特許第6838828号(P6838828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838828
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】液体現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/13 20060101AFI20210222BHJP
   G03G 9/135 20060101ALI20210222BHJP
   C08G 63/12 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   G03G9/13
   G03G9/135
   C08G63/12
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-100042(P2017-100042)
(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公開番号】特開2018-194735(P2018-194735A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰輝
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−178296(JP,A)
【文献】 特開昭51−035336(JP,A)
【文献】 特開2007−219229(JP,A)
【文献】 特開平06−041402(JP,A)
【文献】 特開2017−062379(JP,A)
【文献】 特開2013−114208(JP,A)
【文献】 特開平02−116858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/12−9/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含む結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子及び絶縁性液体を含有する液体現像剤であって、前記ポリエステル系樹脂が、
(i) 非極性基を有する(メタ)アクリル系樹脂がポリエステル樹脂にグラフトした櫛形のポリマー構造を有すること、及び
(ii) メチルエチルケトン不溶分が5質量%以下であること
を満足し、前記非極性基を有する(メタ)アクリル系樹脂が、炭素数が6以上の長鎖アルキル基である非極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーを80モル%以上含む(メタ)アクリル系モノマーとジエステル反応性基を有する連鎖移動剤との重合物である、液体現像剤。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂が、非極性基を有する(メタ)アクリル系樹脂とポリエステル樹脂がエステル結合を介して結合した共重合体である、請求項1記載の液体現像剤。
【請求項3】
分散剤を含まないか、又は含んでいても分散剤の含有量が、液体現像剤中、1質量%以下である、請求項1又は2記載の液体現像剤。
【請求項4】
(i) 非極性基を有する(メタ)アクリル系樹脂がポリエステル樹脂にグラフトした櫛形のポリマー構造を有すること、及び
(ii) メチルエチルケトン不溶分が5質量%以下であること
を満足する、液体現像剤用ポリエステル系樹脂であって、前記非極性基を有する(メタ)アクリル系樹脂が、炭素数が6以上の長鎖アルキル基である非極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーを80モル%以上含む(メタ)アクリル系モノマーとジエステル反応性基を有する連鎖移動剤との重合物である、液体現像剤用ポリエステル系樹脂
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる液体現像剤、及び該液体現像剤に用いられるポリエステル系樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真用現像剤として、着色剤及び結着樹脂を含む材料からなるトナー粒子が絶縁性液体中に分散した液体現像剤が知られている。液体現像剤は、トナーの小粒径化が可能であることから、画質の面で優れている。
【0003】
一般的に、液体現像剤には、絶縁性液体中でトナー粒子を分散させるための材料として分散剤が用いられている。しかしながら、トナー粒子と分散剤は非共有結合性の相互作用によって吸着するために、吸着力が弱いと未吸着分散剤が発生する。その結果、液体現像剤の抵抗が低下し、印刷品質の低下を招く。
【0004】
このような課題に対し、自己分散型のトナー粒子を用いることで、分散剤を添加することなく、小粒径化でき、高抵抗な液体現像剤を製造できる技術がある。例えば、特許文献1及び2では、不飽和ポリエステルに対し、非極性基を有するメタクリル系モノマーを重合付加したポリエステルをトナー粒子用のバインダーとして用いることで、分散剤を添加することなく小粒径化でき、高抵抗な液体現像剤が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−178296号公報
【特許文献2】特開2007−219229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、不飽和ポリエステルに対しメタクリル系モノマーの重合付加を行うと、不飽和ポリエステル間の重合反応が同時に進行するために、ポリエステルが架橋し、ゲル化してしまう。その結果、分散剤を添加することなく小粒径化できるものの、液体現像剤が高粘度化し、分散安定性が低下するという欠点を有する。
【0007】
本発明は、分散剤の非存在下でも、トナー粒子の小粒径化と分散安定性を両立することができ、高抵抗な液体現像剤、及び該液体現像剤に用いられるポリエステル系樹脂に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
〔1〕 ポリエステル系樹脂を含む結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子及び絶縁性液体を含有する液体現像剤であって、前記ポリエステル系樹脂が、
(i) 非極性基を有する(メタ)アクリル系樹脂がポリエステル樹脂にグラフトした櫛形のポリマー構造を有すること、及び
(ii) メチルエチルケトン不溶分が5質量%以下であること
