特許第6839218号(P6839218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839218
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】スパークプラグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 21/02 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   H01T21/02
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-32668(P2019-32668)
(22)【出願日】2019年2月26日
(65)【公開番号】特開2020-136243(P2020-136243A)
(43)【公開日】2020年8月31日
【審査請求日】2020年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 圭次郎
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−135370(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/147503(WO,A1)
【文献】 特開2008−210681(JP,A)
【文献】 特開2018−17348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 − 23/00
F02P 1/00 − 3/12
F02P 7/00 − 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の先端側外周に形成された取付ねじ部と、前記取付ねじ部の後端側に設けられ径方向外側に突出する座部と、を備える筒状の主体金具と、
中実環状に構成されるとともに前記取付ねじ部と前記座部との間に配置されるガスケットと、
を有するスパークプラグを製造する製造方法であって、
前記ガスケットに前記取付ねじ部を挿通し、前記ガスケットを前記取付ねじ部と前記座部との間に配置する配置工程と、
前記配置工程によって配置された前記ガスケットに対し、治具を前記先端側から接触させるとともに、前記ガスケットから前記治具に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達するまで前記治具を前記後端側に移動させる接触工程と、
前記接触工程の後、前記治具を予め定められた設定距離だけさらに前記後端側に移動させることで、前記ガスケットを前記治具で押圧して、前記ガスケットの内縁部を前記ガスケットの径方向内側に変形させる変形工程と、
を含むスパークプラグの製造方法。
【請求項2】
前記接触工程では、少なくとも前記治具に加わる荷重が前記設定荷重に到達した時点で前記ガスケットに前記治具の押圧による凹部が形成される
請求項1に記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項3】
前記治具は、環状の爪部を自身の一端に有し、
前記変形工程では、前記ガスケットの周方向全周に亘って、前記爪部によって前記ガスケットを環状に押圧する
請求項1又は請求項2に記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項4】
前記接触工程では、前記治具が予め定められた基準位置に達しても前記治具に加わる荷重が前記設定荷重に到達していない場合に異常と判定する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項5】
前記変形工程では、前記治具が前記設定距離だけ移動した後でも前記治具に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下である場合に異常と判定する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項6】
前記ガスケットは銅ガスケットである請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のスパークプラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパークプラグの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が開示するスパークプラグ100は、取付ねじ部52と、鍔状のシール部54と、環状のガスケット5とを備える。ガスケット5は、取付ねじ部52に挿通されて、取付ねじ部52とシール部54との間に存在するねじ首59の周りに配置される。ガスケット5は、シール部54側とは反対側から治具が押し当てられることによって、自身の内縁の一部が押し潰されて自身の径方向内側に変形する。これにより、ガスケット5の内径が取付ねじ部52の最大外径より小さくなるので、取付ねじ部52からの脱落が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−149623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示するスパークプラグ100では、取付ねじ部52から脱落しない程度にガスケットを変形させる必要がある。取付ねじ部52から脱落しない程度にガスケット5を変形させる方法としては、例えば、治具に加わる荷重が設定荷重(例えば10000N)に到達するまでガスケット5を治具で押圧する方法が考えられる。こうすれば、ガスケット5を一定の荷重で変形させることができるので、適切な設定荷重を設定することで取付ねじ部52からの脱落が抑制できる程度にガスケット5を変形させることができる。しかし、ガスケット5を変形させる治具は、繰り返しガスケット5を変形させることで摩耗するため、同じ荷重が加えられた場合であっても、摩耗するにつれて、ガスケット5に嵌り込む深さが浅くなる。このため、ガスケット5は、変形量が小さくなり、取付ねじ部52から脱落するおそれが高まる。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、ガスケットが取付ねじ部から脱落することをより確実に防止し得る技術を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスパークプラグの製造方法は、
