(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車両組付け時、上述の電線一体クランプマーク500は、車両組付け時、車両に配索されたワイヤハーネス521をPクランプ513によりボルト締めして固定するが、
図13に示すように、マーク本体507の外周面が円筒状部509であるため、電線一体クランプマーク500の電線回転方向の向きを規制できず、電線505が捩れた状態で取付けられてしまう虞がある。また、車両組付け後、車両走行時の振動によって電線505に加わる力による揺れ等により、電線一体クランプマーク500がPクランプ513に対して相対的に回転して捩れが発生する虞がある。このように、電線505に捩れが発生すると、芯線に負荷がかかり、電気的導通性能を低下させる可能性がある。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、車両組付け時には電線回転方向の向きを規制でき、車両組付け後には振動等により電線が回転するのを阻止できる電線一体クランプマーク及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 電線の延在方向における所定位置に前記電線を全周に亘って包囲して前記電線と一体に樹脂材によってモールド成形されたマーク本体
を有し、
前記マーク本体が、前記マーク本体の外周面に形成される円筒状部と、前記円筒状部よりも半径方向外側に突出するように前記マーク本体における前記電線の延在方向の両端側に形成されるフランジ部と、前記円筒状部に突設されてクランプ部材に係合するクランプ係合部と、を備え
、前記クランプ係合部が、前記円筒状部から半径方向外側に延出されて前記クランプ部材の締付け片部と固定片部との間に挟まれる締結固定部であることを特徴とする電線一体クランプマーク。
【0010】
上記(1)の構成の電線一体クランプマークによれば、電線の延在方向の所定位置に、電線を全周に亘って包囲するマーク本体が樹脂材によって一体にモールド成形される。これにより、電線一体クランプマークは、電線の延在方向に高い位置精度で取り付けられ、位置ずれを生じることもない。また、クランプ部材の円弧状部に包囲されて締め付けられる被締付面となるマーク本体の円筒状部には、クランプ係合部が外周面から突出して形成される。クランプ部材は、円弧状部の内周形状が、マーク本体の円筒状部の外周形状に沿うものが使用される。マーク本体は、円筒状部に設けられたクランプ係合部が、クランプ部材に係合することにより、クランプ部材に対しての回転が規制される。このため、マーク本体の円筒状部がクランプ部材の円弧状部に締付固定される電線一体クランプマークは、車両組付け時、マーク本体の回転方向の向きが規制される。そこで、クランプ部材を用いて締付固定される電線一体クランプマークは、電線が捩れた状態で取り付けられてしまうことがない。また、電線一体クランプマークは、クランプ係合部がクランプ部材に係合しているので、車両組付け後、電線に加わる力による揺れ等によっても、マーク本体がクランプ部材に対して回転することがない。その結果、車両組付け後における電線の捩れ発生を防止できる。
【0014】
更に、上記(1)の構成の電線一体クランプマークによれば、マーク本体は、円筒状部から半径方向外側に延出する板状の締結固定部を有する。このクランプ係合部としての締結固定部は、表裏面が円筒状部の軸線と平行となり、クランプ部材の固定片部と締付け片部との間に挟入される長さに形成される。これにより、マーク本体がクランプ部材により締め付けられる際、固定片部と締付け片部との間に、締結固定部が取付ボルト等の締結具により共締めされる。円筒状部は、締結固定部が固定片部及び締付け片部と締結固定されることにより、クランプ部材に対しての回転が規制される。
【0015】
(
2)
電線の延在方向における所定位置に前記電線を全周に亘って包囲して前記電線と一体に樹脂材によってモールド成形されたマーク本体を有し、前記マーク本体が、前記マーク本体の外周面に形成される円筒状部と、前記円筒状部よりも半径方向外側に突出するように前記マーク本体における前記電線の延在方向の両端側に形成されるフランジ部と、前記円筒状部に突設されてクランプ部材に係合するクランプ係合部と、を備え、前記クランプ係合部が、前記クランプ部材に設けられた係合凹部に係合するクランプ凹部係合リブであることを特徴とする電線一体クランプマーク。
【0016】
上記(
