(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の住宅には24時間換気システムが設置されている。その代表的な構成は、
図11に示すように、たとえば、風呂場の天井裏等に換気ファン101を設け、この換気ファン101の吸込口102をトイレや洗面所、浴室などの天井(家の中心付近)に配置し、屋外に面する各居室の壁に給気口103を設け、換気ファン101の排気はダクトを通じて玄関先等に設けた排気口104から屋外に排出する、といった構成になっている。これは、排気はファンで行い、給気はファンを使用せずに自然に取込む方式(排気型)であり、一般の住宅で多く採用されている。
【0003】
図12は、給気口103とこれに取り付けられる防火ダンパ110の一例を示している。給気口103は、通常、屋外に面する壁に直径100mm(あるいは150mm)ほどの穴を貫通させ、これに給気ダクト106を挿入し、その屋内側の端部に給気口103を開け閉め可能な屋内側カバーユニット107を取り付け、屋外側の端部に、雨避けカバー108を取り付けて構成される。
図12の例では、防火ダンパ110は、給気口103の給気ダクト106に一部を挿入して取り付けられている。
【0004】
図13は、開状態の防火ダンパ110を正面から見た図(同図(a))、開状態の防火ダンパ110を右側部から見た図(同図(b))、開状態の防火ダンパ110を上方から見た図(同図(c))、封鎖状態の防火ダンパ110を右側部から見た図(同図(d))、封鎖状態の防火ダンパ110を上方から見た図(同図(e))をそれぞれ示している。
【0005】
防火ダンパ110は、給気ダクト106の中に密に挿入される円環状のベース111(
図12参照)と、該円環状のベース111にその円の中心を通るように架け渡されたダンパフレーム112と、ダンパフレーム112を軸として回動可能であってダンパフレーム112を中心に左右対象に取り付けられた2枚の半円形のダンパ板113と、該ダンパ板113をベース111の開口を閉じた封鎖位置(
図13(d)(e))に向けて付勢するバネ114と、2枚のダンパ板113を互いに近接して向き合う開位置(
図13(a)(b)(c))に保持する温度ヒューズ115などで構成される。温度ヒューズ115は72℃で溶融する。
【0006】
常時は、2枚のダンパ板113は開位置(
図13(a)(b)(c))にあり、火災の熱で温度ヒューズ115が溶けると、バネ114に付勢されて2枚のダンパ板113が封鎖位置(
図13(d)(e))に変位してベース111の開口を閉じて炎や煙の通過を阻止する(特許文献1参照)。
【0007】
ところで、冬場は給気口から冷たい外気が室内に入って来る。
図11の住宅では、リビングなど人が長く居る部屋は暖房されて暖かい。その暖かい空気は、住宅の中心の吸込口に向かってゆっくりと流れ、吸込口から吸い込まれて屋外に排出される。一方、洋室(1)、洋室(2)などは、寝室などに利用された場合、暖房費節約等の観点から、暖房されない場合が多い。また、リビングから暖かい空気も流れ込まないため、室温が低い。明け方になるとトイレなども冷えてしまう。そのため、たとえば、入浴後にそれらの部屋に入ったり、明け方に布団から出てトイレに行ったりすると、ヒートショックを受ける恐れがある。
【0008】
光熱費を抑えて、ヒートショックが防止される程度に暖房する方法として、風呂の残り湯が持つ熱量を利用する方法がある。たとえば、特許文献2には、浴槽内の湯を、ファンからの送風を受ける熱交換器に循環させる暖房システムが開示される。
【0009】
しかし、この暖房システムでは、室温と浴槽内の残り湯との温度差が少ないため、放熱効率が低く、要求される熱量を得るには大型の熱交換器が必要であった。
【0010】
暖房効率を高める技術として、下記特許文献3に、近接対向配置された2枚のパネル状の放熱器に温水を流し、その2枚のパネルの間に屋外からの空気を通して室内に導入する空調装置が開示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献3に開示の技術を応用して、24時間換気システムの給気口に、温水が循環する放熱器を取り付け、屋外からの冷たい空気を暖めてから室内に導入する暖房システムが考えられる。しかし、給気口は、前述した防火ダンパが取り付けられるように、防火の要となる箇所であり、給気口に放熱器を取り付けるにおいても防火に関連する機能を付加することが望まれる。
