(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839047
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】消化汚泥脱離液の処理方法、その処理装置並びに排水処理方法及び排水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20060101AFI20210222BHJP
C02F 3/10 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
C02F3/34 101A
C02F3/34 101D
C02F3/34 101B
C02F3/34 101C
C02F3/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-147864(P2017-147864)
(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公開番号】特開2019-25430(P2019-25430A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 航介
(72)【発明者】
【氏名】大福地 智弘
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 友希子
【審査官】
松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−087595(JP,A)
【文献】
特開2014−097478(JP,A)
【文献】
特開2009−066505(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/171819(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28− 3/34
C02F 3/02− 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気性グラニュールを含有する処理槽に、消化汚泥脱離液と初沈生汚泥の濃縮脱水分離液とを供給する供給工程と、
前記消化汚泥脱離液の窒素濃度と前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の炭素濃度とをそれぞれ測定する濃度測定工程と、
前記炭素濃度/前記窒素濃度が所定範囲の値になるように、前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の供給量を制御する制御工程と、
を有したことを特徴とする消化汚泥脱離液の処理方法。
【請求項2】
前記炭素濃度がBOD換算値であることを特徴とする請求項1に記載の消化汚泥脱離液の処理方法。
【請求項3】
前記窒素濃度がT−N換算値であり、前記炭素濃度/前記窒素濃度が0.3を超え3未満であることを特徴とする請求項2に記載の消化汚泥脱離液の処理方法。
【請求項4】
前記処理槽は回分式であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の消化汚泥脱離液の処理方法。
【請求項5】
連続的に流入する排水を生物処理する連続式生物処理装置の生物反応槽に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の消化汚泥脱離液の処理方法により得られる前記処理槽内の処理水を返送する処理水返送工程を有したことを特徴とする排水処理方法。
【請求項6】
好気性グラニュールを含有する処理槽と、
前記処理槽に消化汚泥脱離液と初沈生汚泥の濃縮脱水分離液とを供給する供給路と、
前記消化汚泥脱離液の窒素濃度と前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の炭素濃度とをそれぞれ測定する濃度測定手段と、
前記炭素濃度/前記窒素濃度が所定範囲の値になるように、前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の供給量を制御する制御手段と、
を有したことを特徴とする消化汚泥脱離液の処理装置。
【請求項7】
連続的に流入する排水を生物処理する生物反応槽を備えた連続式生物処理装置と、
請求項6に記載の消化汚泥脱離液の処理装置と、
前記処理装置の処理槽内の処理水を前記生物反応槽に返送する返送路と、