自身の先端側外周に形成された取付ねじ部と、前記取付ねじ部の後端側に設けられ径方向外側に突出する座部と、を備える筒状の主体金具と、
中実環状に構成されるとともに前記取付ねじ部と前記座部との間に配置されるガスケットと、
を有するスパークプラグを製造する製造方法であって、
前記ガスケットに前記取付ねじ部を挿通し、前記ガスケットを前記取付ねじ部と前記座部との間に配置する配置工程と、
前記配置工程によって配置された前記ガスケットに対し、治具を前記先端側から接触させるとともに、前記ガスケットから前記治具に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達するまで前記治具を前記後端側に移動させる接触工程と、
前記接触工程の後、前記治具を予め定められた設定距離だけさらに前記後端側に移動させることで、前記ガスケットを前記治具で押圧して、前記ガスケットの内縁部を前記ガスケットの径方向内側に変形させる変形工程と、
を含む。
【0007】
この構成によれば、治具は、ガスケットから加えられる荷重が設定荷重に到達した後に設定距離だけ後端側に移動する。このため、治具は、ガスケットに接触して設定荷重が加えられた後、さらに設定距離だけガスケットに押し込まれる。ゆえに、治具の押し込みが想定よりも浅くなることが抑制されるので、治具の押し込みが想定よりも浅くなることでガスケットの内縁部が径方向内側に十分に変形しないという事態を抑制することができる。したがって、この構成によれば、ガスケットが取付ねじ部から脱落することをより確実に防止することができる。
【0008】
接触工程では、少なくとも治具に加わる荷重が設定荷重に到達した時点でガスケットに治具の押圧による凹部が形成されるようにしてもよい。
【0009】
例えばガスケットが座部に対して傾いた不正な姿勢で配置され、不正な姿勢のまま接触工程が終了すると、ガスケットが治具と座部とによって挟まれていない状態から治具をさらに設定距離だけスパークプラグの後端側に移動させることになるため、ガスケットが正常に変形しないおそれがある。
しかし、この構成によれば、接触工程においてガスケットに凹部が形成される程度の荷重がガスケットに対して加えられ、設定荷重に到達した時点でガスケットに治具の押圧による凹部が形成される。このため、例えばガスケットが不正な姿勢で配置されている場合であっても、ガスケットは凹部が形成される程度の荷重が加えられることで、変形工程に移る前の段階で正しい姿勢に矯正される。そして、ガスケットが治具と座部とによって挟まれた状態を形成して接触工程を終了することができる。ゆえに、この構成によれば、ガスケットが不正な姿勢の状態で変形工程を開始してしまうことでガスケットが正常に変形しないという事態を抑制することができる。
【0010】
治具は、環状の爪部を自身の一端に有するようにしてもよい。
変形工程では、ガスケットの周方向全周に亘って、爪部によってガスケットを環状に押圧するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、ガスケットの周方向全周にわたって均等に圧力がかかりやすくなるので、ガスケットが周方向全周にわたって均等に変形しやすくなる。
【0012】
接触工程では、治具が予め定められた基準位置に達しても治具に加わる荷重が設定荷重に到達していない場合に異常と判定するようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、本来であれば治具に加わる荷重が設定荷重に到達する位置に達したにも関わらず、治具に加わる荷重が設定荷重に到達していない場合に、異常の発生を検出することができる。
【0014】
変形工程では、治具が設定距離だけ移動した後でも治具に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下である場合に異常と判定するようにしてもよい。
【0015】
例えばガスケットが座部に対して傾いた不正な姿勢で配置され、不正な姿勢のまま接触工程が終了すると、ガスケットが治具と座部とによって挟まれていない状態から治具をさらに設定距離だけスパークプラグの後端側に移動させることになるため、ガスケットが正常に変形しないおそれがある。しかし、この構成によれば、このような異常の発生を検出しやすくなる。具体的には、以下のとおりである。
例えば、ガスケットが不正な状態のまま治具に加わる荷重が設定荷重に到達した場合には、その後、変形工程においてさらに治具がガスケットを押圧したときにガスケットが正しい姿勢に矯正される可能性がある。ガスケットは正しい姿勢になると、治具と座部との間で移動自在となり、治具からの押圧力が加わりにくくなる。このため、治具が設定距離だけ移動した時点で治具に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下という事態が生じ得る。そして、治具が設定距離だけ移動した後でも治具に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下である場合には、上記構成によって異常と判定される。
したがって、ガスケットが不正な姿勢で配置されたことにより、ガスケットが正常に変形しないという異常の発生を検出しやすくなる。
【0016】
ガスケットを銅ガスケットとしてもよい。
【0017】
この構成によれば、上記ガスケットを、高いシール性と耐久性を有するガスケットとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガスケットが取付ねじ部から脱落することをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】スパークプラグの全体構成を例示した説明図。
図2】プレス機及び治具の構成を例示した説明図。
図3】ガスケットを主体金具に取り付ける工程の流れを例示したフローチャート。
図4】(A)ガスケットが配置されないまま接触工程が開始される様子を例示した説明図。(B)接触工程において治具が基準位置に到達した様子を例示した説明図。