【0013】
本発明は、上記の要請に鑑みて成されたものであり、給気口に取り付けられて暖房機能を果たすと共に防火に寄与することのできる放熱ユニットおよびこれを用いた暖房システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0015】
[1]排気は別途ファンで行い、壁に設けられた屋外と屋内を繋ぐ
直径100〜150mmで一定断面の貫通穴状の給気口からファンを使用せずに給気する24時間換気システムの前記給気口の中
の前記一定断面の部分に取り付けられ、温水が通される放熱器と、
前記放熱器と前記給気口の内壁との隙間を不燃材で封鎖する封鎖部材と、
を有し、
前記放熱器は、
マイクロ扁平管熱交換器であり、火災の炎を通さない消炎距離以下の間隔で
、内部に温水が通される放熱板が配列されている、
ことを特徴とする放熱ユニット。
【0016】
上記発明では、給気口に取り付けられた放熱ユニットは、消炎距離以下の間隔で放熱板が配列されているので、火災の炎が給気口を通過することを阻止する。
また、マイクロ扁平管熱交換器により少ない体積で良好な熱交換が可能になる。また、火災があっても内部に温水があるため放熱器の温度上昇が抑えられて溶融や変形が防止される。
【0017】
[2]前記放熱板が2.2mm以下の間隔で配列されている
ことを特徴とする[1]に記載の放熱ユニット。
【0018】
上記発明では、放熱板の間隔を2.2mm以下にすれば、各種のガスによる炎の通過を阻止することができる。
【0023】
[
3][1]
または[2]に記載の放熱ユニットと、
前記放熱ユニットの放熱器に温水を循環させる温水循環部と、
を有する
ことを特徴とする暖房システム。
【0024】
[
4]前記温水は、浴槽内の浴槽水であり、
前記温水循環部は、
風呂の追い焚き機能を備えた風呂給湯器と、
前記風呂給湯器の風呂の追い焚き経路を、前記放熱器を経由する経路と前記放熱器をバイパスする経路に切り換える切り替え弁を有し、
前記放熱器に浴槽水を循環させる場合に、前記追い焚き経路を、前記放熱器を経由する経路に設定して風呂の循環ポンプを駆動する
ことを特徴とする[
3]に記載の暖房システム。
【0025】
上記発明では、風呂の残り湯を利用して放熱器による暖房を行う。
[5]排気は別途ファンで行い、壁に設けられた屋外と屋内を繋ぐ貫通穴状の給気口からファンを使用せずに給気する24時間換気システムの前記給気口の中に取り付けられ、温水が通される放熱器と、前記放熱器と前記給気口の内壁との隙間を不燃材で封鎖する封鎖部材とを有する放熱ユニットと、
前記放熱ユニットの放熱器に温水を循環させる温水循環部と、
を有し、
前記温水は、浴槽内の浴槽水であり、
前記温水循環部は、風呂の追い焚き機能を備えた風呂給湯器と、前記風呂給湯器の風呂の追い焚き経路を、前記放熱器を経由する経路と前記放熱器をバイパスする経路に切り換える切り替え弁を有し、前記放熱器に浴槽水を循環させる場合に、前記追い焚き経路を、前記放熱器を経由する経路に設定して風呂の循環ポンプを駆動し、
前記放熱器は、火災の炎を通さない消炎距離以下の間隔で放熱板が配列されており、
前記放熱器に浴槽水を循環させる動作中に前記
放熱器から戻ってくる浴槽水の温度の上昇に基づいて火災を検知して警報を発する
ことを特徴とす
る暖房システム。
[
6]前記検知した場合に、前記温水循環部による送水量を増やす
ことを特徴とする[
5]に記載の暖房システム。
[7]前記給気口は、直径100〜150mmで一定断面の貫通穴状であり、
前記放熱器は、前記放熱板の内部に温水が通されるマイクロ扁平管熱交換器であって、前記給気口の中の前記一定断面の部分に取り付けられる
