(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839412
(24)【登録日】2021年2月17日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】ルーバー
(51)【国際特許分類】
E06B 7/082 20060101AFI20210301BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20210301BHJP
E06B 9/01 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
E06B7/082
E06B5/00 D
E06B9/01 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-20146(P2017-20146)
(22)【出願日】2017年2月7日
(65)【公開番号】特開2018-127787(P2018-127787A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100168228
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 達則
(72)【発明者】
【氏名】大浦 豊
(72)【発明者】
【氏名】村松 奈美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 未佳
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−213394(JP,A)
【文献】
特許第5932823(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00−7/36
E06B 5/00
E06B 9/0−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜ルーバーと、くし形ルーバーを備え、
傾斜ルーバーが、見込方向に対して傾斜していて、見付方向に並んでおり、
くし形ルーバーは、見付方向に水平な向きで見込方向に並べた複数のくし材と、
各くし材を連結するとともに上下に間隔を空けて複数設けた桟材を有し、
各傾斜ルーバーの間に設けてあり、
くし形ルーバーは、見込方向の一端側端のくし材を一の傾斜ルーバーの一端側に固定し、
見込方向の他端側のくし材を一の傾斜ルーバーに隣接する他の傾斜ルーバーの他端側に固定してあることを特徴とするルーバー。
【請求項2】
傾斜ルーバーと、拡散透過パネルを備え、
傾斜ルーバーが、見込方向に対して傾斜していて、見付方向に並んでおり、
各傾斜ルーバーの間に、拡散透過パネルを設けてあり、
拡散透過パネルは、一端を一の傾斜ルーバーの一端側に固定し、他端を一の傾斜ルーバーに隣接する他の傾斜ルーバーの他端側に固定してあることを特徴とするルーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の窓の室外側に設置するルーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の窓において、外部からの視線を遮りつつ、採光を確保するために、窓の室外側にルーバーを設置する場合がある。従来のルーバーは、
図8に示すように、平板状で見込方向に対して傾斜するルーバー材101を、見付方向に並べたものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のルーバーにおいては、特定の方向(
図8の矢印方向)からの視線は遮ることができず、また、この方向からの光は直接室内に導光されるため、グレア(まぶしさやぎらつき)を生じさせるものであった。
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、採光を確保しつつ、グレアを生じさせないルーバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1の発明は、傾斜ルーバーと、くし形ルーバーを備え、傾斜ルーバーが、見込方向に対して傾斜していて、見付方向に並んでおり、
くし形ルーバーは、見付方向に水平な向きで見込方向に並べた複数のくし材と、各くし材を連結するとともに上下に間隔を空けて複数設けた桟材を有し、各傾斜ルーバーの間に設けてあ
り、くし形ルーバーは、見込方向の一端側端のくし材を一の傾斜ルーバーの一端側に固定し、見込方向の他端側のくし材を一の傾斜ルーバーに隣接する他の傾斜ルーバーの他端側に固定してあることを特徴とする。
