特許第6838991号(P6838991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838991
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】変位検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/14 20060101AFI20210222BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   G01D5/14 E
   G01D5/245 110L
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-29148(P2017-29148)
(22)【出願日】2017年2月20日
(65)【公開番号】特開2018-136146(P2018-136146A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝原 大智
【審査官】 清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−258109(JP,A)
【文献】 特開2008−082512(JP,A)
【文献】 特開2005−077375(JP,A)
【文献】 特開2005−300247(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0092960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位検出対象部材に追従して変位する変位部材と、
前記変位部材に設けられ、前記変位部材とともに変位する磁石と、
前記変位部材が挿通する支持孔が設けられ、前記変位部材を変位方向に往復動自在に支持する支持部材と、
前記支持部材に配置され前記磁石の変位に伴う磁界の変化を検出する第1磁気検出部及び第2磁気検出部と、を備え、
前記第1磁気検出部及び前記第2磁気検出部は、前記支持孔の支持軸心と直交する同一平面上に配置され、
前記変位部材の変位量は、前記第1磁気検出部の検出値と前記第2磁気検出部の検出値とに基づいて算出され
前記磁石は、前記第1磁気検出部に対向する第1対向部と、前記第2磁気検出部に対向する第2対向部と、前記第1対向部と前記第2対向部との間に設けられ前記第1磁気検出部及び前記第2磁気検出部に対向しない非対向部と、を有し、
前記非対向部の表面と前記支持軸心との間の距離は、前記第1対向部の表面と前記支持軸心との間の距離及び前記第2対向部の表面と前記支持軸心との間の距離よりも短く設定されることを特徴とする変位検出装置。
【請求項2】
変位検出対象部材に追従して変位する変位部材と、
前記変位部材に設けられ、前記変位部材とともに変位する磁石と、
前記変位部材が挿通する支持孔が設けられ、前記変位部材を変位方向に往復動自在に支持する支持部材と、
前記支持部材に配置され前記磁石の変位に伴う磁界の変化を検出する第1磁気検出部及び第2磁気検出部と、
前記磁石を保持する磁石保持部材と、を備え、
前記第1磁気検出部及び前記第2磁気検出部は、前記支持孔の支持軸心と直交する同一平面上に配置され、
前記変位部材の変位量は、前記第1磁気検出部の検出値と前記第2磁気検出部の検出値とに基づいて算出され
前記磁石は、前記第1磁気検出部に対向して配置される第1磁石と、前記第2磁気検出部に対向して配置される第2磁石と、を有し、
前記磁石保持部材は、前記第1磁石を保持する第1保持部と、前記第2磁石を保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部との間に設けられる非保持部と、を有し、
前記非保持部は、前記第1磁気検出部及び前記第2磁気検出部に対向しない位置に配置されることを特徴とする変位検出装置。
【請求項3】
前記磁石は、前記支持部材の内部に配置され、
前記支持軸心から前記支持部材の外表面までの距離は、前記第1対向部及び前記第2対向部が配置される部分よりも前記非対向部が配置される部分の方が短く設定されることを特徴とする請求項1に記載の変位検出装置。
【請求項4】
前記磁石は、単一体であり、
前記支持軸心を中心として前記第1磁気検出部が配置される位置と前記第2磁気検出部が配置される位置とが成す角度は180°未満に設定されることを特徴とする請求項1または3に記載の変位検出装置。
【請求項5】
前記第1磁気検出部と前記第2磁気検出部とは、前記支持軸心を挟んで対向して配置されることを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載の変位検出装置。
【請求項6】
前記変位部材の前記変位量は、前記第1磁気検出部の前記検出値と前記第2磁気検出部の前記検出値との加算平均値に基づいて算出されることを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載の変位検出装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記支持軸心を中心として前記変位部材が前記支持部材に対して回転することを規制する規制部を有することを特徴とする請求項1から6の何れか1つに記載の変位検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の変位量を検出する変位検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、計測対象物に追従して変位する変位部材に取り付けられる磁石と、磁石に対向して配置される磁気センサと、を備えた変位検出装置が開示されている。この変位検出装置では、計測対象物の変位に応じて磁石の位置が変化し、磁石の位置の変化に伴って磁気センサを通過する磁束の方向や大きさが変化するため、磁気センサの出力値に基づいて計測対象物の変位量を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−95615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の変位検出装置では、磁石が取り付けられる変位部材がケーシングによって片持ち支持されているため、変位検出装置によって計測対象物の変位を検出する際に、変位部材が傾斜し、変位方向と直交する方向における磁気センサと磁石との間隔を変化させるおそれがある。磁気センサの出力値は、磁気センサと磁石との間隔の変化の影響を受けて変化しやすいため、磁気センサと磁石とが近づく方向に変位部材が傾いた状態や磁気センサと磁石とが離れる方向に変位部材が傾いた状態で検出された変位量は、実際の変位量に対して誤差を有することになり、結果として変位検出装置の検出精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、変位検出装置の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、変位検出装置であって、変位検出対象部材に追従して変位する変位部材と、変位部材に設けられ、変位部材とともに変位する磁石と、変位部材が挿通する支持孔が設けられ、変位部材を変位方向に往復動自在に支持する支持部材と、支持部材に配置され磁石の変位に伴う磁界の変化を検出する第1磁気検出部及び第2磁気検出部と、を備え、第1磁気検出部及び第2磁気検出部は、支持孔の支持軸心と直交する同一平面上に配置され、変位部材の変位量は、第1磁気検出部の検出値と第2磁気検出部の検出値とに基づいて算出され、磁石は、第1磁気検出部に対向する第1対向部と、第2磁気検出部に対向する第2対向部と、第1対向部と第2対向部との間に設けられ第1磁気検出部及び第2磁気検出部に対向しない非対向部と、を有し、非対向部の表面と支持軸心との間の距離は、第1対向部の表面と支持軸心との間の距離及び第2対向部の表面と支持軸心との間の距離よりも短く設定されることを特徴とする。また、第2の発明は、変位検出装置であって、変位検出対象部材に追従して変位する変位部材と、変位部材に設けられ、変位部材とともに変位する磁石と、変位部材が挿通する支持孔が設けられ、変位部材を変位方向に往復動自在に支持する支持部材と、支持部材に配置され磁石の変位に伴う磁界の変化を検出する第1磁気検出部及び第2磁気検出部と、磁石を保持する磁石保持部材と、を備え、第1磁気検出部及び第2磁気検出部は、支持孔の支持軸心と直交する同一平面上に配置され、変位部材の変位量は、第1磁気検出部の検出値と第2磁気検出部の検出値とに基づいて算出され、磁石は、第1磁気検出部に対向して配置される第1磁石と、第2磁気検出部に対向して配置される第2磁石と、を有し、磁石保持部材は、第1磁石を保持する第1保持部と、第2磁石を保持する第2保持部と、第1保持部と第2保持部との間に設けられる非保持部と、を有し、非保持部は、第1磁気検出部及び第2磁気検出部に対向しない位置に配置されることを特徴とする。
【0007】
第1及び第2の発明では、変位部材の変位量が、支持軸心と直交する同一平面上に配置される第1磁気検出部と第2磁気検出部との検出値に基づいて算出される。第1磁気検出部と第2磁気検出部とは、同一平面上に配置されるため、変位部材が支持部材に対して傾いたとしても第1磁気検出部の検出値に含まれる誤差と第2磁気検出部の検出値に含まれる誤差とは互いに異なる値となる。したがって、共に誤差を有する第1磁気検出部の検出値と第2磁気検出部の検出値との2つの値に基づいて変位部材の変位量を算出することで誤差が低減された変位量を得ることができる。
【0008】
第3の発明は、磁石が、支持部材の内部に配置され、支持軸心から支持部材の外表面までの距離は、第1対向部及び第2対向部が配置される部分よりも非対向部が配置される部分の方が短く設定されることを特徴とする。
【0009】
第3の発明では、磁石が支持部材の内部に配置され、支持軸心から支持部材の外表面までの距離が、第1対向部及び第2対向部が配置される部分よりも非対向部が配置される部分の方が短く設定される。このように、非対向部が配置される部分、すなわち、第1磁気検出部及び第2磁気検出部が設けられない部分における支持部材の厚さを薄くすることで変位検出装置を小型化することができる。
【0010】
第4の発明は、磁石が、単一体であり、支持軸心を中心として第1磁気検出部が配置される位置と第2磁気検出部が配置される位置とが成す角度は180°未満に設定されることを特徴とする。
【0011】
