特許第6838992号(P6838992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838992
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20210222BHJP
   H01L 21/265 20060101ALN20210222BHJP
【FI】
   H01L21/26 T
   H01L21/26 Q
   !H01L21/265 602B
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-29988(P2017-29988)
(22)【出願日】2017年2月21日
(65)【公開番号】特開2018-137304(P2018-137304A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】北澤 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】布施 和彦
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−157968(JP,A)
【文献】 特開2014−092535(JP,A)
【文献】 特開2005−072045(JP,A)
【文献】 特開2012−238779(JP,A)
【文献】 特開2012−238782(JP,A)
【文献】 特開2009−231652(JP,A)
【文献】 特表2015−522953(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0171744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板の向きを調整するアライメント機構と、
前記基板を収容して加熱処理を行うチャンバーと、
前記チャンバー内に設置され、前記基板を載置して保持するサセプタと、
前記アライメント機構から前記チャンバー内の前記サセプタに前記基板を搬送する搬送部と、
前記チャンバーの上方に設けられ、前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置され、前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する放射温度計と、
を備え、
前記アライメント機構は、前記フラッシュランプからフラッシュ光が照射されたときに、前記基板の反りが最小となる方向に沿った径が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板の向きを調整することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、
前記アライメント機構は、前記基板の<100>方向に沿った径が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板の向きを調整することを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板の向きを調整するアライメント機構と、
前記基板を収容して加熱処理を行うチャンバーと、
前記チャンバー内に設置され、前記基板を載置して保持するサセプタと、
前記アライメント機構から前記チャンバー内の前記サセプタに前記基板を搬送する搬送部と、
前記チャンバーの上方に設けられ、前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置され、前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する放射温度計と、
を備え、
前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、
前記アライメント機構は、前記基板の<100>方向に沿った2本の径の二等分線が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板の向きを調整することを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板の向きを調整するアライメント機構と、
前記基板を収容して加熱処理を行うチャンバーと、
前記チャンバー内に設置され、前記基板を載置して保持するサセプタと、
前記アライメント機構から前記チャンバー内の前記サセプタに前記基板を搬送する搬送部と、
前記チャンバーの上方に設けられ、前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置され、前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する第1放射温度計と、
前記基板の斜め上方に前記基板の中心から見て前記第1放射温度計と90°隔てた位置に設置され、前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する第2放射温度計と、
を備え、
前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、
前記アライメント機構は、前記基板の<100>方向に沿った2本の径が前記第1放射温度計および前記第2放射温度計の光軸と一致するように前記基板の向きを調整し、
前記第1放射温度計または前記第2放射温度計のうち、前記フラッシュランプからフラッシュ光を照射したときに一旦低下する測定値の低下の程度が小さい方を採用して前記基板の前記上面の温度を測定することを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理方法であって、
チャンバー内に設置されたサセプタに基板を載置して保持する移載工程と、
前記チャンバーの上方に設けられたフラッシュランプから前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射する照射工程と、
前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置された放射温度計が前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する温度測定工程と、
を備え、
前記移載工程では、前記照射工程にてフラッシュ光が照射されたときに、前記基板の反りが最小となる方向に沿った径が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板を前記サセプタに載置することを特徴とする熱処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の熱処理方法において、
前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、
前記移載工程では、前記基板の<100>方向に沿った径が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板を前記サセプタに載置することを特徴とする熱処理方法。
【請求項7】
円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理方法であって、
チャンバー内に設置されたサセプタに基板を載置して保持する移載工程と、
前記チャンバーの上方に設けられたフラッシュランプから前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射する照射工程と、
前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置された放射温度計が前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する温度測定工程と、
を備え、
前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、
前記移載工程では、前記基板の<100>方向に沿った2本の径の二等分線が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板を前記サセプタに載置することを特徴とする熱処理方法。
【請求項8】
円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理方法であって、
チャンバー内に設置されたサセプタに基板を載置して保持する移載工程と、
前記チャンバーの上方に設けられたフラッシュランプから前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射する照射工程と、
前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置された第1放射温度計または前記基板の斜め上方に前記基板の中心から見て前記第1放射温度計と90°隔てた位置に設置された第2放射温度計が前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する温度測定工程と、
を備え、
前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、
前記移載工程では、前記基板の<100>方向に沿った2本の径が前記第1放射温度計および前記第2放射温度計の光軸と一致するように前記基板を前記サセプタに載置し、
