(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本体打込み式のあと施工アンカーは、施工が完全ではなかったり、使用環境が過酷で振動が多かったりした場合に、例えば
図7(b)のように、コーン120をコンクリート躯体160内に置いて本体110が抜け出してくる可能性や、
図7(c)のように、取付ボルト130の雌ねじ112への螺合が緩んで取付ボルト130が抜け出てくる可能性があるのではないかと不安を生じさせ、使用が避けられることがある。
【0006】
斯様な問題に対処できるものとして、スリーブ打込み式の雄ねじタイプのあと施工アンカーがある。
図8(a)にスリーブ打込み式の雄ねじタイプのあと施工アンカーの例を示す。このスリーブ打込み式の雄ねじタイプのあと施工アンカー200は、前部にテーパー部211、後部に雄ねじ部212が形成されているテーパーボルト210と、前部に拡開片221が設けられているスリーブ220で構成され、スリーブ220がテーパー部211に向かって打ち込まれて拡開片221が拡開されてコンクリート躯体250に定着されている。コンクリート躯体250から突出したテーパーボルト210の雄ねじ部212には、例えば取付物240、ワッシャー231、スプリングワッシャー232が外挿され、その外側から雄ねじ部212にナット233が螺合されて取付物240が取り付けられる。このスリーブ打込み式の雄ねじタイプのあと施工アンカー200では、ナット233が締め付けられている限り、常にテーパーボルト210のテーパー部211がスリーブ2210の拡開片221を拡開するように付勢するので、テーパーボルト210やスリーブ220の脱落を防止することが可能である。
【0007】
しかしながら、スリーブ打込み式の雄ねじタイプのあと施工アンカー200は、スリーブ220をテーパーボルト210のテーパー部211に打ち込んで拡開片221を拡開させて定着するものであるから、あと施工アンカーの打設後にボルト長の変更をすることはできず、施工の柔軟性に劣るという問題がある。また、あと施工アンカー200では、前部にテーパー部211、後部に雄ねじ部212が形成されているテーパーボルト210で取付物240を取り付けるため、取付物の厚さが変わった場合には異なる長さのテーパーボルトが必要となるが(
図8(b)参照)、特殊な形状で高価なテーパーボルトを多様な長さで準備する必要が生じ、経済性に劣るという問題もある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、コンクリート躯体からの本体の抜け出しやボルトの緩みを防止することができると共に、あと施工アンカー打設後にボルト長の変更をすることが可能で施工の柔軟性に優れるあと施工アンカー器具
が用いられるあと施工アンカー取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の
あと施工アンカー取付構造は、前部に拡開片を有する筒状の本体と、内部に雌ねじが形成され、少なくとも後端部が前記本体に内装される略截頭錐形のコーンと、前記本体に挿通されて前記コーンの前記雌ねじに雄ねじが螺合される取付ボルトとを備え、前記コーンの前記雌ねじの先端近傍に、前記取付ボルトの前記雄ねじの先端近傍に掛止される弾性部材が設けられている
あと施工アンカー器具が用いられたあと施工アンカー取付構造であって、コンクリート躯体の穿孔内で、前記本体の前記拡開片に前記コーンが入り込んだ状態で前記拡開片が拡開されて、前記拡開片が前記穿孔の孔壁に食い込むように設けられ、前記取付ボルトが前記本体に挿通されて前記雄ねじが前記コーンの前記雌ねじの先端近傍まで螺合され、前記弾性部材が前記取付ボルトの前記雄ねじの先端近傍に掛止されるように設けられていると共に、前記取付ボルトがナットに締め付けられて前記コンクリート躯体の表面側に引っ張られていることを特徴とする。