ことを特徴とする[5]または[6]に記載の暖房システム。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る放熱ユニットおよび暖房システムによれば、給気口に取り付けられて暖房機能を果たすと共に防火に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
本実施の形態に係る放熱ユニットは、壁を貫通して屋外と屋内を接続する給気口に取り付けられる。放熱ユニットは、温水が通される放熱器と、放熱器と給気口の内壁との隙間を不燃材で封鎖する封鎖部材と、を有し、放熱器は火災の炎を通さない消炎距離以下の間隔で放熱板を配列して構成される。本実施の形態に係る暖房システムは、この放熱ユニットと、この放熱ユニットに温水を循環させる温水循環部を備える。
【0030】
本実施の形態では、放熱器に循環させる温水は浴槽に残っている浴槽水とし、温水循環部の機能は風呂給湯器が備える。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る放熱ユニット10を給気口103に取り付けた状態の一例を示している。給気口103は、背景技術で説明したものと同様に、排気はファンで行い、給気はファンを使用せずに自然に取込む方式(排気型)の24時間換気システムにおける給気口103である。
【0032】
給気口103は、屋外に面する壁に直径100mm(あるいは150mm)ほどの穴を貫通させ、この穴に給気ダクト106を挿入し、その屋内側の端部に開け閉め可能な屋内側カバーユニット107を取り付け、屋外側の端部に、雨避けカバー108を取り付けて構成される。防火ダンパ110は、
図13に示すものと同一であり、その説明は省略する。
【0033】
給気ダクト106には、防火ダンパ110より屋外側の箇所に、本実施の形態に係る放熱ユニット10が取り付けてある。
【0034】
図2は、放熱ユニット10とその周囲の給気ダクト106を示す斜視図である。放熱ユニット10は、給気ダクト106に密に内挿される円板形状のベース板11と、ベース板11に大きく開設された矩形の貫通穴に嵌めこまれたマイクロ扁平管熱交換器12を備えている。なお、以後、放熱ユニット10のマイクロ扁平管熱交換器12を放熱器12とも記す。
【0035】
ベース板11は不燃材で構成される。たとえば、ベース板11は鋼鈑などで構成される。ベース板11は、放熱器(マイクロ扁平管熱交換器)12と給気口103の内壁との隙間を不燃材で封鎖する。
【0036】
図3は、放熱器であるマイクロ扁平管熱交換器12の概略を示す断面図および2枚のマイクロ扁平管15を取り出して示す斜視図ある。マイクロ扁平管熱交換器12は、並行に配置した入水管13と出水管14との間に、薄く扁平した管路であるマイクロ扁平管15を所定間隔で多数並列に接続して構成される。各マイクロ扁平管15は放熱器12の放熱板になっている。
【0037】
入水管13から到来した温水は、分岐して各マイクロ扁平管15の中を流れ、各マイクロ扁平管15の他端側で出水管14に流れ出て合流し、出水管14の出口から流出する。
【0038】
本例のマイクロ扁平管15は、長さL=68mm、幅W=15mm、厚みH=0.7mm(板厚t=0.2mm、内部の水路の厚みはH=0.3mm)である。配列されたマイクロ扁平管15同士の隙間D(間隔)は1.3mm程度になっている。通気抵抗は20Pa(25m
3/h時)以下にする。なお、風呂ポンプ65による送水では、最大で0.1MPa程度の耐水圧があればよいので、マイクロ扁平管15の板厚は0.2mm未満などの非常に薄い鋼鈑で問題ない。
【0039】
配列されたマイクロ扁平管15同士の隙間Dは、2.2mm以下、好ましくは1.8mm以下である。このような隙間でマイクロ扁平管15を配列すれば、マイクロ扁平管15とマイクロ扁平管15の隙間Dを炎が通り抜けられなくなり、防火効果を得ることができる。
【0040】
図4は、定圧下での(大気圧下での)各種のガスにおける当量比と消炎距離の関係を示すグラフである。マイクロ扁平管15とマイクロ扁平管15の隙間Dを各グラフの最小の消炎距離より小さくすれば、そのガスの炎はマイクロ扁平管15とマイクロ扁平管15の隙間を通り抜けられなくなる。消炎距離はガス成分や等量比、火炎の圧力などにより変化するが、多くの火災で想定される火炎では、配列されたマイクロ扁平管15同士の隙間Dは、2.2mm以下、好ましくは1.8mm以下にすれば、火災の炎を通さなくなる。
