(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839123
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 11/07 20060101AFI20210222BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20210222BHJP
【FI】
G06F11/07 193
G06N20/00 130
G06F11/07 140A
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-59029(P2018-59029)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-174870(P2019-174870A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】宮本 達史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 雅典
【審査官】
渡部 博樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−026119(JP,A)
【文献】
特開2009−110064(JP,A)
【文献】
宮本達史,DNNを適用したNFV障害業務プロセス管理モデルの提案,電子情報通信学会2018年総合大会講演論文集,P.322
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得するモデル取得部と、
ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得する復旧手順取得部と、
前記復旧手順取得部が取得した障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価と、前記ユーザが選択した障害復旧手順によって前記障害の復旧に成功したか否かを示す情報と、を取得するユーザ評価取得部と、
前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得するユーザ情報取得部と、
前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを設定する重み設定部と、
を備え、
前記重み設定部は、前記障害の復旧に成功した場合、前記ユーザの障害復旧の技能が低いほど前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを大きくする、
情報処理装置。
【請求項2】
ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得するモデル取得部と、
ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得する復旧手順取得部と、
前記復旧手順取得部が取得した障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価と、前記ユーザが選択した障害復旧手順によって前記障害の復旧に成功したか否かを示す情報と、を取得するユーザ評価取得部と、
前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得するユーザ情報取得部と、
前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを設定する重み設定部と、
を備え、
前記重み設定部は、前記障害の復旧に失敗した場合、前記ユーザの障害復旧の技能が高いほど前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを小さくする、
情報処理装置。
【請求項3】
ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補と前記障害復旧手順に付帯する関連設備に関する情報とを出力とするように学習された学習モデルを取得するモデル取得部と、
ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得する復旧手順取得部と、
前記復旧手順取得部が取得した障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価とを取得するユーザ評価取得部と、
前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得するユーザ情報取得部と、
前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みと前記障害復旧手順に付帯する関連設備の調査手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みとを設定する重み設定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項4】
前記重み設定部は、前記ユーザの障害復旧の技能が高い場合は、低い評価よりも、前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを大きくする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ユーザ評価取得部は、前記ユーザを特定するためのユーザ識別子をさらに取得し、
前記ユーザ情報取得部は、ユーザ識別子と、当該ユーザ識別子に対応するユーザの障害復旧に関する技能と、を対応付けて格納するスキルデータベースを参照することにより、前記スキル情報を取得する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
プロセッサが、
ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得するステップと、
ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得するステップと、
