(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物の引張弾性率は、前記ポリオレフィンの少なくとも50%であること、又は前記組成物の引張強度は、前記ポリオレフィンの少なくとも50%であること、又は前記組成物の曲げ弾性率は、前記ポリオレフィンの少なくとも50%であること、又は前記組成物の曲げ強度は、前記ポリオレフィンの少なくとも50%であること、のうち少なくとも1つの条件を満たす、請求項1に記載の組成物。
前記ポリオレフィン耐衝撃性改良剤は、エチレンプロピレンエラストマー、エチレンオクテンエラストマー、エチレンプロピレンジエンエラストマー、エチレンプロピレンオクテンエラストマー又はこれらの組み合わせである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
中空ガラス微小球を、ポリプロピレン又は高密度ポリエチレンなどのポリオレフィンへ添加することにより、軽量化されるが、通常、衝撃強度、引張強度及び曲げ強度に悪影響を与える。衝撃強度、引張強度及び曲げ強度は全て、ポリオレフィン相の属性であり、中空ガラス微小球の添加はポリオレフィン相を希釈する。また、中空ガラス微小球の添加により、一般に、粘度が無充填ポリオレフィンに対して増加する。粘度の増加は、特に一部のポリマー処理技術(例えば、射出成型)に対して、不都合である。
【0014】
典型的にエラストマー材料である耐衝撃性改良剤は一般に、ポリオレフィン組成物中で使用され、中空ガラス微小球の添加に付随する衝撃強度の低下を補うために有用であり得る。耐衝撃性改良剤の添加によって衝撃特性を向上させ得るが、耐衝撃性改良剤は、ポリオレフィンの引張及び曲げ強度を減少させる傾向もある。耐衝撃性改良剤を含む、ポリオレフィンと中空ガラス微小球の複合体の場合、上述したような強度誘導ポリマー相の希釈と、軟質でゴム質の耐衝撃性改良剤の存在により、一般に、元のポリオレフィンに対して、引張強度及び曲げ強度が大きく低下する。多くの耐衝撃性改良剤は、組成物の粘度を増加させる、高粘度、高分子量のゴム質材料であり、一部のポリマー処理技術に対して不利益である。中空ガラス微小球と耐衝撃性改良剤の添加は、両方とも粘度を増加させるため、例えば射出成型に好適な粘度を有する、耐衝撃変性ポリオレフィン−中空ガラス微小球複合体を得ることは難しい。
【0015】
本発明者らは、化学的に架橋されておらず、極性官能基を含まないポリオレフィン耐衝撃性改良剤と、組成物中のマトリックスポリオレフィンと同じ繰り返し単位に加えて、極性官能基で修飾された繰り返し単位を含む相溶化剤を同時に使用することにより、耐衝撃性改良剤と相溶化剤の他の組み合わせの場合よりも効果的に衝撃強度を向上させつつ、マトリックスポリオレフィン単体の引張強度及び曲げ強度に近いか、又は場合によってはそれを越え得る、引張強度及び曲げ強度が、組成物にもたらされることを発見した。上述したように、より高い衝撃強度は一般に、引張及び曲げ強度を低下させる犠牲の上に得られる。理論に束縛されるものではないが、マトリックスポリマーと同じ主ポリマー鎖に官能基がグラフト化された機能性相溶化剤(functional compatibilizer)は、ポリマー相と共結晶化可能であることから、衝撃強度、引張強度及び曲げ強度を向上させ得るものと考えられる。極性官能基を含まない、化学的に非架橋の耐衝撃性改良剤と、組成物のマトリックスを提供するポリオレフィンは、低粘土となるように選択可能であるため、軽量で、優れた衝撃強度、引張強度及び曲げ強度を有し、射出成型に良く適した組成物がもたらされる。
【0016】
ポリマー組成物中に中空ガラス微小球を含めることにより、多くの利点をもたらし得るが、ガラスバブルを、製造プロセス中にポリマー内に添加するプロセスが、いくつかの課題をもたらす場合がある。ガラスバブルを取り扱うことは、軽粉末を取り扱うことと同様であってよい。中空ガラス微小球は、簡単に含有させることができず、清潔な環境中で使用することが難しい場合がある。また、正確な量で中空ガラス微小球をポリマーに加えることが難しい場合もある。したがって、本開示は、例えば、中空ガラス微小球を、最終用途射出成型可能熱可塑性組成物に組み込むために有用な、マスターバッチ組成物を提供する。マスターバッチ組成物中に中空ガラス微小球を送達することにより、製造中に遭遇する取扱いの困難さの少なくとも一部を解消可能である。
【0017】
本開示に係る組成物に有用なポリオレフィンの例としては、一般構造CH
2=CHR
10で表されるモノマーから作製されるものが挙げられ、式中、R
10は、水素又はアルキルである。一部の実施形態では、R
10は、最大10個の炭素原子、又は1〜6個の炭素原子を有する。そのようなポリオレフィンの第1の繰り返し単位は、一般式、−[CH
2−CHR
10]−で表され、式中、R
10は、上述した実施形態のいずれかと同様に定義される。好適なポリオレフィンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン);ポリ(3−メチルブテン;ポリ(4−メチルペンテン);エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクタデセンとのコポリマー;並びに、ポリエチレンとポリプロピレンのブレンドが挙げられる。典型的に、本開示に係る組成物は、ポリエチレン又はポリプロピレンのうちの少なくとも一方を含む。ポリエチレンを含むポリオレフィンは、ポリエチレンホモポリマーであってもよいし、エチレン繰り返し単位を含有するコポリマーであってもよいことが理解されるべきである。同様に、ポリプロピレンを含むポリオレフィンは、ポリプロピレンホモポリマーであってもよいし、プロピレン繰り返し単位を含有するコポリマーであってもよいことが理解されるべきである。ポリエチレン又はポリプロピレンのうちの少なくとも一方を含むポリオレフィンはまた、ポリプロピレン又はポリエチレンのうちの少なくとも一方を含む異なるポリオレフィンのブレンドの一部であってもよい。有用なポリエチレンポリマーとしては、高密度ポリエチレン(例えば、0.94〜約0.98g/cm
3などの密度を有するもの)、及び線状又は分岐状低密度ポリエチレン(例えば、0.89〜0.94g/cm
3などの密度を有するもの)が挙げられる。有用なポリプロピレンポリマーとしては、低耐衝撃性ポリプロピレン、中耐衝撃性ポリプロピレン又は高耐衝撃性ポリプロピレンが挙げられる。高耐衝撃性ポリプロピレンは、コポリマーの重量に対して、少なくとも80、85、90又は95重量%のプロピレン繰り返し単位を含むポリプロピレンのコポリマーであってもよい。これらの実施形態において、第1の繰り返し単位は、コポリマー中で最も豊富なものであることを理解すべきである。ポリオレフィンは、そのようなポリマーの立体異性体の混合物(例えばイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物)を含んでよい。好適なポリプロピレンは、種々の商業的供給源、例えば、商品名「PRO−FAX」及び「HIFAX」のもと、LyondellBasell(Houston、TX)から、及び商品名「PINNACLE」のもと、Pinnacle Polymers(Garyville、LA)から得ることができる。一部の実施形態では、ポリオレフィン中の第1の繰り返し単位は、プロピレン繰り返し単位である。一部の実施形態では、ポリオレフィン中の繰り返し単位は、プロピレン繰り返し単位からなる。一部の実施形態では、ポリオレフィン中の第1の繰り返し単位は、エチレン繰り返し単位である。一部の実施形態では、ポリオレフィンはポリエチレンである。一部の実施形態では、ポリオレフィン中の繰り返し単位は、エチレン繰り返し単位からなる。一部の実施形態では、ポリエチレンは高密度ポリエチレンである。好適なポリエチレンは、種々の商業的供給源、例えばBraskem S.A.(Sao Paolo、Brazil)から得ることができる。
