特許第6839314号(P6839314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839314
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ウエハ載置装置及びその製法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-43623(P2020-43623)
(22)【出願日】2020年3月13日
(65)【公開番号】特開2020-161813(P2020-161813A)
(43)【公開日】2020年10月1日
【審査請求日】2020年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2019-51398(P2019-51398)
(32)【優先日】2019年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 敬典
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−049425(JP,A)
【文献】 特開2001−096454(JP,A)
【文献】 特開平5−330937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有し、電極が内蔵された円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの前記ウエハ載置面とは反対側の下面に配置された円盤状の冷却プレートと、
前記セラミックプレートの下面にある接着面と前記冷却プレートの上面にある接着面とを接着する樹脂製の接着シート層と、
を備え、
前記セラミックプレートの接着面及び前記冷却プレートの接着面のうちの少なくとも一方は、内周部よりも外周部の表面粗さRaが粗い、
ウエハ載置装置。
【請求項2】
前記電極は、ヒータ電極であり、前記セラミックプレートのうち前記内周部に対応する内周ゾーンと、前記セラミックプレートのうち前記外周部に対応する外周ゾーンと、に個別に内蔵されている、
請求項1に記載のウエハ載置装置。
【請求項3】
前記セラミックプレートの接着面及び前記冷却プレートの接着面は、半径135mm以上である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置装置。
【請求項4】
前記セラミックプレートの接着面及び前記冷却プレートの接着面のうちの少なくとも一方は、前記外周部の表面粗さRaが1.6μmよりも粗い、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のウエハ載置装置。
【請求項5】
(a)電極が内蔵された円盤状のセラミックプレートと、円盤状の冷却プレートと、接着シートと、を用意する工程と、
(b)前記セラミックプレートと前記冷却プレートとを前記接着シートを用いて接着する工程と、
を含み、
前記工程(a)で用意する前記セラミックプレート及び前記冷却プレートのうち少なくとも一方は、内周部よりも外周部の表面粗さRaが粗い接着面を有し、
前記工程(b)では、内周部よりも外周部の表面粗さRaが粗い前記接着面で接着する、
ウエハ載置装置の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置装置及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハ載置装置としては、上面にウエハ載置面を有する円盤状のセラミックプレートと、セラミックプレートのウエハ載置面とは反対側の下面に配置された円盤状の冷却プレートとが、樹脂製の接着シートで接着されたものが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1のウエハ載置装置は、セラミックプレートと冷却プレートを接着シートで貼り合わせて積層体とし、積層体を加熱しながら真空プレスして製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−71023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のウエハ載置装置では、接着シート層の厚みが外周部で薄くなり、接着シート層の厚みが均一でないことがあった。接着シート層の厚みが均一でないと、接着シート層を介したセラミックプレートと冷却プレートとの間の熱伝導に違いが生じ、ウエハの面内温度が不均一になる。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、接着シート層の厚みを均一にして、ウエハの面内温度を均一にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のウエハ載置装置は、
