(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839439
(24)【登録日】2021年2月17日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】試料観察装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20210301BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20210301BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G02B21/00
G02B21/06
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-233865(P2016-233865)
(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公開番号】特開2018-91676(P2018-91676A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】志村 俊昭
【審査官】
伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−148572(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3171325(JP,U)
【文献】
特開2012−083125(JP,A)
【文献】
実開昭52−069975(JP,U)
【文献】
特開2009−163069(JP,A)
【文献】
特開2004−012570(JP,A)
【文献】
特開2011−013659(JP,A)
【文献】
実開平06−074957(JP,U)
【文献】
特開2000−081312(JP,A)
【文献】
特開2009−037039(JP,A)
【文献】
特開2014−163820(JP,A)
【文献】
特表2009−530674(JP,A)
【文献】
特開2002−005841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − 21/61
G02B 21/00 − 21/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を照明する光源及び試料照明光路上に位置する第1偏光板を基台内部に有し、試料が載置される第1透明板を前記基台の上壁として有する試料載置部と、
前記基台に立設される支柱と第2透明板とを含む支持部と、
前記第2透明板の上部に第2偏光板を含む観察部と、
から構成され、
前記支持部は前記支柱に一体に設けられる第2透明板を有し、前記第2透明板は前記第1透明板の上方であって試料観察光路上に位置し前記第1透明板と平行に配設される一方で、
前記第2偏光板は、前記第2透明板上であって、前記試料観察光路中に挿入された際、前記第1偏光板と直線偏光の振動方向が直交方向となるよう、前記第2透明板に回動可能に支持されており、
前記第2偏光板の前記試料観察光路中への挿脱によりクロスニコルとオープンニコルを切り替えて、前記試料観察光路上方から前記第1透明板上に載置される試料の全体観察を可能とすることを特徴とする試料観察装置。
【請求項2】
前記光源は面状光源である請求項1記載の試料観察装置。
【請求項3】
前記光源は面発光白色LED光源であり、前記面発光白色LED光源と前記第1偏光板との間に前記面発光白色LED光源からの光を拡散させて輝度を均一化する光拡散板を有する請求項1記載の試料観察装置。
【請求項4】
前記観察部は前記第2偏光板の上方又は下方であって前記第2透明板に支持されるレンズを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の試料観察装置。
【請求項5】
前記レンズはフレネルレンズであり、
前記フレネルレンズは前記第2透明板上に載置支持される請求項4記載の試料観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光線を透過する物質の光学的性質の観察に用いる試料観察装置であって、岩石・鉱物・雪氷・生体細胞・液晶・高分子など様々な物質の光学的性質の観察・研究に用いることができる試料観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、岩石・鉱物などの試料観察には、光学顕微鏡の一種である偏光顕微鏡が用いられている。
偏光顕微鏡は、偏光を用いて試料の複屈折や偏光の振動方向による特性を観察する装置であって筒状の形態を呈し、接眼レンズから試料の一部を覗く構造である(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
前記偏光顕微鏡は、物質の偏光に関わる性質を観察することができるため、従来の岩石や鉱物の観察に加え、最近では、雪氷学・歯学・細胞学・高分子化学・液晶など様々な分野における試料観察・研究に用いられている。
【0004】
