特許第6838712号(P6838712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6838712眼の屈折異常の治療のための貯蔵安定な組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838712
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】眼の屈折異常の治療のための貯蔵安定な組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/439 20060101AFI20210222BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20210222BHJP
   A61K 31/4409 20060101ALI20210222BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20210222BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   A61K31/439
   A61K47/26
   A61K31/4409
   A61P27/10
   A61P43/00 121
【請求項の数】4
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-565154(P2017-565154)
(86)(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公表番号】特表2018-517738(P2018-517738A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】US2016036687
(87)【国際公開番号】WO2016205068
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】14/742,921
(32)【優先日】2015年6月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/742,903
(32)【優先日】2015年6月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516060727
【氏名又は名称】プレスバイオピア・セラピーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーン,ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ノーダン,リー
【審査官】 古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/031186(WO,A1)
【文献】 特表2018−517740(JP,A)
【文献】 米国特許第04474751(US,A)
【文献】 米国特許第06353022(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0310476(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61K 9/00− 9/72
A61P 1/00−43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.5%w/vから1.75%w/vのアセクリジンおよび2.5%w/vのマンニトールを含む、老視の治療のための眼科用組成物であって、w/vは、該組成物の総体積に基づく体積あたりの重量である、組成物。
【請求項2】
トロピカミドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1.75%w/vのアセクリジンおよび2.5%w/vのマンニトールを含む、老視の治療のための眼科用組成物であって、w/vは、該組成物の総体積に基づく体積あたりの重量である、組成物。
【請求項4】
トロピカミドをさらに含む、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
人間が年を取ると、遠見視力が矯正されているか遠見視力が裸眼で優れているならば、物体がはっきり見える眼からの最短距離は長くなる。例えば、10歳では、優れた遠見視力をまだ保持しながら、彼らの眼からわずか3インチ(0.072メートル)の「焦点」に;40歳では6インチ(0.15メートル)で;60歳では不便な39インチ(1.0メートル)で物体に焦点を合わせることができる。優れた裸眼の遠見視力を有する個人の長い最短焦点距離の状態は老視と呼ばれ、大まかに「老眼」と訳される。
【0002】
優れた裸眼の遠見視力は、正常視としても知られている。遠焦点に焦点を合わせることができないことは、近視として知られており、近焦点に焦点を合わせることができないことは、遠視として知られている。具体的には、「遠見」視力は、眼から1メートル以上の焦点と考えられ、近見視力は、眼から1メートル未満の焦点である。物体の焦点が合う最短焦点距離は、「近点」として知られている。遠点から近点への焦点およびその間における焦点の変化は、遠近調節と呼ばれる。遠近調節は、しばしばジオプターで測定される。ジオプターは、焦点距離(メートルで)の逆数を取ることによって算出される。例えば、10歳の眼から60歳の眼への遠近調節の減少は、約13ジオプター(1÷0.072メートル=13.89ジオプター;1÷1メートル=1ジオプター)である。
【0003】
老視の最初の愁訴の最も高い出現率は、42−44歳の人々に生じる。人間が年を取ると、近距離反射−瞳孔狭窄、眼の輻輳および特に毛様体筋収縮を使用する眼の遠近調節能力は減少するので、老視が生じる。遠近調節が低下する結果正常な肥厚が十分に変化せず、遠くの物体から近くの物体への焦点のシフトに必要である水晶体の前側表面が大きく湾曲する。老視によって影響された重要な近焦点の作業は、コンピュータースクリーンを見ること(21インチ)および活字を読むこと(16インチ)を含む。
【0004】
老視は、加齢の正常および不可避な影響であり、年を取った40代の多くの人にとって最初の紛れもない兆候である。1つの研究から、世界中で10億超の人々が2005年に老視であったことを見出した。この同じ研究は、その数が2050年までにほぼ二倍になると予測した。45歳を超えるあらゆる人が老視であると考えられるならば、合衆国だけで推定1億2200の人々が2010年に老視を有していた。団塊世代が更年期に達すると、この数は増加していくだけである。
【0005】
老視は、以前はほぼ瞬時にできた遠点と近点の両方で焦点を合わせることを必要とする多くの作業で迅速に機能する能力が制限されると起こる兆候を有する。老視患者において、これらの作業は、眼鏡、コンタクトレンズを使用することにより、または侵襲的外科手術を受けた後にのみ行うことが可能になる。1つのこうした光学的修正のモノビジョン法は、眼鏡、コンタクトレンズの使用または外科手術でも実行することができる。モノビジョン法は、一方の眼を近焦点のためにおよび他方の眼を遠焦点のために矯正する。しかしながら、モノビジョン矯正は、通常、奥行感覚および特に薄暗い光(例えば夜)における遠見視力のロスを伴う。老視を緩和するために開発された他の外科的処置としては、以下が挙げられる:(1)眼内レンズ(INTRACOR(登録商標);Technolas Perfect Vision GMBHの登録商標)の挿入;(2)角膜の再形成化(PresbyLASIKおよび伝導式角膜形成術);(3)強膜バンド拡張;および(4)角膜インレー(Flexivue Microlens(登録商標)の移植;PresbiBio LLCの登録商標、Kamra(登録商標);AcuFocus、Inc. and Vue+の登録商標)の挿入。AcuFocusによって製造されたKamra(登録商標)角膜インレーは、焦点深度を高めるために角膜上にピンホールをはめ込むことによって働く。同様の効果は、ピロカルピン(非選択的ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニスト)、カルバコール(非選択的ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニスト)およびヨウ化ホスホリン(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)のような一般の縮瞳剤を用いて達成することができる。これらの一般の縮瞳剤は、毛様体筋収縮の増加をトリガーし、残存する予備の遠近調節を誘発して、一部の遠近調節機能をまだ保持する個人において遠見視力を犠牲にして近見視力を改善する。これらの一般の縮瞳剤は、瞳孔収縮(即ち、狭窄)その上、遠近調節が生じる程度に、によって起こるピンホール効果により焦点深度を調節が生じる程度まで改善させる一方で、ピンホール効果は、遠見に対して遠近調節近視の誘発を部分的にのみ相殺する。ピロカルピンまたはカルバコールを用いるような一部の場合において、遠近調節の誘発は、最大5ジオプター以上の誘発性近視を生じさせる可能性があり、これにより通常および遠見から近見への焦点を移す間に、ぼやけた遠見視力が生じる。これらの一般の縮瞳剤は、その上、充血、重度の鼻閉を引き起こし、毛様体筋痙攣を生じさせ、このことは通常、重度および持続性であり得る不快感を誘発する。極端な場合において、こうした毛様体筋痙攣により網膜剥離を引き起こす。
【0006】
縮瞳剤は、老視の治療のために様々な特許および特許出願に記載されている。米国特許第6,291,466号および同第6,410,544号は、毛様体筋の収縮を調節することで眼をその静止状態に回復するとともにその遠近調節能力を潜在的に回復するためのピロカルピンの使用を記載している。
【0007】
米国特許出願公開第2010/0016395号は、毛様体痙攣に由来する眼窩上縁の痛みを軽減するとともに毛様体筋収縮が調節される時間を延ばすために、非ステロイド性抗炎症ジクロフェナクとともにピロカルピンの使用を記載している。国際公開第2013/041967号は、老視のような眼球症状を一時的に克服するために、オキシメタゾリンまたはメロキシカムとともにピロカルピンの使用を記載している。
【0008】
米国特許第8,299,079号(HEK Development LLC)は、0.05%w/vから3.0%w/vの濃度の、ブリモニジンとともにピロカルピン、カルバコールおよびヨウ化ホスホリンのような直接作用型の一般の縮瞳剤の使用を記載している。しかしながら、0.05%w/v以上でのブリモニジン濃度の使用は、リバウンド充血の増加をもたらす。例えば、リバウンド充血は、1日2回ブリモニジン0.20%w/v(Alphagan(登録商標)、Allergan、Inc.の登録商標)を使用する患者の25%に生じる。
【0009】
老視のための縮瞳治療でのこれらの試みは全て、遠見視力をほぼ法的盲まで減少させる数ジオプターの一過性近視を引き起こし、または改善された近見視力を犠牲にして典型的には数時間持続するその最大作用時間を悪化させる。
【0010】
さらに、アセクリジンは溶液で不安定である。通常、アセクリジンは2瓶システムで貯蔵され;1つの瓶は凍結乾燥アセクリジンを含有し、第2の瓶は、局所的点眼の前に凍結乾燥アセクリジンを再構成するのに必要な希釈剤を含有する。この2容器システムは、不適切な再構成のリスクおよびそのため老視の不適切な治療を課す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,291,466号明細書
【特許文献2】米国特許第6,410,544号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0016395号明細書
【特許文献4】国際公開第2013/041967号
【特許文献5】米国特許第8,299,079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、当技術分野において、少ない副作用で非侵襲的および便利な老視の治療の必要がある。詳細には、老視を患う人間が、遠見視力の低下、霧視、疼痛、充血、夜間運転能力の低下または暗所視力の無能化、鼻閉の誘発、または網膜剥離のリスクのような重篤な副作用がなく近くの物体に焦点を合わせることを可能にする眼科用組成物の必要がある。さらに、当技術分野において、貯蔵安定なアセクリジン組成物の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
ある特定の実施形態において、本発明は、老視の治療のための組成物および方法を対象とする。
【0014】
ある特定の実施形態において、本発明は、ムスカリン性アゴニストを含む、老視の治療のための組成物および方法であって、ムスカリン性アゴニストは、M1およびM3ムスカリン性アセチルコリン受容体を優先的に活性化する、組成物および方法を対象とする。さらにより好ましい実施形態において、ムスカリン性アゴニストは、M3よりもM1に対して、より高度に選択的である。ある特定の実施形態において、本発明は、M1およびM3ムスカリン性アセチルコリン受容体を優先的に活性化するムスカリン性アゴニストを含む、老視の治療のための組成物および方法を対象とする。
【0015】