を満足する、液体現像剤、並びに
〔2〕 (i) 非極性基を有する(メタ)アクリル系樹脂がポリエステル樹脂にグラフトした櫛形のポリマー構造を有すること、及び
(ii) メチルエチルケトン不溶分が5質量%以下であること
を満足する、液体現像剤用ポリエステル系樹脂
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体現像剤は、分散剤の非存在下でも、トナー粒子の小粒径化と分散安定性を両立することができ、高抵抗であるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液体現像剤は、ポリエステル系樹脂を含む結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子及び絶縁性液体を含有するものであり、分散剤の非存在下でも、トナー粒子の小粒径化と分散安定性を両立することができ、高抵抗を有するものである。
【0011】
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
液体現像剤は、トナー粒子の小粒径化が可能であるが、ポリエステル樹脂は、極性が高いために、非極性の絶縁性液体中では、分散が不安定である。そこで、ポリエステル樹脂が自己分散するには、ポリエステル樹脂に、非極性ユニットを導入する必要があり、またトナー粒子が安定に分散するには、立体斥力が必要である。
そこで、ポリエステル樹脂への、長鎖アルキル基等の非極性基を有する(メタ)アクリル樹脂の導入を検討したところ、特許文献1、2のように、ポリエステル樹脂中の不飽和二重結合に対し(メタ)アクリル樹脂を重合した場合には、副反応で架橋反応が起こり、トナー粒子の分散性に悪影響を与えるゲルが生成することが判明した。
本発明者らがさらに鋭意検討した結果、ポリエステル樹脂とカルボキシ基等の官能基を導入した(メタ)アクリル樹脂とのジエステル化反応を行い、複合化することで、ゲルの生成を抑制できることを見出し、
(i) 非極性基を有する(メタ)アクリル系樹脂がポリエステル樹脂にグラフトした櫛形のポリマー構造を有すること、及び
(ii) メチルエチルケトン不溶分が5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下であること
下記(i)及び(ii)の要件を満足するポリエステル樹脂(以下、自己分散型ポリエステル樹脂ともいう)を含有する本発明の液体現像剤を完成するに到った。
【0012】
本発明の液体現像剤は、トナー粒子及び絶縁性液体を含有する。
【0013】
トナー粒子は、自己分散型ポリエステル系樹脂を含む結着樹脂と着色剤を含有する。
【0014】
本発明における自己分散型ポリエステル系樹脂は、非極性基を有するアクリル系樹脂がポリエステル樹脂にグラフトした櫛形のポリマー構造を有する。本明細書において、「櫛形のポリマー構造」とは、一本のポリエステル樹脂を主鎖として、多数のアクリル系樹脂が枝のように結合したものである。
【0015】
本発明において、主鎖となるポリエステル樹脂は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
【0016】
2価のアルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数2以上15以下の脂肪族ジオールや、式(I):
【0017】
【化1】
【0018】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。炭素数2以上20以下の脂肪族ジオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0019】
2価のカルボン酸系化合物としては、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上10以下のジカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数が1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。但し、フマル酸、マレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸系化合物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば含まれていてもよいが、その含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以下、より好ましくは1モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以下である。
【0020】
また、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、アルコール成分には3価以上のアルコールが、カルボン酸成分には3価以上のカルボン酸系化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよいが、3価以上の原料モノマーの含有量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量中、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。
【0021】
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、さらに必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180℃以上250℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
【0022】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下である。
【0023】
また、反応時間短縮のために、助触媒を使用してもよい。助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。助触媒とエステル化触媒の質量比(助触媒/エステル化触媒)は、0.01以上0.5以下が好ましい。
【0024】
