(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
まず、
図1を用いて、本実施形態に係る手持ち式電動工具10の外観構成についての説明を行う。ここで、
図1は、本実施形態に係る手持ち式電動工具の外観構成を説明するための図であり、図中の分図(a)が右側面視を、分図(b)が上面視を、分図(c)が正面視を示している。なお、以下の説明では、説明の便宜のために手持ち式電動工具10の使用状態に応じた方向を定義することとする。すなわち、
図1にて図示するように、回転工具である砥石21が設置される側を「前」、電力コード41が設置される側を「後」、
図1中の分図(b)における紙面上側を「左」、
図1中の分図(b)における紙面下側を「右」、
図1中の分図(a)における紙面上側を「上」、
図1中の分図(a)における紙面下側を「下」と呼ぶこととする。なお、本明細書で定義した方向が本実施形態に係る手持ち式電動工具10の使用方向を限定するものではなく、本実施形態に係る手持ち式電動工具10は、あらゆる姿勢方向で用いることが可能である。
【0016】
図1にて示すように、本実施形態に係る手持ち式電動工具10は、手持ち式の携帯用グラインダとして構成されるものであり、長手方向に延びて形成されるハウジング11と、研削作業を行うための回転工具である円盤状の砥石21とを有して構成されている。
【0017】
ハウジング11は、駆動源となるモータ31(詳細は後述する)を内部に収納するケーシングとしてのモータケース12と、モータ31からの回転駆動力を受けてこの回転駆動力を砥石21に伝達するための複数の歯車群等からなる駆動力伝達手段を収納するギアケース13と、モータ31に対して電力を供給するための電力コード41やスイッチボックス等の給電機器、モータ31を動作制御するための制御基板等が収納されたケーシングとしてのテールケース14とによって構成されている。
【0018】
モータケース12は、樹脂又はアルミニウム合金などの金属製の部材によって構成されており、このモータケース12におけるモータ収納部分の外周箇所が、操作者から把持を受ける把持部として構成されている。また、モータケース12の外郭形状は、操作者が把持し易いように略円筒状に形成されている。
【0019】
モータケース12の前方側に連結されるギアケース13は、例えばアルミニウム合金などの金属製の部材により構成されている。そして、このギアケース13の下部には、研削作業を行うこととなる回転工具としての砥石21が配置されており、砥石21の背面側には、操作者に対して切粉などが飛散しないようにするために、安全カバー22が設置されている。
【0020】
モータケース12の後方側に連結されるテールケース14は、樹脂によって構成されている。このテールケース14は、左右位置に多数の開口孔15を有しており、この開口孔15から外部の空気を取り込んで、テールケース14内部の部材の空冷が行えるように構成されている。また、テールケース14の後方には、不図示の外部電源からの電力をモータ31に対して供給するための電力コード41が設置可能となっている。
【0021】
以上、
図1を用いることで、本実施形態に係る手持ち式電動工具10の外観構成を説明した。次に、
図2〜
図7を参照図面に加えることで、本実施形態に係る手持ち式電動工具10の内部構成についての説明を行う。ここで、
図2は、
図1中の分図(a)においてA−Aで示す位置の一部分を断面にした図である。また、
図3は、
図1中の分図(b)においてB−Bで示す位置の一部分を断面にした図である。さらに、
図4は、
図3中のE−E断面を表した縦断面正面図であり、
図5は、
図3中のF−F断面を表した縦断面正面図である。またさらに、
図6は、
図1中の分図(b)で示すC−C断面の要部を表した縦断面右側面図であり、
図7は、
図1中の分図(b)で示すD−D断面の要部を表した縦断面右側面図である。
【0022】
本実施形態に係る手持ち式電動工具10の内部構造を描いた図のうち、特に
図2および
図3にて示されるように、モータケース12の内部には砥石21を駆動するための駆動源となるモータ31が収納されており、このモータ31は、モータ軸32の軸心が略円筒状のモータケース12の軸心と略重畳するように配置されている。また、モータ軸32の前端部32aはモータケース12内からギアケース13内へと突出し、ギアケース13に設置された前部ベアリング17に支持されている。一方、モータ軸32の後端部32bは、モータケース12の後部において後部ベアリング18に支持されている。したがって、モータ軸32は、前後部のベアリング17,18により両端部32a,32bを支持されることで、高速回転できるように構成されている。