前記第1放射温度計または前記第2放射温度計のうち、前記フラッシュランプからフラッシュ光を照射したときに一旦低下する測定値の低下の程度が小さい方を採用して前記基板の前記上面の温度を測定することを特徴とする熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板形状の半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置および熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウェハー内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウェハーに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0004】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
フラッシュランプアニールに限らず、半導体ウェハーの熱処理においては、ウェハー温度の管理が重要となる。特許文献1,2には、処理対象となる半導体ウェハーの斜め上方に放射温度計を設け、半導体ウェハーの表面から放射された放射光を受光して当該表面の温度を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−238779号公報
【特許文献2】特開2012−238782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フラッシュランプアニール装置においては、極めて高いエネルギーを有するフラッシュ光を瞬間的に半導体ウェハーの表面に照射するため、一瞬で半導体ウェハーの表面温度が急速に上昇し、ウェハー表面に急激な熱膨張が生じて半導体ウェハーが反るように変形することが判明している。このようなフラッシュ光照射時の半導体ウェハーの反りによって放射温度計による温度測定に誤差が生じるという問題が発生していた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フラッシュ光照射によって基板に反りが生じた場合であっても、基板の上面の温度を正確に測定することができる熱処理装置および熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理装置において、基板の向きを調整するアライメント機構と、前記基板を収容して加熱処理を行うチャンバーと、前記チャンバー内に設置され、前記基板を載置して保持するサセプタと、前記アライメント機構から前記チャンバー内の前記サセプタに前記基板を搬送する搬送部と、前記チャンバーの上方に設けられ、前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置され、前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する放射温度計と、を備え、前記アライメント機構は、前記フラッシュランプからフラッシュ光が照射されたときに、前記基板の反りが最小となる方向に沿った径が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板の向きを調整することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、前記アライメント機構は、前記基板の<100>方向に沿った径が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板の向きを調整することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理装置において、基板の向きを調整するアライメント機構と、前記基板を収容して加熱処理を行うチャンバーと、前記チャンバー内に設置され、前記基板を載置して保持するサセプタと、前記アライメント機構から前記チャンバー内の前記サセプタに前記基板を搬送する搬送部と、前記チャンバーの上方に設けられ、前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置され、前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する放射温度計と、を備え、前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、前記アライメント機構は、前記基板の<100>方向に沿った2本の径の二等分線が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板の向きを調整することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理装置において、基板の向きを調整するアライメント機構と、前記基板を収容して加熱処理を行うチャンバーと、前記チャンバー内に設置され、前記基板を載置して保持するサセプタと、前記アライメント機構から前記チャンバー内の前記サセプタに前記基板を搬送する搬送部と、前記チャンバーの上方に設けられ、前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置され、前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する第1放射温度計と、前記基板の斜め上方に前記基板の中心から見て前記第1放射温度計と90°隔てた位置に設置され、前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する第2放射温度計と、を備え、前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、前記アライメント機構は、前記基板の<100>方向に沿った2本の径が前記第1放射温度計および前記第2放射温度計の光軸と一致するように前記基板の向きを調整し、前記第1放射温度計または前記第2放射温度計のうち、前記フラッシュランプからフラッシュ光を照射したときに一旦低下する測定値の低下の程度が小さい方を採用して前記基板の前記上面の温度を測定することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理方法において、チャンバー内に設置されたサセプタに基板を載置して保持する移載工程と、前記チャンバーの上方に設けられたフラッシュランプから前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射する照射工程と、前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置された放射温度計が前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する温度測定工程と、を備え、前記移載工程では、前記照射工程にてフラッシュ光が照射されたときに、前記基板の反りが最小となる方向に沿った径が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板を前記サセプタに載置することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る熱処理方法において、前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、前記移載工程では、前記基板の<100>方向に沿った径が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板を前記サセプタに載置することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7の発明は、円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理方法において、チャンバー内に設置されたサセプタに基板を載置して保持する移載工程と、前記チャンバーの上方に設けられたフラッシュランプから前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射する照射工程と、前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置された放射温度計が前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する温度測定工程と、を備え、前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、前記移載工程では、前記基板の<100>方向に沿った2本の径の二等分線が前記放射温度計の光軸と一致するように前記基板を前記サセプタに載置することを特徴とする。
【0016】