【0018】
ポリオレフィンは、メルトフローインデックスで測定されたときに、比較的低い粘度を有するように選択されてよい。一部の実施形態では、ポリオレフィンは、少なくとも3グラム/10分(一部の実施形態では、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40又は50グラム/10分)の230℃及び2.16キログラムでのメルトフローインデックスを有する。ポリオレフィンのメルトフローインデックスは、ASTM D1238−13:Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometerによって測定される。
【0019】
物品の射出成型に好適な最終(例えばレットダウン)組成物において、第1の繰り返し単位を含むポリオレフィンは典型的に、本開示に係る組成物、及び/又は本開示に係る方法にて有用な組成物の主要成分である。一般に、ポリオレフィンは、組成物の総重量に対して、少なくとも50重量%を提供する。一部の実施形態では、第1の繰り返し単位を含むポリオレフィンは、本組成物の総重量に対して、50重量%〜75重量%、55重量%〜70重量%、又は60重量%〜70重量%の範囲で存在する。
【0020】
本開示に係るマスターバッチ組成物は、第1の繰り返し単位を含むポリオレフィンを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。一部の実施形態では、マスターバッチは、第1の繰り返し単位を含むポリオレフィンを含むが、その割合は、上記射出成型に好適なレットダウン組成物中よりも低い。一部の実施形態では、マスターバッチは、マスターバッチの総重量に対して、最大5、4、3又は2重量%の量で、ポリオレフィンを含む。マスターバッチを他の適合材料と混合する工程は、一般に、マスターバッチの「レットダウン」と呼ばれる。本開示において、マスターバッチから作製された組成物はまた、レットダウン組成物と呼ばれる場合もある。マスターバッチ組成物のレットダウンを行うために有用な組成物には、上記レットダウン組成物を作製するために十分な量のポリオレフィンが含まれる。
【0021】
相溶化剤は、本開示に係る組成物中のポリオレフィンと同一の繰り返し単位を含み、これは、第1の繰り返し単位である。相溶化剤はまた、極性官能基で修飾された第1の繰り返し単位である、第2の繰り返し単位を含む。一部の実施形態では、極性官能基には、無水マレイン酸、カルボン酸基及び水酸基が含まれる。一部の実施形態では、相溶化剤は、無水マレイン酸変性ポリオレフィンである。組成物中のポリオレフィンがポリプロピレンを含む場合、相溶化剤は、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。組成物中のポリオレフィンがポリエチレンを含む場合、相溶化剤は、無水マレイン酸変性ポリエチレンである。相溶化剤を、組成物の機械的特性を改善するのに十分な量で、組成物に加える。極性官能基のグラフト化の程度(例えば変性ポリオレフィン中の無水マレイン酸のグラフト化の程度は、約0.5〜3%、0.5〜2%、0.8〜1.2%又は約1%の範囲であってよい)。
【0022】
レットダウン組成物において、相溶化剤は、組成物の総重量に対して、2%を超える量で組成物中に存在してよい。一部の実施形態では、相溶化剤は、組成物の総重量に対して、少なくとも2.5、3、3.5又は4%の量で組成物中に存在する。レットダウン組成物において、相溶化剤は、組成物の総体積に対して、1.5%を超える量で組成物中に存在してよい。一部の実施形態では、相溶化剤は、組成物の総体積に対して、少なくとも1.5%〜4%又は2%〜4%の量で組成物中に存在する。
【0023】
マスターバッチ組成物において、相溶化剤は、マスターバッチ組成物の総体積に対して、4体積%〜15体積%、一部の実施形態では、10体積%〜15体積%の範囲内で存在してよい。マスターバッチのレットダウンを行うための組成物はまた、マスターバッチのレットダウンを行うための組成物の総重量に対して、4体積%〜15体積%、一部の実施形態では、10体積%〜15体積%の相溶化剤を含んでもよい。
【0024】
以下の実施例12は、ポリプロピレン相溶化剤を含む、ポリプロピレン組成物を記述する。比較例7Eと比較すると、相溶化剤がポリエチレンから作製され、したがって、ポリプロピレンと同一の第1の繰り返し単位を有さない場合、相溶化剤が、ポリプロピレン繰り返し単位(即ち、ポリオレフィンと同一の第1の繰り返し単位)を含む場合よりも、組成物のノッチ付き衝撃強度、引張強度及び曲げ強度が低下する。この効果は、表19中の実施例30及び比較例15Aの比較によって示されるように、より耐衝撃性の高いポリプロピレンの場合に、また、表4中の実施例3及び比較例1Bの比較によって示されるように、高密度ポリエチレンの場合に、より顕著となる。比較例1Bと比較すると、相溶化剤がポリプロピレンから作製され、したがって、ポリエチレンと同一の第1の繰り返し単位を有さない場合、相溶化剤が、ポリエチレン繰り返し単位(即ち、ポリオレフィンと同一の第1の繰り返し単位)を含む場合よりも、組成物の引張強度及び曲げ強度が低下し、またノッチ付き衝撃強度が著しく低下する。
【0025】
耐衝撃性改良剤はまた、ポリオレフィンであり、化学的に架橋されておらず、極性官能基を含まない。例えば、耐衝撃性改良剤は、相溶化剤に関連して上記した極性官能基のいずれをも含まない。一部の実施形態では、耐衝撃性改良剤は、炭素−炭素及び炭素−水素結合のみを含む。一部の実施形態では、ポリオレフィン耐衝撃性改良剤は、エチレンプロピレンエラストマー、エチレンオクテンエラストマー、エチレンプロピレンジエンエラストマー、エチレンプロピレンオクテンエラストマー、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、ポリブテン又はこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、ポリオレフィン耐衝撃性改良剤は、エチレンオクテンエラストマーである。
【0026】
耐衝撃性改良剤は、メルトフローインデックスで測定されたときに、比較的低い粘度を有するように選択されてよい。異なるメルトフローインデックスを有する耐衝撃性改良剤の組み合わせもまた有用である。一部の実施形態では、少なくとも1種類のポリオレフィン耐衝撃性改良剤は、少なくとも10グラム/10分(一部の場合、少なくとも11、12又は13グラム/10分)の、190℃及び2.16キログラムでのメルトフローインデックスを有する。耐衝撃性改良剤及びポリオレフィンのメルトフローインデックスは、ASTM D1238−13:Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometerによって測定される。
【0027】
他の一般的な種類の耐衝撃性改良剤である、粉末状(ground)ゴム、コア−シェル粒子、機能性のエラストマー(例えば、商品名「AMPLIFY GR−216」のもと、Dow Chemical Company(Midland,MI)より入手可能なもの)、及び粒子(例えば、商品名「EXPNCEL」のもと、Akzo Novel(Amsterdam,The Netherlands)より入手可能なもの)などは、化学的に架橋されているか、又は官能化されているかの少なくとも一方であり、本開示に係る組成物中には含まれない。これらの耐衝撃性改良剤の多くは、組成物の粘度を増加させ、組成物を、一部のポリマー処理技術(例えば射出成型)に対して好適でなくする。更に、「EXPANCEL」粒子及び同様の粒子は、本明細書にて記述したポリオレフィン耐衝撃性改良剤よりも、より厳格な温度制御と、より精密な取扱いを必要とし、処理の際の課題を提示し得る。
【0028】
