特許第6838985号(P6838985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6838985バケット揚重装置およびコンクリート打設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838985
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】バケット揚重装置およびコンクリート打設方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20210222BHJP
   B66C 21/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B66C13/22 T
   B66C21/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-22261(P2017-22261)
(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公開番号】特開2018-127337(P2018-127337A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】宮瀬 文裕
(72)【発明者】
【氏名】平塚 毅
(72)【発明者】
【氏名】青山 晋一
(72)【発明者】
【氏名】末吉 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】長尾 貴浩
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−109884(JP,A)
【文献】 特開平10−017270(JP,A)
【文献】 特開平07−206378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に打設するコンクリートを収容および搬送するためのバケットを備えたバケット揚重装置であって、
前記バケットの外表面の横方向および縦方向に沿って複数の光出射部が設けられ
前記横方向に沿って設けられた前記複数の光出射部から出射される光の色と、前記縦方向に沿って設けられた前記複数の光出射部から出射される光の色とが互いに異なる、
バケット揚重装置。
【請求項2】
前記光出射部は光源を備える、
請求項1に記載のバケット揚重装置。
【請求項3】
前記光出射部は照射された光を散乱させる散乱体を備える、
請求項1に記載のバケット揚重装置。
【請求項4】
前記光出射部は照射された光を前記光の入射方向に応じた方向に向けて反射する反射体を備える、
請求項1に記載のバケット揚重装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のバケット揚重装置を用いてコンクリートを打設するコンクリート打設方法であって、
前記コンクリートを前記バケットに収容する工程と、
前記バケットを前記コンクリートの収容位置から打設位置の上方まで搬送する工程と、
前記打設位置の上方における前記バケットの前記横方向に沿って設けられた前記複数の光出射部を結ぶ仮想線と水平方向に平行な仮想線との傾斜がなくなり、且つ前記縦方向に沿って設けられた前記複数の光出射部を結ぶ仮想線と鉛直方向に平行な仮想線との傾斜がなくなったことを確認したら、前記バケットの底部を開放させ、前記コンクリートを前記打設位置に打設する工程と、
を備える、コンクリート打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケット揚重装置およびコンクリート打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ダムの工事現場では、ケーブルクレーン(バケット揚重部)とバケットを用いたコンクリートの打設が行われている。具体的には、ケーブルクレーンを操作するオペレーターが、打設用のコンクリートが収容され、かつケーブルクレーンで揚重されたバケットを、ダムの下床部のコンクリート打設位置まで移動させ、地面から所定の高さまでバケットを降下させる。その後、オペレーターがバケットの底部を開き、コンクリートを所定の打設位置に落とすことによって、コンクリートが打設される。
【0003】
上述のようにダムの下床部にコンクリートを打設する場合、オペレーターがバケットの位置や傾きを詳細に把握することは難しい。バケットがコンクリート打設位置の直上にない、またはバケットが傾いている状態でオペレーターがバケットの底部を開いてしまうと、大量のコンクリートが本来の打設位置とは異なる位置に打設され、作業効率が著しく低下するおそれがある。そのため、通常、ダムの下床部(コンクリートの打設位置付近)にいる誘導者がオペレーターに合図や指示を送り、オペレーターは誘導者からの合図や指示に従って、バケットがコンクリート打設位置の直上で、軸線を鉛直方向に向けて平行に真っ直ぐ(以下、単に「真っ直ぐ」という場合がある)配置されたときにバケットの底部を開く。