また、請求項8の発明は、円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理方法において、チャンバー内に設置されたサセプタに基板を載置して保持する移載工程と、前記チャンバーの上方に設けられたフラッシュランプから前記サセプタに載置された前記基板の上面にフラッシュ光を照射する照射工程と、前記サセプタに載置された前記基板の斜め上方に設置された第1放射温度計または前記基板の斜め上方に前記基板の中心から見て前記第1放射温度計と90°隔てた位置に設置された第2放射温度計が前記基板の上面から放射された赤外光を受光して当該上面の温度を測定する温度測定工程と、を備え、前記基板は面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーであり、前記移載工程では、前記基板の<100>方向に沿った2本の径が前記第1放射温度計および前記第2放射温度計の光軸と一致するように前記基板を前記サセプタに載置し、前記第1放射温度計または前記第2放射温度計のうち、前記フラッシュランプからフラッシュ光を照射したときに一旦低下する測定値の低下の程度が小さい方を採用して前記基板の前記上面の温度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項2の発明によれば、フラッシュ光が照射されたときに、基板の反りが最小となる方向に沿った径が放射温度計の光軸と一致するように基板の向きを調整するため、フラッシュ光照射によって基板に反りが生じた場合であっても、放射温度計の光軸方向では基板にほとんど反りが生じないため、放射率もほとんど変化せず、基板の上面の温度を正確に測定することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、面方位が(100)面の基板の<100>方向に沿った2本の径の二等分線が放射温度計の光軸と一致するように基板の向きを調整するため、フラッシュ光照射によって基板に反りが生じた場合であっても、放射温度計の光軸方向では基板反りを抑制することができ、基板の上面の温度を正確に測定することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、面方位が(100)面の基板の<100>方向に沿った2本の径が第1放射温度計および第2放射温度計の光軸と一致するように基板の向きを調整するため、フラッシュ光照射によって基板に反りが生じた場合であっても、第1放射温度計または第2放射温度計のいずれかの光軸方向では基板にほとんど反りが生じないため、放射率もほとんど変化せず、基板の上面の温度を正確に測定することができる。
【0020】
請求項5および請求項6の発明によれば、フラッシュ光が照射されたときに、基板の反りが最小となる方向に沿った径が放射温度計の光軸と一致するように基板をサセプタに載置するため、フラッシュ光照射によって基板に反りが生じた場合であっても、放射温度計の光軸方向では基板にほとんど反りが生じないため、放射率もほとんど変化せず、基板の上面の温度を正確に測定することができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、面方位が(100)面の基板の<100>方向に沿った2本の径の二等分線が放射温度計の光軸と一致するように基板を前記サセプタに載置するため、フラッシュ光照射によって基板に反りが生じた場合であっても、放射温度計の光軸方向では基板反りを抑制することができ、基板の上面の温度を正確に測定することができる。
【0022】
請求項8の発明によれば、面方位が(100)面の基板の<100>方向に沿った2本の径が第1放射温度計および第2放射温度計の光軸と一致するように基板をサセプタに載置するため、フラッシュ光照射によって基板に反りが生じた場合であっても、第1放射温度計または第2放射温度計のいずれかの光軸方向では基板にほとんど反りが生じないため、放射率もほとんど変化せず、基板の上面の温度を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る熱処理装置を示す平面図である。
図2図1の熱処理装置の正面図である。
図3】フラッシュ加熱部の構成を示す縦断面図である。
図4】保持部の全体外観を示す斜視図である。
図5】サセプタの平面図である。
図6】サセプタの断面図である。
図7】移載機構の平面図である。
図8】移載機構の側面図である。
図9】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図10】半導体ウェハーに対する測定角度による放射率の変化を示す図である。
図11】半導体ウェハーに反りが生じたときの放射率の変化を示す図である。
図12】サセプタに載置する半導体ウェハーの向きを説明するための図である。
図13】第2実施形態における半導体ウェハーの向き調整を説明するための図である。
図14】第3実施形態における半導体ウェハーの向き調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
<第1実施形態>
まず、本発明に係る熱処理装置100の全体概略構成について簡単に説明する。図1は、本発明に係る熱処理装置100を示す平面図であり、図2はその正面図である。熱処理装置100は基板として円板形状の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。熱処理装置100に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置100による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、図1,2および以降の各図においては、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を必要に応じて付している。
【0026】
図1および図2に示すように、熱処理装置100は、未処理の半導体ウェハーWを外部から装置内に搬入するとともに処理済みの半導体ウェハーWを装置外に搬出するためのインデクサ部101、未処理の半導体ウェハーWの位置決めを行うアライメント部130、加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却を行う冷却部140、半導体ウェハーWにフラッシュ加熱処理を施すフラッシュ加熱部160並びにアライメント部130、冷却部140およびフラッシュ加熱部160に対して半導体ウェハーWの搬送を行う搬送ロボット150を備える。また、熱処理装置100は、上記の各処理部に設けられた動作機構および搬送ロボット150を制御して半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を進行させる制御部3を備える。
【0027】
インデクサ部101は、複数のキャリアC(本実施形態では2個)を並べて載置するロードポート110と、各キャリアCから未処理の半導体ウェハーWを取り出すとともに、各キャリアCに処理済みの半導体ウェハーWを収納する受渡ロボット120とを備えている。未処理の半導体ウェハーWを収容したキャリアCは無人搬送車(AGV、OHT)等によって搬送されてロードポート110に載置されるともに、処理済みの半導体ウェハーWを収容したキャリアCは無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。また、ロードポート110においては、受渡ロボット120がキャリアCに対して任意の半導体ウェハーWの出し入れを行うことができるように、キャリアCが図2の矢印CUにて示す如く昇降移動可能に構成されている。なお、キャリアCの形態としては、半導体ウェハーWを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した半導体ウェハーWを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
【0028】
また、受渡ロボット120は、図1の矢印120Sにて示すようなスライド移動、矢印120Rにて示すような旋回動作および昇降動作が可能とされている。これにより、受渡ロボット120は、2つのキャリアCに対して半導体ウェハーWの出し入れを行うとともに、アライメント部130および冷却部140に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う。受渡ロボット120によるキャリアCに対する半導体ウェハーWの出し入れは、ハンド121のスライド移動、および、キャリアCの昇降移動により行われる。また、受渡ロボット120とアライメント部130または冷却部140との半導体ウェハーWの受け渡しは、ハンド121のスライド移動、および、受渡ロボット120の昇降動作によって行われる。
【0029】
アライメント部130は、半導体ウェハーWを水平面内で回転させて続くフラッシュ加熱に適切な向きに向ける処理部である。アライメント部130は、アルミニウム合金製の筐体であるアライメントチャンバー131の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に支持して回転させる機構、および、半導体ウェハーWの周縁部に形成されたノッチやオリフラ等を光学的に検出する機構などを設けて構成される。受渡ロボット120からアライメントチャンバー131へはウェハー中心が所定の位置に位置するように半導体ウェハーWが渡される。アライメント部130では、インデクサ部101から受け取った半導体ウェハーWの中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの向きを調整する。
【0030】
熱処理装置100の主要部であるフラッシュ加熱部160は、予備加熱を行った半導体ウェハーWにキセノンフラッシュランプFLからの閃光(フラッシュ光)を照射してフラッシュ加熱処理を行う基板処理部である。このフラッシュ加熱部160の詳細についてはさらに後述する。
【0031】
冷却部140は、アルミニウム合金製の筐体であるクールチャンバー141の内部に、金属製の冷却プレートの上面に石英板を載置して構成されている。フラッシュ加熱部160にてフラッシュ加熱処理が施された直後の半導体ウェハーWは温度が高いため、冷却部140にて上記石英板上に載置されて冷却される。
【0032】
搬送ロボット150は、鉛直方向に沿った軸を中心に矢印150Rにて示すように旋回可能とされるとともに、複数のアームセグメントからなる2つのリンク機構を有し、それら2つのリンク機構の先端にはそれぞれ半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151a,151bが設けられる。これらの搬送ハンド151a,151bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、リンク機構によりそれぞれ独立して同一水平方向に直線的にスライド移動可能とされている。また、搬送ロボット150は、2つのリンク機構が設けられるベースを昇降移動することにより、所定のピッチだけ離れた状態のまま2つの搬送ハンド151a,151bを昇降移動させる。