【0006】
本発明のうち請求項2の発明は、傾斜ルーバーと、拡散透過パネルを備え、傾斜ルーバーが、見込方向に対して傾斜していて、見付方向に並んでおり、各傾斜ルーバーの間に、拡散透過パネルを設けてあ
り、拡散透過パネルは、一端を一の傾斜ルーバーの一端側に固定し、他端を一の傾斜ルーバーに隣接する他の傾斜ルーバーの他端側に固定してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1の発明によれば、くし形ルーバーによって、傾斜ルーバー同士の間を通した視線が遮られるので、外部からの何れの方向の視線も遮ることができる。また、室内に外部からの光が直接導光されることはなく、傾斜ルーバー及び/又はくし形ルーバーで反射した光が導光されるので、グレアを抑えることができる。
【0008】
本発明のうち請求項2の発明によれば、拡散透過パネルによって、傾斜ルーバー同士の間を通した視線が遮られるので、外部からの何れの方向の視線も遮ることができる。また、室内に外部からの光が直接導光されることはなく、拡散透過パネルを透過した光が導光されるので、グレアを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ルーバーの第一実施形態の部分横断面図である。
【
図3】第一実施形態のくし形ルーバーのくし材の見付幅の決定方法の説明図である。
【
図4】(a)は第一実施形態における視線の遮断の説明図、(b)は第一実施形態における採光の説明図である。
【
図5】放物線の焦点を通る光についての説明図である。
【
図7】ルーバーの第三実施形態の部分横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。このルーバーは、建築物の窓の室外側に設置するものであり、以下において、左右とは、ルーバーを室外側から見た場合の左右方向(
図2の左右方向)を示すものとする。ルーバーの第一実施形態は、
図1及び
図2に示すように、矩形の枠体10を有し、枠体10の内周側に、傾斜ルーバー1と、くし形ルーバー2を備えている。
【0011】
傾斜ルーバー1は、上下方向に延びるものであって、複数本を見付方向(左右方向)に等間隔に並べて、枠体10の上下に固定してある。各傾斜ルーバー1は、中空形材からなるものであって、室外側から室内側に向けて、見込方向(室内外方向)に対して左に傾斜しており、見込方向に対して傾斜する室外側面11及び室内側面12と、室外側の見付面13を有する。さらに、
図1に示す傾斜ルーバー1の水平方向断面形状について詳述すると、室外側面11は、放物線形状となっており、室外側端が放物線の頂点であって、ルーバーの室外側面上(見付面13と面一な面上)の、傾斜ルーバー1同士の隙間の左右方向中央に、放物線の焦点が位置している。一方、室内側面12は、室外側部分が略直線形状で、室内側部分が室外側面11と略同一の室内側に向けてわずかに凸な曲線形状となっている。そして、室外側面11及び見付面13は、平滑で、光の反射率が高く正反射成分の比率が大きな面であるのに対し、室内側面12は、ローレット加工により細かい凹凸を形成してあり、光を拡散反射する面である。また、室外側面11の室内側端部には、室外側に向けて開口し上下に延びる溝状の室内側被係合部14を形成してあり、室内側面12の室外側端部には、室内側に向けて開口し上下に延びる溝状の室外側被係合部15を形成してある。なお、隣接する傾斜ルーバー1において、左側の傾斜ルーバー1の右端部(室外側端部)と右側の傾斜ルーバー1の左端部(室内側端部)の左右位置が一致している。
【0012】
くし形ルーバー2は、隣接する傾斜ルーバー1の間に設けてあり、上下方向に延びる複数本のくし材3を、見込方向に等間隔に並べて構成したものである。各くし材3は、平板状のものであって、見付方向に水平な向きであり、各くし材3の右端部の左右位置が、そのくし形ルーバー2の左側に位置する傾斜ルーバー1の右端部(室外側端部)及び右側に位置する傾斜ルーバー1の左端部(室内側端部)の左右位置と一致している。そして、各くし材3の見付幅が、最も室外側のものから順に漸増し、見込方向中間部から漸減している。また、くし形ルーバー2は、見込方向に延びて各くし材3を連結する桟材33を備え、この桟材33は上下に間隔を空けて複数設けてある。なお、各くし材3及び各桟材33は、一体に成形されたものである。さらに、最も室内側のくし材3には、室内側に向けて突出する突条からなる室内側係合部34を形成してあり、最も室外側のくし材3には、室外側に向けて突出する突条からなる室外側係合部35を形成してあって、くし形ルーバー2の室内側係合部34を、傾斜ルーバー1の室内側被係合部14に係合させ、くし形ルーバー2の室外側係合部35を、傾斜ルーバー1の室外側被係合部15に係合させて、くし形ルーバー2を傾斜ルーバー1に固定してある。そして、各くし材3の室外側面31は、平滑で、光の反射率が高く正反射成分の比率が大きな面であるのに対し、室内側面32は、ローレット加工により細かい凹凸を形成してあり、光を拡散反射する面である。
