特許第6838704号(P6838704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838704
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/13 20060101AFI20210222BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20210222BHJP
   A01D 34/68 20060101ALI20210222BHJP
   A01D 75/20 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B60R21/13 Z
   A01D34/64 Z
   A01D34/64 H
   A01D34/68 K
   A01D75/20 Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-41220(P2017-41220)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-144626(P2018-144626A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078031
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 皓一
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】北原 右裕
(72)【発明者】
【氏名】栗田 和幸
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−207697(JP,A)
【文献】 特開2005−247141(JP,A)
【文献】 実開平05−092001(JP,U)
【文献】 特開2002−274214(JP,A)
【文献】 特開2007−228852(JP,A)
【文献】 特開平08−216924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00−21/38
A01D 34/00−34/90
A01D 75/00−75/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の運転操縦席の後方に配設され、立設姿勢と収容姿勢とを切替えることによって上下方向高さを調節可能とした安全フレームと、
前記安全フレームの立設姿勢及び収容姿勢を検出する安全フレームセンサと、
作業者に情報を報知する報知手段と、
前記安全フレームセンサの検出情報を取得し、前記報知手段を含む機器の作動を制御する制御部とを備える作業車両であって、
運転操縦席のシートベルトの着脱状態を検出するシートベルトセンサを備え、
前記報知手段は、運転操縦席の前方に配設された表示装置と、前記制御部の制御によって警報を出力する音響出力手段とを備え、また、
前記音響出力手段による警報の出力の有効状態/無効状態を切替える切替スイッチを備え、
前記制御部は、前記安全フレームが収容姿勢である場合、前記表示装置に注意喚起表示を表示させ、さらに、前記音響出力手段に警報を出力させるよう構成され、
また、前記制御部は、前記シートベルトセンサから検出情報を取得する構成とし、
警報の出力が無効状態のとき、前記安全フレームが収容姿勢である場合であっても、前記音響出力手段から警報が出力されないよう制御するとともに、警報の出力が無効状態であっても、前記安全フレームが収容姿勢であり、かつ、シートベルトが着用状態である場合には、前記音響出力手段から警報が出力されるよう制御することを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者を保護するための安全フレームを備えた作業車両に関するものであり、例えば、草刈り作業が行える乗用型草刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の作業車両として、門型に形成した安全フレームを運転操縦席の後方に設け、これを立設姿勢と収容姿勢とに切替え可能としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この安全フレームは、安全フレームが立ち上げられた状態である立設姿勢のときは、その上端が作業車両の最上位位置となるように構成されており、これによって、車高を上げ、作業車両の転倒や転落が生じた場合に、機体の回転を防止して、作業者が作業車両の下敷きになる等の不測の事態を防止する。さらに、この安全フレームは、折り畳まれることで収容姿勢に切替え可能に構成されている。