を有したことを特徴とする排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化汚泥脱離液の処理方法、その処理装置並びに排水処理方法及び排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水や工場廃水などの原水に含まれる有機成分を処理することを目的として、微生物の同化および異化反応を利用する活性汚泥法が広く用いられている。
【0003】
また、有機物を処理し、かつ、連続通水式で好気性条件下において安定的にグラニュール(粒状の微生物汚泥)を形成することが可能な好気性グラニュールの形成方法も開示されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、特許文献1においては、連続通水する原水のC/N比(全有機炭素(TOC)/全窒素(TN))を7以下となるように調整することが好ましいことが記載されている。
【0004】
また、半回分式生物処理装置にて安定してグラニュールを形成し、連続式生物処理装置へ供給することを可能とする排水処理装置及び排水処理方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、特許文献2においては、余剰汚泥の濃縮、消化及び脱水のうち少なくともいずれか1つの処理から得られる脱離水を間欠的に導入して生物処理を行い、グラニュールを形成する半回分式生物処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−66505号公報
【特許文献2】特開2016−87595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された技術のように、原水のC/N比(全有機炭素(TOC)/全窒素(TN))を7に向かって大きくしていくと、硝化菌の活性が低下するばかりでなく、好気性グラニュール以外の雑菌が発生しやすく、好気性グラニュールが安定しなくなり、長期運転が出来なくなるという問題点があった。
【0007】
また、上記特許文献2に開示された技術では、余剰汚泥の消化処理から得られる脱離水を半回分式生物処理装置に導入することも記載されているが、これはあくまで前記半回分式生物処理装置から排出されるグラニュールを前記連続式生物処理装置に供給することを前提にしているものである。
【0008】
したがって、余剰汚泥の消化処理から得られる脱離水(これを「消化汚泥脱離液」と称す)を如何に安定して処理(硝化および脱窒)するかに関しては、何らの言及がない。当然、前記処理後の処理水を排水処理装置として、単に排水処理する以外に、どのように取り扱うかの言及もない。
【0009】
本発明の目的は、好気性グラニュールを用いて、消化汚泥脱離液を長期的に安定して処理(硝化および脱窒)可能な消化汚泥脱離液の処理方法、その処理装置並びに排水処理方法及び排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、第1発明に係る消化汚泥脱離液の処理方法は、
好気性グラニュールを含有する処理槽に、消化汚泥脱離液と初沈生汚泥の濃縮脱水分離液とを供給する供給工程と、
前記消化汚泥脱離液の窒素濃度と前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の炭素濃度とをそれぞれ測定する濃度測定工程と、
前記炭素濃度/前記窒素濃度が所定範囲の値になるように、前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の供給量を制御する制御工程と、
を有したことを特徴とする。
【0011】
また、第2発明に係る消化汚泥脱離液の処理方法は、第1発明に係る消化汚泥脱離液の処理方法において、前記炭素濃度がBOD換算値であることが好ましい。
【0012】
また、第3発明に係る消化汚泥脱離液の処理方法は、第2発明に係る消化汚泥脱離液の処理方法において、前記窒素濃度がT−N換算値であり、前記炭素濃度/前記窒素濃度が0.3を超え3未満であることが好ましい。
【0013】
また、第4発明に係る消化汚泥脱離液の処理方法は、第1〜第3発明のいずれか1つの発明に係る消化汚泥脱離液の処理方法において、前記処理槽は回分式であることが好ましい。
【0014】
また、第5発明に係る排水処理方法は、連続的に流入する排水を生物処理する連続式生物処理装置の生物反応槽に、第1〜第4発明のいずれか1つの発明に係る消化汚泥脱離液の処理方法により得られる前記処理槽内の処理水を返送する処理水返送工程を有したことを特徴とする。
【0015】
また、第6発明に係る消化汚泥脱離液の処理装置は、
好気性グラニュールを含有する処理槽と、
前記処理槽に消化汚泥脱離液と初沈生汚泥の濃縮脱水分離液とを供給する供給路と、