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル系樹脂が有する非極性基としては、長鎖アルキル基、ベンジル基等が挙げられ、これらの中では、絶縁性液体との親和性の観点から、長鎖アルキル基が好ましい。かかる長鎖アルキル基の炭素数は、立体斥力を得られる観点から好ましくは6以上、より好ましくは10以上であり、そして絶縁性液体への溶解性の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは20以下である。従って、(メタ)アクリル系モノマーとしては、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ミリスチルアクリレート、ミリスチルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等の前記長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸アルキルエステルがより好ましい。前記長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル系モノマーが用いられていてもよいが、前記長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、(メタ)アクリル系モノマー総量中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
【0026】
(メタ)アクリル樹脂をポリエステル樹脂に結合する方法としては、ポリエステル樹脂に、(メタ)アクリル系モノマーを結合する方法、(メタ)アクリル樹脂に反応性官能基を導入したマクロモノマー(マクロマー)をポリエステル樹脂と結合させるマクロモノマー法等が挙げられるが、本発明においては、マクロモノマー法が好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル樹脂に導入する反応性官能基としては、ポリエステル樹脂への反応性の観点から、エステル反応性官能基が好ましい。エステル反応性官能基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル樹脂に反応性官能基を導入する方法としては、例えば、非極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーと連鎖移動剤を重合させる方法が挙げられる。連鎖移動剤を用いることで、(メタ)アクリル樹脂の片末端に反応性官能基を導入でき、架橋反応を抑制することができるため、ポリエステル樹脂にグラフトさせた際に、より理想的な櫛形のポリマー構造を形成することができる。
【0029】
連鎖移動剤としては、エステル反応性基を有するメルカプト化合物が好ましい。このうち、モノエステル反応性基を有する連鎖移動剤としては、チオグリコール酸、チオサリチル酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト酪酸、N-(2-メルカプトプロピオニル)グリシン、2-メルカプトニコチン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N-(3-メルカプトプロピオニル)アラニン、2-メルカプトエタンスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸、4-メルカプトブタンスルホン酸、2-メルカプトエタノール、1-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、メルカプトフェノール、2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプト-3-ピリジノール等が挙げられる。また、ジエステル反応性基を有する連鎖移動剤としては、チオリンゴ酸、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール等が挙げられる。この中でも、櫛形のポリマーを合成する観点から、ジエステル反応性基を有する連鎖移動剤が好ましい。
【0030】
重合に供する連鎖移動剤の量は、非極性基を有する(メタ)アクリル系モノマー100モルに対して、生成するマクロマーの高分子量化を抑制する観点から、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上であり、生成するマクロマーの疎水性を増大させる観点から、好ましくは10モル以下、より好ましくは8モル以下である。
【0031】
(メタ)アクリル樹脂に反応性官能基を導入したマクロモノマー(マクロマー)とポリエステル樹脂の結合は、適宜、重合開始剤等を用い、常法により行うことができるが、ポリエステル樹脂にマクロマーを反応させてもよく、ポリエステル樹脂の原料モノマーとマクロマーを反応させてもよい。
【0032】
マクロマーにおける(メタ)アクリル系モノマーの重合度は、トナー粒子に立体斥力を付与する観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、そして、絶縁性溶媒に対する溶解性の観点から、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下である。
【0033】
マクロマーの酸価は、ジエステル化反応性を向上させる観点から、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、絶縁性液体に対する溶解性の観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0034】
マクロマーの重量平均分子量は、トナー粒子に立体斥力を付与する観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは4,000以上、さらに好ましくは6,000以上であり、そして、絶縁性液体に対する溶解性の観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは30,000以下である。
【0035】
以上より、(メタ)アクリル樹脂は、非極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含む(メタ)アクリル系モノマーとジエステル反応性基を有する連鎖移動剤との重合物であることが好ましく、非極性基を有する(メタ)アクリル系モノマーとジエステル反応性基を有する連鎖移動剤との重合物であることがより好ましい。
【0036】
また、自己分散型ポリエステル系樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂とポリエステル樹脂がエステル結合を介して結合した共重合体であることが好ましい。