【0023】
モータ軸32の前端部32aの近傍の前部ベアリング17の後方側であって、モータケース12とギアケース13とが接続する箇所の近傍内部の位置には、遠心ファン19がモータ軸32に固定されて設置されている。遠心ファン19は、モータケース12とギアケース13とが接続する箇所の近傍内部の位置に配置されることで、モータケース12の内部に冷却風を通す役割を果たしている。したがって、モータ軸32と共に遠心ファン19が回転すると、外気がモータケース12内に取り込まれることで冷却風が発生し、この冷却風はモータケース12内の隙間を通ってモータ31等を冷却した後、ギアケース13内を通過して、手持ち式電動工具10の前方から機外に排出されるように構成されている。
【0024】
なお、本実施形態に係る手持ち式電動工具10のモータ31は、ブラシレスモータとして構成されている。したがって、モータケース12の後方に接続されるテールケース14の内部には、モータ31を動作制御するための制御基板等が配置されている。そして、テールケース14の内部についても、上述した遠心ファン19の作用によって取り入れられた冷却風により、冷却が実施される。
【0025】
また、ギアケース13内には、モータ軸32の前端部32aに固定される小傘歯車23と、この小傘歯車23に噛み合う大傘歯車24が収納されている。大傘歯車24は、ギアケース13内にベアリング25,26を介して垂直に支持された駆動軸27に固定されており、この駆動軸27がギアケース13の下方に突出し、この突出箇所に砥石21が着脱自在に固定されている。これら小傘歯車23、大傘歯車24、駆動軸27等の部材が駆動力伝達手段として機能することにより、モータ31が回転すると、この回転駆動力がモータ軸32から小傘歯車23、大傘歯車24へと伝達され、最終的に駆動軸27を介して砥石21が回転することになるので、被加工対象物に対する研削加工が実行可能となる。
【0026】
さらに、テールケース14には、オン・オフスイッチ(不図示)やその他の給電機器が収納されており、操作者がオン・オフスイッチを切り替え操作することによって、モータ31が回転又は停止し、手持ち式電動工具10の操作を行うことが可能となっている。また、本実施形態に係る手持ち式電動工具10では、操作者がオン・オフスイッチをONにした後、不図示のモータ回転数制御ダイヤルを操作することでモータ31の回転数を調節することが可能となっている。したがって、操作者がモータケース12を片手で把持し、他方の手の指でオン・オフスイッチをONにすると、モータ31が回転し、モータ軸32から小傘歯車23、大傘歯車24へと動力が伝達され、砥石21が回転する。また、操作者が不図示のモータ回転数制御ダイヤルを操作することでモータ31の回転数が変更され、被加工対象物に応じた砥石21の回転条件が調節される。これにより、被加工対象物に対して好適な研削加工を行うことができる。なお、このとき、モータ軸32の回転と同時に遠心ファン19が回転するので、外気がハウジング11内、すなわち、テールケース14とモータケース12とギアケース13の内部に取り込まれる。この外気は、テールケース14内の制御基板等やモータケース12内のモータ31などの発熱源を冷却した後、モータケース12内を通り抜けてギアケース13の前方側から機外に排出されるので、安全・安定した手持ち式電動工具10の動作が実現されている。研削作業が終了し、操作者がオン・オフスイッチをOFFにすると、モータ31が停止し、砥石21が回転を停止する。
【0027】
以上、本実施形態に係る手持ち式電動工具10の基本構成について説明したが、本実施形態に係る手持ち式電動工具10は、さらなる有意な特徴を有している。そこで、
図8〜
図10を参照図面に加えて、本実施形態に係る手持ち式電動工具10の特徴的な構成をさらに説明する。ここで、
図8は、本実施形態に係る手持ち式電動工具が有するモータケースの外観形状を示した斜視図であり、図中の分図(a)が前方上側から見た場合の外観斜視図であり、分図(b)が前方下側から見た場合の概観斜視図である。また、
図9は、本実施形態に係る手持ち式電動工具が有するファンケーシングの形状を説明するための図であり、図中の分図(a)が正面視を示し、分図(b)が左側面視を示し、分図(c)が分図(a)中のG−G断面を示している。さらに、
図10は、本実施形態に係るファンケーシングの外観構成を示した斜視図であり、図中の分図(a)が背面側から見た斜視図であり、分図(b)が正面側から見た場合の斜視図である。
【0028】
図6および
