(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グロメットがドアパネルに対して取り付けられるため、寸法誤差等が生じることによってグロメットの周囲(グロメットとウェザーストリップとの間や、グロメットとドアパネルとの間)に隙間が形成され、ウェザーストリップによる止水が不充分になってしまうことがあった。特に、板状のグロメットベース部のうち電線の案内方向に沿った端面を水が伝うことにより、このような水がグロメット周囲の隙間を通過しやすいという不都合があった。
【0005】
本発明の目的は、止水性能を向上させることができるグロメッ
トを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、車両の内外を区画するパネル部材の被取付面に取り付けられるとともに電線が挿通されるグロメットであって、前記被取付面に交差する面直案内方向に前記電線を案内する筒状部と、前記筒状部に接続され、前記被取付面に沿った面内案内方向に前記電線を案内する中空の板状部と、を備え、前記板状部のうち前記被取付面と同じ側に向けられる露出面は、前記面内案内方向に交差するように延びるウェザーストリップが設けられる止水部を有し、前記板状部における前記面内案内方向に沿って延びる端面のうち少なくとも一面には、前記止水部よりも前記筒状部との接続部分側に、凹部が形成されて
おり、前記板状部のうち前記被取付面に対向する取付面は、前記凹部が形成された端面に向かうにしたがって前記露出面に近づくように傾斜した傾斜部と、該傾斜部から前記端面まで前記ウェザーストリップの延在方向に沿って延びる平行部と、を有し、前記凹部の深さは、前記平行部における前記延在方向の寸法よりも小さいことを特徴とするグロメットである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、板状部の端面に凹部が形成されていることで、この端面を伝った水が凹部に到達した際に、端面に交差する方向に沿って水が流れようとする。即ち、板状部と筒状部との接続部分側からウェザーストリップ側に向かうように、水が端面を伝って流れようとした場合、この途中に形成された凹部によって流れが変わり、ウェザーストリップに到達しにくくなる。これにより、グロメットの周囲に隙間が形成されてしまった場合でも、水がこの隙間を通過しにくくなり、止水性能を向上させることができる。
また、凹部の深さが平行部における延在方向の寸法よりも小さい、即ち、凹部が傾斜部まで到達していないことから、凹部から傾斜部と被取付面との間に水が浸入しにくく、止水性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス10のグロメット20が被取付面P1に取り付けられた様子を示す斜視図であり、
図2は、グロメット20のグロメット本体4を示す斜視図であり、
図3は、他の形態のグロメット本体4を示す斜視図であり、
図4は、グロメット本体4に形成された凹部433Aを通るようにグロメット20を切断した様子を示す断面図であり、
図5は、グロメット20を示す正面図であり、
図6は、グロメット20を示す背面図であり、
図7は、グロメット20において水が伝う様子を示す斜視図である。
【0018】
本実施形態のワイヤハーネス10は、
図1に示すように、グロメット20と、電線30と、を備え、車両の内外を区画するパネル部材としてのドアパネルPに取り付けられる。尚、本実施形態では、ドアパネルPは車両の側方に設けられるものであり、車両の進行方向をX方向とし、車幅方向をY方向とし、上下方向をZ方向とする。ドアパネルPを有する扉体は、ヒンジによって支持されて回動することで開閉するものであってもよいし、スライドによって開閉するものであってもよい。
【0019】
グロメット20は、グロメット本体4と、アウタ5と、プロテクタ6と、を備え、ドアパネルPのうち閉状態においてX方向前方側を向くとともにYZ平面に略平行な端面を被取付面P1として取り付けられる。
【0020】
グロメット本体4は、ゴムやエラストマー等の可撓性を有する弾性部材によって構成され、
図2に示すように、筒状部41と、筒状部41の一端に設けられた連結開口部42と、筒状部41の他端に接続された板状部43と、を有して全体が一体に形成されている。尚、本実施形態のワイヤハーネス10はY方向一方側(前方側を向いた際の右側)のドアパネルPに設けられるものであり、
図2に示すようなグロメット本体4を有するが、ワイヤハーネスがY方向他方側のドアパネルPに設けられる場合には、グロメット本体4は、
