【実施例】
【0030】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例及び比較例において、下記繊維を用いた。
(1)不溶性コラーゲン繊維:下記の製造例1で作製したものを用いた。
<不溶性コラーゲン繊維の製造例1>
牛の床皮を原料とし、アルカリで可溶化した皮片に30重量%に希釈した過酸化水素水溶液を投入後、乳酸水溶液で溶解し、pH3.5、固形分7.5重量%に調整した原液を作製した。原液を減圧下で撹拌脱泡機((株)ダルトン製、8DMV型)により撹拌脱泡処理し、ピストン式紡糸原液タンクに移送し、さらに減圧下で静置して、脱泡を行った。かかる原液をピストンで押し出した後、ギアポンプ定量送液し、孔径10μmの焼結フィルターで濾過後、孔径0.07mm、孔長0.5mm、孔数1000の紡糸ノズルを通し、硫酸ナトリウム20重量%を含有してなる25℃の凝固浴(ホウ酸及び水酸化ナトリウムでpH11に調整)へ紡出速度5m/分で吐出した。次に、得られた再生コラーゲン繊維を、エピクロロヒドリン1.7重量%、水酸化ナトリウム0.0246重量%、及び硫酸ナトリウム(東ソー(株)製の中性無水芒硝を使用)17重量%を含有した水溶液に25℃で4時間浸漬した後、さらに反応液温度を43℃に昇温して2時間浸漬した。反応終了後に反応液を除去後、25℃の水を用いて3回バッチ水洗を行った。この後、硫酸アルミニウム(日本軽金属(株)製の硫酸バンドを使用)5.0重量%、クエン酸三ナトリウム塩(扶桑化学工業(株)製精製クエン酸ナトリウムMを使用)0.9重量%、水酸化ナトリウム1.2重量%を含有した水溶液に30℃で浸漬し、反応開始から2時間後、3時間後および4時間後にそれぞれ5重量%水酸化ナトリウム水溶液を反応液に添加した。その後、25℃の水を用いて3回バッチ水洗を行った。水洗した繊維をプルロニック型ポリエーテル系静電防止剤からなる油剤を満たした浴槽に浸漬して油剤を付着させた。50℃に調整した熱風対流式乾燥機を用いて緊張下で乾燥させ、単繊維繊度2dtexの不溶性コラーゲン繊維(トウ)を得た。ギアクリンパーでクリンプを付与したトウをロータリーカッターで繊維長51mmにカットすることで単繊維繊度2dtex、繊維長51mmの不溶性コラーゲン繊維を得た。
【0032】
(2)レーヨン繊維:ダイワボウレーヨン株式会社社製、製品名「CORONA」、繊度1.7dtex、繊維長51mm
(3)コットン:丸三産業社製、晒し綿
(4)ウール:明和製、品名「60Sウール毛」
【0033】
(
参考例1)
上述した不溶性コラーゲン繊維を用い、不溶性コラーゲン繊維100重量%からなる繊維ウェブを作製し、一般的な水流交絡法により繊維間を交絡し、乾燥させることでスパンレース不織布(目付:40g/m
2、厚み0.51mm)を作製した。
【0034】
(
参考例2)
スパンレース不織布の目付が60g/m
2、厚みが0.66mmになるようにした以外は、
参考例1と同様にしてスパンレース不織布を作製した。
【0035】
(
参考例3)
スパンレース不織布の目付が80g/m
2、厚みが0.71mmになるようにした以外は、
参考例1と同様にしてスパンレース不織布を作製した。
【0036】
(比較例1)
上述したレーヨン繊維を用い、レーヨン繊維100重量%からなる繊維ウェブを作製し、一般的な水流交絡法により繊維間を交絡し、乾燥させることでスパンレース不織布(目付:40g/m
2、厚み0.53mm)を作製した。
【0037】
(比較例2)
スパンレース不織布の目付が60g/m
2、厚みが0.60mmになるようにした以外は、比較例1と同様にしてスパンレース不織布を作製した。
【0038】
(比較例3)