耐衝撃性改良剤を、組成物の衝撃強度を改善するのに十分な量にて、本開示に係る組成物に加えることが可能である。
【0029】
レットダウン組成物において、耐衝撃性改良剤は、組成物の総体積に対して、7.5体積%〜25体積%の範囲内で、組成物中に存在してよい。一部の実施形態では、耐衝撃性改良剤は、組成物の総体積に対して、少なくとも10、12、14、15又は16体積%〜最大で約20体積%の量で、組成物中に存在する。中空ガラス微小球の濃度が低いほど、必要な耐衝撃性改良剤はより少なくなる。マスターバッチのレットダウンを行うための組成物はまた、望む最終組成物に応じて、任意の好適な範囲(即ち、上記範囲のいずれか)にて、耐衝撃性改良剤を含んでもよい。
【0030】
マスターバッチ組成物において、耐衝撃性改良剤は、組成物の総体積に対して、50体積%〜75体積%の範囲内で、組成物中に存在してよい。一部の実施形態では、耐衝撃性改良剤は、組成物の総体積に対して、少なくとも50、55又は60体積%〜最大で約65、70又は75体積%の量で、マスターバッチ組成物中に存在する。マスターバッチ組成物の一部の実施形態では、耐衝撃性改良剤は、組成物の総体積に対して、60〜70体積%の範囲にて存在する。
【0031】
本開示に係る組成物及び方法において有用な中空ガラス微小球は、当該技術分野で既知の技術によって作製可能である(例えば、米国特許第2,978,340号(Veatch et al.)、同第3,030,215号(Veatch et al.)、同第3,129,086号(Veatch et al.)、及び同第3,230,064号(Veatch et al.)、同第3,365,315号(Beck et al.)、同第4,391,646号(Howell)、及び同第4,767,726号(Marshall)、及び米国特許公開第2006/0122049号(Marshall et al.)を参照のこと。中空ガラス微小球を調製するための技術では、典型的に、発泡剤(例えば、硫黄又は酸素と硫黄の化合物)を含有する、一般には「フィード」と称される破砕フリットを加熱する工程が含まれる。フリットは、融解ガラスが形成されるまで、高温でガラスの鉱物成分を加熱することによって作製可能である。
【0032】
フリット及び/又はフィードは、ガラスが形成可能な任意の組成を有してよいが、フリットは、典型的には総重量に対して、50〜90%のSiO
2、2〜20%のアルカリ金属酸化物、1〜30%のB
2O
3、0.005〜0.5%の硫黄(例えば単体硫黄、硫酸塩又は亜硫酸塩として)、0〜25%二価金属酸化物(例えば、CaO、MgO、BaO、SrO、ZnO又はPbO)、0〜10%のSiO
2以外の四価金属酸化物(例えば、TiO
2、MnO
2又はZrO
2)、0〜20%の三価金属酸化物(例えば、Al
2O
3、Fe
2O
3又はSb
2O
3)、0〜10%の五価原子酸化物(例えば、P
2O
5又はV
2O
5)、及びガラス組成物の融解を促進するための融剤として機能し得る、0〜5%のフッ素(フッ化物として)を含む。追加の成分がフリット組成物において有用であり、例えば、特定の性質又は特徴(例えば、硬度又は色)を、得られるガラスバブルに付与するためにフリット中に含めてもよい。
【0033】
一部の実施形態では、本開示に係る組成物及び方法にて有用な中空ガラス微小球は、アルカリ金属酸化物よりも、アルカリ土類金属酸化物をより多く含むガラス組成を有する。これらの実施形態の一部において、アルカリ土類金属酸化物の、アルカリ金属酸化物に対する重量比は、1.2:1〜3:1の範囲内である。一部の実施形態では、中空ガラス微小球は、ガラスバブルの総重量に対して、2%〜6%の範囲で、B
2O
3を含むガラス組成を有する。一部の実施形態では、中空ガラス微小球は、中空ガラス微小球の総重量に対して、最大5重量%のAl
2O
3を含むガラス組成を有する。一部の実施形態では、ガラス組成物は、Al
2O
3を実質的に含まない。「Al
2O
3を実質的に含まない」とは、最大5、4、3、2、1、0.75、0.5、0.25又は0.1重量%のAl
2O
3を意味してよい。「Al
2O
3を実質的に含まない」ガラス組成物は、Al
2O
3を有さないガラス組成物も含む。本開示を実施するために有用な中空ガラス微小球は、一部の実施形態では、少なくとも90%、94%、又は少なくとも97%のガラスが、少なくとも67%のSiO
2(例えば70%〜80%の範囲のSiO
2)、8%〜15%の範囲のアルカリ土類金属酸化物(例えばCaO)、3%〜8%の範囲のアルカリ金属酸化物(例えばNa
2O)、2%〜6%の範囲のB
2O
3及び0.125%〜1.5%の範囲のSO
3を含む、化学組成を有してよい。一部の実施形態では、ガラスは、ガラス組成物の総量に対して、30%〜40%のSi、3%〜8%のNa、5%〜11%のCa、0.5%〜2%のB及び40%〜55%のOの範囲を含む。
【0034】
中空ガラス微小球の「平均真密度」は、中空ガラス微小球の試料の質量を、ガスピクノメーターによって測定した際の、その質量の中空ガラス微小球の真の体積によって除すことによって得た商である。「真の体積」は、かさ体積ではなく、中空ガラス微小球を凝集させた総体積である。本開示を実施するために有用な中空ガラス微小球の平均真密度は一般に、少なくとも0.30グラム/立方センチメートル(g/cc)、0.35g/cc又は0.38g/ccである。一部の実施形態では、本開示実施のために有用な中空ガラス微小球は、最大約0.65g/ccの平均真密度を有する。「約0.65g/cc」は、0.65g/cc±5%を意味する。これらの実施形態の一部において、中空ガラス微小球の平均真密度は、最大0.6g/cc又は0.55g/ccである。例えば、本明細書で開示した中空ガラス微小球の平均真密度は、0.30g/cc〜0.65g/cc、0.30g/cc〜0.6g/cc、0.35g/cc〜0.60g/cc又は0.35g/cc〜0.55g/ccの範囲内であってよい。これらの密度のいずれかを有する中空ガラス微小球は、中空ガラス微小球を含有していないポリオレフィン組成物に対して、本開示に係る組成物の密度を減少させるために有用であり得る。
【0035】
本開示の目的のために、平均真密度は、ASTM D2840−69、「Average True Particle Density of Hollow Microspheres」に従ったピクノメーターを用いて測定される。このピクノメーターは、例えば、Micromeritics(Norcross、Georgia)製の商品名「ACCUPYC 1330 PYCNOMETER」として、又はFormanex,Inc.(San Diego、CA.)製の商品名「PENTAPYCNOMETER」若しくは「ULTRAPYCNOMETER 1000」として得ることができる。平均真密度は典型的に、0.001g/ccの精度で測定され得る。したがって、上述の密度値のそれぞれは、値±5%であり得る。
【0036】
中空ガラス微小球の種々のサイズが有用であってよい。本明細書で使用するとき、サイズ(径)という用語は、中空ガラス微小球の直径及び高さと同じであると考えられる。一部の実施形態では、中空ガラス微小球は、14〜45マイクロメートル(一部の実施形態では、15〜40マイクロメートル、20〜45マイクロメートル、又は20〜40マイクロメートル)の範囲の体積メジアン径を有してよい。メジアン径はまた、D50サイズとも呼ばれ、分布における中空ガラス微小球の50体積%は、示されるサイズよりも小さい。本開示の目的において、体積メジアン径は、脱気脱イオン水中に中空ガラス微小球を分散することによるレーザー光回折で測定する。レーザー光回折粒径分析器は、例えば、Micromeritics製の商品名「SATURN DIGISIZER」として入手できる。本開示を実施するために有用な中空ガラス微小球のサイズ分布は、ガウス分布、正規分布又は非正規分布であってよい。非正規分布は、単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)であってよい。