ところが、前記偏光顕微鏡は、接眼レンズから試料の一部を覗く構造のため、試料の狭い部分を少しずつ観察するしかなく、試料全体を一度に観察できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭53−17797号公報
【特許文献2】特開2005−3994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、試料の光学的性質の観察に用いる試料観察装置であって、試料全体を一度に観察することができる試料観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の試料観察装置は、
試料を照明する光源及び試料照明光路上に位置する第1偏光板を基台内部に有し、試料が載置される第1透明板を前記基台の上壁として有する試料載置部と、
前記基台に立設される支柱と第2透明板とを含む支持部と、
前記第2透明板の上部に第2偏光板を含む観察部と、
から構成され、
前記支持部は前記支柱に一体に設けられる第2透明板を有し、前記第2透明板は前記第1透明板の上方であっ
て試料観察光路上に位置し前記第1透明板と平行に配設される一方で、
前記第2偏光板は、前記第2透明板上であって、前記試料観察光路中に挿入された際、前記第1偏光板と直線偏光の振動方向が直交方向となるよう、前記第2透明板に回動可能に支持されており、
前記第2偏光板の前記試料観察光路中への挿脱によりクロスニコルとオープンニコルを切り替えて、前記試料観察光路上方から前記第1透明板上に載置される試料の全体観察を可能とすることを特徴とする。
【0008】
本発明の試料観察装置は、
前記光源が面状光源であることが好ましい。
【0009】
本発明の試料観察装置は、
前記光源が面発光白色LED光源であり、前記面発光白色LED光源と前記第1偏光板との間に前記面発光白色LED光源からの光を拡散させて輝度を均一化する光拡散板を有することが好ましい。
【0010】
本発明の試料観察装置は、
前記観察部が前記第2偏光板の上方又は下方であって前記
第2透明板に支持されるレンズを含むことが好ましい。
【0011】
本発明の試料観察装置は、
前記レンズがフレネルレンズであ
り、
前記フレネルレンズは前記第2透明板上に載置支持されることが好ましい。
【0012】
本発明の試料観察装置は、
前記支持部の支柱の長さを可変できる構造とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の試料観察装置は、試料観察光路上方から第1透明板上に載置される試料の全体観察を可能とするものであり、試料全体を一度に観察することができる。
【0014】
また、本発明の試料観察装置は、従来の偏光顕微鏡のように接眼レンズを覗くことなく、試料観察光路上方から第1透明板上に載置される試料を観察するものであり、一つの試料を複数人で同時に観察することができる。
【0015】
本発明の試料観察装置は、光源が面状光源であることとすれば、光源の高さを低くすることができるのに加え、光拡散板を必要としないことから、薄型の装置とすることができる。
【0016】
本発明の試料観察装置は、観察部が第2偏光板の上方又は下方であって
第2透明板に支持されるレンズを含むこととすれば、試料を拡大して観察することができる。
【0017】
本発明の試料観察装置は、前記支持部の支柱の長さを可変できる構造とすれば、様々な大きさの試料を適切に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】クロスニコルで試料を観察する様子の説明図。
【
図5】オープンニコルで試料を観察する様子の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態における試料観察装置の概略斜視図を示す。
図2は試料観察装置の概略正面断面図を示す。
本発明の実施の形態における試料観察装置1は、試料載置部2と、支持部3と、観察部4から構成される。
【0020】
前記試料載置部2は、箱体状の基台21を有する。前記試料載置部2は、前記基台21の内部に、試料を照明する面発光白色LED光源22、前記面発光白色LED光源22の光を拡散させて輝度を均一化する光拡散板23、試料照明光路上に位置する下方偏光板(下方ニコル)24を有し、前記基台21の上壁として、試料が載置される透明板ガラス25を有する
【0021】
前記面発光白色LED光源22には、例えば複数のLEDチップを基板上に並べてなる市販の製品を利用することができる。
また、前記透明板ガラス25は、前記偏光板24を保護するとともに、前記基台21となる箱状体の蓋体の役割を果たす。
【0022】
前記支持部3は、前記基台21に立設される支柱31、前記支柱31と一体に成形される透明アクリル板32を有する。
前記支柱31には、板状部材のほか棒状部材などを用いることができる。
前記透明アクリル板32は、前記透明板ガラス25の上方であって試料観察光路上に位置し、前記透明板ガラス25と平行に配設される。
【0023】
前記観察部4は、前記透明アクリル板32上に載置支持されるフレネルレンズ41、前記フレネルレンズ41上に載置支持される上方偏光板(上方ニコル)42を有する。