第4の発明では、磁石が単一体であり、磁石に対向する第1磁気検出部と第2磁気検出部とが、支持軸心を中心としてそれぞれの位置が成す角度が180°未満に設定される。このため、変位部材が支持部材に対して傾斜し、第1磁気検出部及び第2磁気検出部と磁石との間隔が変化した場合、第1磁気検出部の出力値の誤差と第2磁気検出部の出力値の誤差との何れか一方の誤差は、磁気検出部が1つだけ設けられる場合に磁気検出部の検出値に含まれる誤差と比較し小さい値となる。したがって、第1磁気検出部の検出値と第2磁気検出部の検出値との2つの値に基づいて変位部材の変位量を算出することで誤差を低減させることが可能となり、結果として、変位検出装置の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0012】
第5の発明は、第1磁気検出部と第2磁気検出部とが、支持軸心を挟んで対向して配置されることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第1磁気検出部と第2磁気検出部とが、支持軸心を挟んで対向して配置される。このため、変位部材が支持部材に対して傾斜し、第1磁気検出部及び第2磁気検出部と磁石との間隔が変化した場合、第1磁気検出部の出力値と第2磁気検出部の出力値とはそれぞれ正負の符号が異なる誤差を有することになる。したがって、第1磁気検出部の検出値と第2磁気検出部の検出値との2つの値に基づいて変位部材の変位量を算出することで誤差を相殺させることが可能となり、結果として、変位検出装置の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0014】
第6の発明は、変位部材の変位量が、第1磁気検出部の検出値と第2磁気検出部の検出値との加算平均値に基づいて算出されることを特徴とする。
【0015】
第6の発明では、第1磁気検出部の検出値と第2磁気検出部の検出値との加算平均値に基づいて変位部材の変位量が算出される。このように共に誤差を有する第1磁気検出部の検出値と第2磁気検出部の検出値とを加算し、その平均値を算出することで、誤差が除去ないし低減された変位部材の変位量を得ることができ、結果として、変位検出装置の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0020】
第7の発明は、支持部材は、支持軸心を中心として変位部材が支持部材に対して回転することを規制する規制部を有することを特徴とする。
【0021】
第7の発明では、支持軸心を中心として変位部材が支持部材に対して回転することが規制部により規制される。このため、変位部材に取り付けられた磁石が支持軸心を中心に回転することが防止され、第1対向部及び第2対向部が第1磁気検出部及び第2磁気検出部に対向した状態に保持される。この結果、第1磁気検出部及び第2磁気検出部の出力値に誤差が生じることが抑制され、結果として変位検出装置の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、変位検出装置の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る変位検出装置の断面図である。
図2図1のII−II線に沿う断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る変位検出装置の変形例の断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る変位検出装置の断面図である。
図5図4のV−V線に沿う断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る変位検出装置の変形例の断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る変位検出装置の断面図である。
図8図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る変位検出装置の断面図である。
図10図9のX−X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る変位検出装置100について説明する。
【0026】
変位検出装置100は、スプール弁等の弁体を備える弁装置に取り付けられ、弁体の変位量(ストローク量)を検出するものである。
【0027】
変位検出装置100は、変位検出対象部材である弁装置の弁体等に追従して変位する変位部材としてのロッド部材22と、ロッド部材22の一端側に配置されロッド部材22とともに変位する磁石24と、ロッド部材22を変位方向に往復動自在に支持する支持部材としてのケーシング12と、ケーシング12内に配置されロッド部材22を変位検出対象部材に向けて付勢する付勢部材としてのバネ27と、磁石24の変位方向と直交する方向において磁石24に対向するようにケーシング12に配置される第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と、を備える。
【0028】
ケーシング12は、真鍮等の非磁性材により形成される有底筒状部材であり、円筒状の円筒部12aと、円筒部12aの一端側に設けられる底部12bと、円筒部12aの内部に形成される収容部12cと、を有する。収容部12cには、磁石24とともに磁石24が配置されるロッド部材22の一部が収容される。
【0029】
円筒部12aには、収容部12cを挟んで対向して配置される第1固定孔12e及び第2固定孔12fが形成される。第1固定孔12e及び第2固定孔12fは、円筒部12aの外周面に開口し収容部12cに向かって形成される非貫通の段付き孔である。第1固定孔12e内には第1磁気検出部32が固定され、第2固定孔12f内には第2磁気検出部33が固定される。
【0030】
また、底部12bには、ロッド部材22が挿通する支持孔12dが形成される。支持孔12dには、ロッド部材22を摺動自在に支持するブッシュ18が軸方向に離間して2カ所に設けられる。ロッド部材22を支持するブッシュ18が2カ所に設けられることで、ケーシング12に片持ち支持されるロッド部材22の軸心が支持孔12dの軸心である支持軸心Oに対して傾くことをある程度抑制することができる。ブッシュ18は、1カ所に設けられてもよく、この場合、ケーシング12の軸方向長さを短縮させることができる。
【0031】
ロッド部材22は、ブッシュ18を介してケーシング12により摺動自在に支持される円柱状の軸部22aと、軸部22aの先端に形成される半球状の接触部22bと、軸部22aの基端に形成され軸部22aの径方向外側に向かって延びるフランジ部22cと、を有する。フランジ部22cには、軸部22aとは反対側に延びる円柱状の保持部22dが軸部22aと同軸上に設けられる。なお、設計上では、ロッド部材22の軸心と支持孔12dの支持軸心Oとが同軸上に配置されるように、ロッド部材22はケーシング12により支持される。つまり、ロッド部材22の軸心は、支持軸心Oに一致する。
【0032】
ロッド部材22は、ケーシング12と同様に非磁性材により形成されるが、接触部22bには、スプール弁等の弁体が当接するため、ある程度の硬度を有するオーステナイト系ステンレス鋼等により形成されることが好ましい。
【0033】
磁石24は、NdやSm等の希土類元素を含む永久磁石であり、N極24aとS極24bとが保持部22dの軸方向に並ぶように、保持部22dの外周に配置される。磁石24は、保持部22dが挿通する挿通孔24cを有し、挿通孔24cから突き出た保持部22dの端部にC字状の止め輪26が係止されることにより保持部22dに対して固定される。
【0034】
また、磁石24と止め輪26との間には弾性変形する部材により形成される緩衝材25が設けられる。このため、保持部22dに磁石24が組み付けられる際に緩衝材25が変形し、磁石24は、緩衝材25の復元力によってフランジ部22cに押し付けられた状態となる。したがって、磁石24は、軸方向に遊びを有することなく、ロッド部材22に対して所定の位置に固定されることになる。また、組み付け時に磁石24に作用する力は緩衝材25によって吸収されるため、組み付け時に磁石24が破損することを防止することができる。
【0035】
また、図2に示すように、磁石24は、第1磁気検出部32に対向する第1対向部24dと、第2磁気検出部33に対向する第2対向部24eと、第1対向部24dと第2対向部24eとの間に設けられ第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない非対向部24fと、を有する。第1対向部24dの表面と支持軸心Oとの間の距離である第1距離L1は、第2対向部24eの表面と支持軸心Oとの間の距離と同じ距離に設定されており、非対向部24fの表面と支持軸心Oとの間の距離である第2距離L2は、第1距離L1よりも短く設定される。
【0036】
換言すると、磁石24は、円筒状部材の側面が軸方向に沿って平行に切除された形状となっている。このため、磁石24の径方向における断面を見ると、図2に示すように、第1対向部24dの表面及び第2対向部24eの表面は、支持孔12dの支持軸心Oを中心とする円弧状に形成され、対向する2つの非対向部24fの表面は平行に形成される。
【0037】
このように、磁石24は、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない部分であって、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33を通過する磁界にあまり影響を及ぼさない部分が除去された形状に形成される。この結果、磁石24の体積が減り、高価な希土類元素の使用量が減少するため変位検出装置100の製造コストを低減させることができる。
【0038】
また、フランジ部22c及び収容部12cの断面形状も磁石24の断面形状に合せて形成される。このため、フランジ部22cには、支持軸心Oを挟んで互いに平行な平行面22eが形成され、収容部12cには、フランジ部22cの平行面22eが摺接可能な支持面12gが軸方向に沿って互いに平行に形成される。
【0039】
このように、フランジ部22cの平行面22eは収容部12cの支持面12gによって摺動支持されるため、ロッド部材22及びロッド部材22に取り付けられた磁石24が支持軸心Oを中心に回転することが防止される。この結果、第1対向部24d及び第2対向部24eは第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向した状態に保持される。
【0040】
つまり、支持面12gは、支持軸心Oを中心としてロッド部材22がケーシング12に対して回転することを規制する規制部として機能し、平行面22eは、被規制部として機能する。なお、規制部としては、上記構成に限定されず、支持面12gを一方のみに設け、フランジ部22cの2つの平行面22eのうちの一方のみを摺動支持するようにしてもよい。また、ケーシング12に対してロッド部材22が回転することを制限可能な構成であればどのような構成であってもよく、例えば、ロッド部材22に径方向に突出した突出部を設け、この突出部をケーシング12に軸方向に沿って形成された溝により保持した構成であってもよい。