【0037】
本開示に係る組成物及び方法にて有用な中空ガラス微小球は典型的に、射出成型プロセスの後に残存するために、十分な強度を有している必要がある。中空ガラス微小球の10体積%が崩壊する、有用な静水圧は、少なくとも約20(一部の実施形態では、少なくとも約38、50又は55)メガパスカル(MPa)である。「約20MPa」は、20MPa±5%を意味する。一部の実施形態では、中空ガラス微小球の10体積%が崩壊する静水圧は、少なくとも100、110又は120MPaであり得る。一部の実施形態では、中空ガラス微小球の10体積%、又は20体積%が崩壊する静水圧は、最大250(一部の実施形態では、最大210、190又は170)MPaである。中空ガラス微小球の10体積%が崩壊する静水圧は、20MPa〜250MPa、38MPa〜210MPa、又は50〜210MPaの範囲内であってよい。本開示の目的のために、中空ガラス微小球の崩壊強度は、(グラムでの)試料サイズが、ガラスバブルの密度の10倍に等しいことを除いて、ASTM D3102−72「Hydrostatic Collapse Strength of Hollow Glass Microspheres」を用いて、グリセロール中の中空ガラス微小球の分散液について測定される。破壊強度は、典型的に±約5%の精度で測定できる。したがって、上述の各破壊強度値は、±5%であり得る。
【0038】
本開示を実施するために有用な中空ガラス微小球は、市販されており、商品名「3M GLASS BUBBLES」(例えばグレードS60、S60HS、iM30K、iM16K、S38HS、S38XHS、K42HS、K46及びH50/10000)のもと、3M Company(St.Paul,MN)によって市販されているものが含まれる。他の好適な中空ガラス微小球は、例えば商品名「SPHERICEL HOLLOW GLASS SPHERES」(例えばグレード110P8及び60P18)及び「Q−CEL HOLLOW SPHERES](例えばグレード30、6014、6019、6028、6036、6042、6048、5019、5023及び5028)として、Potters Industries(Valley Forge,PA)(PQ Corporationの関連会社)より、商品名「SIL−CELL」(例えばグレードSIL35/34、SIL−32、SIL−42及びSIL−43)として、Sibrico Corp.(Hodgkins,IL)より、また、商品名「Y8000」として、Sinosteel Maanshan Inst.of Mining Research Co.(Maanshan,China)より得ることが可能である。一部の実施形態では、本開示を実施するために有用な中空ガラス微小球は、90%が残存する場合に、少なくとも約28MPa、34MPa、41MPa、48MPa又は55MPaの圧潰強度を有するように選択されてよい。
【0039】
射出成型に対して好適なレットダウン(即ち、最終)組成物において、例えば、中空ガラス微小球は典型的に、組成物の総重量に対して、少なくとも5重量%のレベルで、本明細書で開示した組成物中に存在する。一部の実施形態では、中空ガラス微小球は、組成物の総重量に対して、少なくとも10、12又は13重量%、組成物中に存在する。一部の実施形態では、中空ガラス微小球は、組成物の総重量に対して、最大30、25又は20重量%の濃度で、組成物中に存在する。例えば、中空ガラス微小球は、組成物の総重量に対して、5〜30、10〜25又は10〜20重量%の範囲内で、組成物中に存在してよい。
【0040】
耐衝撃性改良剤と、相溶化剤と、中空ガラス微小球と、を、各々の実施形態のいずれかにて上述したように含む、本開示に係る組成物中の場合、これらのそれぞれの存在は、最終組成物の性能に対して必須である。以下の実施形態にわたって示すように、耐衝撃性改良剤の添加により、ポリオレフィンと中空ガラス微小球を含む組成物の衝撃強度を改善することができる一方で、これにより、典型的には、引張強度及び曲げ強度が犠牲となる。これらの組成物に対する相溶化剤の添加は一般に、引張強度、曲げ強度及び衝撃強度を有意に高める。表10で示すように、耐衝撃性改良剤が存在しない場合、相溶化剤の存在により、中空ガラス微小球を含有するポリプロピレンの衝撃強度が有意に変化することはない。驚くべきことに、相溶化剤を、耐衝撃性改良剤の存在下で使用する場合の衝撃強度における改善は、中空ガラス微小球の存在しない場合には生じない。
【0041】
第1の繰り返し単位を含むポリオレフィンと、中空ガラス微小球と、ポリオレフィン耐衝撃性改良剤と、相溶化剤と、を、各々の実施形態のいずれかにて上述したように含む、本開示に係る、及び/又は本明細書で開示された方法を実施するために有用な組成物は、該組成物が、射出成型に好適なものとなるようなメルトフローインデックスを有する。典型的に、組成物は、少なくとも3グラム/10分(一部の実施形態では、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40又は50グラム/10分)の、190℃及び2.16キログラムでのメルトフローインデックスを有する。一部の実施形態では、本組成物は、少なくとも3.5グラム/10分(一部の実施形態では、少なくとも4、4.5又は50グラム/10分)の、190℃及び2.16キログラムでのメルトフローインデックスを有する。ポリオレフィンのメルトフローインデックスは、ASTM D1238−13:Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometerによって測定される。
【0042】
本開示に係る組成物の一部の実施形態では、中空ガラス微小球は、中空ガラス微小球とポリオレフィンマトリックスとの間の相互作用を高めるために、カップリング剤で処理してよい。他の実施形態において、カップリング剤は、直接組成物に加えることもできる。有用なカップリング剤の例としては、ジルコン酸塩、シラン又はチタン酸塩が挙げられる。典型的なチタン酸塩及びジルコン酸塩のカップリング剤は当業者に既知であり、これらの材料の使用及び選択基準に関する詳細な概要は、Monte,S.J.,Kenrich Petrochemicals,Inc.「Ken−React(登録商標)Reference Manual−Titanate,Zirconate and Aluminate Coupling Agents」改訂第3版(1995年3月)に記されている。使用する場合、カップリング剤は一般に、組成物中の中空ガラス微小球の総重量に対して、約1重量%〜3重量%の量で含まれる。
【0043】