ある特定の実施形態において、本発明は、アセクリジン、タルサクリジン、サブコメリン、セビメリン、WAY−132983、AFB267B(NGX267)、AC−42、AC−260584、77−LH−28−1およびLY593039、またはその薬学的に許容される塩、エステル、類似体、プロドラッグもしくは誘導体からなる群から選択されるムスカリン性アゴニストを含む、老視の治療のための組成物および方法を対象とする。
【0016】
ある特定の実施形態において、本発明は、M1ムスカリン性アセチルコリン受容体だけを活性化するムスカリン性アゴニストを含む、老視の治療のための組成物および方法を対象とする。
【0017】
ある特定の他の実施形態において、本発明は、アセクリジンを含む、老視の治療のための眼科用組成物を対象とする。
【0018】
ある特定の他の実施形態において、本発明は、アセクリジンおよび毛様体筋麻痺剤を含む、老視の治療のための眼科用組成物を対象とする。
【0019】
ある特定の他の実施形態において、本発明は、アセクリジンおよび選択的α−2アドレナリン作動性受容体アゴニストを含む、老視の治療のための眼科用組成物を対象とする。
【0020】
ある特定の他の実施形態において、本発明は、アセクリジン、毛様体筋麻痺剤および選択的α−2アドレナリン作動性受容体アゴニストを含む、老視の治療のための眼科用組成物を対象とする。
【0021】
ある特定の他の実施形態において、本発明は、一般の縮瞳剤および毛様体筋麻痺剤を含む、老視の治療のための眼科用組成物を対象とする。
【0022】
ある特定の他の実施形態において、本発明は、
一般の縮瞳剤、ムスカリン性アゴニストまたはアセクリジン;
任意選択的に、毛様体筋麻痺剤;
任意選択的に、選択的α−2アドレナリン作動性受容体アゴニスト;
粘度増強剤;ならびに
アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびこれらの組合せからなる群から選択される界面活性剤
を含む、本発明の眼科用組成物を対象とする。
【0023】
一実施形態において、本発明は、
約0.25%w/vから約2.0%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.025%w/vから約0.1%w/vの濃度の、好ましくはピレンゼピン、トロピカミド、塩酸シクロペントレート、4−ジフェニルアセトキシ−N−メチルピペリジンメチオジド(4−DAMP)、AF−DX384、メトクトラミン、トリピトラミン、ダリフェナシン、ソリフェナシン、トルテロジン、オキシブチニン、イプラトロピウム、オキシトロピウム、チオトロピウム、オテンゼパドおよびこれらの組合せから選択される毛様体筋麻痺剤、より好ましくはトロピカミド;
好ましくはステアリン酸ポリオキシル40、ガンマシクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムエステル、ポロキサマー、ポリソルベート、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシルアルキル、シクロデキストリンおよびこれらの組合せから選択される界面活性剤、より好ましくはステアリン酸ポリオキシル40;
好ましくはマンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリンおよびこれらの組合せから選択される張度調整剤、より好ましくはマンニトール;ならびに
任意選択的に、粘度増強剤、好ましくは多糖類ではない粘度増強剤
を含む、老視の治療のための眼科用組成物を対象とする。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、
約0.25%w/vから約2.0%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.025%w/vから約0.1%w/vの濃度の毛様体筋麻痺剤;
界面活性剤;
張度調整剤;ならびに
グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー、キサンタンガム、アルギネート、キトサン、ゲルライト、ヒアルロン酸、デキストランおよびカルボマーからなる群から選択される粘度増強剤、好ましくは、粘度が局所導入の前に約1センチポイズから約5,000センチポイズ(「cps」)および局所導入で約1cpsから約50cps、好ましくは約2℃から約8℃で約1cpsから約5,000cpsであるカルボマー934またはカルボマー940、ならびにシトレート、クエン酸一水和物エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸二カルシウムおよびこれらの組合せから選択される抗酸化剤、好ましくはクエン酸一水和物から選択される1種以上の賦形剤
を含む、老視の治療のための眼科用組成物を対象とする。
【0025】
好ましい実施形態において、本発明は、
約0.25%w/vから約2.0%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.025%w/vから約0.1%w/vの濃度のトロピカミド;
約2.0%w/vから約10.0%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約0.5%w/vから約6.0%w/vの濃度のマンニトール;
約3ミリモルの濃度の、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびシトロリン酸緩衝液から選択される緩衝液;
任意選択的に、約0.1%w/vから約0.2%w/vの濃度のクエン酸一水和物;
任意選択的に、約0.01%w/vから約1.0%w/vの濃度のカルボマー934およびカルボマー940から選択される粘度増強剤;ならびに
任意選択的に、約0.02%w/vの濃度の塩化ベンザルコニウム(「BAK」)
含む、老視の治療のための眼科用組成物であって、
組成物のpHは約4.75から約5.0であり、組成物の粘度は局所導入で約1cpsから約50cpsである、眼科用組成物を対象とする。
【0026】
別の好ましい実施形態において、本発明は、
約0.25%w/vから約2.0%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.025%w/vから約0.1%w/vの濃度のトロピカミド;
約4.0%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約0.5%w/vから約6.0%w/vの濃度のマンニトール;
約0.1%w/vから約0.2%w/vの濃度のクエン酸一水和物;
約0.01%w/vから約1.0%w/vの濃度のカルボマー934、ならびに
約3ミリモルの濃度の、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびシトロリン酸緩衝液から選択される緩衝液
を含む、老視の治療のための眼科用組成物であって、
組成物のpHは約4.75であり、組成物の粘度は、約2℃から約8℃で約1cpsから約5,000cpsである、眼科用組成物を対象とする。
【0027】
別の好ましい実施形態において、本発明は、
約0.25%w/vから約2.0%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.025%w/vから約0.1%w/vの濃度のトロピカミド;
約5.5%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約4.0%w/vの濃度のマンニトール;ならびに
約3ミリモルの濃度の、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびシトロリン酸緩衝液から選択される緩衝液
を含む、老視の治療のための眼科用組成物であって、
組成物のpHは約5.0である、眼科用組成物を対象とする。
【0028】
別の好ましい実施形態において、本発明は、
約0.25%w/vから約2.0%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.025%w/vから約0.1%w/vの濃度のトロピカミド;
約5.5%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約0.5%w/vから約6%w/vの濃度のマンニトール;
約0.1%w/vから約0.2%w/vの濃度のクエン酸一水和物;
約0.01%w/vから約1.0%w/vの濃度のカルボマー940、ならびに
約3ミリモルの濃度の、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびシトロリン酸緩衝液から選択される緩衝液
を含む、老視の治療のための眼科用組成物であって、
組成物のpHは約4.75から約5.0であり、組成物の粘度は、約2℃から約8℃で約1cpsから約5,000cpsである。上記処方物の一部の好ましい実施形態において、アセクリジン濃度は約1.35%w/vから約1.75%w/vであり、マンニトール濃度は約1.0%w/vから2.5%w/vであり、カルボマー940濃度は約0.09%w/vから1.0%w/vである(またはカルボマー934のような他の非多糖類粘性剤を使用する同等の粘度)、眼科用組成物を対象とする。
【0029】
それを必要とする対象における眼の屈折異常を治療する方法は、薬学的に許容される量の本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み、眼の屈折異常は、老視、近視、遠視、乱視またはこれらの組合せから選択される。
【0030】
本発明は、本発明の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、老視を治療するための方法をさらに対象とする。
【0031】
眼の屈折異常を治療するための方法は、薬学的に許容される量の本発明の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、瞳孔のサイズは、約1.5ミリメートルから約2.5ミリメートル、好ましくは約1.7ミリメートルから約2.0ミリメートルに低下し、屈折異常は、角膜不正乱視、拡張症誘発角膜不正、ペルーシド誘発角膜不正、高次収差および屈折外科手術誘発高次収差からなる群から選択される。
【0032】
本発明は、さらに薬学的に有効な量の本発明の眼科用組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、被写界深度(即ち、焦点深度)を向上させる方法を対象とする。
【0033】
本発明は、両方の眼(両眼視)に薬学的に有効な量の本発明の眼科用組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、裸眼の近見視力を改善して奥行感覚を向上させる方法をさらに対象とし、こうした両眼性は、別々に片方の眼の近見視力を超えて近見視力をさらに増強する。
【0034】
本発明は、薬学的に有効な量の本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、屈折異常(視覚異常)を有する対象における視覚を改善する方法をさらに対象とする。
【0035】
本発明は、薬学的に有効な量の本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、屈折異常を有する対象における視覚を改善する方法に関し、屈折異常は、近眼、遠眼、正乱視、不正乱視および高度の正乱視からなる群から選択される。
【0036】
本発明は、中心1.5mmの光学ゾーンに隣接するまたは周辺の領域を含む、角膜不正(乱視)、混濁または非常に高度の正乱視によって誘発される光学収差を除くこと、ならびにこれによって、円錐角膜、光屈折角膜切除誘発角膜濁り、層間角膜炎(「DLK」)(レーシック後DLK)、例えば白内障切開、緑内障濾過ブレブ、移植緑内障バルブ、除去の有無における角膜インレー、角膜手術(レーシック)後のおよび感染症による角膜拡張症のような他の医原性誘発角膜不正のような状態に生じるような不正乱視、またはより高度の正乱視を患う人々におけるこれらの収差視覚性を濾去することによる、視力および視覚の質の改善を誘発することにさらに関する。
【0037】
本発明は、現存の矯正されていない屈折異常に相対して視力を改善することにさらに関する。この改善された視力で、瞬きのたびに回転する恐れがある、快適性および視覚性の低下を有する乱視用のトーリックコンタクトレンズを現在必要とする患者は、多くの場合、非トーリックソフトコンタクトレンズだけを必要とするまたはコンタクトレンズを必要としなくてよい。さらに、酸素透過性コンタクトレンズを必要とする人々は、コンタクトレンズをもはや必要としないまたはずっと快適なソフトコンタクトレンズを必要とするだけでよい。高度の乱視を有する患者は、現在、矯正を必要としないまたは乱視矯正をしなくて済む。軽度から中程度の近眼を有する患者は、矯正をあまり必要としないまたは矯正をもはや必要としなくてよい。軽度から中程度遠視(遠眼)を有する患者は、矯正を必要としないまたは矯正をしなくて済む。
【0038】
本発明は、視界を改善するための方法および眼科用組成物を対象とする。好ましい実施形態において、本発明は、老視の治療のための方法および眼科用組成物を対象とする。より好ましい実施形態において、本発明は、アセクリジンを含む眼科用組成物を対象とする。さらにより好ましい実施形態において、本発明は、アセクリジンおよび低用量の毛様体筋麻痺剤を含む眼科用組成物を対象とする。最も好ましい実施形態において、本発明は、アセクリジン、低用量の毛様体筋麻痺剤、ならびにアセクリジンを有効にしおよび/または強化しり不活性成分の組合せを含む眼科用組成物を対象とする。
