【文献】
BANNON, C.D. et al.,Analysis of Fatty Acid Methyl Esters with High Accuracy and Reliability,Journal of Chromatography,1987年,Vol.407,p.231-241
【文献】
Hewlett-Packard Company,HP Automatic Liquid Sampler Operating Manual,Manual,1995年,G1513-90100,p.7, 57, 59, 72,URL,www.aimanalytical.com/ Manuals/7673operating.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1動作において、前記ニードルの先端が前記蓋部材の前記所定の深さ位置に到達してから前記蓋部材を貫通するまでの前記第1移動速度が徐々に大きくなるように前記シリンジ駆動部を制御するように構成されている、請求項1に記載の試料注入装置。
前記制御部は、前記第1動作の繰り返し回数が増加するにしたがって、前記蓋部材の表面から前記所定の深さ位置までの距離が徐々に小さくなるように前記シリンジ駆動部を制御するように構成されている、請求項1に記載の試料注入装置。
前記制御部は、前記第1動作により前記試料導入部の内部に侵入した前記ニードルを前記第1動作とは反対側に移動させて前記蓋部材から抜き取る第2動作における移動速度が、前記第1動作における移動速度よりも大きくなるように前記シリンジ駆動部を制御するように構成されている、請求項1に記載の試料注入装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許第3367319号公報には明記されていないが、特許第3367319号公報に記載のような従来の試料注入装置では、ゴム製の蓋部材に対するニードルの貫通力を向上させるために、蓋部材にニードルが侵入する時点の降下速度が装置における最高速度となるようにシリンジ駆動機構によるシリンジの移動速度が制御される場合がある。この場合、シリンジの移動速度が大きくなるにしたがって、シリンジの移動方向に直交する方向(水平方向)へのシリンジの振動(変位)が大きくなるので、蓋部材に対してニードルを突く位置にバラつきが生じ易いと考えられる。
【0007】
このため、特許第3367319号公報に記載のような従来の試料注入装置において蓋部材にニードルが侵入する時点の降下速度が最高速度となるように制御される場合、ニードルを突く位置がバラつくことにより、蓋部材に形成される穴が拡がるので、蓋部材の気密性が低下するという問題点が考えられる。また、ニードルを突く位置がバラつくことより蓋部材が損傷してゴム製の蓋部材のカスが生じ易いので、蓋部材のカスがニードルの流路に入り込む等により分析対象に混入することに起因して、試料の分析結果に出所不明のピーク(ゴーストピーク)が生じるという問題点が考えられる。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ガスクロマトグラフ装置の蓋部材の気密性が低下するのを抑制するとともに、試料の分析結果にゴーストピークが生じるのを抑制することが可能な試料注入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における試料注入装置は、ガスクロマトグラフ装置の試料導入部に試料を注入するためのニードルが先端に設けられたシリンジと、シリンジを試料導入部まで移動させるためのシリンジ駆動部と、シリンジ駆動部を制御する制御部と、を備え、ニードルは、試料導入部の気密性を保持するとともにニードルが貫通可能なように弾性変形可能な蓋部材を貫通するように構成されており、制御部は、シリンジを試料導入部側に移動させてニードルを蓋部材に貫通させる第1動作において、ニードルの先端が蓋部材の所定の深さ位置に到達してから蓋部材を貫通するまでの移動速度が高速の第1移動速度になるとともに
、ニードルの先端が蓋部材に接触
してから蓋部材の所定の深さ位置に到達するまでの移動速度が低速の第2移動速度になるように、シリンジ駆動部を制御するように構成されている。
【0010】
この発明の一の局面による試料注入装置では、上記のように、制御部は、少なくともニードルの先端が蓋部材に接触する時点の移動速度が低速の第2移動速度になるように、シリンジ駆動部を制御する。これにより、ニードルの先端が蓋部材に接触する時点のニードルを突く方向と直交する方向の変位が大きくなるのを抑制することができるので、ニードルを突く位置のバラつきを抑制することができる。その結果、蓋部材に既に形成されている穴にニードルが沿うようにニードルを挿入するができるので、蓋部材に形成される穴が拡がるのを抑制することができる。これにより、蓋部材の気密性が低下するのを抑制することができる。また、蓋部材が損傷して蓋部材のカスが生じるのを抑制することができるので、蓋部材のカスがニードルの流路に入り込む等により分析対象に混入することに起因して、試料の分析結果に出所不明のピーク(ゴーストピーク)が生じるのを抑制することができる。また、制御部は、ニードルの先端が蓋部材の所定の深さ位置に到達してから蓋部材を貫通するまでの移動速度が高速の第1移動速度になるように、シリンジ駆動部を制御する。これにより、第1動作において、低速の第2移動速度が継続される場合と比較して、ニードルが蓋部材を貫通する時間が長くなるのを抑制することができるので、試料の分析に要する処理時間が長くなるのを抑制することができる。また、ニードルの先端が蓋部材の所定の深さ位置よりも深い位置において高速で移動することにより、ニードルが蓋部材の内部の深くまで留まっている時間を短くすることができるので、蓋部材の気密性が低下するのを抑制することができる。