2)の構成の電線一体クランプマークによれば、マーク本体は、円筒状部の外周面に、クランプ係合部としてのクランプ凹部係合リブが突設される。円筒状部を包囲するクランプ部材の円弧状部には、円筒状部の軸線方向側の縁部に、軸線に沿う方向の係合凹部が切欠き形成される。クランプ凹部係合リブは、この係合凹部に係合する。円筒状部は、クランプ凹部係合リブが円弧状部の係合凹部に係合することにより、クランプ部材に対しての回転が規制される。
【0017】
(
3)
電線の延在方向における所定位置に前記電線を全周に亘って包囲して前記電線と一体に樹脂材によってモールド成形されたマーク本体を有し、前記マーク本体が、前記マーク本体の外周面に形成される円筒状部と、前記円筒状部よりも半径方向外側に突出するように前記マーク本体における前記電線の延在方向の両端側に形成されるフランジ部と、前記円筒状部に突設されてクランプ部材に係合するクランプ係合部と、を備え、前記クランプ係合部が、前記クランプ部材に設けられた係合孔に係合する前記円筒状部の成形品延出部であることを特徴とする電線一体クランプマーク。
【0018】
上記(
3)の構成の電線一体クランプマークによれば、マーク本体は、円筒状部の外周面に、クランプ係合部として半径方向外側に突出する成形品延出部を有する。この成形品延出部は、射出成形時のゲート跡やランナが流用される。射出成形時のゲートが制限ゲートの場合、成形品延出部は、ゲート跡単体、ゲート跡及びランナの接続体とすることができる。射出成形時のゲートが非制限ゲートの場合、成形品延出部は、ダイレクトゲート跡とすることができる。ダイレクトゲート(スプルーゲート)は、スプルーがそのままキャビティへの溶融樹脂の流入口となる。このため、縮径部のない成形品延出部を円筒状部から延出させたものにできる。成形品延出部は、これらゲート跡等が切断された適当な延出長で利用される。一方、クランプ部材の円弧状部には、この成形品延出部が係合する係合孔が形成される。円筒状部は、成形品延出部が円弧状部の係合孔に係合することにより、クランプ部材に対しての回転が規制される。
【0019】
(
4) 上記(1)〜(
3)の何れか1つの電線一体クランプマークを備えたことを特徴とするワイヤハーネス。
【0020】
上記(
4)の構成のワイヤハーネスによれば、車両組付け時に、クランプ部材は、電線一体クランプマークの電線回転方向の向きを規制できる。これにより、ワイヤハーネスは、クランプ部材を使用した車両固定時に、電線の延在方向及び回転方向に高い位置精度で取り付けできる。その結果、車両組み付け時の電線の捩れを防止できる。ワイヤハーネスは、相手側コネクタや相手側端子部との接続が容易となり、車両への取り付け作業性を向上させることができる。また、ワイヤハーネスは、車両組付け後、電線の延在方向や回転方向の位置ずれを防止できる。これにより、振動等による電線の捩れも防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電線一体クランプマーク及びワイヤハーネスによれば、車両組付け時には電線回転方向の向きを規制でき、車両組付け後には振動等により電線が回転するのを阻止できる。
【0022】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る電線一体クランプマーク100を電線17と共に表した斜視図である。
本第1実施形態に係る電線一体クランプマーク100は、車両に搭載される各種のワイヤハーネスに適用される。以下の実施形態では、電線一体クランプマーク100をワイヤハーネスであるバッテリーケーブル11に用いた例を説明する。バッテリーケーブル11は、例えば小径電線13と大径電線15の2本の電線17を有する。電線17は、撚り線または単線からなる導体12が、絶縁性の外被14で覆われた被覆電線である。バッテリーケーブル11は、この電線17の所定位置に、電線一体クランプマーク100が一体にモールド成形により取り付けられて構成される。
【0025】
本第1実施形態に係る電線一体クランプマーク100は、電線17の延在方向における所定位置に電線17を全周に亘って包囲して電線17と一体に樹脂材によってモールド成形されたマーク本体19が、マーク本体19の外周面に形成される円筒状部21と、円筒状部21よりも半径方向外側に突出するようにマーク本体19における電線17の延在方向の両端側に形成されるフランジ部23と、円筒状部21に突設されてPクランプ(クランプ部材)27に係合するクランプ係合部であるクランプ隙間係合部25とを主要な構成として有する。
【0026】