この収容姿勢時においては、立設姿勢時よりも車高が下がるため、例えば、安全フレームが、樹木の幹回りでの作業時における張り出した枝との引っ掛かることを防止でき、また、車庫入れ時における障害物との接触を避けることができるといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−178635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、安全フレームを立設姿勢と収容姿勢とに切替え可能とすれば、上述のような利点により作業車両の利便性が高まるが、安全フレームを収容姿勢とすることが作業者にとって安全上好ましくない場合においても、作業者が安全フレームを収容姿勢として作業を行う場合が生じ得る。その結果、作業時における作業者の安全性が低下してしまうおそれがあった。
【0005】
したがって、本発明は、上記問題を鑑み、作業者の安全性をより向上するようにした作業車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的は、作業車両の運転操縦席の後方に配設され、立設姿勢と収容姿勢とを切替えることによって上下方向高さを調節可能とした安全フレームと、前記安全フレームの立設姿勢及び収容姿勢を検出する安全フレームセンサと、作業者に情報を報知する報知手段と、安全フレームセンサの検出情報を取得し、前記報知手段を含む機器の作動を制御する制御部とを備える作業車両であって、前記報知手段は、運転操縦席の前方に配設された表示装置を備え、前記制御部は、前記安全フレームが収容姿勢である場合、前記表示装置に注意喚起表示を表示させることを特徴とする作業車両によって達成される。
【0007】
本発明によれば、報知手段が、運転操縦席の前方に配設された表示装置を備え、かつ、制御部が、安全フレームが収容姿勢である場合、表示装置に注意喚起表示を表示させるように構成されているから、安全フレームが収容姿勢である場合、制御部により、報知手段である表示装置に注意喚起表示が表示される。これにより、作業者は、注意喚起表示によって、安全フレームが収容姿勢であることを視覚的に認識できるため、必要時以外における安全フレームの収容姿勢とした状態での作業が防止される。その結果、作業者の安全性が向上する。また、安全フレームが作業車両の運転操縦席の後方に配設されていると、作業者は安全フレームの姿勢を直接視認し難くなるが、表示装置が、運転操縦席の前方に配設されていることによって、作業者は容易に注意喚起表示を視認できるため、安全フレームの姿勢を容易に把握することができる。これにより、作業者の安全性がさらに向上する。
【0008】
本発明の好ましい実施態様においては、前記報知手段がさらに、前記制御部の制御によって警報を出力する音響出力手段を備え、前記制御部は、前記安全フレームが収容姿勢である場合、前記音響出力手段に警報を出力させるように構成されてある。
【0009】
本発明の好ましい実施態様によれば、報知手段がさらに、制御部の制御によって警報を出力する音響出力手段を備え、制御部は、安全フレームが収容姿勢である場合、音響出力手段から警報を出力するため、作業者が、表示装置に表示された注意喚起表示を看過した場合であっても、警報によって安全フレームが収容姿勢であることを確実に報知することができ、作業者の安全性をさらに向上できる。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、作業車両はさらに、運転操縦席のシートベルトの着脱状態を検出し、検出情報を前記制御部に出力するシートベルトセンサと、前記音響出力手段による警報の出力が有効か、無効かを切替える切替スイッチとを備え、前記制御部は、前記シートベルトセンサから検出情報を取得する構成とし、前記切替スイッチによって前記音響出力手段による警報の出力が無効とされている場合には、前記安全フレームが収容姿勢であっても、前記音響出力手段から警報が出力されないよう制御するとともに、前記切替スイッチによって前記音響出力手段による警報の出力が無効にされていても、前記安全フレームが収容姿勢であり、かつ、シートベルトが着用状態である場合には、前記音響出力手段から警報を出力するよう制御するように構成されている。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、作業車両はさらに、運転操縦席のシートベルトの着脱状態を検出し、検出情報を前記制御部に出力するシートベルトセンサと、音響出力手段による警報の出力が有効か、無効かの有効状態/無効状態を切替える切替スイッチとを備えているから、作業者は、安全フレームを収納姿勢としたことを認識した上で作業を行う場合に、警報の出力を無効として、警告の出力を停止できる。