これによれば、コーンの雌ねじの先端近傍の弾性部材を取付ボルトの雄ねじの先端近傍に掛止する
構造により、弾性部材の掛止でコンクリート躯体からの本体の抜け出しやボルトの緩みを防止することができる。また、
この構造では、本体を打ち込んで拡開片を拡開させ、コンクリート躯体に本体とコーンを設置した後に、換言すれば本体打込み式のあと施工アンカーの打設後に所要の長さの取付ボルトを螺合して取り付けることができる。即ち、あと施工アンカー打設後にボルト長を変更することが容易となり、施工の柔軟性を高めることができる。また、特殊な形状で高価なテーパーボルトを多様な長さで準備する必要がなく、経済性にも優れる。また、コーンの雌ねじの先端近傍に弾性部材
が位置する構造により、取付ボルトの雄ねじのコーンの雌ねじに対するスムーズな螺合を確保することができる。
また、コーンの雌ねじの先端近傍まで螺合される取付ボルトがコンクリート躯体の表面側に引っ張られることにより、拡開片に追加の拡張力、コンクリート躯体への追加の定着力を得ることができ、あと施工アンカー器具をより強固に安定してコンクリート躯体に定着させることができる。
【0010】
本発明の
あと施工アンカー取付構造は、前記あと施工アンカー器具の前記弾性部材として前記コーンの雌ねじ穴に部分的に突出する板ばねが設けられていることを特徴とする。
これによれば、簡単な構造で且つ低コストに取付ボルトの雄ねじに掛止する弾性部材を得ることができる。また、取付ボルトの雄ねじのねじ山が板ばねに引っ掛かると、締付トルクが大きく変化するため、作業者は取付ボルトの所定の締付作業を確実に行ったことを容易に認識することが可能となる。
【0011】
本発明の
あと施工アンカー取付構造は、前部に拡開片を有する筒状の本体と、内部に雌ねじが形成され、少なくとも後端部が前記本体に内装される略截頭錐形のコーンと、前記本体に挿通されて前記コーンの前記雌ねじに雄ねじが螺合される取付ボルトとを備え、前記取付ボルトの前記雄ねじの先端側に、前記コーンの前記雌ねじの先端近傍に掛止される弾性部材が設けられている
あと施工アンカー器具が用いられたあと施工アンカー取付構造であって、コンクリート躯体の穿孔内で、前記本体の前記拡開片に前記コーンが入り込んだ状態で前記拡開片が拡開されて、前記拡開片が前記穿孔の孔壁に食い込むように設けられ、前記取付ボルトが前記本体に挿通されて前記雄ねじが前記コーンの前記雌ねじに螺合され、前記取付ボルトの前記雄ねじの先端側の前記弾性部材が、前記コーンの前記雌ねじの先端近傍に掛止されるように設けられていると共に、前記取付ボルトがナットに締め付けられて前記コンクリート躯体の表面側に引っ張られていることを特徴とする。
これによれば、取付ボルトの雄ねじの先端側の弾性部材をコーンの雌ねじの先端近傍に掛止する
構造により、弾性部材の掛止でコンクリート躯体からの本体の抜け出しやボルトの緩みを防止することができる。また、
この構造では、本体を打ち込んで拡開片を拡開させ、コンクリート躯体に本体とコーンを設置した後に、換言すれば本体打込み式のあと施工アンカーの打設後に所要の長さの取付ボルトを螺合して取り付けることができる。即ち、あと施工アンカー打設後にボルト長を変更することが容易となり、施工の柔軟性を高めることができる。
また、コーンの雌ねじの先端近傍まで螺合される取付ボルトがコンクリート躯体の表面側に引っ張られることにより、拡開片に追加の拡張力、コンクリート躯体への追加の定着力を得ることができ、あと施工アンカー器具をより強固に安定してコンクリート躯体に定着させることができる。
【0012】
本発明の
あと施工アンカー取付構造は、前記あと施工アンカー器具の前記弾性部材として前記取付ボルトの前記雄ねじの先端側に前記雄ねじと略対応する外径を有し且つ前記雄ねじと同ピッチで螺旋状に巻回された弾性コイルが設けられていることを特徴とする。
