(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2磁気発生部は、前記ハンガーに前記内視鏡の前記操作部が保持された際に前記第1磁気発生部と対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用架台装置。
前記第2磁気発生部は、前記ハンガーに前記内視鏡の前記操作部が保持された際に前記第1磁気発生部の水平方向の周囲を囲む壁部を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用架台装置。
前記第2磁気発生部は、前記ハンガーに前記内視鏡の前記操作部が保持された際に磁気を発生させるよう励起されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用架台装置。
前記第1磁気発生部は、前記内視鏡が制御装置に接続されて前記ハンガーに前記内視鏡の前記操作部が保持された際に、磁気を発生させるよう励起されることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡システム。
前記第2磁気発生部は、前記ハンガーに前記内視鏡の前記操作部が保持された際に前記第1磁気発生部の水平方向の周囲を囲む壁部を有することを特徴とする請求項6に記載の内視鏡システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1形態)
図1において、符号1は、内視鏡2と、この内視鏡2を保持し、複数の内視鏡用周辺機器を搭載する内視鏡用架台装置(トロリー装置)10とを有する内視鏡システムを示している。
図1においては、後述するトロリー装置本体11に内視鏡2が掛止されて保持されている状態を図示している。
【0013】
内視鏡2は、例えば患者の腹部内等の被検体に挿入される細長の挿入部3と、挿入部3の基端に設けられ、把持部を兼用して各種操作を行う操作部4と、操作部4から延出されるユニバーサルコード5と、ユニバーサルコード5の先端に設けられたコネクタ部6とを有している。挿入部3は、先端に設けられた硬質の先端部3aと、この先端部3aの後端に連設される湾曲自在の湾曲部3bと、湾曲部3bの後端から操作部4の前端にかけて設けられる可撓性を有する可撓管部3cとを有して構成されている。
【0014】
尚、先端部3aには、観察部位に照明光を照射する照明光学系と観察部位からの反射光を取り込む対物光学系とが設けられ、対物光学系の結像位置に撮像素子が配設されている。また、湾曲部3bには、複数の湾曲駒が配置され、操作部4に設けられた湾曲操作ノブから延出される湾曲ワイヤにより、複数の湾曲駒を駆動して湾曲部3bを上下左右に湾曲させることができる。
【0015】
内視鏡2のコネクタ部6は、トロリー装置10に搭載された光源装置50に着脱自在に接続される光源コネクタ6aと、この光源コネクタ6aから分岐されてビデオプロセッサ51に着脱自在に接続される電気コネクタ6bとを備えている。光源装置50は、被検体を照明するための照明光を発生する。光源装置50からの照明光は、内視鏡2の挿入部3内に挿通されたライトガイドによって挿入部3の先端部3aに導かれ、先端部3aの照明光学系から被検体に照射される。
【0016】
被検体に照射された照明光は被検体で反射され、その反射光(戻り光)が内視鏡2の先端部3aに内蔵された撮像素子の受光面に光学像として結像する。先端部3a内の撮像素子は、ビデオプロセッサ51によって駆動制御され、被検体の光学像を電気信号に変換してビデオプロセッサ51に出力する。
【0017】
ビデオプロセッサ51は、画像信号処理部を有しており、この画像信号処理部で撮像素子からの撮像信号に対する各種信号処理を行う。ビデオプロセッサ51は、図示しない映像ケーブルを介してモニタ52と接続され、ビデオプロセッサ51から信号処理後の画像信号がモニタ52に入力されると、モニタ52の表示画面上に被検体の内視鏡画像として表示される。
【0018】
トロリー装置10は、光源装置50やビデオプロセッサ51等の各種内視鏡用周辺機器を搭載可能とする搭載部を構成する複数の棚板を備えたトロリー装置本体11と、このトロリー装置本体11の底部付近に設けられ、内部に絶縁トランス等を内蔵した電源装置12とを有している。トロリー装置本体11の底面には、トロリー装置10を移動し易くするための4個のキャスタ13が取り付けられている。
【0019】
トロリー装置本体11は、下部にキャスタ13が取り付けられると共に、電源装置12が設けられる底板14と、この底板14の後方の両側部に、鉛直方向(
図1の上下方向)上部に向かって立設される2本の側柱15a,15bと、これらの側柱15a,15bの上端側に懸架される逆U字状のフレーム16と、側柱15a,15bの間に、互いに平行に配置される複数の棚板17を備えている。
図1においては、複数の棚板17は、側柱15a,15b上部に取り付け固定される上面棚板17aと、この上面棚板17aの下部に所定間隔で配置される2枚の中間棚板17b,17cとを備える例を示している。
【0020】
尚、上面棚板17aには、前面の2つの角部分に搬送用ハンドル18a,18bが設けられており、この搬送用ハンドル18a,18bを把持してトロリー装置本体11を動かすことにより、キャスタ13を介してトロリー装置10全体を移動させることが可能となっている。
【0021】
このようなトロリー装置本体11には、内視鏡2の複数の周辺装置が載置される。