【0004】
ケーブルクレーンに揚重されていることで3次元的に動くバケットの位置や傾きを誘導者が正確に把握し、かつオペレーターに伝達するためには、誘導者の高い熟練度が必要とされる。従来、誘導者の技能は現場での経験を重ねることより向上していくものである。近年ベテランの誘導者が減少し、若手の作業員を誘導者として早急に教育する必要に迫られているが、若手の作業員は減少しており、経験を重ねた高い熟練度が不要な装置や方法が求められていた。
【0005】
上述の事情に鑑み、例えば、特許文献1には、バケットに傾斜センサーを設け、該傾斜センサーによって検出される傾斜角および傾斜方向に応じた移動量および移動方向にバケットおよび該バケットを吊索するトロリーを移動させることを特徴とするバケットの振れ止め方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、特許文献1と同様のケーブルクレーンの構成を用いて、バケット位置の微調整作業や振れ止め作業の完全自動化を図る点から、バケットにコンクリートを収めた位置から打設位置までの往路および復路のそれぞれにおいてバケットの移動制御、振れ止め制御、微調整制御(減速など)を詳細に行うケーブルクレーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−106096号公報
【特許文献2】特開平4−106095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されているバケットの振れ止め方法では、バケットに取り付けるための高価な無線送信器を用意するとともに、無線送信器と無線通信を行うための大がかりな遠隔制御室をダムの高台に設置する必要があるという問題があった。
また、特許文献2に記載のケーブルクレーンでは、バケットの移動制御が著しく複雑化し、上述のように3次元的に動くバケットの想定外の動きに対処難いという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複雑な検知器や制御装置などを用いなくてもバケットの位置や傾きを容易かつ迅速に確認することができるバケット揚重装置およびコンクリート打設方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のバケット揚重装置は、バケットと、所定の位置(工事現場内のコンクリート打設位置)に対して前記バケットを揚重(および移動)可能とするバケット揚重部と、を備え、前記バケットの外表面の横方向および縦方向に沿って複数の光出射部が設けられ、前記横方向に沿って設けられた前記複数の光出射部から出射される光の色と、前記縦方向に沿って設けられた前記複数の光出射部から出射される光の色とが互いに異なることを特徴とする。
【0011】
上述の構成によれば、誘導者(やオペレーター)が光出射部から出射される光を視認するだけで、バケットの位置および傾きを瞬時に確認することができる。また、光出射部がバケットの外表面の横方向に沿って複数設けられているので、バケットの水平方向に対する傾きを瞬時に確認することができ、バケットの外表面の縦方向に沿って複数設けられているので、バケットの鉛直方向に対する傾きを瞬時に確認することができる。
【0012】
請求項2に記載のバケット揚重装置において、前記光出射部は光源を備えていてもよい。
【0013】
上述の構成によれば、光出射部から直接光が発せられるので、光出射部の明るさが高まり、誘導者の視認度が向上する。また、光源からの光量を調節可能にすることで、光出射部から出射される光量を変えることができるので、天候や環境条件に応じて柔軟に対応し、誘導者の視認度を維持し易くすることができる。
【0014】
請求項3に記載のバケット揚重装置において、前記光出射部は照射された光を散乱させる散乱体を備えていてもよい。
【0015】
上述の構成によれば、外部からの照射光や太陽光などの光を受けて光出射部から光が散乱されるので、誘導者は散乱光の有無によってバケットの位置や傾きを瞬時に確認することができる。
【0016】
請求項4に記載のバケット揚重装置において、前記光出射部は照射された光を前記光の入射方向に応じた方向に向けて反射する反射体を備えていてもよい。
【0017】
上述の構成によれば、誘導者は光出射部によって反射される反射光の有無によってバケットの位置や傾きを瞬時に確認することができる。
【0018】