図5】(A)配置工程においてガスケットが不正な姿勢で配置された様子を例示した説明図。(B)ガスケットが不正な姿勢のまま治具に加わる荷重が設定荷重に到達した様子を例示した説明図。(C)治具の移動距離が設定距離に到達したにも関わらず治具に加わる荷重が基準荷重以下であるため、異常と判定した様子を例示した説明図。(D)ガスケットが治具に押圧されたことによって正しい姿勢となった様子を例示した説明図。(E)接触工程において治具に加わる荷重が設定荷重に到達した様子を例示した説明図。(F)変形工程においてガスケットが正常に変形された様子を例示した説明図。
図6】(A)配置工程においてガスケットが正しい姿勢で配置された様子を例示した説明図。(B)接触工程において治具に加わる荷重が設定荷重に到達した様子を例示した説明図。(C)変形工程においてガスケットが正常に変形された様子を例示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.第1実施形態
1−1.スパークプラグ1の構成
図1に示すスパークプラグ1は、一点鎖線で示す第1軸線AX1に沿った細長な柱状をなしている。第1軸線AX1右側は外観側面図を示し、第1軸線AX1の左側は第1軸線AX1を通る断面でスパークプラグ1を切断した断面図を示している。図1では、紙面下側をスパークプラグ1の先端側(第1軸線AX1方向の一方側)とし、紙面上側をスパークプラグ1の後端側(第1軸線AX1方向の他方側)とする。また、第1軸線AX1に垂直な方向のうち、第1軸線AX1に向かう方向を径方向内側とし、第1軸線AX1から離れる方向を径方向外側とする。
【0021】
スパークプラグ1は、絶縁体12と、中心電極14と、端子金具16と、接続部18と、主体金具20と、接地電極22とを備えている。
【0022】
絶縁体12は、筒状をなしている。絶縁体12には、第1軸線AX1に沿って延びる軸孔13が形成されている。絶縁体12は、中心電極14及び端子金具16と主体金具20との間に配置され、中心電極14及び端子金具16と主体金具20とを絶縁する。
【0023】
中心電極14は、第1軸線AX1方向に沿って延びる棒状の電極である。中心電極14は、絶縁体12の先端側から自身の一部が露出した状態で、絶縁体12の軸孔13内に配置される。
【0024】
端子金具16は、電力の供給を受けるための端子であり、棒状をなしている。端子金具16は、絶縁体12の後端部から自身の一部が露出した状態で、絶縁体12の軸孔13内に配置される。
【0025】
接続部18は、軸孔13内において、端子金具16と中心電極14との間に配置されている。接続部18は、端子金具16の側から順に、第1シール体18Aと、抵抗体18Bと、第2シール体18Cとを有する。接続部18は、中心電極14及び端子金具16を電気的に接続する。
【0026】
主体金具20は、筒状の金属部材であり、絶縁体12の少なくとも一部の周囲を覆うように絶縁体12の外周に設けられる。
【0027】
接地電極22は、自身の後端側が主体金具20の先端側に接合される電極である。接地電極22は、自身の先端側が、中心電極14との間で火花放電ギャップを形成するように屈曲されている。
【0028】
上述した主体金具20は、取付ねじ部30と、ねじ首部31と、座部32と、工具係合部36と、加締部38と、座屈部40とを備える。
【0029】
取付ねじ部30は、スパークプラグ1の先端側に向かって軸状に延びている。取付ねじ部30は、主体金具20の先端側の外周に形成されている。
【0030】
ねじ首部31は、取付ねじ部30の後端側に形成されている。ねじ首部31の外周面は、第1軸線AX1を軸とした円形をなしている。ねじ首部31の外径は、取付ねじ部30の最大外径よりも小さい。
【0031】
座部32は、取付ねじ部30よりも後端側に設けられており、径方向外側に突出した形態をなしている。座部32は、第1軸線AX1と直交する平面方向において、取付ねじ部30の最大外径よりも外側に張り出した形状をなしている。座部32は、第1軸線AX1を軸とした筒状(図1に示す例では円筒状)をなしている。座部32には、スパークプラグ1の先端側を向く座面33が形成されている。上述したねじ首部31は、取付ねじ部30と座部32との間に配置される。
【0032】
工具係合部36は、座部32よりも後端側に設けられている。工具係合部36は、スパークプラグ1をエンジン90に取り付けるための工具(例えば、スパークプラグレンチ)が係合する部位であり、第1軸線AX1方向から見た場合に略多角形状(例えば略六角形状)をなしている。加締部38は、工具係合部36よりも後端側に設けられ、径方向内側へ屈曲している。座屈部40は、座部32と工具係合部36との間に設けられた薄肉の部位である。
【0033】
スパークプラグ1は、ガスケット50を備える。ガスケット50は、銅ガスケットである。ガスケット50は、中実環状に構成されており、例えば、金属製の円盤を打ち抜き加工することによって製造される。打ち抜き加工によって製造された段階のガスケット50の内径は、取付ねじ部30の最大外径及びねじ首部31の外径よりも大きい。ガスケット50の外径は、座面33(座部32)の外径と略同じである。
【0034】
ガスケット50には、取付ねじ部30の先端側から取付ねじ部30に挿通されたときに座面33と対向する第1面52と、第1面52とは反対側の第2面54とが形成されている。後ほど詳しく説明するが、ガスケット50は、取付ねじ部30に挿通されて、取付ねじ部30と座部32との間(つまり、ねじ首部31の外周)に配置される。そして、ガスケット50は、第2面54に治具60が押し付けられることによって、自身の内縁部55が自身の径方向内側に張り出すように変形する。これにより、ガスケット50は、自身の内径が取付ねじ部30の最大外径よりも小さくなり、取付ねじ部30からの脱落が防止される。
【0035】
スパークプラグ1は、ガスケット50の取付ねじ部30からの脱落が防止された状態で、取付ねじ部30がエンジン90(より具体的にはエンジンヘッド)における雌ねじ状の被取付ねじ部91に取り付けられる。これにより、スパークプラグ1は、エンジン90に取り付けられる。ガスケット50は、スパークプラグ1がエンジン90に取り付けられる際、座部32とエンジン90との間に介在する。これにより、スパークプラグ1とエンジン90との間からの気体の漏出が抑制される。
【0036】
1−2.治具60
