(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記履歴収集基板は、前記複数の制御基板の間で通信されている通信データを受信可能な配線に対して着脱可能である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の医療用診療装置。
前記医療用診療装置で記憶した履歴情報および前記分析装置で分析した分析結果のうち少なくとも一方を外部サーバに送信可能な通信部を備える、請求項8または請求項9に記載の医療用診療システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る医療用診療システムの構成を説明するための概略図である。
図1に示す医療用診療システムでは、チェアユニットである医療用診療装置(以下、診療装置とも称する)10が1台と、分析用コンピュータ20が1台とで構成されている。なお、1台の分析用コンピュータ20に対して複数の診療装置10が接続されてもよい。
【0012】
まず、診療装置10について詳しく説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る診療装置の構成を説明するためのブロック図である。
図1および
図2に示すように、診療装置10は、診療椅子1と、フートコントローラ5と、トレーテーブル3と、制御装置9と、インスツルメントホルダ50と、操作パネル8と、表示モニタ6と、ベースンユニット2と、照明装置(オペライト)7とを備える。
【0013】
診療椅子1は、患者の頭を支えるヘッドレスト1aと、患者の背中を支える背もたれ1bと、患者の尾尻を支える座面シート1cと、患者の足を支える足置き台1dと、シート駆動部11とを備える。シート駆動部11は、チェア制御基板上に実装されたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などによって構成され、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dのそれぞれの駆動を制御する。
【0014】
たとえば、座面シート1cは、シート駆動部11の制御に基づき上昇または下降する。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dのそれぞれは、シート駆動部11の制御に基づき座面シート1cに対して垂直方向または水平方向に移動する。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dが座面シート1cに対して垂直方向に移動すると、診療椅子1に座った患者が座位姿勢になる。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dが座面シート1cに対して水平方向に移動すると、診療椅子1に座った患者が仰向け姿勢になる。このように、シート駆動部11は、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dを駆動させて診療椅子1の姿勢を変更する。
【0015】
フートコントローラ5は、ユーザの足踏操作を受け付ける複数のスイッチ(ペダル)を有する。ユーザは、これら複数のスイッチそれぞれに対して所定の機能を割り当てることができる。
【0016】
たとえば、ユーザは、診療椅子1の姿勢を変更する機能をフートコントローラ5のスイッチに対して割り当てることができる。ユーザが、診療椅子1の姿勢を変更する機能が割り当てられたスイッチを足踏操作すると、フートコントローラ5は、シート駆動部11に制御信号を出力する。シート駆動部11は、制御信号に基づき、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dを駆動させる。
【0017】
また、ユーザは、診療器具4を駆動する機能をフートコントローラ5のスイッチに対して割り当てることができる。ユーザが、診療器具4を駆動する機能が割り当てられたスイッチを足踏操作すると、フートコントローラ5は、診療器具駆動部14に制御信号を出力する。診療器具駆動部14は、制御信号に基づき診療器具4の駆動を制御する。
【0018】
なお、フートコントローラ5のスイッチには、照明装置7の照明および消灯を制御する機能など、その他の機能を割り当てることもできる。
【0019】
トレーテーブル3は、診療時の物置台として用いられる。トレーテーブル3は、診療椅子1または床から延びるアーム(図示は省略する)に接続されている。このため、ユーザは、トレーテーブル3を診療椅子1に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動させることが可能である。
【0020】