【0033】
また、搬送ロボット150による半導体ウェハーWの搬送空間として搬送ロボット150を収容する搬送チャンバー170が設けられており、アライメントチャンバー131、クールチャンバー141およびフラッシュ加熱部160のプロセスチャンバー6が搬送チャンバー170に連結されて配置されている。搬送ロボット150がアライメントチャンバー131、クールチャンバー141またはフラッシュ加熱部160のプロセスチャンバー6を受け渡し相手として半導体ウェハーWの受け渡し(出し入れ)を行う際には、まず、両搬送ハンド151a,151bが受け渡し相手と対向するように旋回し、その後(または旋回している間に)昇降移動していずれかの搬送ハンドが受け渡し相手と半導体ウェハーWを受け渡しする高さに位置する。そして、搬送ハンド151a(151b)を水平方向に直線的にスライド移動させて受け渡し相手と半導体ウェハーWの受け渡しを行う。
【0034】
アライメント部130のアライメントチャンバー131および冷却部140のクールチャンバー141とインデクサ部101との間にはそれぞれゲートバルブ181,182が設けられている。また、搬送チャンバー170とアライメントチャンバー131、クールチャンバー141およびフラッシュ加熱部160のプロセスチャンバー6との間にはそれぞれゲートバルブ183,184,185が設けられる。熱処理装置100内にて半導体ウェハーWが搬送される際には、適宜これらのゲートバルブが開閉される。また、アライメントチャンバー131、クールチャンバー141および搬送チャンバー170の内部が清浄に維持されるようにそれぞれに窒素ガス供給部(図示省略)から高純度の窒素ガスが供給され、余剰の窒素ガスは適宜排気管から排気される。
【0035】
次に、フラッシュ加熱部160の構成について説明する。図3は、フラッシュ加熱部160の構成を示す縦断面図である。フラッシュ加熱部160は、半導体ウェハーWを収容して加熱処理を行うプロセスチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュランプハウス5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲンランプハウス4と、を備える。プロセスチャンバー6の上側にフラッシュランプハウス5が設けられるとともに、下側にハロゲンランプハウス4が設けられている。また、フラッシュ加熱部160は、プロセスチャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と搬送ロボット150との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。
【0036】
プロセスチャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。プロセスチャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光をプロセスチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、プロセスチャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲンランプHLからの光をプロセスチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0037】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。プロセスチャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0038】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、プロセスチャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、プロセスチャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0039】
また、チャンバー側部61には、プロセスチャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとプロセスチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0040】
さらに、チャンバー側部61には、半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を後述する上部放射温度計25に導くための貫通孔61aと、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を下部放射温度計20に導くための貫通孔61bとが形成されている。貫通孔61aの熱処理空間65側の位置には、上部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。また、貫通孔61bの熱処理空間65側の位置には、下部放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0041】
また、プロセスチャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はプロセスチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、窒素(N)等の不活性ガス、または、水素(H)、アンモニア(NH)等の反応性ガスを用いることができる(本実施形態では窒素)。
【0042】
一方、プロセスチャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はプロセスチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、プロセスチャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置100に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置100が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0043】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してプロセスチャンバー6内の気体が排気される。
【0044】
図4は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0045】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、プロセスチャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0046】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。図5は、サセプタ74の平面図である。また、図6は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0047】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0048】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm〜φ280mm(本実施形態ではφ280mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0049】
図4に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がプロセスチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がプロセスチャンバー6に装着される。保持部7がプロセスチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0050】
プロセスチャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、プロセスチャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0051】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0052】
また、図4および図5に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、下部放射温度計20(図3参照)がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、下部放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61bに装着された透明窓21を介してサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光し、別置のディテクタによってその半導体ウェハーWの温度が測定される。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0053】