これにより、作業者が警報を不要と判断した場合は、切替スイッチの操作により警報の出力を停止できるため、作業車両の利便性が高まる。また、安全フレームが収容姿勢であり、かつ、作業者がシートベルトを着用状態である場合には、作業車両の転倒時等に作業者の回避行動が制限され安全上好ましくない状態であるため、警告の出力を無効とした状態であっても、音響出力手段が警告を出力するよう制御されることで、そのまま作業を行うことに対して作業者に注意喚起でき、安全上適切でない操作や行為が防止される。これにより、作業者の安全性をさらに向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安全フレームを収容姿勢とした状態での作業者の安全上適切でない操作や行為を防止し、作業者の安全性を向上することができる作業車両を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の好ましい実施の形態にかかる作業車両の全体側面図である。
図2】本発明の好ましい実施の形態にかかる安全装置の制御系、検出系、出力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
図3図2に示された安全装置における表示装置の説明図である。
図4図2に示された安全装置における制御部の基本動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施の形態にかかる作業車両につき詳細に説明を加える。
図1は、本発明の好ましい実施の形態にかかる作業車両1の全体側面図である。なお、以下においては、作業車両1が、乗用型草刈機である場合につき説明を加える。ここに、図1における作業車両1の進行方向を前方といい、その反対方向を後方という。また、進行方向を向いて、右側を右方といい、左側を左方という。
【0015】
この作業車両1は機体の前後に前輪2,2と後輪3,3を備え、機体後部のボンネット4内にエンジン5が搭載されている。
【0016】
エンジン5の回転動力は、油圧式無段変速装置等からなる変速装置を介して、適宜減速され、減速された回転動力は、機体左右の伝動ケース内に設けたチェン・スプロケット等の伝動部材により、後輪3,3に伝達され、機体が走行される。
【0017】
機体の前後進は、フロア6の右側前部に設けた前後進操作ペダル(図示せず)によって切替可能に構成されている。また、機体の前後中間部位に配置された操縦席7前方のステアリングハンドル8を回動操作されることによって、前輪2,2が操舵され、作業車両1の進行方向が操舵される。
【0018】
機体前部であって前輪2,2の前方には、草や芝を刈り取る回転刃(図示せず)を有するモアデッキ9が取り付けられている。また、作業車両1の機体後部には、モアデッキ9内で回転刃によって、刈り取られた刈草を収容するための集草容器10が設けられている。モアデッキ9と集草容器10は、刈草を搬送するための通路である草搬送通路11を介して連通しており、モアデッキ9で刈り取られた刈草は、草搬送通路11に設けられたブロワによって空気搬送されて、集草容器10へと収容される。
【0019】
PTOクラッチ16は、モアデッキ9内の回転刃に、エンジンの駆動力を動力伝達し、さらに、後述する制御部Cと電気的に接続されたPTOクラッチソレノイド16aによって、動力伝達を調節可能に構成されている。
【0020】
安全フレーム12は、運転操縦席7後方に配設されており、作業車両1の機体から上方に伸びるように立設された基部12aと、基部12aの上端に、折り畳み可能に連設された門型フレーム部12bとを備えている。
【0021】
門型フレーム部12bは、基部12aの上端に位置する支点X周りに回動可能に構成されており、作業者は、門型フレーム部12bを回動操作することによって、安全フレーム12を折り畳み、または、折り畳んだ状態から門型フレーム部12bを立ち上げて、立設姿勢及び収容姿勢を相互に切替えることができる。
【0022】
立設姿勢は、図1において、門前フレーム部12bが、実線で示されているように、基部12aから立ち上げられた状態である。このように、立設姿勢では、門前フレーム部12bの基部12aに連設されていない側の一端が、作業車両1の最上位位置となるように構成される。これによって、作業車両1の転倒や転落が生じた場合に、機体の回転を防止して、作業者が車両の下敷きになる等の不測の事態を防止する。
【0023】