制御装置9は、トレーテーブル3の下部に設けられている。制御装置9には、診療椅子1と、複数の診療器具4と、インスツルメントホルダ50と、ベースンユニット2と、操作パネル8と、表示モニタ6とが接続されている。制御装置9は、操作制御部12、診療器具駆動部14、表示モニタ制御部15、および保持解除特定部19を備える。これらの各部は、いずれも、操作制御基板、駆動制御基板、モニタ制御基板、および保持解除特定制御基板上に実装されたCPU、ROM、およびRAMなどによって構成される。
【0021】
診療器具4は、たとえば、エアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピース、スケーラ、スリーウェイシリンジ、およびバキュームシリンジなどの歯科診療用のインスツルメントである。なお、診療器具4は、これらに限らず、口腔内カメラ、光重合用照射器、根管長測定器、3次元スキャナおよび根管拡大器などであってもよいし、デンタルミラーや注射器、充填器具など、駆動しない器具であってもよい。
【0022】
診療装置10においては、診療器具4a〜4eの5種類が用いられる。たとえば、診療器具4aおよび診療器具4bは、エアータービンハンドピースである。診療器具4cは、マイクロモータハンドピースである。診療器具4dは、スケーラである。診療器具4eは、スリーウェイシリンジである。
【0023】
各診療器具4は、インスツルメントホルダ50によって保持される。診療器具4がインスツルメントホルダ50から取り出されると、インスツルメントホルダ50による保持が解除され、診療器具4が選択された状態(被選択状態と称する)になる。
【0024】
各診療器具4は、制御装置9が備える診療器具駆動部14に接続されている。診療器具駆動部14は、フートコントローラ5に対するユーザの足踏操作に基づき各診療器具4を駆動する。たとえば、ユーザが、フートコントローラ5におけるエアータービンハンドピースを駆動するためのスイッチを足踏操作すると、診療器具駆動部14は、エアータービンハンドピースのヘッド部に保持される切削工具を回転させる。このように、診療器具駆動部14は、フートコントローラ5に対するユーザの操作に基づき診療器具4を駆動する。
【0025】
インスツルメントホルダ50は、各診療器具4を保持する保持部材である。インスツルメントホルダ50は、制御装置9が備える保持解除特定部19を介して操作制御部12に接続されている。保持解除特定部19は、診療器具4に対するインスツルメントホルダ50による保持が解除されたことを特定するとともに、その特定結果を示す信号を操作制御部12に出力する。操作制御部12は、保持解除特定部19からの信号に基づき被選択状態の診療器具4を特定する。
【0026】
ベースンユニット2は、
図1に示すように、診療椅子1の側部に備え付けられている。ベースンユニット2は、排水口が形成された鉢2aと、コップが載置されるコップ台2bと、コップに給水するための給水栓2cとを備える。患者は、給水栓2cによってコップに給水された水を用いてうがいをすることができる。
【0027】
図2に示すように、ベースンユニット2は、ベースン制御部16を備えている。ベースン制御部16は、診療装置10で用いられる水の流れを制御する。このように、ベースン制御部16は、診療装置10で用いられる水の流れを制御する。ベースン制御部16は、ベースン制御基板上に実装されたCPU、ROM、およびRAMなどによって構成される。
【0028】
さらに、ベースンユニット2は、照明制御部17を備えている。照明制御部17は、照明装置7の照明および消灯を制御する。このように、照明制御部17は、照明装置7の照明および消灯を制御する。照明制御部17は、照明制御基板上に実装されたCPU、ROM、およびRAMなどによって構成される。
【0029】
また、ベースンユニット2は、診療装置10内の履歴情報を収集する履歴収集部18を備えている。履歴収集部18は、履歴収集基板上に実装されたCPU、ROM、およびRAMなどによって構成され、ベースンユニット2の保守扉2dの内側に設けられている。そのため、所定の工具を用いて保守扉2dを開けなければ、履歴収集基板からメモリ18bを取外すことができない。なお、履歴収集部18は、「収集部」の一実施形態である。また、メモリ18bは、「記憶部」の一実施形態である。
【0030】
履歴収集基板には、分析用コンピュータ20に対して履歴情報を出力するための出力ポート18aが設けられており、保守作業者が保守扉2dを開け、出力ポート18aに分析用コンピュータ20からの配線を接続することで、収集した履歴情報を取り出すことができる。もちろん、出力ポート18aを介して分析用コンピュータ20と診療装置10の履歴収集部18とが常時接続される構成でもよい。
【0031】