治具60は、ガスケット50を押圧して変形させる工具である。図2に示す治具60は、第2軸線AX2に沿って軸状に延びる形状をなしている。図2では、紙面下側を治具60の先端側(第2軸線AX2方向の一方側)とし、紙面上側を治具60の後端側(第2軸線AX2方向の他方側)とする。また、図2では、紙面下側をスパークプラグ1の後端側(第1軸線AX1方向の他方側)とし、紙面上側をスパークプラグ1の先端側(第1軸線AX1方向の一方側)とする。また、第2軸線AX2に垂直な方向のうち、第2軸線AX2に向かう方向を第2軸線AX2の径方向内側とし、第2軸線AX2から離れる方向を第2軸線AX2の径方向外側とする。
【0037】
治具60は、胴部62と、爪部64とを有する。胴部62は、第2軸線AX2に沿って延びる筒状(図2に示す例では円筒状)に構成されている。
【0038】
爪部64は、ガスケット50を押圧して変形させる部分である。爪部64は、治具60の先端側に形成されている。爪部64は、胴部62の先端側の端面から先端側に向かって突出した形態をなしている。爪部64は、爪部64の後端側から先端側に向かうにつれて断面積が小さくなる形状になっている。
【0039】
爪部64の先端側の端面は、ガスケット50を押圧するときに接触する接触面65となっている。接触面65は、第2軸線AX2方向と直交する平面方向に沿って延びている。
【0040】
爪部64の内側には、第1内側面66及び第2内側面67が形成されている。第1内側面66は、接触面65における第2軸線AX2の径方向内側の縁部に連続しており、爪部64の先端側から後端側に向かうにつれて治具60における第2軸線AX2の径方向内側に近づくテーパ状に構成されている。第2内側面67は、第1内側面66の後端部に連続しており、第2軸線AX2方向に沿って延びている。
【0041】
爪部64の外側には、第1外側面68及び第2外側面69が形成されている。第1外側面68は、接触面65における第2軸線AX2の径方向外側の縁部に連続しており、第2軸線AX2方向に沿って延びている。第2外側面69は、第1外側面68の後端部に連続しており、爪部64の先端側から後端側に向かうにつれて第2軸線AX2の径方向外側に離れている。
【0042】
第2外側面69の先端部は、第1内側面66の後端部よりも、治具60の後端側に設けられている。
【0043】
爪部64は、胴部62の先端側の端面における第2軸線AX2方向の径方向内側の部分から治具60の先端側に向かって突出している。胴部62の先端側の端面における第2軸線AX2方向の径方向外側の部分には、第2軸線AX2方向と直交する平面方向に沿って延びる平面63が形成されている。上述した第2外側面69の後端部は、平面63に連続している。
【0044】
爪部64の接触面65は、第2軸線AX2を軸とした環状に構成されている。また、第1内側面66は、爪部64の先端側から後端側に向かうにつれて内径が小さくなるテーパ状に構成されているから、その最小内径は、第2内側面67の内径に等しい。そして、第2内側面67の内径は、取付ねじ部30の最大外径よりも大きい。
【0045】
1−3.プレス機70
プレス機70は、自身に固定された治具60を移動させてガスケット50に押しつける装置である。プレス機70は、駆動装置72と、荷重検出部74と、位置検出部76と、制御装置78とを有する。
【0046】
駆動装置72は、制御装置78から制御信号SG1が与えられることによって、プレス機70に固定された治具60を、スパークプラグ1の後端側(ガスケット50に近づく方向)またはスパークプラグ1の先端側(ガスケット50から離れる方向)に移動させる。
【0047】
荷重検出部74は、治具60に加わる荷重を検出するセンサであり、例えばロードセル(load cell)として構成されている。荷重検出部74は、検出した荷重を示す信号SG2を制御装置78に向けて出力する。
【0048】
位置検出部76は、治具60の位置を検出するセンサであり、例えばリニアスケール(linear scale)として構成されている。図2に示す例では、位置検出部76は、反射型の光学式リニアスケールであり、発光素子、受光素子及びスケールを有する。発光素子及び受光素子は治具60の外周部に固定されている。位置検出部76は、受光素子の受光状態から治具60の位置を検出することができる。位置検出部76は、自身が検出した治具60の位置を示す信号SG3を制御装置78に向けて出力する。
【0049】
制御装置78は、例えばマイクロコントローラとして構成されており、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリを有する。制御装置78は、駆動装置72に制御信号SG1を与えることで、治具60をガスケット50に近づく方向またはガスケット50から離れる方向に移動させるように駆動することができる。また、制御装置78は、荷重検出部74から信号SG2を取得し得るとともに、信号SG2に基づいて治具60に加わる荷重を取得することができる。また、制御装置78は、位置検出部76から信号SG3を取得し得るとともに、信号SG3に基づいて治具60の位置を取得することができる。なお、制御装置78は、信号SG3に基づいて、治具60の移動範囲における治具60の絶対的な位置を検出することもできるし、治具60の移動範囲における所定位置を基準とした相対的な位置を検出することもできる。
【0050】
1−4.スパークプラグ1の製造方法
スパークプラグ1の製造においては、接地電極22が主体金具20に接合される。中心電極14及び端子金具16の各々は絶縁体12に組み付けられる。絶縁体12は、主体金具20に挿入される。主体金具20は、加締部38が加締装置(図示省略)によって加締めされることで絶縁体12と一体になる。接地電極22は、曲げ工具(図示省略)によって自身の先端が曲げ加工される。ガスケット50は、主体金具20に取り付けられる。これにより、スパークプラグ1が完成する。なお、ガスケット50は、接地電極22の曲げ加工の前に主体金具20に取り付けられてもよい。
【0051】
ここで、図2図6を用いて、ガスケット50を主体金具20に取り付ける工程について詳しく説明する。ガスケット50を主体金具20に取り付ける工程は、配置工程、接触工程、及び変形工程を含む。
【0052】
ガスケット50を主体金具20に取り付ける工程では、スパークプラグ1のうちガスケット50を除いた部分の先端側が、上方を向いた状態で固定される。また、スパークプラグ1のうちガスケット50を除いた部分と治具60とは、第1軸線AX1と第2軸線AX2とが同一直線上に並ぶように配置される。