マーク本体19は、電線17の延在方向における所定位置に、所定回転方向の向きで樹脂材によって一体にモールド成形され、電線17を全周に亘って包囲する。本第1実施形態において、マーク本体19は、略円柱形状に成形されているが、円筒状部21の外周面の一部にクランプ隙間係合部25が突設されている。クランプ隙間係合部25は、円筒状部21の軸線に直交する断面形状が略三角柱形状となって、円筒状部21の半径方向外側に突設される(
図5参照)。
【0027】
本第1実施形態におけるクランプ隙間係合部25は、円筒状部21とPクランプ27との後述する隙間に係合するクランプ係合部である。電線一体クランプマーク100は、
図4及び
図5に示すように、円筒状部21に取り付けたPクランプ27によって車体パネル等に固定される。このPクランプ27は、後述するように、
図13に示した従来のPクランプ513と略同様の構成である。
【0028】
ところで、
図13に示したように、電線一体クランプマーク500の円筒状部509がPクランプ513に包囲されると、円筒状部509とPクランプ513との間には、円筒状部509の外周面と、円弧状部516に接続される締付け片部515及び固定片部517の内面とに囲まれる僅かな隙間529が形成される。この隙間529は、円筒状部509の軸線に直交する断面形状が略三角柱形状となる。
即ち、従来のPクランプ513と略同様の構成を有する本実施形態のPクランプ27によっても、円筒状部21との間には隙間529が形成される。そこで、本第1実施形態に係る電線一体クランプマーク100の円筒状部21に突設されるクランプ隙間係合部25は、この隙間529に一致した略三角柱形状となっている。クランプ隙間係合部25は、軸線に沿って円筒状部21の両端に渡って延在して形成される。
【0029】
本第1実施形態における円筒状部21は、略円柱形状のマーク本体19の側面(円周方向の外周面)となる。その略円柱形状の外周面から軸線に沿って略三角柱形状のクランプ隙間係合部25が突設されたマーク本体19は、
図5に示す断面形状となる。従って、円筒状部21は、マーク本体19の軸線に沿う方向の任意位置の断面形状が同一となる。クランプ隙間係合部25は、マーク本体19と一体にモールド成形される。
【0030】
また、本第1実施形態において、フランジ部23は、円筒状部21よりも半径方向外側に突出するように、円筒状部21よりも大きい外径を有する鍔状に形成され、マーク本体19における電線17の延在方向の両端側に設けられている。すなわち、本第1実施形態の電線一体クランプマークは、マーク本体19の両端に一対のフランジ部23を有する糸巻き状に形成されている。
なお、本発明に係るフランジ部は、マーク本体19の外周面に沿って連続した鍔状のフランジ部23に限らず、マーク本体19の外周面に沿って間欠に突出された複数の突起により構成することもできる。
【0031】
図2は電線一体クランプマーク100をモールド成形するマイクロ成形機31の全体斜視図である。
次に、電線一体クランプマーク100をバッテリーケーブル11に一体にモールド成形するマイクロ成形機31について説明する。
図3に示すように、バッテリーケーブル11に電線一体クランプマーク100を一体にモールド成形するためのマイクロ成形機31は、電動機等の外部動力なしに作業員一人で操作可能な成形機であって、金属や合成樹脂製の成形型33と、図示しない型締め装置と、成形型33に溶融樹脂を加圧注入する低圧射出装置35と、から構成されている。
【0032】
低圧射出装置35は、ポリプロピレン等の合成樹脂材を加熱して溶融するヒータが設けられた加熱筒37と、加熱筒内の溶融樹脂を図示しないノズルから射出するプランジャ39と、プランジャ39を前進させる射出シリンダ41と、射出シリンダ41を駆動するハンドル43と、加熱筒37の加熱温度を所望の温度に保持する温調器45と、を有し、これらが台座47に立設する装置支柱49に支持されている。
【0033】
なお、本実施形態におけるマイクロ成形機31とは、1回の射出成形で成形できる樹脂の量が最大で10g程度のものであって、且つ、成形型33の型締め時に、エアシリンダ又はリンク等を用いて手動で行うことができるものをいう。従って、低圧射出装置35は、電動機やエア等の外部動力によって射出シリンダ41を駆動するものであってもよい。より具体的には、マイクロ成形機31としては、例えば、特開2010−260297号公報、特開2012−30429号公報及び特開2013−103492号公報などに開示された公知の「射出成形装置」を用いることができる。
【0034】