履歴収集部18が収集した履歴情報は、履歴収集基板から着脱可能なメモリ18bに記憶される。メモリ18bは、メモリカードなどのような不揮発メモリで構成された記憶媒体で、保守作業者が保守扉2dを開けて履歴収集基板から取り外すことができる。そのため、出力ポート18aに分析用コンピュータ20からの配線を接続しなくても、履歴収集基板からメモリ18bを取り外し、メモリ18bを分析用コンピュータ20に接続するだけでも収集した履歴情報を取り出すことができる。なお、履歴収集基板に出力ポート18aが設けられていない構成であってもよく、履歴収集基板に出力ポート18aが設けられていない場合、メモリ18bのみによって、診療装置10から分析用コンピュータ20に履歴情報を取り出すことになる。
【0032】
診療装置10内の各制御基板間の通信には、CAN(Controller Area Network)通信などの関連する公知の技術が適用されている。診療装置10では、チェア制御基板、操作制御基板、駆動制御基板、モニタ制御基板、保持解除特定制御基板、ベースン制御基板、および照明制御基板などのすべての制御基板がCAN通信で互いに通信して、互いの状況を共有して制御を行っている。CAN通信では、各制御基板での制御に関する情報を含む通信データを通信パケットにして、各制御基板で互いに通信を行っている。なお、各制御基板間の通信では、各制御基板での制御に関する情報を含む通信データが送受信されれば、通信パケットで送受信する必要はない。ここで、制御に関する情報には、各制御基板で制御するスイッチ、センサ、アクチュエータ、ステータスなどの情報が含まれる。
【0033】
履歴収集基板を他の制御基板とCAN通信できるように接続することで、履歴収集部18は、各制御基板での制御に関する情報を履歴情報として収集することが可能になる。履歴収集部18は、例えば、CAN通信を介して、シート駆動部11から送られてくるチェアユニット位置制御の情報、操作制御部12から送られてくる診療器具4の情報、ベースン制御部16から送られてくるコップ給水電磁弁制御の情報、照明制御部17から送られてくる照明装置7の点灯制御の情報などを含む通信パケットから各種の制御に関する情報を履歴情報として収集する。なお、履歴収集部18が収集する履歴情報には、診療装置10で行われた操作の操作履歴、および診療装置10で検出した検出履歴を少なくとも含む。
【0034】
表示モニタ6は、
図1に示すように、トレーテーブル3から上方に延びるアームに設けられている。表示モニタ6は、表示領域が大きい画面を有している。つまり、表示モニタ6は、多くの情報量を表示することができる。
【0035】
表示モニタ6は、制御装置9が備える表示モニタ制御部15を介して操作制御部12に接続されている。表示モニタ制御部15は、操作制御部12からの指令に基づき、画像および操作画像に関連した関連画像などを表示モニタ6に表示させる。
【0036】
次に、分析用コンピュータ20について詳しく説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る分析用コンピュータ20の構成を説明するためのブロック図である。分析用コンピュータ20は、オペレーティングシステム(OS:Operating System)を含む各種プログラムを実行するCPU200と、CPU200でのプログラムの実行に必要なデータを一時的に記憶するメモリ部212と、CPU200で実行されるプログラムを不揮発的に記憶するハードディスク部(HDD:Hard Disk Drive)210とを含む。また、ハードディスク部210には、分析を実現するためのプログラムが予め記憶されており、このようなプログラムは、CD−ROMドライブ214などによって、それぞれCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)214aなどの記憶媒体から読み取られる。
【0037】
CPU200は、キーボードやマウスなどからなる入力部208を介してユーザなどからの指示を受取るとともに、プログラムの実行によって分析される分析結果などを、ディスプレイ出力部204を介して表示装置204aへ出力する。各部は、バス202を介して互いに接続される。また、インターフェース部206は、診療装置10の出力ポート18aに接続することができる。なお、分析用コンピュータ20と診療装置10との接続は、出力ポート18aを介して有線で接続される場合を説明したが、無線で接続されてもよい。
【0038】
次に、本実施の形態に係る診療装置10において、履歴収集部18が各制御基板から履歴情報を収集する処理について詳しく説明する。
図4は、各制御基板間で通信されている通信パケットの内容を説明するための図である。なお、
図4に示す通信パケットの内容は、一例であり、もちろんその他のデータも通信パケットに割り当てられている。