【0039】
本発明は、約2℃から約8℃の温度で組成物を維持することを含む、請求項1に記載の組成物を安定化するための方法をさらに対象とする。
【0040】
本発明は、水性アセクリジン組成物を安定化するための方法であって、
組成物に、ステアリン酸ポリオキシル40、ガンマシクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムエステル、ポロキサマー、ポリソルベート、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシルアルキル、シクロデキストリンおよびこれらの組合せから選択される界面活性剤、好ましくはステアリン酸ポリオキシル40を添加するステップ;
マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリンおよびこれらの組合せから選択される張度調整剤、好ましくはマンニトールを添加するステップ;
任意選択的に、組成物に、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー、キサンタンガム、アルギネート、キトサン、ゲルライト、ヒアルロン酸、デキストラン、カルボマーおよびこれらの組合せからなる群から選択される粘度増強剤、好ましくはカルボマー940を添加するステップ、
組成物のpHを約4.0から約6.0、好ましくは4.75に緩衝するステップ;ならびに
組成物を約2℃から約8℃の温度で維持するステップ
を含む、方法をさらに対象とする。
【0041】
本発明は、水性アセクリジン組成物を安定化するための方法であって、
ステアリン酸ポリオキシル40を添加するステップ、
マンニトールを添加するステップ;
カルボマー940を添加するステップ、
組成物のpHを4.75に緩衝するステップ;および
組成物を約2℃から約8℃の温度で維持するステップ
を含む、方法をさらに対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】45歳を超える患者における近見および遠見視力に対する、トロピカミドの有無におけるおよび担体の有無における、ピロカルピンおよびアセクリジンの効果のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の詳細な記載
本発明は、M1およびM3ムスカリン性アセチルコリン受容体を優先的に活性化する、好ましくはM3よりもM1を活性化するムスカリン性アゴニスト、最も好ましくはアセクリジンまたはその誘導体を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、老視、不正乱視および/または屈折異常を治療する組成物および方法を対象とする。アセクリジンは、驚くべきことにおよび予想外にも、本発明の組成物を使用して、昼間または夜間(見る時に1つ以上の直接光源または反射光源が含まれる。)に無視できる副作用で老視逆転の増強を提供することが発見された。
【0044】
アセクリジンは、緑内障のための治療として伝統的に使用されている。緑内障を治療するためにアセクリジンが使用される場合、それは以下の2瓶システムで通常貯蔵される;1つの瓶は凍結乾燥アセクリジンを含有し、第2の瓶は、局所的点眼の前に凍結乾燥アセクリジンを再構成するのに必要な希釈剤を含有する。Romano J.H.、Double−blind cross−over comparison of aceclidine and pilocarpine in open−angle glaucoma、Brit J Ophthal、1970年8月、54(8)、510−521。コールドチェーン貯蔵との組合せで安定である水性アセクリジン組成物を提供することは、本発明のさらなる態様である。有効な賦形剤、pH範囲および温度範囲を組み合わせることによって水性アセクリジンを安定化する方法を提供することは、本発明のなおさらなる態様である。
【0045】
本発明の組成物および方法は、暗所または薄暗い光の中での瞳孔散大を低下する、遠近調節を用いずに縮瞳の特別な程度および持続期間を生み出す、増白を提供するおよび/または充血予防を誘発する眼科用組成物を眼に投与することによって、老視を有する患者における焦点深度を改善することにより老視を治療する。本発明の組成物および方法は、その上、著しい瞳孔リバウンド、タキフィラキシー、毛様体痙攣、近視の誘発または遠見視力の低下を引き起こさない。追加として、本発明の組成物および方法は、両眼(両方の眼)治療の視力および奥行感覚におけるさらなる改善を可能にする。本発明の眼科用組成物は、驚くべきことに、遠近調節緊張の無視できる増加で、およびそうでなければ縮瞳剤の使用の顕著な特徴である充血の低下または消失で、虹彩前面にて約1.5mmから約2.4mmおよび角膜表面にて約2.0mmの瞳孔を生じさせる。大きく減退されたまたは存在しない遠近調節緊張でのこの瞳孔収縮は、Kamra(登録商標)およびFlexivue Microlens(登録商標)角膜インレーのピンホール効果より優れている。瞳孔収縮が優れているのは、実際の瞳孔の狭窄が、インレーによって生じられた前角膜ピンホールの光散乱境界によって引き起こされる付随の重度夜間視力障害をもたらさないからである。さらに、瞳孔収縮は、より大きな視野およびより集中的な光の伝達を提供する。アセクリジンの使用は、縦走毛様体筋に対して最小の効果を有しており、したがって、ピロカルピンおよびカルバコールのような一般のムスカリン性アゴニストの使用と比較した場合、網膜剥離のリスクを低下する。毛様体筋麻痺剤のさらなる包含は、たった0.04mmの前眼房の浅化をもたらした。特に本発明のために増強された場合のアセクリジンは、その上、最短瞳孔径のより大きい規模、持続期間および制御を有する。本発明の組成物は、遠近調節に対して無視できる効果を有しながらこれらの利点を達成し、したがって、ピロカルピンおよび/またはカルバコール誘発縮瞳への応答として患者において典型的に見られる遠見ぼやけを回避する。遠近調節に対する効果は、毛様体筋麻痺剤を用いる好ましい実施形態において、さらに低下または全体的に除くことができる。アセクリジンは、選択的α−2アドレナリン作動性受容体アゴニスト(「α−2アゴニスト」)を必要とせず、本発明に記載されている瞳孔収縮によって向上した焦点深度を生み出せる。特に高い縮瞳は、本発明の組成物の使用で生じ、したがって、α−2アゴニストを低い濃度で使用することで眼の充血を減らすことを可能にする。さらに、アセクリジンの明らかなおよび驚くべき選択性により、眼への投与は、毛様体筋収縮よりもむしろ瞳孔収縮にほぼ独占的に影響する。したがって、アセクリジンの投与は、遠近調節および付随の遠見ぼやけがなく瞳孔収縮をもたらす。しかしながら、アセクリジンは、若干の充血および眼窩上縁の痛みを引き起こすことがあり、本発明の処方を強化することなく、最適未満の瞳孔収縮を、または極めて高い濃度で、薄暗い照明もしくは照明が存在しない中で目のかすみを伴うより多くの所望のピーク縮瞳を生み出すことがある。
【0046】
本発明のある特定の実施形態は、非イオン性界面活性剤および粘度増強剤の好ましい実施形態を使用する大部分の患者のために、約1.50−2.20mmの一定の範囲の効果を提供することによって、好ましい程度の瞳孔収縮を強化する。同様の利益は、他の浸透増強剤、特にカーボポール(Carbopol)(登録商標)(ポリアクリル酸またはカルボマー)、ならびにキサンタンガム、グアーガム、アルギネートおよび他の当技術分野における専門家によく知られているインサイチュゲルのような、薬物残留時間を延長させる様々な粘性添加剤を使用して達成することができる。本発明は、さらに、好ましい実施形態のレオロジー特性により、大量のアセクリジンレベルが鼻粘膜に達する時に生じる鼻閉を予防する。
【0047】
アセクリジン、および低い濃度の、ファドルミジン、ブリモニジンまたはグアンファシンのような選択的α−2アドレナリン作動性受容体アゴニスト(α−2アゴニストまたはα−2アドレナリン作動性アゴニスト)の組合せは、充血が減退されたまたは充血がなく、所望の縮瞳効果を可能にする。低い濃度の選択的α−2アゴニストの使用は、充血の実質的な低下をもたらし、約0.06%w/v以上の濃度に見出されるリバウンド充血のリスクが大きく低下する。さらに、低い濃度の選択的α−2アゴニストの使用は、アセクリジンによって引き起こされた瞳孔狭窄を有害に変異させない。対照的に、ブリモニジン0.20%w/vの使用は、夜間視力のための瞳孔調節に局所適用された場合、使用の4週内に治療対象のほぼ100%において、α−2受容体上方調節による瞳孔調節のタキフィラキシーをもたらす。
【0048】
予想外にも、毛様体筋麻痺剤の添加は、縮瞳応答を欠損することなく局所的点眼で毛様体痙攣の程度をさらに低下することによって、眼窩上縁の痛みまたは関連不快感の低下をもたらす。トロピカミドのような特別な毛様体筋麻痺剤は、0.01%w/vほども低い濃度で公知の瞳孔散大効果を有するので、縮瞳応答の欠損というこの欠如は予想外の驚くべき発見である(Grunberger J.ら、The pupillary response test as a method to differentiate various types of dementia、Neuropsychiatr、2009、23(1)、pg57)。より具体的には、毛様体筋麻痺剤は、瞳孔散瞳(即ち、虹彩の放射状筋の散大)を引き起こす。さらに、縮瞳剤への毛様体筋麻痺剤の添加は、予想外にも、制限されすぎることなく瞳孔が所望のサイズ範囲を維持する時間が長くなる。30−60分でのピーク縮瞳効果は、毛様体筋麻痺薬濃度に反比例して滴定することができる。本発明において発見されたトロピカミドの濃度は、明らかに、虹彩放射状筋系よりも毛様体筋の弛緩をより多く引き起こす。実際に、虹彩散瞳は、本発明において使用される濃度のアセクリジンを含有する組成物へのトロピカミドの添加によって抑制され、代わりに、縮瞳効果の持続期間の間、縮瞳がより一貫したレベルであることが発見されている。追加としておよび全く驚くべきことに、予想外にも、ならびに有益なことに、トロピカミドの添加は、散瞳を誘発することなくピーク瞳孔収縮の程度を低下することができ、これによって、より一定のおよび理想的な瞳孔サイズを薬物誘発縮瞳の全体にわたって生じさせる。このより一貫した瞳孔サイズは、ピーク瞳孔収縮で見られる非常に低下した瞳孔サイズ(例えば1.25mm)での回折限界による解像度の有害なかすみまたは損失がなく、有益な近見および遠見視力を可能にする。
【0049】
ピロカルピン、カルバコールおよびホスホリンジエステルのような一般の縮瞳剤は、瞳孔収縮を引き起こせて、老視患者の近見視力の改善をもたらす。しかしながら、アセクリジンでは見られないピーク効果での縮瞳および遠近調節からの、これらの一般の縮瞳剤に関連する遠見視力の逆低下がある。アセクリジンとの毛様体筋麻痺剤の同時投与は、驚くべきことに、遠見視力のこの低下の減弱をもたらす。
【0050】
本発明の眼科用組成物の好ましい実施形態の快適性、安全性および効力は、シクロデキストリンアルファ、ベータ鎖もしくはガンマ鎖、好ましくは2−ヒドロキシプロピルベータ−シクロデキストリン(「HPβCD」)、および/またはβ−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体(Captisol(登録商標))、ステアリン酸ポリオキシル40もしくはポロキサマー407のような非イオン性界面活性剤;カルボキシメチルセルロース(「CMC」)のような粘度増強剤;塩化ナトリウムのような張度調整剤;塩化ベンザルコニウムのような保存料の存在、およびpH約5.0から約8.0に起因する。さらに、粘性剤の濃度および電解質の増加は、充血の低下をもたらすことができる。具体的には、CMCを0.50%w/vから0.75%w/v(好ましくは0.80%w/v)に、および塩化ナトリウムを0.25%w/vから0.50%w/vに増加させることは、充血の低下をもたらす。
【0051】
粘度増強剤を含む本発明の組成物の粘度は、眼における局所的点眼の前で約1cpsから約5,000cpsであり得る。該組成物が投与のために使用される装置を出る時の組成物に適用される剪断力の結果として、粘度は、局所的点眼で約1cpsから約50cps、好ましくは約15cpsから約35cpsの範囲に低減される。
【0052】
定義
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、特定されている量における特定されている成分を含む生成物、ならびに特定されている量における特定されている成分の組合せに直接的または間接的に起因する生成物を包含すると意図される。
【0053】
「安定化すること」という用語は、本明細書で使用される場合、活性薬剤が溶液のままであるのを容易にするおよび/またはできるようにするプロセスを指す。「安定化すること」という用語は、本明細書で使用される場合、アセクリジンを含めたムスカリン性アゴニストの劣化する傾向を阻害するおよび/または低下する手段またはプロセスも指す。
【0054】
「約」として定義される量および重量などに関する全ての数値が本明細書で使用される場合、各々の特別な値はプラスまたはマイナス10%である。例えば、「約5%w/v」という成句は、「4.5%w/vから5.5%w/v」と理解されるべきである。そのため、請求されている値の10%内の量は、請求項の範囲によって包含される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「%w/v」は、総組成物のパーセント重量を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、限定されないが、人間または他の動物を指す。