【0037】
ポリエステル樹脂にグラフトした(メタ)アクリル系樹脂は、トナー粒子を低極性化させる観点から、ポリエステル樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、そして、トナー粒子の定着性低下を防ぐ観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0038】
自己分散型ポリエステル系樹脂の軟化点は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下であり、そして、液体現像剤を高温下で保存した場合にトナー粒子が凝集するのを防止する観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。これらの観点を総合すると、自己分散型ポリエステル系樹脂の軟化点は、好ましくは70℃以上160℃以下、より好ましくは80℃以上150℃以下である。
【0039】
自己分散型ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下であり、そして、液体現像剤を高温下で保存した場合にトナー粒子が凝集するのを防止する観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上である。これらの観点を総合すると、自己分散型ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは45℃以上80℃以下、より好ましくは50℃以上75℃以下である。
【0040】
前記自己分散型ポリエステル系樹脂の含有量は、結着樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%、即ち、自己分散型ポリエステル系樹脂のみを用いることがさらに好ましい。ただし、本発明の効果が損なわれない範囲において、前記自己分散型ポリエステル系樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。前記ポリエステル系樹脂以外の樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0041】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒用トナー、カラー用トナーのいずれであってもよい。
【0042】
着色剤の含有量は、画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、そして、トナーの粉砕性を向上させて小粒径化する観点、低温定着性を向上させる観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0043】
トナー粒子は、結着樹脂及び着色剤に加えて、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
【0044】
トナー粒子の製造方法としては、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕して得る方法、水系結着樹脂分散液と水系着色剤分散液を混合し結着樹脂粒子と着色剤粒子を合一させる方法、又は水系結着樹脂分散液と着色剤を高速攪拌する方法等が挙げられる。現像性及び定着性を向上させる観点から、トナー原料を溶融混練した後に粉砕する方法が好ましい。
【0045】
先ず、結着樹脂、着色剤、必要に応じて用いる添加剤等を含有するトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましく、結着樹脂中での着色剤の分散性を向上させる観点から、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
【0046】
ヘンシェルミキサーでの混合は、攪拌の周速度、及び攪拌時間を調整しながら行う。周速度は、着色剤の分散性を向上させる観点から、好ましくは10m/sec以上30m/sec以下である。また、攪拌時間は、着色剤の分散性を向上させる観点から、好ましくは1分以上10分以下である。
【0047】
次いで、トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。本発明においては、着色剤の分散性を向上させる観点、及び粉砕後のトナー粒子の収率を向上させる観点から、オープンロール型混練機が好ましい。
【0048】
次いで、溶融混練物を粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕工程、及び必要に応じて分級工程等を経て、トナー粒子を得ることができる。
【0049】
粉砕工程は、多段階に分けてもよい。例えば、溶融混練物を、約1〜5mmに粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕工程時の生産性を向上させるために、溶融混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
【0050】
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、気流式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
【0051】
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。なお、必要に応じて粉砕工程と分級工程とを繰り返してもよい。
【0052】
この工程で得られるトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、後述の湿式粉砕工程の生産性を向上させる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下である。なお、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。トナー粒子は、絶縁性液体と混合後、湿式粉砕等によりさらに微細化されることが好ましい。
【0053】
トナー粒子の含有量は、絶縁性液体100質量部に対して、高速印刷性の観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、そして、分散安定性の向上の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
【0054】