図3に示すような形状(
図2のグロメット本体4と対称な形状)を有していればよい。
【0021】
筒状部41は、グロメット20がドアパネルPに取り付けられた際に、被取付面P1に交差(略直交)するX方向を面直案内方向として延びる。即ち、筒状部41は、その内側に挿通された電線30をX方向に沿って案内する。また、筒状部41は蛇腹状に形成されており、例えばドアパネルPを有する扉体の開閉時に屈曲されてもよい。
【0022】
連結開口部42は、車両本体に設けられた適宜な連結部に接続される。即ち、筒状部41に挿通された電線30が外部に露出しないように車両本体側に配索されるようになっている。
【0023】
板状部43は、電線30が挿通される挿通部430(
図4参照)を有して中空に形成され、被取付面P1に沿ったY方向を面内案内方向として電線30を案内する。即ち、板状部43は、筒状部41との接続部分431から車室内側に向けて電線30を案内する。板状部43のうち接続部分431と反対側の端部は、開口するとともに後述するようにプロテクタ6が挿入されるようになっている。
【0024】
被取付面P1には、このような板状部43を埋め込むために、凹状の収容部P2が形成されている。収容部P2は、
図4に示すように、Z方向の中央側に向かうにしたがって徐々に深くなるように傾斜した傾斜部P21と、YZ平面に沿って延びる平行部P22と、を有する。板状部43は、後述するように収容部P2に対応した傾斜部434Aを有しており、収容部P2に埋め込まれることにより、被取付面P1と同じ側に向けられる露出面432が、被取付面P1のうち収容部P2が形成されていない部分から若干突出した位置に配される。
【0025】
図1に示すように、ドアパネルPには、被取付面P1および露出面432上を通過するようにウェザーストリップWが設けられる。露出面432のうちウェザーストリップWが設けられる部分が止水部432Aとなる。このとき、板状部43の面内案内方向(Y方向)と、ウェザーストリップWの延在方向(Z方向)と、が略直交する。尚、ウェザーストリップWは、ドアパネルPの外周を囲むように設けられる。
【0026】
板状部43のうちY方向に沿って延びるとともに上方側を向く端面433には、止水部432Aよりも接続部分431側(即ち、Y方向において止水部432Aと接続部分431との間)に、切欠き状の凹部433Aが形成されている。また、この端面433は、露出面432の側を向くような傾斜を有している。凹部433Aには、端面433における他の部分と同様に、露出面432の側を向くような傾斜が形成されている。
【0027】
図4に示すように、板状部43のうち被取付面P1に対向する取付面434は、凹部433Aが形成された端面433に向かうにしたがって露出面432に近づくように傾斜した傾斜部434Aと、傾斜部434Aから端面433までZ方向に沿って延びる平行部434Bと、を有する。平行部434Bは、被取付面P1のうち収容部P2が形成されていない部分に重ねられ、少なくともその端部において被取付面P1に当接している。即ち、平行部434Bと被取付面P1との間に水が浸入しないようになっている。また、凹部433Aの深さは、平行部434BにおけるZ方向の寸法よりも小さく、平行部434Bは、凹部433Aの底においても被取付面P1のうち収容部P2が形成されていない部分に当接する。
【0028】
アウタ5は、グロメット本体4を被取付面P1に固定するためのものであって、例えばグロメット本体4よりも剛性の高い合成樹脂によって構成される。アウタ5は、
図5、6にも示すように、Z方向に沿って延びる帯板状に形成され、接続部分431を避けるように形成された切欠き部51と、両端に形成された固定部52と、を有し、板状部43を被取付面P1との間に挟み込む。固定部52はボルト孔を有し、ボルト孔にボルトが挿通され、このボルトが被取付面P1に設けられたナット等と螺合することにより、アウタ5が被取付面P1に固定される。アウタ5がこのように固定されることにより、板状部43が被取付面P1に押し付けられるようになっている。
【0029】
プロテクタ6は、板状部43の挿通部430に挿通された電線30を保護するためのものであって、例えばグロメット本体4よりも剛性の高い合成樹脂によって構成される。プロテクタ6は、中空状に形成されるとともに、板状部43に形成された開口から挿通部430内に挿入され、さらに内側に挿通される電線30を保護する。また、板状部43の開口から引き出された電線30はプロテクタ6によって案内される。
【0030】