図7は、移載機構10の平面図である。また、図8は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図7の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図7の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0054】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図4,5参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がプロセスチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0055】
図3に戻り、プロセスチャンバー6のチャンバー側部61の外側には、チャンバー側部61に形成された貫通孔61aを臨むように上部放射温度計25が取り付けられており、チャンバー側部61に形成された貫通孔61bを臨むように下部放射温度計20が取り付けられている。すなわち、上部放射温度計25は、熱処理空間65の外側となるプロセスチャンバー6外において、サセプタ74に載置された半導体ウェハーWの斜め上方に設置される。また、下部放射温度計20は、熱処理空間65の外側となるプロセスチャンバー6外において、サセプタ74の斜め下方に設置される。上述したように、下部放射温度計20は、サセプタ74の開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61bに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面の温度を測定する。
【0056】
一方、上部放射温度計25は、サセプタ74に載置された半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光をチャンバー側部61の貫通孔61aに装着された透明窓26を通して受光し、当該半導体ウェハーWの上面の温度を測定する。上部放射温度計25が半導体ウェハーWの温度測定に使用する赤外光の波長範囲、すなわち上部放射温度計25の測定波長域は5μm〜6.5μmである。石英の上側チャンバー窓63は波長5μm以上の光を遮光する。よって、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光のうち波長5μm以上の光は上側チャンバー窓63によってカットされ、プロセスチャンバー6内の熱処理空間65には波長5μm未満の光が到達することとなる。言うなれば石英の上側チャンバー窓63がフィルターとして機能することとなり、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光が上部放射温度計25の外乱光となるおそれはなく、上部放射温度計25は半導体ウェハーWから放射された赤外光のみを受光してそのウェハー温度を測定することができる。また、上部放射温度計25の測定間隔は例えば40マイクロセカンドであり、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーW上面の瞬間的な温度変化にも追随することが可能である。
【0057】
プロセスチャンバー6の上方に設けられたフラッシュランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュランプハウス5がプロセスチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはプロセスチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0058】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0059】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0060】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0061】
プロセスチャンバー6の下方に設けられたハロゲンランプハウス4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。複数のハロゲンランプHLはプロセスチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。
【0062】
図9は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0063】
また、図9に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲンランプHLからの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0064】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0065】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方のシリコン基板Wへの放射効率が優れたものとなる。
【0066】
また、ハロゲンランプハウス4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図3)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0067】
上記の構成以外にもフラッシュ加熱部160は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲンランプハウス4、フラッシュランプハウス5およびプロセスチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、プロセスチャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲンランプハウス4およびフラッシュランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュランプハウス5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0068】
制御部3は、熱処理装置100に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置100における処理が進行する。なお、図1においては、インデクサ部101内に制御部3を示しているが、これに限定されるものではなく、制御部3は熱処理装置100内の任意の位置に配置することができる。
【0069】
次に、本発明に係る熱処理装置100による半導体ウェハーWの処理動作について説明する。典型的には、処理対象となる半導体ウェハーWは、チョクラルスキー法等によって製造された円柱状の単結晶シリコンのインゴットを薄くスライスした薄板状基板である(例えば、φ300mmであれば厚さ0.775mm)。よって、本実施形態にて処理される半導体ウェハーWも単結晶シリコンにて形成されている。
【0070】
また、半導体ウェハーWはシリコンインゴットの特定の結晶方位に沿ってスライスされている。一般的には、面方位が(100)面、(110)面、(111)面となる3種類のウェハーが用いられているが、(100)面方位のものが最も多く使用されている。本実施形態においても、処理対象となる半導体ウェハーWは面方位が(100)面の単結晶シリコンのウェハーである。この(100)面方位の半導体ウェハーWにイオン注入法によって不純物(イオン)が添加され、その不純物の活性化が熱処理装置100によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行されるのである。以下に説明する熱処理装置100の処理手順は、制御部3が熱処理装置100の各動作機構を制御することにより進行する。
【0071】
熱処理装置100では、まず、不純物注入後の半導体ウェハーWがキャリアCに複数枚収容された状態でインデクサ部101のロードポート110に載置される。そして、受渡ロボット120がキャリアCから半導体ウェハーWを1枚ずつ取り出し、アライメント部130のアライメントチャンバー131に搬入する。アライメントチャンバー131に半導体ウェハーWが搬入された時点で、ゲートバルブ181がアライメントチャンバー131とインデクサ部101との間を閉鎖する。
【0072】
アライメント部130では、半導体ウェハーWをその中心部を回転中心として水平面内にて鉛直方向軸まわりで回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの向きを調整する。このときに、アライメント部130が半導体ウェハーWを回転させて調整する向きについてはさらに後述する。
【0073】
次に、ゲートバルブ183がアライメントチャンバー131と搬送チャンバー170との間を開放し、搬送ロボット150が上側の搬送ハンド151aによってアライメントチャンバー131から向きが調整された半導体ウェハーWを搬出する。半導体ウェハーWを取り出した搬送ロボット150はフラッシュ加熱部160を向くように旋回する。また、半導体ウェハーWの搬出後に、ゲートバルブ183がアライメントチャンバー131と搬送チャンバー170との間を閉鎖する。
【0074】