【0053】
配置工程は、ガスケット50の内側に取付ねじ部30を挿通し、ガスケット50を取付ねじ部30と座部32との間に配置する工程である。
【0054】
配置工程では、ステップS10の工程が行われる。ステップS10において、取付ねじ部30はガスケット50内に挿通される。そして、ガスケット50が、取付ねじ部30の周りにおいて第1面52を座面33と対向させて座面33上に配置される。このとき、爪部64は、第1軸線AX1方向においてガスケット50の第2面54と対向した状態となる。即ち、スパークプラグ1の先端側と治具60の後端側とが同じ方向を向いた状態となり、スパークプラグ1の先端側と治具60の先端側とが互いに対向した状態となる。また、このとき、治具60は初期位置P0に設置され、爪部64とガスケット50とは所定の間隔をあけて配置される。
【0055】
接触工程は、配置工程によって配置されたガスケット50に対し、治具60をスパークプラグ1の先端側から接触させるとともに、ガスケット50から治具60に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達するまで治具60をスパークプラグ1の後端側に移動させる工程である。換言すると、接触工程は、配置工程によって配置されたガスケット50に対し、治具60を第1軸線AX1方向に沿って相対的に移動させることでガスケット50における第1面52とは反対側の第2面54に対して治具60を接触させ、ガスケット50から治具60に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達するまで治具60をスパークプラグ1の後端側に移動させる工程である。
【0056】
接触工程では、ステップS12,S14,S16,S18の工程が行われる。ステップS12において、プレス機70は、治具60の移動を開始させる。より具体的には、プレス機70は、配置工程によって配置されたガスケット50に対し、治具60を第1軸線AX1方向に沿って相対的に移動させる。プレス機70は、治具60をスパークプラグ1の後端側に移動させることで、ガスケット50における第2面54に対して治具60の接触面65を接触させる。また、プレス機70は、治具60の移動を開始する前に初期位置P0を記憶するとともに、初期位置P0を基点とした治具60の移動距離を計測する。
【0057】
ステップS14において、プレス機70は、荷重検出部74から受信した信号SG2に基づき、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達したか否かを判定する。例えば、プレス機70は、治具60がガスケット50に接触していない状態では、治具60に加わる荷重は設定荷重未満であるため、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達していないと判定する。
【0058】
プレス機70は、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達していないと判定した場合(ステップS14:NO)、ステップS16において、治具60が基準位置PSに到達したか否かを判定する。基準位置PSは、接触工程において治具60が到達するはずのない位置が設定されている。プレス機70は、例えば初期位置P0からの移動距離に基づいて基準位置PSに到達したか否かを判定してもよいし、絶対位置としての基準位置PSを予め記憶しておきその情報に基づいて基準位置PSに到達したか否かを判定してもよい。
【0059】
プレス機70は、治具60が基準位置PSに到達したと判定した場合に(ステップS16:YES)、ステップS18において、異常が発生したと判定する。即ち、プレス機70は、第1軸線AX1方向に沿って相対的に移動する治具60が予め定められた基準位置PSに達しても治具60に加わる荷重が設定荷重に到達していない場合に異常と判定する。プレス機70は、異常が発生したと判定した場合、例えば治具60の動作を停止させる。
【0060】
図4は、ステップS18において異常が発生したことを判定する場合の動作の一例を示している。図4に示す例では、基準位置PSは、配置工程によってガスケット50の第1面52が配置される位置と第2面54が配置される位置との間に爪部64の接触面65が配置されたときに、治具60が到達する位置である。プレス機70は、図4(A)に示すように配置工程においてガスケット50が座面33上に配置されないまま治具60を移動させる場合において、配置工程によって座面33上に配置されるガスケット50の第2面54の位置を超えて、図4(B)に示すように基準位置PSに到達したときに、異常が発生したと判定する。これにより、ガスケット50が座面33上に配置されていない異常を検出することができるとともに、治具60が座面33に接触することを防止することができる。
【0061】
プレス機70は、治具60が基準位置PSに到達していないと判定した場合(ステップS16:NO)、ステップS14の工程に戻る。即ち、プレス機70は、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達したと判定するか、治具60が基準位置PSに到達したと判定するまで、ステップS14及びステップS16の工程を繰り返す。プレス機70は、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達したと判定した場合に(ステップS16:YES)、変形工程に移る。
【0062】
少なくとも治具60に加わる荷重が設定荷重に到達した時点では、ガスケット50の第2面54に治具60の押圧による凹部56が形成されるようになっていることが好ましい。つまり、設定荷重は、治具60の爪部64の一部(特に爪部64の先端部)のみが第2面54に嵌り込んだ状態において治具60に加わる荷重であることが好ましい。このように、凹部56が形成される程度の荷重を設定荷重とすることで、設定荷重は十分大きいものとされるので、接触工程において(変形工程に移る前の段階において)、打ち抜き加工の際に生じた歪みや反りを平面状に整えること、及び不正な姿勢で配置されたガスケット50を正しい姿勢に戻すことなどがより確実に行われる。そして、ガスケット50の変形は、ガスケット50が治具60と座部32とによって挟まれた状態において治具60で押圧されることによって生じるものであるから、ガスケット50の第2面54に凹部56を形成することにより、ガスケット50が治具60と座部32とによって挟まれた状態を形成して接触工程を終了することができる。なお、不正な姿勢とは、例えば、ガスケット50の内周部の一部が取付ねじ部30に引っ掛かり、ガスケット50の第1面52及び第2面54が座面33に対して傾いた姿勢のことをいう。正しい姿勢とは、ガスケット50の第1面52が座面33と接触(面接触)し、ガスケット50の第1面52及び第2面54が座面33と平行となる姿勢のことをいう。なお、第2面54に治具60の押圧による凹部56を形成させるための設定荷重としては、例えば100N〜5000Nとすることが望ましい。