上面にウエハ載置面を有し、電極が内蔵された円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの前記ウエハ載置面とは反対側の下面に配置された円盤状の冷却プレートと、
前記セラミックプレートの下面にある接着面と前記冷却プレートの上面にある接着面とを接着する樹脂製の接着シート層と、
を備え、
前記セラミックプレートの接着面及び前記冷却プレートの接着面のうちの少なくとも一方は、内周部よりも外周部の表面粗さRaが粗いものである。
【0007】
このウエハ載置装置では、セラミックプレートの下面にある接着面及び冷却プレートの上面にある接着面のうちの少なくとも一方において、内周部よりも外周部の表面粗さ(算術平均粗さ)Raが粗い。接着面の両方において内周部と外周部の表面粗さRaが同じ場合には、プレスの際などに、外周部の接着シート層が内周部より薄くなりやすい。これは、セラミックプレートと冷却プレートに挟まれた接着シートは、外周だけが拘束されておらず、外周部ほど伸展しやすいためと考えられる。そこで、接着シートが伸展しやすい外周部において、接着面の表面粗さRaを粗くすれば、外周部での接着シートの伸展がアンカー効果によって抑制され、ウエハ載置装置の接着シート層の厚みを均一にできる。したがって、ウエハの面内温度を均一にできる。接着面の両方において、内周部よりも外周部の表面粗さRaが粗ければ、接着シート層の厚みをより均一にでき、好ましい。なお、内周部の接着面の表面粗さRaを粗くして外周部の表面粗さRaと同じとした場合、外周部だけでなく内周部での接着シートの伸展も抑制されるため、外周部の接着シートの層が内周部より薄くなることに変わりはない。このため、内周部よりも外周部の表面粗さRaを粗くする必要がある。表面粗さRaが粗い部分、つまり外周部は、接着面の直径の85%より外周の部分としてもよいし、接着面の直径の90%より外周の部分としてもよいし、接着面の直径の95%より外周の部分としてもよい。
【0008】
なお、本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、ウエハ載置装置の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0009】
本発明のウエハ載置装置において、前記電極は、ヒータ電極であり、前記セラミックプレートのうち前記内周部に対応する内周ゾーンと、前記セラミックプレートのうち前記外周部に対応する外周ゾーンと、に個別に内蔵されていてもよい。接着面の外周部の表面粗さRaを粗くすれば、上述の通り接着シート層の厚みを均一にできるため、接着シート層の厚みの違いによって生じる熱伝導の違いを小さくできる。しかし、内周部と外周部とで接着面の表面粗さRaが異なるため、接着シート層を介したセラミックプレートと冷却プレートとの間の熱伝導には、程度は小さいものの、内周部と外周部とで違いが生じることがある。ここでは、内周ゾーンのヒータ電極と、外周ゾーンのヒータ電極とを個別に内蔵している。そのため、内周部と外周部との熱伝導の違いに応じて、内周ゾーンのヒータ電極と外周ゾーンのヒータ電極とを個別に温度制御することができ、ウエハの面内温度をより均一にできる。
【0010】
本発明のウエハ載置装置において、前記セラミックプレートの接着面及び前記冷却プレートの接着面は、半径135mm以上であるものとしてもよい。セラミックプレートの接着面及び冷却プレートの接着面の半径が135mm以上の場合には、接合面全面の表面粗さRaに差がないと外周部の接着シートが内周部よりも特に薄くなりやすい。このため、本発明を適用する意義が高い。この場合、内周部と外周部との境界は、半径135mm以上の円としてもよい。
【0011】
本発明のウエハ載置装置において、前記セラミックプレートの接着面及び前記冷却プレートの接着面のうちの少なくとも一方は、前記外周部の表面粗さRaが1.6μmよりも粗いものとしてもよい。こうすれば、外周部でのアンカー効果が大きいため、外周部での接着シートの伸展がより抑制され、接着シート層の厚みをより均一にできる。内周部の表面粗さRaは、例えば1.6μm以下としてもよい。内周部で接着シートが適度に伸展し、接着シート層の厚みをより均一にできる。
【0012】
本発明のウエハ載置装置の製法は、
(a)電極が内蔵された円盤状のセラミックプレートと、円盤状の冷却プレートと、接着シートと、を用意する工程と、
(b)前記セラミックプレートと前記冷却プレートとを前記接着シートを用いて接着する工程と、
を含み、
前記工程(a)で用意する前記セラミックプレート及び前記冷却プレートのうち少なくとも一方は、内周部よりも外周部の表面粗さRaが粗い接着面を有し、
前記工程(b)では、内周部よりも外周部の表面粗さRaが粗い前記接着面で接着する。
【0013】
このウエハ載置装置の製法によれば、外周部での接着シートの伸展がアンカー効果によって抑制されるため、ウエハ載置装置の接着シート層の厚みを均一にできる。したがって、ウエハの面内温度を均一にできる。接着面の両方において、内周部よりも外周部の表面粗さRaが粗ければ、接着シート層の厚みをより均一にできるため、より好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】静電チャックヒータ10の斜視図。