【0041】
磁石24及び磁石24が組み付けられるロッド部材22の一部が収容部12c内に収容された状態で、収容部12cの開口端には、蓋部材14が挿入固定される。蓋部材14は、ケーシング12と同様に真鍮等の非磁性材により形成される。蓋部材14と収容部12cとの間には図示しないシール部材が設けられ、シール部材により収容部12cの内部と外部との連通が遮断される。蓋部材14の固定方法としては、圧入や螺合といった一般的な固定方法が用いられる。また、蓋部材14とは別の部材をケーシング12に組み付けることにより、蓋部材14をケーシング12に対して押付固定する構成としてもよい。
【0042】
バネ27は、オーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性材で形成されたコイルスプリングであり、緩衝材25と蓋部材14との間に圧縮された状態で組み付けられる。このため、接触部22bが変位検出対象部材に当接しているとき、ロッド部材22は、バネ27の付勢力により変位検出対象部材に向けて押圧され、接触部22bと変位検出対象部材とが互いに離れることが防止される。つまり、バネ27が設けられることで、ロッド部材22は、変位検出対象部材に追従して変位することが可能となる。なお、接触部22bが変位検出対象部材に当接していないとき、ロッド部材22は、バネ27の付勢力により押圧され、フランジ部22cが底部12bに当接した状態となる。
【0043】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33は、それぞれ磁石24の変位に伴う磁界の変化に応じた出力値を出力する図示しないホール素子や磁気抵抗素子等の磁気センサと、磁気センサの出力値を処理する図示しない増幅回路等の処理回路と、を有する。第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33は、磁気センサの出力値に基づいて演算されたロッド部材22の変位量、すなわち、ロッド部材22に当接する変位検出対象部材の変位量に相当する検出値を出力する。
【0044】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33は、それぞれ第1基板34及び第2基板35に実装されており、第1基板34及び第2基板35が円筒部12aに形成された第1固定孔12e及び第2固定孔12fの段部にそれぞれ固定されることで、ケーシング12に組み付けられる。
【0045】
また、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33は、図1及び図2に示すように、支持軸心Oと直交する平面P上に共に配置されるとともに、支持軸心Oを挟んで対向して配置されている。
【0046】
このように、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とは、支持軸心Oを挟んで対向して配置されるため、ロッド部材22がケーシング12に対して傾斜し、ロッド部材22の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32と磁石24との間隔が狭まれば、第2磁気検出部33と磁石24との間隔は拡がることになる。つまり、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と磁石24との間隔が変化することで第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力にそれぞれ誤差が生じたとしても、第1磁気検出部32の出力に生じる誤差と第2磁気検出部33の出力に生じる誤差とは相反し、一方の誤差がプラス側であれば、他方の誤差はマイナス側となり、正負の符号が異なる。したがって、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が除去された出力値が得られる。
【0047】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が第1固定孔12e及び第2固定孔12f内にそれぞれ配置された状態で、円筒部12aの外周には、第1固定孔12e及び第2固定孔12fを覆うようにして円筒状の磁気シールド16が組み付けられる。磁気シールド16は磁気を遮断可能な鉄系合金等の軟磁性材により形成され、変位検出装置100の外部の磁気が第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に影響を及ぼすことを抑制している。また、磁気シールド16には図示しない切欠部が形成され、この切欠部を通じて弁体等の変位検出対象部材の作動を制御する図示しないコントローラと第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33とを接続する図示しないリード線が配索される。
【0048】
次に、上記構成の変位検出装置100による変位検出対象部材の変位量の検出について説明する。
【0049】
変位検出対象部材の変位は、変位検出対象部材が当接するロッド部材22を介して変位検出装置100に伝達される。
【0050】
変位検出装置100内では、ロッド部材22が支持軸心Oに沿って変位すると、磁石24も変位し、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33を通過する磁束の方向や大きさが変化する。そして、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33を通過する磁束の方向や大きさの変化に応じて第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値が変化する。したがって、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に基づいてロッド部材22の変位量、すなわち、変位検出対象部材の変位量を検出することができる。
【0051】
一方で、ロッド部材22は、ケーシング12により片持ち支持されているため、支持軸心Oに対して傾くおそれがある。以下ではロッド部材22が支持軸心Oに対して傾いた場合の変位検出対象部材の変位量の検出について説明する。
【0052】
第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とは、支持軸心Oを挟んで対向して配置されているため、ロッド部材22が支持軸心Oに対して傾くことで、ロッド部材22の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32と磁石24との間隔が狭まると、第2磁気検出部33と磁石24との間隔は拡がる。このため、第1磁気検出部32の出力値は、ロッド部材22の傾斜により磁石24が近づいた分だけ増加し、第2磁気検出部33の出力値は、ロッド部材22の傾斜により磁石24が離れた分だけ減少する。
【0053】
つまり、第1磁気検出部32の出力値はプラス側に誤差を有し、第2磁気検出部33の出力値はマイナス側に誤差を有することとなる。したがって、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が相殺された出力値を得ることができる。
【0054】
このように、変位検出装置100では、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とが支持軸心Oを挟んで対向して配置されているため、ロッド部材22がケーシング12により片持ち支持されている構成であったとしても、誤差が低減された出力値を得ることが可能となり、結果として変位検出装置100の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0055】
また、変位検出装置100では、第1対向部24dの表面及び第2対向部24eの表面が支持軸心Oを中心とする円弧状に形成されている。このため、変位検出対象部材の変位量を検出する際に、仮にロッド部材22が支持軸心Oを中心として周方向にずれたとしてもロッド部材22の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と磁石24との間隔はほとんど変化しない。したがって、ロッド部材22が多少回動したとしても第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に誤差が生じることが抑制され、結果として変位検出装置100の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0056】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0057】
変位検出装置100では、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が、支持孔12dの支持軸心Oと直交する平面P上に共に配置されるとともに、支持孔12dの支持軸心Oを挟んで対向して配置されている。このため、例えば、ロッド部材22がケーシング12に対して傾斜し、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と磁石24との間隔が変化したとしても、第1磁気検出部32の出力値に生じる誤差と第2磁気検出部33の出力値に誤差とは、正負の符号が異なることになる。
【0058】
したがって、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が除去された出力値を得ることが可能となる。この結果、変位検出装置100の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0059】
なお、変位検出装置100では、第1対向部24dの表面及び第2対向部24eの表面が支持軸心Oを中心とする円弧状に形成されているが、これに限定されず、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向するこれらの表面は平面状であってもよい。
【0060】
続いて、図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る変位検出装置100の変形例について説明する。
【0061】
上記第1実施形態では、ケーシング12は、円筒部12aを有する有底筒状部材である。これに代えて、図3に示すように、ケーシング12は、角筒状の角筒部12hを有する直方体状部材である。
【0062】
上述のように上記第1実施形態では、磁石24は、支持軸心Oから表面までの距離が短い非対向部24fを有する。このことから、変形例のように、支持軸心Oからケーシング12の外表面までの距離について、第1対向部24d及び第2対向部24eが配置される部分における第3距離L3よりも非対向部24fが配置される部分における第4距離L4を短く設定することが可能である。