取得した前記障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価と、前記ユーザが選択した障害復旧手順によって前記障害の復旧に成功したか否かを示す情報と、を取得するステップと、
前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得するステップと、
前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを設定するステップと、
を実行し、
前記設定するステップにおいて、前記障害の復旧に成功した場合、前記ユーザの障害復旧の技能が低いほど前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを大きくする、
情報処理方法。
【請求項7】
プロセッサが、
ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得するステップと、
ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得するステップと、
取得した前記障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価と、前記ユーザが選択した障害復旧手順によって前記障害の復旧に成功したか否かを示す情報と、を取得するステップと、
前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得するステップと、
前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを設定するステップと、
を実行し、
前記設定するステップにおいて、前記障害の復旧に失敗した場合、前記ユーザの障害復旧の技能が高いほど前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを小さくする、
情報処理方法。
【請求項8】
プロセッサが、
ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補と前記障害復旧手順に付帯する関連設備に関する情報とを出力とするように学習された学習モデルを取得するステップと、
ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得するステップと、
取得した前記障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価とを取得するステップと、
前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得するステップと、
前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みと前記障害復旧手順に付帯する関連設備の調査手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みとを設定するステップと、
を実行する情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得する機能と、
ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得する機能と、
取得した前記障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価と、前記ユーザが選択した障害復旧手順によって前記障害の復旧に成功したか否かを示す情報と、を取得する機能と、
前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得する機能と、
前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを設定する機能と、
を実現させ、
前記設定する機能は、前記障害の復旧に成功した場合、前記ユーザの障害復旧の技能が低いほど前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを大きくする、
プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得する機能と、
ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得する機能と、
取得した前記障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価と、前記ユーザが選択した障害復旧手順によって前記障害の復旧に成功したか否かを示す情報と、を取得する機能と、
前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得する機能と、
前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを設定する機能と、
を実現させ、
前記設定する機能は、前記障害の復旧に失敗した場合、前記ユーザの障害復旧の技能が高いほど前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを小さくする、
プログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補と前記障害復旧手順に付帯する関連設備に関する情報とを出力とするように学習された学習モデルを取得する機能と、
ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得する機能と、
取得した前記障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価とを取得する機能と、
前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得する機能と、