これによれば、簡単な構造で且つ低コストにコーンの雌ねじのねじ山に引っ掛けられる弾性部材を得ることができる。また、雄ねじと略対応する外径を有し且つ雄ねじと同ピッチで螺旋状に巻回された弾性コイルとすることにより、取付ボルトの弾性部材の箇所でもコーンの雌ねじへのスムーズな螺合を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コンクリート躯体からの本体の抜け出しやボルトの緩みを防止することができると共に、あと施工アンカー打設後にボルト長を変更することが容易となり、施工の柔軟性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本発明による第1実施形態のあと施工アンカーの斜視図、(b)は第1実施形態のあと施工アンカーの拡開状態の斜視図。
【
図2】(a)は第1実施形態のあと施工アンカーの正面図、(b)は同図(a)の右側面図、(c)は第1実施形態のあと施工アンカーの分解状態の正面図、(d)は同図(c)のコーンの右側面図、(e)は第1実施形態のあと施工アンカーの拡開状態の正面図、(f)は同図(e)の右側面図。
【
図3】(a)は第1実施形態のあと施工アンカーをコンクリート躯体に打ち込んだ状態の縦断説明図、(b)は第1実施形態のあと施工アンカー器具をコンクリート躯体に取り付けた状態の縦断説明図。
【
図4】(a)〜(e)は第1実施形態のあと施工アンカー取付構造の施工手順を示す縦断説明図。
【
図5】(a)は本発明による第2実施形態のあと施工アンカー器具の分解正面図、(b)は第2実施形態のあと施工アンカーと取付ボルトの一部縦断説明図、(c)は第2実施形態のあと施工アンカー器具をコンクリート躯体に取り付けた状態の縦断説明図。
【
図6】(a)、(b)は第2実施形態のあと施工アンカー器具の取付ボルトにおける弾性コイルの取付構造を説明する斜視説明図。
【
図7】(a)は従来の本体打込み式のあと施工アンカーをコンクリート躯体に打ち込んだ状態の一部縦断正面図、(b)は従来の本体打込み式のあと施工アンカーの本体が抜け出てくる状態の一部縦断正面図、(c)は従来の本体打込み式のあと施工アンカーの取付ボルトが緩んできた状態の一部縦断正面図。
【
図8】(a)は従来のスリーブ打込み式の雄ねじタイプのあと施工アンカーをコンクリート躯体に取り付けた状態の一部縦断正面図、(b)は同図(a)のあと施工アンカーに対して取付物の厚さが厚くなった場合を説明する一部縦断正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態
のあと施工アンカー取付構造〕
本発明による第1実施形態のあと施工アンカー器具1は、
図1〜
図3に示すように、筒状の本体3と略截頭錐形のコーン4とから構成されるあと施工アンカー2と、取付ボルト5を備える。あと施工アンカー2は金属製の本体打込み式のアンカーである。
【0016】
第1実施形態の筒状の本体3は、金属で一体形成された略円筒状であり、その前部に先端から途中までスリット31が切り込まれており、スリット31で分割された拡開片32が設けられている。図示例では、軸方向に延びるスリット31が周方向に離間して4か所形成され、スリット31・31間が拡開片32になっている。拡開片32の外周面はコンクリートとの摩擦力を高めるために軸方向に凹凸が繰り返す凹凸面になっている。
【0017】
第1実施形態のコーン4は、金属で一体形成された略截頭円錐形であり、前方に向かって漸次拡径している。コーン4には、内部に軸方向に延びる雌ねじ穴41が貫通して設けられ、雌ねじ穴41の前端近傍から後端近傍の位置まで雌ねじ42が形成されている。雌ねじ42の先端近傍の雌ねじ穴41には、雌ねじ穴41の内周面から外側に向かい且つ周方向に延びるように嵌込溝43が形成され、嵌込溝43に弾性部材である板ばね44が嵌め込まれて固定されている。