【0041】
このように、放熱ユニット10では、マイクロ扁平管15同士の間隔を消炎距離以下にすると共に、放熱器(マイクロ扁平管熱交換器)12と給気口103の内側との隙間を不燃材のベース板11で塞いでいるので、火災時に炎が給気口103を通過することを防ぎ、延焼を防いで、防火ダンパ110を補助することができる。また、温度ヒューズ115が溶けて防火ダンパ110が作動する前の突然の炎も通過させない効果がある。
【0042】
フィンチューブを用いる放熱器においてもフィンの間隔を消炎距離以下にすれば上記と同様の効果を得ることができるが、フィンは構造的に弱いため、何らかの外力を受けて、火災の発生時に既に変形して隙間が広がっている可能性がある。また、火災の炎の熱によって溶融したり変形したりして消炎効果が継続しない。
【0043】
これに対してマイクロ扁平管15を用いた放熱ユニット10では、マイクロ扁平管熱交換器12の各マイクロ扁平管15の形状は外力で容易に変形することなく安定している。さらに中が水で満たされているので、温度が上がり難い。なお、消炎距離は遮蔽物の温度が低いほど長くなるので、温度が上がり難いことは、消炎効果にとって有利に働く。
【0044】
このように、放熱板としてのマイクロ扁平管15を消炎距離以下の隙間で配列した放熱器12を有する放熱ユニット10は、火災時に炎が給気口103を通過することを防ぎ、延焼を防いで防火ダンパ110を補助することができる。
【0045】
図5は、本実施の形態に係る暖房システムの温水循環部などの機能を果たす風呂給湯器30の一例を示す概略構成図である。風呂給湯器30は、給水を加熱して浴室内のシャワーや台所の水栓等へお湯を供給(出湯)する給湯機能、浴槽2へ湯を落とし込み湯張りする注湯機能、浴槽2内の湯水を追い焚きして昇温する追い焚き機能などを備えている。また、浴槽2に設定温度の湯を設定水位になるように自動的に湯張りし、湯張り完了後は設定水位・設定温度が所定時間(たとえば、4時間)に渡って維持されるように追い焚き等を行う風呂の自動運転機能を備えている。さらに、浴槽2内の浴槽水を、給気口103に設けられた放熱ユニット10の放熱器(マイクロ扁平管熱交換器)12に循環させて部屋を暖房する浴湯暖房機能を有する。
【0046】
風呂給湯器30は、燃焼ファン31が送風する空気が下方から送り込まれ、上部に排気口32が設けられた燃焼室33を備えている。燃焼室33内には、その下部に第1バーナ34と第2バーナ35が配置され、第1バーナ34と第2バーナ35の上方には給湯用の第1熱交換器36が、第2バーナ35の上方には追い焚き用の第2熱交換器38がそれぞれ配置されている。第1熱交換器36は、バーナの近くに配置された顕熱熱交換器36aと、顕熱熱交換器36aの下流に配置された潜熱熱交換器36bとから構成される。第2熱交換器38は顕熱熱交換器のみで構成される。
【0047】
給水元から供給される給水は、給水管41、第1熱交換器36が有する水管(潜熱熱交換器36b、顕熱熱交換器36aの順)および給湯管42を経て出湯される。給水管41には、水量センサ51、およびその下流に、水量を調整(制限)するための水量サーボ52が設けてある。給水管41と給湯管42は、水量サーボ52の直ぐ下流でバイパス管43を通じて接続されており、バイパス管43の途中には、バイパス管43に流す水量を調整するバイパスサーボ53が設けてある。
【0048】
給湯管42には第1熱交換器36(顕熱熱交換器36a)を出た直後の湯温を検出する熱交温度センサ61、バイパス管43からの給水が合流した後の湯温を検出する給湯温度センサ62が設けてある。
【0049】
風呂の追い焚き経路は、浴槽2の浴湯取込口3から第2熱交換器38の入側に通じる風呂戻り管45と、第2熱交換器38の水管と、第2熱交換器38の出側から浴槽2の浴湯流出口4に至る風呂往き管46で構成される。風呂戻り管45の途中には、浴槽2側から順に、浴湯切替ユニット70、風呂戻り温度センサ64、風呂ポンプ65、水位センサ66、風呂水流スイッチ67が設けてある。風呂往き管46の途中には風呂往き温度センサ68が設けてある。