本発明における絶縁性液体とは、電気が流れにくい液体のことを意味するが、本発明においては、絶縁性液体の導電率は、好ましくは1.0×10-11S/m以下、より好ましくは5.0×10-12S/m以下であり、そして、好ましくは1.0×10-13S/m以上である。
【0055】
絶縁性液体の具体例としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等が挙げられる。特に、臭気、無害性及びコストの点から、ノルマルパラフィン系溶媒、イソパラフィン系溶媒等の脂肪族炭化水素が好ましい。具体的には、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK(以上、いずれもエクソンモービル社製)、シェルゾール71(シェル石油化学社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2080(以上、いずれも出光石油化学社製)、モレスコホワイトP-55、モレスコホワイトP-70(以上、いずれも松村石油社製)、コスモホワイトP-60、コスモホワイトP-70(以上、いずれもコスモ石油ルブリカンツ社製)等が挙げられる。
【0056】
絶縁性液体の25℃における粘度は、液体現像剤中でのトナー粒子の保存安定性を向上させる観点から、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、さらに好ましくは20mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以下であり、そして、好ましくは0.01mPa・s以上、より好ましくは0.1mPa・s以上である。
【0057】
液体現像剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させて得られる。トナー粒子の粒径を小さくする観点から、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させた後、湿式粉砕して液体現像剤を得ることが好ましい。本発明の液体現像剤は、分散剤の非存在下であっても、トナー粒子を分散させることができるため、分散剤を含まないか、又は含んでいても分散剤の含有量が、液体現像剤中、1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下であることが望ましい。
【0058】
トナー粒子、及び絶縁性液体の混合方法としては、攪拌混合装置により攪拌する方法等が好ましい。
【0059】
撹拌混合装置は、特に限定はされないが、トナー粒子分散液の生産性及び保存安定性を向上させる観点から、高速攪拌混合装置が好ましく、具体的には、デスパ(浅田鉄工(株)製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミクス(株)製)、クレアミックス(エム・テクニック(株)製)、ケイディーミル(ケイディー・インターナショナル社製)等が好ましい。
【0060】
高速攪拌混合装置による混合によって、トナー粒子が予備分散され、トナー粒子分散液を得ることができ、次の湿式粉砕による液体現像剤の生産性が向上する。
【0061】
トナー粒子分散液の固形分濃度は、画像濃度を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0062】
湿式粉砕とは、絶縁性液体中に分散させたトナー粒子を、絶縁性液体に分散した状態で機械的に粉砕処理する方法である。
【0063】
使用する装置としては、例えば、アンカー翼等の一般に用いられている撹拌混合装置を用いることができる。撹拌混合装置の中では、デスパ(浅田鉄工(株)製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス(株)製)等の高速攪拌混合装置、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の粉砕機又は混練機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
【0064】
これらの中では、トナー粒子の粒径を小さくする観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、及びその分散液の粘度を低減する観点から、ビーズミルの使用が好ましい。
【0065】
ビーズミルでは、用いるメディアの粒径や充填率、ローターの周速度、滞留時間等を制御することにより所望の粒径、粒径分布を持ったトナー粒子を得ることができる。
【0066】
以上のように、本発明の液体現像剤は、
工程1:自己分散型ポリエステル系樹脂を含む結着樹脂及び着色剤を溶融混練し、粉砕してトナー粒子を得る工程、
工程2:工程1で得られたトナー粒子を絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程3:工程2で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含む方法により製造することが好ましい。
【0067】
液体現像剤の固形分濃度は、画像濃度を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0068】
液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤の粘度を低減する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、液体現像剤の画質を向上させる観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0069】
固形分濃度が25質量%の液体現像剤の25℃における粘度は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上、さらに好ましくは5mPa・s以上であり、そして、液体現像剤の分散安定性を向上させ、凝集を防止する観点から、好ましくは40mPa・s以下、より好ましくは30mPa・s以下、さらに好ましくは20mPa・s以下である。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0071】
〔マクロマーの酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0072】
〔マクロマーの重量平均分子量(Mw)〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により重量平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー(株)製)