【0063】
このように、支持軸心Oに直交する平面におけるケーシング12の断面形状を矩形状とすることで、非対向部24fが配置される部分、すなわち、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が設けられない部分におけるケーシング12の厚さを薄くすることができる。この結果、変位検出装置100を小型化することができる。
【0064】
また、図3の断面図に示すように、変位検出装置100では、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とが、ロッド部材22を挟んで対向して配置される。つまり、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とロッド部材22とは一直線上に配置されることになるため、変位検出装置100の形状は、支持軸心Oに直交する平面で見ると縦長の長方形状となる。このように、ケーシング12の不要な部分を除去することで変位検出装置100を薄型でコンパクトな形状とすることができる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る変位検出装置200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0066】
変位検出装置200の基本的な構成は、第1実施形態に係る変位検出装置100と同様である。変位検出装置200は、図4及び図5に示すように、支持軸心Oを中心として第1磁気検出部32が配置される位置と第2磁気検出部33が配置される位置とが成す配置角度θが180°未満のである点で変位検出装置100と相違する。
【0067】
変位検出装置200は、変位検出対象部材に追従して変位するロッド部材122と、ロッド部材122の一端側に配置されロッド部材122とともに変位する磁石124と、ロッド部材122を変位方向に往復動自在に支持するケーシング112と、ケーシング112内に配置されロッド部材122を変位検出対象部材に向けて付勢するバネ27と、磁石124に対向するようにケーシング112に配置される第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と、を備える。
【0068】
ケーシング112は、真鍮等の非磁性材により形成される有底筒状部材であり、円筒状の円筒部112aと、円筒部112aの一端側に設けられる底部112bと、円筒部112aの内部に形成される収容部112cと、を有する。収容部112cには、磁石124とともに磁石124が配置されるロッド部材122の一部が収容される。
【0069】
円筒部112aには、上記第1実施形態と同様に、第1磁気検出部32が配置される第1固定孔112eと、第2磁気検出部33が配置される第2固定孔112fと、が設けられる。しかし、第1固定孔112eと第2固定孔112fとは、上記第1実施形態とは異なり、図5に示すように、支持軸心Oを中心としてそれぞれの位置が成す配置角度θが90°となるように形成される。
【0070】
また、底部112bには、上記第1実施形態と同様に、ロッド部材122が挿通する支持孔112dが形成され、支持孔112dには、ロッド部材122を摺動自在に支持するブッシュ18が設けられる。
【0071】
ロッド部材122は、ブッシュ18を介してケーシング112により摺動自在に支持される円柱状の軸部122aと、軸部122aの先端に形成される半球状の接触部122bと、軸部122aの基端に形成されるフランジ部122cと、を有する。フランジ部122cには、軸部122aとは反対側に延びる円柱状の保持部122dが軸部122aと同軸上に設けられる。
【0072】
磁石124は、上記第1実施形態と同様に、希土類元素を含む永久磁石であり、N極124aとS極124bとが保持部122dの軸方向に並ぶように、保持部122dの外周に配置される。磁石124は、保持部122dが挿通する挿通孔124cを有し、挿通孔124cから突き出た保持部122dの端部にC字状の止め輪26が係止されることにより保持部22dに対して固定される。
【0073】
また、図5に示すように、磁石124は、第1磁気検出部32に対向する第1対向部124dと、第2磁気検出部33に対向する第2対向部124eと、第1対向部124dと第2対向部124eとの間に設けられ第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない非対向部124fと、を有する単一体である。
【0074】
第1対向部124dの表面と支持軸心Oとの間の距離である第1距離L1は、第2対向部124eの表面と支持軸心Oとの間の距離と同じ距離に設定されており、非対向部124fの表面と支持軸心Oとの間の距離である第2距離L2は、第1距離L1よりも短く設定されている。
【0075】
上記第1実施形態では、第1対向部24dと第2対向部24eとは支持孔12dの支持軸心Oを挟んで対向して配置されているが、本実施形態では、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の位置に合せて第1対向部124dと第2対向部124eとは隣接して設けられる。
【0076】
換言すると、磁石124は、円筒状部材の一側面側が、挿通孔124cの周辺を残して軸方向に沿って切除された形状となっている。このため、磁石124の径方向における断面を見ると、図5に示すように、第1対向部124dの表面及び第2対向部124eの表面は、支持孔112dの支持軸心Oを中心とする円弧状に形成される。一方、非対向部124fの表面は、図5に示すように、複数の直線、例えば3つの直線を組み合わせた形状に形成される。
【0077】
このように、磁石124は、上記第1実施形態と同様に、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない部分であって、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33を通過する磁界にあまり影響を及ぼさない部分が除去された形状に形成される。なお、非対向部124fの表面の形状は、上記形状に限定されず、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33を通過する磁界にあまり影響を及ぼさない部分の磁石124を効率的に除去することができればどのような形状であってもよい。
【0078】
また、フランジ部122c及び収容部112cの断面形状も磁石124の断面形状に合せて形成される。このため、フランジ部122cには、支持軸心Oを挟んで第1対向部124d及び第2対向部124eと対向する位置に非対向部124fの形状に合せて傾斜面122eが形成される。一方、収容部112cには、フランジ部122cの傾斜面122eが摺接可能な支持面112gが軸方向に沿って形成される。
【0079】
このように、フランジ部122cの傾斜面122eは収容部112cの支持面112gによって摺動支持されるため、ロッド部材122及びロッド部材122に取り付けられた磁石124が支持軸心Oを中心に回転することが防止される。この結果、第1対向部124d及び第2対向部124eは第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向した状態に保持される。
【0080】
つまり、支持面112gは、支持軸心Oを中心としてロッド部材122がケーシング112に対して回転することを規制する規制部として機能し、傾斜面122eは、被規制部として機能する。なお、規制部としては、上記構成に限定されず、ケーシング112に対してロッド部材122が回転することを制限可能な構成であればどのような構成であってもよい。
【0081】
磁石124及び磁石124が組み付けられるロッド部材122の一部が収容部112c内に収容された状態で、収容部112cの開口端には、蓋部材14が挿入固定され、緩衝材25と蓋部材14との間にバネ27が圧縮された状態で組み付けられる。
【0082】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の構成は、上記第1実施形態と同じであるためその説明を省略する。
【0083】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33は、図4及び図5に示すように、支持孔12dの支持軸心Oと直交する平面P上に共に配置されるとともに、支持軸心Oを中心として第1磁気検出部32が配置される位置と第2磁気検出部33が配置される位置とが成す配置角度θが90°となるように配置されている。
【0084】
このため、例えば、ロッド部材22の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32と磁石24との間隔が変化するようにロッド部材22がケーシング12に対して傾斜したとしても、第2磁気検出部33と磁石24との間隔は変化しない。つまり、第1磁気検出部32の出力に誤差が生じる場合であっても第2磁気検出部33の出力には誤差が生じないことになる。したがって、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が低減された出力値が得られる。
【0085】
また、例えば、第1磁気検出部32と磁石24との間隔と第2磁気検出部33と磁石24との間隔との両方の間隔が変化するようにロッド部材22がケーシング12に対して傾斜した場合、磁気検出部が1つだけ設けられ、この磁気検出部と磁石24との間隔のみが変化するようにロッド部材22がケーシング12に対して傾斜した場合と比較し、間隔の変化は小さくなる。つまり、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に生じる誤差も磁気検出部が1つだけ設けられる場合に生じる誤差よりも小さくなる。したがって、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が低減された出力値が得られる。
【0086】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が第1固定孔112e及び第2固定孔112f内にそれぞれ配置された状態で、円筒部112aの外周には、第1固定孔112e及び第2固定孔112fを覆うようにして円筒状の磁気シールド16が組み付けられる。
【0087】
次に、上記構成の変位検出装置200による変位検出対象部材の変位量の検出について説明する。
【0088】
変位検出装置200においても上記第1実施形態と同様にして、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に基づいてロッド部材122の変位量、すなわち、変位検出対象部材の変位量を検出することができる。