【0011】
また、制御部は、第1動作において、ニードルの先端が蓋部材の所定の深さ位置に到達してから蓋部材を貫通するまでの移動速度が第1移動速度になるとともに、ニードルの先端が蓋部材に接触してから蓋部材の所定の深さ位置に到達するまでの移動速度が第2移動速度になるように、シリンジ駆動部を制御するように構成されている。
これにより、ニードルの先端が蓋部材に接触した後も蓋部材の所定の深さ位置に到達するまでは低速の第2移動速度となるので、蓋部材に既に形成されている穴にニードルが確実に沿うことにより、ニードルを突く位置のバラつきを確実に抑制することができる。また、低速の第2移動速度の間は、ニードルと蓋部材との間に生じる摩擦熱が大きくなるのを抑制することができるので、ニードルの先端が蓋部材に接触する時点のみ移動速度が低速の場合と比較して、蓋部材が熱変成するのを抑制することができる。その結果、蓋部材が損傷して蓋部材のカスが生じるのをより抑制することができる。
【0012】
上記一の局面による試料注入装置において、好ましくは、制御部は、第1動作において、ニードルの先端が蓋部材の所定の深さ位置に到達してから蓋部材を貫通するまでの第1移動速度が徐々に大きくなるようにシリンジ駆動部を制御するように構成されている。このように構成すれば、第1移動速度が一定の場合と比較して、ニードルが蓋部材を貫通する時間が長くなるのをより抑制することができる。
【0013】
上記一の局面による試料注入装置において、好ましくは、制御部は、第1動作の繰り返し回数が増加するにしたがって、蓋部材の表面から所定の深さ位置までの距離が徐々に小さくなるようにシリンジ駆動部を制御するように構成されている。ここで、第1動作が繰り返された場合、蓋部材が消耗することに起因して、蓋部材の気密性が低下するので、ニードルが侵入することにより蓋部材の気密性が確保可能な蓋部材の表面からの深さが小さくなる。したがって、上記のように構成すれば、蓋部材の気密性の低下に応じて、蓋部材の表面から所定の深さ位置までの距離が小さくなるように変化させることができるので、蓋部材の気密性が低下するのを確実に抑制することができる。
【0014】
上記一の局面による試料注入装置において、好ましくは、制御部は、第1動作により試料導入部の内部に侵入したニードルを第1動作とは反対側に移動させて蓋部材から抜き取る第2動作における移動速度が、第1動作における移動速度よりも大きくなるようにシリンジ駆動部を制御するように構成されている。このように構成すれば、ニードルを蓋部材から抜き取る第2動作における移動速度を比較的大きくすることができるので、ニードルの先端がガスクロマトグラフ装置の試料導入部の内部において留まる時間を短くすることができる。その結果、試料を気化するために高温・高圧となっている試料導入部の内部においてニードルの流路内に滞留する試料が気化して試料導入部に侵入することを抑制することができるので、分析の正確性が損なわれるのを抑制することができる。
【0015】
上記一の局面による試料注入装置において、好ましくは、シリンジ駆動部は、パルス電力に同期して動作するパルスモータを含み、制御部は、第1動作において、ニードルの先端が蓋部材の所定の深さ位置に到達してから蓋部材を貫通するまでの移動速度が第1移動速度になるとともに
、ニードルの先端が蓋部材に接触
してから蓋部材の所定の深さ位置に到達するまでの移動速度が第2移動速度になるように、パルスモータを制御するように構成されている。ここで、パルスモータでは、大きな負荷が生じることにより脱調する(同期が乱れる)場合がある。したがって、上記のように、ニードルの先端が蓋部材に接触する時点の移動速度が低速になるように構成されたシリンジ駆動部にパルスモータを用いることは、ニードルの先端が蓋部材に接触する瞬間にニードルが設けられたシリンジに大きな負荷がかかるのを抑制することができる点において特に有用である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、ガスクロマトグラフ装置の蓋部材の気密性が低下するのを抑制するとともに、試料の分析結果にゴーストピークが生じるのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1〜