図7において詳細に示されるように、本実施形態に係る手持ち式電動工具10における遠心ファン19の後面側には、当該遠心ファン19の後面に沿った対向面35aを備えることで遠心ファン19によって発生される気流を案内するファンケーシング35が配置されている。本実施形態に係るファンケーシング35は、モータケース12の前端部に対して取り付けられる部材であり、両部材の取り付けのための構成が、
図8〜
図10において詳細に示されている。
【0029】
まず、モータケース12は、
図8に示すように、略円筒形をした部材であり、当該モータケース12の前端面12aの近傍には被係止部としての4つの係止孔12bが形成されている。一方、ファンケーシング35には、
図9および
図10に示すように、係止部としての4つの係止爪35bが形成されており、これら4つの係止爪35bはモータケース12に形成された4つの係止孔12bと対応した位置に配置されている。したがって、モータケース12の前端部開口からファンケーシング35を挿入して、4つの係止爪35bを対応する4つの係止孔12bにそれぞれ係合させることで、モータケース12の前端部に対してファンケーシング35を簡単かつ確実に固定設置することが可能となっている。
【0030】
さらに、モータケース12の前端部の内周面には、2つの凸形状をしたキー部材12cが形成されており、一方のファンケーシング35には、2つのキー部材12cに対応した2つのキー溝35cが形成されている。したがって、4つの係止爪35bを対応する4つの係止孔12bにそれぞれ係合させる際に、2つのキー部材12cと2つのキー溝35cが嵌合することで、モータケース12の前端部に対するファンケーシング35の位置決めが実行されることになり、モータケース12の前端部に対してファンケーシング35を簡単かつ正確に取り付けることが可能となっている。
【0031】
さらに、
図6および
図7に示されるように、本実施形態では、ファンケーシング35が有する対向面35aの外周縁が、モータケース12の前端部の内周面に嵌合して配置されて構成されている。したがって、後方側における4つの係止孔12bに対する4つの係止爪35bの係合と、前方側におけるモータケース12の前端部の内周面に対する対向面35aの外周縁の嵌合とによって、ファンケーシング35の安定した取り付け状態を維持することが可能となっている。
【0032】
また、本実施形態に係るファンケーシング35は、モータケース12のみに対して取り付けられており、また、モータケース12の前端部の内周面に対して収納されて収まるように構成されている。さらに、モータケース12とギアケース13の取り付けは、モータケース12の前端部とギアケース13の後端部を当接させた状態で外周面に位置するナット34を締め付けることで実現されており、モータケース12とギアケース13の取り付けに際してファンケーシング35は関与しない構成となっている。したがって、本実施形態の構成によれば、上述した従来技術のように構成部材の累積誤差を考慮する必要がないので、手持ち式電動工具10に対してファンケーシング35を設置する際に、製造コストの増大を招くことがなく、しかも電動工具としての性能を維持しながらも簡易に製造可能な手持ち式電動工具10を提供することが可能となっている。
【0033】
さらに、本実施形態に係るファンケーシング35については、
図6および
図7に示されるように、ファンケーシング35の前面である対向面35aは、縦断面視において外周縁側から中心方向に向かって上流側(後方側)に傾斜する傾斜面を有して構成されるとともに、ファンケーシング35の後面35dは、縦断面視において外周縁側から中心方向に向かって下流側(前方側)に傾斜する傾斜面を有して構成されている。つまり、本実施形態に係るファンケーシング35は、
図9中の分図(c)においてより詳細に示されるように、縦断面視において楔形状をした構成となっている。したがって、モータケース12内から導通してくる気流をギアケース13の前方に向けて案内する際に、当該楔形状が気流を澱みなく案内するので、遠心ファン19の作用によって発生する気流を効率良く流すことで、より効果的な冷却効果を得ることが可能となっている。
【0034】
なお、本実施形態に係るファンケーシング35では、
図9および
図10に示すように、4つの係止爪35bが後面35dの外周部から上流側(後方側)に向かって一体的に突出して形成されている。したがって、廉価に製造できる構造となっている。また、4つの係止爪35bに並ぶ位置に2つの脚部35eが同様に形成されている。この脚部35eは、その端面がモータケース12内に固定設置されているモータ31の固定子に対して僅かな隙間を有して対向している。これにより、モータケース12に対するモータ31の固定子の固定位置がギアケース13側に大きくずれてしまうことを防止することが可能となっている。