続いて、ゲートバルブ185がプロセスチャンバー6と搬送チャンバー170との間を開放し、搬送ロボット150が半導体ウェハーWをプロセスチャンバー6に搬入する。このときに、先行する加熱処理済みの半導体ウェハーWがプロセスチャンバー6に存在している場合には、下側の搬送ハンド151bによって当該加熱処理済みの半導体ウェハーWを取り出してから上側の搬送ハンド151aによって未処理の半導体ウェハーWをプロセスチャンバー6に搬入してウェハー入れ替えを行う。その後、ゲートバルブ185がプロセスチャンバー6と搬送チャンバー170との間を閉鎖する。
【0075】
プロセスチャンバー6に搬入された半導体ウェハーWには、ハロゲンランプHLによって予備加熱が行われた後、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によってフラッシュ加熱処理が行われる。このフラッシュ加熱処理により不純物の活性化が行われる。
【0076】
フラッシュ加熱処理が終了した後、ゲートバルブ185がプロセスチャンバー6と搬送チャンバー170との間を再び開放し、搬送ロボット150が搬送ハンド151bによってプロセスチャンバー6からフラッシュ加熱後の半導体ウェハーWを搬出する。半導体ウェハーWを取り出した搬送ロボット150は、プロセスチャンバー6から冷却部140に向くように旋回する。また、ゲートバルブ185がプロセスチャンバー6と搬送チャンバー170との間を閉鎖するとともに、ゲートバルブ184がクールチャンバー141と搬送チャンバー170との間を開放する。
【0077】
その後、搬送ロボット150が搬送ハンド151bを前進させてフラッシュ加熱直後の半導体ウェハーWを冷却部140のクールチャンバー141に搬入する。クールチャンバー141にフラッシュ加熱後の半導体ウェハーWが搬入された後、ゲートバルブ184がクールチャンバー141と搬送チャンバー170との間を閉鎖する。冷却部140では、フラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却処理が行われる。フラッシュ加熱部160のプロセスチャンバー6から搬出された時点での半導体ウェハーW全体の温度は比較的高温であるため、これを冷却部140にて常温近傍にまで冷却するのである。所定の冷却処理時間が経過した後、ゲートバルブ182がクールチャンバー141とインデクサ部101との間を開放し、受渡ロボット120が冷却後の半導体ウェハーWをクールチャンバー141から搬出し、キャリアCへと返却する。キャリアCに所定枚数の処理済み半導体ウェハーWが収容されると、そのキャリアCはインデクサ部101のロードポート110から搬出される。
【0078】
フラッシュ加熱部160におけるフラッシュ加熱処理について説明を続ける。プロセスチャンバー6への半導体ウェハーWの搬入に先立って、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてプロセスチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からプロセスチャンバー6内の気体が排気される。これにより、プロセスチャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0079】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもプロセスチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、フラッシュ加熱部160における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0080】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150により搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがプロセスチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボット150は、半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151aを保持部7の直上位置まで進出させて停止させる。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0081】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボット150が搬送ハンド151aを熱処理空間65から退出させ、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの下面と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0082】
半導体ウェハーWが保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0083】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が下部放射温度計20によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を透明窓21を通して下部放射温度計20が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、下部放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、600℃ないし800℃程度とされる(本実施の形態では700℃)。
【0084】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、下部放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0085】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲンランプハウス4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0086】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの上面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にプロセスチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからプロセスチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0087】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの上面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、上面温度が急速に下降する。このように、半導体ウェハーWの上面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0088】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は下部放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、下部放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが搬送ロボット150の下側の搬送ハンド151bにより搬出される。搬送ロボット150は、下側の搬送ハンド151bをリフトピン12によって突き上げられた半導体ウェハーWの直下位置にまで進出させて停止させる。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、フラッシュ加熱後の半導体ウェハーWが搬送ハンド151bに渡されて載置される。その後、搬送ロボット150が搬送ハンド151bをプロセスチャンバー6から退出させて半導体ウェハーWを搬出する。
【0089】
本実施形態においては、フラッシュ加熱部160の熱処理空間65の外側となるプロセスチャンバー6外に上部放射温度計25を設け、その上部放射温度計25によってフラッシュ加熱処理中の半導体ウェハーWの上面温度を測定している。照射時間が極めて短く強度の強いフラッシュ光を照射するフラッシュ加熱時には半導体ウェハーWの上面と下面とで瞬間的な温度差が生じるため、デバイスパターンが形成される半導体ウェハーWの上面の温度を測定することはプロセス管理上重要である。以下、フラッシュ加熱時における上部放射温度計25による半導体ウェハーWの上面温度の測定について説明する。なお、半導体ウェハーWの下面の温度を測定する下部放射温度計20は、主にハロゲンランプHLによる予備加熱の温度制御のために使用される。
【0090】
周知のように、測定対象物の温度が同じであったとしても、放射率によって放射強度が変化するため、放射温度計による温度測定では測定対象物の放射率が必要となる。放射率は一般に測定対象物に対する角度によって変化する。図10は、半導体ウェハーWに対する測定角度による放射率の変化を示す図である。典型的には、半導体ウェハーWの上面に対して垂直な方向(法線方向)にて放射率は最大放射率εmaxとなり、当該上面となす角度が小さくなるにつれて放射率も低下する。上部放射温度計25は、プロセスチャンバー6外において、サセプタ74に載置された半導体ウェハーWの斜め上方に設置されている。半導体ウェハーWの法線と上部放射温度計25の光軸とのなす角度をθとすると、上部放射温度計25の光軸方向での放射率εθは最大放射率εmaxよりも小さくなる。
【0091】
半導体ウェハーWの熱処理時には、予め上部放射温度計25の光軸方向での放射率εθが求められて上部放射温度計25に設定されている。上部放射温度計25は、設定された放射率εθを用いて半導体ウェハーWの上面の温度を測定する。