図5を参照して、本発明の一実施形態による試料注入装置100の構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、試料注入装置100は、試料を分析するためのガスクロマトグラフ装置900に試料を注入するための装置である。試料注入装置100は、分析対象の試料が収容されたバイアル(図示しない)等から試料を吸引してガスクロマトグラフ装置900の試料導入部910に試料を注入するためのシリンジ10を備えている。シリンジ10は、試料導入部910の上方(Z1側)に配置されている。
【0021】
シリンジ10は、試料導入部910に試料を挿入するためのニードル11と、シリンジ10内の試料をシリンジ10外に排出するためのプランジャ12と、を含む。
【0022】
図4に示すように、ニードル11は、シリンジ10の先端部(Z2側)に設けられるとともに、シリンジ10の内部10aと外部とを繋ぐ流路11aが形成されている。また、プランジャ12は、シリンジ10においてニードル11とは反対側(Z1側)に設けられるとともに、シリンジ10の内部10aを上下方向(Z方向)に移動可能なピストンとして構成されている。
【0023】
これにより、試料注入装置100では、プランジャ12をZ1側に移動させることにより、ニードル11に形成された流路11aを介して、シリンジ10の内部10aに試料を吸引することが可能である。また、プランジャ12をZ2側に移動させることにより、ニードル11に形成された流路11aを介して、吸引した試料をシリンジ10の外部に吐出することが可能である。
【0024】
なお、
図4では、試料をシリンジ10の内部10aに吸引してシリンジ10内に試料が満たされている状態(左側の状態)と、シリンジ10内に満たされた試料をシリンジ10の外部に排出した状態(右側の状態)と、を示している。通常の使用状態では、プランジャ12の移動によりシリンジ10の外部に排出される量は、プランジャ12がZ2側へ移動することにより変化したシリンジ10内の容積と略等しい。すなわち、
図4の右側の状態で示しているように、プランジャ12をZ2側に移動させた距離Hに応じた量の試料がシリンジ10の外部に排出される。
【0025】
ニードル11は、試料導入部910に設けられたセプタム911を貫通するように構成されている。なお、ガスクロマトグラフ装置900の試料導入部910の内部は、高温・高圧となっているので、セプタム911は、試料導入部910の気密性を保持するように構成されている。また、セプタム911は、ニードル11を貫通させる必要があるので、ニードル11が貫通可能なように弾性変形可能に構成されている。セプタム911は、たとえば、ゴムからなる。
【0026】
図2に示すように、試料注入装置100は、シリンジ駆動部21と、プランジャ駆動部22と、制御部23と、を備えている。
【0027】
シリンジ駆動部21は、パルス電力に同期して動作するパルスモータ21aを含む。シリンジ駆動部21は、シリンジ10(
図1参照)を上下方向(Z方向)に移動させることが可能に構成されている。また、シリンジ駆動部21は、シリンジ10(
図1参照)を試料導入部910(
図1参照)まで移動させるように構成されている。
【0028】
プランジャ駆動部22は、パルス電力に同期して動作するパルスモータ(図示しない)を含む。シリンジ駆動部21は、シリンジ10(
図1参照)内でプランジャ12(
図1参照)を上下方向(Z方向)に移動させることが可能に構成されている。
【0029】
制御部23は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されたコンピュータである。制御部23は、シリンジ駆動部21およびプランジャ駆動部22により、それぞれ、シリンジ10(
図1参照)およびプランジャ12(
図1参照)を移動させる制御を行うように構成されている。
【0030】
(ニードルの貫通動作および抜き取り動作)
次に、
図1および
図3を参照して、セプタム911に対するニードル11の貫通動作およびニードル11のセプタム911からの抜き取り動作について説明する。なお、貫通動作および抜き取り動作は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1動作」および「第2動作」の一例である。
【0031】
貫通動作は、シリンジ10を試料導入部910側(Z2側)に移動させてニードル11をセプタム911に貫通させる動作である。また、抜き取り動作は、貫通動作により試料導入部910の内部に侵入したニードル11を貫通動作とは反対側(Z1側)に移動させてセプタム911から抜き取る動作である。なお、貫通動作を開始する前に、シリンジ10内には、バイアル等から吸引した試料があるものとする。
【0032】
図1に示すように、貫通動作において、制御部23(
図2参照)は、シリンジ10を、ニードル11の先端11b(
図3参照)が試料注入装置100の上部の位置P1となるように配置させる。そして、制御部23(
図2参照)は、シリンジ駆動部21(
図2参照)により、シリンジ10を下側(Z2側)に移動させて、ニードル11をセプタム911に貫通させる。そして、制御部23(