【0035】
またさらに、
図6および
図7に示されるように、本実施形態では、上述したように、遠心ファン19の後面側には、当該遠心ファン19の後面に沿った対向面35aを備えるとともにモータケース12の前端部近傍に対して固定設置されるファンケーシング35が配置されている。そして、ファンケーシング35の対向面35aと、モータケース12の前端面12aと、ギアケース13の内周面13aという3つの面によって、遠心ファンの回転により半径方向外方に向かう気流を前方に向かうように偏向させる気流案内面(35a,12a,13a)が構成されている。また、モータケース12の前端面12aは、ファンケーシング35の対向面35aの外周側の延長面上に配置されている。つまり、気流案内面(35a,12a,13a)を構成するファンケーシング35の対向面35aと、モータケース12の前端面12aと、ギアケース13の内周面13aという3つの面は、ほぼ連続した面として段差なく構成されているので、遠心ファン19の回転によって生じる気流は気流案内面(35a,12a,13a)に沿って流動する際に乱れることがなく、気流案内面(35a,12a,13a)によってスムーズに流動するように構成されている。
【0036】
また、本実施形態では、ギアケース13の内周面13aが、遠心ファン19の外周を囲むように配置されている。つまり、遠心ファン19の外周側は、ギアケース13の内周面によって外方側の周囲を囲まれているので、従来技術のようなファンケーシングやハウジング(モータケース)が存在しない構成となっている。つまり、遠心ファン19の外周側には遠心ファン19の大型化(大径化)を阻害する部材が少ないので、遠心ファン19の大型化(大径化)が容易に実行可能な構成となっている。
【0037】
以上説明した構成を有することから、本実施形態に係る手持ち式電動工具10は、気流案内面(35a,12a,13a)という構成を備えることで、手持ち式電動工具10の冷却性能を高めるために遠心ファン19の大型化(大径化)を行う際に、装置の大型化を行う必要がなく、装置の操作性を損なうことがない。
【0038】
また、本実施形態では、ファンケーシング35が、従来技術のファンケーシングのように遠心ファン19の外周側まで延びて形成されていないので、ファンケーシング35を径方向と軸線方向とにおいて小型化することができる。したがって、ファンケーシング35の軽量化が容易となる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0040】
例えば、上述した実施形態に係るファンケーシング35については、
図6および
図7に示されるように、ファンケーシング35の前面である対向面35aは、縦断面視において外周縁側から中心方向に向かって上流側(後方側)に傾斜する傾斜面を有して構成されるとともに、ファンケーシング35の後面35dは、縦断面視において外周縁側から中心方向に向かって下流側(前方側)に傾斜する傾斜面を有して構成されていた。しかし、本発明に係るファンケーシングが取り得る形態については、上述した実施形態に限られるものではない。本発明に係るファンケーシングは、上述した作用効果を発揮できる範囲内において多様な変形形態を取ることができる。例えば、
図11および
図12は、本発明に適用可能なファンケーシングの多様な変形形態例のうちの一例を示す図であり、特に、
図11が本実施形態の
図3に対応した図の要部拡大図であり、
図12が本実施形態の
図6に対応した図であるが、
図11および
図12で例示するように、変形形態例に係るファンケーシング135の後面135dについては、縦断面視において外周縁側から中心方向に向かって上流側(後方側)に傾斜する傾斜面を有するように構成することが可能である。このような形状のファンケーシング135を採用した場合であっても、製造コストの増大を招くことがなく、しかも電動工具としての性能を維持しながらも簡易に製造可能な手持ち式電動工具100を提供することが可能である。なお、変形形態例に係る手持ち式電動工具100についても、気流案内面(対向面135a,前端面12a,内周面13a)という構成を備えているので、手持ち式電動工具100の冷却性能を高めるために遠心ファン19の大型化(大径化)を行う際に、装置の大型化を行う必要がなく、装置の操作性を損なうことがない、といった効果を得ることができる。
【0041】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。