収容姿勢は、図1において、門前フレーム部12bが、2点鎖線で示されているように、基部12aから折り畳まれた状態であり、門前フレーム部12bの、基部12aに連設されていない方の一端が、立設姿勢時における最上位位置から下方へと位置変更するように構成される。これにより、門型フレーム部12bは、立設姿勢と収容姿勢の切替操作によって、上下方向の高さが変更可能となっており、作業車両1の車高が変更可能となっている。また、図1に示されるように、安全フレーム12を収容姿勢とした場合、門型フレーム部12bが運転操縦席7側に折り畳まれることで、作業車両1の車高が下がるため、例えば、安全フレーム12が、樹木の幹回りでの作業時における張り出した枝との引っ掛かることを防止し、また、車庫入れ時における障害物との接触を避けることができるといった利点がある。
【0024】
また、門型フレーム部12bは、その中間部で屈曲して、基部12aに連設されている側の一端から他端に向けて前方に延びるように形成されており、これにより、運転操縦席7の上方を門型フレーム部12bが覆うようにして、作業者の上方を保護し、安全性をより高めるように構成されている。またこの構成によれば、門型フレーム部12bが、運転操縦席7側に向かって延びるように形成されていることにより、作業者が門型フレーム部12bを回動操作し易くなり、利便性が高まる。
【0025】
ここで、門型フレーム部12bは、門型フレーム部12bの基部12aに連設されている側の一端に、門型フレーム部12bと一体となり従動する位置決めディスク12cが取付けられており、安全フレーム12の立設姿勢時または収納姿勢時においては、この位置決めディスク12cに、位置決め固定ピン(図示せず)を差込装着することにより、門型フレーム部12bを固定する。ここで、位置決めディスク12cには、安全フレーム12の立設姿勢時に、下方に向かって突起するように形成された突起部が設けられている。ここで、安全フレームセンサ13は、この突起部の当接を検知する検知スイッチを有している。この検知スイッチは、基部12aに設けられ、作業者が、安全フレーム12の立設姿勢及び収納姿勢の切替えを行うと、門型フレーム部12aに従動して位置決めディスク12cが回動することで、この突起部が、立設姿勢時には検出スイッチに当接し、収納姿勢時には当接しない構成となっている。このようにして、安全フレームセンサ13は、検出スイッチへの突出部の当接の有無を検知することで、安全フレーム12の姿勢に関する情報を取得できる構成となっている。
【0026】
作業車両1は、安全フレームセンサ13等を含む検出系から検出情報を取得して、その検出情報に応じて、作業者に適切な作業を促すための安全装置Sを備えている。
【0027】
図2は、安全装置Sの本発明の好ましい実施の形態にかかる安全装置の制御系、検出系、出力系および駆動系のブロックダイアグラムである。安全装置Sは、制御部Cを備え、さらに、制御部Cの入力側には、シートベルトセンサ14と、安全フレームセンサ13及び傾斜センサ15及びブザー音解除スイッチ18とを備え、制御部Cの出力側には、報知手段である音響出力器19と、表示装置17と、PTOクラッチソレノイド16aを有するPTOクラッチ16とを備えている。
【0028】
制御部Cは、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理を行う処理部と、RAM(Random Access Memory)等の処理結果を記憶する記憶部と、情報を入出力する入出力部とを含んで構成されている。制御部Cは、処理部と記憶部と入出力部とが互いに接続され、互いに情報の受け渡しが可能である。制御部Cは、接続された機器を制御するコンピュータプログラムが記憶部に格納されている。これによって、安全装置Sは、入力側から情報を受け取り、制御部Cが取得した情報を処理し、その処理結果に応じて、出力側の機器の作動を制御する構成となっている。
【0029】
シートベルトセンサ14は、作業者のシートベルト着脱状態を検出するシートベルト着脱状態検出手段である。詳細には、シートベルトセンサ14は、運転操縦席7のシートベルト20のONN状態またはOFF状態を検知することにより、作業者のシートベルト20の着脱状態に関する検出情報を取得し、制御部Cにその検出情報を受け渡す。
【0030】
傾斜センサ15は、水平面に対する作業車両1の左右方向の傾斜角度θを検出するものである。傾斜センサ15は、作業車両1の適宜の位置に設けられる。傾斜センサ15は、作業車両1の機体の傾斜角度を情報として検出し、制御部Cにその検出情報を受け渡す。
【0031】
ブザー音解除スイッチ18は、後述する音響出力器19による警報の出力の有効状態/無効状態を、作業者の操作によって切替えるためのスイッチである。ここで、警報とは、作業者に注意喚起を行うために音響出力器19から出力されるブザー音や音声などの出力音全般をいう。制御部Cは、ブザー音解除スイッチ18の操作に関する情報を取得し、安全上特に必要な場合を除き、原則として、警報の出力が有効状態であるときに、所定の条件を満たすと、音響出力器19によって警報の出力を行い、警報の出力が無効状態であるときは、音響出力器19によって警報の出力を行うための所定の条件を満たしていても、警報の出力を停止するように構成する。これにより、例えば、作業者は、作業時以外の場合において、ブザー音解除スイッチ18の操作によって音響出力器19による警報の出力を無効とすることで、不必要な場合において警報が出力される煩わしさが解消される。なお、ブザー音解除スイッチ18は、表示装置17の適宜の位置に設けられる。