【0073】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0074】
〔樹脂のガラス転移温度(Tg)〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0075】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0076】
〔樹脂のメチルエチルケトン(MEK)不溶分〕
(1) 試料の調製
JIS Z8801の篩を用いて、22メッシュの篩を通過し、30メッシュの篩は通過しない粉末状の試料を採取する。試料が塊等の場合は、市販のハンマー、コーヒーミルを用いて、粉砕し、粉末状として篩いにかける。
【0077】
(2) 試料の溶解
2-1. 試料2.000gを、ガラス瓶(柏洋硝子(株)製、M-140)に秤量した後、MEK 95gを加え、内蓋及び外蓋を取り付ける。
2-2. ボールミルにて5時間攪拌する(周速:200mm/sec)。
2-3. 10時間静置する。
【0078】
(3) 濾過
3-1. 予め計量済み(1000分の1g単位)のナスフラスコ(アズワン(株)製、FGN-012942、質量A(g))に取り付けたガラスフィルタ(目開き規格11G-3)を準備する。ガラスフィルタのシールには、減圧が可能なゴム栓を用いる。
3-2. 2-3において10時間静置した溶解液の上澄みから20mlをメスピペッドで吸い取り、3-1で準備したガラスフィルタを用いて、減圧濾過する。なお、液面から下2cmまでを上澄みとする。溶解液を濾過する前のナスフラスコ内の減圧度を40kPaに調整する。
3-3. 未使用のMEK 20mlをメスピペッドで吸い取り、ガラスフィルタに付着している可溶分を減圧濾過する。
【0079】
(4) 乾燥
4-1. エバポレータにてナスフラスコ内のMEKを除去する。
ウォーターバス温度:70℃
ナスフラスコ回転数:200r/min
MEK除去中のナスフラスコ内の減圧度:40〜20kPaに調整
時間:10分
4-2. 50℃・1torrにて12時間乾燥した後、ナスフラスコの質量B(g)を計量する。
【0080】
(5) MEK不溶分の算出
5-1. MEK 20mlに溶解したMEK可溶分X(g)を算出する。
X=B−A
5-2. MEK 95gに溶解したMEK可溶分Y(g)を、MEKの比重を0.805として算出する。
Y=X×95/(20×0.805)
5-3. 試料1gあたりの可溶分Z(質量%)を算出する。
Z=Y/2×100
5-4. MEK不溶分(質量%)=100-Z
なお、MEK不溶分(質量%)は、3回の測定値の平均値とする。
【0081】
〔絶縁性液体と混合する前のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させる。その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0082】
〔絶縁性液体の導電率〕
試料25gを40mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.7」((株)マルエム製)に入れ、非水系導電率計「DT-700」(Dispersion Technology社製)を用いて、電極を絶縁性液体に浸し、25℃で20回測定を行って平均値を算出し、導電率を測定する。数値が小さいほど高抵抗であることを示す。
【0083】
〔絶縁性液体の25℃における粘度〕
10mL容のスクリュー管に測定液を6〜7mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」((株)セコニック製、検出端子:チタン製、φ8mm)を用い、検出端子の先端部の15mm上に液面が来る位置にスクリュー管を固定し、25℃にて粘度を測定する。
【0084】
〔トナー粒子分散液及び液体現像剤の固形分濃度〕
試料10質量部をヘキサン90質量部で希釈し、遠心分離装置「3-30KS」(シグマ社製)を用いて、回転数25,000r/minにて、20分間回転させる。静置後、上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90質量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行う。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、下層を真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて8時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
【0085】
【数1】
【0086】
マクロマー製造例
溶媒(メチルエチルケトン)100gを、冷却管、窒素導入管、撹拌機及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。反応容器内を80℃に加温して、表1に示すラウリルメタクリレートとチオリンゴ酸(連鎖移動剤)、重合開始剤「V-65」(和光純薬工業社製)の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、80℃でさらに3時間反応させた。80℃で溶媒を留去し、表1に示す物性を有する共重合体からなるマクロマー(マクロマーA、B)を得た。
【0087】
【表1】
【0088】
樹脂製造例1
表2に示す原料モノマー、マクロマー、2-エチルヘキサン酸錫(II)(エステル化触媒)及び没食子酸(エステル化助触媒)を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応を行い、24時間後、酸価が4.0mgKOH/gに達した時点で反応を終了し、表2に示す物性を有する自己分散型ポリエステル系樹脂(樹脂A〜C)を得た。
【0089】
樹脂製造例2
表2に示す原料モノマー、2-エチルヘキサン酸錫(II)(エステル化触媒)及び没食子酸(エステル化助触媒)を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応を行い、15時間後、酸価が4.0mgKOH/gに達した時点で反応を終了し、表2に示す物性を有するポリエステル樹脂(樹脂D)を得た。
【0090】
樹脂製造例3
