(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水噴出部は、前記飽和砂の下部において略水平方向に向けて延在するとともに、地上から管内に水が供給され、複数の水噴出孔を有する水平水配管であることを特徴とする請求項3に記載の浮体免震構造。
前記地震信号は、前記構造物の直下の地盤内、及び前記構造物自体の少なくとも一方に設けられた加速度計によって計測された加速度に基づく信号であることを特徴とする請求項6に記載の飽和砂制御システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の滑り支承の免震工法では、一般的に免震ゴムの部材費が大きくなり、構造物全体のコストアップとなることから、例えば3〜5階程度の低層階の建物に対して適用し難くい現状があった。そのため、簡単な構造で、かつ構造的な安定性を確保することができる構造物の免震構造が求められており、その点で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、常時は構造物に対して安定した支持力を確保することができ、地震時にのみ滑りによる免震効果を効果的に発揮することができる浮体免震構造及び飽和砂制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る浮体免震構造は、構造物の免震基礎構造として用いられる浮体免震構造であって、
前記構造物を接地させて直接支持し、前記構造物の荷重を支持する支持地盤と、
前記支持地盤に到達するまで打設され、前記支持地盤
の上面に支持された前記構造物の周囲に間隔をあけて全周にわたって設けられた側壁と、前記支持地盤および前記側壁によって囲まれた領域に打設される飽和状態に設定された飽和砂と、を備え、前記飽和砂は、相対密度が20〜50%に設定されていることを特徴としている。
【0007】
本発明では、支持地盤および側壁によって囲まれた領域に打設された飽和砂は、常時は構造物のフローティング効果による支持力の増加を期待することができ、安定した支持力が得られて構造物に対する山留めとして機能する。そして、設定レベル以上の地震が発生することにより飽和砂が液状化したときには、液体化して比重が約2.0の液体となって水に比べて大きな浮力を発生させることができるため、支持地盤の上面で構造物が滑り易くなり、免震効果を高めることができる。また、水に比べて粘性の高い流体となるので、減衰効果も期待することが可能となる。
【0008】
また、本発明の浮体免震構造では、水に比べて液体化した地盤の比重が大きいことから、所定の浮力を得るために設ける支持地盤および側壁によって囲まれた深さを浅くすることができる。そのため、施工時において、前記領域を掘削する際の掘削土量を低減することができ、コストや工期を抑えた施工を行うことができる。
さらに、本発明では、打設される飽和砂の厚さを変えることにより、容易に浮力を調整できる。
【0009】
また、本発明に係る浮体免震構造は、前記支持地盤と前記構造物との間には、所定の層厚の砂層が介在していることが好ましい。
【0010】
この場合には、支持地盤と構造物との間に介在される砂層によって、支持地盤に対する摩擦抵抗を小さくすることができ、より効果的に滑りを発生されることができるので、構造物の免震効果をさらに向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る浮体免震構造は、前記飽和砂には、前記飽和砂の下部に向けて水を噴出する水噴出部が設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明では、所望のタイミングで飽和砂の下部に向けて水噴出部より水を噴出させることで、飽和砂の相対密度を20〜50%の小さい状態で保つことができ、飽和砂の経年変化や液状化による密度の増加を防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る浮体免震構造は、前記水噴出部は、前記飽和砂の下部において略水平方向に向けて延在するとともに、地上から管内に水が供給され、複数の水噴出孔を有する水平水配管であることが好ましい。
【0014】