【0063】
変形工程は、接触工程の後、治具60を予め定められた設定距離XSだけさらにスパークプラグ1の後端側に移動させることで、ガスケット50を治具60で押圧して、ガスケット50の内縁部55をガスケット50の径方向内側に変形させる工程である。換言すると、変形工程は、接触工程の後、治具60の移動距離が予め定められた設定距離XSに到達するまで治具60を第2面54に押し付けつつスパークプラグ1の後端側に移動させ、ガスケット50の内縁部55をガスケット50の径方向内側に変形させる工程である。
【0064】
変形工程では、ステップS20,S22,S24,S26の工程が行われる。ステップS20において、プレス機70は、変形工程を開始する。プレス機70は、設定距離XSの計測の基点となる治具60の位置P1として治具60の現在の位置を記憶するとともに、記憶した治具60の位置P1を基点とした移動距離の計測を開始する。また、プレス機70は、接触工程において治具60に加わる荷重が設定荷重に到達した後に、直ちに移動距離の計測を開始する。即ち、プレス機70は、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達したときの治具60の位置を位置P1として記憶するとともに、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達したときの治具60の位置を基点とした移動距離の計測を開始する。
【0065】
プレス機70は、更に治具60をスパークプラグ1の後端側に移動させる。このとき、プレス機70は、ガスケット50の周方向全周に亘って、爪部64によってガスケット50を環状に押圧する。換言すると、プレス機70は、ガスケット50の内縁の周方向に隣接させて爪部64を配置しつつ接触面65によってガスケット50を押圧する。
【0066】
プレス機70は、ステップS22において、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達したときの治具60の位置を基点とした治具60の移動距離が予め定められた設定距離XSに到達したか否かを判定する。プレス機70は、治具60の移動距離が設定距離XSに到達していないと判定した場合(ステップS22:NO)、ステップS22の工程に戻る。即ち、プレス機70は、治具60の移動距離が設定距離XSに到達したと判定するまでステップS22の工程を繰り返し、治具60の移動距離が設定距離XSに到達したと判定した場合に(ステップS22:YES)、ステップS24の工程を行う。
【0067】
ステップS24において、プレス機70は、治具60に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下であるか否かを判定する。基準荷重は、例えば治具60がガスケット50を正常に変形させた場合において治具60に加わるはずの荷重よりも低い荷重である。プレス機70は、治具60に加わる荷重が基準荷重以下であると判定した場合に(ステップS24:YES)、ステップS26において、異常が発生したと判定する。即ち、プレス機70は、治具60の移動距離が設定距離XSに到達した後でも治具60に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下である場合に異常と判定する。プレス機70は、異常が発生したと判定した場合、例えば治具60の動作を停止させる。
【0068】
プレス機70は、ステップS24において、治具60に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下でないと判定した場合(ステップS24:NO)、変形工程を終了して、ガスケット50を取付ねじ部30に取り付ける工程を終了する。これにより、ガスケット50の凹部56は更に拡張された第2凹部57となり、ガスケット50は正常に変形される。即ち、ガスケット50の内縁部55がガスケット50の径方向内側に変形され、取付ねじ部30からの脱落が防止される。
【0069】
図5は、ガスケット50が不正な姿勢で配置された場合のプレス機70の動作の一例を示している。
【0070】
図5(A)に示すように、配置工程において、ガスケット50は、自身の内周部の一部が取付ねじ部30に引っ掛かり、第1面52及び第2面54が座面33に対して傾いた姿勢(不正な姿勢)で配置されている。
【0071】
治具60は、接触工程において、スパークプラグ1の後端側へ移動する。そして、治具60の接触面65の一部が、ガスケット50の第2面54に接触する。このとき、ガスケット50が治具60に押圧されて取付ねじ部30から外れる前に、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達すると、図5(B)に示すように、ガスケット50が傾いたまま接触工程が終了することとなる。その後、プレス機70は、治具60の移動距離を設定距離XSに到達させる。しかし、治具60の移動距離が設定距離XSに到達する過程で、ガスケット50が取付ねじ部30から外れて座面33上に正しい姿勢で配置されると、図5(C)に示すように、治具60の移動距離が設定距離XSに到達してもガスケット50が爪部64に十分に押圧されない。この場合、プレス機70は、治具60に加わる荷重が基準荷重以下であると判定して、異常が発生したことを検出することができる(ステップS26)。
【0072】