【0057】
ムスカリン受容体アゴニスト(「ムスカリン性アゴニスト」)という用語は、ムスカリン性アセチルコリン受容体(「ムスカリン受容体」)を活性化するアゴニストを包含する。ムスカリン受容体は、M1−M5と名付けられた5つのサブタイプに分けられる。本発明のムスカリン性アゴニストとしては、M2、M4およびM5受容体(「M1/M3アゴニスト」)よりもM1およびM3受容体を優先的に活性化するようなムスカリン性アゴニストが挙げられる。M1/M3アゴニストとしては、以下に限定されないが、アセクリジン、キサノメリン、タルサクリジン、サブコメリン、セビメリン、アルバメリン、アレコリン、ミラメリン、SDZ−210−086、YM−796、RS−86、CDD−0102A(5−[3−エチル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン塩酸塩)、N−アリール尿素置換3−モルホリンアレコリン、VUO255−035(N−[3−オキソ−3−[4−(4−ピリジニル)−1−ピペラジニル]プロピル]−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−スルホンアミド)、ベンジルキノロンカルボン酸(BQCA)、WAY−132983、AFB267B(NGX267)、AC−42、AC−260584、以下に限定されないがL−687、306、L−689−660、77−LH−28−1、LY593039を含めたクロロピラジン、ならびに置換されている窒素および/または酸素を含めて、特にエステル、硫黄または5個もしくは6個の炭素環構造を含む1つ以上の炭素置換を有するキニクリジン環、またはこの薬学的に許容される塩、エステル、類似体、プロドラッグまたは誘導体が挙げられる。好ましいM1/M3アゴニストはアセクリジンである。好ましい実施形態において、本発明のムスカリン性アゴニストとしては、M2、M4およびM5よりもM1およびM3を優先的に活性化する;いっそう好ましくはM3よりもM1を活性化するようなムスカリン性アゴニストが挙げられる。より好ましい実施形態において、本発明のムスカリン性アゴニストとしては、M1だけを活性化するようなムスカリン性アゴニストが挙げられる。
【0058】
「アセクリジン」という用語は、以下に限定されないが、ラセミ混合物としてのアセクリジン、アセクリジン(+)エナンチオマー、アセクリジン(−)エナンチオマー、以下に限定されないが、Ward.J.S.ら、1,2,5−Thiadiazole analogues of aceclidine as potent m1 muscarinic agonists、J Med Chem、1998、Jan.29、41(3)、379−392に開示されているもののような高度にM1選択的1,2,5チアジアゾール置換類似体を含めたアセクリジン類似体、ならびに以下に限定されないがカルバメートエステルを含めたアセクリジンプロドラッグを含めて、その塩、エステル、類似体、プロドラッグおよび誘導体を包含する。
【0059】
「選択的α−2アドレナリン作動性受容体アゴニスト」または「α−2アゴニスト」という用語は、α−1アドレナリン作動性受容体よりもα−2に対して900倍以上、またはα−1アドレナリン作動性受容体よりもα−2aもしくはα−2bに対して300倍以上の結合親和性を有する全てのα−2アドレナリン作動性受容体アゴニストを包含する。該用語は、選択的α−2アドレナリン作動性受容体アゴニストの薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグおよび他の誘導体も包含する。
【0060】
「低い濃度」または「低用量」という用語は、約0.0001%w/vから約0.065%w/v;より好ましくは、約0.001%w/vから約0.035%w/v;いっそう好ましくは、約0.01%w/vから約0.035%w/v;いっそう好ましくは、約0.03%w/vから約0.035%w/vの間の濃度を指す。
【0061】
「ブリモニジン」という用語は、限定せずに、ブリモニジン塩および他の誘導体を包含し、具体的には、以下に限定されないが、酒石酸ブリモニジン、5−ブロモ−6−(2−イミダゾリン−2−イルアミノ)キノキサリンD−タータレートおよびAlphagan(登録商標)が挙げられる。
【0062】
「治療すること」および「治療」という用語は、疾患、障害もしくはこうした用語がを適用する状態またはこうした疾患、障害もしくは状態の1つ以上の症状の進行の逆転、緩和、抑制または遅延することを指す。
【0063】
「薬学的に許容される」という用語は、生物学的にまたはその他で望ましくなくない(即ち、望ましくない生物学的効果の許容できないレベルを引き起こすことがないまたは有害な方式で相互作用することがない)材料を記載している。
【0064】
本明細書で使用される場合、「薬学的に有効な量」という用語は、限定せずに、疾患または障害の兆候または症状の予防、減少、寛解または排除を含めて、有益な結果のような所望の生物学的効果を果たすのに充分な量を指す。したがって、医薬組成物の各活性構成成分の総量または方法は、有意義な対象利益を示すのに充分である。したがって、「薬学的に有効な量」は、それが投与されている環境に依存する。薬学的に有効な量は、1回以上の予防的または治療的投与において投与することができる。
【0065】
「プロドラッグ」という用語は、以下に限定されないが、開裂可能な基を有するとともに生理学的条件下で、インビボにおいて薬学的に活性である化合物になる、本発明の化合物の単量体および二量体を含めた化合物を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「塩」は、親化合物の生物学的有効性および特性を保持するとともに投与される投与量で生物学的にまたはその他で有害でないような塩を指す。本発明の化合物の塩は、無機酸もしくは有機酸または塩基から調製することができる。
【0067】
「高次収差」という用語は、星形、ハロ(球面収差)、複視、多重画像、汚れ視覚、コマおよびトレフォイルから選択される視野における収差を指す。
【0068】
「コールドチェーン」という用語は、製造から投与の直前までの約2℃から約8℃の温度での貯蔵を指す。
【0069】
本発明の化合物は、無機酸もしくは有機酸または塩基から誘導される薬学的に許容される塩の形態で使用することができる。「薬学的に許容される塩」という成句は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激およびアレルギー応答などがなくヒトおよび下等動物の組織との接触における使用に適当であるとともに妥当な利益/リスク比に相応するような塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当技術分野においてよく知られている。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences、1977、66:1以下参照において詳細に薬学的に許容される塩を記載している。
【0070】
該塩は、本発明の化合物の最終の単離および精製中にその場で、または遊離塩基官能基を適当な有機酸と反応させることによって別々に調製することができる。代表的な酸付加塩としては、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、二グルコン酸塩、グリセロリン酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホネート(イソチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホネート、シュウ酸塩、パルミト酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオネート、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p−トルエンスルホネートおよびウンデカン酸塩が挙げられる。その上、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物のような低級ハロゲン化アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチルおよび硫酸ジアミルのような硫酸ジアルキル;デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物のような長鎖ハロゲン化物;ベンジルおよび臭化フェネチルおよびその他のようなハロゲン化アリールアルキルのような薬剤で四級化することができる。水または油溶性もしくは分散可能な生成物は、これによって得られる。薬学的に許容される酸付加塩を形成するために用いることができる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヒアルロン酸、リンゴ酸、硫酸およびリン酸のような無機酸、ならびにシュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、メタノスルホン酸、コハク酸およびクエン酸のような有機酸が挙げられる。
【0071】
塩基付加塩は、カルボン酸含有部分を、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩のような適当な塩基と、またはアンモニアまたは有機第1級、第2級もしくは第3級アミンと反応させることによって、この発明の化合物の最終の単離および精製中にその場で調製することができる。薬学的に許容される塩としては、以下に限定されないが、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩などのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属に基づくカチオン、ならびにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、とりわけエチルアンモニウムを含めた非毒性第4級アンモニアおよびアミンカチオンが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンとしては、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジンおよびピペラジンなどが挙げられる。
【0072】
「エステル」という用語は、本明細書で使用される場合、式−OC(O)Aまたは−C(O)OAによって表され、式中Aは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール基または他の適当な置換基であり得る。
【0073】
本発明の組成物
一実施形態において、本発明は、アセクリジンを含む眼科用組成物を対象とする。好ましい実施形態において、アセクリジンは、約0.25%w/vから約2.0%w/v、より好ましくは約0.50%w/vから約1.90%w/v、さらに好ましくは約1.25%w/vから約1.85%w/v、最も好ましくは約1.35%w/vから約1.65%w/vの濃度である。アセクリジンは、不斉を有する第3級アミンであるので、+および−光学異性体の両方が存在する(一部の研究において、(+)のほうが強力であり、その他において、(−)のほうが強力であり得ると思われている。)。上記濃度について、旋光分析は、これらの濃度についての(+)および(−)異性体の正確に等しい比を実証した。この比を変更することは、そのため、比の変化に比例したこの濃度範囲を変更し得る。
【0074】
本発明は、ムスカリン性アゴニスト、好ましくは組成物のためのその臨界ミセル濃度を超える非イオン性界面活性剤、および粘度増強剤;または代替としてインサイチュゲル化剤を含む眼科用組成物をさらに対象とする。好ましい実施形態において、局所適用での組成物の初期の粘度は、低剪断(1/s)で20cps超、好ましくは50cps、より好ましくは70cps超である。
【0075】