好適なシランは、縮合反応を通して、ガラス表面に結合し、ケイ酸ガラスとのシロキサン結合を形成する。本処理によって充填剤がより湿潤可能な状態になる、つまり中空ガラス微小球表面への材料の付着を促進する。これにより、中空ガラス微小球と有機マトリックスとの間の共有結合、イオン結合又は双極子結合をもたらす機構が提供される。所望される特定の官能性に基づき、シランカップリング剤が選択される。密接な中空ガラス微小球−ポリマー相互作用を達成する別の方法は、重合性部位を含有する好適なカップリング剤で微小球の表面を官能化することで、物質をポリマー主鎖に直接組み込むことである。重合性部位の例としては、スチレン、ビニル(例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン)、アクリル及びメタクリル部位(例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-etacrylroxypropyltrimethoxysilane))などのオレフィン官能性を含有する材料が挙げられる。硫化架橋に携わってよい有用なシランの例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(例えば、Evonil Industries(Wesseling,Germany)から、商品名「SI−69」のもと、入手可能な)ビス(トリエトキシシリプロピル)テトラスルファン(bis(triethoxysilipropyl)tetrasulfane)、及びチオシアナトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。また、他の有用なシランカップリング剤は、アミノ官能基を有してよい(例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び(3−アミノプロピル)トリメトキシシランなど)。ペルオキシド−硬化ゴム組成物のために有用なカップリング剤は典型的に、ビニルシランを含む。硫黄−硬化ゴム組成物のために有用なカップリング剤は典型的に、メルカプト又はポリシルフィドシランを含む。好適なシランカップリングの手順は、Barry ArklesによるSilane Coupling Agents:Connecting Across Boundaries,pg 165〜189,Gelest Catalog 3000−A Silanes and Silicones:Gelest Inc.(Morrisville,PA)に概説されている。
【0044】
カップリング剤は、一部の実施形態では有用であるけれども、有利なことに、本開示に係る組成物は、カップリング剤の存在しない場合でさえ、良好な機械的特性を提供する。この機械的特性の達成は、当業者によれば、中空ガラス微小球とポリオレフィンマトリックスとの間の良好な付着によるものと理解され得るであろう。したがって、一部の実施形態では、本開示に係る組成物中の中空ガラス微小球は、シランカップリング剤で処理されない。更に、一部の実施形態では、本開示に係る組成物は、実質的にシランカップリング剤を含まない。シランカップリング剤を実質的に含まない組成物は、シランカップリング剤を含まなくてもよいし、又は組成物の総重量に対して、0.05、0.01、0.005若しくは0.001重量%未満の濃度で存在するシランカップリング剤を有していてもよい。
【0045】
一部の実施形態では、本開示に係る組成物、及び/又は本開示に係る方法にて有用な組成物には、1種類又は2種類以上の安定剤(例えば抗酸化剤又はヒンダードアミン光安定剤(HALS))が含まれる。例えば、本明細書で記述した組成物、マスターバッチ組成物、又はレットダウン組成物のいずれも、1種類又は2種類以上のそのような安定化剤を含んでよい。有用な抗酸化剤の例としては、ヒンダードフェノール系化合物及びリン酸エステル系化合物(例えば、「IRGANOX 1076」及び「IRGAFOS 168」などの、商品名「IRGANOX」及び「IRGAFOS」のもと、BASF(Florham Park,NJ)から入手可能なもの、商品名「SONGNOX」のもと、Songwon Ind.Co(Ulsan,Korea)から入手可能なもの、及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT))が挙げられる。使用する場合、抗酸化剤は、組成物の総重量に対して、約0.001〜1重量%の量で存在可能である。HALSは、典型的に、光分解又は他の分解プロセスに起因し得るフリーラジカルを捕捉することができる化合物である。好適なHALとしては、デカン二酸、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルが挙げられる。好適なHALSには、例えば、商品名「TINUVIN」及び「CHIMSSORB」のもと、BASFから入手可能であるものが含まれる。使用する場合、そのような化合物は、組成物の総重量に対して、約0.001〜1重量%の量で存在可能である。
【0046】
補強充填剤が、本開示に係る組成物、及び/又は本開示に係る方法にて有用な組成物にて有用となり得る。例えば、本明細書で記述した組成物、マスターバッチ組成物、又はレットダウン組成物のいずれも、1種類又は2種類以上のそのような補強充填剤を含んでよい。補強充填剤は、例えば、組成物の引張、曲げ、及び/又は衝撃強度を高めるために有用であり得る。有用な補強充填剤の例としては、(ナノシリカを含む)シリカ、他の金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックが挙げられる。他の有用な充填剤としては、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、炭酸カルシウム、(ナノ二酸化チタンを含む)二酸化チタン、木粉、他の天然充填剤及び繊維(例えばウォールナットシェル、麻及びトウモロコシの毛)及び(ナノ粘土を含む)粘土が挙げられる。
【0047】
しかしながら、一部の実施形態では、本開示に係る組成物中のシリカの存在により、組成物の密度の望ましくない増加がもたらされ得る。有利なことに、本開示に係る組成物、及び/又は本開示に係る方法にて有用な組成物は、補強充填剤の存在しない場合でさえ、良好な機械的特性を提供する。以下の実施例で示すように、本明細書で開示した組成物は、シリカ充填剤又は他の補強充填剤の存在しない場合でさえ、高い引張、曲げ及び衝撃強度を有することが発見された。したがって、一部の実施形態では、組成物は、補強充填剤を含まないか、又は組成物の総重量に対して、最大5、4、3、2又は1重量%の補強充填剤を含有する。例えば、一部の実施形態では、組成物は、タルクを含まないか、又は組成物の総重量に対して、最大5、4、3、2又は1重量%のタルクを含有する。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、5重量%未満のタルクを含有する。他の例において、本開示に係る組成物は、モンモリロナイト粘土を含まないか、又は25ナノメートル未満のチップ厚を有する、1重量%未満のモンモリロナイト粘土を含む。他の例において、本開示に係る組成物は、炭酸カルシウムを含まないか、又は100ナノメートル未満の平均粒子サイズを有する、1重量%未満の炭酸カルシウムを含む。
【0048】
他の添加物を、上述した実施形態のいずれかにおいて、本明細書で開示した組成物内に組み込んでよい。組成物の意図する用途に応じて、有用となり得る他の添加物の例としては、保存剤、混合剤、着色料、分散剤、フローティング剤又は抗硬化剤、フロー及び処理剤、湿潤剤、抗オゾナント及び臭気スカベンジャーが挙げられる。本明細書で記述した組成物、マスターバッチ組成物、又はレットダウン組成物のいずれも、1種類又は2種類以上のそのような添加剤を含んでよい。
【0049】
本開示に係る組成物は、射出成型のために好適である。高温(例えば、100℃〜225℃の範囲内)が、押出機内の組成物の成分を混合するために有用であり得る。中空ガラス微小球は、ポリオレフィン、相溶化剤及び耐衝撃性改良剤を混合した後に、組成物に加えてよい。本明細書で開示した組成物を射出成型する方法は、一般に、材料ホッパー(例えばバレル)、プランジャ(例えば射出ラム又はスクリュー型)及び加熱ユニットを含む、任意の型の射出成型装置を使用可能である。
【0050】
本開示に係る組成物及び方法は、種々の用途のために有用な特性である、良好な引張強度、曲げ強度及び衝撃耐性を有する、(例えば、0.75〜0.95、0.78〜0.9又は0.8〜0.9グラム/立法センチメートルの範囲内の密度を有する)低密度製品を作製するために有用である。本開示に係る組成物を射出成型することによって作製可能な物品としては、保護帽並びに内装用及び外装用の自動車部品(例えば、フード、トランク、バンパー、グリル、サイドクラッディング、ロッカーパネル、フェンダー、テールゲート、インワイヤ及びケーブル用途、インスツルメントパネル、コンソール、内装トリム、ドアパネル、ヒーターハウジング、バッテリサポート、ヘッドライトハウジング、フロントエンド、ベンチレータホイール、リザーバ及びソフトパッド)が挙げられる。