【0050】
給湯温度センサ62の下流で給湯管42から分岐した注湯管47は風呂戻り温度センサ64の箇所で風呂戻り管45に合流する。注湯管47の途中には、逆止弁54および該注湯管47の管路を開閉する注湯弁55が設けてある。
【0051】
さらに、風呂戻り管45の途中に介挿された浴湯切替ユニット70は、風呂熱利用三方弁71を有する。風呂熱利用三方弁71は、浴槽2側の風呂戻り管45が接続された第1接続口、風呂給湯器30側の風呂戻り管45が接続された第3接続口、放熱戻り管74が接続された第2接続口を有する。風呂熱利用三方弁71は、第1接続口と第3接続口を連通させ第2接続口を切り離した状態、すなわち、浴槽2側の風呂戻り管45と風呂給湯器30側の風呂戻り管45を接続し、放熱戻り管74を切り離した状態(風呂側)と、第2接続口と第3接続口を連通させ第1接続口を切り離した状態、すなわち、風呂給湯器30側の風呂戻り管45を放熱戻り管74に接続し、風呂側の風呂戻り管45を切り離した状態(暖房側)とに接続状態を切り換える。
【0052】
放熱往き管73は風呂熱利用三方弁71の浴槽2側で風呂戻り管45から分岐して、放熱ユニット10の放熱器12の入側に接続されている。放熱戻り管74は放熱器12の出側に接続され、他端は風呂熱利用三方弁71の第2接続口に接続されている。複数の放熱ユニット10を設置する場合、放熱往き管73と放熱戻り管74の間に各放熱ユニット10の放熱器12が並列に接続される。
【0053】
燃焼ガスの供給経路は次の様になっている。燃焼ガスの供給元に接続されるガス供給管81の途中には、供給元からの燃焼ガスを遮断するか否かを切り替える元ガス電磁弁82が設けられ、その下流には、供給する燃焼ガスの量を任意に調整するためのガス比例弁83が設けてある。ガス供給管81は、ガス比例弁83の下流で2つに分岐し、それぞれガス電磁弁を介して第1バーナ34および第2バーナ35に接続されている。
【0054】
このほか、風呂給湯器30は、外気温を検出する外気温度センサ63を有する。さらに、風呂給湯器30は、当該風呂給湯器30の動作を制御する制御部90を備える。制御部90はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを主要部とする回路で構成され、ROMに格納されたプログラムに従ってCPUが各種の処理を実行することで風呂給湯器30としての動作が実現される。制御部90は、風呂ポンプ65の動作を制御する機能を果たす。
【0055】
制御部90には、使用者から各種の設定や運転の指示を受ける機能、設定内容や運転状況を表示する機能等を備えたリモートコントローラ91(リモコンと略称する)が通信線を介して接続される。ここでは、リモートコントローラ91として、風呂に設置された風呂リモコン、台所等に設置されるメインリモコンなどがある。リモートコントローラ91は各種の警告をユーザに報知する報知部としての機能を果たす。
【0056】
次に、給湯器10が行う給湯動作、注湯動作、追い焚き動作、放熱ユニット10の放熱器12を用いた暖房動作について説明する。
【0057】
<給湯動作>
出湯栓が開かれて水量センサ51が通水を検出すると制御部90は、燃焼ファン31をオンし、第1バーナ34および第2バーナ35を点火してこれらで燃焼ガスを燃焼させる。給水元から流入する給水は、第1熱交換器36を通る際に加熱され、バイパスサーボ53で給水と混合され、設定された給湯温度の湯にされて出湯栓から出湯する。
【0058】
<注湯動作>
注湯動作は、リモートコントローラ91(風呂リモコンやメインリモコン)から、風呂の自動運転や注湯の指示を受けた場合に実行される。注湯動作では、制御部90は、注湯弁55を開くと共に燃焼ファン31を作動させ、第1バーナ34、第2バーナ35を点火して燃焼ガスを燃焼させる。これにより、給湯動作と同様にして生成された湯が注湯管47を通じて風呂戻り管45に流れ込み、該風呂戻り管45および風呂往き管46を通じて浴槽2に落とし込まれる。なお、注湯動作では、浴湯切替ユニット70の風呂熱利用三方弁71は風呂側(第1接続口と第3接続口を連通させ第2接続口を切り離した状態)に設定される。