【0089】
一方で、ロッド部材122は、上記第1実施形態と同様に、ケーシング112により片持ち支持されているため、支持軸心Oに対して傾くおそれがある。以下ではロッド部材122が支持軸心Oに対して傾いた場合の変位検出対象部材の変位量の検出について説明する。
【0090】
第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とは、支持軸心Oを中心としてそれぞれの位置が成す配置角度θが90°となるように配置されている。このため、ロッド部材122の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32と磁石124との間隔のみが狭まるようにロッド部材122が支持軸心Oに対して傾いた場合、第2磁気検出部33と磁石124との間隔は変化しない。このため、第1磁気検出部32の出力値は、ロッド部材122の傾斜により磁石124が近づいた分だけ増加するが、第2磁気検出部33の出力値は、ロッド部材122の傾斜によって変化することはない。
【0091】
つまり、この場合には、第1磁気検出部32の出力値は誤差を有するが、第2磁気検出部33の出力値は誤差を有さない状態となる。したがって、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が低減された出力値を得ることができる。
【0092】
また、第1磁気検出部32と磁石124との間隔と第2磁気検出部33と磁石124との間隔との両方の間隔が変化するようにロッド部材122が支持軸心Oに対して傾いた場合、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とは、それぞれの間隔の変化に応じた誤差を有することになる。しかし、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とは、支持軸心Oを中心としてそれぞれの位置が成す配置角度θが90°となるように配置されている。このため、両方の間隔を変化させた場合のそれぞれの間隔の変化は、磁気検出部が1つだけ設けられ、この磁気検出部と磁石124との間隔を変化させるようにロッド部材122を傾けた場合の間隔の変化と比較して小さくなる。
【0093】
つまり、この場合には、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値はともに誤差を有することになるが、この誤差は、磁気検出部が1つだけ設けられ、この磁気検出部と磁石124との間隔を変化させるようにロッド部材122を傾けた場合に生じる誤差よりも小さい。したがって、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が低減された出力値を得ることができる。
【0094】
このように、変位検出装置200では、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とが、支持軸心Oを中心としてそれぞれの位置が成す配置角度θが90°となるように配置されているため、ロッド部材122がケーシング112により片持ち支持されている構成であったとしても、誤差が低減された出力値を得ることが可能となり、結果として変位検出装置200の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0095】
また、変位検出装置200では、上記第1実施形態と同様に、第1対向部124dの表面及び第2対向部124eの表面が支持軸心Oを中心とする円弧状に形成されている。このため、変位検出対象部材の変位量を検出する際に、仮にロッド部材122が支持軸心Oを中心として周方向にずれたとしてもロッド部材122の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と磁石124との間隔はほとんど変化しない。したがって、ロッド部材122が多少回動したとしても第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に誤差が生じることが抑制され、結果として変位検出装置200の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0096】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0097】
変位検出装置200では、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が、支持孔112dの支持軸心Oと直交する平面P上に共に配置されるとともに、支持軸心Oを中心としてそれぞれの位置が成す配置角度θが90°となるように配置されている。このため、例えば、ロッド部材122がケーシング112に対して傾斜し、第1磁気検出部32と磁石124との間隔のみが変化した場合には、第1磁気検出部32の出力値には誤差が生じるが、第2磁気検出部33の出力値には誤差が生じることはない。
【0098】
したがって、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が低減された出力値を得ることが可能となる。この結果、変位検出装置200の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0099】
なお、変位検出装置200では、配置角度θが90°に設定されているが、これに限定されず、配置角度θは、90°よりも大きく180°未満であってもよいし、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とが隣接して配置することができれば、90°よりも小さい角度に設定されてもよい。
【0100】
このように配置角度θが90°未満または90°よりも大きく180°未満に設定される場合も配置角度θが90°に設定される場合と同様に、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が低減された出力値を得ることができる。具体的には、第1磁気検出部32と磁石124との間隔と第2磁気検出部33と磁石124との間隔との両方の間隔が同じ方向に変化するようにロッド部材122が支持軸心Oに対して傾いた場合、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とは、それぞれの間隔の変化に応じた誤差を有することになる。しかし、両方の間隔を同じ方向に変化させた場合、何れか一方の間隔の変化は、磁気検出部が1つだけ設けられ、この磁気検出部と磁石124との間隔を変化させるようにロッド部材122を傾けた場合の間隔の変化と比較して小さくなる。
【0101】
つまり、この場合には、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値はともに誤差を有することになるが、何れか一方の誤差は、磁気検出部が1つだけ設けられ、この磁気検出部と磁石124との間隔を変化させるようにロッド部材122を傾けた場合に生じる誤差よりも小さい。したがって、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とを加算して平均すれば、誤差が低減された出力値を得ることができる。
【0102】
また、変位検出装置200では、第1対向部124dの表面及び第2対向部124eの表面が支持軸心Oを中心とする円弧状に形成されているが、これに限定されず、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向するこれらの表面は平面状であってもよい。
【0103】
続いて、図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る変位検出装置200の変形例について説明する。
【0104】
上記第2実施形態では、ケーシング112は、円筒部112aを有する有底筒状部材である。これに代えて、図6に示すように、ケーシング112は、角筒状の角筒部112hを有する直方体状部材である。
【0105】
上述のように磁石124は、支持軸心Oから表面までの距離が短い非対向部124fを有する。このことから、変形例のように、支持軸心Oからケーシング112の外表面までの距離について、第1対向部124d及び第2対向部124eが配置される部分における第3距離L3よりも非対向部124fが配置される部分における第4距離L4を短く設定することが可能である。
【0106】
このように、支持軸心Oに直交する平面におけるケーシング112の断面形状を矩形状とすることで、非対向部124fが配置される部分、すなわち、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が設けられない部分におけるケーシング112の厚さを薄くすることができる。この結果、変位検出装置200を小型化することができる。
【0107】
また、配置角度θを変更し、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33との配置を変更すれば、非対向部124fの位置が変わり変位検出装置200の外形形状を変更することができる。このように、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33との配置の自由度が向上することで、変位検出装置200の周辺に配置される部品等との干渉を考慮し、変位検出装置200の外形形状を適宜変更することも可能となる。
【0108】
<第3実施形態>
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第3実施形態に係る変位検出装置300について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0109】
変位検出装置300の基本的な構成は、第1実施形態に係る変位検出装置100と同様である。変位検出装置300は、図7及び図8に示すように、磁石224が磁石保持部材223を介してロッド部材222に組み付けられている点で変位検出装置100と相違する。
【0110】
変位検出装置300は、変位検出対象部材に追従して変位するロッド部材222と、ロッド部材222の一端側に配置されロッド部材222とともに変位する磁石224と、ロッド部材222を変位方向に往復動自在に支持するケーシング212と、ケーシング212内に配置されロッド部材222を変位検出対象部材に向けて付勢するバネ27と、磁石224に対向するようにケーシング212に配置される第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と、を備える。