【0051】
多くの実施形態において、以下の実施例で示すように、本開示に係る組成物の衝撃強度、引張強度又は曲げ強度のうちの少なくとも1つが、中空ガラス微小球を添加していないポリオレフィンの衝撃強度に近いか、又は場合によっては、驚くべきことにそれを超えるものとなる。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態
第1形態において、本開示は、
第1の繰り返し単位を含むポリオレフィンと、
中空ガラス微小球と、
化学的に架橋されておらず、極性官能基を含まない、ポリオレフィン耐衝撃性改良剤と、
該第1の繰り返し単位と、極性官能基によって修飾された該第1の繰り返し単位である第2の繰り返し単位と、を含む、相溶化剤と、を含む、組成物であって、
該中空ガラス微小球、該ポリオレフィン耐衝撃性改良剤及び該相溶化剤の総体積に対して、該中空ガラス微小球は、40体積%〜70体積%の範囲で存在し、該ポリオレフィン耐衝撃性改良剤は、20体積%〜50体積%の範囲で存在し、該相溶化剤は、4体積%〜12体積%の範囲で存在する、組成物を提供する。本組成物はまた、単独、又は組み合わせで、以下の特徴のいずれかを有してもよい。
本組成物は、本組成物の総重量に対して、少なくとも10重量%を超えるガラスを含み、
前記ポリオレフィンはポリプロピレンホモポリマー以外であり、
本組成物は、少なくとも3グラム/10分の、190℃及び2.16キログラムでのメルトフローインデックスを有し、
本組成物は、少なくとも60ジュール/メートルのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有し、
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンを含み、前記相溶化剤は、エチレン繰り返し単位を含み、
前記第1の繰り返し単位は、ポリプロピレン繰り返し単位であり、前記相溶化剤は、プロピレン繰り返し単位を含み、前記ポリオレフィンは、少なくとも80重量%のプロピレン単位を含むコポリマーであるか、又は前記ポリオレフィンは、中耐衝撃性若しくは高耐衝撃性ポリプロピレンである。
【0053】
代替的な第1実施形態において、本開示は、第1の繰り返し単位を含むポリオレフィンと混合するためのマスターバッチ組成物であって、該マスターバッチは、
中空ガラス微小球と、
化学的に架橋されておらず、極性官能基を含まない、ポリオレフィン耐衝撃性改良剤と、
該第1の繰り返し単位と、極性官能基によって修飾された該第1の繰り返し単位である第2の繰り返し単位と、を含む、相溶化剤と、を含み、
該中空ガラス微小球、該ポリオレフィン耐衝撃性改良剤及び該相溶化剤の総体積に対して、該中空ガラス微小球は、40体積%〜65体積%の範囲内で存在し、該ポリオレフィン耐衝撃性改良剤は、20体積%〜50体積%の範囲内で存在し、該相溶化剤は、4体積%〜15体積%の範囲内で存在する、マスターバッチ組成物を提供する。
【0054】
第2実施形態において、本開示は、前記ポリオレフィンが、ポリエチレン又はポリプロピレンのうちの少なくとも一方を含む、第1実施形態の組成物を提供する。
【0055】
第3実施形態において、本開示は、前記第1の繰り返し単位が、ポリエチレン繰り返し単位である、第1又は第2実施形態の組成物を提供する。
【0056】
第4実施形態において、本開示は、前記ポリオレフィン耐衝撃性改良剤が、少なくとも10グラム/10分の、190℃及び2.16キログラムでのメルトフローインデックスを有する、第1〜第3実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0057】
第5実施形態において、本開示は、前記組成物の総重量に対して、10重量%を超える前記中空ガラス微小球を含む、第1〜第4実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0058】
第6実施形態において、本開示は、前記組成物の総重量に対して、2重量%を超える前記相溶化剤を含む、第1〜第5実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0059】
第7実施形態において、本開示は、前記組成物の総重量に対して、3重量%を超える前記相溶化剤を含む、第1〜第6実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0060】
第8実施形態において、本開示は、前記相溶化剤が、無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、第1〜第7実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0061】
第9実施形態において、本開示は、補強充填剤を更に含む、第1〜第8実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0062】
第10実施形態において、本開示は、前記組成物が、前記組成物の総重量に対して、5重量%未満のタルクを含む、第1〜第9実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0063】
第11実施形態において、本開示は、前記組成物が、25ナノメートル未満のチップ厚を有するモンモリロナイト粘土若しくは100ナノメートル未満の平均粒子サイズを有する炭酸カルシウムのうちの少なくとも一方を、1重量%未満含む、第1〜第10実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0064】
第12実施形態において、本開示は、前記中空ガラス微小球が、シランカップリング剤で処理されない、第1〜第11実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0065】
第13実施形態において、本開示は、前記中空ガラス微小球の10体積%が崩壊する静水圧が、少なくとも約50メガパスカルである、第1〜第12実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0066】
第14実施形態において、本開示は、前記ポリオレフィン耐衝撃性改良剤が、エチレンプロピレンエラストマー、エチレンオクテンエラストマー、エチレンプロピレンジエンエラストマー、エチレンプロピレンオクテンエラストマー又はこれらの組み合わせである、第1〜第13実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0067】
第15実施形態において、本開示は、前記ポリオレフィン耐衝撃性改良剤が、エチレンオクテンエラストマーである、第1〜第14実施形態のいずれか1つの組成物を提供する。
【0068】
第16実施形態において、本開示は、第1〜第15実施形態のいずれか1つの固化した組成物を含む物品を提供する。
【0069】
第17実施形態において、本開示は、前記物品が保護帽である、第16実施形態の物品を提供する。
【0070】
第18実施形態において、本開示は、前記物品が、内装用若しくは外装用の自動車部品である、第16実施形態の物品を提供する。
【0071】
第19実施形態において、本開示は、物品を作製する方法であって、第1〜第15実施形態のいずれか1つの組成物を射出成型して、該物品を作製することを含む、方法を提供する。
【0072】
第20実施形態において、本開示は、前記物品が保護帽である、第19実施形態の方法を提供する。
【0073】
第21実施形態において、本開示は、前記物品が、内装用若しくは外装用の自動車部品である、第19実施形態の方法を提供する。