【0059】
<追い焚き動作>
追い焚き動作は、風呂の自動運転の指示に基づいて上記の注湯動作が行われて設定水位に湯張りされた後、浴槽2内の浴槽水の温度を風呂設定温度まで昇温させるとき、あるいは、風呂の自動運転中に浴槽2内の湯水を風呂設定温度に維持するために昇温するとき、あるいは、使用者から追い焚きの指示を受けた場合に実行される。
【0060】
追い焚き動作では、制御部90は、風呂ポンプ65を作動させると共に、燃焼ファン31を作動させ第2バーナ35を点火し該第2バーナ35で燃焼ガスを燃焼させる。風呂ポンプ65の作用により、浴槽2内の湯が追い焚き経路を循環し、その途中の第2熱交換器38を通る際に第2バーナ35からの熱で加熱される。なお、追い焚き動作では、浴湯切替ユニット70の風呂熱利用三方弁71は風呂側に設定される。
【0061】
<放熱器を用いた暖房動作>
放熱ユニット10の放熱器12を用いた暖房動作では、風呂の自動運転の終了後に浴槽2の中に残っている浴槽水の熱を利用して暖房する。暖房動作では、浴湯切替ユニット70の風呂熱利用三方弁71を暖房側(第3接続口と第2接続口を連通させ第1接続口を切り離した状態)に切り替えて風呂ポンプ65を駆動する。これにより、浴槽2内の湯が浴湯取込口3から取り込まれ、風呂戻り管45の途中で放熱往き管73側に流れ、放熱ユニット10の放熱器(マイクロ扁平管熱交換器)12および放熱戻り管74を経て、風呂熱利用三方弁71の箇所で風呂戻り管45の風呂給湯器30側(第2接続口から第3接続口)へ流れ込み、第2熱交換器38、風呂往き管46を通じて浴湯流出口4から浴槽2に流出する、という経路で浴槽水が循環する。
【0062】
24時間換気システムの作用で、常に、給気口103を通じて外気が屋内に取り込まれているので、暖房運転中は、給気口103に取り付けた放熱ユニット10の放熱器12によって外気が暖められて屋内に取り込まれる。
【0063】
たとえば、風呂に入り終わった夜10時から明け方の5時頃までにかけて200W(2個で400W)程度の暖房能力を得ることができ、ヒートショックの防止に貢献することができる。なお、放熱器12に温水を流して暖房するので、たとえば、電気ヒータを給気口103の中に設置するような方式に比べて異常過熱(ショートや漏電による)がなく、火災を招く危険性が少ない。
【0064】
また、給気口103に放熱器12を取り付けることで、室内スペースを圧迫せず、また、温度の低い外気を直接暖めるので、高い効率で暖房することができる。
【0065】
図6は、暖房動作を示す流れ図である。暖房動作がオンにされると、風呂給湯器30の制御部90は、風呂ポンプ65を、流量最大(ここでは6L/min)でオンにする(ステップS101)。そして、風呂水流スイッチ67がオンになるか否かを調べる(ステップS102)。風呂水流スイッチ67がオンにならなければ(ステップS102;No)、浴湯なしのエラーをリモートコントローラ91に表示等し(ステップS103)、風呂ポンプ65をオフにして(ステップS106)、本処理を終了する。
【0066】
風呂水流スイッチ67がオンになった場合は(ステップS102;Yes)、風呂戻り温度センサ64により浴槽水の温度(風呂温度B0)を認識する(ステップS104)。
【0067】
風呂温度(B0)が予め定めた停止温度(ここでは28℃とする)未満の場合は(ステップS105;Yes)、暖房できないと判断し、風呂ポンプ65をオフにして(ステップS106)、本処理を終了する。
【0068】
風呂温度(B0)が予め定めた停止温度以上ならば(ステップS105;No)、風呂ポンプ65の流量を暖房運転時の流量(ここでは2L/min)に設定し(ステップS107)、風呂熱利用三方弁71を暖房側に切り替える(ステップS108)。これにより、放熱器12を経由して浴槽水が循環して暖房が開始される。
【0069】
この後、暖房運転を30分行う(ステップS109;No)。30分の暖房運転が終了したら(ステップS109;Yes)、風呂熱利用三方弁71を風呂側に切り替え(ステップS110)、風呂ポンプ65を最大流量で60秒稼動させて撹拌動作を行う(ステップS111)。その後、ステップS104に戻って処理を継続する。