【0092】
ところが、フラッシュ加熱処理時には、極めて照射時間が短く高いエネルギーを有するフラッシュ光を半導体ウェハーWの上面に照射するため、半導体ウェハーWの上面の温度は瞬間的に1000℃以上の処理温度T2にまで上昇する一方、その瞬間の下面の温度は予備加熱温度T1からさほどには上昇しない。すなわち、半導体ウェハーWの上面と下面とに瞬間的に大きな温度差が発生するのである。その結果、半導体ウェハーWの上面のみに急激な熱膨張が生じ、下面はほとんど熱膨張しないために、半導体ウェハーWが上面を凸とするように瞬間的に反る。
【0093】
図11は、半導体ウェハーWに反りが生じたときの放射率の変化を示す図である。フラッシュ光照射によって半導体ウェハーWが上面を凸とするように反ることにより、半導体ウェハーWの法線と上部放射温度計25の光軸とのなす角度がθ+Δθとなる。すなわち、半導体ウェハーWが反ることによって、半導体ウェハーWが平坦な場合と比較して半導体ウェハーWの法線と上部放射温度計25の光軸とのなす角度がΔθだけ変化するのである。これにともなって、上部放射温度計25の光軸方向での放射率εθ+Δθも半導体ウェハーWが平坦な場合の放射率εθから変化することとなる。そうすると、上部放射温度計25に設定されている放射率εθと実際の放射率εθ+Δθとが相違するため、温度測定に誤差が生じることとなるのである。
【0094】
そこで、本発明に係る熱処理技術では、フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射したときに半導体ウェハーWの反りが最も小さくなる方向に沿った径が上部放射温度計25の光軸と一致するようにしている。
【0095】
単結晶シリコンの半導体ウェハーWは、フラッシュ光照射時に反るときに、特定の結晶方位に沿って反る性質を有する。面方位が(100)面のシリコンの半導体ウェハーWの場合、<100>方向に沿った径を軸として上面を凸とするように反ることが知られている。すなわち、面方位が(100)面のシリコンの半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射したときには、<100>方向に沿った径が最も上側となるように、当該径の両側が下向きに反るのである。
【0096】
ここで、面方位が(100)面のシリコンの半導体ウェハーWには、<100>方向に沿った径が2本存在している。より正確には、[100]方向、および、[010]方向に沿った2本の径が半導体ウェハーWに存在している。なお、<100>方向は、[100]方向、[010]方向、[001]方向を総称した表記である。面方位が(100)面のシリコンの半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射したときには、<100>方向に沿った2本の径のうちいずれか1本の径を軸として半導体ウェハーWが反る。その反りの軸となる<100>方向に沿った径が半導体ウェハーWの反りが最小となる方向に沿った径である。
【0097】
図12は、サセプタ74に載置する半導体ウェハーWの向きを説明するための図である。図12にて点線で示すのが<100>方向に沿った径である。同図に示すように、面方位が(100)面の半導体ウェハーWには、<100>方向に沿った2本の径が存在している。これらの2本の径は直交する。
【0098】
また、一般に、φ300mmの半導体ウェハーWには、向きを調整するための結晶方位を示す切り欠きであるノッチ9が形設されている。通常、ノッチ9は、<110>方向に沿った半導体ウェハーWの径の端部に形設される。ノッチ9を含む<110>方向に沿った径と、<100>方向に沿った2本の径とのなす角度は45°である。アライメント部130は、このノッチ9を光学的に検出することによって半導体ウェハーWが所定の向きを向くように調整する。
【0099】
面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射したときには、<100>方向に沿った2本の径のうちいずれか1本の径を軸として半導体ウェハーWが反る。<100>方向に沿った2本の径のうち反りの軸となる径は半導体ウェハーWの反りが最小となる方向に沿った径であり、他方の径は反りが最大となる方向に沿った径である。よって、<100>方向に沿った2本の径のうち反りの軸となる径が上部放射温度計25の光軸と一致していれば、その光軸方向では半導体ウェハーWがほとんど反らない(図11におけるΔθがほぼ0となる)ため、温度測定に誤差が生じるのを防ぐことができる。その反面、<100>方向に沿った2本の径のうち反りの軸と直交する径が上部放射温度計25の光軸と一致していると、その光軸方向で半導体ウェハーWが大きく反る(図11におけるΔθが最大となる)ため、温度測定に大きな誤差が生じることとなる。
【0100】
従って、フラッシュ光照射時に<100>方向に沿った2本の径のうちいずれを軸として半導体ウェハーWが反るのかを特定することが重要となる。本来、単結晶シリコンの半導体ウェハーWの性質に基づいて、<100>方向に沿った等価な2本の径のうちいずれを軸として反るのかを特定するのは困難である。しかしながら、本発明者等は、実際にはプロセスチャンバー6内のサセプタ74に載置された半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちサセプタ74上の特定の方向に沿った径を軸として半導体ウェハーWが反ることを究明した。このような現象が生じる理由は、加熱処理時に半導体ウェハーWの面内温度分布に僅かな偏りが生じており、その偏りに起因して半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちサセプタ74上の特定の方向に沿った径を軸として半導体ウェハーWが反ることによるものと考えられる。
【0101】
第1実施形態においては、図12に示すように、搬送ロボット150によってプロセスチャンバー6内に搬入された半導体ウェハーWが移載機構10によってサセプタ74上に載置されたときに、その半導体ウェハーWの<100>方向に沿った径が上部放射温度計25の光軸と一致するように、アライメント部130が半導体ウェハーWの向きを調整している。より具体的には、半導体ウェハーWには<110>方向を示すノッチ9が形設されており、そのノッチ9の位置に基づいて、<100>方向に沿った径が上部放射温度計25の光軸と一致するようにアライメント部130が半導体ウェハーWの向きを調整する。
【0102】
アライメント部130では、半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちいずれの径が上部放射温度計25の光軸と一致するように半導体ウェハーWの向きを調整しても良い。半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちいずれの径が上部放射温度計25の光軸と一致していたとしても、フラッシュ光照射時には当該2本の径のうちサセプタ74上の特定の方向に沿った径を軸として半導体ウェハーWが反るため、そのサセプタ74上の特定の方向に沿った径が上部放射温度計25の光軸と一致していれば良い。但し、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWが反る軸に沿ったサセプタ74上の特定の方向と光軸が一致するように上部放射温度計25をプロセスチャンバー6外に設置しておく必要はある。
【0103】
第1実施形態においては、面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーWの<100>方向に沿った径が上部放射温度計25の光軸と一致するように、アライメント部130が半導体ウェハーWの向きを調整し、その半導体ウェハーWをサセプタ74に載置している。これにより、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの反りが最小となる方向に沿った径が上部放射温度計25の光軸と一致することとなる。その結果、フラッシュ光照射によって半導体ウェハーWに反りが生じた場合であっても、上部放射温度計25の光軸方向では半導体ウェハーWにほとんど反りが生じないため、放射率もほとんど変化せず、半導体ウェハーWの上面の温度を正確に測定することができる。
【0104】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置100の全体構成およびフラッシュ加熱部160の構成は第1実施形態と同じである。また、第2実施形態における半導体ウェハーWの処理手順についても概ね第1実施形態と同様である。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、アライメント部130による半導体ウェハーWの向き調整である。
【0105】
図13は、第2実施形態における半導体ウェハーWの向き調整を説明するための図である。第1実施形態では、加熱処理時に半導体ウェハーWに生じる面内温度分布の偏りに起因して半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちサセプタ74上の特定の方向に沿った径を軸として半導体ウェハーWが反ることに基づいて半導体ウェハーWの向きを調整していた。しかし、加熱処理時における半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性が高く、温度分布に偏りがほとんど生じていない場合には、半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちいずれを軸として半導体ウェハーWが反るのかを特定できない場合もある。