【0074】
限定的なものではないが、以下の具体的な実施例は、本発明を説明するのに役立つであろう。これらの実施例において、全ての量は、他に特定しない限り、樹脂100あたりの部数(phr)で表される。これらの実施例において、N/Mは「測定なし」を意味する。
【実施例】
【0075】
材料
【0076】
【表1】
【0077】
試験方法
密度
成型部品(molded part)の密度を、以下の手順を用いて決定した。まず、成型部品を、ポリマー樹脂を蒸発させるために、オーブン(Nabertherm(登録商標)N300/14)中にて、高温に曝した。このオーブンは、5時間で200℃から550℃まで変化するような温度勾配プロファイルに設定した。温度が550℃に達した後、12時間一定に維持した。ガラスバブルの重量%を、以下の式を用いて、燃焼プロセスの前後の成型部品の既知量から計算した。
ガラスバブルの重量%=(燃焼後の残余無機物の重量)/(燃焼前の成型材料の重量)×100
【0078】
本発明者らはついで、ヘリウムガスピクノメーター(Micromeritics製のAccuPcy 1330)を用いて、ガラスバブル残余物の密度(d
GB)を決定した。最終的に、成型部品の密度は、既知である、ガラスバブル残余物の重量%(W% GB)、ポリマー相の重量%(1−w%GB)、ガラスバブル残余物の密度(d
GB)及び供給業者のデータシートから既知のポリマー密度(d
polymer)より計算される。
【0079】
【化1】
【0080】
機械的特性
射出成型した複合体の機械的特性を、表2に列記したASTM標準試験法を用いて測定した。5kNロードセル及び引張、及び3点曲げグリップを有するMTSフレームを、それぞれ引張及び曲げ特性に対して使用した。引張試験モードにおいては、ASTM D−638−10規格に記述される手順に従ったが、歪ゲージは使用せず、代わりにグリップ分離距離を使用して、試料の伸び率を決定した。Tinius OlsenモデルIT503衝撃テスターとその標本ノッチャーを使用して、成型部品の室温ノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。Tinius Olsen MP200押出プラストメータを、試料のメルトフローインデックス試験のために使用した。所与の試料からの少なくとも5つの異なる標本を、引張、曲げ及び衝撃試験の全てについて試験した。以下の実施例では、結果の算術平均を決定して報告した。結果には、高い再現性が観察され、試験結果における標準偏差は、3〜5%以下の範囲であると観察された。少なくとも2つの異なる標本を、メルトフローインデックス試験で試験した。メルトフロー試験は、ほとんど同一の実験結果となり、高い再現性があると観察された。以下の実施例では、結果の算術平均を決定して報告した。
【0081】
【表2】
【0082】
配合手順
試料を、7つの加熱領域を備える共同回転噛合1インチ(2.5cm)二軸押出機(L/D:25)中で配合した。ポリマーペレット(ポリプロピレン又はHDPE)、耐衝撃性改良剤及び相溶化剤を乾燥ブレンドし、樹脂フィーダーを介して領域1に供給し、ついで一組の練りブロック及び運搬要素を通過させた。押出物を水槽で冷却し、造粒した。造粒したブレンドをついで樹脂供給ホッパーを通して再び導入し、再度練りブロック区画を通過させ、ガラスバブルが領域4中の下流にサイド供給される前に、確実に融解するようにした。ガラスバブルのサイド供給の時点、並びに残りの下流処理のために、高チャンネル深さ運搬要素(OD/ID:1.75)を使用した。
【0083】
ポリプロピレンの場合、領域1中の温度を150℃に設定し、全ての他の領域を220℃に設定した。HDPEの場合、それぞれ領域1を150℃に設定し、他の全てを215℃に設定した。スクリュー回転速度は、両方の場合で、250rpmに設定した。押出物を水槽で冷却し、造粒した。
【0084】
射出成型手順
全ての試料を、Boy Machines Inc.(Exton,PA)によって製造された28mm汎用バレル及びスクリューを有するBOY22D射出成型機械を用いて、成型した。引張、曲げ及び衝撃バーに対する空洞を有する標準ASTM型を、全ての成型部品のために使用した。いずれかの試験を実施する前には、射出成型した標本を、少なくとも36時間にわたり、室温にて、周囲条件下で作業台に置いておいた。
【0085】
比較例1A〜1C及び実施例1
高密度ポリエチレン系処方
HDPEへGB1(0.46g/cc)を12wt%添加することにより、密度が約10%減少した(比較例1Aと比較例1Bを比較されたい)が、この密度の減少は、ノッチ付き衝撃強度の65%の減少を引き起こした。また、加えられた力に耐えるための樹脂がより少なく、より低い応力レベルで降伏することから、引張強度も低下している。一方で、利点は、引張弾性率及び曲げ弾性率のレベルの増加によって示される、剛性の向上である。
【0086】
衝撃強度の低下を補うために、低粘度耐衝撃性改良剤1(190℃/2.16kgにおけるMFI、30g/10分)を比較例1Cに加える。耐衝撃性改良剤の添加により、32J/mから37J/mへ、ノッチ付き衝撃強度が増加したが、未だ非充填HDPE(91J/m)よりはずっと低い。この衝撃強度の増加は、引張強度の減少(ガラスバブルによって、23.3MPaから18MPaまで、耐衝撃性改良剤の添加によって、更に14.2MPaまで)と、曲げ強度の減少(24.9から20.0MPaまで)を引き起こした。
【0087】
C2などのポリエチレン系の機能性相溶化剤を、耐衝撃性改良剤と共に使用する場合、ノッチ付き衝撃強度は更に、37J/mから120J/mまで顕著に増加し、一方で引張及び曲げ強度も増加する(比較例1Cと実施例1)。
【0088】
【表3】
【0089】
(実施例2〜4)
HDPEにおける耐衝撃性改良剤の粘度及びブレンドの影響
表3の実施例2〜4は、実施例1のIM1(MFI=30)などの、よりMFIが高い耐衝撃性改良剤の使用が、複合体のより高い最終MFIをもたらす一方で、実施例2のIM3(MFI=1)などの、よりMFIが低い耐衝撃性改良剤が、複合体のより低い最終MFIをもたらすことを示している。
【0090】
実施例1及び実施例3の、よりMFIが高い耐衝撃性改良剤の使用は、複合体の最終MFIに悪影響を与えていないが、実施例2のよりMFIが低い耐衝撃性改良剤は、最終複合体のMFIに悪影響を与え得る。実施例4は、粘度の最適化のために、高MFI耐衝撃性改良剤と低MFI耐衝撃性改良剤をブレンド可能であることを示す。したがって、本発明はまた、高MFI耐衝撃性改良剤と低MFI耐衝撃性改良剤のブレンドである、耐衝撃性改良剤を含む。
【0091】
相溶化剤の正しい選択
表4は、HDPEに対して正しくC2を選択する(実施例3)ことにより、HDPEに対してC1を選択した場合(比較例1B)と比較して衝撃強度が向上することを示している。相溶化剤は、機能的グラフトが結合する主鎖が、主要マトリックス樹脂と共結晶化可能であり、相溶性があるように選択される。
【0092】
【表4】
【0093】
実施例5及び比較例2A〜2C
低耐衝撃性ポリプロピレンホモポリマー系処方
表4にて見られるように、HDPEで観察されたのと同様に、ポリプロピレンホモポリマーへガラスバブルを添加することにより、密度が約9.3%減少した(比較例2Aと比較例2Bを比較されたい)が、この密度の減少は、ノッチ付き衝撃強度の約50%の減少を引き起こした。
【0094】
衝撃強度の低下を補うために、低粘度耐衝撃性改良剤、Impact modifier 1(190℃/2.16kgにおけるMFI、30g/10分)を比較例2Cに加える。この耐衝撃性改良剤の添加により、ノッチ付き衝撃強度が、24.7から46.3J/mmに、87%増加する。この衝撃強度の増加は、引張強度の減少(ガラスバブルにより、29.2MPaから19.3MPaまで、耐衝撃性改良剤の添加により、更に13.9MPaまで減少)と、曲げ強度の減少(37.6から23.8MPa)を引き起こした。