前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みと前記障害復旧手順に付帯する関連設備の調査手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みとを設定する機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ニューラルネットワークをはじめとする教師あり機械学習の技術が急速に発展し、コンピュータに認識や判断等の知的な処理を担わせることが実現しつつある。これらの教師あり機械学習において、生成される学習モデルの性能は、学習に用いる学習データの質に左右される。
【0003】
このため、例えば特許文献1には、矛盾した教師データであっても適切に総誤差評価関数を把握し、計算精度を向上させるための技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−107885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術では、教師データの評価軸が人間の経験則に基づく場合等、定性的で数値化が難しい場合、技術の適用が困難となりうる。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、教師あり機械学習の学習データの質を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、情報処理装置である。この装置は、ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得するモデル取得部と、ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得する復旧手順取得部と、前記復旧手順取得部が取得した障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価とを取得するユーザ評価取得部と、前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得するユーザ情報取得部と、前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを設定する重み設定部と、を備える。
【0008】
前記重み設定部は、前記ユーザの障害復旧の技能が高い場合は、低い評価よりも、前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを大きくしてもよい。
【0009】
前記ユーザ評価取得部は、前記ユーザが選択した障害復旧手順によって前記障害の復旧に成功したか否かを示す情報をさらに取得してもよく、前記重み設定部は、前記障害の復旧に成功した場合、前記ユーザの障害復旧の技能が低いほど前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを大きくしてもよい。
【0010】
前記重み設定部は、前記障害の復旧に失敗した場合、前記ユーザの障害復旧の技能が高いほど前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを小さくしてもよい。
【0011】
前記学習モデルは、ネットワークの障害に関する障害情報を入力として、障害復旧手順に付帯する関連設備に関する情報をさらに出力するように学習されていてもよく、前記重み設定部は、前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順に付帯する関連設備の調査手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みをさらに設定してもよい。
【0012】
前記ユーザ評価取得部は、前記ユーザを特定するためのユーザ識別子をさらに取得してもよく、前記ユーザ情報取得部は、ユーザ識別子と、当該ユーザ識別子に対応するユーザの障害復旧に関する技能と、を対応付けて格納するスキルデータベースを参照することにより、前記スキル情報を取得してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様は、情報処理方法である。この方法において、プロセッサが、ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得するステップと、ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得するステップと、取得した前記障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価とを取得するステップと、前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得するステップと、前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを設定するステップと、を実行する。
【0014】
本発明の第3の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得する機能と、ユーザから受け付けた障害情報を入力とする前記学習モデルの出力を取得する機能と、取得した前記障害復旧手順の中から前記ユーザが選択した障害復旧手順と、前記ユーザによる前記障害復旧手順の有用度の評価とを取得する機能と、前記ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得する機能と、前記ユーザの前記スキル情報に基づいて、前記学習モデルの再学習に用いる学習データにおける前記ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関する前記ユーザによる評価の重みを設定する機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、教師あり機械学習の学習データの質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置の処理過程の概略を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係る重み設定部の重み算出を説明するための図である。
【