図2参照)は、シリンジ駆動部21(
図2参照)により、
図3に示すように、ニードル11の先端11bが試料導入部910の内部の位置P5に到達するまでシリンジ10を移動させる。
【0033】
制御部23(
図2参照)は、ニードル11の先端11bが位置P5に位置した状態において、プランジャ駆動部22(
図2参照)により、プランジャ12を下側(Z2側)に駆動させて、シリンジ10内の試料を排出する。制御部23は、シリンジ10内の試料の排出が終了後、抜き取り動作を開始する。
【0034】
抜き取り動作において、制御部23は、シリンジ駆動部21(
図2参照)により、シリンジ10を上側(Z1側)に移動させて、ニードル11をセプタム911から引き抜く。そして、制御部23(
図2参照)は、シリンジ駆動部21(
図2参照)により、
図1に示すように、ニードル11の先端11b(
図3参照)が試料注入装置100の上部の位置P1に到達するまでシリンジ10を移動させる。
【0035】
ここで、
図5に示すように、本実施形態では、制御部23(
図2参照)は、貫通動作において、ニードル11(
図3参照)の先端11b(
図3参照)がセプタム911(
図3参照)の位置P3に到達してからセプタム911(
図3参照)を貫通するまでの移動速度が高速の第1移動速度になるように、シリンジ駆動部21(
図2参照)を制御するように構成されている。また、制御部23(
図2参照)は、貫通動作において、ニードル11(
図3参照)の先端11b(
図3参照)がセプタム911(
図3参照)に接触する時点の移動速度が低速の第2移動速度になるように、シリンジ駆動部21(
図2参照)を制御するように構成されている。なお、位置P3は、ニードル11を低速の移動速度で侵入させた場合でもセプタム911(
図3参照)の気密性が低下しない深さ位置である。位置P3は、たとえば、使用開始時のセプタム911(
図3参照)において、セプタム911(
図3参照)の厚み方向(Z方向)の略中央部近傍である。なお、位置P3は、特許請求の範囲の「所定の深さ位置」の一例である。
【0036】
詳細には、制御部23(
図2参照)は、貫通動作において、ニードル11(
図3参照)の先端11b(
図3参照)がセプタム911(
図3参照)に接触してからセプタム911(
図3参照)の位置P3に到達するまでの移動速度が第2移動速度になるように、シリンジ駆動部21(
図2参照)を制御するように構成されている。また、制御部23(
図2参照)は、貫通動作において、ニードル11(
図3参照)の先端11b(
図3参照)がセプタム911(
図3参照)の位置P3に到達してからセプタム911(
図3参照)を貫通するまでの第1移動速度が徐々に大きくなるようにシリンジ駆動部21を制御するように構成されている。
【0037】
具体的には、
図5に示すように、制御部23(
図2参照)は、貫通動作において、シリンジ駆動部21により、ニードル11(
図3参照)の先端11b(
図3参照)の位置に基づいて、シリンジ10(
図3参照)の移動速度を以下のように制御する。まず、位置P1からZ2方向への移動を開始して、シリンジ10(
図3参照)の移動速度を、移動速度Vaまで加速する。そして、シリンジ10の移動速度を、移動速度Vaに維持したまま、セプタム911(
図3参照)の表面911a(位置P2)(
図3参照)に接触させる。そして、シリンジ10(
図3参照)の移動速度を、移動速度Vaを維持したまま、セプタム911(
図3参照)に侵入して、セプタム911(
図3参照)の位置P3まで到達させる。なお、移動速度Vaは、低速の第2移動速度に相当する。
【0038】
セプタム911(
図3参照)の位置P3から、シリンジ10(
図3参照)の移動速度を、移動速度Vaから徐々に加速させる。そして、セプタム911(
図3参照)を貫通して試料導入部910(
図3参照)の内部に侵入する。そして、シリンジ10の移動速度は、試料導入部910(
図3参照)の内部の位置P5で0になるように、シリンジ10(
図3参照)の移動速度を減速させる。移動速度の減速を開始する際には、シリンジ10(
図3参照)の移動速度は、移動速度Vaよりも大きい(たとえば、移動速度Vaの数倍の大きさの)移動速度Vbとなっている。なお、移動速度Vaより大きい移動速度は、高速の第1移動速度に相当する。
【0039】
また、本実施形態では、制御部23(
図2参照)は、抜き取り動作における移動速度が、貫通動作における移動速度よりも大きくなるようにシリンジ駆動部21を制御するように構成されている。具体的には、制御部23(
図2参照)は、抜き取り動作において、シリンジ駆動部21(
図2参照)により、ニードル11(
図3参照)の先端11b(
図3参照)の位置に基づいて、シリンジ10(
図3参照)の移動速度を以下のように制御する。まず、位置P5からZ1方向への移動を開始して、シリンジ10(
図3参照)の移動速度を、移動速度Vbよりも大きい(たとえば、移動速度Vbの略10倍の大きさの)移動速度Vcまで加速する。そして、シリンジ10(