この場合には、飽和砂の下部の全体にわたって水平水配管を配設することができるので、飽和砂の全体にわたって一様に水を噴出させることができ、飽和砂の相対密度のムラの発生を抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係る浮体免震構造は、前記水噴出部は、前記飽和砂の下部に開口端を位置させるとともに、地上から管内に水が供給された縦型水配管であり、前記開口端から水が噴出されることが好ましい。
【0016】
この場合には、飽和砂の下部に開口端を位置させるように縦型水配管を配設するという簡単な構成で設置することができるので、コストの低減を図ることができる。
【0017】
また、本発明に係る飽和砂制御システムは、上述した浮体免震構造の飽和砂の相対密度を地震動の大きさに応じて制御する飽和砂制御システムであって、地震動に基づく地震信号を受信する受信部と、前記地震信号に基づいて前記飽和砂内に注水する水の流量を算出する処理部と、前記処理部で算出した流量に制御された水を前記飽和砂内に注水する流量信号を発信する発信部と、を備えていることを特徴としている。
【0018】
本発明では、任意の地震動レベルを対象として飽和砂の相対密度を制御することで構造物に対して優れた免震効果を得ることができる。このとき、地盤密度に依存することなく飽和砂の地盤を液状化させることができるので、所定の浮力が確実に得られる。
しかも、飽和砂制御システムを用いることにより飽和砂の定期的な密度管理を省略することができるため、メンテナンスが不要となる利点がある。
【0019】
また、本発明に係る飽和砂制御システムは、前記地震信号は、前記構造物の直下の地盤内、及び前記構造物自体の少なくとも一方に設けられた加速度計によって計測された加速度に基づく信号であることを特徴としてもよい。
【0020】
この場合には、地震動の加速度を計測する加速度計が構造物直下の地盤や構造物自体に設けられるので、構造物に作用する地震動の揺れに対して高い精度で飽和砂の相対密度を制御することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の浮体免震構造及び飽和砂制御システムによれば、常時は構造物に対して安定した支持力を確保することができ、地震時にのみ滑りによる免震効果を効果的に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態による浮体免震構造及び飽和砂制御システムについて、図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1及び
図2に示すように、第1の実施の形態による浮体免震構造1は、構造物10の免震基礎構造として用いられ、構造物10を構築する場合に適用される。構造物10は、オフィスや住居等であり、基礎上の構造物の大きさ、形状、用途等に限定されるものではない。構造物10は、軟弱地盤Gの下層に位置する支持層2上に支持されている。支持層2を形成する固い地盤は、固い粘土、岩盤、密な砂、化学的改良地盤等の支持地盤が対象となる。
【0025】
浮体免震構造1は、構造物10の荷重を支持する
上述した支持層2と、支持層2上に支持された構造物10の周囲に間隔をあけて全周にわたって設けられた側壁3と、支持層2および側壁3によって囲まれた領域(以下、ピット部5という)に打設される飽和状態に設定された飽和砂4と、を備えている。
【0026】
側壁3は、軟弱地盤Gに対して支持層2に到達するまで打設されたシートパイル、ソイルセメント壁、鉄筋コンクリート(RC)壁等による山留め、或いは擁壁などが採用される。側壁3の種類、構成、強度は、地盤Gと飽和砂4の地盤との土圧の差に応じて、適宜設定される。また、側壁3の高さ(ピット部5の深さ)は、ピット部5に設定量の飽和砂4を打設可能であれば良く、任意に設定することができる。
側壁3は、軟弱地盤Gの土圧を受けもつと共に、地下水がピット部5内に流入することを防止する機能を備えている。具体的にピット部5には、必要に応じて防水シート(図示省略)を埋設する等の止水機能を設けることができる。
【0027】
ピット部5に打設される飽和砂4は、相対密度が20〜50%の飽和砂(正のダイレイタンシーが起きない砂)が使用されている。側壁3は、飽和砂4が常時は固体の状態を保っているので安定している。常時は、構造物10のフローティング効果が期待できる構成となっている。また、地震時には、容易に液体化して、比重が約2.0の液体となる。その結果、水に比べて浮力が大きく、基礎底面、すなわち支持層2の上面2aで滑り易くなり、免震効果を高めることができる。