表3に示すBPA−PO及びテレフタル酸、2-エチルヘキサン酸錫(II)(エステル化触媒)21g及び没食子酸(エステル化助触媒)2gを、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、マントルヒーター中で230℃まで昇温し、15時間反応を行った。その後、170℃に降温し、フマル酸を添加し、1時間を要して210℃に昇温し、2時間反応させて。次いで、160℃に降温し、表3に示すメタクリル酸ドデシル及び重合開始剤(ジブチルパーオキサイド)51gの混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、2時間付加重合反応を行った。さらに、8.0kPaにて1時間反応を行い、表3に示す物性を有する自己分散型ポリエステル系樹脂(樹脂E)を得た。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
実施例1〜3及び比較例1、3
表4に示す結着樹脂80質量部及び着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー15:3)20質量部を、予め20L容のヘンシェルミキサーを使用し、回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0094】
〔溶融混練条件〕
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(日本コークス工業(株)製、ロール外径:14cm、有効ロール長:55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数35r/min(周速度15.0m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が90℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
【0095】
得られた混練物を冷却ロールで圧延冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック(株)製)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー粒子を得た。
【0096】
得られたトナー粒子25質量部と絶縁性液体「アイソパーL」(エクソンモービル社製、イソパラフィン、導電率6.2×10-13S/m、25℃における粘度1mPa・s)75質量部を2L容のポリエチレン製容器に入れた。「T.K.ロボミックス」(プライミクス(株)製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、固形分濃度25質量%のトナー粒子分散液を得た。
【0097】
次に、得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、6筒式サンドミル「TSG-6」(アイメックス(株)製)で回転数1300r/min(周速度4.8m/sec)にて4時間湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去し、液体現像剤を得た。
【0098】
比較例2
比較例1と同様にして得られたトナー粒子X 25質量部と、分散剤「ソルスパース11200」(ルブリゾール社製)1.0質量部、及び絶縁性液体「アイソパーL」(エクソンモービル社製、イソパラフィン、導電率6.2×10-13S/m、25℃における粘度1mPa・s)74.25質量部を2L容のポリエチレン製容器に入れた。「T.K.ロボミックス」(プライミクス(株)製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、固形分濃度25質量%のトナー粒子分散液を得た。
【0099】
次に、得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、6筒式サンドミル「TSG-6」(アイメックス(株)製)で回転数1300r/min(周速度4.8m/sec)にて4時間湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去し、液体現像剤を得た。
【0100】
実施例及び比較例で得られた液体現像剤について、下記の方法により物性を測定した。結果を表4に示す。
【0101】
〔液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーL(エクソンモービル社製、イソパラフィン、25℃における粘度1mPa・s)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
【0102】
〔液体現像剤の25℃における粘度〕
10mL容のスクリュー管に測定液を6〜7mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」((株)セコニック製、検出端子:チタン製、φ8mm)を用い、検出端子の先端部の15mm上に液面が来る位置にスクリュー管を固定し、25℃にて粘度を測定する。
【0103】
〔液体現像剤の抵抗〕
固形分濃度が25質量%の液体現像剤25gを40mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.7」((株)マルエム製)に入れ、非水系導電率計「DT-700」(Dispersion Technology社製)を用いて、電極を液体現像剤に浸し、25℃で20回測定を行って平均値を算出し、導電率を測定し、その逆数を抵抗とする。数値が高いほど高抵抗であり、印刷品質が良好になる。
【0104】
【表4】
【0105】
以上の結果より、実施例1〜3の液体現像剤は分散剤を添加せずとも小粒径、低粘度、及び高抵抗を有することが分かる。これに対し、比較例1の液体現像剤はポリエステル樹脂が自己分散性を持たないためにトナー粒子を小粒径化できず、粘度も高い。また、比較例2の液体現像剤のように、自己分散性を持たないポリエステル樹脂であっても分散剤を添加すれば小粒径化できる一方で、抵抗が低下する。さらに、比較例3の液体現像剤は、小粒径化できる一方で、フマル酸の不飽和結合を架橋点として架橋反応が進行したポリエステル樹脂を用いたために、高粘度を示している。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の液体現像剤は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成
される潜像の現像等に好適に用いられるものである。