図3参照)の移動速度を移動速度Vcに維持したまま、貫通動作とは反対側(Z1側)に移動させる。そして、位置P1で移動速度が0となるように、シリンジ10(
図3参照)の移動速度を減速させる。
【0040】
また、
図3に示すように、本実施形態では、制御部23(
図2参照)は、貫通動作の繰り返し回数が増加するにしたがって、セプタム911の表面911aから位置P3までの距離Lが徐々に小さくなるようにシリンジ駆動部21(
図2参照)を制御するように構成されている。具体的には、貫通動作が繰り返された場合、セプタム911が消耗することに起因して、セプタム911の気密性が低下するので、ニードル11が侵入することによりセプタム911の気密性が確保可能なセプタム911の表面911aからの深さが小さくなる。すなわち、セプタム911内において、低速の第2移動速度(
図5参照)でニードル11を移動可能な範囲が徐々に小さくなる。したがって、制御部23(
図2参照)は、貫通動作の繰り返し回数が増加するのに応じて、移動速度を(移動速度Vaから移動速度Vbに)切り換えるP3の位置を、セプタム911の表面911a(位置P2)に近い位置に徐々に近付けるように制御する。なお、貫通動作の繰り返し回数は、たとえば、記憶部(図示しない)により記憶されるように構成してもよい。
【0041】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0042】
本実施形態では、上記のように、制御部23を、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触する時点の移動速度が低速の第2移動速度になるように、シリンジ駆動部21を制御するように構成する。これにより、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触する時点のニードル11を突く方向と直交する方向の変位が大きくなるのを抑制することができるので、ニードル11を突く位置のバラつきを抑制することができる。その結果、セプタム911に既に形成されている穴にニードル11が沿うようにニードル11を挿入するができるので、セプタム911に形成される穴が拡がるのを抑制することができる。これにより、セプタム911の気密性が低下するのを抑制することができる。また、セプタム911が損傷してセプタム911のカスが生じるのを抑制することができるので、セプタム911のカスがニードル11の流路に入り込む等により分析対象に混入することに起因して、試料の分析結果に出所不明のピーク(ゴーストピーク)が生じるのを抑制することができる。また、制御部23を、ニードル11の先端11bがセプタム911の位置P3に到達してからセプタム911を貫通するまでの移動速度が高速の第1移動速度になるように、シリンジ駆動部21を制御するように構成する。これにより、貫通動作において、低速の第2移動速度が継続される場合と比較して、ニードル11がセプタム911を貫通する時間が長くなるのを抑制することができるので、試料の分析に要する処理時間が長くなるのを抑制することができる。また、ニードル11の先端がセプタム911のP3よりも深い位置において高速で移動することにより、ニードル11がセプタム911の内部の深くまで留まっている時間を短くすることができるので、セプタム911の気密性が低下するのを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、制御部23を、貫通動作において、ニードル11の先端11bがセプタム911の位置P3に到達してからセプタム911を貫通するまでの移動速度が第1移動速度になるとともに、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触してからセプタム911の位置P3に到達するまでの移動速度が第2移動速度になるように、シリンジ駆動部21を制御するように構成する。これにより、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触した後もセプタム911の位置P3に到達するまでは低速の第2移動速度となるので、セプタム911に既に形成されている穴にニードル11が確実に沿うことにより、ニードル11を突く位置のバラつきを確実に抑制することができる。また、低速の第2移動速度の間は、ニードル11とセプタム911との間に生じる摩擦熱が大きくなるのを抑制することができるので、ニードル11の先端がセプタム911に接触する時点のみ移動速度が低速の場合と比較して、セプタム911が熱変成するのを抑制することができる。その結果、セプタム911が損傷してセプタム911のカスが生じるのをより抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、制御部23を、貫通動作おいて、ニードル11の先端11bがセプタム911の位置P3に到達してからセプタム911を貫通するまでの第1移動速度が徐々に大きくなるようにシリンジ駆動部21を制御するように構成する。