これに対し、接触工程において、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達する前に、ガスケット50が治具60に押圧されて取付ねじ部30から外れて、ガスケット50が座面33上に正しい姿勢で配置されることもある。図5(D)に示す例では、治具60が不正な姿勢のガスケット50を押圧することによって、ガスケット50が取付ねじ部30から外れて座面33上に正しい姿勢で配置される。そして、図5(E)に示すように、プレス機70は、治具60が正しい姿勢のガスケット50に対して設定荷重を加えたところで、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達したと判定する。このとき、第2面54には、凹部56が形成される。更に、図5(F)に示すように、プレス機70は、治具60の移動距離を設定距離XSに到達させる。治具60の移動距離が設定距離XSに到達したとき、プレス機70は、治具60に加わる荷重が基準荷重以下でないと判定する。治具60の移動距離が設定距離XSに到達したとき、爪部64は、第2外側面69の先端付近までの部位がガスケット50に嵌まり込んだ状態となる。これにより、ガスケット50の凹部56は更に拡張された第2凹部57となり、ガスケット50の内縁部55はガスケット50の径方向内側に変形される。
【0073】
また、図6は、ガスケット50が正しい姿勢で配置された場合のプレス機70の動作の一例を示している。図6(A)に示すように、配置工程において、ガスケット50は正しい姿勢で座面33上に配置されている。プレス機70は、図6(B)に示すように、接触工程において、ガスケット50に対し、治具60を第1軸線AX1方向に沿って相対的に移動させることでガスケット50の第2面54に対して治具60を接触させ、ガスケット50から治具60に加わる荷重が設定荷重に到達するまで治具60をスパークプラグ1の後端側に移動させる。これにより、ガスケット50の第2面54には、凹部56が形成される。更に、プレス機70は、図6(C)に示すように、変形工程において、治具60の移動距離が設定距離XSに到達するまで治具60を第2面54に押し付けつつスパークプラグ1の後端側に移動させ、ガスケット50の内縁部55をガスケット50の径方向内側に変形させる。これにより、ガスケット50の凹部56は更に拡張された第2凹部57となり、ガスケット50の内縁部55はガスケット50の径方向内側に変形される。
【0074】
1−5.効果
実施例1のスパークプラグ1は、筒状の主体金具20と、ガスケット50とを有する。主体金具20は、自身の先端側外周に形成された取付ねじ部30と、取付ねじ部30の後端側に設けられ径方向外側に突出する座部32とを備える。ガスケット50は、中実環状に構成されるとともに取付ねじ部30と座部32との間に配置される。
実施例1のスパークプラグ1の製造方法は、配置工程と、接触工程と、変形工程とを含む。配置工程は、ガスケット50に取付ねじ部30を挿通し、ガスケット50を取付ねじ部30と座部32との間に配置する工程である。接触工程は、配置工程によって配置されたガスケット50に対し、治具60を上記先端側から接触させるとともに、ガスケット50から治具60に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達するまで治具60を後端側に移動させる工程である。変形工程は、接触工程の後、治具60を予め定められた設定距離XSだけさらに上記後端側に移動させることで、ガスケット50を治具60で押圧して、ガスケット50の内縁部55をガスケット50の径方向内側に変形させる工程である。
【0075】
この構成によれば、治具60は、ガスケット50から加えられる荷重が設定荷重に到達した後に設定距離XSだけスパークプラグ1の後端側に移動する。このため、治具60は、ガスケット50に接触して設定荷重が加えられた後、さらに設定距離XSだけガスケット50に押し込まれる。ゆえに、治具60の押し込みが想定よりも浅くなることが抑制されるので、治具60の押し込みが想定よりも浅くなることでガスケット50の内縁部55が径方向内側に十分に変形しないという事態を抑制することができる。したがって、この構成によれば、ガスケット50が取付ねじ部30から脱落することをより確実に防止することができる。
【0076】
例えば、治具60は、未使用の時点では接触面65の周縁部が角張った形状をなしているが、ガスケット50を押圧して変形させる動作を繰り返すことで、接触面65の周縁部が摩耗して丸みを帯びた形状となる。このため、治具60は、ガスケット50を押圧して変形させる動作を繰り返すにつれて、ガスケット50を押圧して変形させるときに自身に加わる摩擦力が大きくなる。ゆえに、治具60に加わる荷重が閾値を超えたことをもってガスケット50の変形が正常になされたと判定する場合、ガスケット50を押圧して変形させる動作を繰り返すにつれて、増大した摩擦力に相当する距離だけ治具60の押し込みが浅くなる。しかし、この構成によれば、接触面65の周縁部が摩耗しても、治具60をガスケット50の第2面54に設定距離XSの深さまで押し込むことができる。
【0077】
したがって、この構成によれば、ガスケット50が取付ねじ部30から脱落することをより確実に防止することができる。
【0078】
特に、プレス機70は、接触工程においてガスケット50から治具60に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達したときの治具60の位置P1を記憶する。そして、プレス機70は、変形工程において治具60を位置P1からさらに設定距離XSだけ上記後端側に移動させることで、ガスケット50を治具60で押圧して、ガスケット50の内縁部55をガスケット50の径方向内側に変形させる。即ち、治具60は、ガスケット50から加えられる荷重が設定荷重に到達した位置P1を基点として設定距離XSだけスパークプラグ1の後端側に移動する。したがって、この構成によれば、ガスケット50に治具60を押し込む距離をより高い精度で調整することができる。
【0079】
更に、接触工程では、少なくとも治具60に加わる荷重が設定荷重に到達した時点でガスケット50に治具60の押圧による凹部56が形成される。
【0080】
例えばガスケット50が座部32に対して傾いた不正な姿勢で配置され、不正な姿勢のまま接触工程が終了すると、ガスケット50が治具60と座部32とによって挟まれていない状態から治具60をさらに設定距離XSだけスパークプラグ1の後端側に移動させることになるため、ガスケット50が正常に変形しないおそれがある。