【0028】
飽和砂4は、構造物10の構築後において適宜な管理手段によって高さ管理されることが好ましく、例えばセンサを用いて制御する等、周知の技術を採用することができる。
なお、飽和砂4の飽和状態の管理方法としては、砂層表面の乾燥をモニタリングする等の方法を採用することができる。
【0029】
飽和砂4としては、例えば珪砂等で粒径を揃えた砂を適用することができ、飽和度が95%以上となる飽和状態に設定されている。
飽和砂4の高さ(上面位置)は、地下水位と同等か、あるいはその上面4aよりも上に位置するように設定されている。
なお、飽和砂4の上面4aが地下水位以下となる場合には、支持層2および側壁3に止水性(非透水性)は不要である。また、地下水位が飽和砂4の上面4aより低く、かつ飽和砂4の下面(支持層2の上面2a)より高い場合には、支持層2は止水性が不要であり、側壁3には止水性がなくても良いが、止水性を有する方が好ましい。さらに、飽和砂4の下面(支持層2の上面2a)が地下水位より高い場合には、支持層2及び側壁3ともに止水性を有する方が好ましい。
【0030】
ピット部5内において構造物10と側壁3との水平方向の離間寸法は、地震により構造物10と側壁3とが水平方向に相対移動が生じた場合に互いに接触しない十分な寸法に決められている。
【0031】
次に、上述した浮体免震構造1の施工方法と作用について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施の形態の浮体免震構造1の施工は、先ずピット部5を施工する。つまり、側壁3を支持層2に到達するまで打設する。側壁3は、構造物10の側方から所定間隔で離れた位置で、構造物10を囲うように全周にわたって設ける。そして、側壁3によって囲まれた領域に存在する軟弱地盤Gを掘削することでピット部5が形成される。その後、少なくとも構造物10の基礎部分(ピット部5に配置される部分)が構築された状態で、構造物10と側壁3との間のピット部5に所定の相対密度(20〜50%)に設定されるように飽和砂4を打設する。これにより浮体免震構造1が完成となる。
【0032】
このように施工される浮体免震構造1は、支持層2および側壁3によって囲まれた領域に打設された飽和砂4は、常時は構造物10のフローティング効果を期待することができ、安定した支持力が得られて構造物10に対する山留めとして機能する。そして、設定レベル以上の地震が発生することにより飽和砂4が液状化したときには、液体化して比重が約2.0の粘性の高い液体となって水に比べて大きな浮力を発生させることができるため、支持層2の上面2aで構造物10が滑り易くなり、免震効果を高めることができる。また、水に比べて粘性の高い流体となるので、減衰効果も期待することが可能となる。
【0033】
また、本実施の形態の浮体免震構造1では、水に比べて液体化した地盤の比重が大きいことから、所定の浮力を得るために設ける支持層2および側壁3によって囲まれたピット部5の深さを浅くすることができる。そのため、施工時においてピット部5を掘削する際の掘削土量を低減することができ、コストや工期を抑えた施工を行うことができる。
さらに、本実施の形態では、打設される飽和砂4の厚さを変えることにより、容易に浮力を調整できる利点もある。
【0034】
このように本実施の形態の浮体免震構造によれば、常時は構造物に対して安定した支持力を確保することができ、地震時にのみ滑りによる免震効果を効果的に発揮することができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
図3に示すように、第2の実施の形態による浮体免震構造1Aは、支持層2の上面2aと構造物10の下面10aとの間に所定の層厚の砂層6が介在した構成となっている。なお、
図3では、ピット部5内の支持層2の上面2a全体にわたって砂層6が設けられているが、構造物10の下面10aの領域のみに砂層6を設けるようにしても良い。
【0036】
砂層6は、所定の砂をピット部5内の支持層2の上面2aに例えば10〜20cm程度の薄い厚さで層状に敷設することにより形成され、構造物10と支持層2との間で摩擦抵抗を低減する機能を有している。すなわち構造物10は、砂層6を配置することにより、支持層2との地震時の水平挙動を絶縁する効果をもたせることができる。なお、砂層6としては、例えば珪砂等で粒径を揃えた砂を適用することができ、飽和度が95%以上となる飽和状態に設定されている。