電線30は、例えばドアパネルPに内蔵された電装部品(スピーカやパワーウインドウ用の駆動手段等)に電力を供給したり信号を送受信したりするために設けられ、車両本体に設けられたバッテリおよび制御手段に一端が接続され、ドアパネルP内で適宜に配索され、電装部品に他端が接続される。尚、電線30の端部にはコネクタ等が適宜に設けられていればよい。
【0031】
以上のようなワイヤハーネス10が取り付けられたドアパネルPの止水構造について説明する。まず、ドアパネルPの外周にウェザーストリップWが設けられていることで、ドアパネルPの外周面(端面)を伝って車室外側から車室内側に向かう水が遮られ、止水される。このとき、被取付面P1にグロメット20が取り付けられていることで、グロメット20と被取付面P1との間を通るようにして車室外側から車室内側に向かうように水が流れようとすることがある。
【0032】
このような水のうち、特に板状部43における上方側を向いた端面433を伝う水が車室内側に向かいやすい。この端面433には上記のように凹部433Aが形成されており、端面433を伝う水は、
図7に示すように凹部433Aに到達すると下方側に向かうように流れが変わりやすい。
【0033】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、板状部43の端面433に凹部433Aが形成されていることで、この端面433を伝った水が凹部に到達した際に、端面433に交差する方向に沿って水が流れようとする。即ち、板状部43と筒状部41との接続部分431側からウェザーストリップW側に向かうように、水が端面433を伝って流れようとした場合、この途中に形成された凹部433Aによって流れが変わり、ウェザーストリップWに到達しにくくなる。これにより、グロメット20と被取付面P1との間に隙間が形成されてしまった場合でも、水がこの隙間を通過しにくくなり、止水性能を向上させることができる。
【0034】
また、凹部433Aが形成された端面433が上方側を向くことで、端面433を伝って凹部433Aに到達した水が重力によって下方側に向かって流れやすく、止水性能をさらに向上させることができる。
【0035】
また、凹部433Aの深さが板状部43の平行部434BのZ方向寸法よりも小さく、凹部433Aが傾斜部434Aまで到達していないことから、凹部433Aから傾斜部434Aと被取付面P1との間に水が浸入しにくく、止水性能を向上させることができる。
【0036】
また、凹部433Aが形成された端面433が露出面432の側を向くような傾斜を有していることで、この端面433を伝う水が露出面432側に流れやすい。従って、板状部43と被取付面P1との間に水が浸入しにくく、止水性能を向上させることができる。
【0037】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0038】
例えば、前記実施形態では、上方側を向いた端面433に凹部433Aが形成されるものとしたが、凹部が形成される端面は、板状部の面内案内方向に沿って延びるものであればよく、他の方向を向いていてもよい。即ち、水平方向に対して多少の傾きを有する端面に凹部が形成されていてもよいし、下方側を向いた端面に凹部が形成されていてもよい。どのような端面であっても、車両が走行する路面の傾きや走行時の振動等によって水が車室内側向かって伝って流れようとすることがあり、凹部を形成することによって止水性能を向上させることができる。また、上方側を向く端面と下方側を向く端面との両方に凹部を形成してもよく、このような構成によれば、Y方向一方側のドアパネルと他方側のドアパネルとに設けるグロメットを共通化した場合に、いずれのドアパネルに設けられるグロメットにおいても、凹部が形成された端面が上方側を向く。
【0039】
また、前記実施形態では、板状部43の取付面434が傾斜部434Aと平行部434Bとを有するものとしたが、板状部の取付面は、被取付面に応じた形状を有していればよい。このとき、取付面は、凹部の底においても被取付面と当接し、被取付面との間に水が浸入しないような形状を有していればよい。
【0040】
また、前記実施形態では、凹部433Aが形成された端面433が露出面432の側を向くような傾斜を有しているものとしたが、凹部が形成されることによって水の流れが充分に変わりやすく止水性能を確保できる場合には、端面にこのような傾斜が形成されていなくてもよい。
【0041】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。