前記消化汚泥脱離液の窒素濃度と前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の炭素濃度とをそれぞれ測定する濃度測定手段と、
前記炭素濃度/前記窒素濃度が所定範囲の値になるように、前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の供給量を制御する制御手段と、
を有したことを特徴とする。
【0016】
また、第7発明に係る排水処理装置は、
連続的に流入する排水を生物処理する生物反応槽を備えた連続式生物処理装置と、
第6発明に係る消化汚泥脱離液の処理装置と、
前記処理装置の処理槽内の処理水を前記生物反応槽に返送する返送路と、
を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記構成により、好気性グラニュールを用いて、消化汚泥脱離液を長期的に安定して処理(硝化および脱窒)可能な消化汚泥脱離液の処理方法、その処理装置並びに排水処理方法及び排水処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の排水処理方法を実施するための排水処理装置の構成の一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明の消化汚泥脱離液の処理方法を実施するための消化汚泥脱離液の処理装置の運転方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者は、如何にすれば、好気性グラニュール(粒状の好気性微生物汚泥)を用いて、消化汚泥脱離液を長期的に安定して処理(硝化および脱窒)可能な消化汚泥脱離液の処理方法、その処理装置並びに排水処理方法及び排水処理装置を提供できるのか鋭意研究を行った。その結果、以下に説明するような構成を採用することで初めて目的を達成できることを見出した。
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明が処理対象とする有機性排水は、例えば、下水排水、食品工場などからの排水である。
【0021】
(排水処理装置および消化汚泥脱離液の処理装置の構成)
【0022】
図1および
図2において、1は最初沈殿槽、2は生物反応槽、3は最終沈殿槽、4は機械濃縮手段としての例えばベルト型濃縮機、5は濃縮機としての例えば加圧浮上槽、6は消化槽、7は脱水装置、8は好気性グラニュールを含有する処理槽(「好気グラニュール処理槽」と称す)、11は各種有機物質を含む下水等の排水の流入路、12、13、15、16、17、19、20、21、24、26、33は供給路、14は流出路、23は供給管、25は流出管、18、22はTOC(Total Organic Carbon、全有機炭素)計、27はアンモニア計、30は制御手段、31は信号路、32は弁である。40は好気グラニュール処理槽8、供給路17、TOC計18、供給路21、 TOC計22、供給路26、アンモニア計27、制御手段30、信号路31と弁32を有した消化汚泥脱離液の処理装置である。
【0023】
次に、本発明に係る排水処理装置および消化汚泥脱離液の処理装置の運転動作について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0024】
図1において、流入路11から排水が最初沈殿槽1に供給される。この供給された排水が最初沈殿槽1で固液分離され、それぞれ初沈生汚泥と分離液となる。
【0025】
上記分離液は供給路12から生物反応槽2へ送られ、この分離液に空気を吹き込み、分離液中の有機物を二酸化炭素等に変換する活性汚泥を用いた好気性生物処理が施され、その処理水が供給路13から最終沈殿槽3に供給される。この供給された処理水が最終沈殿槽3で固液分離され、それぞれ余剰汚泥と処理水となる。この浄化された処理水が流出路14から放出される。尚、最終沈殿槽3で沈降した汚泥の一部は、生物反応槽2へ返送される(図示せず)。
【0026】
一方、供給路15からベルト型濃縮機4に供給した上記初沈生汚泥は濃縮脱水され、濃縮生汚泥と濃縮脱水分離液が得られ、この濃縮脱水分離液は供給路17から好気グラニュール処理槽8に供給される(供給工程)。尚、供給路17から好気グラニュール処理槽8に供給される濃縮脱水分離液は、TOC計18により炭素濃度が計測される(濃度測定工程)。
【0027】
また、供給路19から加圧浮上槽5に供給した上記余剰汚泥は濃縮され、濃縮余剰汚泥と分離液が得られ、この分離液は供給路21から好気グラニュール処理槽8に供給される(供給工程)。尚、供給路21から好気グラニュール処理槽8に供給される分離液は、 TOC計22により炭素濃度が計測される(濃度測定工程)。