【0111】
ケーシング212は、真鍮等の非磁性材により形成される有底筒状部材であり、円筒状の円筒部212aと、円筒部212aの一端側に設けられる底部212bと、円筒部212aの内部に形成される収容部212cと、を有する。収容部212cには、磁石224とともに磁石224が配置されるロッド部材222の一部が収容される。
【0112】
円筒部212aには、上記第1実施形態と同様に、第1磁気検出部32が配置される第1固定孔212eと、第2磁気検出部33が配置される第2固定孔212fと、が支持軸心Oを挟んで対向して設けられる。
【0113】
また、底部212bには、上記第1実施形態と同様に、ロッド部材222が挿通する支持孔212dが形成され、支持孔212dには、ロッド部材222を摺動自在に支持するブッシュ18が設けられる。
【0114】
ロッド部材222は、ブッシュ18を介してケーシング212により摺動自在に支持される円柱状の軸部222aと、軸部222aの先端に形成される半球状の接触部222bと、軸部222aの基端に形成されるフランジ部222cと、を有する。フランジ部222cには、軸部222aとは反対側に延びる円柱状の保持部222dが軸部222aと同軸上に設けられる。
【0115】
磁石224は、上記第1実施形態と同様に、希土類元素を含む永久磁石であり、N極224aとS極224bとがロッド部材222の軸方向に並ぶように配置される。また、磁石224は、第1磁気検出部32に対向して配置される第1磁石224dと、第2磁気検出部33に対向して配置される第2磁石224eと、を有する。上記第1実施形態では、磁石24は、保持部22dの外周に直接組み付けられているが、本実施形態では、磁石224は、磁石224を保持する磁石保持部材223を介して保持部222dに組み付けられる。
【0116】
磁石保持部材223は、樹脂等の非磁性材により形成される円柱状の部材であり、軸心には、保持部122dが挿通する挿通孔223aが形成されている。磁石保持部材223の外周面には、第1磁石224dを保持する第1保持部223bと、第2磁石224eを保持する第2保持部223cと、が溝状に切り欠いて形成される。第1保持部223bと第2保持部223cとは支持軸心Oを挟んで対向して設けられ、第1保持部223bと第2保持部223cとの間には、磁石224が配置されない非保持部223dが設けられる。
【0117】
磁石保持部材223に第1磁石224dと第2磁石224eとが組み付けられた状態で、挿通孔223aに保持部222dを挿通し、挿通孔223aから突き出た保持部222dの端部にC字状の止め輪26が係止されることにより磁石224は、ロッド部材222に対して固定される。
【0118】
なお、磁石224と磁石保持部材223とは、射出成型により一体的に形成されてもよく、この場合、樹脂からなる磁石保持部材223が入り込む溝等を磁石224に設けることで、磁石保持部材223から磁石224が外れることを防止することができる。また、磁石保持部材223は、ロッド部材222と一体的に形成されてもよい。
【0119】
また、図示しない規制部により支持軸心Oを中心としてロッド部材222がケーシング212に対して回転することが規制されるため、磁石保持部材223及び磁石224は、図8に示すように、第1磁石224dが第1磁気検出部32に対向し、第2磁石224eが第2磁気検出部33に対向し、非保持部223dが第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない状態に保持される。
【0120】
このように、磁石224は、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向する位置のみに設けられ、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない部分には配置されない。したがって、磁石224の体積が減り、高価な希土類元素の使用量が減少するため変位検出装置300の製造コストを低減させることができる。
【0121】
また、第1磁気検出部32に対向する第1磁石224dの対向面及び第2磁気検出部33に対向する第2磁石224eの対向面は、上記第1実施形態と同様に、支持軸心Oを中心とする円弧状に形成されている。このため、変位検出対象部材の変位量を検出する際に、仮にロッド部材222が支持軸心Oを中心として周方向にずれたとしてもロッド部材222の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と磁石224との間隔はほとんど変化しない。したがって、ロッド部材222が多少回動したとしても第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に誤差が生じることが抑制され、結果として変位検出装置300の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0122】
磁石224、磁石保持部材223及び磁石保持部材223が組み付けられるロッド部材222の一部が収容部212c内に収容された状態で、収容部212cの開口端には、蓋部材14が挿入固定され、緩衝材25と蓋部材14との間にバネ27が圧縮された状態で組み付けられる。
【0123】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の構成及び配置は、上記第1実施形態と同じであるためその説明を省略する。
【0124】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が第1固定孔212e及び第2固定孔212f内にそれぞれ配置された状態で、円筒部212aの外周には、第1固定孔212e及び第2固定孔212fを覆うようにして円筒状の磁気シールド16が組み付けられる。
【0125】
上記構成の変位検出装置300による変位検出対象部材の変位量の検出については、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が同じ位置に配置される上記第1実施形態と同じであるためその説明を省略する。
【0126】
以上の第3実施形態によれば、上記第1実施形態における効果に加えて以下に示す効果を奏する。
【0127】
変位検出装置300では、磁石224は、磁石保持部材223を介してロッド部材222に組み付けられ、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が配置されない部分には、磁石保持部材223の非保持部223dが配置される。つまり、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が配置されない部分には、磁石224が対向して配置されない。したがって、磁石224の体積が減り、高価な希土類元素の使用量が減少するため変位検出装置300の製造コストを低減させることができる。
【0128】
<第4実施形態>
次に、図9及び図10を参照して、本発明の第4実施形態に係る変位検出装置400について説明する。以下では、第2実施形態と異なる点を中心に説明し、第2実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0129】
変位検出装置400の基本的な構成は、第2実施形態に係る変位検出装置200と同様である。変位検出装置400は、図9及び図10に示すように、磁石324が磁石保持部材323を介してロッド部材322に組み付けられている点で変位検出装置200と相違する。
【0130】
変位検出装置400は、変位検出対象部材に追従して変位するロッド部材322と、ロッド部材322の一端側に配置されロッド部材322とともに変位する磁石324と、ロッド部材322を変位方向に往復動自在に支持するケーシング312と、ケーシング312内に配置されロッド部材322を変位検出対象部材に向けて付勢するバネ27と、磁石324に対向するようにケーシング312に配置される第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と、を備える。
【0131】
ケーシング312は、上記第2実施形態と同様に、真鍮等の非磁性材により形成される有底筒状部材であり、円筒状の円筒部312aと、円筒部312aの一端側に設けられる底部312bと、円筒部312aの内部に形成される収容部312cと、を有する。収容部312cには、磁石324とともに磁石324が配置されるロッド部材322の一部が収容される。
【0132】
円筒部312aには、第1磁気検出部32が配置される第1固定孔312eと、第2磁気検出部33が配置される第2固定孔312fと、が設けられる。第1固定孔312eと第2固定孔312fとは、上記第2実施形態と同様に、支持軸心Oを中心としてそれぞれの位置が成す配置角度θが90°となるように形成される。
【0133】
また、底部312bには、上記第2実施形態と同様に、ロッド部材322が挿通する支持孔312dが形成され、支持孔312dには、ロッド部材322を摺動自在に支持するブッシュ18が設けられる。
【0134】
ロッド部材322は、ブッシュ18を介してケーシング312により摺動自在に支持される円柱状の軸部322aと、軸部322aの先端に形成される半球状の接触部322bと、軸部322aの基端に形成されるフランジ部322cと、を有する。フランジ部322cには、軸部322aとは反対側に延びる円柱状の保持部322dが軸部322aと同軸上に設けられる。
【0135】
磁石324は、上記第2実施形態と同様に、希土類元素を含む永久磁石であり、N極324aとS極324bとがロッド部材322の軸方向に並ぶように配置される。また、磁石324は、第1磁気検出部32に対向して配置される第1磁石324dと、第2磁気検出部33に対向して配置される第2磁石324eと、を有する。上記第2実施形態では、磁石124は、保持部122dに直接組み付けられているが、本実施形態では、磁石324は、磁石324を保持する磁石保持部材323を介して保持部322dに組み付けられる。また、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とが周方向において近くに配置されるため、第1磁石324dと第2磁石324eとは一体的に形成される。なお、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とが周方向において離れて配置される場合には、第1磁石324dと第2磁石324eとを別体としてもよい。
【0136】