【0018】
板ばね44は、弧状の形状を有し、コーン4の雌ねじ穴41に部分的に突出するように設けられ、その先端が雌ねじ42のねじ山よりも僅かに内側に突出するように設けられており、後述する取付ボルト5の雄ねじ51の先端近傍のねじ山に引掛可能に設置されている。図示例の板ばね44は、円周の約1/4の長さを有する弧状であり、対向する位置に一対の板ばね44・44が配置されている。
【0019】
コーン4は、流通時等の通常の状態では、その後端部だけが本体3の前端部に内装されてあと施工アンカー2を構成しており、この状態では、拡開片32は非拡開状態で本体3は全長に亘って略円筒状になっている(
図2(a)参照)。本体3の拡開片32を拡開状態にする際には、コーン4の漸次拡径する前方に向かって本体3を打ち込み、本体3の拡開片32の内部にコーン4を相対的に圧入し、コーン4が入り込んだ状態で拡開片32が拡開される。
【0020】
あと施工アンカー器具1では、あと施工アンカー2のコーン4に取付ボルト5が螺合される(
図3(b)参照)。本実施形態の取付ボルト5は全ねじボルトであり、全長に亘って外周に雄ねじ51が形成されている。取付ボルト5は、あと施工アンカー2が流通時等の非拡開状態である場合には、あと施工アンカー2とは別体となっており、あと施工アンカー2の拡開片32が拡開状態になった場合に、後方から筒状の本体3に挿通され、拡開片32の内部に入り込んだコーン4の雌ねじ42に雄ねじ51が螺合される。あと施工アンカー2が拡開状態で取付ボルト5の雄ねじ51の先端が板ばね44よりも先まで螺合された状態では、コーン4の雌ねじ42の先端近傍に設けられる弾性部材である板ばね44が、取付ボルト5の雄ねじ51の先端近傍のねじ山に引っ掛かり、雄ねじ51の先端近傍に掛止されるように設置される。
【0021】
第1実施形態のあと施工アンカー取付構造では、
図3に示すように、コンクリート躯体8の穿孔81内で、本体3の拡開片32にコーン4が入り込んだ状態で拡開片32が拡開され、拡開片32が穿孔81の孔壁に食い込むように設けられる。そして、取付ボルト5が本体3に挿通されて取付ボルト5の雄ねじ51の先端がコーン4の雌ねじ42の先端より先に位置するまで螺合され、弾性部材に相当する板ばね44が取付ボルト5の雄ねじ51の先端近傍のねじ山に引っ掛かるようにして設けられる。
【0022】
コンクリート躯体8から突出する取付ボルト5に取付物7を取り付けた状態では、取付物7が取付ボルト5の突出部分に外挿され、その外側に例えばワッシャー61、スプリングワッシャー62が取付ボルト5の突出部分に順に外挿され、その外側でナット63が取付ボルト5の雄ねじ51に螺合される。取付物7は、締め付けられたナット63により、コンクリート躯体8に固定して取り付けられる。
【0023】
第1実施形態のあと施工アンカー取付構造を施工する際には、
図4(a)、(b)に示すように、コンクリート躯体8に穿孔81を形成し、穿孔81内の清掃後にあと施工アンカー2をコーン4の前側から穿孔81内に挿入する。穿孔81の深さは拡開状態のあと施工アンカー2の長さとほぼ対応する深さとなっており、この時点では穿孔81に挿入したあと施工アンカー2の本体3の一部がコンクリート躯体8から外に突出した状態になっている。
【0024】
その後、
図4(c)のように、専用の打込み棒91をハンマー92で打ち込んで筒状の本体3を穿孔81の孔奥に向かって打ち込み、コーン4を本体3の拡開片32内に相対的に圧入させ、拡開片32の内部に前方に向かって漸次拡径するコーン4を入り込ませて拡開片32を拡開する。拡開した拡開片32は穿孔81の壁面に楔状に食い込むようにして摩擦定着し、一次的な定着が行われる(
図4(c)の太線矢印の拡張力F1参照)。
【0025】
その後、