本発明に適当な非イオン性界面活性剤としては、シクロデキストリン、ポリオキシルアルキル、ポロキサマーまたはこれらの組合せが挙げられ、加えて、ポリソルベートのような他の非イオン性界面活性剤との組合せが挙げられ得る。好ましい実施形態は、ステアリン酸ポリオキシル40および任意選択的にポロキサマー188、ポロキサマー407、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ブチレート化塩の有無を問わずイオン電荷された(例えばアニオン)ベータ−シクロデキストリン(Captisol(登録商標))、2−ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(「HPβCD」)、アルファシクロデキストリン、ガンマシクロデキストリン、ポリオキシル35ヒマシ油ならびにポリオキシル40水添ヒマシ油、またはこれらの組合せを含む。さらに、眼科使用と適合性のある他の非イオン性界面活性剤の代用は同様の処方利点を可能にし、これとしては、以下に限定されないが、ポロキサマー、ポロキサマー103、ポロキサマー123およびポロキサマー124、ポロキサマー407、ポロキサマー188およびポロキサマー338、ポロキサマー類似体もしくは誘導体、ポリソルベート、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリソルベート類似体もしくは誘導体、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、無作為にメチル化されたβ−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、γ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルまたはグルコシル−β−シクロデキストリン、シクロデキストリン類似体もしくは誘導体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート類似体もしくは誘導体、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油60、ポリオキシエチレン(200)、ポリオキシプロピレングリコール(70)、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油60、ポリオキシル、ステアリン酸ポリオキシル、ノノキシノール、オクチフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、カプリオール、ラウログリコール、PEG、Brij(登録商標)35(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル;BrijはUniqema Americas LLCの登録商標である。)、ラウリン酸グリセリル、ラウリルグルコシド、デシルグルコシドまたはセチルアルコールのような非イオン化性界面活性剤;またはパルミトイルカルニチン、コカミドDEA、コカミドDEA誘導体コカミドプロピルベタインもしくはトリメチルグリシンベタイン、N−2(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N−2−アセトアミドイミノジ酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、2−[ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ]−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール(ビス−トリス)、3−シクロヘキシルアミノ−1−プロパンスルホン酸(CAPS)、2−シクロヘキシルアミノ−1−エタンスルホン酸(CHES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、4−(N−モルホリノ)−ブタンスルホン酸(MOBS)、2−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、1,4−ピペラジン−ビス−(エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール(トリス)、チロキサボールおよびSPAN(登録商標)20−80(モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタンおよびモノオレイン酸ソルビタン)のような両性イオン界面活性剤の1つ以上が挙げられる。ある特定の実施形態において、ラウリル硫酸ナトリウムおよびまたはラウリル硫酸ナトリウムエステルのようなアニオン性界面活性剤の添加が好ましいことがある。
【0076】
1種以上の非イオン性界面活性剤に加えて代用または添加することができる眼科用インサイチュゲルは、以下に限定されないが、ゼラチン、カルボマー934Pおよび974Pを含めた様々な分子量のカルボマー、キサンタンガム、アルギン酸(アルギネート)、グアーガム、ローカストビーンガム、キトサン、ペクチン、ならびに当技術分野における専門家によく知られている他のゲル化剤を含む。
【0077】
好ましい実施形態において、非イオン性界面活性剤は、約1から約15%w/vの濃度の、より好ましくは約5.5%w/vのステアリン酸ポリオキシル40である。
【0078】
こうした好ましい実施形態において、ステアリン酸ポリオキシル40は、水溶液およびポロキサマー407のような他の非イオン性界面活性剤よりも、特にα−2アゴニストの存在下で、優先的に充血低下効果を増強することが見出される。
【0079】
本発明に適当な粘度増強剤としては、以下に限定されないが、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー(「hpグアー」)、キサンタンガム、アルギネート、キトサン、ゲルライト、ヒアルロン酸、デキストラン、Carbopol(登録商標)940(カルボマー940)、Carbopol(登録商標)910(カルボマー910)およびCarbopol(登録商標)934(カルボマー934)を含めたCarbopol(登録商標)900シリーズを含めてCarbopol(登録商標)(ポリアクリル酸またはカルボマー)、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、メチルセルロース、メチルセルロース4000、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース2906、カルボキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースもしくはヒドロキシエチルセルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ジェラン、カラゲナン、アルギン酸、カルボキシビニルポリマーまたはこれらの組合せが挙げられる。好ましい実施形態において、粘度増強剤は、100cps未満、好ましくは約15cpsから約35cps、最も好ましくは約30cpsで平衡粘度を有する。好ましい実施形態において、粘度増強剤は、約0.5%w/vから約6.0%w/v、好ましくは約0.09%w/vから約1.0%w/vの濃度の、より好ましくは0.09%w/v、0.25%w/v、0.5%w/v、0.75%w/v、0.9%w/vまたは1.0%w/vのCarbopol(登録商標)940(カルボマー940)である。ある特定の組合せにおいて、驚くべきことに、非イオン性界面活性剤/粘度組合せは、沈殿形成とともに時間をかけて相分離をもたらし得ることが発見された。こうした状況において、特にポリオキシル、好ましい実施形態においてステアリン酸ポリオキシル40、およびセルロース誘導体、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースに関して、ポリアクリル酸誘導体(好ましい実施形態においてカルボマー、カルボマー934または940)のような、粘度増強のための非多糖類誘導体の使用は、こうした分離を防止することができる。
【0080】
特に理論に縛られるのを望まないが、アセクリジン上の複素環式窒素のキヌクリジン核は非常に電子豊富であるので、それは周囲化合物に加えてそれ自体も容易に攻撃すると思われる。
【0081】
本発明における発見は、以下の通りである:いくつかの修飾が、単一または組合せで、好ましい実施形態においてアセクリジン1.40%−1.75%、トロピカミド0.025%−0.10%および任意選択的に、ステアリン酸ポリオキシル40 0.5%−10%、好ましくは5.5%のような非イオン性界面活性剤に加えて、以下(表1を参照されたい。)の1つ以上を含めて、コールドチェーン安定貯蔵を増強するために使用できる:
好ましくは5.5未満、好ましくは5.0未満、最も好ましくは約4.75のpHの酸性pH;
好ましくは約15−50cps、より好ましくは20−35cpsの25C粘度の粘度増強剤、ここで、好ましい実施形態はカルボマー940 0.09%−1.0%である;
ポリオールの添加、好ましい実施形態においてマンニトール2.5%−4.0%;
緩衝液の添加、ここで、酢酸緩衝液またはリン酸緩衝液が好ましく、2−100ミリモル範囲で3−5ミリモルが好ましい;
保存料の添加、ここで、BAK 0.02%が好ましい。
【0082】
選択的α−2アゴニストは、本発明の組成物内に含むことができる、または鼻閉もしくは充血を低下するための追加の手段が感受性対象のために所望されるならば、局所的に好ましくはわずか数分前に、もしくは好ましくないのはわずか数分後に適用することができる。本発明に適当な選択的α−2アゴニストは、低い濃度で最小のα−1アゴニスト活性を有する。例えば、ブリモニジンまたはファドルミジンについて、1%w/vから2%w/vは極めて高いと考えられ、0.5%w/vから1.0%w/vは、α−1受容体のまだ高い誘発性であり、本発明の目的にとっては毒性である。さらに、0.10%w/vから0.5%w/vはまだ高すぎであり、0.070%w/vから0.10%w/vでも、好ましい出現率よりも高いリバウンド充血を伴う(しかしながら、デクスメデトミジンについて、このより大きい親油性および眼球内浸透は、この範囲でリバウンドリスクを低下する。)。0.065%w/v以下だけが潜在的に許容され、ここで、ほとんどのα−2アゴニストについて、選択度に依存して、0.050%w/vまたはいっそう好ましくは0.035%w/v以下が望ましい。他方では、ある程度の有用な活性は、1桁以上のさらなる低下の濃度で生じ得る。本発明の好ましい実施形態、ブリモニジン、ファドルミジンおよびグアンファシンは、α−2アドレナリン作動性受容体、いっそう好ましくはα−2bアドレナリン作動性受容体を優先的に刺激するので、α−1アドレナリン作動性受容体は、過度の大型血管細動脈狭窄および血管収縮性虚血を引き起こすほどには十分に刺激されない。加えて、アセチルコリンアゴニスト、アセクリジンのような、そうでなければ充血を直接誘発する薬物に関して充血を予防または低下することは、α−2アゴニストが含まれていない本発明の処方物を用いても、誘発された充血または鼻閉を有する感受性対象のためのコンプライアンスを高めることが発見された。しかしながら、α−2アゴニストは、それらのイオン化平衡にシフトされるので、酸性pHは、こうしたアゴニストが中性またはアルカリ性pHでより大きい影響を行使するという事実によって幾分相殺される。そのため、各α−2アゴニストは、アセクリジンを有する本発明組成物に添加される場合、その親油性およびpKa値に依存して好ましいpH範囲を有する。本発明について、5.0から8.0のpH範囲が容認される一方で、好ましい実施形態は、pH5.5から7.5、より好ましくは6.5から7.0である。さらに、非イオン性界面活性剤構成成分としてまたは唯一の非イオン性界面活性剤としてのシクロデキストリンおよび/またはステアリン酸ポリオキシル40は、α−2アゴニストが該組成物に含まれる場合、ポロキサマー407よりもむしろ、より大きなホワイトニング効果をもたらすことが発見された。α−2アゴニストは、任意選択的に、別々に適用することができる、またはある特定の好ましい実施形態において、非イオン性界面活性剤としてステアリン酸ポリオキシル40 5.5%w/vを有するような処方のようなα−2アゴニストを含まない本発明の処方物とともに適用することができるが、α−2アゴニストは時折感受性の対象を除いて必要とされない。ファドルミジンは、本発明にとって最も高い親水性およびそのため高い表面保持を有するα−2アゴニストの代表である。グアンファシンは、その上、高度に選択的および親水性である。ブリモニジンは、適度の親油性で高度に選択的である。最終的に、本発明の目的にとって充血を低下するための効力がなく使用することができるデクスメデトミジンは、高い親油性とともに高い選択性を有する(一部の患者において副作用としての疲労をおそらく誘発するが)。好ましい実施形態において、ステアリン酸ポリオキシル40 5.5%w/v;CMC 0.80%w/v;NaCl 0.037%w/v;EDTA 0.015%w/v、ホウ酸緩衝液 5mMおよびBAK 0.007%w/vを使用することは、約10分一時的に続き30分までに約ベースラインに戻る、4のうち約1.0から1.5の充血をもたらす。
【0083】
一実施形態において、選択的α−2アドレナリン作動性受容体アゴニストは、約900倍以上、いっそう好ましくは約1000倍以上、最も好ましくは、約1500倍以上の結合親和性を有する化合物である。
【0084】
選択的α−2アドレナリン作動性受容体アゴニストは、約0.0001%w/vから約0.065%w/v;より好ましくは、約0.001%w/vから約0.035%w/v;いっそう好ましくは、約0.01%w/vから約0.035%w/v;いっそう好ましくは、約0.020%w/vから約0.035%w/vの間の濃度で存在することができる。
【0085】
一実施形態において、選択的α−2アドレナリン作動性受容体は、ブリモニジン、グアンファシン、ファドルミジン、デクスメデトミジン、(+)−(S)−4−[1−(2,3−ジメチル−フェニル)−エチル]−1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−チオン、1−[(イミダゾリジン−2−イル)イミノ]インダゾールおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。高度選択的α−2アゴニストとして機能するこれらの化合物の類似体も、本発明の組成物および方法において使用することができる。
【0086】
より好ましい実施形態において、選択的α−2アゴニストは、ファドルミジン、グアンファシンおよびブリモニジンからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態において、選択的α−2アゴニストは、0.025%w/vから0.065%w/v、より好ましくは0.03%w/vから0.035%w/vの濃度の、塩の形態におけるブリモニジンである。好ましい実施形態において、該塩はタータレート塩である。