【0039】
各制御基板は、CAN通信を行っており、各制御基板で制御するスイッチ、センサ、アクチュエータ、ステータスなどの情報(制御に関する情報)を通信パケットにのせて通信している。通信パケットでは、診療装置10に設けられた全ての制御基板において、それぞれの制御基板によって制御されるスイッチ、センサ、アクチュエータ、ステータスなどの情報がそれぞれ識別可能となるように予めフォーマットが決められている。具体的に、
図4に示す通信パケットでは、駆動制御基板(診療器具駆動部14)に通信パケットIDとして”1”を、チェア制御基板(シート駆動部11)に通信パケットIDとして”2”を、ベースン制御基板(ベースン制御部16)に通信パケットIDとして”3”を、操作制御基板(操作制御部12)に通信パケットIDとして”4”をそれぞれ割り当てている。
【0040】
通信パケットID”1”の通信パケットには、診療器具駆動部14が制御するセンサAの情報を”DATA1”に、センサBの情報を”DATA2”に、ステータスAの情報を”DATA3”に、ステータスBの情報を”DATA4”にそれぞれ割り当てている。センサAは、例えば、診療器具駆動部14が制御するエアータービンハンドピースの診療器具4aに対する駆動信号を検出するためのセンサである。センサBは、例えば、診療器具駆動部14が制御するマイクロモータハンドピースの診療器具4cに対する駆動信号を検出するためのセンサである。ステータスAは、例えば、診療器具駆動部14が駆動する診療器具4aの駆動モードを示す情報である。ステータスBは、例えば、診療器具駆動部14が駆動する診療器具4cの駆動モードを示す情報である。
【0041】
通信パケットID”2”の通信パケットには、シート駆動部11が制御するセンサCの情報を”DATA1”に、アクチュエータAの情報を”DATA2”に、アクチュエータBの情報を”DATA3”に、アクチュエータCの情報を”DATA4”にそれぞれ割り当てている。センサCは、例えば、診療椅子1に設けられたアクチュエータの異常を検出するためのセンサである。アクチュエータAは、例えば、診療椅子1のヘッドレスト1aに設けられたアクチュエータである。アクチュエータBは、例えば、診療椅子1の背もたれ1bに設けられたアクチュエータである。アクチュエータCは、例えば、診療椅子1の座面シート1cに設けられたアクチュエータである。
【0042】
同様に、通信パケットID”3”の通信パケットには、ベースン制御部16が制御するアクチュエータDの情報を”DATA1”に、アクチュエータEの情報を”DATA2”に、アクチュエータFの情報を”DATA3”に、ステータスCの情報を”DATA4”にそれぞれ割り当てている。通信パケットID”4”の通信パケットには、操作制御部12が制御するスイッチAの情報を”DATA1”に、スイッチBの情報を”DATA2”に、スイッチCの情報を”DATA3”に、スイッチDの情報を”DATA4”にそれぞれ割り当てている。
【0043】
各制御基板は、
図4に示す通信パケットにスイッチ、センサ、アクチュエータ、ステータスなどの情報をのせて、他の制御基板に対して送信することで、全ての制御基板が互いに連携して動作することを可能にしている。そのため、通信パケットを受信可能な配線に対して履歴収集基板を接続することで、履歴収集部18は、複数の制御基板から各制御基板での制御に関する情報を履歴情報として収集することが可能となる。
【0044】
図5は、本発明の実施の形態1に係る履歴収集部18が収集した履歴情報を説明するための図である。各制御基板間で通信される通信パケットは、
図4に示すフォーマットに従い、イベントコードを付して情報を識別している。例えば、駆動制御基板(通信パケットID”1”)のセンサA(”DATA1”)の情報が通信パケットに含まれている場合、履歴収集部18は、駆動制御基板を識別する情報である通信パケットID”1”およびセンサAを識別する情報に対応するイベントコード”110001”を生成して履歴情報に記憶する。そのため、履歴収集部18が収集する履歴情報には、通信パケットIDおよびセンサ等を識別する情報に対応したイベントコードが必ず記憶されているので、どの制御基板のどのセンサ等の情報であるかを識別することが可能である。具体的に、駆動制御基板(通信パケットID”1”)のセンサB(”DATA2”)、ステータスA(”DATA3”)およびステータスB(”DATA4”)のそれぞれに対応するイベントコードとして”110002”、”110003”および”110004”が割り当てられている。また、チェア制御基板(通信パケットID”2”)のセンサC(”DATA1”)、アクチュエータA(”DATA2”)、アクチュエータB(”DATA3”)およびアクチュエータC(”DATA4”)のそれぞれに対応するイベントコードとして”210001”、”210002”、”210003”および”210004”が割り当てられている。