【0013】
ここで、くし形ルーバー2の各くし材3の見付幅について、その決定方法を詳述する。くし形ルーバー2は外部からの視線を遮るためのものであるが、くし材3の見付幅が長いほど、確実に視線を遮ることはできるが、採光量が少なくなってしまう。そこで、くし形ルーバー2の各くし材3は、視線を遮ることができる最低限の長さとすることが望ましい。
図3に示すように、室外側面における傾斜ルーバー1同士の間隔をa、室内側面における傾斜ルーバー1同士の間隔をg、傾斜ルーバー1の見付面13の見付幅をf、放物線形状である室外側面11の頂点Oから焦点Fまでの距離をa/2とすると、放物線の方程式から、傾斜ルーバー1の見込幅d=√2×aとなる。また、くし形ルーバー2のくし材3同士の間隔をb、くし材3の見込幅(厚さ)をcとし、さらに、ルーバーの室内側面から、最も室内側のくし材3の室外側面までの距離をk、ルーバーの室外側面から、最も室外側のくし材3の室内側面までの距離をjとする。そして、傾斜ルーバー1の室内側面12の室内側端Pを通る視線(
図3の一点鎖線)を考えると、くし形ルーバー2の最も室内側のくし材3から数えてm
1枚目のくし材3(見付幅x
1)について、m
1枚目のくし材3の左端とm
1+1枚目のくし材3の右端を結んだ直線が見付方向となす角度をα
1、視線が見付方向となす角度をα
2として、次の式(1)が満たされれば、視線は遮られる。
【数1】
図3より、式(1)は、次の式(2)で表される。
【数2】
そして、式(2)を変形して、次の式(3)のとおり、x
1の条件が求められる。
【数3】
式(3)によれば、x
1は、室内側のくし材3(m
1が小さい)ほど長くなる。また、傾斜ルーバー1の室外側面11の室外側端(頂点O)を通る視線(
図3の二点鎖線)を考えると、くし形ルーバー2の最も室外側のくし材3を除外して(最も室外側のくし材3は、左端が左側の傾斜ルーバー1に連結されるので、長さは決まった値となる)、その次のくし材3から数えてm
2枚目のくし材3(見付幅x
2)について、m
2枚目のくし材3の左端とm
2−1枚目のくし材3の右端を結んだ直線が見付方向となす角度をβ
1、視線が見付方向となす角度をβ
2として、次の式(4)が満たされれば、視線は遮られる。
【数4】
図3より、式(4)は、次の式(5)で表される。
【数5】
そして、式(5)を変形して、次の式(6)のとおり、x
2の条件が求められる。
【数6】
式(6)によれば、x
2は、室外側のくし材3(m
2が小さい)ほど長くなる。なお、
図3において、Pより右側の点及びOより左側の点からは、くし形ルーバー2のくし材3同士がより重なって見えるので、P及びOを通る視線が遮られていれば、それ以外の点を通る視線も遮られていることになる。また、Pを通る視線について、α
2が小さくなれば、視線はくし形ルーバー2がなくても、右側の傾斜ルーバー1により遮られるから、式(3)は、室外側の領域でのみ有効である。一方、Oを通る視線について、β
2が小さくなれば、視線はくし形ルーバー2がなくても、左側の傾斜ルーバー1により遮られるから、式(6)は、室内側の領域でのみ有効である。その結果、くし形ルーバー2のくし材3の見付幅は、最も室外側のものから順に漸増し(式(3)による)、見込方向中間部から漸減する(式(6)による)。
【0014】
このように構成した本発明のルーバーの第一実施形態によれば、上記のようにくし材3の見付幅を決定したくし形ルーバー2によって、
図4(a)に示すように、傾斜ルーバー1同士の間を通した視線を遮り、室内外からの何れの方向の視線も遮りつつ、くし形ルーバー2のくし材3の見付幅を最低限の長さとすることで、最大限の採光量を確保できる。また、視線が通らないということは、室内に外部からの光が直接導光されることはなく、傾斜ルーバー1及び/又はくし形ルーバー2のくし材3で反射した光が導光される。そして特に、傾斜ルーバー1の室内側面12及びくし形ルーバー2のくし材3の室内側面32が、ローレット加工により細かい凹凸を形成した面となっており、