請求項5に記載のコンクリート打設方法は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載のバケット揚重装置を用いてコンクリートを打設するコンクリート打設方法であって、前記コンクリートを前記バケットに収容する工程と、前記バケットを前記コンクリートの収容位置から打設位置の上方まで搬送する工程と、前記打設位置の上方における前記バケットの前記横方向に沿って設けられた前記複数の光出射部を結ぶ仮想線と水平方向に平行な仮想線との傾斜がなくなり、且つ前記縦方向に沿って設けられた前記複数の光出射部を結ぶ仮想線と鉛直方向に平行な仮想線との傾斜がなくなったことを確認したら、前記バケットの底部を開放させ、前記コンクリートを前記打設位置に打設する工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
上述の構成によれば、打設位置の上方におけるバケットの位置と傾きに応じてバケットの底部からコンクリートを打設する工程において、バケットの水平方向および鉛直方向に対する傾きを瞬時に確認し、複雑な検知器や制御装置などを用いなくてもバケットの位置や傾きを容易かつ迅速に確認することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るバケット揚重装置およびコンクリート打設方法によれば、複雑な検知器や制御装置などを用いなくてもバケットの位置や傾きを容易かつ迅速に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用した一実施形態のバケット揚重装置を示す側面図である。
図2】本発明を適用した一実施形態のバケット揚重装置が備えるバケットを示す側面図である。
図3図2に示すバケットの傾きを確認する方法を説明するための模式図である。
図4】本発明を適用した一実施形態のバケット揚重装置が備えるバケットの変形例を示す側面図である。
図5図4に示すバケットの傾きを確認する方法を説明するための模式図である。
図6】本発明を適用した一実施形態のバケット揚重装置が備える光出射部の構成例を示す模式図であって、(a)はバケットの径方向外方から径方向中心に向かってみた場合の図であり、(b)は(a)の側面図である。
図7】本発明を適用した一実施形態のバケット揚重装置が備える光出射部の別の構成例を示す模式図である。
図8】本発明を適用した一実施形態のバケット揚重装置が備える光出射部のさらに別の構成例を示す模式図である。
図9】本発明を適用した一実施形態のバケット揚重装置が備える光出射部の他の構成例を示す模式図であって、(a)は光出射部からの反射光がバケットの径方向外方の誘導者に直接反射する場合を例示する図であり、(b)は光出射部からの反射光がバケットの径方向外方の誘導者がいる方向とは異なる方向に反射する場合を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用したバケット揚重装置およびコンクリート打設方法の一実施形態(以下、本実施形態のバケット揚重装置およびコンクリート打設方法とする)について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅及び厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
【0023】
始めに、本実施形態のバケット揚重装置1について説明する。
図1に示すように、本実施形態のバケット揚重装置1は、少なくともコンクリート打設位置(所定の位置)に打設するコンクリートCを収容および搬送するためのバケット2を備え、バケット2を揚重し、コンクリートCを搬送するためのケーブルクレーン3をさらに備えている。なお、本実施形態では、バケット揚重装置1がダムの工事現場において用いられる場合を例示して説明する。
【0024】
バケット2は、図2に示すように、図示略のコンクリートを収容可能に構成されたコンクリート収容部11と、コンクリート収容部11の底部に設けられた開閉扉12と、コンクリート収容部11および開閉扉12の外周(外表面)に設けられたリム13と、リム13に設けられた複数の光出射部10と、有している。
【0025】
コンクリート収容部11は、筒状の部材で構成され、底部に向かって窄まるように形成されている。
開閉扉12は、一対の扉で構成され、遠隔操作によって所望のタイミングで開閉可能とされている。開閉扉12が開放された場合、コンクリート収容部11の底部は開口され、収容されているコンクリートが落下する仕組みとされている。
【0026】
リム13は、コンクリート収容部11にコンクリートを収容する際などにコンクリート収容部11が倒れないように、また安定して載置可能とするために設けられている部材である。リム13は、コンクリート収容部11の上部の外周に沿って、バケット2の横方向D3と平行に設けられた横リム14と、横リム14と略同径に形成され、コンクリート収容部11の下部の外周周囲に設けられ、かつ横方向D3と平行に設けられた横リム15と、横リム14,15を互いに連結し、バケット2の縦方向D4と平行に設けられた縦リム16と、を備えている。縦リム16は、横リム14,15の周方向に沿って適当な間隔をあけて複数設けられている。