図4(d)、(e)のように、コンクリート躯体8の表面に取付物7を配置し、取付物7の穴に挿入するようにして取付ボルト5を本体3に挿入する。そして、本体3に挿入した取付ボルト5の雄ねじ51を拡開片32の内部に入り込んだコーン4の雌ねじ42に螺合し、取付ボルト5の雄ねじ51の先端がコーン4の雌ねじ42の先端より先の位置になるまで螺合し、取付ボルト5の雄ねじ51の先端近傍のねじ山をコーン4の板ばね44に引っ掛ける。取付ボルト5の雄ねじ51の先端近傍のねじ山が板ばね44に引っ掛かると、締付トルクが大きく変化するため、作業者は取付ボルト5の所定の締付作業を確実に行うことができる。
【0026】
更に、所定の締付を行った取付ボルト5のコンクリート躯体8からの突出部分に、取付物7の外側からワッシャー61、スプリングワッシャー62を外挿し、その外側からナット63を取付ボルト5の雄ねじ51に螺合する。そして、ナット63でスプリングワッシャー62、ワッシャー61、取付物7をコンクリート躯体8の表面に押圧して付勢するまで締め付けを行い、取付物7の取り付けが完了する。この状態において、板ばね44で緩み止めされた取付ボルト5は、ナット63の所定の締め付けによりコンクリート躯体8の表面側に引っ張られ、コーン4を先端から軸方向に引張力Pで引っ張り、拡開片32に追加の拡張力F2を発生させる。このように取付ボルト5に引抜方向の力が働いた場合にはコーン4が本体3の拡開片32を拡開させる方向に力が作用する構造であるため、取付ボルト5に引抜方向の力が生じても本体3の抜け出しや取付ボルト5の緩みの心配がない。
【0027】
第1実施形態によれば、コーン4の雌ねじ42の先端近傍の板ばね44を取付ボルト5の雄ねじ51の先端近傍に掛止する構造により、コンクリート躯体8からの本体3の抜け出しや取付ボルト5の緩みを防止することができる。また、本体3を打ち込んで拡開片32を拡開させ、コンクリート躯体8に本体3とコーン4を設置した後に、換言すれば本体打込み式のあと施工アンカー2の打設後に所要の長さの取付ボルト5を螺合して取り付けることができる。即ち、あと施工アンカー打設後にボルト長を変更することが容易となり、施工の柔軟性を高めることができる。また、特殊な形状で高価なテーパーボルトを多様な長さで準備する必要がなく、経済性にも優れる。
【0028】
また、コーン4の雌ねじ42の先端近傍に板ばね44が位置する構造により、雄ねじ51が先端近傍の板ばね44まで板ばね44に引っ掛かることがないから、取付ボルト5の雄ねじ51のコーン4の雌ねじ42に対するスムーズな螺合を確保することができる。また、コーン4の雌ねじ42の先端近傍まで螺合される取付ボルト5がコンクリート躯体8の表面側に引っ張られることにより、拡開片32に追加の拡張力、コンクリート躯体8への追加の定着力を得ることができ、あと施工アンカー器具1をより強固に安定してコンクリート躯体8に定着させることができる。
【0029】
また、取付ボルト5の雄ねじ51に掛止する弾性部材をコーン4の雌ねじ穴41に部分的に突出する板ばね44とすることにより、簡単な構造で且つ低コストに取付ボルト5の雄ねじ51に掛止する弾性部材を得ることができる。また、取付ボルト5の雄ねじ51のねじ山が板ばね44に引っ掛かると、締付トルクが大きく変化するため、作業者は取付ボルト5の所定の締付作業を確実に行ったことを容易に認識することが可能となる。
【0030】
〔第2実施形態
のあと施工アンカー取付構造〕
本発明による第2実施形態のあと施工アンカー器具1aは、
図5に示すように、筒状の本体3aと略截頭錐形のコーン4aとから構成されるあと施工アンカー2aと、取付ボルト5aを備える。あと施工アンカー2aは金属製の本体打込み式のアンカーである。
【0031】
筒状の本体3aは、第1実施形態の本体3と同一構成であり、スリット31aで分割された拡開片32aが前部に設けられ、拡開片32aの外周面がコンクリートとの摩擦力を高めるために軸方向に凹凸が繰り返す凹凸面になっている。