【0106】
そこで、第2実施形態においては、図13に示すように、搬送ロボット150によってプロセスチャンバー6内に搬入された半導体ウェハーWが移載機構10によってサセプタ74上に載置されたときに、その半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径の二等分線が上部放射温度計25の光軸と一致するように、アライメント部130が半導体ウェハーWの向きを調整する。より具体的には、<110>方向を示すノッチ9の位置に基づいて、半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径の二等分線が上部放射温度計25の光軸と一致するようにアライメント部130が半導体ウェハーWの向きを調整する。
【0107】
このようにすれば、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちいずれを軸として半導体ウェハーWが反ったとしても、上部放射温度計25の光軸方向での半導体ウェハーWの反りは小さく、温度測定の誤差も最小限に抑制することができる。また、半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちいずれを軸として半導体ウェハーWが反ったとしても、上部放射温度計25の光軸方向での半導体ウェハーWの反りは同程度となるため、温度測定の再現性は高く維持することが可能となる。
【0108】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置100の全体構成およびフラッシュ加熱部160の構成は第1実施形態と同じである。また、第3実施形態における半導体ウェハーWの処理手順についても概ね第1実施形態と同様である。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは、プロセスチャンバー6外に2個の上部放射温度計25,125を設けている点である。
【0109】
図14は、第3実施形態における半導体ウェハーWの向き調整を説明するための図である。第2実施形態にて述べたように、加熱処理時における半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性が高い場合には、半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちいずれを軸として半導体ウェハーWが反るのかを特定するのが困難である。
【0110】
そこで、第3実施形態においては、プロセスチャンバー6外に2個の上部放射温度計25,125を設けている。第1の上部放射温度計25は、第1実施形態と同じく、プロセスチャンバー6外において、サセプタ74に載置された半導体ウェハーWの斜め上方に設置される。一方、第2の上部放射温度計125は、プロセスチャンバー6外において、サセプタ74に載置された半導体ウェハーWの斜め上方に当該半導体ウェハーWの中心から見て第1の上部放射温度計25と90°隔てた位置に設置される。第1の上部放射温度計25と第2の上部放射温度計125とは同じものであり、双方の上部放射温度計25,125はともに、サセプタ74に載置された半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を受光し、半導体ウェハーWの上面の温度を測定する。
【0111】
また、第3実施形態においては、図14に示すように、搬送ロボット150によってプロセスチャンバー6内に搬入された半導体ウェハーWが移載機構10によってサセプタ74上に載置されたときに、その半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径が第1の上部放射温度計25および第2の上部放射温度計125の光軸と一致するように、アライメント部130が半導体ウェハーWの向きを調整する。より具体的には、<110>方向を示すノッチ9の位置に基づいて、半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちの一方が第1の上部放射温度計25の光軸と一致し、他方が第2の上部放射温度計125の光軸と一致するようにアライメント部130が半導体ウェハーWの向きを調整する。
【0112】
このようにすれば、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちいずれを軸として半導体ウェハーWが反ったとしても、第1の上部放射温度計25または第2の上部放射温度計125のいずれか一方の光軸が半導体ウェハーWの反りが最小となる方向に沿った径と一致することとなり、半導体ウェハーWの上面の温度を正確に測定することができる。
【0113】
もっとも、第1の上部放射温度計25または第2の上部放射温度計125の残る他方の光軸は半導体ウェハーWの反りが最大となる方向に沿った径と一致することとなり、温度測定に大きな誤差が生じる。このため、第1の上部放射温度計25または第2の上部放射温度計125のいずれの測定結果を採用するかが問題となる。第3実施形態においては、以下のような手法によって、第1の上部放射温度計25または第2の上部放射温度計125のいずれの測定結果を採用するかを決定している。
【0114】
本発明者等は、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWに反りが生じ始めた瞬間に、その半導体ウェハーWの斜め上方に設置して上面温度を測定する放射温度計の測定値が一旦僅かに低下することを見出した。その温度測定値の低下の程度は半導体ウェハーWの反りが大きいほど大きくなる。従って、第1の上部放射温度計25または第2の上部放射温度計125のうち、フラッシュ光照射時に一旦低下する測定値の低下の程度が小さい方の光軸が半導体ウェハーWの反りが最小となる方向に沿った径と一致していると判断することができる。よって、制御部3は、第1の上部放射温度計25または第2の上部放射温度計125のうち、フラッシュ光照射時に一旦低下する測定値の低下の程度が小さい方を採用する。これにより、半導体ウェハーWの上面の温度を正確に測定することができる。
【0115】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、面方位が(100)面の単結晶シリコンの半導体ウェハーWを処理対象としていたが、これに限定されるものではなく、面方位が(110)面または(111)面の半導体ウェハーに加熱処理を行うようにしても良い。半導体ウェハーの面方位が異なると、フラッシュ光照射時に反りが最小となる方向も異なる。従って、面方位ごとにフラッシュ光照射時の反りが最小となる方向をテーブルに登録しておく。そして、制御部3の制御下にてアライメント部130がフラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの反りが最小となる方向に沿った径が上部放射温度計25の光軸と一致するように半導体ウェハーWの向きを調整する。このようにすれば、フラッシュ光照射によって半導体ウェハーWに反りが生じた場合であっても、上部放射温度計25の光軸方向では半導体ウェハーWにほとんど反りが生じないため、放射率もほとんど変化せず、半導体ウェハーWの上面の温度を正確に測定することができる。
【0116】
また、第1実施形態においては、加熱処理時に半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちサセプタ74上の特定の方向に沿った径を軸として半導体ウェハーWが反ることに基づいて半導体ウェハーWの向きを調整していた。このサセプタ74上の特定の方向は、サセプタ74等を交換したときには温度分布の偏りが変動することにともなって変化することがある。よって、メンテナンス等によってサセプタ74等を交換したときには、半導体ウェハーWの<100>方向に沿った2本の径のうちサセプタ74上のどの方向に沿った径を軸として半導体ウェハーWが反るかを再検証して特定しておくのが好ましい。
【0117】
また、上記実施形態の半導体ウェハーWには向きを調整するためのノッチ9が形成されていたが、これに代えてオリフラ(オリエンテーションフラット)が設けられていても良い。
【0118】
また、上記実施形態においては、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWの予備加熱を行うようにしていたが、これに代えて半導体ウェハーWを保持するサセプタをホットプレート上に載置し、そのホットプレートからの熱伝導によって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしても良い。
【0119】
また、上記実施形態においては、フラッシュランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲンランプハウス4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【符号の説明】
【0120】
3 制御部
4 ハロゲンランプハウス
5 フラッシュランプハウス
6 プロセスチャンバー
7 保持部
10 移載機構
25,125 上部放射温度計
74 サセプタ
75 保持プレート
77 基板支持ピン
100 熱処理装置
101 インデクサ部
130 アライメント部
140 冷却部
150 搬送ロボット
160 フラッシュ加熱部
170 搬送チャンバー
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー
図1
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