【0070】
浴槽2の浴湯取込口3は浴湯流出口4より上の位置にあり、浴槽水を上部から吸い込んで下方に吐き出すようになっている。これは、通常の追い焚き時に、温かい湯を下方から浴槽2内に送り込んで対流を促し、浴槽2内の湯温を均一にするためである。しかし、放熱ユニット10を用いた暖房運転では、浴槽2内の暖かい湯を上側の浴湯取込口3から吸い込み、放熱器12で放熱されて冷たくなった湯を下側の浴湯流出口4から浴槽2に流し込むことになるので、冷たい湯が下に溜まって、浴槽2内に温度成層が形成される。
【0071】
したがって、浴槽2の浴槽水の湯温が当初均一であれば、暖房運転中に浴湯取込口3から取り込む湯温は、しばらく同じ温度になる。しかし、暖房運転の継続に伴って浴槽2の下部に溜まる冷たい水の層の水位が次第に高くなり、浴湯取込口3の水位までくると、その上に温かい湯が溜まっていても、以後は、その暖かい湯を取り込むことができず、暖房に利用できなくなる。
【0072】
そこで、暖房運転を30分継続したら、一度、撹拌動作を行って、浴槽2内の湯温を均一にする。そして、撹拌後の浴槽水の温度(風呂温度)が停止温度を超える場合は暖房動作を継続し、停止温度以下であれば暖房動作を停止する。
【0073】
図7は、暖房動作中の暖房運転や撹拌動作の実行期間と風呂温度等の関係を示している。30分間の暖房運転中は、前述したように、温度成層が形成されるため、浴湯取込口3から取り込まれる浴槽水の温度(風呂温度)は変化しない。撹拌動作により風呂温度が一気に変化する。
【0074】
このように本実施の形態に係る暖房システムは、放熱ユニット10の放熱器12を用いた暖房機能を有する。また、放熱ユニット10は、マイクロ扁平管15を消炎距離以下の隙間で配列した放熱器(マイクロ扁平管熱交換器)12を用い、放熱器12と給気口103との隙間を不燃材のベース板11で塞ぐようにしたので、炎が給気口103を通過することを防いで延焼を防止し、防火ダンパ110を補助することができる。
【0075】
なお、放熱ユニット10の放熱器12に温水を供給する風呂給湯器30は、通常、
図11に示すように、屋外(
図11の例ではポーチ)に設置されるので、放熱ユニット10を防火ダンパ110より屋外側に配置することで、温水配管を屋外側から放熱器12に容易に配管することができ施工性が良好である。また、後付けでの取り付けが容易になる。
【0076】
放熱器12は、
図2、
図3に示すようなマイクロ扁平管15を用いたものに限定されない。
図8や
図9に示すようにフィンとチューブを用いるタイプの放熱器でもかまわない。この場合も延焼効果を得るならば、フィンとフィンの隙間(円筒形の場合は最大の箇所の隙間)を消炎距離以下、具体的には2.2mm以下、好ましくは1.8mm以下にする。ただし、フィンの変形や火災時の溶融・変形、さらに必要な放熱量を少ない設置スペースで稼ぐことを考慮すれば、マイクロ扁平管15で構成することが望ましい。
【0077】
また、放熱器12に循環させる温水として浴槽2内の浴槽水を利用する例を示したが、浴槽水以外の温水を循環させてもかまわない。
【0078】
たとえば、
図10に示す風呂給湯器30Bでは、浴槽2に浴槽水が無い場合には、追い焚き経路から浴槽2を切り離し、放熱器12と追い焚き用の熱交換器39を経由して湯水を循環させることができる。熱源は、暖房側のバーナ(第2バーナ35)を用いる。循環させる湯水が、不足するもしくは無い場合には、給湯側から注湯管47を通じて補給する。
【0079】
図10では、
図5と同一部分には同一の符号を付してある。風呂給湯器30Bでは、風呂の追い焚き経路は、水−水熱交換器39の二次側配管を経由する。水-水熱交換器39の一次側は、シスターン56から循環ポンプ57、第2熱交換器38の顕熱熱交換器38a、水-水熱交換器39の一次側、第2熱交換器38の潜熱熱交換器38bを経てシスターン56に戻る循環経路に含まれる。循環ポンプ57の作用でこの循環経路を循環する湯水は第2熱交換器38を通る際に第2バーナ35からの熱を受けて加熱され、その熱は水-水熱交換器39を通る際に一次側から二次側に移動する。