これにより、第1移動速度が一定の場合と比較して、ニードル11がセプタム911を貫通する時間が長くなるのをより抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、制御部23を、貫通動作の繰り返し回数が増加するにしたがって、セプタム911の表面911aから所定の深さ位置P3までの距離Lが徐々に小さくなるようにシリンジ駆動部21を制御するように構成する。これにより、セプタム911の気密性の低下に応じて、セプタム911の表面911aから位置P3までの距離Lが小さくなるように変化させることができるので、セプタム911の気密性が低下するのを確実に抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、制御部23を、貫通動作により試料導入部910の内部に侵入したニードル11を貫通動作とは反対側に移動させてセプタム911から抜き取る抜き取り動作における移動速度が、貫通動作における移動速度よりも大きくなるようにシリンジ駆動部21を制御するように構成する。これにより、ニードル11をセプタム911から抜き取る抜き取り動作における移動速度を比較的大きくすることができるので、ニードル11の先端がガスクロマトグラフ装置900の試料導入部910の内部において留まる時間を短くすることができる。その結果、試料を気化するために高温・高圧となっている試料導入部910の内部においてニードル11の流路11a内に滞留する試料が気化して試料導入部910に侵入することを抑制することができるので、分析の正確性が損なわれるのを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、シリンジ駆動部21を、パルス電力に同期して動作するパルスモータ21aを含むように構成する。また、制御部23を、貫通動作において、ニードル11の先端11bがセプタム911の位置P3に到達してからセプタム911を貫通するまでの移動速度が第1移動速度になるとともに、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触する時点の移動速度が第2移動速度になるように、パルスモータ21aを制御するように構成する。これにより、大きな負荷が生じることにより脱調する(同期が乱れる)場合があるパルスモータを、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触する瞬間にニードル11が設けられたシリンジ10に大きな負荷がかかるのを抑制しながら効果的に用いることができる。
【0048】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0049】
たとえば、上記実施形態では、シリンジ駆動部21を、パルスモータ21aを含むように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シリンジ駆動部21を、たとえばサーボモータ等のパルスモータ以外のモータを含むように構成してもよい。たとえば、
【0050】
また、上記実施形態では、貫通動作において、ニードル11の先端11bがセプタム911の位置P3に到達してからセプタム911を貫通するまでの第1移動速度が徐々に大きくなるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ニードル11の先端11bがセプタム911の位置P3に到達してからセプタム911を貫通するまでの第1移動速度を、ある程度まで大きくした後、一定となるように構成してもよい。また、第1移動速度を、ある程度まで大きくした後、第2移動速度より小さくならない程度に、小さくなるように構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、貫通動作において、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触してからセプタム911の位置P3に到達するまでの移動速度が一定の移動速度Vaとなるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触してからセプタム911の位置P3に到達するまでの移動速度が移動速度Vaから変化するように構成してもよい。たとえば、ニードル11の先端11bがセプタム911に侵入してから、移動速度を移動速度Vaよりも大きくなるように加速させてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、貫通動作において、位置P1からシリンジ10の移動を開始して最初に加速した後は、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触するまで一定の移動速度Vaとなるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触するまでは、移動速度Va以外の移動速度となるように構成してもよい。たとえば、移動速度Vaよりも大きい移動速度とすることにより、ニードル11の先端11bがセプタム911に接触するまでの時間を短縮させるようにしてもよい。