【0032】
音響出力器19は、音を出力可能な発音装置であり、音響出力手段として機能する。これによって、音響出力器19は作業者に聴覚的な情報を提供する。例えば、音響出力器19からブザー音等が出力されることにより、作業者に聴覚的に注意喚起できる。
【0033】
表示装置17は、運転操縦席7に着座した作業者に対向するように配置され、表示部分に情報を表示して視覚的な情報を作業者に提供するための装置である。
【0034】
図3は、図2に示された安全装置Sにおける表示装置17の説明図である。表示装置17は、情報の表示部分であるメータパネル17aを備える。メータパネル17aには、作業車両1の動作状態や、警告の有無等を表す複数の図形が表示されており、各図形にLEDが配置される。各図形に配置されたLEDは、制御部Cによって、点灯状態/消灯状態が制御可能に構成される。このメータパネル17a上に、注意喚起表示であるシートベルト警告ランプ17a、安全フレーム警告ランプ17aが設けられている。そして、所定の条件を満たすと、制御部Cが、シートベルト警告ランプ17a、安全フレーム警告ランプ17aを点灯制御することで、作業者に視覚的に注意喚起を行い、これにより、作業者の安全上適切でない操作や行為を防止する。
【0035】
図3に示されるように、メータパネル17aの下方には、ブザー音解除スイッチ18が設けられる。ブザー音解除スイッチ18は、作業者が、音響出力器19による音響出力を操作するためのスイッチである。
【0036】
図4は、制御部Cの基本動作を示すフローチャートである。エンジン5が稼働状態となると、制御部Cは以下の処理を行う。
(ステップS1)
制御部Cは、安全フレームセンサ12から検知情報を取得し、安全フレーム12が立設姿勢か収納姿勢かを判定する。安全フレーム12が立設姿勢であると判定した場合は、ステップS2に進み、安全フレーム12が収容姿勢であると判定した場合は、ステップS13に進む。
【0037】
(ステップS2)
制御部Cは、シートベルトセンサ14から検出情報を取得し、作業者がシートベルト20を着用しているかを判定する。シートベルト20が着用されていないと判定した場合は、ステップS3に進み、シートベルト20が着用されていると判定した場合は、ステップS8に進む。
【0038】
(ステップS3)
制御部Cは、表示装置17の安全フレーム警告ランプ17aを点灯する。
これによって、安全フレーム12が収納姿勢であることを作業者に視覚的に注意喚起する。この構成により、安全者は、安全フレーム12が収納姿勢であることを視覚的に認識できるため、作業者が作業時において安全フレームを立設姿勢とすることを失念していた場合に、安全フレームを立設姿勢とすることが促される。このことにより、安全上適切でない場合における安全フレーム12を収納姿勢としたままの作業を防止できるため、作業者の安全性が向上する。同時に、作業者に安全フレーム12を収納姿勢としたままの作業は危険であることを視覚的に認識させることができる。
【0039】
(ステップS4)
制御部Cは、表示装置17のシートベルト警告ランプ17aを点灯する。これによって、作業者に、シートベルト20を未着用としたままの作業の危険性について視覚的に認識させて注意喚起し、シートベルト20の着用を促す。その結果、作業者の安全性が向上する。
【0040】
(ステップS5)
制御部Cは、ブザー音解除スイッチ18の操作に関する情報を取得し、警報の出力が有効状態(OFF)/無効状態(ON)であるかを判定する。有効状態と判定した場合、ステップS7に進み、無効状態と判定した場合、ステップS6に進む。
【0041】
(ステップS6)
制御部Cは、傾斜センサ15から検出情報を取得して、作業車両1の左右方向の傾斜角度から作業者の安全性を判断する。すなわち、制御部Cは、傾斜センサ15から作業車両1の傾斜角度を取得することにより、傾斜地での作業であるか否かを判定する。傾斜地での作業においては、平地より作業車両1が不安定になりやすいため、作業者に安全作業を促す必要がある。そこで、制御部Cは、作業車両1の傾斜角度が、所定の角度以上である場合、傾斜地での作業であると判定し、ステップS6に進む。また、車両の傾斜が所定の角度よりも小さい場合は、傾斜地での作業でないと判定し、ステップS1に戻る。ここで、ステップS1に戻る場合は、警報の出力が無効状態となっているため、後述のステップS7における音響出力器19のブザー音出力による警告は行わない。これは、作業者が、作業時の状況によっては、安全フレーム12を収納姿勢として作業する場合も想定されるため、意図的にブザー音出力を解除できるようにしたものである。なお、上述の所定の角度は、例えば、15度に設定する。