スパンレース不織布の目付が80g/m
2、厚みが0.55mmになるようにした以外は、比較例1と同様にしてスパンレース不織布を作製した。
【0039】
参考例1〜3及び比較例1〜3のスパンレース不織布を用いた場合の水分補給性を下記のように角質水分量の変化率を測定算出することで評価した。この結果を下記表1に示した。また、角質水分量の変化率の結果を
図1に示した。
【0040】
(水分補給性の評価1)
各不織布から2.5cm×2.5cmの正方形の試験片を切り取り、得られた試験片をモデル化粧料として用いた濃度が10重量%のグリセリン水溶液に30分間浸漬した。浸漬後の試験片の表面の水分を切り、被験者の前腕の内側部に10分間接触させた後、試験片を取り除いた。被験者は、39〜49歳までの健康で肌に異常のない日本人女性8名とした。試験片を接触する前に、肌の角質水分量(初期角質水分量)を測定した。また、試験片を除去した直後を0分とし、15分経過後、30分経過後、60分経過後及び120分経過後の肌の角質水分量を測定した。その後、下記式に基づいて、初期角質水分量に対する各経過時間における角質水分量の変化量(各経過時間の角質水分量−初期角質水分量)の割合、すなわち、角質水分量の変化率を算出した。角質水分量は、肌角層水分量測定装置「SKICON−200EX」(株式会社ヤヨイ)を用いて測定した。測定は各測定部位で5回ずつ行い、最大値と最小値を除いて平均した値を測定値とした。水分補給性試験は、温度20±2℃、相対湿度50±10%の条件下で行った。
角質水分量の変化率=(各経過時間後の角質水分量−初期角質水分量)/初期角質水分量×100%
【0041】
【表1】
【0042】
上記表1の結果及び
図1から、
参考例1〜3のコラーゲン繊維からなるスパンレース不織布に上述したモデル化粧料を含浸させて肌にパックした場合の方が、比較例のレーヨン繊維からなるスパンレース不織布を用いた場合より、モデル化粧料を付与した後、各測定時間において、角質水分量の変化率が高く、水分補給性に優れることが分かった。
参考例1〜3のコラーゲン繊維からなるスパンレース不織布を用いると、モデル化粧料を含浸した該不織布(美容フェイスマスク用シート)の肌へのパック実施後、肌への化粧料の移行が高くなっていることが分かった。
【0043】
(実施例4)
上述した不溶性コラーゲン繊維及びコットンを、下記表2に示す配合割合で混綿して繊維ウェブを作製し、一般的な水流交絡法により繊維間を交絡し、乾燥させてスパンレース不織布(目付:40g/m
2、厚み0.34mm)を作製した。
【0044】
(実施例5)
上述した不溶性コラーゲン繊維及びコットンを、下記表2に示す配合割合で混綿して繊維ウェブを作製した以外は、実施例4と同様にして、スパンレース不織布(目付:40g/m
2、厚み0.36mm)を作製した。
【0045】
(比較例4)
上述したコットンを用い、コットン100重量%からなる繊維ウェブを作製し、一般的な水流交絡法により繊維間を交絡し、乾燥させてスパンレース不織布(目付:40g/m
2、厚み0.33mm)を作製した。
【0046】
実施例4、5及び比較例4のスパンレース不織布を用いた場合の水分補給性を下記のように角質水分量の変化率を測定算出することで評価した。この結果を下記表2に示した。また、角質水分量の変化率の結果を
図2に示した。
【0047】
(水分補給性の評価2)