【0032】
コーン4aは、金属で一体形成された略截頭円錐形であり、前方に向かって漸次拡径している。コーン4aには、内部に軸方向に延びる雌ねじ穴41aが貫通して設けられ、雌ねじ穴41aの前端から後端まで雌ねじ42aが形成されている。第2実施形態のコーン4aには、第1実施形態のコーン4のような嵌込溝や板ばねは設けられていない。
【0033】
コーン4aは、流通時等の通常の状態では、その後端部だけが本体3aの前端部に内装されてあと施工アンカー2aを構成しており、この状態では、拡開片32aは非拡開状態で本体3aは全長に亘って略円筒状になっている。本体3aの拡開片32aを拡開状態にする際には、コーン4aの漸次拡径する前方に向かって本体3aを打ち込み、本体3aの拡開片32aの内部にコーン4aを相対的に圧入し、コーン4aが入り込んだ状態で拡開片32aが拡開される。
【0034】
あと施工アンカー器具1aでは、あと施工アンカー2aのコーン4aに取付ボルト5aが螺合される。第2実施形態の取付ボルト5aには、前端部以外の後端から全長に亘る外周に雄ねじ51aが形成されている。取付ボルト5aの前端部には、雄ねじ51aの形成領域よりも小径で前側に突出する小径部52aが設けられており、小径部52aの先端にコイル保持溝53aが形成されている。コイル保持溝53aには弾性コイル54aのコイル保持溝53aの形状に倣う形状で先端側に形成されている保持部541aが嵌め込まれて係止され、取付ボルト5aの雄ねじ51aの先端側で小径部52aの外周に弾性コイル54aが設けられる(
図6参照)。弾性コイル54aは、雄ねじ51aと略対応する外径を有し、且つ雄ねじ51aと同ピッチで螺旋状に巻回されている。弾性コイル54aは、雄ねじ51aの先端側に、コーン4aの雌ねじ42aの先端近傍に掛止可能な弾性部材に相当する。
【0035】
取付ボルト5aは、あと施工アンカー2aが流通時等の非拡開状態である場合には、あと施工アンカー2aとは別体となっており、あと施工アンカー2aの拡開片32aが拡開状態になった場合に、後方から筒状の本体3aに挿通され、拡開片32aの内部に入り込んだコーン4aの雌ねじ42aに弾性コイル54aとそれに続く雄ねじ51aが螺合される。雌ねじ42aに取付ボルト5aの弾性コイル54aを螺合する際には、弾性コイル54aの保持部541aがコイル保持溝53aに保持されたまま弾性コイル54aの径が縮みながら螺入される。そして、あと施工アンカー2aが拡開状態で取付ボルト5aの弾性コイル54aがコーン4aの雌ねじ42aの先端近傍まで螺合された状態では、弾性コイル54aが放射方向外側に付勢され、弾性コイル54aが雌ねじ42aに付勢で掛止されることにより、取付ボルト5aの緩み止めがなされる。
【0036】
第2実施形態のあと施工アンカー取付構造でも、コンクリート躯体8aの穿孔81a内で、本体3aの拡開片32aにコーン4aが入り込んだ状態で拡開片32aが拡開され、拡開片32aが穿孔81aの孔壁に食い込むように設けられる。そして、取付ボルト5aが本体3aに挿通されて取付ボルト5aの弾性コイル54a及びこれに続く雄ねじ51aがコーン4aの雌ねじ42aの先端近傍まで螺合され、雄ねじ51aの先端側の弾性コイル54aがコーン4aの雌ねじ42aの先端近傍に掛止される。
【0037】
コンクリート躯体8aから突出する取付ボルト5aに取付物7aを取り付けた状態では、取付物7aが取付ボルト5aの突出部分に外挿され、その外側に例えばワッシャー61a、スプリングワッシャー62aが取付ボルト5aの突出部分に順に外挿され、その外側でナット63aが取付ボルト5aの雄ねじ51aに螺合される。取付物7aは、締め付けられたナット63aにより、コンクリート躯体8aに固定して取り付けられる。
【0038】
第2実施形態のあと施工アンカー取付構造を施工する際には、第1実施形態の