図4】実施の形態に係るスキルデータベースのデータ構造を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図6】実施の形態に係る重み設定部が実行する重み設定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態の概要>
実施の形態の概要を述べる。実施の形態に係る情報処理装置は、ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、その障害に対処するための1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを利用する装置である。実施の形態に係る情報処理装置が利用する学習モデルは、例えばニューラルネットワークやSVM(Support Vector Machine)等の教師あり機械学習によって生成される学習モデルである。
【0018】
教師あり機械学習においては、ひとたび機械学習によってモデルを生成した後に、新たな教師データを追加することによって再学習をすることにより、モデルの精度を高めることが行われることもある。ここで、実施の形態に係る情報処理装置が利用する学習モデルを生成するための教師データは、ネットワークの障害に関する障害情報、その障害に対処するための復旧手順、その復旧手順の有用性に関するユーザの評価(例えば、障害が復旧できたか否か)を含んでいる。
【0019】
実施の形態に係る情報処理装置は、ネットワークの障害に関する未知の障害情報を学習モデルに入力することでユーザに障害復旧手順の候補を提示する。さらに、実施の形態に係る情報処理装置は、ユーザが選択した復旧手順と、その復旧手順の有用性に関するユーザの評価、及びユーザを特定するための情報をユーザから受け付ける。これにより、ユーザがネットワークの障害を復旧するため実施の形態に係る情報処理装置を利用する度に、学習モデルを生成するための教師データを収集することができる。
【0020】
ユーザによる「復旧手順の有用性に関するユーザの評価」は、学習モデルの再学習における教師データの「重み」に反映される。具体的には、ユーザによる評価が高い復旧手順は、評価が低い復旧手順と比較して、再学習時においてより強く学習モデルに反映される。すなわち、「復旧手順の有用性に関するユーザの評価」は、再学習の結果生成される学習モデルの性能に大きな影響を及ぼす情報といえる。
【0021】
ここで、「復旧手順の有用性に関するユーザの評価」の評価者は、当然ながらユーザである。このため、復旧手順の有用性に関するユーザの評価は、各ユーザ個々人の主観が反映しうるので、必ずしも客観性の担保が保証されるものではない。「復旧手順の有用性に関するユーザの評価」が学習モデルの性能に影響を及ぼすことを鑑みると、何らかの方法で「復旧手順の有用性に関するユーザの評価」を補正することが好ましい。
【0022】
そこで、実施の形態に係る情報処理装置は、ユーザの障害復旧の技能に基づいて、ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関するユーザによる評価の重みを設定する。情報処理装置は、ユーザの障害復旧の技能をあらかじめ各ユーザについて定量化して記憶しておく。これにより、情報処理装置は、ユーザの主観が影響しうる「復旧手順の有用性に関するユーザの評価」を、客観的に数値化された「ユーザの障害復旧の技能」に基づいて修正することができる。結果として、教師あり機械学習の学習データの質を向上させることができる。
【0023】
<実施の形態に係る情報処理装置の処理過程>
図1は、実施の形態に係る情報処理装置の処理過程の概略を説明するための図である。実施の形態に係る情報処理装置は、学習過程と、モデル適用過程と、再学習用データ生成過程との3つの処理過程を実行しうる。
【0024】
以下、
図1を参照して、実施の形態に係る情報処理装置で行われる処理の過程を(1)から(8)で説明するが、その説明は
図1中の(1)から(8)と対応する。
【0025】
[学習過程]
(1)情報処理装置の管理者は、情報処理装置で機械学習を実行するための学習データを用意する。具体的には、情報処理装置のユーザは、ネットワークの障害情報、障害の復旧手順及びその結果、及び重みを含むデータを学習データとして用意する。
【0026】
(2)情報処理装置は、例えばニューラルネットワーク等の既知の機械学習手法を用いて、学習データを機械学習する。
(3)情報処理装置は、学習データを機械学習することにより、学習モデルを生成する。具体的には、情報処理装置は、ネットワークの障害情報、障害の復旧手順及びその結果、及び重みを含むデータを学習データとして、機械学習により、障害情報を入力とし障害復旧手順を出力する学習モデルを生成する。
【0027】
[モデル適用過程]
(4)情報処理装置は、ネットワークにおける未知の障害情報の入力を受け付ける。
(5)情報処理装置は、受け付けた未知の障害情報を入力として学習モデルを適用することにより、障害を復旧させるための手順の候補リストを出力する。
【0028】
[再学習用データ生成過程]
(6)ネットワークにおける障害を対処するユーザは、情報処理装置が出力した復旧手順の候補リストの中から、1つの復旧手順を選択する。
(7)ユーザは、選択した復旧手順にしたがって、復旧作業を実施する。
【0029】
(8)ユーザは、選択した復旧手順と、その復旧手順に対するユーザの評価を入力する。このとき、情報処理装置は、復旧手順に対するユーザの評価をその復旧手順の重みに変換し、新たな学習データとする。これにより、学習モデルに基づいて情報処理装置が出力した復旧手順に沿ってユーザが復旧作業を実施する度に、新たな学習データが集積されることになる。
【0030】
情報処理装置は、新たな学習データが追加された学習データに基づいて学習モデルを再学習する。以上を繰り返すことにより、実施の形態に係る情報処理装置は、学習モデルの質を継続的に向上させることができる。
【0031】
<実施の形態に係る情報処理装置の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る情報処理装置1は、記憶部10と制御部11とを備える。