【0028】
また、供給路15からベルト型濃縮機4側へ引抜かれる初沈生汚泥の量が増加する分、供給路19から加圧浮上槽5に供給される余剰汚泥は相対的に減少する。したがって、供給路20から消化槽6に供給した上記濃縮余剰汚泥中の固形物と有機物の量も、上記濃縮生汚泥中の固形物と有機物の量が増加した分、相対的に減少する。よって、供給路17から好気グラニュール処理槽8に供給される濃縮脱水分離液中の炭素源に比べて、供給路21から好気グラニュール処理槽8に供給される分離液中の炭素源も相対的に減少する。
【0029】
特に、ベルト型濃縮機4を経由し、消化槽6側へ移行する有機物の量が増加する(すなわち、供給路16から消化槽6に供給した濃縮生汚泥中の有機物の量が増加する)ことは、最初沈殿槽1で分離された分離液中の有機物量が少なくなり、生物反応槽2側へ移行する有機物の量が減少することを意味する。したがって、生物反応槽2で活性汚泥法を用いて処理する際に必要な空気の送風量を低減可能な排水処理方法および排水廃水処理設備が実現できるようになる。また、生物反応槽2で処理しなければならない有機物量が減少するため、必要な空気の送風量も少なくなり、この工程での消費電力も低減される(例えば、送風機の電力費を低減できる)。さらに、生物反応槽2で処理しなければならない有機物量が減少するため、最終沈殿槽3から供給路19を経由して供給される余剰汚泥の発生量も低減される。
【0030】
供給路16から供給される上記濃縮生汚泥と供給路20から供給される上記濃縮余剰汚泥は、それぞれ消化槽6において嫌気条件下で消化処理され、メタンガスを主成分とする消化ガスに転化されるとともに消化汚泥が得られる。消化ガスは供給管23を通って供給され、消化汚泥は供給路24から脱水装置7に供給される。上述したように、生物反応槽2で二酸化炭素等に変換処理される有機物量が減少し、ベルト型濃縮機4を経由し、消化槽6側へ移行する易分解の有機物の量が増加するため、消化槽6の加温や発電用ガスエンジン用の燃料として有用な消化ガス(例えば、メタンガスを主成分とする)が消化槽6で高効率に発生できることを示している。
【0031】
次に、供給路24から脱水装置7へ送られた消化汚泥は、脱水装置7で固液分離され、それぞれ脱水ケーキと消化汚泥脱離液となる。脱水ケーキは流出管25を通って流出し、消化汚泥脱離液は供給路26から好気グラニュール処理槽8に供給される(供給工程)。尚、供給路26から好気グラニュール処理槽8に供給される消化汚泥脱離液は、アンモニア計27により窒素濃度が計測される(濃度測定工程)。
【0032】
また、上記TOC計18により計測された炭素濃度とTOC計22により計測された炭素濃度の合計量/上記アンモニア計27により計測された窒素濃度が所定範囲の値になるように、制御手段30から発せられ、信号路31を伝送し弁32に届く制御信号で弁32を調節することにより、供給路17から好気グラニュール処理槽8に供給される初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の供給量を制御するように構成されている(制御工程)。
【0033】
例えば、上記TOC計18および TOC計22により計測される炭素濃度は、BOD(biochemical oxygen demand)に換算され、上記アンモニア計27により計測される窒素濃度はT−N(Total Nitrogen、総窒素)に換算される。その換算値より算出した炭素濃度の合計量/窒素濃度が所定範囲の値(0.3を超え3未満)になるように制御すればよい。0.3以下である場合は、上記消化汚泥脱離液の脱窒が炭素源不足から十分に行えなくなり、3以上では硝化菌の活性が低下するばかりでなく、好気性グラニュール以外の雑菌が発生しやすく、グラニュールが安定しなくなり、長期運転が出来なくなる。これらの点を考慮すると、より好ましくは、炭素濃度/窒素濃度が1.6である。
【0034】
次に、
図2を用いながら、消化汚泥脱離液の処理装置40を構成する好気グラニュール処理槽8について、詳述する。好気グラニュール処理槽8は、回分式である。
【0035】
図2(a)は、好気グラニュール処理槽8の底に散気装置8aが設置され、その上に好気グラニュール処理槽8の約半分の体積を占めるように、好気性グラニュール8bを充填する工程を示す。この状態では、好気グラニュール処理槽8に約半分の空間がある。
【0036】
図2(b)は、
図2(a)に示す約半分の空間に、炭素濃度の合計量/窒素濃度が所定範囲の値(0.3を超え3未満)になるように制御しながら、供給路17から濃縮脱水分離液、供給路21から分離液および供給路26から消化汚泥脱離液をそれぞれ好気グラニュール処理槽8の液面8cまで供給する工程を示す。