図2図1のA−A断面図。
図3】ヒータ電極22,24を平面視したときの説明図。
図4】セラミックプレート20の下面図。
図5】冷却プレート30の平面図。
図6】静電チャックヒータ10の製法を示す説明図。
図7】静電チャックヒータ10の別例の図2に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1は本発明のウエハ載置装置の一実施形態である静電チャックヒータ10の斜視図、図2図1のA−A断面図、図3はヒータ電極22,24を平面視したときの説明図、図4はセラミックプレート20の下面図、図5は冷却プレート30の平面図である。図6は静電チャックヒータ10の製法を示す説明図である。
【0016】
静電チャックヒータ10は、上面にウエハ載置面20aを有するセラミックプレート20と、セラミックプレート20のウエハ載置面20aとは反対側の下面20bに配置された冷却プレート30とを備えている。セラミックプレート20の接着面である下面20bと冷却プレート30の接着面である上面30aとは、樹脂製の接着シート層40を介して接着されている。
【0017】
セラミックプレート20は、窒化アルミニウムやアルミナなどに代表されるセラミック材料からなる円盤状のプレートである。セラミックプレート20の直径は特に限定されるものではないが、例えば300mm程度である。セラミックプレート20には、図2に示すように、内周ヒータ電極22と外周ヒータ電極24と静電電極28とが内蔵されている。内周ヒータ電極22及び外周ヒータ電極24は、例えば、モリブデン、タングステン又は炭化タングステンを主成分とするコイル又は印刷パターンで作製されている。内周ヒータ電極22は、セラミックプレート20と同じ中心を持ち直径がセラミックプレート20よりも小さい円形の内周ゾーンZ1(図3の仮想境界Bの内側)の全体に行き渡るように、一端22aから他端22bまで一筆書きの要領で配線されている。内周ゾーンZ1の直径は特に限定されるものではないが、好ましくは、セラミックプレート20の直径の85%以上95%以下であり、例えば270mm程度である。内周ヒータ電極22の一端22aと他端22bは、内周電源22pに接続されている。外周ヒータ電極24は、内周ゾーンZ1を取り囲む環状の外周ゾーンZ2(図3の仮想境界Bの外側)の全体に行き渡るように、一端24aから他端24bまで一筆書きの要領で配線されている。外周ヒータ電極24の一端24aと他端24bは、外周電源24pに接続されている。静電電極28は、例えば、モリブデン、タングステン又は炭化タングステンを主成分とするメッシュ又はプレートで作製され、セラミックプレート20のウエハ載置面20aと平行に設けられている。静電電極28は、図示しない静電電極用電源に接続されている。
【0018】
セラミックプレート20の下面20bは、図4に示すように、内周部20iよりも外周部20oの表面粗さRaが粗くなっている。外周部20oの表面粗さRaは特に限定されるものではないが、例えば1.6μmよりも粗い。図4では、表面粗さRaが1.6μmよりも粗い部分を網掛けで示し、それ以外の部分は白色で示した。内周部20iと外周部20oとの境界は、平面視したときに、図3の仮想境界Bと一致するようになっている。
【0019】
冷却プレート30は、アルミニウムやアルミニウム合金などに代表される金属からなり、直径がセラミックプレート20よりも大きい円盤状のプレートである。冷却プレート30は、図2に示すように、直径がセラミックプレート20と同じ円形の上面30aと、上面30aよりも低位で上面30aの外周を取り囲む円環状の段差面30cとを有している。上面30aにはセラミックプレート20が接着され、段差面30cには図示しないフォーカスリング(保護リングともいう)が載置される。冷却プレート30の内部には、冷媒流路32が設けられている。冷媒流路32は、セラミックプレート20が配置された全域に行き渡るように、入口から出口まで一筆書きの要領で設けられている。冷媒流路32の入口及び出口は、図示しない外部冷却装置に接続されており、出口から排出された冷媒は、外部冷却装置で温度調整されたあと再び入口に戻されて冷媒流路32内に供給される。
【0020】
冷却プレート30の上面30aは、図5に示すように、内周部30iよりも外周部30oの表面粗さRaが粗くなっている。外周部30oの表面粗さRaは特に限定されるものではないが、例えば1.6μmよりも粗い。図5では、表面粗さRaが1.6μmよりも粗い部分を網掛けで示し、それ以外の部分は白色で示した。内周部30iと外周部30oとの境界は、平面視したときに、図3の仮想境界Bと一致するようになっている。
【0021】