【0037】
本第2の実施の形態による浮体免震構造1Aでは、支持層2と構造物10との間に介在される砂層6によって、支持層2に対する摩擦抵抗を小さくすることができ、より効果的に滑りを発生されることができるので、構造物10の免震効果をさらに向上させることができる。
【0038】
(第3の実施の形態)
図4に示すように、第3の実施の形態による浮体免震構造1Bは、ピット部5内に打設されている飽和砂4の底部分に略水平方向に沿って延在し、飽和砂4の下部に向けて水を噴出する水平水配管7(水噴出部)を備えた構成となっている。
水平水配管7は、延在方向に沿って複数の水噴出孔7aを有しており、図示しない供給管等を連結することによって地上から例えば空気圧縮機等を使用して管内に水が供給されている。この水平水配管7の位置、本数、径寸法、材質等の構成は、適宜設定することができる。そして、水平水配管7に供給する水は、所望のタイミングで供給できるよう制御弁等を設けておくことが好ましい。
【0039】
本第3の実施の形態では、所望のタイミングで飽和砂4の下部に向けて水平水配管7より水を噴出させることで、飽和砂4の相対密度を20〜50%の小さい状態で保つことができ、飽和砂4の経年変化や液状化による密度の増加を防止することができる。
【0040】
さらに、この場合には、飽和砂4の下部の全体にわたって水平水配管7を配設することができるので、飽和砂4の全体にわたって一様に水を噴出することができ、飽和砂4の相対密度のムラの発生を抑えることができる。
【0041】
(第4の実施の形態)
図5および
図6に示すように、第4の実施の形態による浮体免震構造1Cは、上述した第3の実施の形態の水平水配管7に代えて、複数の縦型水配管8(水噴出部)を設けた構成となっている。縦型水配管8は、飽和砂4の下部に開口端8aを位置させるとともに、地上から管内に水が供給され、開口端8aから水が噴出される。
第4の実施の形態では、所望のタイミングで飽和砂4の下部に向けて縦型水配管8より水を噴出させることで、飽和砂4の相対密度を20〜50%の小さい状態で保つことができ、飽和砂4の経年変化や液状化による密度の増加を防止することができる。また、飽和砂4の下部に開口端を位置させるように縦型水配管8を配設するという簡単な構成で設置することができるので、コストの低減を図ることができる。
【0042】
(第5の実施の形態)
次に、
図7に示す第5の実施の形態による浮体免震構造1Dは、ピット部5内に打設されている飽和砂4の底部分に略水平方向に沿って延在し、飽和砂4の下部に向けて水を噴出する水噴出孔7aを有する水平水配管7と、飽和砂4内における水平水配管7の近傍と飽和砂4の上面4aより上の大気中とを連通する縦型水配管8と、を備えている。そして、浮体免震構造1Dは、飽和砂4の相対密度が飽和砂制御システムによって地震動の大きさに応じて制御される構成となっている。
【0043】
縦型水配管8は、側壁3の外側(構造物10側とは反対側)で上下方向に延びる縦管81と、縦管81の下端から側壁3を貫通して延び下端開口8bが飽和砂4内の水平水配管7の近傍に位置された下横管82と、縦管81の上端から側壁3を貫通して延び上端開口8cが飽和砂4の上面4aより上の大気中に位置された上横管83と、を有している。
【0044】
飽和砂制御システムは、水平水配管7内及び縦型水配管8内の水の流量を地震動レベルに応じて変化させて飽和砂4の相対密度を制御する飽和砂制御装置9と、地震の加速度を検出する加速度計91と、水平水配管7及び縦型水配管8に設けられ飽和砂制御装置9によって開閉制御される不図示の流量調整弁と、を備えている。
【0045】
飽和砂制御装置9は、加速度計91に接続され、加速度計91で検出した加速度の大きさに応じて水平水配管7内及び縦型水配管8内の水の流量を調整するように制御するものである。
図7において、加速度計91は、構造物10の直下の支持層2に埋設されている。なお、加速度計91の位置として、例えば
図8に示す変形例のように構造物10自体に設置されていてもよいし、あるいは構造物10の直下の地盤内と構造物10自体の両方に設けられていてもよい。
図9に示すように、飽和砂制御装置9は、地震動に基づく地震信号P1を受信する受信部92と、地震信号P1に基づいて飽和砂4内に注水する水の流量を算出する処理部93と、処理部93で算出した流量に制御された水を飽和砂4内に注水する流量信号P2を発信する発信部94と、を備えている。