図4(a)〜(c)と同様の手順であと施工アンカー2aの一次的な定着を行った後、コンクリート躯体8aの表面に取付物7aを配置し、取付物7aの穴に挿入するようにして取付ボルト5aを本体3aに挿入する。そして、本体3aに挿入した取付ボルト5aの弾性コイル54a及びこれに続く雄ねじ51aを拡開片32aの内部に入り込んだコーン4aの雌ねじ42aに螺合し、弾性コイル54aがコーン4aの雌ねじ42aの先端近傍に位置するまで螺合し、弾性コイル54aをコーン4aの雌ねじ42aの先端近傍に弾性の付勢によって掛止する。
【0039】
更に、所定の締付を行った取付ボルト5aのコンクリート躯体8aからの突出部分に、取付物7aの外側からワッシャー61a、スプリングワッシャー62aを外挿し、その外側からナット63aを取付ボルト5aの雄ねじ51aに螺合する。そして、ナット63aでスプリングワッシャー62a、ワッシャー61a、取付物7aをコンクリート躯体8aの表面に押圧して付勢するまで締め付けを行い、取付物7aの取り付けが完了する。この状態において、第1実施形態と同様に、取付ボルト5aは、ナット63aの所定の締め付けによりコンクリート躯体8aの表面側に引っ張られ、コーン4aを先端から軸方向に引っ張り、拡開片32aに追加の拡張力を発生させる。
【0040】
第2実施形態によれば、取付ボルト5aの雄ねじ51aの先端側の弾性コイル54aをコーン4aの雌ねじ42aの先端近傍に掛止する構造により、弾性コイル54aの掛止でコンクリート躯体8aからの本体3aの抜け出しや取付ボルト5aの緩みを防止することができる。また、本体3aを打ち込んで拡開片32aを拡開させ、コンクリート躯体8aに本体3aとコーン4aを設置した後に、換言すれば本体打込み式のあと施工アンカー2aの打設後に所要の長さの取付ボルト5aを螺合して取り付けることができる。即ち、あと施工アンカー打設後にボルト長を変更することが容易となり、施工の柔軟性を高めることができる。
【0041】
また、コーン4aの雌ねじ42aの先端近傍まで螺合される取付ボルト5aがコンクリート躯体8aの表面側に引っ張られることにより、拡開片32aに追加の拡張力、コンクリート躯体8aへの追加の定着力を得ることができ、あと施工アンカー器具1aをより強固に安定してコンクリート躯体8aに定着させることができる。
【0042】
また、弾性部材を弾性コイル54aとすることにより、簡単な構造で且つ低コストにコーン4aの雌ねじ42aに掛止する弾性部材を得ることができる。また、雄ねじ51aと略対応する外径を有し且つ雄ねじ51aと同ピッチで螺旋状に巻回された弾性コイル54aとすることにより、取付ボルト5aの弾性部材の箇所でもコーン4aの雌ねじ42aへのスムーズな螺合を確保することができる。
【0043】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0044】
本発明におけるコーンの雌ねじの先端近傍に設けられ、取付ボルトの雄ねじの先端近傍に掛止される弾性部材は、第1実施形態の板ばね44以外にも本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えばコーンの雌ねじの先端側の雌ねじ穴に弾性コイルの収容部を形成し、この収容部に弾性部材として弾性コイルを収容し、収容した弾性コイルが取付ボルトの雄ねじの先端近傍に掛止される構成等とすることが可能である。
【0045】
また、本発明における取付ボルトの雄ねじの先端側に設けられ、コーンの雌ねじの先端近傍に掛止される弾性部材も、第2実施形態のコイル保持溝53aに保持部541aが嵌め込まれて係止される弾性コイル54a以外にも本発明の趣旨の範囲内で適宜である。
【0046】
また、本発明における筒状の本体には、円筒状の本体以外にも角筒状等の本体も含まれ、又、本発明における略截頭錐形のコーンには、略截頭円錐形のコーン以外にも略截頭角錐形等のコーンも含まれる。