【0087】
別のさらにより好ましい実施形態において、選択的α−2アゴニストは、ヒドロクロリド(「HCl」)塩の形態における約0.005%w/vから約0.05%w/v、より好ましくは0.02%w/vから約0.035%w/vの濃度のファドルミジンである。
【0088】
別のさらにより好ましい実施形態において、選択的α−2アゴニストは、HCl塩の形態における約0.005%w/vから約0.05%w/v、より好ましくは0.02%w/vから約0.035%w/vの濃度のグアンファシンである。
【0089】
別のさらにより好ましい実施形態において、選択的α−2アゴニストは、HCl塩の形態における約0.005%w/vから約0.05%w/v、より好ましくは0.04%w/vから約0.05%w/vの濃度のデクスメデトミジンである。
【0090】
別の好ましい実施形態において、生理的pH未満のpH、好ましくはpH4.5から6.5、より好ましくはpH5.5から6.0は、ブリモニジンについてのホワイトニング効果を増強することが見出されている。しかしながら、充血低下は全てのpHで達成され、アセクリジン吸収の増強はアルカリ性pHで生じるので、さらなる効果が所与の濃度から生じ、そのため、4.5から8.0のpH範囲で有効であるが、6.5から7.5のpH範囲が本発明にとって好ましく、7.0から7.5が最も好ましい。
【0091】
本発明は、毛様体筋麻痺剤をさらに含む眼科用組成物をさらに対象とする。ある特定の毛様体筋麻痺剤は、縮瞳の発現、規模または持続期間を低下することなく、縮瞳剤、特に本発明のためにはアセクリジンと組み合わせることができ;所望の処方物に依存して発現後15分から30分から6時間から10時間の一定の縮瞳対時間を提供するため、水性処方物におけるピーク吸収時間と同時に起こる縮瞳効果において通常付随のスパイクをさらに鈍くすることができることは、本発明の驚くべきおよび全体的に予想外の発見である。毛様体筋麻痺剤の添加は、その上、おそらく毛様体痙攣または過度の瞳孔収縮の結果である、そうでなければ局所的点眼の後にまもなく生じ得る残存の関連不快感を低下する。
【0092】
本発明に適当な毛様体筋麻痺剤としては、以下に限定されないが、アトロピン、Cyclogyl(登録商標)(塩酸シクロペントレート)、ヒヨスチン、ピレンゼピン、トロピカミド、アトロピン、4−ジフェニルアセトキシ−N−メチルピペリジンメトブロミド(4−DAMP)、AF−DX384、メトクトラミン、トリピトラミン、ダリフェナシン、ソリフェナシン(Vesicare)、トルテロジン、オキシブチニン、イプラトロピウム、オキシトロピウム、チオトロピウム(Spriva)およびオテンゼパド(別名AF−DX116または11−{[2−(ジエチルアミノ)メチル]−1−ピペリジニル}アセチル]−5,11−ジヒドロ−6H−ピリド[2,3b][1,4]ベンゾジアゼピン−6−オン)が挙げられる。好ましい実施形態において、毛様体筋麻痺剤は、約0.01%w/vから約0.10%w/v、より好ましくは約0.025%w/vから約0.080%w/v、さらに好ましくは約0.04%w/vから約0.06%w/vの濃度のトロピカミド。別の好ましい実施形態において、毛様体筋麻痺剤は、約0.04%w/vから約0.07%w/vの濃度のトロピカミドまたは約0.002%w/vから約0.05%w/vの濃度のピレンゼピンもしくはオテンゼパドの混合物である。
【0093】
好ましい実施形態において、トロピカミド0.01%w/vは眼窩上縁の痛みをわずかに低下し、0.030%w/vは眼窩上縁の痛みをさらに低下し、0.04%w/vから約0.07%w/vは眼窩上縁の痛みを完全に除き、効果の持続期間にわたって平均瞳孔収縮直径を低下しないことが見出された。好ましい実施形態におけるトロピカミドは、完全に予想外の効果感受性を実証しており、ここで、約0.04%w/vで眼窩上縁の痛みおよび毛様体痙攣疼痛を予想外にもおよび非常に有効に低下するまたは除き、0.042%w/vで非常に顕著にさらに低下し、(驚くべきことに、瞳孔散大剤としてのその共通の使用により)調節麻痺がない好ましい実施形態において、0.044%w/vで存在しない。なお、トロピカミドは、瞳孔収縮の平均程度、瞳孔収縮の発現の時間、または後続の視覚的利益を低下しない。逆に、トロピカミドは、水性処方物において見られるピーク縮瞳を鈍らせることで、時間をかけて滑らかな一貫した縮瞳効果を生じさせた。それは、ピーク瞳孔収縮の調節が、その従来の使用で見出された通りの散大なく、時間をかけてよりいっそうの効果を達成することを可能にする。具体的には、トロピカミドは、一部の実施形態においてアセクリジンに続く30分から60分で1.50mm未満の一過性狭窄を予防するのに、ならびにそうでなければ約30分のピーク発現で生じ得る視覚の一過性の過度のおよび望ましくないかすみを低下するのに有用である。例として、1.53%w/vのアセクリジン、5%w/vのHPβCD、0.75%w/vのCMC、0.25%w/vのNaCl、0.01%w/vのBAKおよびpH7.0のリン酸緩衝液;または1.45%w/vのアセクリジン;5.5%w/vのステアリン酸ポリオキシル40;0.80%w/vのCMC;0.037%w/vのNaCl;0.015%w/vのEDTA;0.007%w/vのBAKおよびpH7.0の5mMリン酸緩衝液を含む眼科用組成物は、中程度のかすみが認められた0.040%w/vのトロピカミドから、かすみが極めて薄暗い光状態以外でほぼ検出不可能になった0.044%w/vのトロピカミドに変更された。毛様体筋麻痺剤を用いるこの追加の瞳孔サイズ調節は、望まれない付随のピーク過剰狭窄、ならびに不快な眼窩上縁の痛みを鈍らせながら、延長効果に充分なアセクリジン濃度を可能にする。驚くべきことにおよびその短期作用の性質により、トロピカミドは、散瞳を引き起こすことなく、この鈍化効果を達成する。さらに、好ましい実施形態において、トロピカミド0.014%w/vは眼窩上縁の痛みを低下し、0.021%w/vは眼窩上縁の痛みをさらに低下し、0.028%w/vから0.060%w/vおよび一部の実施形態において最大0.09%w/vは調節麻痺(即ち、眼の毛様体筋の麻痺症)なく眼窩上縁の痛みを完全に除くことが見出された。
【0094】
(+)および(−)アセクリジン光学異性体のラセミ50:50混合物について(ここで、一部の研究において、(+)のほうが強力であり、その他において、(−)のほうが強力であり得ると思われている。)、トロピカミド効果は、トロピカミドに対するアセクリジンの比に依存して変動し得ることが見出された。例えば、1.55%w/vのアセクリジン、5.5%w/vのHPβCDまたは好ましい実施形態においてステアリン酸ポリオキシル40、0.75%w/vのCMC(1%=2,500センチポイズ)、0.25%w/vのNaClおよび0.01%w/vのBAKを含む本発明の眼科用組成物において、ならびにpH7.5で、0.042%w/vのトロピカミドは、0.035%w/vと違いが出てくることさえあり、前者は、通常の屋内の夜間視力を実証し、後者は、いっそう低い濃度でより顕著になる軽度のかすみを実証する。約0.075%w/vから約0.090%w/vのトロピカミドのような、より高い濃度で、1.50mmから1.80mm範囲の最適な範囲瞳孔狭窄の消失が始まり、より高い濃度で明らかな散瞳が生じ始める。異性体比は有効濃度を変更し得るので、これは、アセクリジンを使用して予測される臨床的効力の因子となるに違いなく;本発明の好ましい実施形態に関して、正確な50:50異性体比を決定するために旋光計が使用された(個人通信機関Toronto Research Chemicals)。
【0095】
図1は、毛様体筋麻痺剤の有無におけるおよび担体の有無における縮瞳剤の効果を示す。対象は、20.100のベースライン近見視力および20.20のベースライン遠見視力を有する45歳を超える正視者である。眼への生理食塩溶液中1%w/vのピロカルピンの局所投与は、20.40への近見視力の改善をもたらすが(8a)、しかしながら、この改善は、20.100への遠見視力の低下の犠牲で成り立つ(8b)。0.015%w/vのトロピカミドの添加は、20.25への近見視力の改善(9a)および20.55への遠見視力の低下の緩和(9b)をもたらすが、ただし、幾分誘発された不正乱視でのある特定の例においてである(読取視野において軽度にシミのある部域)。生理食塩溶液中の1.55%w/vのアセクリジンの局所投与は、ベースライン遠見視力に対する効果なく(10b)、6時間の延長時間期間の間20.40への近見視力の改善をもたらす(10a)。10cおよび10dは、5.5%w/vの2−ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン、0.75%w/vのCMC(1%=2,500センチポイズ)、0.25%w/vのNaClおよび0.01%w/vのBAKで構成されている担体中のアセクリジンを投与する効果を示す。10cにおいて見られる通り、担体はアセクリジンの有益な効果を増加させ、20.20よりも良好な近見視力をもたらす。10dにおいて見られる通り、遠見視力の同様の増加が生じる。10eおよび10fは、担体中のアセクリジンに0.042%w/vのトロピカミドを添加する効果を示す。10eにおいて見られる通り、近見視力は20.15に改善され、最大視力がより迅速に発現する。10fにおいて見られる通り、同様の改善が遠見視力において見られる。まとめると、図1は、アセクリジンが、ベースライン遠見視力に影響することなく、老視の対象における近見視力を一時的に矯正できることを示す。同様の結果は、異なる縮瞳剤ピロカルピンを用いて、トロピカミドのような毛様体筋麻痺剤の添加で達成することができる。適切な薬物担体は、有益な効果を有することもできる。
【0096】
本発明は、張度調整剤および保存料をさらに含む眼科用組成物をさらに対象とする。
【0097】
張度調整剤は、限定せずに、塩化ナトリウム(「NaCl」)、塩化カリウムのような塩、マンニトールもしくはグリセリン、または別の薬学的にもしくは眼科的に許容される張度調整剤であってよい。ある特定の実施形態において、張度調整剤は0.037%w/vのNaClである。
【0098】
本発明とともに使用することができる保存料としては、以下に限定されないが、塩化ベンザルコニウム(「BAK」)、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、硝酸フェニル水銀、ペルボレートまたはベンジルアルコールが挙げられる。好ましい実施形態において、保存料は、約0.001%w/vから約1.0%w/vの濃度の、より好ましくは約0.007%w/vの濃度のBAKである。別の好ましい実施形態において、保存料は、0.01%w/vから約1.0%w/vの濃度の、より好ましくは約0.02%w/vの濃度のペルボレートである。
【0099】
pHを調整するための様々な緩衝液および手段が使用されて、本発明の眼科用組成物を調製することができる。こうした緩衝液としては、以下に限定されないが、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびホウ酸緩衝液が挙げられる。好ましくは1mMから10mM濃度、より好ましくは約5mMの、必要とされる通りの組成物のpHを調整するために、酸または塩基が使用され得ると理解される。好ましい実施形態において、pHは約4.0から約8.0であり、より好ましい実施形態において、pHは約5.0から約7.0である。
【0100】
本発明は、抗酸化剤をさらに含む眼科用組成物をさらに対象とする。本発明とともに使用することができる抗酸化剤としては、以下に限定されないが、約0.005%w/vから約0.50%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、約0.01%w/vから約0.3%w/wの濃度のシトレート、約0.001%w/vから約0.2%w/vの濃度のジエチレントリアミン五酢酸二カルシウム(「Ca2DTPA」)、好ましくは約0.01%w/vのCa2DTPAが挙げられ、Ca2DTPAは、処方物に0.0084%w/vのCa(OH)および0.0032%w/vのペンテト酸を添加することおよびゆっくり混合することによって処方することができる。抗酸化剤のさらなる組合せが使用され得る。本発明とともに使用することができる他の抗酸化剤としては、約0.0001%w/vから約0.015%w/vの濃度のエチレンジアミン四酢酸のような当技術分野における専門家によく知られているものが挙げられる。
【0101】
本発明の局所処方物、特に、アセクリジン1.35%w/vから1.55%w/v;5.5%w/vのステアリン酸ポリオキシル40;0.80%w/vのCMC;0.037%w/vのNaCl;0.015%w/vのEDTA;0.007%w/vのBAK;およびpH7.0の5mMリン酸緩衝液を含む好ましい実施形態のうちの1つが、毎日の単回の局所的点眼後に、かなり延長されたコンタクトレンズ装用および快適性をもたらすことは、驚くべきおよび予想外の発見である。好ましい実施形態の毎日単回の使用は、ドライアイを有する対象が、以前はたった一晩でも視力がぼやけてフィルムでコーティングされたコンタクトレンズを除去し清浄または交換する必要があったが、1週間もの間レンズをつけたまま眠ることを可能にした(実施例7を参照されたい。)。
【0102】
以下の代表的な実施形態は、例示的な目的でのみ提供されており、決して本発明を限定するものではない。
【0103】
代表的な実施形態