しかし、この構成によれば、接触工程においてガスケット50に凹部56が形成される程度の荷重がガスケット50に対して加えられ、設定荷重に到達した時点でガスケット50に治具60の押圧による凹部56が形成される。このため、例えばガスケット50が不正な姿勢で配置されている場合であっても、ガスケット50は凹部56が形成される程度の荷重が加えられることで、変形工程に移る前の段階で正しい姿勢に矯正される。そして、ガスケット50が治具60と座部32とによって挟まれた状態を形成して接触工程を終了することができる。ゆえに、この構成によれば、ガスケット50が不正な姿勢の状態で変形工程を開始してしまうことでガスケット50が正常に変形しないという事態を抑制することができる。
また、ガスケット50が金属製の円盤を打ち抜き加工することによって製造される場合には、ガスケット50に歪み、反りなどが生じるおそれがある。しかし、この構成によれば、変形工程に移る前の段階で、打ち抜き加工の際に生じた歪み、反りを解消しやすくなる。このため、打ち抜き加工の際に生じた歪み、反りを解消した上で、変形工程に移りやすくなるので、ガスケット50が正常に変形しないという事態を抑制することができる。
【0081】
更に、治具60は、環状の爪部64を自身の一端に有する。変形工程では、ガスケット50の周方向全周に亘って、爪部64によってガスケット50を環状に押圧する。
【0082】
この構成によれば、ガスケット50の周方向全周にわたって均等に圧力がかかりやすくなるので、ガスケット50が周方向全周にわたって均等に変形しやすくなる。
【0083】
更に、接触工程では、治具60が予め定められた基準位置PSに達しても治具60に加わる荷重が設定荷重に到達していない場合に異常と判定する。
【0084】
この構成によれば、本来であれば治具60に加わる荷重が設定荷重に到達する位置に達したにも関わらず、治具60に加わる荷重が設定荷重に到達していない場合に、異常の発生を検出することができる。
【0085】
更に、変形工程では、治具60が設定距離XSだけ移動した後でも治具60に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下である場合に異常と判定する。
【0086】
例えばガスケット50が座部32に対して傾いた不正な姿勢で配置され、不正な姿勢のまま接触工程が終了すると、ガスケット50が治具60と座部32とによって挟まれていない状態から治具60をさらに設定距離XSだけスパークプラグ1の後端側に移動させることになるため、ガスケット50が正常に変形しないおそれがある。しかし、この構成によれば、このような異常の発生を検出しやすくなる。具体的には、以下のとおりである。
例えば、ガスケット50が不正な状態のまま治具60に加わる荷重が設定荷重に到達した場合には、その後、変形工程においてさらに治具60がガスケット50を押圧したときにガスケット50が正しい姿勢に矯正される可能性がある。ガスケット50は正しい姿勢になると、治具60と座部32との間で移動自在となり、治具60からの押圧力が加わりにくくなる。このため、治具60が設定距離XSだけ移動した時点で治具60に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下という事態が生じ得る。そして、治具60が設定距離XSだけ移動した後でも治具60に加わる荷重が予め定められた基準荷重以下である場合には、上記構成によって異常と判定される。
したがって、ガスケット50が不正な姿勢で配置されたことにより、ガスケット50が正常に変形しないという異常の発生を検出しやすくなる。
【0087】
更に、ガスケット50は銅ガスケットである。
【0088】
この構成によれば、ガスケット50を、高いシール性と耐久性を有するガスケットとすることができる。
【0089】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施例や後述する実施例の様々な特徴は、矛盾しない組み合わせであればどのように組み合わせてもよい。
【0090】
第1実施例では、設定距離XSを計測する基点となる治具60の位置P1を、ガスケット50から治具60に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達したときの治具60の位置とした。しかし、設定距離XSを計測する基点となる治具60の位置P1は、ガスケット50から治具60に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達した後に治具60が到達する位置であればよく、ガスケット50から治具60に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達したときの治具60の位置でなくてもよい。例えば、ガスケット50から治具60に加わる荷重が予め定められた設定荷重に到達してから所定時間(例えば0.5秒)経過後に到達する位置を、設定距離XSを計測する基点となる治具60の位置P1としてもよい。この場合、プレス機70に高い応答性が求められないので、製造が容易になる。
【0091】
第1実施例では、接触面65を環状としたが、環状でなくてもよい。例えば、互いに離間した複数個の接触面としてもよい。
【0092】
第1実施例では、ガスケット50を銅ガスケットとしたが、銅ガスケット以外のガスケットとしてもよい。例えば、鉄ガスケットとしてもよい。
【0093】
第1実施例では、プレス機70は、ステップS16においてYESと判断した場合に、ステップS18において治具60の動作を停止させていたが、この機構を省略してもよい。同様に、ステップS24においてYESと判断した場合に、ステップS26において治具60の動作を停止させる機構も省略してもよい。ステップS10において、ガスケット50の第1面52を座面33と対向させて座面33上に配置することが確実に行われれば、ステップS16、S24においてYESと判断されることがないからである。なお、ガスケット50を座面33上に正しく配置することは、例えば手作業によってガスケット50を配置することによって可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…スパークプラグ
20…主体金具
30…取付ねじ部
32…座部
50…ガスケット
55…内縁部
56…凹部
60…治具
64…爪部
図1
図2
図3
図4
図5
図6