【0032】
記憶部10は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0033】
制御部11は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することによってモデル取得部110、未知障害情報入力部111、復旧手順取得部112、ユーザ評価取得部113、ユーザ情報取得部114、重み設定部115、学習データ入力部116、及び機械学習部117として機能する。
【0034】
モデル取得部110は、ネットワークの障害に関する障害情報を入力とし、1又は複数の障害復旧手順の候補を出力とするように学習された学習モデルを取得する。この学習モデルは記憶部10に格納されており、モデル取得部110は、記憶部10を参照して学習モデルを取得する。
【0035】
未知障害情報入力部111は、ネットワークの障害に関する未知の障害情報をユーザから取得する。具体的には、未知障害情報入力部111は、キーボードやポインティング等の図示しない情報処理装置1の入力インタフェースを介して、ユーザから未知障害情報を受け付ける。
【0036】
復旧手順取得部112は、未知障害情報入力部111がユーザから受け付けた障害情報を学習モデルに入力し、出力として障害復旧手順の候補を取得する。ユーザ評価取得部113は、復旧手順取得部112が取得した障害復旧手順の中からユーザが選択した障害復旧手順と、ユーザによる障害復旧手順の有用度の評価と、ユーザを特定するための情報とを取得する。具体的には、ユーザ評価取得部113は、情報処理装置1の入力インタフェースを介して、ユーザから復旧手順、その評価、及び各ユーザに割り当てられたユーザ識別子を取得する。
【0037】
ユーザ情報取得部114は、ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報を取得する。ユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報は、スキルデータベースとしてあらかじめ記憶部10に格納されている。ユーザ評価取得部113は、ユーザ識別子に基づいてスキルデータベースを参照することにより、スキル情報を取得する。
【0038】
重み設定部115は、ユーザのスキル情報に基づいて、学習モデルの再学習に用いる学習データにおけるユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関するユーザによる評価の重みを設定する。これにより、教師あり機械学習の学習データの質を向上させることができる。
【0039】
重み設定部115が重みを設定した障害復旧手順は、その評価とともに新たな学習データとして学習データ入力部116に出力する。機械学習部117は、学習データ入力部116から学習データを取得して、学習モデルを再学習する。機械学習部117は、再学習によって生成した学習モデルを記憶部10に格納する。これにより、機械学習部117は、新たな学習データを追加した学習データに基づいて、学習モデルをアップデートすることができる。
【0040】
[重みの算出]
図3(a)−(b)は、実施の形態に係る重み設定部115の重み算出を説明するための図である。具体的には、
図3(a)は、重み設定部115が障害復旧に関するユーザの成績を算出するために参照する成績データテーブルを示す図である。一方、
図3(b)は、重み設定部115が算出した成績を重みに変換するために参照する変換データテーブルを示す図である。これらのデータテーブルは、記憶部10に格納されている。
【0041】
図3(a)に示すように、成績データテーブルは、ユーザ識別子毎に対応するユーザの成績を格納している。
図3(a)に示す成績データテーブルでは、ユーザ識別子がUID00099のユーザは、障害復旧の経験が15回であり、直近の10回の成功率は90%であることを示している。障害復旧の経験が15回の場合その成績は「60」であり、直近の10回の成功率は90%である場合その成績は「90」である。以下同様である。なお、成績データの各スコアに対応する成績は、値が0から100の間となるように正規化されている。
【0042】
重み設定部115は、ユーザ評価取得部113が取得したユーザ識別子に基づいて、成績データテーブルを参照することにより、ユーザの成績の平均値を算出する。ユーザの成績の平均値は、いわば対応するユーザの障害復旧の技能を示すスキル情報である。重み設定部115は、算出した成績の平均値を、スキル情報としてスキルデータベースに格納する。
【0043】
重み設定部115は、成績の平均値に基づいて
図3(b)に示す変換データテーブルを参照することにより、重みを取得する。
図3(b)に示すように、変換データテーブルは、成績の平均値が大きいほど、重みが大きくなるように設定されている。これにより、重み設定部115は、ユーザの障害復旧の技能が高い場合は、低い評価よりも、ユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関するユーザによる評価の重みを大きくすることができる。
【0044】
[重みの補正]
図4は、実施の形態に係るスキルデータベースのデータ構造を模式的に示す図である。スキルデータベースは記憶部10に格納されており、重み設定部115によって管理されている。
【0045】
図4に示すように、スキルデータベースは、各ユーザを特定するためのユーザ識別子毎に、ユーザスキル情報(成績の平均値)、第1重み補正係数、及び第2重み補正係数を対応付けて格納している。ここで、第1重み補正係数は、ユーザが障害の復旧に成功した場合に重み設定部115が使用する補正係数であり、第2補正係数は、ユーザが障害の復旧に失敗した場合に重み設定部115が使用する補正係数である。
【0046】
図4に示す例では、ユーザ識別子がUID00001のユーザは、障害復旧の技能が100段階中91である。また、ユーザ識別子がUID00002のユーザは、障害復旧の技能が100段階中24である。同様に、ユーザ識別子がUID09999のユーザは、障害復旧の技能が100段階中100である。
【0047】