磁石保持部材323は、樹脂等の非磁性材により形成される円柱状の部材であり、軸心には、保持部322dが挿通する挿通孔323aが形成されている。磁石保持部材323の外周面には、第1磁石324dを保持する第1保持部323bと、第2磁石324eを保持する第2保持部323cと、が切り欠いて形成される。なお、上述のように第1磁石324dと第2磁石324eとは一体的に形成されるため、これらを保持する第1保持部323bと第2保持部323cとも周方向において連続して形成される。そして、第1保持部323bと第2保持部323cとの間、すなわち、支持軸心Oを挟んで第1保持部323b及び第2保持部323cに対向する位置には、磁石324が配置されない非保持部323dが設けられる。
【0137】
磁石保持部材323に第1磁石324dと第2磁石324eとが組み付けられた状態で、挿通孔323aに保持部322dを挿通し、挿通孔323aから突き出た保持部322dの端部にC字状の止め輪26が係止されることにより磁石324は、ロッド部材322に対して固定される。
【0138】
なお、磁石324と磁石保持部材323とは、射出成型により一体的に形成されてもよく、この場合、樹脂からなる磁石保持部材323が入り込む溝等を磁石324に設けることで、磁石保持部材323から磁石324が外れることを防止することができる。また、磁石保持部材323は、ロッド部材322と一体的に形成されてもよい。
【0139】
また、図示しない規制部により支持軸心Oを中心としてロッド部材322がケーシング312に対して回転することが規制されるため、磁石保持部材323及び磁石324は、図10に示すように、第1磁石324dが第1磁気検出部32に対向し、第2磁石324eが第2磁気検出部33に対向し、非保持部323dが第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない状態に保持される。
【0140】
このように、磁石324は、単一体であって、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向する位置のみに設けられ、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない部分には配置されない。したがって、磁石324の体積が減り、高価な希土類元素の使用量が減少するため変位検出装置400の製造コストを低減させることができる。
【0141】
また、第1磁気検出部32に対向する第1磁石324dの対向面及び第2磁気検出部33に対向する第2磁石324eの対向面は、上記第2実施形態と同様に、支持軸心Oを中心とする円弧状に形成されている。このため、変位検出対象部材の変位量を検出する際に、仮にロッド部材322が支持軸心Oを中心として周方向にずれたとしてもロッド部材322の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と磁石324との間隔はほとんど変化しない。したがって、ロッド部材322が多少回動したとしても第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に誤差が生じることが抑制され、結果として変位検出装置400の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0142】
磁石324、磁石保持部材323及び磁石保持部材323が組み付けられるロッド部材322の一部が収容部312c内に収容された状態で、収容部312cの開口端には、蓋部材14が挿入固定され、緩衝材25と蓋部材14との間にバネ27が圧縮された状態で組み付けられる。
【0143】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の構成及び配置は、上記第1〜3実施形態と同じであるためその説明を省略する。
【0144】
第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が第1固定孔312e及び第2固定孔312f内にそれぞれ配置された状態で、円筒部312aの外周には、第1固定孔312e及び第2固定孔312fを覆うようにして円筒状の磁気シールド16が組み付けられる。
【0145】
上記構成の変位検出装置400による変位検出対象部材の変位量の検出については、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が同じ位置に配置される上記第2実施形態と同じであるためその説明を省略する。
【0146】
以上の第4実施形態によれば、上記第2実施形態における効果に加えて以下に示す効果を奏する。
【0147】
変位検出装置400では、磁石324は、磁石保持部材323を介してロッド部材322に組み付けられ、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が配置されない部分には、磁石保持部材323の非保持部323dが対向して配置される。つまり、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が配置されない部分には、磁石324が対向して配置されない。したがって、磁石324の体積が減り、高価な希土類元素の使用量が減少するため変位検出装置400の製造コストを低減させることができる。
【0148】
なお、変位検出装置400では、配置角度θが90°に設定されているが、これに限定されず、上記第2実施形態と同様に、配置角度θは、90°よりも大きく180°未満であってもよいし、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とが隣接して配置することができれば、90°よりも小さい角度に設定されてもよい。
【0149】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0150】
変位検出装置100〜400は、変位検出対象部材に追従して変位するロッド部材22,122,222,322と、ロッド部材22,122,222,322に設けられ、ロッド部材22,122,222,322とともに変位する磁石24,124,224,324と、ロッド部材22,122,222,322が挿通する支持孔12d,112d,212d,312dが設けられ、ロッド部材22,122,222,322を変位方向に往復動自在に支持するケーシング12,112,212,312と、ケーシング12,112,212,312に配置され磁石24,124,224,324の変位に伴う磁界の変化を検出する第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と、を備え、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33は、支持孔12d,112d,212d,312dの支持軸心Oと直交する同一平面P上に配置され、ロッド部材22,122,222,322の変位量は、第1磁気検出部32の検出値と第2磁気検出部33の検出値とに基づいて算出される。
【0151】
この構成では、ロッド部材22,122,222,322の変位量が、支持軸心Oと直交する同一平面P上に配置される第1磁気検出部32と第2磁気検出部33との検出値に基づいて算出される。第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とは、同一平面P上に配置されるため、ロッド部材22,122,222,322がケーシング12,112,212,312に対して傾いたとしても第1磁気検出部32の検出値に含まれる誤差と第2磁気検出部33の検出値に含まれる誤差とは互いに異なる値となるか、同じであっても磁気検出部が1つだけ設けられた場合に検出値に含まれる最大誤差と比較し小さい値となる。
【0152】
したがって、第1磁気検出部32の検出値と第2磁気検出部33の検出値との2つの値に基づいてロッド部材22,122,222,322の変位量を算出することで誤差を低減させることが可能となり、結果として、変位検出装置100〜400の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0153】
また、ロッド部材22,122,222,322の変位量は、第1磁気検出部32の検出値と第2磁気検出部33の検出値との加算平均値に基づいて算出される。
【0154】
この構成では、第1磁気検出部32の検出値と第2磁気検出部33の検出値との加算平均値に基づいてロッド部材22,122,222,322の変位量が算出される。第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とは、同一平面P上に配置されるため、ロッド部材22,122,222,322がケーシング12,112,212,312に対して傾いたとしても第1磁気検出部32の検出値に含まれる誤差と第2磁気検出部33の検出値に含まれる誤差とは互いに異なる値となるか、同じであっても磁気検出部が1つだけ設けられた場合に検出値に含まれる最大誤差と比較し小さい値となる。
【0155】
したがって、共に誤差を有する第1磁気検出部32の検出値と第2磁気検出部33の検出値とを加算し、その平均値を算出することで誤差が除去ないし低減されたロッド部材22,122,222,322の変位量を得ることが可能となり、結果として、変位検出装置100〜400の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0156】
また、磁石24,124は、第1磁気検出部32に対向する第1対向部24d,124dと、第2磁気検出部33に対向する第2対向部24e,124eと、第1対向部24d,124dと第2対向部24e,124eとの間に設けられ第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない非対向部24f,124fと、を有し、非対向部24f,124fの表面と支持軸心Oとの間の距離は、第1対向部24d,124dの表面と支持軸心Oとの間の距離及び第2対向部24e,124eの表面と支持軸心Oとの間の距離よりも短く設定される。
【0157】
この構成では、磁石24,124は、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない部分であって、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33を通過する磁界にあまり影響を及ぼさない部分が除去された形状に形成される。この結果、永久磁石である磁石24,124の体積が減り、高価な希土類元素の使用量が減少するため変位検出装置100,200の製造コストを低減させることができる。
【0158】
また、第1対向部24d,124dの表面及び第2対向部24e,124eの表面は、支持軸心Oを中心とする円弧状に形成される。
【0159】