【0042】
(ステップS7)
制御部Cは、音響出力器19からブザー音を出力して、作業者に注意喚起する。
すなわち、このステップS7では、安全フレーム12が収納姿勢であり、かつ、警報の出力が有効状態である場合に、制御部Cは音響出力器19からブザー音を出力するよう制御する。これによって、安全フレーム12を収納姿勢としたままでの作業は危険であることを作業者に聴覚的に注意喚起し、作業者の安全性が向上する。
【0043】
加えて、制御部Cは、安全フレーム12が収納姿勢であり、かつ、警報の出力が無効状態であるが、作業車両1が所定の傾斜角度以上である場合においても、このステップS7の処理によって、音響出力器19からブザー音を出力するよう構成されている。これは、作業車両1が不安定となりやすい傾斜地で作業を行う場合、作業者の安全確保のため、安全フレームを収容姿勢とした状態での作業は安全上好ましくないためである。つまり、傾斜地において、安全フレーム12を収納姿勢とした状態での作業は、平地よりも危険性が高まるため、作業者が、ブザー音解除スイッチ18の操作によって、警報の出力を無効状態とした場合であっても、音響出力器19からブザー音を出力して、作業者に危険性を報知するようにしたものである。この構成によって、例えば、作業者が、安全フレーム12を収納姿勢として、かつ、警報の出力を無効状態として作業をしていた場合であっても、作業車両1が所定以上の傾くと、音響出力器19からブザー音を出力されて、作業者に危険を報知し、作業者に安全フレーム12を立設姿勢とすることを促すことができる。その結果、作業者の安全性がさらに向上する。また、ブザー音の出力により、作業者が表示装置17の注意喚起表示を看過した場合であっても、危険性を聴覚的に認識させることができる。これによって、作業者の安全上適切でない操作や行為の防止が図られ、作業者の安全性を一層高めることができる。
【0044】
(ステップS8)
ステップS3と同様、制御部Cは、表示装置17の安全フレーム警告ランプ17aを点灯する。
【0045】
(ステップS9)
ステップS4と同様、制御部Cは、表示装置17のシートベルト警告ランプ17aを点灯する。
【0046】
(ステップS10)
ステップS5と同様、制御部Cは、ブザー音解除スイッチ18の操作に関する情報を取得し、警報の出力が有効状態(OFF)/無効状態(ON)であるかを判定する。有効状態と判定した場合、ステップS12に進み、無効状態と判定した場合、ステップS11に進む。
【0047】
(ステップS11)
ステップS6と同様、制御部Cは、傾斜センサ15から検出情報を取得し、作業車両1の左右方向の傾斜角度から作業者の安全性を判断する。制御部Cは、傾斜センサ15から取得した検出情報によって、作業車両1の傾斜角度が、所定の角度以上であると判定した場合、ステップS12に進み、車両の傾斜が所定の角度よりも小さいと判定した場合、ステップS1に戻る。
【0048】
(ステップS12)
ステップS7と同様、制御部Cは、音響出力器19からブザー音を出力するよう制御して、作業者に注意喚起する。ここで、作業者が、安全フレーム12を収納姿勢とし、かつ、シートベルト20を着用して作業した場合、作業車両1の転倒時等にシートベルト20が作業者の回避行動を制限するため危険性が増加する。そこで、ブザー音の出力によって、作業者に危険性を聴覚的に認識させ、安全フレーム12を立設姿勢とすることを促すことで作業者の安全性を高める構成となっている。
【0049】
(ステップS13)
制御部Cは、シートベルトセンサ14から検出情報を取得し、作業者がシートベルト20を着用しているかを判定する。シートベルト20が着用されていないと判定した場合、ステップS14に進む。ここで、シートベルト20が着用されていると判定した場合、ステップS13においては安全フレーム12も立設姿勢であるため、作業者の安全性が高い状態と判断されるから、最初のステップS1に戻る。
【0050】
(ステップS14)
ステップS4と同様、制御部Cは、表示装置17のシートベルト警告ランプ17aを点灯する。
【0051】
(ステップS15)
ステップS5と同様、制御部Cは、ブザー音解除スイッチ18の操作に関する情報を取得し、警報の出力が有効状態(OFF)/無効状態(ON)であるかを判定する。有効状態と判定した場合、ステップS17に進み、無効状態と判定した場合、ステップS16に進む。
【0052】
(ステップS16)