【0095】
ポリプロピレン系の機能性相溶化剤(C1)を、耐衝撃性改良剤と共に使用する場合、ノッチ付き衝撃強度は更に、46.3J/mから60J/mまで増加し、一方で引張及び曲げ強度も増加する(3と4を比較されたい)。
【0096】
【表5】
【0097】
(実施例6〜8)
低耐衝撃性ポリプロピレンにおける耐衝撃性改良剤の粘度及びブレンドの影響
表5にて見られるように、実施例5のIM1(MFI=30)などの、よりMFIが高い耐衝撃性改良剤を使用すると、最終複合体のMFIは5.5となっているが、IM3(実施例7)などの、よりMFIが低い耐衝撃性改良剤では、最終複合体のMFIは2.9となっている。
【0098】
よりMFIが高い耐衝撃性改良剤、実施例5及び実施例63の使用は、複合体の最終MFIに悪影響を与えない。実施例8は、粘度の最適化のために、高MFI耐衝撃性改良剤と低MFI耐衝撃性改良剤をブレンド可能であることを示す。
【0099】
【表6】
【0100】
実施例9及び比較例3A〜3C
中耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー系処方
実施例9は、低耐衝撃性ポリプロピレンと同じ効果(衝撃強度の増加と同時に、引張及び曲げ強度が増加)が、中耐衝撃性ポリプロピレンにて観察されたことを示す。
【0101】
ガラスバブルを添加することにより、密度が約9.3%減少した(比較例3Aと比較例3Bを比較されたい)が、この密度の減少は、ノッチ付き衝撃強度の約55%の減少を引き起こした。
【0102】
衝撃強度の低下を補うために、低粘度耐衝撃性改良剤IM1(190℃/2.16kgにおけるMFR、30g/10分)を比較例3Cに加える。この耐衝撃性改良剤の添加により、ノッチ付き衝撃強度が、37.6から92.7J/mに、146%増加する。この衝撃強度の増加は、引張強度の減少(ガラスバブルにより、26.6MPaから16.5MPaまで、耐衝撃性改良剤の添加により、更に12.7MPaまで減少)と、曲げ強度の減少(34.6から29.3MPaまで)を引き起こした。
【0103】
機能性相溶化剤を、耐衝撃性改良剤と共に使用する場合、ノッチ付き衝撃強度は更に、92.7J/mから122J/mまで増加し、一方で引張及び曲げ強度も増加する(処方比較例3Cと実施例9を比較されたい)。
【0104】
【表7】
【0105】
実施例10及び比較例CE4A〜4C
高耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー系処方
一部の自動車プラスチックでは、高耐衝撃性ポリプロピレンが(とりわけ外装で)使用され、ガラスバブルを用いた重量低減は、高耐衝撃性を必要とする部品には普及しない時代が続いていた。実施例10において、本発明者らは、本発明がまた、高耐衝撃性ポリマー中で適用可能でもあり、高耐衝撃性を必要とする仕様に合わせやすくなり得ることを示す。本発明者らは、14wt%のGB1のみを使用していること、及びタルク及びガラス繊維などの補強充填剤を、これらの現処方を強化し、弾性率及び強度を更に増加させるために簡単に加えることが可能であることに留意されたい。
【0106】
高耐衝撃性ポリプロピレンにおいて、ノッチ付き衝撃強度は、545J/mから65J/mまで87%減少しており、顕著である。本発明者らは、密度における不利益なしに、衝撃強度を最大215J/mまで顕著に回復させている。実施例10において、本発明者らは、低粘度非機能性耐衝撃性改良剤と機能性相溶化剤の組み合わせによっても、衝撃強度の増加と同時に、引張及び曲げ強度が増加する、同一の改善が示されることを実証する。
【0107】
【表8】
【0108】
実施例11
並びに比較例5A
及び実施例5B〜5D
高耐衝撃性ポリプロピレンにおける耐衝撃性改良剤の粘度及びブレンドの影響
【0109】
【表9】
【0110】
比較例6A〜6F
相溶化剤のみ
相溶化剤のみの使用(耐衝撃性改良剤を含まない)
表10において、相溶化剤の有無によっては、ノッチ付き衝撃強度は顕著に変化せず、低耐衝撃性、中耐衝撃性又は高耐衝撃性ポリマーのいずれにおいても顕著ではない。
【0111】
【表10】
【0112】
比較例7A〜7F及び実施例12
相溶化剤の正しい選択
表11は、PP1に対して正しくC1を選択する(実施例12)ことにより、PP1に対してC2を選択した場合(比較例7E)と比較して衝撃強度が向上することを示している。相溶化剤は、機能的グラフトが結合する主鎖が、主要マトリックス樹脂と共結晶化可能であり、相溶性があるように選択される。
【0113】
【表11】
【0114】
実施例13及び比較例8A〜8C
代替ガラスバブル
表12の処方は、代替ガラスバブルを使用したことを除いて、表3のものと同様であった。表12で示されているように、複合体の衝撃強度は、耐衝撃性改良剤と正しい相溶化剤の組み合わせ(実施例13)で再び改善される。
【0115】
【表12】
【0116】
実施例14、15、16及び比較例9A〜9C
【0117】
【表13】
【0118】
実施例17、18、19及び比較例10A〜10C
【0119】
【表14】
【0120】
実施例20、21、22及び比較例11A〜11C
【0121】
【表15】
【0122】
実施例23、24、25及び比較例12A〜12C
【0123】
【表16】
【0124】
実施例26、27、28及び比較例13A〜13C
【0125】
【表17】
【0126】
実施例29及び比較例13A、13B、14A
【0127】
【表18】
【0128】
実施例30と比較例13A、13B及び15A
相溶化剤の正しい選択
表19は、PP7に対して正しくC1を選択する(実施例30)ことにより、PP7に対してC2を選択した場合(比較例15A)と比較して衝撃強度が向上することを示している。相溶化剤は、機能的グラフトが結合する主鎖が、主要マトリックス樹脂と共結晶化可能であり、相溶性があるように選択される。
【0129】
【表19】
【0130】
実施例31、32及び比較例13A、13B及び15B
相溶化剤の好ましい量
表20は、PP7に対して好ましい量の相溶化剤(実施例30及び実施例31)が、衝撃強度の向上を示す一方で、より少ない量(比較例15A)の場合は、非充填対照樹脂比較例13A、及び上で示した0%の相溶化剤のみ(比較例12C)を含有する耐衝撃性改良剤と比較して、衝撃強度が低下することを示す。好ましい量は、2〜4%である。
【0131】
【表20】
【0132】
実施例33、34、35及び比較例CE16A、13B及び15B
耐衝撃性改良剤の好ましい量
【0133】
【表21】
【0134】
比較例CE2A、CE17A、CE17B、CE17C、CE17D、CE2C及び実施例5
ガラスバブルが存在しない場合の相溶化剤の効果
比較例17Aを比較例17Bと比較すると、ポリオレフィンエラストマーを20%含む化合物への相溶化剤の添加によって、衝撃強度が更に高められることはないことを理解することができる。実際には、衝撃強度は、わずかに減少している。
【0135】
また、比較例17Bに対する比較例17Aの比較からは、耐衝撃性改良剤を15.5wt%含有する化合物の衝撃強度においては、相溶化剤の効果は、効果なし〜無視できる改善(4%増加)となることが示されている。
【0136】
これらの結果は、相溶化剤の種類及び量の正しい選択により、ポリオレフィンエラストマーを含有する化合物の衝撃強度が改善される、ガラスバブルを含有する処方で観察されること(比較例2Cと、衝撃強度が30%増加した実施例5を比較されたい)と対照的である。
【0137】
【表22】
【0138】
本開示は、上記実施形態には限定されず、以下の各請求項及びその均等物のいずれかに示される限定によって制限されるべきものである。本開示は、本明細書に具体的に開示されていないいずれの要素を欠いても、好適に実施され得る。