【0046】
飽和砂制御装置9では、
図9に示すように、加速度計91で計測された加速度の地震信号P1を受信したときに、水平水配管7内の水の流量を調整する流量調整弁(不図示)に制御信号P2を送信して、計測された加速度に対応した流量となるように流量調整弁の開閉を制御する。そして、調整された流量により水平水配管7の水噴出孔7aから水を噴出させることで飽和砂4内に浸透流を付与するように制御する。これにより、地震時には飽和砂4は浸透流によって強制的に液状化し、過剰間隙水圧が基礎底面に伝播して浮力として作用する。そのため、基礎底面の接地圧が限りなくゼロとなることから、地震時に大きな免震効果が得られる。
このときの注水を制御するトリガーとなる加速度レベルは任意に設定することができる。
なお、加速度計91の設置が困難である場合には、緊急地震速報を水平水配管7の注水を制御するトリガーとしてもよい。
【0047】
ここで、飽和砂4の密度の要件として、相対密度が100%以下となることが想定される。そこで、飽和砂制御装置9においてトリガーとなる加速度レベルを小さく設定すれば、中小地震においても免震効果を発揮することができる。なお、側壁3の水位面付近に排水口(図示省略)を設けておくことで、飽和砂4内に注水されたときでも水位面を一定に保つことができる。
【0048】
また、
図10に示すように、飽和砂制御装置9において、一定量の水を水平水配管7から噴出させた後には、縦型水配管8によって飽和砂4の上面4aよりも上に溜まった水を再び飽和砂4内に流入させて循環させることで液状化状態を維持することができる。そして、地震動が収まった際には、縦型水配管8による水の循環を停止し、水平水配管7を介して注水された水量を排水する。
【0049】
水平水配管7を使用して飽和砂4をボイリングさせる際に必要な浸透流の限界流速v
c(m/s)は、(1)式によって求まる。
ここに、i
cは限界動水勾配、kは側方地盤(飽和砂4)の透水係数、G
sは土粒子の密度(g/cm
3)、eは側方地盤(飽和砂4)の間隙比である。
【0051】
また、飽和砂4をボイリングさせるために必要な流量Q(m
3/s)は、
図11に示す側溝4Aの底面積をA(m
2)としたときに、(2)式を満たす必要がある。
図11に示す浮体免震構造を一例として、構造物10の側方地盤である飽和砂4(
図7参照)をボイリングさせるために必要な流量Qを算出する。構造物10の縦横寸法は縦15m、横20mであり、構造物10の周囲の飽和砂4が配置される部分(側溝4A)の幅寸法はそれぞれ3mで、側溝4Aの底面積Aは246m
2となっている。ここでは、飽和砂4に用いる材料を豊浦砂と仮定する。豊浦砂の土粒子の密度G
sが2.635g/cm
3、最大乾燥密度ρ
dmaxが1.646g/cm
3、最小乾燥密度ρ
dminが1.335g/cm
3、透水係数kが1.3×10
−4m/sであるときに、必要となる流量Qは表1に示すとおりである。なお、表1では、相対密度D
r(%)が30%と100%の場合を示している。
【0054】
このように第5の実施の形態では、飽和砂制御装置9を設けることで、任意の地震動レベルを対象として飽和砂4の相対密度を制御することで構造物10に対して優れた免震効果を得ることができる。このとき、地盤密度に依存することなく飽和砂4の地盤を液状化させることができるので、所定の浮力が確実に得られる。
また、本第5の実施の形態では、飽和砂制御装置9を用いることにより飽和砂4の定期的な密度管理を省略することができるため、メンテナンスが不要となる利点がある。
さらに、本実施の形態では、地震動の加速度を計測する加速度計91が構造物10直下の地盤や構造物10自体に設けられるので、構造物10に作用する地震動の揺れに対して高い精度で飽和砂4の相対密度を制御することができる。
【0055】
以上、本発明による浮体免震構造及び飽和砂制御システムの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0056】
例えば、本実施の形態では、飽和砂4の上面位置が地下水と同レベルの位置となっているが、これに限定されることはなく、
図12の変形例に示すように飽和砂4よりも水位(
図12の符号W)が高い位置であってもかまわない。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。