【0080】
図10に示す風呂給湯器30Bを用いた暖房システムの浴湯切替ユニット70Bは、前述の風呂熱利用三方弁71に加えて、風呂バイパス三方弁72、気水分離機73を備える。風呂バイパス三方弁72は、浴槽2の手前で風呂戻り管45と風呂往き管46を接続して浴槽2をバイパスする状態(風呂迂回側、図中の第2接続口と第3接続口を連通させ第1接続口を切り離した状態)と、浴槽2をバイパスしない通常の追い焚き経路(風呂経由側、図中の第3接続口と第1接続口を連通させ第2接続口を切り離した状態)とするかを切り換える。
【0081】
浴槽2内の湯を用いて放熱器12による暖房運転を行う場合は、風呂バイパス三方弁72を風呂経由側に設定し、
図5に示した風呂給湯器30と同様の暖房動作を行う。浴槽2の湯を利用しないで暖房動作を行う場合には、風呂バイパス三方弁72を風呂迂回側に切り替え、風呂熱利用三方弁71を暖房側に設定する。また、浴槽2をバイパスさせた追い焚き経路に、注湯管47を通じて湯または水を補給する。その後、風呂ポンプ65および循環ポンプ57をオンにして、風呂往き温度センサ68の検出温度が40℃等になるように、第2バーナ35の燃焼量等を制御する。
【0082】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0083】
実施の形態では、給気口103に防火ダンパ110が装着されている例を示したが、本発明は、防火ダンパ110が取り付けられていない場合にも適用され、給気口を炎が通過することを防止する。
【0084】
放熱器12に温水を循環させる温水循環部は、実施の形態で示した風呂給湯器30や風呂給湯器30Bに限定されず、任意の熱源で構わない。たとえば、燃料電池の排熱を利用するようなものでもよい。燃料電池の排熱で湯を作って貯湯タンクにためる給湯システムを利用する場合、貯湯タンクが満蓄となって燃料電池の排熱を回収できない状態になったら、貯湯タンクの湯を浴槽に数リットル捨てて、浴槽内の湯温を上昇させ、この浴槽水を循環させて放熱器12による暖房を行えばよい。
【0085】
実施の形態では、防火ダンパ110より屋外側に放熱ユニット10を取り付けたが、放熱ユニット10は防火ダンパ110より屋内側に配置されてもよい。ただし、放熱ユニット10を防火ダンパ110より屋外側に設置した場合のような良好な施工性は得られない。
【0086】
温水配管が屋外側から放熱器に至っている場合には、隣家が火災時には火災の熱を受けて温水配管内温度が上昇する。この上昇を風呂戻り温度センサ64で検知して家人に対して警報を行うようにしても良い。例えば、風呂給湯器30、30Bで湯を浴槽に対して使用しているか否かを検証(湯を浴槽に入れている可能性を、湯の使用状況と水位センサー等を使用して検証)したり、浴槽水を追焚しているかを検証した上で、風呂戻り温度センサ64での温度上昇が、火事等外部要因と判断される場合には、警報を行うようと共に風呂ポンプ65による送水量を増やすようにしても良い。これにより、マイクロ扁平管15の温度が上昇しにくくなり、消炎する機能が維持されやすくなる。
【0087】
また、隣家が火災時には火災の熱を受けて温水配管が燃える。この時、水位センサ66は急激な水位変化を示す。例えば注湯したり、浴槽水を排水したりすると、水位センサ66は浴槽水位変化に応じた出力を示すが、温水配管が燃えて空気が侵入した時点で、水位センサ66の一端が大気解放となり、急激な水位変化を示すので、これを検知して家人に対して警報を行うようにしても良い。
【0088】
隣家火災時には温度ヒューズ115が溶断するまで、放熱ユニット(マイクロ扁平管熱交換器)の放熱板の間から熱風が侵入する(例えば火災無し時に取り込まれる外気の温度は、5℃で安定しているのに対し、例えば火災時には20℃→30℃→40℃のように上昇する)。屋内に取り込まれる外気の温度上昇に伴って、風呂戻り温度センサ64での温度上昇が始まるので、火事等外部要因と判断される場合には、警報を行うようにしても良い(風呂戻り温度センサ64に代えて、例えば風呂往き温度センサ68等、循環する浴槽水の水温を測定できるものを用いても良い)。