【0045】
さらに、履歴収集部18は、通信パケットに含まれるデータに対応するイベントパラメータを生成して履歴情報に記憶する。例えば、駆動制御基板のセンサA(”DATA1”)がOFF状態である情報を通信パケットが含んでいる場合、履歴収集部18は、センサAがOFF状態の情報”DATA1”に対応するイベントパラメータ”0”を生成して履歴情報に記憶する。なお、履歴収集部18が収集する履歴情報には、イベントコードおよびイベントパラメータとともに、日付および時刻の情報なども記憶される。履歴収集部18では、後述するように、全ての通信パケットを記憶するのではなく、通信パケットに含まれる通信パケットIDおよびデータの時間的差分に変化があった場合(イベントが発生した場合)に、イベントコードおよびイベントパラメータを生成して履歴情報に記憶している。
【0046】
具体的に、
図5に示す履歴情報では、イベントコード”110001”のイベントパラメータが”0”の情報を日付(2017/5/25)および時刻(9:00:00)の情報と共にメモリ18b(
図2参照)に記憶されている。同様に、
図5に示す履歴情報では、イベントコード”210002”のイベントパラメータが”0”の情報を日付(2017/5/25)および時刻(9:00:00)の情報と共にメモリ18b(
図2参照)に記憶されている。ここで、イベントコード”210002”は、チェア制御基板(通信パケットID”2”)のアクチュエータA(”DATA2”)であることを示し、イベントパラメータ”0”は、アクチュエータAがOFF状態であることを示している。
【0047】
CAN通信では、制御基板が制御する対象に変化がなくても通信パケットに情報をのせて他の制御基板に送信している。具体的に、エアータービンハンドピースの診療器具4aを動作させていない場合、駆動制御基板のセンサAがOFF状態である情報が継続して通信パケットに含まれて他の制御基板に送信される。そのため、履歴収集部18は、駆動制御基板から送信されてくる通信パケットからセンサAのOFF状態の情報を全て収集してメモリ18bに記憶した場合、記憶する情報量が膨大になり、メモリ18bに記憶できる容量を短時間で超えてしまうことになる。
【0048】
そこで、本実施の形態に係る履歴収集部18では、制御基板が制御する対象に変化があった場合(イベントが発生した場合)に通信パケットから履歴情報を収集する。
図6は、本発明の実施の形態1に係る履歴収集部18が履歴情報を収集するタイミングおよび分析結果を説明するための図である。
図6(a)では、履歴情報を収集する対象として駆動制御基板(通信パケットID”1”)のセンサA(”DATA1”)と、チェア制御基板(通信パケットID”2”)のアクチュエータA(”DATA2”)とが図示されている。また、履歴収集部18は、通信パケットから履歴情報を収集するサンプリングするポイントを1秒間隔としている。
【0049】
履歴収集部18は、日付(2017/5/25)の時刻(9:00:00)から履歴情報の収集を開始している。まず、履歴収集部18は、時刻(9:00:00)に、センサAがOFF状態、アクチュエータAがOFF状態である情報を収集し、
図5に示すように履歴情報をメモリ18bに記憶する。
【0050】
次に、履歴収集部18は、時刻(9:00:01)に情報を収集するが、センサAがOFF状態、アクチュエータAがOFF状態のままであるため、
図5に示すように履歴情報としてメモリ18bに記憶しない。
【0051】
次に、履歴収集部18は、時刻(9:00:02)に情報を収集し、センサAがON状態に変化しているので、
図5に示すように履歴情報をメモリ18bに記憶する。具体的に、履歴収集部18は、イベントコード”110001”のイベントパラメータが”1”の情報を、日付(2017/5/25)および時刻(9:00:02)の情報と共にメモリ18bに記憶させる。なお、履歴収集部18は、アクチュエータAがOFF状態のままであるため、アクチュエータAに関して
図5に示すように履歴情報をメモリ18bに記憶しない。なお、履歴収集部18は、時刻(9:00:07)も同様の処理を行う。
【0052】
履歴収集部18は、時刻(9:00:03,05,09)に情報を収集するが、センサAがOFF状態、アクチュエータAがOFF状態のままであるため、
図5に示すように履歴情報としてメモリ18bに記憶しない。
【0053】
履歴収集部18は、時刻(9:00:04,08)に情報を収集し、アクチュエータAがON状態に変化しているので、
図5に示すように履歴情報をメモリ18bに記憶する。具体的に、履歴収集部18は、イベントコード”210002”のイベントパラメータが”1”の情報を、日付(2017/5/25)および時刻(9:00:04,08)の情報と共にメモリ18bに記憶させる。なお、履歴収集部18は、センサAがOFF状態のままであるため、センサAに関して
