含有化合物(H)、ポリエーテル基含有化合物(H’)、およびポリエーテル基含有化合物(H”)を含む混合物5.9gを得た(e/f比は0.57)。
ポリエーテル基含有化合物(H):
(m≒20、n≒35)
ポリエーテル基含有化合物(H’):
(m≒20、n≒35)
ポリエーテル基含有化合物(H”):
CF
3(OCF
2CF
2)
m(OCF
2)
nOCF
3 (m≒20、n≒35)
【0220】
(実施例1)
上記合成例2で得られたポリエーテル基含有化合物(B)およびポリエーテル基含有化合物(B’)を含む混合物を、濃度0.1mass%になるように、ハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベックHFE−7300)に溶解させて、表面処理剤(1)を調製した。
【0221】
(実施例2)
上記合成例4で得られたポリエーテル基含有化合物(D)およびポリエーテル基含有化合物(D’)を含む混合物を、濃度0.1mass%になるように、ハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベックHFE−7300)に溶解させて、表面処理剤(2)を調製した。
【0222】
(実施例3)
上記合成例6で得られたポリエーテル基含有化合物(F)、ポリエーテル基含有化合物(F’)およびポリエーテル基含有化合物(F”)を含む混合物を、濃度0.1mass%になるように、ハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベックHFE−7200)に溶解させて、表面処理剤(3)を調製した。
【0223】
(実施例4)
上記合成例8で得られたポリエーテル基含有化合物(H)、ポリエーテル基含有化合物(H’)およびポリエーテル基含有化合物(H”)を含む混合物を、濃度0.1mass%になるように、ハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベックHFE−7200)に溶解させて、表面処理剤(4)を調製した。
【0224】
(比較例1、2)
ポリエーテル基含有化合物(D)およびポリエーテル基含有化合物(D’)を含む混合物の代わりに、下記対照化合物(1)または(2)を用いた以外は実施例2と同様に行い、比較表面処理剤(1)および(2)をそれぞれ調製した。
対照化合物(1)
対照化合物(2)
【0225】
(静的接触角)
静的接触角は全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学社製)を用いて次の方法で測定した。
<静的接触角の測定方法>
静的接触角は、水平に置いた基板にマイクロシリンジから水を2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより求めた。
【0226】
(硬化膜の形成)
表面処理剤(1)〜(4)、および比較表面処理剤(1)〜(2)をそれぞれ用いて、以下のように硬化膜を形成した。
【0227】
表面処理剤または比較表面処理剤を、スピンコーターを用いて、化学強化ガラス(コーニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)上に塗布した。
スピンコートの条件は、300回転/分で3秒間、2000回転/分で30秒であった。
塗布後のガラスを、大気下、恒温槽内で150℃30分間加熱し、硬化膜を形成した。
【0228】
[硬化膜の特性評価]
得られた硬化膜の特性を以下のように評価した。
【0229】
<静的接触角>
(初期評価)
まず、初期評価として、硬化膜形成後、その表面に未だ何も触れていない状態で、水の静的接触角を測定した。
(エタノール拭き後の評価)
次に、上記硬化膜を、エタノールを十分に染み込ませたキムワイプ(商品名。十條キンバリー(株)製)を用いて5往復拭いた後、乾燥させた。乾燥後の硬化膜の水の静的接触角を測定した。
【0230】
<指紋付着性および拭き取り性>
(指紋付着性)
表面処理剤または比較表面処理剤を用いて形成された硬化膜に指を押し付け、指紋の付きやすさを目視で判定した。評価は、次の基準に基づいて判断した。
A:指紋が付きにくいか、付いても指紋が目立たなかった。
B:指紋の付着が少ないが、その指紋を充分に確認できた。
C:未処理のガラス基板と同程度に明確に指紋が付着した。
(指紋拭き取り性)
上記の指紋付着性試験後、付着した指紋をキムワイプ(商品名。十條キンバリー(株)製)で5往復拭き取り、付着した指紋の拭き取りやすさを目視で判定した。評価は次の基準に基づいて判断した。
A:指紋を完全に拭き取ることができた。
B:指紋の拭取り跡が残った。
C:指紋の拭取り跡が拡がり、除去することが困難であった。
【0231】
上記の一連の評価結果を以下の表1にまとめた。
【0232】
【表1】
【0233】
表面処理剤(1)〜(4)を用いて形成された硬化膜の接触角は、エタノールを用いて拭いた場合であっても低下しなかった。一方で、比較表面処理剤(1)および(2)を用いて形成された硬化膜の接触角は、エタノールを用いて拭くことによって低下した。これは、比較表面処理剤(1)または(2)で形成された硬化膜では、耐ケミカル性(溶剤に対する耐久性)が悪いためと考えられる。
【0234】
[硬化膜の耐摩擦性評価]
得られた硬化膜の耐摩擦性を以下のように評価した。
<耐消しゴム摩擦性試験>
ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、下記条件で2500回擦る毎に耐水接触角を測定し、10000回もしくは100度未満となるまで試験を続けた。試験環境条件は25℃、湿度40%RHであった。
消しゴム:Raber Eraser(Minoan社製)
接地面積:6mmφ
移動距離(片道):30mm
移動速度:3,600mm/分
荷重:1kg/6mmφ
【0235】
上記の評価結果を以下の表2にまとめた。表中「−」は測定していないことを意味する。
【0236】
【表2】