成形型33は下型51と上型53を備えた水平割金型であって、下向きの上型53の金型分割面(下面)には、上側キャビティ55が形成されている。また、上向きの下型51の金型分割面(上面)には、上側キャビティ55と同形状の下側キャビティ57が形成されている。そして、下型51と上型53とが型締めされて合わせられることにより、これら下側キャビティ57と上側キャビティ55が一体となってキャビティ59を内部に画成する。このキャビティ59の内部に電線17が配置された状態で成形型33が型締めされる。
上型53は、キャビティ59と低圧射出装置35のノズルとを連通させるゲート(図示せず)を備えている。
【0035】
型締工程では、成形型33が、キャビティ59に電線17を配置して型締めされる。これにより、キャビティ59と電線17との間には、樹脂材の充填空間が画成される。成形型33は、型締めした際の充填空間の容量が数cm
3となっている。なお、本実施形態では、成形型33が水平割金型のものについて説明したが、垂直割金型であってもよい。
【0036】
型締工程に続く射出工程では、溶融した合成樹脂がゲートから低圧で射出される。キャビティ59に射出された溶融樹脂は、充填空間に充填される。本実施形態では、充填空間が糸巻き状とされている。この充填空間に充填された樹脂材が固化することで、電線17の所定位置に、電線一体クランプマーク100が一体となってモールド成形される。
【0037】
電線17に一体にモールド成形された電線一体クランプマーク100は、規定される電線保持強度の範囲では電線17に対して移動しない固定強度で取り付けられる。換言すれば、電線一体クランプマーク100は、規定される電線保持強度以上の力を加えることによって、電線17に沿って移動可能とすることができる。この場合においても、電線一体クランプマーク100は、円筒状部21に取り付けたPクランプ27(クランプ部材)によって車体パネル等に固定された後には電線17に対しての移動が規制される。
【0038】
本第1実施形態において、Pクランプ27は、従来のPクランプ513(
図12の(B)参照)と略同様のものが用いられる。すなわち、クランプ本体部61が帯状の金属板からなり、円弧状部63の両端に短冊状の固定片部65と締付け片部67とがそれぞれ連続する略R字形状に形成されたクランプ部材である。Pクランプ27の締付け片部67と固定片部65とには、締結具である取付ボルト69が挿通されるボルト貫通孔71が穿設されている。
【0039】
また、Pクランプ27の円弧状部63の周囲には、ゴム製のクッション材73が設けられている。クッション材73は、マーク本体19の軸線に沿う方向の断面形状が略O形状となり、円弧状部63の全周面を覆う。
【0040】
本実施形態に係る電線一体クランプマーク100は、クッション材73のゴムよりも硬い樹脂材(ポリプロピレン等)で成形されている。これにより、Pクランプ27は、
図1に示すように、マーク本体19の円筒状部21に締め付けられると、クッション材73が弾性変形し、円筒状部21に隙間なく密接する。この際、クランプ隙間係合部25は、上記隙間529に一致して係合構造を構成する。なお、クッション材は、従来のPクランプ513と同様に、マーク本体19の軸線に沿う方向の断面形状が略C形状となるように、円弧状部63の内周面を覆ってもよい。
【0041】
Pクランプ27は、
図4及び
図5に示すように、締付け片部67と固定片部65とが、双方のボルト貫通孔71を貫通する取付ボルト(締結具)69により締められることによって、電線一体クランプマーク100の円筒状部21及びクランプ隙間係合部25を包囲して締め付ける。この際、取付ボルト69は、車体パネルやブラケットに穿設されるクランプ取付穴に貫通され、車体パネル等とPクランプ27を共締めする。これにより、バッテリーケーブル11は、電線一体クランプマーク100を介して、Pクランプ27により車体パネル等の所定位置に固定される。
【0042】
図6は
図1に示した電線一体クランプマーク100を備えるワイヤハーネス11の平面図である。
バッテリーケーブル11は、複数本(図示例では2本)の電線17がビニルテープ101によって纏められて幹線や支線に分けられたり、それぞれの末端にコネクタ103や端子105が取り付けられたりして構成される。バッテリーケーブル11は、予め所定長で製造されている。バッテリーケーブル11には、電線17の延在方向の所定位置に、所定の回転方向の向きで電線一体クランプマーク100が取り付けられる。バッテリーケーブル11は、電線一体クランプマーク100が取り付けられることにより、車両に対する取付位置精度を向上させることができる。