【0037】
図2(c)は、散気装置8aから空気(酸素)を約4〜5時間、供給することにより、撹拌混合する工程を示す。8dは液面である。この状況では、好気性グラニュール8bの表面近傍で硝化反応、同内部で脱窒反応が起こる。
【0038】
図2(d)は、
図2(c)に示す撹拌混合を停止し、5m/hの沈降分離で好気性グラニュール8b等の汚泥を沈殿させる工程を示す。以上により、好気性グラニュール8bを用いて、消化汚泥脱離液を長期的に安定して処理(硝化および脱窒)可能になる。また、この処理にあたって、炭素源として初沈生汚泥の濃縮脱水分離液が主として利用されるため、メタノールなどの系外からの炭素源の投入量を削減できる効果がある。
【0039】
また、
図2(d)に示すように、好気性グラニュール8b等の汚泥は、好気グラニュール処理槽8の下半分に沈殿させたままにして、消化汚泥脱離液が処理(硝化および脱窒)された処理水8eの上半分程を供給路33から
図1に示す生物反応槽2に返送する(処理水返送工程)。8fは液面である。
【0040】
上述したように、消化汚泥脱離液の処理(硝化および脱窒)のために、初沈生汚泥の濃縮脱水分離液中の炭素源(有機物に由来する炭素源)が消費されることで、消化汚泥脱離液中の窒素源が除去されるとともに生物反応槽2に返送される処理水8e中の炭素源量も少なくなる。したがって、生物反応槽2で処理しなければならない有機物量が減少するため、生物反応槽2で活性汚泥法を用いて処理する際に必要な空気の送風量をさらに低減可能な排水処理方法および排水処理装置が実現できるようになる。そのため、この工程での消費電力もさらに低減される(例えば、送風機の電力費をさらに低減できる)。
【0041】
本実施形態においては、好気グラニュール処理槽8に消化汚泥脱離液と初沈生汚泥の濃縮脱水分離液とを供給する以外に、余剰汚泥を濃縮して得られた分離液を供給路21から好気グラニュール処理槽8に供給する例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。少なくとも、消化汚泥脱離液と初沈生汚泥の濃縮脱水分離液とを好気グラニュール処理槽8に供給する構成であれば構わない。
【0042】
また、本実施形態においては、供給路17から好気グラニュール処理槽8に供給される濃縮脱水分離液および供給路21から好気グラニュール処理槽8に供給される分離液は、それぞれ炭素濃度のみが計測される例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、炭素濃度に加えて窒素濃度も計測する構成が、より好ましい。
【0043】
また、本実施形態においては、供給路26から好気グラニュール処理槽8に供給される消化汚泥脱離液は、窒素濃度のみが計測される例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、窒素濃度に加えて炭素濃度も計測する構成が、より好ましい。
【0044】
何故ならば、上記濃縮脱水分離液および分離液および消化汚泥脱離液の各炭素濃度および窒素濃度を計測し、合計した炭素濃度/合計した窒素濃度が所定範囲の値(0.3を超え3未満)になるように制御すれば、好気性グラニュール8bを用いて、消化汚泥脱離液を長期的に安定して、かつ、より効率的な処理(硝化および脱窒)可能になる。
【0045】
なお、本実施形態においては、供給路17のみに弁32を設けて制御手段30により、初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の供給量を制御する例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、供給路21、26にもそれぞれ弁を設けて、炭素濃度の合計量/窒素濃度が所定範囲の値になるように制御手段30により、供給路21から供給される分離液や供給路26から供給される消化汚泥脱離液の各供給量を制御してもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 最初沈殿槽
2 生物反応槽
3 最終沈殿槽
4 ベルト型濃縮機
5 加圧浮上槽
6 消化槽
7 脱水装置
8 好気グラニュール処理槽
8a 散気装置
8b 好気性グラニュール
8c、8d、8f 液面
8e 処理水
11 流入路
12、13、15、16、17、19、20、21、24、26、33 供給路
14 流出路
23 供給管
25 流出管
18、22 TOC計
27 アンモニア計
30 制御手段
31 信号路
32 弁
40 消化汚泥脱離液の処理装置