【0027】
光出射部10は、光を誘導者G2に対して視認可能に出射するように構成されたものである。ここで、「視認可能に出射する」とは、光が誘導者G2に直接向けられる場合はもちろん、光が誘導者G2に直接向けられていなくても、その光の進行方向が光出射部10で変わることが見てわかる状態も含まれる。
【0028】
光出射部10は、バケット2の横方向D3に沿って複数設けられた光出射部10Aと、バケット2の縦方向D4に沿って複数設けられた光出射部10Bと、を備えている。具体的には、光出射部10Aは、横リム14の外表面の周方向において縦リム16に沿う鉛直方向と交差する複数の位置に設けられている。光出射部10Bは、縦リム16の外表面に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0029】
光出射部10Aの一例としては、図示していないが、光の出射方向がバケット2の径方向外方に向けられた単体の光源21のみで構成されたものや、図6(a),(b)に示すように、光源21と、光源21から放射状に出射された光をバケット2の径方向外方D5に向けてコリメートして出射する光学素子22が筐体23に適宜配置されたものなどが挙げられる。光源21としては、少なくとも可視光を発するものが求められ、小型で低消費電力かつ低価格である発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)が好適であるが、LEDに限定されない。光学素子22としては、凸レンズ、フレネルレンズ、フレネルレンズの曲面プロファイルを階段形状で近似させたもの、非球面レンズ、計算機合成ホログラム(Computer-Generated Hologram:CGH)などが挙げられるが、前述のように光源21から出射された光をバケット2の径方向外方D5に向けて出射することができるものであれば特に限定されない。
また、光出射部10Aの別の例としては、図7に示すように、光源21が横方向D2および縦方向D3に複数並べられたものが挙げられる。
【0030】
また、光出射部10Aのさらに別の例としては、例えばダム工事現場の下床部Bに設置された照明、または太陽光などから光出射部10A入射した光を所定の方向やあらゆる方向(図8参照)に散乱する散乱体24で構成されたものが挙げられる。散乱体24としては、各種ホログラムや光学拡散板などが挙げられるが、光出射部10Aに入射した光を前述のように散乱することができるものであれば特に限定されない。光の散乱度を高めるために散乱体24はバケット2の横方向D3または縦方向D4を中心軸として回転可能に構成されていてもよい。
【0031】
さらに、光出射部10Aの他の例としては、例えばダム工事現場の下床部B に設置された照明、または太陽光などから光出射部10Aに入射した光を、図(a),(b)に示すように、所定の方向に向けて反射する反射体25で構成されたものが挙げられる。誘導者G2がバケット2の径方向外方D5の正面にいる場合、反射体25から反射される光量が充分に低ければ、図(a)に示すように光出射部10A入射した光をバケット2の径方向外方D5に向けて直接反射させてもよい。反射体25から反射される光量が高ければ、図(b)に示すように光出射部10A入射した光をバケット2の径方向外方D5とは異なる方向に反射させることが好ましい。反射体25としては、反射型の回折格子や、板状部材の表面に銀やアルミなどの薄膜が設けられた反射ミラーなどが挙げられるが、光出射部10Aに入射した光を前述のように反射することができるものであれば特に限定されない。
【0032】
光出射部10Bの例としては、上述した光出射部10Aの例と同様の例が挙げられる。
なお、図3に示すように、横方向D3と縦方向D4のそれぞれの方向に沿った光出射部10A,10Bを瞬時に識別可能とする点から、光出射部10A,10Bのそれぞれから出射される光の色(波長)は互いに異なっていることが好ましい。
光出射部10A,10Bのそれぞれから出射される光の色を互いに異ならせる方法としては、例えば光出射部10Aの光源21から出射される波長と光出射部10Bの光源21から出射される波長とを異ならせる(具体的には、光出射部10Aの光源21と光出射部10Bの光源21との発光材料を異ならせる)こと、互いに異なるカラーフィルターを組みあわせるなどの方法によって光学素子22に色選択性を持たせるせることなどが挙げられる。