前記上方偏光板42は、前記透明板ガラス25と平行な面内で回動可能となるよう前記透明アクリル板32に支持され、試料観察光路中に挿脱可能とされる。
【0024】
ここで、前記上方偏光板42は、前記透明アクリル板32上であって、試料観察光路中に挿入された際、前記下方偏光板24と直線偏光の振動方向が直交方向となるよう、前記透明アクリル板32に回動可能に支持されており、前記試料観察光路中への挿脱によりクロスニコルとオープンニコルを切り替えることができる。
【0025】
また、前記フレネルレンズ41は、前記上方偏光板42と同様に、前記透明板ガラス25と平行な面内で回動可能となるよう前記透明アクリル板32に支持され、試料観察光路中に挿脱可能とされていてもよい。
【0026】
図3は試料観察装置の基台上に試料を載置した状態の概略斜視図を示す。
前記試料観察装置1は、試料載置部2と観察部4の間に側方が開放された試料載置空間を有し、前記基台21上であって透明板ガラス25の上面に、前記開放された側方から試料Sを載置することができる。
【0027】
図4は
図3の試料載置装置の平面図であって、クロスニコルで試料を観察する様子の説明図を示す。
前記試料観察装置1は、前記上方偏光板42を前記試料観察光路中に位置させることで、前記試料観察光路上方から前記透明板ガラス25の上面に載置される試料Sの全体をクロスニコルで観察することができる。
【0028】
図5は
図3の試料載置装置の平面図であって、オープンニコルで試料を観察する様子の説明図を示す。
前記試料観察装置1は、前記上方偏光板42を前記試料観察光路外に退避させることで、前記試料観察光路上方から前記透明板ガラス25の上面に載置される試料Sの全体をオープンニコルで観察することができる。
【0029】
ここで、前記試料観察装置1において、前記光拡散板23、前記下方偏光板24、前記透明板ガラス25、前記透明アクリル板32、前記フレネルレンズ41及び前記上方偏光板42には、それぞれ薄板状の部品を利用することができる。
前記試料観察装置1において薄板状の部品を利用することとすれば、前記試料観察装置1を薄型の製品とすることができる。
【0030】
上記本発明の実施の形態において、前記試料載置部2は、前記基台21の内部に面発光白色LED光源22を有するものとしたが、その他の光源を有するものとすることもできる。前記面発光白色LED光源22に代えて、有機ELシート、無機ELシートなどの面状光源を前記基台21の内部に有するものとすれば、光源の高さを低くできるのに加え、前記光拡散板22を不要とできるため、前記試料観察装置1をより薄型の製品とすることができる。
【0031】
上記本発明の実施の形態において、前記試料載置部2は、前記基台21の上壁として透明板ガラス25を有するものであったが、透明アクリル板などの透明で偏光を生じない他の材料からなる板材を有するものとすることもできる。
なお、前記基台21の上壁として透明板ガラス25を有するものであれば、透明アクリル板などに比べて傷がつきにくいため、より好ましいものとなる。
【0032】
上記本発明の実施の形態において、前記支持部3は、支柱31の長さ(高さ)を可変できる構造とすることもできる。
前記支持部3が支柱31の長さ(高さ)を可変できる構造であれば、様々な大きさの試料を適切に観察することができる。
【0033】
上記本発明の実施の形態において、前記支持部3は、透明アクリル板32を有することとしたが、透明板ガラスなどの透明で偏光を生じない他の材料からなる板材を有することとすることもできる。
【0034】
上記本発明の実施の形態において、前記観察部4は、フレネルレンズ41を有することとしたが、前記フルネルレンズ41に代えて、普通の凸レンズを有するこことすることもできる。
前記観察部4がフルネルレンズ41を有するものであれば、前記試料観察装置1を薄型とする上でより好ましいものとなる。
【0035】
上記本発明の実施の形態において、前記フレネルレンズ41は、前記透明アクリル板32に載置支持されることとしたが、前記フレネルレンズ41を撓ませることなく前記透明板ガラス25と平行に支持できるのであれば、前記透明アクリル板32に代えて他の支持手段を採用することができる。
なお、前記フレネルレンズ41は、試料を拡大して観察する必要がなければ、必ずしも設ける必要はない。
【0036】
上記本発明の実施の形態において、前記観察部4は、フレネルレンズ41の上面に載置支持される上方偏光板42を有することとしたが、前記フレネルレンズ41を前記上方偏光板42の上方に配設することもできる。
【0037】
本発明は、上記実施の形態に限るものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の試料観察装置は、試料の光学的性質の観察に用いる試料観察装置であって、試料全体を一度に観察することができるとともに、一つの試料を複数人で同時に観察することが可能なものであり、極めて有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 試料観察装置
2 試料載置部
3 支持部
4 観察部
21 基台
22 面発光白色LED光源
23 光拡散板
24 下方偏光板
25 透明板ガラス
31 支柱
32 透明アクリル板
41 フレネルレンズ
42 上方偏光板
S 試料