図5に示すように履歴情報をメモリ18bに記憶しない。
【0054】
履歴収集部18は、時刻(9:00:06)に情報を収集し、アクチュエータAがOFF状態に変化しているので、
図5に示すように履歴情報をメモリ18bに記憶する。具体的に、履歴収集部18は、イベントコード”210002”のイベントパラメータが”0”の情報を、日付(2017/5/25)および時刻(9:00:06)の情報と共にメモリ18bに記憶させる。なお、履歴収集部18は、センサAがOFF状態のままであるため、センサAに関して
図5に示すように履歴情報をメモリ18bに記憶しない。
【0055】
履歴収集部18は、
図6(a)で説明したように前回記憶した履歴情報に対して変化した履歴情報を通信パケットから収集し、メモリ18bに記憶させている。そのため、メモリ18bに記憶される履歴情報は、
図5に示すように情報量を抑えることができ、容量の大きいメモリ18bを用意する不必要がない。また、分析用コンピュータ20を履歴収集基板の出力ポート18aに接続して、メモリ18bに記憶した履歴情報を取り出す場合でも、メモリ18bに記憶した履歴情報の情報量を抑えることで、分析用コンピュータ20は、短時間でメモリ18bに記憶した履歴情報を取り出すことができる。
【0056】
分析用コンピュータ20は、メモリ18bから取り出した履歴情報を分析する。例えば、
図5に示す履歴情報では、センサAおよびアクチュエータAがどのように変化したのかが把握し難い。そこで、分析用コンピュータ20は、
図5に示す履歴情報の時間変化を
図6(b)に示すグラフで表示する。
図6(b)に示すグラフでは、センサAが時刻(9:00:02)から時刻(9:00:07)までON状態で、その間の時刻(9:00:04)から時刻(9:00:06)までアクチュエータAがON状態となっていたことを一目で把握することができる。
【0057】
分析用コンピュータ20は、表示装置204aを備えているので、診療装置10で記憶した履歴情報を、
図6(b)で示したような時系列のチャートとして表示装置204aに表示することができる。表示装置204aに履歴情報の時系列のチャートを表示することで、診療装置10の履歴情報の時間的変化を把握し易くなる。
【0058】
以上のように、本実施の形態1に係る医療用診療装置(診療装置10)は、複数の制御基板の間で通信されている通信パケットから各種の制御の履歴情報を収集するので、既存の基板やシステム構成を改変することなく履歴情報を収集することができる。特に、履歴収集基板は、通信パケットを受信してモニタリングするだけであり、装置全体の制御に全く影響を与えることがない。つまり、履歴情報を収集するためのアルゴリズムが、装置のシステムに全く影響を与えることがないので、履歴情報を収集する装置に容易に変更することが可能である。また、本実施の形態1に係る医療用診療装置は、前回記憶した履歴情報に対して変化した履歴情報を記憶するので、記憶する履歴情報の情報量を抑えることができる。
【0059】
本実施の形態1に係る医療用診療システムは、履歴情報を分析する分析用コンピュータ20を備えるので、診療装置10で収集した履歴情報の分析が可能となる。具体的に、分析用コンピュータ20は、履歴情報の時系列のチャートを作成することで、診療装置10で収集した履歴情報の見える化を行うことが可能となる。
【0060】
(実施の形態2)
本実施の形態1に係る医療用診療システムでは、医院に設置された診療装置10の履歴情報を収集し、分析するだけであった。しかし、収集した診療装置10の履歴情報および分析結果のうち少なくとも一方を、医院内の複数の診療装置で共用することもできる。また、複数の医院で設置されている診療装置10から収集した履歴情報および分析した分析結果のうち少なくとも一方を、複数の医院内に設置されている診療装置で共用することもできる。例えば、複数の医院に設置され医療用診療システムを、メーカが運営するクラウド上のサーバにそれぞれ接続して、収集した診療装置10の履歴情報および分析した分析結果を共用する。具体的に、
図7は、複数の医療用診療システムを接続したシステムを説明するための概略図である。
図7に示すシステムでは、A歯科医院に設置された医療用診療システムの分析用コンピュータ20Aとクラウド200上のサーバ201とを、ネットワーク回線を介して接続する。当該システムでは、同じように、他にX歯科医院に設置された医療用診療システムの分析用コンピュータ20Xとクラウド200上のサーバ201とを、ネットワーク回線を介して接続する。つまり、当該システムでは、A歯科医院からX歯科医院まで設置された複数の医療用診療システムで収集した診療装置10の履歴情報および分析した分析結果のうち少なくとも一方を、クラウド200上のサーバ201を介して共用することができる。なお、各医院に設けられた分析用コンピュータ20は、インターフェース部206を介してネットワーク回線と接続している。