接着シート層40は、シリコーン樹脂やアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などに代表される絶縁性を有する樹脂製の接着シートで形成された層であり、セラミックプレート20の下面20b及び冷却プレート30の上面30aと直径が同じ円形の層である。接着シート層40は、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。接着シート層40の具体例としては、ポリプロピレン製の芯材の両面にアクリル樹脂層を備えたシートや、ポリイミド製の芯材の両面にシリコーン樹脂層を備えたシート、エポキシ樹脂単独のシートなどが挙げられる。
【0022】
次に、静電チャックヒータ10の製法について説明する。この製法は、セラミックプレート20と冷却プレート30と接着シート40sとを用意する工程(a)と、セラミックプレート20と冷却プレート30とを接着シート40sを用いて接着する工程(b)とを含む。
【0023】
工程(a)で用意するセラミックプレート20は、上述したセラミックプレート20と同じものであり、内周ヒータ電極22と外周ヒータ電極24と静電電極28とが内蔵されている。セラミックプレート20の下面20bは、図6(a)に示すように、内周部20iよりも外周部20oの表面粗さRaが粗くなっている。こうしたセラミックプレート20の製造時には、例えば、下面20b全体の表面粗さRaが1.6μm以下のセラミックプレートを用意し、外周部20oに研磨やエッチングなど粗化処理を施して外周部20oの表面粗さRaを1.6μmより粗くしてもよい。
【0024】
工程(a)で用意する冷却プレート30は、上述した冷却プレート30と同じものであり、内部に冷媒流路32が設けられている。冷却プレート30の上面30aは、図6(a)に示すように、内周部30iよりも外周部30oの表面粗さRaが粗くなっている。こうした冷却プレート30の製造時には、例えば、上面30a全体の表面粗さRaが1.6μm以下の冷却プレートを用意し、外周部30oに研磨やエッチングなどの粗化処理を施して外周部30oの表面粗さRaを1.6μmより粗くしてもよい。
【0025】
工程(a)で用意する接着シート40sは、シリコーン樹脂やアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などに代表される絶縁性を有する樹脂製のシートである。接着シート40sは、セラミックプレート20の下面20b及び冷却プレート30の上面30aと直径が略同じ円形のシートである。接着シート40sは、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。接着シート40sの具体例としては、ポリプロピレン製の芯材の両面にアクリル樹脂層を備えたシートや、ポリイミド製の芯材の両面にシリコーン樹脂層を備えたシート、エポキシ樹脂単独のシートなどが挙げられる。
【0026】
工程(b)では、まず、セラミックプレート20の下面20bと冷却プレート30の上面30aとの間に接着シート40sが介在するようにセラミックプレート20と冷却プレート30と接着シート40sとを配置し、積層体10sを製造する(図6(b)参照)。続いて、積層体10sを加熱しながら真空プレスによる加圧を行い、接着シート40sを硬化させて、セラミックプレート20と冷却プレート30とを接着シート層40で強固に接着する(図6(c)参照)。加熱温度は特に限定されず、接着シート40sの種類に応じて設定すればよいが、例えば90〜180℃程度である。加圧力は特に限定されず、接着シート40sの種類に応じて設定すればよいが、例えば0.4〜1.5MPa程度である。90〜110℃で加熱する場合には1.1〜1.5MPaで加圧し、160〜180℃で加熱する場合には0.4〜0.8MPaで加圧してもよい。接着シート40sが外周にはみ出した場合には、はみ出した接着シート40sを除去してもよい。
【0027】
次に、静電チャックヒータ10の使用例について説明する。まず、静電チャックヒータ10のウエハ載置面20aにウエハWを載置し、段差面30cに図示しないフォーカスリングを載置する。そして、静電電極28とウエハWとの間に電圧を印加することにより、ウエハWを静電気的な力によってセラミックプレート20に吸着する。この状態で、ウエハWにプラズマCVD成膜やプラズマエッチングなどの処理を施す。このとき、内周ヒータ電極22や外周ヒータ電極24に電圧を印加してウエハWを加熱したり、冷却プレート30の冷媒流路32に水などの冷媒を循環してウエハWを冷却したりすることにより、ウエハWの温度を制御する。なお、内周ヒータ電極22と外周ヒータ電極24は、各々異なる内周電源22p及び外周電源24pに接続されており、個別に温度制御される。ウエハWの処理が終了したら、静電電極28とウエハWとの間の電圧をゼロにして静電気的な力を消失させ、図示しない搬送装置によってウエハWを別の場所へ搬送する。
【0028】