【0043】
次に、上記した本第1実施形態に係る構成の作用を説明する。
本第1実施形態に係る電線一体クランプマーク100では、電線17の延在方向の所定位置に、電線17を全周に亘って包囲するマーク本体19が樹脂材によって一体にモールド成形される。これにより、電線一体クランプマーク100は、電線17の延在方向に高い位置精度で取り付けられ、位置ずれを生じることもない。また、Pクランプ27の円弧状部63に包囲されて締め付けられる被締付面となるマーク本体19の円筒状部21には、クランプ係合部としてのクランプ隙間係合部25が外周面から突出して形成される。Pクランプ27は、円弧状部63の内周形状が、マーク本体19の円筒状部21の外周形状に沿うものが使用される。
【0044】
従来の電線一体クランプマーク500(
図13参照)は、円筒状部509の外周面が、円弧状部63に沿って回転可能であった。これに対し、本第1実施形態の電線一体クランプマーク100は、円筒状部21に突設されたクランプ隙間係合部25が、Pクランプ27に係合することにより、Pクランプ27に対しての回転が規制される。このため、マーク本体19の円筒状部21がPクランプ27の円弧状部63に締付固定される電線一体クランプマーク100は、車両組付け時、マーク本体19の回転方向の向きが規制される。そこで、Pクランプ27を用いて締付固定される電線一体クランプマーク100は、電線17が捩れた状態で取り付けられてしまうことがない。また、電線一体クランプマーク100は、クランプ隙間係合部25がPクランプ27に係合しているので、車両組付け後、電線17に加わる力による揺れ等によっても、マーク本体19がPクランプ27に対して回転することがない。その結果、車両組付け後における電線17の捩れ発生を防止できる。
【0045】
マーク本体19の円筒状部21には、クランプ係合部としてのクランプ隙間係合部25が外周面に突設される。円筒状部21の外周面は、Pクランプ27の円弧状部63の内周に包囲される。Pクランプ27の略C字状の円弧状部63は、開放している両端に固定片部65と締付け片部67とが延出して接続されている。固定片部65と締付け片部67とは、取付ボルト69により重ね合わされて挟持される。この際、円筒状部21とPクランプ27との間には、円筒状部21の外周面と、円弧状部63に接続される固定片部65及び締付け片部67の内面とに囲まれる僅かな空間(
図13における隙間529参照)が形成される。クランプ隙間係合部25は、円筒状部21の軸線に直交する断面形状がこの隙間529に一致した略三角柱形状となって、円筒状部21の半径方向外側に突設される。そこで、円筒状部21は、このクランプ隙間係合部25が、上記の隙間529に係合してPクランプ27に対しての回転が規制される。
【0046】
また、電線一体クランプマーク100は、電線17の延在方向の所定位置に、電線17を全周に亘って包囲するマーク本体19が樹脂材によって一体にモールド成形される。これにより、電線一体クランプマーク100は、電線17の延在方向に高い位置精度で取り付けられ、位置ずれを生じることもない。
【0047】
また、マーク本体19は、電線17の全周に亘って一体にモールド成形されているので、走行時に電線17とマーク本体19との間に砂等が侵入することがない。そこで、電線17は、走行時、マーク本体19との間に入った砂等により外被14が磨耗する虞がない。
【0048】
本第1実施形態に係るバッテリーケーブル11は、車両組付け時に、Pクランプ27は、電線一体クランプマーク100の電線回転方向の向きを規制できる。これにより、バッテリーケーブル11は、Pクランプ27を使用した車両固定時に、電線17の延在方向及び回転方向に高い位置精度で取り付けできる。その結果、車両組み付け時の電線17の捩れを防止できる。バッテリーケーブル11は、相手側コネクタや相手側端子部との接続が容易となり、車両への取り付け作業性を向上させることができる。また、バッテリーケーブル11は、車両組付け後、電線17の延在方向や回転方向の位置ずれを防止できる。これにより、振動等による電線17の捩れも防止できる。
【0049】
(第2実施形態)
図7は本発明の第2実施形態に係る電線一体クランプマーク200を電線17及びPクランプ27と共に表した断面図である。なお、本第2実施形態において第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