この構成では、第1対向部24d,124dの表面及び第2対向部24e,124eの表面が支持軸心Oを中心とする円弧状に形成されている。このため、変位検出対象部材の変位量を検出する際に、仮にロッド部材22,122が支持軸心Oを中心として周方向にずれたとしてもロッド部材22,122の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と磁石24,124との間隔はほとんど変化しない。したがって、ロッド部材22,122が多少回動したとしても第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に誤差が生じることが抑制され、結果として変位検出装置100,200の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0160】
また、磁石24,124は、ケーシング12,112の内部に配置され、支持軸心Oからケーシング12,112の外表面までの距離は、第1対向部24d,124d及び第2対向部24e,124eが配置される部分よりも非対向部24f,124fが配置される部分の方が短く設定される。
【0161】
この構成では、支持軸心Oからケーシング12,112の外表面までの距離が、第1対向部24d,124d及び第2対向部24e,124eが配置される部分よりも非対向部24f,124fが配置される部分の方が短く設定される。このように、非対向部24f,124fが配置される部分、すなわち、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が設けられない部分におけるケーシング12,112の厚さを薄くすることで変位検出装置100,200を小型化することができる。
【0162】
また、変位検出装置300,400は、磁石224,324を保持する磁石保持部材223,323をさらに備え、磁石224,324は、第1磁気検出部32に対向して配置される第1磁石224d,324dと、第2磁気検出部33に対向して配置される第2磁石224e,324eと、を有し、磁石保持部材223,323は、第1磁石224d,324dを保持する第1保持部223b,323bと、第2磁石224e,324eを保持する第2保持部223c,323cと、第1保持部223b,323bと第2保持部223c,323cとの間に設けられる非保持部223d,323dと、を有し、非保持部223d,323dは、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向しない位置に配置される。
【0163】
この構成では、磁石224,324は、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33に対向する位置のみに設けられ、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が配置されない部分には、磁石保持部材223,323の非保持部223d,323dが配置される。つまり、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33が配置されない部分には、磁石224,324が配置されない。したがって、磁石224,324の体積が減り高価な希土類元素の使用量が減少するため変位検出装置300,400の製造コストを低減させることができる。
【0164】
また、第1磁気検出部32に対向する第1磁石224d,324dの対向面及び第2磁気検出部33に対向する第2磁石224e,324eの対向面は、支持軸心Oを中心とする円弧状に形成される。
【0165】
この構成では、第1磁石224d,324dの表面及び第2磁石224e,324eの表面が支持軸心Oを中心とする円弧状に形成されている。このため、変位検出対象部材の変位量を検出する際に、仮にロッド部材222,322が支持軸心Oを中心として周方向にずれたとしてもロッド部材222,322の変位方向と直交する方向における第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と磁石224,324との間隔はほとんど変化しない。したがって、ロッド部材222,322が多少回動したとしても第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に誤差が生じることが抑制され、結果として変位検出装置300,400の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0166】
また、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とは、支持軸心Oを挟んで対向して配置される。
【0167】
この構成では、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とが、支持軸心Oを挟んで対向して配置される。このため、ロッド部材22,222がケーシング12,212に対して傾斜し、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33と磁石24,224との間隔が変化した場合に、第1磁気検出部32の出力値にプラス側の誤差があれば、第2磁気検出部33の出力値にはマイナス側の誤差があることになる。したがって、第1磁気検出部32の検出値と第2磁気検出部33の検出値との2つの値に基づいてロッド部材22,222の変位量を算出することで誤差を相殺させることが可能となり、結果として、変位検出装置100,300の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。また、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とを支持軸心Oを挟んで対向して配置することにより、図3に示されるように、磁石24の形状を、各磁気検出部32,33に対向しない部分を除去した形状としたり、図8に示されるように、磁石224を2つに分割したりすることが可能となる。この結果、円筒状の磁石が用いられる場合と比較し、磁石24,224の体積が大幅に減少するため変位検出装置100,300の製造コストを低減させることができる。
【0168】
また、磁石124,324は単一体であり、支持軸心Oを中心として第1磁気検出部32が配置される位置と第2磁気検出部33が配置される位置とが成す配置角度θは180°未満に設定される。
【0169】
この構成では、磁石124,324は単一体であり、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33とは、支持軸心Oを中心としてそれぞれの位置が成す配置角度θが180°未満に設定される。この場合、第1磁気検出部32と磁石124,324との間隔と第2磁気検出部33と磁石124,324との間隔との両方の間隔が同じ方向に変化するようにロッド部材122,322が支持軸心Oに対して傾いた場合、第1磁気検出部32の出力値と第2磁気検出部33の出力値とは、それぞれの間隔の変化に応じた誤差を有することになる。しかし、両方の間隔を同じ方向に変化させた場合、何れか一方の間隔の変化は、磁気検出部が1つだけ設けられ、この磁気検出部と磁石124,324との間隔を変化させるようにロッド部材122,322を傾けた場合の間隔の変化と比較して小さくなる。
【0170】
つまり、この場合には、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値はともに誤差を有することになるが、何れか一方の誤差は、磁気検出部が1つだけ設けられ、この磁気検出部と磁石124,324との間隔を変化させるようにロッド部材122,322を傾けた場合に生じる誤差よりも小さい。したがって、第1磁気検出部32の検出値と第2磁気検出部33の検出値との2つの値に基づいてロッド部材122,322の変位量を算出することで誤差を低減させることが可能となり、結果として、変位検出装置200,400の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0171】
また、第1磁気検出部32と第2磁気検出部33との配置角度θが180°未満に設定されることで、図5に示されるように、磁石124を、円筒状の磁石から各磁気検出部32,33に対向しない部分が切り欠かれた単一体としたり、図10に示されるように、磁石324を、第1磁気検出部32に対向する部分と第2磁気検出部33に対向する部分とが円弧状に一体的に形成された単一体としたりすることが可能となる。この結果、円筒状の磁石が用いられる場合と比較し、磁石124,324の体積が大幅に減少するため変位検出装置200,400の製造コストを低減させることができる。さらに、磁石124,324が単一体であるため、磁石が複数に分割された場合と比較し、組立工数が低減されることで変位検出装置200,400の組立性を向上させることができる。
【0172】
また、ケーシング12,112,212,312は、支持軸心Oを中心としてロッド部材22,122,222,322がケーシング12,112,212,312に対して回転することを規制する規制部12g,112gを有する。
【0173】
この構成では、支持軸心Oを中心としてロッド部材22,122,222,322がケーシング12,112,212,312に対して回転することがケーシング12,112,212,312の規制部12g,112gにより規制される。このため、ロッド部材22,122,222,322に取り付けられた磁石24,124,224,324が支持軸心Oを中心に回転することが防止され、第1対向部24d,124dや第1磁石224d,324d及び第2対向部24e,124eや第2磁石224e,324eが第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33にそれぞれ対向した状態に保持される。この結果、第1磁気検出部32及び第2磁気検出部33の出力値に誤差が生じることが抑制され、結果として変位検出装置100〜400の変位検出対象部材の変位量の検出精度を向上させることができる。
【0174】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0175】
100,200,300,400・・・変位検出装置、12,112,212,312・・・ケーシング(支持部材)、12d,112d,212d,312d・・・支持孔、12g,112g・・・支持面(規制部)、22,122,222,322・・・ロッド部材(変位部材)、22e・・・平行面、122e・・・傾斜面、24,124,224,324・・・磁石、24d,124d・・・第1対向部、24e,124e・・・第2対向部、24f,124f・・・非対向部、32・・・第1磁気検出部、33・・・第2磁気検出部、223,323・・・磁石保持部材、223b,323b・・・第1保持部、223c,323c・・・第2保持部、223d,323d・・・非保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10