以上説明した本実施形態の静電チャックヒータ10及びその製法では、接着面である下面20b及び上面30aにおいて、内周部20i,30iよりも外周部20o,30oの表面粗さRaが粗い。このため、外周部での接着シート40sの伸展がアンカー効果によって抑制され、接着シート層40の厚みを均一にできる。したがって、ウエハWの面内温度を均一にできる。
【0029】
また、静電チャックヒータ10では、内周部20i,30iに対応する内周ゾーンZ1には内周ヒータ電極22が内蔵され、外周部20o,30oに対応する外周ゾーンZ2には外周ヒータ電極24が内蔵されている。このため、表面粗さRaの違いによって内周部と外周部の熱伝導に違いが生じても、その違いに応じて内周ヒータ電極22と外周ヒータ電極24とを個別に温度制御でき、ウエハWの面内温度をより均一にできる。
【0030】
また、静電チャックヒータ10において、セラミックプレート20の下面20b及び冷却プレート30の上面30aの半径が135mm以上である場合には、接合面全面の表面粗さRaに差がないと外周部の接着シート40sが内周部よりも特に薄くなりやすい。このため、本発明を適用する意義が高い。
【0031】
また、静電チャックヒータ10において、接着面である下面20b及び上面30aにおいて、外周部20o,30oの表面粗さRaが1.6μmよりも粗い場合には、外周部20o,30oでのアンカー効果が大きい。このため、外周部では接着シート40sの伸展がより抑制され、接着シート層40の厚みをより均一にできる。また、内周部20i,30iの表面粗さRaが1.6μm以下であれば、内周部20i,30iでのアンカー効果は比較的小さい。このため、内周部では接着シート40sが適度に伸展し、接着シート層40の厚みをより均一にできる。なお、外周部20o,30oの表面粗さRaの上限は、特に限定されないが、例えば3.2μm以下としてもよいし、内周部20i,30iの表面粗さRaの2倍以下としてもよい。こうすれば、凹凸の奥まで接着シート40sが入り込みやすく、隙間が生じにくい。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0033】
例えば、上述した実施形態において、セラミックプレート20の下面20bだけ、内周部20iよりも外周部20oの表面粗さRaが粗くてもよいし、冷却プレート30の上面30aだけ、内周部30iよりも外周部30oの表面粗さRaが粗くてもよい。アンカー効果が片面のみになるものの、外周部での接着シート40sの伸展がアンカー効果によって抑制されるため、接着シート層40の厚みを均一にできる。
【0034】
上述した実施形態では、セラミックプレート20を内周ゾーンZ1と外周ゾーンZ2の2つに分割して、各ゾーンZ1,Z2に各ヒータ電極22,24を配置したが、セラミックプレート20を3つ以上に分割して、ゾーンごとにヒータ電極を配置してもよい。また、ゾーンの形状は、特に限定されず、円形や環状のほか、半円形、扇形、円弧状などとしてもよい。また、セラミックプレート20をゾーンに分割することなく、セラミックプレート20の全体に行き渡るようにヒータ電極を配置してもよい。
【0035】
上述した実施形態では、内周部20iと外周部20oとの境界や、内周部30iと外周部30oとの境界は、平面視したときに、仮想境界Bと一致するものとしたが、仮想境界Bと一致しなくてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、セラミックプレート20には、ヒータ電極22,24と静電電極28とが内蔵されているものとしたが、電極が内蔵されていれば電極の種類は限定されない。例えば、静電電極及びヒータ電極の少なくとも一方が内蔵されていてもよいし、RF電極が内蔵されていてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、冷却プレート30は、上面30aと、上面30aよりも低位の段差面30cとを有しているものとしたが、図7に示すように、冷却プレート30を、段差面30cのない円柱状にしてもよい。この場合、接着面の外周を取り囲む円環状の上面は、外周部30oと同じ表面粗さRaとしてもよいし、内周部30iと同じ表面粗さRaとしてもよいし、どちらとも異なってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、半導体の製造装置などに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 静電チャックヒータ、10s 積層体、20 セラミックプレート、20a ウエハ載置面、20b 下面、20i 内周部、20o 外周部、22 内周ヒータ電極、22a 一端、22b 他端、22p 内周電源、24 外周ヒータ電極、24a 一端、24b 他端、24p 外周電源、28 静電電極、30 冷却プレート、30a 上面、30c 段差面、30i 内周部、30o 外周部、32 冷媒流路、40 接着シート層、40s 接着シート、B 仮想境界、Z1 内周ゾーン、Z2 外周ゾーン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7