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
約1.75%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.042%w/vの濃度のトロピカミド;
約4.5%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約2.5%w/vの濃度のマンニトール;
約3.0mMの濃度の酢酸緩衝液;および
約0.02%w/vの濃度のBAK、
ここで、前記組成物は、約4.75のpHを有する。
【0104】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
約1.55%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.042%w/vの濃度のトロピカミド;
約5.5%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約0.1%w/vの濃度のクエン酸一水和物;
約4.0%w/vの濃度のマンニトール;
0.09%w/vの濃度のCarbopol(登録商標)(カルボマー)940;および
約3.0mMの濃度の酢酸緩衝液;
ここで、前記組成物は約4.75のpHを有する。
【0105】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
約1.50%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.042%w/の濃度のトロピカミド;
約5.5%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約2.5%w/vの濃度のマンニトール;
約3.0mMの濃度のリン酸緩衝液;
約0.25%w/vの濃度のCarbopol(登録商標)(カルボマー)940;および
約0.02%w/vの濃度のBAK、
ここで、前記組成物は約4.75のpHを有する。
【0106】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
約1.45%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.042%w/vの濃度のトロピカミド;
約5.5%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約4.0%w/vの濃度のマンニトール;
約0.1%w/vの濃度のクエン酸一水和物;
約3.0mMの濃度の酢酸緩衝液;および
約0.75%w/vの濃度のCarbopol(登録商標)(カルボマー)940、
ここで、前記組成物は約4.75のpHを有する。
【0107】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
約1.45%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.042%w/vの濃度のトロピカミド;
約5.5%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約4.0%w/vの濃度のマンニトール;
約0.1%w/vの濃度のクエン酸一水和物;
約3.0mMの濃度のリン酸緩衝液;および
約1.0%w/vの濃度のCarbopol(登録商標)(カルボマー)940、
ここで、前記組成物は約4.75のpHを有する。
【0108】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
1.5%w/vの濃度のアセクリジン、2.5%w/vの濃度のマンニトール。
【0109】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
1.55%w/vの濃度のアセクリジン、2.5%w/vの濃度のマンニトール。
【0110】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
1.6%w/vの濃度のアセクリジン、2.5%w/vの濃度のマンニトール。
【0111】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
1.65%w/vの濃度のアセクリジン、2.5%w/vの濃度のマンニトール。
【0112】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
1.7%w/vの濃度のアセクリジン、2.5%w/vの濃度のマンニトール。
【0113】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
1.75%w/vの濃度のアセクリジン、2.5%w/vの濃度のマンニトール。
【0114】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
1.48%w/vの濃度のアセクリジン、4.0%w/vの濃度のマンニトールおよび0.09%w/vの濃度のCarbopol(登録商標)(カルボマー)940。
【0115】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
1.48%w/vの濃度のアセクリジン、4.0%w/vの濃度のマンニトールおよび0.50%w/vの濃度のCarbopol(登録商標)(カルボマー)940。
【0116】
別の実施形態において、眼科用組成物は以下を含む:
1.48%w/vの濃度のアセクリジン、4.0%w/vの濃度のマンニトールおよび0.9%w/vの濃度のCarbopol(登録商標)(カルボマー)940。
【0117】
以下の実施例は、例示的な目的でのみ提供されており、決して本発明を限定すると意味されない。
【実施例】
【0118】
[実施例1] 47歳から67歳の対象の視覚に対するアセクリジンの効果
表1は、アセクリジンを含有する組成物の眼科投与の前後の老視の対象の近焦点能力に対する効果を実証している。各組成物は、表示されている濃度におけるアセクリジンならびに5.5%w/vのHPβCD、0.75%w/vのCMC、0.25%w/vのNaClおよび0.01%w/vのBAKを含んでいた。追加として、対象4および5に投与される組成物は、0.125%w/vのトロピカミドを含んでいた。アセクリジンがエナンチオマーであるので、臨床的有効性は、異なる比で変動し得る。本研究のため、立体異性体のほぼ正確な50:50比は、旋光分析によって測定および最善に決定された。
【0119】
【表1】
【0120】
表1において見られる通り、全ての対象は、左眼および右眼の両方で完全でない近見視力(20.20)を有し(眼から15インチの物体)、ほとんどの対象は、組成物の投与前に完全でない遠見視力を有していた。組成物の投与後、全ての対象は、7時間から12時間続いた彼らの近見視力の改善を経験した。驚くべきことに、対象の大多数は、同じ時間期間の間、彼らの遠見視力の改善も経験した。いっそう驚くべきことに、近点の改善は、快適な読取りに典型的に必要とされる16インチよりもずっと近く、一部の場合において、個人30以下においてより共通して見られる約8.5インチであった。毛様体筋麻痺剤であるトロピカミドの添加は、視覚矯正に対して相加効果または有害効果を有していなかった。
【0121】
[実施例2] アセクリジンおよびトロピカミドの濃度の効果
【0122】
【表2】
【0123】
略語:(C)は矯正視覚を示し、(m)は分を示し、(hr)は時間を示し、mmはミリメートルを示し、BDはベースライン遠見視力を示し;BNはベースライン近見視力を示し、BPはベースライン瞳孔サイズを示し、ODは右眼を示し;OSは左眼を示し、OUは両方の眼を示す。
【0124】
全ての百分率はw/vである。「pt」は印字材料のサイズを反映しており、4は20/20視覚と同等であり、3は20/15視覚と同等である。
【0125】
「時間」は、効果の持続期間を指す。
【0126】
表2において見られる通り、少なくとも1.1%w/vの濃度のアセクリジンは、局所的点眼の1時間後に瞳孔のサイズを1.63mmに低下することができ、少なくとも10時間の間近見および遠見視力の矯正をもたらした。アセクリジンの濃度を0.75%w/vに低減させることは(処方#3)、1時間後に縮瞳効果を2.0−2.5mmに低下し、視覚矯正は6.5時間だけ続いた。0.03%w/vのブリモニジンの添加は、局所的点眼後30分以内に眼の充血(ブリモニジンを用いず4のうち4、示されていない)を4のうち1.5に低下し、このことは、視覚が矯正された間中ずっと維持された。非イオン性界面活性剤をHPβCDに切り換えることは(処方#2−6)、眼の充血をさらに低下した。アセクリジンの濃度を0.75%w/vに低減させることは(処方#3)、眼の充血をさらに低下したが、上の記述の通り、該処方の視覚矯正持続期間も低下した。
【0127】
眼における眼窩上縁の痛みおよび刺痛は、軽度の吐き気、胃のむかつきおよび疲労の感じも伴った疼痛の4レベルのうち2を有する処方#1−3において顕著であった。驚くべきことに、毛様体筋麻痺剤トロピカミドの添加は、眼窩上縁の痛みおよび刺痛をそれぞれ4のうち0.5および4のうち0に低下し、眼窩上縁の痛みは60分後に消散した(処方#4)。さらに、アセクリジンの濃度の1.1%w/vへの上昇は、眼の充血を増加させることなく処方#1−2において見られる、より長い持続期間の矯正視覚を回復した。しかしながら、10時間の最後における処方#4の再局所的点眼で、顕著な眼窩上縁の痛みが生じた。処方#5(OD)および(OS)の局所的点眼は、処方#4に続くトロピカミド濃度の増加とともに、処方#4の再導入で経験された眼窩上縁の痛みを緩和した。処方#5の有効な持続期間の最後における第3の局所的点眼で、処方#5の再局所的点眼は、再び、かなりの眼窩上縁の痛みに至った。再度、処方#6において、トロピカミドの濃度を上昇させることは、眼窩上縁の痛みを克服することができた。追加としておよび予想外にも、トロピカミドは、毛様体筋麻痺剤であるにもかかわらず、瞳孔収縮または視覚矯正に対して効果を有しなかった。驚くべきことに、トロピカミドの添加は、最適な瞳孔サイズ狭窄の持続期間の延長をもたらした。
【0128】
瞳孔収縮に対するブリモニジンの効果を決定するため、処方#7を投与した。処方#7の投与は、処方#5のものと同一の遠見および近見視力改善とともに、瞳孔収縮の1.70mmへの極めて軽度の減少をもたらした。2−3+結膜注射が認められた。
【0129】
全てのベースライン視覚データは、遠見コンタクトレンズで矯正された視覚に基づいた。近見視力は、導入後1.5時間で水平に8インチから突出していると対象によって認められた。全ての瞳孔サイズ測定に、赤外カメラおよび積載瞳孔較正スケール付のMarco Autorefractorを使用した。一旦画像が選択されると、それは、正確な較正を可能にするスクリーン上に残った。
【0130】
[実施例3] アセクリジン、ブリモニジン、グアンファシン、ファドルミジン、トロピカミドおよび添加剤の濃度の効果
【0131】
【表3】
【0132】
全ての百分率はw/vである。鼻閉、刺痛初期、刺痛、3分、充血初期、充血15分、ホワイトニング、疼痛および総合についてのスコアは、4のうちからである。
【0133】
「pt」は印字材料のサイズを反映しており、4は20/20視覚と同等であり、3は20/15視覚と同等である。
【0134】
ベースライン視覚は、遠見について両方の眼が20.20であり;近見について裸眼の右眼が20.70であり;近見について左眼が20.80であった(最高16インチで)。
【0135】
D/Cは、耐えられない刺痛により眼の洗浄後に中断したことを表す。
【0136】
1.55%w/vの濃度のアセクリジンは、瞳孔のサイズを局所的点眼の30分後に約1.63mmに低下することができ、矯正された近見および遠見視力を20.20以上に少なくとも6時間の間もたらし、顕著な影響は、表3において見られる通り、約7.5時間続いた。アセクリジンの濃度を1.25%w/vに低減させることは(示されていない)、約20.25−20.30への有用な近見視力改善をもたらしたが、より高い用量範囲で、アルカリ性pHが、より迅速な発現、より長い持続期間およびより大きい効果をもたらしたほど有効でなかった。0.037%w/vのブリモニジンの添加は、局所的点眼後15分以内に眼の充血を(ブリモニジンを用いず4のうち4、示されていない)ベースラインに低下し、このことは、視覚が矯正された間中ほぼずっと維持された。グリセリン0.10%w/vを添加することは、刺痛を顕著に低下した。代わりにポロキサマー188 0.05%w/vおよびステアリン酸ポリオキシル40 0.05%w/vを添加することは、しかしながら、初期の刺痛をさらに低下したが、より粘性であった。グリセリン0.1%w/v、6.5のpHのポロキサマー188 0.1%w/vの組合せは、発現、持続期間、快適性および有効性を顕著に低下した。AB11Tは、グリセリン、ポロキサマー188、またはステアリン酸ポリオキシル40を含まず、実質的な刺痛および実験の中断をもたらし、局所的点眼の直後に眼をフラッシュ洗浄した。ブリモニジンの代わりにAB12T中にグアンファシン0.037%w/vを代用することは、充血低下の延長およびある程度のホワイトニングとともに最小の初期充血をもたらし、最適な効果のためにわずかにより高いアセクリジン濃度を必要とするものの最高の美容術を総合的に提供すると思われる。
【0137】
全てのベースライン視覚データは、遠見コンタクトレンズで矯正された視覚に基づいた。近見視力は、AB4TおよびAB6Tの導入後30分で水平に8インチから10インチ突出していることが対象によって認められた。