また、光出射部10A,10Bのそれぞれから出射される光の色を互いに異ならせる方法としては、光出射部10A,10Bのそれぞれの散乱体24としての各種ホログラムや光学拡散板などの表面微細構造の大きさやパターンを互いに異ならせること、反射体25としての反射型回折格子の周期を互いに異ならせることなどが挙げられる。
【0033】
上述したバケット2を揚重するケーブルクレーン3は、下床部Bを囲む岸壁TA,TBに設けられたケーブル支持部4A,4Bと、ケーブル支持部4A,4Bの間に渡されたケーブル5と、ケーブル5に挿通され、遠隔操作室8にいるオペレーターG1が行う遠隔操作などによって移動可能に構成されたトロリー6と、トロリー6から昇降可能に吊下されるとともにバケット2の上部に接続され、バケット2を揚重するケーブル7と、を備えている。なお、ケーブルクレーン3は、前述の構成に加えて、公知のケーブルクレーンが備える構成要素をさらに備えていてもよい。
【0034】
次いで、本実施形態のコンクリート打設方法について説明する。
本実施形態のコンクリート打設方法は、上述したバケット揚重装置1を用いてコンクリートCを打設するコンクリート打設方法であって、コンクリートCをバケット2に収容する工程と、バケット2をコンクリートCの収容位置から打設位置P1まで搬送する工程と、打設位置P1の上方におけるバケット2の位置と傾きに応じてバケット2の底部を開放させ、コンクリートCを打設位置(所定の位置)P1に打設する工程と、を備えている。
【0035】
コンクリートCをバケット2に収容する工程では、オペレーターG1が岸壁TA,TBの中腹あたりの適当な収容位置までバケット2を移動させる。現場の作業者らによって、開閉扉12が閉じられたバケット2のコンクリート収容部11に所定量のコンクリートCが収容される。
【0036】
次に、バケット2をコンクリートCの収容位置から打設位置P1まで搬送する工程では、オペレーターG1は引き続き遠隔操作により、トロリー6を水平方向D1に沿ってコンクリートCの収容位置から打設位置P1まで移動させ、打設位置P1まで移動したバケット2を下床部Bの下床面bから所定の高さだけ上方の位置まで降下させる。
【0037】
次に、打設位置P1の上方におけるバケット2の位置と傾きに応じてバケット2の底部からコンクリートCを打設する工程では、下床部Bの打設位置P1付近にいる誘導者G2が複数の光出射部10A,10Bを視認する。
【0038】
打設位置P1の上方に移動したバケット2が傾いていると、図3に示すように、複数の光出射部10A´の位置が本来の位置からずれ、複数の光出射部10A´を結ぶ仮想線S1が、バケット2の横方向D3と水平方向D1とが互いに平行となっている理想的な状態の複数の光出射部10Aを結ぶ仮想線S0に対して傾く。同様に、複数の光出射部10B´を結ぶ仮想線S1が、バケット2の縦方向D4と鉛直方向D2とが互いに平行となっている状態の複数の光出射部10Bを結ぶ仮想線S0に対して傾く。言い換えれば、誘導者G2は、仮想線S0に対する仮想線S1の傾斜角度を視認することによって、バケット2の傾きを確認するとともに、オペレーターG1にバケット2の傾きをなくすようにケーブル7を動かすように連絡する。なお、図3においては、バケット2の傾きについてわかりやすく図示するために、バケット2、コンクリート収容部11、開閉扉12およびリム13の図示は省略する。
【0039】
誘導者G2は、仮想線S0に対する仮想線S1の傾斜がほぼなくなり、バケット2の横方向D3が水平方向D1に対して平行になり、かつバケット2の縦方向D4が鉛直方向D2に対して平行になったことを視認したら、オペレーターG1にその旨を連絡する。オペレーターG1は、誘導者G2からの連絡を受けて開閉扉12を開放し、コンクリートCを落とすことによって、打設位置P1にコンクリートCを打設する。
【0040】
コンクリートCを打設した後、オペレーターG1は引き続き、遠隔操作により、開閉扉12を閉じ、バケット2を所定の高さまで上昇させ、トロリー6を水平方向D1に沿ってコンクリートCの打設位置P1から収容位置まで移動させる。
【0041】
上述の作業を繰り返すことにより、下床部BにコンクリートCが複数回にわたって打設され、ダムの建設が進行する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のバケット揚重装置1によれば、図3に示すように、バケット2の横方向D1に沿って複数の光出射部10Aが設けられ、かつバケット2の縦方向D2に沿って複数の光出射部10Bが設けられていることによって、誘導者G2が光出射部10A,10Bから出射される光を視認するだけで、バケット2の位置および傾きを瞬時に確認することができる。また、光出射部がバケットの外表面の横方向に沿って複数設けられているので、バケットの水平方向に対する傾きを瞬時に確認することができ、バケットの外表面の縦方向に沿って複数設けられているので、バケット2の鉛直方向に対する傾きを瞬時に確認することができる。すなわち、バケット2が真っ直ぐになっているか否かを瞬時に確認することができる。