【0061】
クラウド200上のサーバ201では、複数の医院から集まった診療装置10の履歴情報および分析した分析結果を集計して全体の平均値を算出したり、特定地域の医院から集まった診療装置10の履歴情報および分析した分析結果を集計し特定地域の平均値を算出したりすることができる。また、クラウド200上のサーバ201では、分析した診療装置10の履歴情報および分析した分析結果から診療装置10の改善情報を各医院に提供したり、他の医院での診療装置10の履歴情報および分析した分析結果と比較することで診療装置10の利用方法や経営方法についての提案情報を提供したりすることができる。
【0062】
以上のように、本実施の形態2に係る医療用診療システムでは、診療装置10で記憶した履歴情報および分析した分析結果のうち少なくとも一方を、分析用コンピュータ20を介してサーバ201に送信可能である。つまり、分析用コンピュータ20が、通信部に相当している。
【0063】
なお、分析用コンピュータ20は各医院に設ける必要はなく、各医院の診療装置10から収集した履歴情報および分析した分析結果のうち少なくとも一方を、クラウド200上のサーバ201に送信できる通信部(例えば、送信用サーバなど)があればよい。また、分析用コンピュータ20で行う履歴情報の分析は、クラウド200上のサーバ201において一括で行ってもよい。
【0064】
(変形例)
(1)前述の実施の形態に係る診療装置10は、チェアユニットであると説明した。しかし、診療装置は、チェアユニット以外であってもよい。具体的に、診療装置は、X線撮影装置やレーザ治療装置などあってもよい。X線撮影装置やレーザ治療装置など診療装置に履歴収集部を設け、当該履歴収集部が、X線撮影装置やレーザ治療装置など診療装置から操作履歴などの履歴情報を収集する。
【0065】
(2)前述の実施の形態に係る診療装置10では、診療装置のそれぞれに履歴収集部18が設けられていると説明した。しかし、診療装置10が複数設けられている場合、特定の診療装置10に履歴収集部18を設け、他の診療装置10の履歴情報を収集してもよい。また、診療装置10の外部に設けた履歴収集部(例えば、履歴収集サーバなど)に複数の診療装置10から履歴情報を収集させてもよい。さらに、X線撮影装置やレーザ治療装置などの診療装置からの履歴情報についても、特定の診療装置10に設けた履歴収集部、または外部に設けた履歴収集部で収集してもよい。
【0066】
(3)前述の実施の形態に係る診療装置10では、履歴収集部18が複数の制御基板の全ての制御に関する情報(例えば、各制御基板で制御するスイッチ、センサ、アクチュエータ、ステータスなどの情報)を、収集する履歴情報の対象とすると説明した。しかし、履歴収集部18は、複数の制御基板で行う各種の制御のうち、選別した一部の制御に関する情報を、収集する履歴情報の対象としてもよい。つまり、履歴収集部18は、複数の制御基板の全ての制御に関する情報を履歴として収集するのではなく、予め収集の対象となるイベントコードを決めておき、イベントコードに基づいて選別した一部の制御の履歴情報を収集する。例えば、履歴収集部18は、収集の対象となるイベントコードを”110001”および”210002”に決めておくと、通信パケットからイベントコードが”110001”および”210002”のイベントパラメータのみ収集して、履歴情報としてメモリ18bに記憶する。
【0067】
(4)分析用コンピュータ20は、医院経営のアドバイス情報を出力してもよい。例えば、分析用コンピュータ20は、分析した分析結果と全国平均のデータとを比較し、医院経営の確立のために診療装置の利用方法や、診療装置の追加などのアドバイス情報を出力する。
【0068】
なお、分析用コンピュータ20は、診療装置10の使用時間や各種のインスツルメントの使用時間を分析することができるので、これらの使用時間から故障予測や、消耗部品の交換時期の報知も可能である。
【0069】
(5)前述の実施の形態に係る医療用診療システムでは、1つの例示的形態として、歯科診療に用いることが可能な医療用診療装置を備える医療用診療システムについて説明した。しかし、当該医療用診療システムは、歯科に限らず、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、および獣医科など、あらゆる医科の診療にも適用することが可能である。また、診療には、診断および治療が含まれる。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。