ユーザ評価取得部113は、ユーザが選択した障害復旧手順によって障害の復旧に成功したか否かを示す情報を、障害復旧手順の有用度に関するユーザによる評価の一部として取得する。重み設定部115は、障害の復旧に成功した場合、ユーザの障害復旧の技能が低いほどユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関するユーザによる評価の重みを大きくする。具体的には、重み設定部115は、取得した重みに対して第1重み補正係数を乗じることにより、重みを補正する。このため、第1重み補正係数は、ユーザの障害復旧の技能が低いほど大きな値となるように設定されている。
【0048】
障害復旧の技能が低いユーザであっても障害の復旧に成功した場合、その障害復旧手順は有用な手順であると考えられる。重み設定部115は、ユーザの障害復旧の技能が低いほど大きな値となるように設定されている第1重み補正係数で重みを補正することにより、再学習のための学習データの質をより向上させることができる。
【0049】
反対に、障害復旧の技能が高いユーザであっても障害の復旧に失敗した場合、その障害復旧手順は障害復旧に寄与しない手順である可能性が高い。そこで、重み設定部115は、障害の復旧に失敗した場合、ユーザの障害復旧の技能が高いほどユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関するユーザによる評価の重みを小さくする。具体的には、重み設定部115は、取得した重みに対して第2重み補正係数を乗じることにより、重みを補正する。このため、第2重み補正係数は、ユーザの障害復旧の技能が高いほど小さな値となるように設定されている。これにより、情報処理装置1は、再学習のための学習データの精度をより向上させることができる。
【0050】
ここで、機械学習部117は、ネットワークの障害に関する障害情報を入力として、障害復旧手順に付帯する関連設備に関する情報も出力するように学習してもよい。具体的には、機械学習部117は、ネットワークの障害情報、障害の復旧手順及びその結果、重み、及びネットワークの障害に関連する設備である関連設備の情報を含む学習データを用いて、学習モデルを生成する。
【0051】
この場合、重み設定部115は、ユーザのスキル情報に基づいて、学習モデルの再学習に用いる学習データにおける関連設備の調査手順の有用度に関するユーザによる評価の重みも設定する。学習モデルが関連設備の情報を出力するようにすることにより、情報処理装置1は、ネットワークの障害復旧を試みるユーザにより多くの情報を提供することができる。
【0052】
<情報処理装置1が実行する情報処理の処理フロー>
図5は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1の電源が投入されたときに開始する。
【0053】
ユーザ情報取得部114は、記憶部10を参照して、ネットワークの障害の復旧を実施したユーザのスキル情報を取得する(S2)。ユーザ評価取得部113は、ユーザがネットワークの障害の復旧を試みた復旧手順を取得する(S4)。
【0054】
さらに、ユーザ評価取得部113は、障害復旧手順の有用度に関するユーザによる評価を取得する(S6)。この評価には、ユーザが選択した障害復旧手順によって障害の復旧に成功したか否かを示す情報も含まれる。
【0055】
重み設定部115は、ユーザのスキル情報に基づいて、学習モデルの再学習に用いる学習データにおけるユーザが選択した障害復旧手順の有用度に関するユーザによる評価の重みを設定する(S8)。重み設定部115が重みを設定すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0056】
図6は、実施の形態に係る重み設定部115が実行する重み設定処理の流れを説明するためのフローチャートであり、
図5におけるステップS8を詳細に説明するための図である。
【0057】
重み設定部115は、成績データを参照することにより、ネットワークの障害の復旧を試みたユーザの成績の平均値を算出する(S80)。重み設定部115は、成績の平均値に基づいて変換データを参照することにより、重みを取得する(S81)。
【0058】
ユーザの復旧作業が成功している場合(S82のYes)、重み設定部115は、取得した重みに、ユーザのスキルに応じて設定された第1重み補正係数を乗じた値を算出する(S83)。ユーザの復旧作業が失敗している場合(S82のNo)、重み設定部115は、取得した重みに、ユーザのスキルに応じて設定された第2重み補正係数を乗じた値を算出する(S84)。
【0059】
重み設定部115は、第1重み補正係数又は第2重み補正係数を乗じて補正された重みを、再学習用データの重みとして設定する(S85)。このように、ネットワークの障害の復旧に関するユーザのスキルと復旧の成否とに基づいて、障害復旧手順の有用度に関するユーザによる評価の重みを設定することにより、教師あり機械学習の学習データの質を向上させることができる。
【0060】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、教師あり機械学習の学習データの質を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0062】
上記では、情報処理装置1が機械学習過程を実行する場合について説明したが、機械学習過程は情報処理装置1とは異なる装置が実行してもよい。一般に、機械学習に用いる学習データはデータ容量が多く、機械学習過程を実行することは、モデル適用過程を実行する場合と比較して、装置により多くのリソースが要求される。機械学習過程を情報処理装置1と分離することにより、処理に要求されるリソースと装置のスペックとのバランスを取ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・情報処理装置
10・・・記憶部
11・・・制御部
110・・・モデル取得部
111・・・未知障害情報入力部
112・・・復旧手順取得部
113・・・ユーザ評価取得部
114・・・ユーザ情報取得部
115・・・重み設定部
116・・・学習データ入力部
117・・・機械学習部