複数の光出射部10を用いてバケット2の位置および傾きを視認可能とすることにより、誘導者G2は複雑な検知器や制御装置などを用いなくてもバケットの位置や傾きを容易かつ迅速に確認し、オペレーターG2に連絡することができる。これにより、バケット揚重装置1の構成を複雑にすることもなく、建設コストの削減も図ることができる。
【0043】
また、本実施形態のバケット揚重装置1によれば、光出射部10は光源21を備えていてもよく、その場合は光出射部10から直接光が発せられるので、光出射部10をシンプルに、かつ低コストで構成しつつ、光出射部10の明るさを高くし、誘導者G1の視認度を向上させることができる。これにより、誘導者G1が下床部Bでバケット2の傾きを瞬時にかつ容易に確認することができる。また、光源21からの光量を調節可能にすることで、光出射部10から出射される光量を変えることができるので、天候や環境条件に応じて柔軟に対応し、誘導者G1の視認度を容易に維持することができる。
【0044】
また、本実施形態のバケット揚重装置1によれば、光出射部10は散乱体24を備えていてもよい。その場合は下床部Bで光出射部10に向けて照射される照射光や太陽光などの光を受けて光出射部10から光が散乱されるので、光出射部10をシンプルに、かつ低コストで構成しつつ、誘導者Gが散乱光の有無によってバケット2の傾きを瞬時に確認することができる。このような構成では、バケット2に電源や電力の供給が不要となり、バケット2の軽量化を図るとともに、電源や電力供給部の交換の手間を省くことができる。
【0045】
また、本実施形態のバケット揚重装置1によれば、光出射部10は反射体25を備えていてもよい。その場合は誘導者G1が下床部Bで光出射部10に向けて照射される照射光や太陽光などの光が光出射部10によって反射される反射光の有無によってバケット2の傾きを瞬時に確認することができる。このような構成においても、バケット2に電源や電力の供給が不要となり、バケット2の軽量化を図るとともに、電源や電力供給部の交換の手間を省くことができる。
【0046】
さらに、本実施形態のコンクリート打設方法によれば、バケット揚重装置1を用いてコンクリートを打設する際に、打設位置P1の上方におけるバケット2の位置と傾きに応じてバケット2の底部からコンクリートCを打設する工程において、バケット2の水平方向および鉛直方向に対する傾きを瞬時に確認し、複雑な検知器や制御装置などを用いなくてもバケット2の位置や傾きを容易かつ迅速に確認することができる。
【0047】
したがって、本実施形態のバケット揚重装置1およびコンクリート打設方法によれば、バケット2の位置や傾きの確認に対する高い熟練度を有さない誘導者G2でもバケット2が真っ直ぐになっていることを瞬時に、かつ容易に視認し、コンクリートCの打設を円滑に進めることができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、バケット2に設けられる光出射部10の数および複数の光出射部10同士の間隔や相対配置は、図2に示した一例に限定されず、バケット2の水平方向D1および鉛直方向D2に対する傾きを瞬時に確認することができれば特に限定されない。図4および図5に示すように、複数の光出射部10は、バケット2の横方向D3に沿う仮想線S0と縦方向D4に沿う仮想線S0とがバケット2の径方向外方D5の正面から見て十字を描いて交差するように設けられていてもよい。このような構成においても、上述の実施形態と同様に、誘導者G2は、仮想線S0に対する仮想線S1の傾斜角度を視認することによって、バケット2の傾きを瞬時に確認することができる。
【0050】
また、バケット2の構成は、所定の位置に打設するコンクリートCを収容および搬送することができ、かつ外表面に複数の光出射部10A,10Bを設置可能であれば、上述の構成に限定されない。
【0051】
また、バケット2を揚重する構成は、ケーブルクレーン3に限定されない。バケット2は、単体のクレーンなどにより揚重されていても構わない。つまり、本発明に係るバケット揚重装置1およびコンクリート打設方法は、揚重されることによって3次元的に動くバケット2の位置や傾きを容易にかつ瞬時に確認することを求められるもの(例えば、ロープウェイやその他の吊り構造など)に対して広く有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 バケット揚重装置
2 バケット
10,10A,10B 光出射部
21 光源
24 散乱体
25 反射体
C コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9