図4(b)に示すように、これらの面で光が拡散反射されるので、グレアを抑えることができる。さらに、傾斜ルーバー1の室外側面11が放物線形状であることから、
図5に示すように、放物線の焦点Fを通って入射する光が、入射角によらず、室外側面11で見付方向(左右方向)に反射され、くし形ルーバー2を通り抜けて、隣接する傾斜ルーバー1の室内側面12で拡散反射されるので、太陽光を効率よく室内に採り込める。
【0015】
また、
図6に示すのは、本発明のルーバーの第二実施形態である。第二実施形態は、第一実施形態と同じ形状の傾斜ルーバー1及びくし形ルーバー2を枠体10の内周側に設けたものであるが、傾斜ルーバー1及びくし形ルーバー2のくし材3が、上下方向に対して傾斜して延びる向きに設けてある点が、第一実施形態とは異なっている。このように傾斜ルーバー1及びくし形ルーバー2を傾斜させることで、室外側の上方から射し込む太陽光(図中の実線矢印)が上方に向けて反射され(図中の破線矢印)、天井面に導光されるので、室内を明るくすることができる。なお、より効率的に太陽光を反射するために、ルーバーを設置する窓の方角に応じて、傾斜ルーバー1及びくし形ルーバー2の傾斜方向を変えてもよい。
【0016】
次に、
図7に基づき、本発明のルーバーの第三実施形態について説明する。第三実施形態は、矩形の枠体10を有し、枠体10の内周側に、傾斜ルーバー1と、拡散透過パネル4を備えている。このうち、枠体10と傾斜ルーバー1は、第一実施形態と同じものである。
【0017】
拡散透過パネル4は、隣接する傾斜ルーバー1の間に設けてあり、上下方向に延び見込方向に水平な向きの乳白色の樹脂製平板からなり、入射した光を、拡散して透過させるものである。そして拡散透過パネル4の左右位置は、拡散透過パネル4の左側の傾斜ルーバー1の右端部(室外側端部)と右側の傾斜ルーバー1の左端部(室内側端部)の左右位置と一致している。また、拡散透過パネル4の室内側端部と室外側端部には、それぞれ略L字形の室内側係合部41と室外側係合部42を形成してあって、拡散透過パネル4の室内側係合部41を、傾斜ルーバー1の室内側被係合部14に係合させ、拡散透過パネル4の室外側係合部42を、傾斜ルーバー1の室外側被係合部15に係合させて、拡散透過パネル4を傾斜ルーバー1に固定してある。
【0018】
このように構成した本発明のルーバーの第三実施形態によれば、傾斜ルーバー1同士の隙間が、全て乳白色の拡散透過パネル4により塞がれているので、室内外からの何れの方向の視線も遮りつつ、採光を確保できる。また、外部からの光は、全て拡散透過パネル4を通ることで拡散され、そのまま室内へ入射するか、傾斜ルーバー1の室内側面12でさらに拡散反射されて室内へ入射するので、グレアを抑えることができる。
【0019】
また、第四実施形態として、第三実施形態と同じ形状の傾斜ルーバー1及び拡散透過パネル4を、第二実施形態と同じように、上下方向に対して傾斜して延びる向きに設けてもよい。このように傾斜ルーバー1及び拡散透過パネル4を傾斜させることで、第二実施形態と同様に、室外側の上方から射し込む太陽光が上方に向けて反射され、天井面に導光されるので、室内を明るくすることができる。なお、より効率的に太陽光を反射するために、ルーバーを設置する窓の方角に応じて、傾斜ルーバー1及び拡散透過パネル4の傾斜方向を変えてもよい。
【0020】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、傾斜ルーバー、くし形ルーバー及び拡散透過パネルの形状は、上記の要件を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。傾斜ルーバーの室外側面は放物線形状であることが望ましいが、その焦点の位置は、傾斜ルーバー同士の隙間の左右方向中央に限られず、ルーバーの室外側面上のどこにあってもよい。また、くし形ルーバーのくし材同士の間隔が一定でなくてもよい。そして、傾斜ルーバー及び/又はくし形ルーバーのくし材の室内側面は、拡散反射面であることが望ましいが、この拡散反射面とは、少なくとも室外側面より拡散反射成分の比率が大きい面であり、ローレット加工以外の表面加工、塗装、別部材による被覆など、どのように形成されるものであってもよい。さらに、拡散透過パネルは、光を通しつつ直進を妨げるものであればよく、半透明の樹脂板・ガラス板や、すりガラスのように表面に凹凸を形成したもの、または透明板の表面に乳白色や半透明のフィルムを貼ったものなど、どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 傾斜ルーバー
2 くし形ルーバー
4 拡散透過パネル