【0138】
AB4TおよびAB6Tを、両方の単眼および両眼で反復した。単眼治療と対比して、両方の眼が治療された場合に奥行感覚、3ptへの近点視力(20.15)および近点距離(8インチ、20.20)の実質的な改善が認められた。単眼治療は、治療された眼だけを試験するのと対比して、両方の眼を開けた視覚の悪化をもたらした。
【0139】
[実施例4] アセクリジン、ブリモニジン、トロピカミドおよび添加剤の濃度の効果
【0140】
【表4】
【0141】
表4において見られる通り、処方#8−9、0.42%w/vへのブリモニジンの増加は、0.5への充血低下をもたらし、他方、0.75%w/vのCMCは水様コンシステンシーをもたらした。予想外にも、処方#10−11において、CMCを0.75%w/vから、0.80%w/vから0.87%w/vの範囲に増加させること、およびNaClを0.25%w/vから0.75%w/vに増加させることは、より濃厚なコンシステンシーおよび残留時間の7時間から10−12時間への増加をもたらし、鼻涙管へ排出した薬物の量を減少した。経鼻通過へのこの減少薬物送達は、より少ない鼻閉をもたらす。
【0142】
処方#13−18において、1.61%w/vから1.53%w/vへのアセクリジンの量の減少は、1.8−2.0mmの瞳孔サイズ範囲をもたらした。瞳孔の制限の結果としてのかすみは、アセクリジンの量の減少とともに、1.5から0.5に直線的に減少した。具体的には、1.8mmから2.0mmの瞳孔は、1.5mmから1.7mmの瞳孔よりも41%多い光を生じさせた。驚くべきことに、1.8mmから2.0mmの瞳孔は、1.75Dの近見深度増加を有した。これは、1.5−1.7mm範囲で見られた有益な2.00Dから0.25Dだけの損失である。したがって、1.80mmから2.0mm範囲は、41%多い光を生成しながら、また、年齢60歳未満の個人における近見視力の増加という完全な利益を可能にし;一方で、年齢60歳以上の個人は、また、全面的なコンピューター利益および幾分増加された近見利益を経験した。
【0143】
0.042%w/v(処方#8−#11)から0.044%w/v(処方#13−#18)へのトロピカミド濃度の増加は、無視できる量への痛みの減少をもたらした。痛みの量は、個人の年齢も相関し得る。45歳未満のような個人について、0.046%w/vから0.060%w/vの範囲へのトロピカミド濃度の増加が好ましくあり得る。
【0144】
さらに、表4は、処方#13および#17で見られた予想外の結果を示しており、ここで、0.25%w/vから、0.50%w/vから0.75%w/vの範囲へのNaClの増加は、充血低下剤ブリモニジンの添加なしでも、1.0だけの許容される充血スコアをもたらした。
【0145】
処方#15、#16および#17は各々、以下の利益を組み合わせることによる5の総合的最大格付けをもたらす:(1)処方#8−#12において見られる近見視力利益に有意に影響することなく、生成される光の量を改善するためのアセクリジン濃度の低下;(2)ブリモニジンの非存在下でさえ充血のさらなる低下をもたらすNaCl濃度の増加;および(3)眼上でのより長い残留時間をもたらすCMC濃度の増加。
【0146】
処方#19は、処方#15−#17に対して高い応答者であるとともに1.53%w/vのアセクリジンで顕著なかすみを得る少数の個人のための優れた代替物である。処方#20は、処方#19に対して低い応答者である少数の個人のための優れた代替物である。最後に、処方#21は、低い応答者であるとともに処方#20で不十分な瞳孔応答を得る少数の個人のための優れた代替物である。
【0147】
[実施例5] ステアリン酸ポリオキシル40、HPβCDおよびポロキサマー407の効果の比較
【0148】
【表5】
【0149】
臨床プロトコール
完全遠見矯正を有する20人の老視患者に、各々、上記処方(#22−#23)の1つを与えた。全ての患者は、点滴前および点滴後、遠見および近見視力測定、Zeiss Visante(登録商標)(VisanteはCarl Zeiss Meditec AGの登録商標である。)光干渉断層撮影、眼軸長およびコントラスト視力試験(即ち、Colenbrander−Michelson 10% Lumターゲット)を受け、以下の結果であった:
全ての患者は、1.5mmから2.20mmの収縮瞳孔を達成した;
患者は、毛様体痛、毛様体痙攣、または遠近調節の誘発を経験しなかった;
全ての患者は、14インチで20/30+視力以上を達成し、彼らの高いコントラスト近見視力結果に非常に満足し、焼けるまたは痛むという著しい愁訴がなかった;
効果の持続期間は、全ての場合において6−8時間続いた;
両眼視は、単眼試験よりも1−1.5の追加ラインの近見視力を全ての患者に与えた;
最後の10人の患者は、20インチ(即ちコンピューター距離、携帯電話距離)で試験され、全員が20/25以上の近見視力を達成した;
中程度に遠視の(およそ+2.25球体)未矯正老視者は、20/30範囲において遠見および近見視力で20/25以上のレベルに改善した遠見視力に非常に満足した;
未矯正遠見視力は、小さい屈折異常を日常的に矯正しないことを選択したような患者について、しばしば改善された。
【0150】
表5において見られる通り、ステアリン酸ポリオキシル40の使用は、視覚的ぼやけおよび充血が最小の量である最も快適なアセクリジン処方物を提供する。処方#22のものと同様の結果を達成するため、処方#23は、10−15%より高い濃度の非イオン性界面活性剤を必要とし、処方#24は、15−20%より高い濃度の非イオン性界面活性剤を必要とする。HPBCDは、おそらく酸化を示す時間の経過による色変化を誘発した。Captisol(登録商標)(スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン)を代用し、同様の所見であった。
【0151】
[実施例6] 好ましい実施形態におけるアセクリジン濃度の調節。
【0152】
好ましい実施形態:
アセクリジン1.35%−1.55%w/v;
ステアリン酸ポリオキシル40 5.5%w/v;
NaCl 0.037%w/v;
粘度増強剤、好ましくはCMC 0.80%w/v、または約0.09%w/vから約1.0%w/vの濃度のCarbopol(登録商標)940のような、局所的点眼で約5cpsから約35cpsの粘度を達成するのに充分なCarbopol(登録商標)934または940の量;
BAK 0.02%w/v;および
リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、シトロリン酸緩衝液または酢酸緩衝液、約3mMから約10mM、
ここで、pHは約4.75から約6.0である。
【0153】
1.35%w/vのアセクリジンについて−
局所的点眼時の刺痛、0.25/4.0(約2−5秒続く。);
10分で誘発された充血:1.0から1.5/4.0;
30分で誘発された充血:0.0から0.25/4.0;
快適性:非常に高い。
湿潤:非常に高い、眼は単回の局所的点眼後の24時間期間のほとんどの間、改善された湿潤の感覚を維持する。
焦点深度遠見:優れている。
焦点深度近見:優れている。
【0154】
いく人かの対象で上記処方物を試験する際、アセクリジンの濃度に依存して臨床的効果にわずかな範囲があることを発見し、ここで、1.35%−1.55%w/vのアセクリジンが好ましいが、該濃度について、1.35%w/vおよび1.45%w/vは、ほとんどの対象に所望の利益を与える。
【0155】
さらに、1.35%w/vのアセクリジンの臨床的効果は、以下の通りに点眼された場合に改善され得ることが発見される:
1)ベースライン効果:各眼に1滴。
2)効果の増強:各眼に2滴。
3)より大きな効果:上記の2)の後に上記の1)を反復。
4)最大効果:上記の2)の後に上記の2)を反復。
【0156】
[実施例7] コンタクトレンズ装用を延長するための好ましい実施形態の使用。
好ましい実施形態:
アセクリジン1.45%w/v;
ステアリン酸ポリオキシル40 5.5%w/v;
NaCl 0.037%w/v;
粘度増強剤、好ましくはCMC 0.80%w/v、または約0.09%w/vから約1.0%w/vの濃度のCarbopol(登録商標)940のような、局所的点眼で約5cpsから約35cpsの粘度を達成するのに充分なCarbopol(登録商標)934もしくは940の量;
BAK 0.02%w/v;ならびに
リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、シトロリン酸緩衝液または酢酸緩衝液、約3mMから約10mM、
ここで、pHは約4.75から約6.0である。
【0157】
ベースラインとして、1日装用だけのための連続装用レンズ(Air Optix(登録商標);Air Optixは、Novartis AGの登録商標)を通常装用した対象は、これらのレンズを付けて一晩寝た。毎朝起床時に、対象の視覚はぼやけており、コンタクトレンズは、一晩で形成したフィルムおよび堆積物の除去および清浄が必要だった。起床時の遠見での平均視覚:20.60;近見でのMichelsonコントラスト視力表上の平均視覚:20.80。
【0158】
次いで、連続した7日間、上記処方物を7amから10amの間で毎日単回用量として点眼した。対象は1日中Air Optix(登録商標)レンズを装用し、一晩中レンズを付けて寝た。毎朝起床時、遠見での対象の視覚:20.20+;裸眼の近見での視覚20.40(対象が一晩中レンズを装用せず、代わりに起床時にレンズを挿入した場合、対象のベースライン老視と一致する。)。
【0159】
[実施例8] ステアリン酸ポリオキシル40およびCaptisol(登録商標)(スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン)の効果の比較
【0160】
【表6】
【0161】
表6において見られる通り、界面活性剤としてステアリン酸ポリオキシル40を使用する場合、EDTAの除外は、充血の低下およびステアリン酸ポリオキシル40組成物(処方#25および#26)の中で最高の総合格付けをもたらす。コカミドプロピルベタイン(「CAPB」)の添加は、充血をさらに低下するが、しかしながら、有意な痛みをもたらす(処方#31)。Replacingステアリン酸ポリオキシル40をCaptisol(登録商標)(スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン)と置き換えることおよびマンニトールを添加することは、ステアリン酸ポリオキシル40へのCAPBの添加と同様の結果を充血低下において達成するが、付随の痛みなくアセクリジン組成物の中で最も高い総合格付けをもたらす(処方#32)。数週後、Captisol(登録商標)(スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン)を用いる処方物は、おそらく酸化を示すオレンジ色相を有した。
【0162】
[実施例9] 好ましいコールドチェーン組成物
組成物
約1.40%w/v−1.80%w/vの濃度のアセクリジン;および
約0.42%w/vのトロピカミド;
約5.5%w/vのステアリン酸ポリオキシル40;
約2.5%w/vから4.5%w/vの濃度のマンニトール;
約0.09%w/vから約2.0%w/vの濃度のカルボマー940;
任意選択的に、約0.2%w/vの濃度のBAKのような保存料;
任意選択的に、約0.1%の濃度のシトレート;
任意選択的に、2−100mM、より好ましくは3−5mMの酢酸緩衝液またはリン酸緩衝液、
ここで、前記組成物は、約4.50から約5.0;好ましくは、約4.75から約5.0のpHを有し;
ここで、w/vは、体積あたりの重量を示す。
【0163】
上に記載されている通りの組成物を、62歳の対象に投与した。それは、1.8−1.9mm ouの瞳孔、20.20+読取り視覚および20.20+遠見視力をもたらし;他方、カルボマー940を用いないと、2.5%のマンニトールで有効性の低下という結果になり、4.0%のマンニトールで近見視力効果がないという結果になった。毛様体痙攣または遠見視力のロスがないという結果になった。発現は約15分内であった。4のうち約1+の一過性充血が、アルファアゴニスト血管収縮神経なく約20分間認められた。BAKの存在または非存在は臨床的効果を有せず、任意選択の保存料を提供するために使用された。
【0164】
[実施例10] 安定なアセクリジン処方物
試験された組成物:
約1.50%w/vの濃度のアセクリジン;
約0.042%w/vの濃度のトロピカミド;
約5.5%w/vの濃度のステアリン酸ポリオキシル40;
約2.5%w/vの濃度のマンニトール;
約3mMの濃度のシトレート;
ここで、前記組成物は約4.75のpHを有する。
【0165】
上記組成物の20個の試料を均等に分け、25℃および4℃で貯蔵した。貯蔵の前に、ハイパス液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を使用して、アセクリジンの初濃度を測定した。各溶液中のアセクリジンの量を、アセクリジンの参照溶液と比較して主ピーク下の面積によって算出した。試料を次いで3カ月間貯蔵した。アセクリジン測定を1カ月、2カ月および3カ月で行った。安定性試験の結果を表7に示す。
【0166】
【表7】
【0167】
表7において見られる通り、2℃から8℃でのアセクリジン組成物の「コールドチェーン貯蔵」または貯蔵は、3つの全時点でアセクリジンの安定性の有意な増加をもたらした。