ステップS6と同様、制御部Cは、傾斜センサ15から検出情報を取得し、作業車両1の左右方向の傾斜角度を判定する。制御部Cは、作業車両1の傾斜角度が、所定の角度以上であると判定した場合、ステップS17に進み、車両の傾斜が所定の角度よりも小さいと判定した場合、ステップS1に戻る。
【0053】
(ステップS17)
ステップS7と同様、制御部Cは、音響出力器19からブザー音を出力するよう制御し、作業者に注意喚起する。これによって、作業者に、シートベルトを未着用としたままの作業の危険性について聴覚的に認識させ、シートベルトの着用を促す。これによって作業者の安全性が向上する。
【0054】
以上、制御部Cの基本動作について説明したが、さらに、条件に応じて、シートベルト警告ランプ17a1及び安全フレーム警告ランプ17a2の点灯パターンや音響出力器19によるブザー音の出力パターンを変更することで、より効果的に作業者に注意喚起できる。例えば、作業者にシートベルトの着用や安全フレーム12の立設姿勢への切替えについて、より強調して注意喚起したい場合、ランプを点滅するように構成する。図4に示される実施形態では、ステップS3及びステップS4においてランプが点灯され、ステップS8、ステップS9、ステップS14においては、ランプが点滅されるよう構成されている。このように作業者にとってより危険性が高い状況においては、ランプを点灯から点滅状態とすることで、作業者により強く注意喚起することができ、危険な状態を回避することを促すことができる。これにより、作業者の安全性がさらに向上する。
【0055】
また、シートベルト警告ランプ17a1及び安全フレーム警告ランプ17a2のブザー音については、音量や音の長短を変更することによって、作業者により直感的に危険性を認識させ、効果的に注意喚起することができる。例えば、ブザー音の音量については、作業者にとって、より危険性の高い状況ほど、音量を大きくして作業者に報知するとよい。具体的には、ブザー音の音量を、大、中、小の3段階に設定し、ステップS12、ステップS17、ステップS7の順にブザー音の音量を大きくする。ステップS12の音量を最も大きくする理由は、上述の通り、作業者が、安全フレーム12を収納姿勢とし、シートベルトを着用して作業した場合、作業車両1の転倒時等にシートベルトが作業者の回避行動を制限するため危険性が最も大きい状態と判断されるためである。また、ステップS12、ステップS17、ステップS7においてブザー音の連続音、断続音、音の長短を変更し、それぞれ他の状態と違う音の出力パターンとすることで、作業者は、聴覚から直感的に安全状態を判別できるため、作業者に安全作業を促すことができるとともに、利便性も向上する。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。例えば、以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態では、作業者に安全作業を促すため、作業車両1が所定の傾斜角度以上となると、音響出力器19がブザー音を発し、報知するように制御部Cを構成したが(ステップS7、ステップS12、ステップS17)、併せて、制御部CがPTOクラッチソレノイド16aを制御し、PTOクラッチ16の動力伝達を停止することで、作業者の安全性をより高める構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、音響出力器19からブザー音を出力するように構成したが、出力する音は、ブザー音に限られない。例えば、音響出力器19から音声を出力し、状況に応じて、より詳細に安全作業を指示する構成としてもよい。
(3)上記実施形態では、安全フレーム12は、上下方向に高さを変更可能とするために、立設姿勢と収容姿勢に切替える態様として、門型フレーム部12bを支点X周りに回動する構成としたが、安全フレーム12を立設姿勢と収容姿勢に切替える態様は、これに限られない。例えば、安全フレーム12は、基部12aに対して、門型フレーム部12bを上下にスライド可能に構成するとともに、所定位置で、位置決め固定ピンを差込装着して、上下方向の高さを変更可能とする構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 作業車両
2 前輪
3 後輪
4 ボンネット
5 エンジン
6 フロア
7 運転操縦席
8 ステアリングホイール
9 モアデッキ
10 集草容器
11 草搬送通路
12 安全フレーム
13 安全フレームセンサ
14 シートベルトセンサ
15 傾斜センサ
16 PTOクラッチ
16a PTOクラッチソレノイド
17 表示装置
17a メータパネル
17a シートベルト警告ランプ
17a 安全フレーム警告ランプ
18 ブザー音解除スイッチ
19 音響出力器
C 制御部
S 安全装置
図1
図2
図3
図4