本第2実施形態に係る電線一体クランプマーク200は、クランプ係合部が、円筒状部21から半径方向外側に延出されてPクランプ27の締付け片部67と固定片部65との間に挟まれる締結固定部75である。締結固定部75は、板状に形成されてマーク本体77から延出する。締結固定部75は、円筒状部79の軸線に直交する断面において円筒状部79における外周円の接線方向に延出している。この締結固定部75も、マーク本体77と一体にモールド成形される。
【0050】
本第2実施形態の電線一体クランプマーク200においても、フランジ部23が、円筒状部79よりも半径方向外側に突出するように、円筒状部79よりも大きい外径を有する鍔状に形成される。フランジ部23は、マーク本体77における電線17の延在方向の両端側に設けられる。
【0051】
本第2実施形態に係る電線一体クランプマーク200によれば、マーク本体77が、円筒状部79から半径方向外側に延出する板状の締結固定部75を有する。このクランプ係合部としての締結固定部75は、表裏面が円筒状部79の軸線と平行となり、Pクランプ27の固定片部65と締付け片部67との間に挟入される長さに形成される。これにより、マーク本体77がPクランプ27により締め付けられる際、固定片部65と締付け片部67との間に、締結固定部75が取付ボルト69により共締めされる。円筒状部79は、締結固定部75が固定片部65及び締付け片部67と締結固定されることにより、Pクランプ27に対しての回転が規制される。
本第2実施形態の電線一体クランプマーク200によれば、円筒状部79から延出した締結固定部75が、取付ボルト69により固定片部65及び締付け片部67と共締めされるので、マーク本体77の回転を確実に防止できる。
【0052】
(第3実施形態)
図8は本発明の第3実施形態に係る電線一体クランプマーク300を電線17及びPクランプ81と共に表した平面図、
図9は
図8に示した電線一体クランプマーク300及びPクランプ81のIX−IX断面矢視図である。なお、本実施形態において上記第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
本第3実施形態に係る電線一体クランプマーク300は、クランプ係合部が、Pクランプ81に設けられた係合凹部83に係合するクランプ凹部係合リブ85である。クランプ凹部係合リブ85は、両側のフランジ部23に接続され、マーク本体87の円筒状部89に、軸線に沿う方向で形成されている。図示例では、一対のクランプ凹部係合リブ85が設けられる場合を表すが、クランプ凹部係合リブ85は、一つであってもよい。
【0053】
クランプ凹部係合リブ85は、
図9に示すように、円筒状部89から半径方向外側に突出し、Pクランプ81の係合凹部83から突出しない長さに形成される。なお、クランプ凹部係合リブ85は、Pクランプ81のクッション材73も貫通している。
【0054】
本第3実施形態に係る電線一体クランプマーク300によれば、マーク本体87は、円筒状部89の外周面に、クランプ係合部としてのクランプ凹部係合リブ85が突設される。円筒状部89を包囲するPクランプ27の円弧状部63には、円筒状部89の軸線方向両側の縁部に、軸線に沿う方向の係合凹部83が切欠き形成される。クランプ凹部係合リブ85は、この係合凹部83に係合する。円筒状部89は、クランプ凹部係合リブ85が円弧状部63の係合凹部83に係合することにより、Pクランプ27に対しての回転が規制される。なお、係合凹部83は、一つのクランプ凹部係合リブ85に対応して、円筒状部89の軸線方向片側の縁部に切欠き形成されてもよい。
本第3実施形態の電線一体クランプマーク300によれば、従来の円筒状部を成形する成形型を、大きく修正せずに流用することができる。
【0055】
(第4実施形態)
図10は本発明の第4実施形態に係る電線一体クランプマーク400を電線17と共に表した斜視図、
図11は
図10に示した電線一体クランプマーク400にPクランプ91が取り付けられた状態の斜視図である。なお、本実施形態において上記第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
本第4実施形態に係る電線一体クランプマーク400は、クランプ係合部が、Pクランプ91に設けられた係合孔93に係合する円筒状部21に設けられた成形品延出部95である。Pクランプ91の係合孔93は、例えば円周方向に長い長孔で形成される。成形品延出部95は、この長孔の短径を直径として、マーク本体97の円筒状部99から半径方向外側に突出する円柱形状となる。即ち、成形品延出部95は、係合孔93の長手方向に沿ってPクランプ91との相対移動が可能となっている。