各不織布から2cm×2cmの正方形の試験片を切り取り、得られた試験片をモデル化粧料として用いた濃度が10重量%のグリセリン水溶液に30分間浸漬した。浸漬後の試験片の表面の水分を切った後、被験者の前腕の内側部に10分間接触させた後、試験片を取り除いた。被験者は、20〜59歳までの健康で肌に異常のない日本人女性5名とした。試験片を接触する前に、肌の角質水分量(初期角質水分量)を測定した。また、試験片を除去した直後を0分とし、10分経過後、20分経過後、30分経過後、60分経過後及び90分経過後の肌の角質水分量を測定した。その後、下記式に基づいて、初期角質水分量に対する各経過時間における角質水分量の変化量(各経過時間の角質水分量−初期角質水分量)の割合、すなわち、角質水分量の変化率を算出した。角質水分量は、肌角層水分量測定装置「SKICON−200EX」(株式会社ヤヨイ)を用いて行った。測定は各測定部位で5回ずつ行い、最大値と最小値を除いて平均した値を測定値とした。水分補給性試験は、温度20±1℃、相対湿度50±5%の条件下で行った。
角質水分量の変化率=(各経過時間後の角質水分量−初期角質水分量)/初期角質水分量×100%
【0048】
【表2】
【0049】
上記表2の結果及び
図2から、実施例4及び5のコットンにコラーゲン繊維を混綿したスパンレース不織布に上述したモデル化粧料を含浸させて肌にパックした場合の方が、比較例4のコットン100重量%からなるスパンレース不織布を用いた場合より、モデル化粧料を付与した後、各測定時間において、角質水分量の変化率が高く、水分補給性に優れ、肌への化粧料の移行が向上していることが分かった。
【0050】
(
参考例4)
上述した不溶性コラーゲン繊維100重量%からなる繊維ウェブを作製し、一般的な水流交絡法により繊維間を交絡し、乾燥させてスパンレース不織布(目付:60g/m
2、厚み0.65mm)を作製した。
【0051】
(実施例7及び8)
上述した不溶性コラーゲン繊維及びレーヨン繊維を、下記表3に示す配合割合で混綿して繊維ウェブを作製した以外は、
参考例4と同様にして、下記表3に示す目付及び厚みを有するスパンレース不織布を作製した。
【0052】
(比較例5)
上述したレーヨン繊維100重量%からなる繊維ウェブを作製した以外は、
参考例4と同様にして、スパンレース不織布(目付:60g/m
2、厚み0.52mm)を作製した。
【0053】
(比較例6)
上述した不溶性コラーゲン繊維及びウールを、下記表3に示す配合割合で混綿して繊維ウェブを作製した以外は、
参考例4と同様にして、スパンレース不織布(目付:60g/m
2、厚み0.97mm)を作製した。
【0054】
(比較例7)
上述したレーヨン繊維100重量%からなる繊維ウェブを作製し、一般的なニードルパンチ法により繊維間を交絡させてニードルパンチ不織布(目付:60g/m
2、厚み1.02mm)を作製した。
【0055】
参考例4、実施例
7〜8及び比較例5の不織布を用いた場合の水分補給性を下記のように角質水分量の変化率を測定算出することで評価した。この結果を下記表3に示した。また、角質水分量の変化率の結果を
図3に示した。
【0056】
(水分補給性の評価3)
各不織布から2cm×2cmの正方形の試験片を切り取り、得られた試験片をモデル化粧料として用いた濃度が10重量%のグリセリン水溶液に30分間浸漬した。浸漬後の試験片の表面の水分を切った後、被験者の前腕の内側部に10分間接触させた後、試験片を取り除いた。被験者は、20〜59歳までの健康で肌に異常のない日本人女性10名とした。試験片を接触する前に、肌の角質水分量(初期角質水分量)を測定した。また、試験片を除去した直後を0分とし、10分経過後、20分経過後、30分経過後、60分経過後及び90分経過後の肌の角質水分量を測定した。その後、下記式に基づいて、初期角質水分量に対する各経過時間における角質水分量の変化量(各経過時間の角質水分量−初期角質水分量)の割合、すなわち、角質水分量の変化率を算出した。角質水分量は、肌角層水分量測定装置「SKICON−200EX」(株式会社ヤヨイ)を用いて行った。測定は各測定部位で5回ずつ行い、最大値と最小値を除いて平均した値を測定値とした。水分補給性試験は、温度20±1℃、相対湿度50±5%の条件下で行った。
角質水分量の変化率=(各経過時間後の角質水分量−初期角質水分量)/初期角質水分量×100%
【0057】
【表3】
【0058】
上記表3及び
図3から、
参考例4のコラーゲン繊維100重量%からなるスパンレース不織布、実施例7及び8のコラーゲン繊維とレーション繊維を混綿したスパンレース不織布に上述したモデル化粧料を含浸させて肌にパックした場合の方が、比較例5のレーヨン繊維100重量%からなるスパンレース不織布を用いた場合より、モデル化粧料を付与した後、各測定時間において、角質水分量の変化率が高く、水分補給性に優れ、肌への化粧料の移行が向上していることが分かった。
【0059】
参考例1〜4、実施例
4、5、7、8及び比較例1〜7の不織布の肌への垂直密着性及び垂直保持時の液保持性、並びに水平密着性及び水平保持時の液保持性を下記の評価し、その結果に上記表4に示した。
【0060】
(肌への垂直密着性及び垂直保持時の液保持性)
各不織布から5cm×5cmの正方形の試験片(シート)を切り取り、試験片にモデル化粧料として用いた濃度が10重量%のグリセリン水溶液を飽和量になるまで含浸させた後、余剰液が垂れなくなるまで液切りをしたシートを被験者の前腕の内側部に貼り付け、前腕を垂直に保ちつつ10分間放置し、肌からのシート浮き上がりを観察し、垂直密着性を下記の3段階の基準で評価した。また、10分間放置する間に、シートからの液垂れの回数を記録して、垂直保持時の液保持性を評価した。液垂れの回数の少ないほど、液保持性に優れることになる。各不織布の被験者は5名とした。
非常に良い:全く浮き上がりが観察されない。
良い:端の一箇所が浮き上がってくることがある。
普通:端の数カ所が浮き上がってくることがある。
【0061】
(肌への水平密着性及び水平保持時の液保持性)
各不織布から5cm×5cmの正方形の試験片(シート)を切り取り、試験片にモデル化粧料として用いた濃度が10重量%のグリセリン水溶液を飽和量になるまで含浸させた後約1時間放置した。その後、余剰液が垂れなくなるまで液切りをしたシートを被験者の前腕の内側部に貼り付け、前腕を水平に保ち、シートが肌から浮き上がってくるまでの時間を測定した。シート浮きまでの時間が長いほど、密着性に優れることになる。また、試験片が肌から浮き上がってくるまでの間に、シートからの液垂れの回数を記録して、水平保持時の液保持性を評価した。液垂れの回数の少ないほど、液保持性に優れることになる。各不織布の被験者は5名とし、平均値を取った。
【0062】
【表4】
【0063】
上記表4の結果から分かるように、モデル化粧料を含浸した場合、
参考例1〜
4のコラーゲン繊維からなるスパンレース不織布、実施例4及び5のコットンにコラーゲン繊維を混綿したスパンレース不織布の方が、コットンからなる不織布より、肌への垂直密着性及び水平密着性のいずれも高かった。また、
参考例1〜
4のコラーゲン繊維からなるスパンレース不織布、実施例7及び8のレーヨン繊維にコラーゲン繊維を混綿したスパンレース不織布の方が、レーヨン繊維からなる不織布より、肌への垂直密着性及び水平密着性のいずれも高かった。
【0064】
一方、モデル化粧料を含浸した場合、比較例6のコラーゲン繊維にウールを混綿したスパンレース不織布及び比較例7のコラーゲン繊維からなるニードルパンチ不織布は、垂直保持及び水平保持での液垂れが多く、美容フェイスマスク用シートとして用いることは困難であった。