【0056】
この成形品延出部95は、電線一体クランプマーク400の成形時に、成形品に接続されているゲート跡やランナを残し、適当な長さに形成される。つまり、成形型を大きく修正せずに構成することができる。但し、Pクランプ91は、係合孔93が必要となる。
【0057】
本第4実施形態の電線一体クランプマーク400は、
図11に示すように、Pクランプ91により円筒状部99が包囲されて固定される。この際、円筒状部99から突出した成形品延出部95は、Pクランプ91の係合孔93に挿入される。成形品延出部95は、係合孔93の長手方向には揺動するが、その回転範囲は規制される。この回転範囲は、車両組付け時の許容範囲となって、組付け作業性を良好にできる。
【0058】
本第4実施形態に係る電線一体クランプマーク400によれば、マーク本体97が、円筒状部99の外周面に、クランプ係合部として半径方向外側に突出する成形品延出部95を有する。この成形品延出部95は、射出成形時のゲート跡やランナが流用される。射出成形時のゲートが制限ゲートの場合、成形品延出部95は、ゲート跡単体、ゲート跡及びランナの接続体とすることができる。射出成形時のゲートが非制限ゲートの場合、成形品延出部95は、ダイレクトゲート跡とすることができる。ダイレクトゲート(スプルーゲート)は、スプルーがそのままキャビティ59への溶融樹脂の流入口となる。このため、縮径部の無い成形品延出部95を円筒状部99から延出させたものにできる。成形品延出部95は、このスプルーが切断された適当な延出長で利用される。一方、Pクランプ91の円弧状部63には、この成形品延出部95が係合する係合孔93が形成される。円筒状部99は、成形品延出部95が円弧状部63の係合孔93に係合することにより、Pクランプ91に対しての回転が規制される。
本第4実施形態の電線一体クランプマーク400によれば、従来、無駄に廃棄されていた樹脂材を有効利用することができる。
【0059】
従って、本実施形態に係る電線一体クランプマーク100、電線一体クランプマーク200、電線一体クランプマーク300、電線一体クランプマーク400及びバッテリーケーブル11によれば、車両組付け時には電線回転方向の向きを規制でき、車両組付け後には振動等により電線17が回転するのを阻止できる。
【0060】
ここで、上述した本発明に係る電線一体クランプマーク及びワイヤハーネスの実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電線(17)の延在方向における所定位置に前記電線を全周に亘って包囲して前記電線と一体に樹脂材によってモールド成形されたマーク本体(19)が、
前記マーク本体の外周面に形成される円筒状部(21)と、
前記円筒状部よりも半径方向外側に突出するように前記マーク本体における前記電線の延在方向の両端側に形成されるフランジ部(23)と、
前記円筒状部に突設されてクランプ部材(Pクランプ27)に係合するクランプ係合部(クランプ隙間係合部25、締結固定部75、クランプ凹部係合リブ85、成形品延出部95)と、
を備えることを特徴とする電線一体クランプマーク(100、200、300、400)。
[2] 上記[1]に記載の電線一体クランプマークであって、
前記クランプ係合部が、前記円筒状部と前記クランプ部材との隙間に係合するクランプ隙間係合部(25)であることを特徴とする電線一体クランプマーク(100)。
[3] 上記[1]に記載の電線一体クランプマークであって、
前記クランプ係合部が、前記円筒状部から半径方向外側に延出されて前記クランプ部材の締付け片部(67)と固定片部(65)との間に挟まれる締結固定部(75)であることを特徴とする電線一体クランプマーク(200)。
[4] 上記[1]に記載の電線一体クランプマークであって、
前記クランプ係合部が、前記クランプ部材に設けられた係合凹部(83)に係合するクランプ凹部係合リブ(85)であることを特徴とする電線一体クランプマーク(300)。
[5] 上記[1]に記載の電線一体クランプマークであって、
前記クランプ係合部が、前記クランプ部材に設けられた係合孔(93)に係合する前記円筒状部の成形品延出部(95)であることを特徴とする電線一体クランプマーク(400)。
[6] 上記[1]〜[5]の何れか1つの電線一体クランプマーク(100、200、300、400)を備えたことを特徴とするワイヤハーネス(11)。
【0061】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。