図1においては、中間棚板17bに、光源装置50及びビデオプロセッサ51が載置されている。また、中間棚板17cには、例えば、図示しない電気メス装置やビデオプリンタ等を載置することができ、底板14には、例えば、図示しない気腹装置等を載置することができる。一方、トロリー装置本体11の上部には、フレーム16に取り付けられた可動式アーム19を介して、内視鏡画像を表示するモニタ52が搭載される。
【0022】
また、トロリー装置本体11には、一方の側柱15aに沿って内視鏡ハンガー支柱20が立設されている。この内視鏡ハンガー支柱20の上端には、内視鏡を保持するハンガー21が装着されている。ハンガー21は、内視鏡2の操作部4を係止するフック部21aを備え、
図1に示すように、内視鏡2の挿入部3を下にして操作部4のユニバーサルコード5が延出される分岐部をフック部21aの間に引っ掛けることにより、内視鏡2を吊り下げて保持することができる。
【0023】
このとき、内視鏡2の挿入部3は、トロリー装置本体11に接触することなく保持される。内視鏡2の挿入部3の先端近傍には、磁力を発生する第1磁気発生部30(
図2参照)が内蔵されており、この第1磁気発生部30と対向する側柱15aの側面側に、第1磁気発生部30との間で互いに反発する磁気力を生じさせる第2磁気発生部40が設けられている。
【0024】
すなわち、ハンガー21のフック部21aに内視鏡2の操作部4を係止して細長の挿入部3を鉛直下方に吊り下げたとき、内視鏡2側の第1磁気発生部30で発生する磁気力とトロリー装置本体11側の第2磁気発生部40で発生する磁気力とが互いに反発する斥力となるように設定されている。これにより、挿入部3がトロリー装置本体11に接触することなく所定の距離に離間した状態に保持される。
【0025】
内視鏡2の第1磁気発生部30は、例えば、挿入部3の可撓管部3c内に設けられる。具体的には、第1磁気発生部30は、
図2に破線で示すように、可撓管部3cの長手方向の所定範囲に渡って、可撓管部3cの外皮となる樹脂チューブ3dの内側に、薄肉のマグネットシート31を円筒状に配設して形成される。より詳細には、例えば、樹脂チューブ3dと、細線材を編組して形成される網状のブレード(図示せず)との間に、マグネットシート31が円筒状に配置される。
【0026】
マグネットシート31は、フェライト等の磁性体の粒子を樹脂等のバインダに混入してシート状に成形した後、シートを磁化して永久磁石としたものである。このマグネットシート31としては、例えば、シートの表面側と裏面側とがそれぞれ極性が異なる磁極となるように着磁した両面着磁のシートを用いる。
【0027】
トロリー装置本体11側の第2磁気発生部40も、マグネットシート31と同様のマグネットシート41で形成されている。マグネットシート41は、側柱15aの側面側に貼り付けられ、ハンガー21に内視鏡2が保持されたときに挿入部3のマグネットシート31と対向する位置に固定されている。
【0028】
このとき、マグネットシート41は、内視鏡2の挿入部3と対向する磁極が内視鏡2のマグネットシート31の外周側の磁極と同じ極性となるように設定されている。例えば、内視鏡2のマグネットシート31の外周側の磁極がS極である場合には、トロリー装置本体11側のマグネットシート41もS極が外側になるように設定されている。逆の場合も同様であり、マグネットシート31のN極とマグネットシート41のN極とが互いに対向するように配置される。
【0029】
このようなマグネットシート31,41の配置により、内視鏡2の操作部4をハンガー21に係止して挿入部3を吊り下げたとき、挿入部3に内蔵されるマグネットシート31と、トロリー装置本体11側のマグネットシート41との間に、互いに反発する斥力が発生する。その結果、内視鏡2の挿入部3先端側がトロリー装置本体11に接触することなく、所定の距離に強制的に離間されて保持される。
【0030】
尚、内視鏡2の第1磁気発生部30は、マグネットシート31に変えて、
図2中に2点鎖線で示すように、先端部3aの基端側にリング状のマグネット31Aを配設することも可能である。リング状のマグネット31Aは、外周面側の磁極と内周面側の磁極とが互いに異なる極性の磁極となるように、径方向に着磁したマグネット、或いは円周方向に複数のマグネットを配置して樹脂材等でリング状に成形した複合マグネットとして形成する。このリング状のマグネット31Aを先端部3aの基端側に配設することにより、マグネットシート31と同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
また、トロリー装置本体11側の第2磁気発生部40は、挿入部の長さが異なる各種内視鏡に対応可能なように、マグネットシート41を、
図1中に破線で示すように、トロリー装置本体11の高さ方向に沿って所定の寸法に延長したマグネットシート41Aとしても良い。マグネットシート41Aは、挿入部の長さが異なる複数種類の内視鏡に対応可能なように、マグネットシート41よりもトロリー装置本体11の高さ方向の長さLを大きく設定しており、共通のトロリー装置10で様々な長さの内視鏡に対応することができる。
【0032】
例えば、
図3に示すように、標準的な長さの挿入部3_Mに対して、相対的に長さが短い挿入部3_S、相対的に長さが長い挿入部3_Lの3種類の内視鏡がハンガー21に保持された場合を想定する。このとき、各内視鏡の挿入部3_S,3_M,3_Lの先端部の床面からの高さを、H1,H2,H3(H1>H2>H3)とすると、マグネットシート41Aは、床面から下端までの高さH0がH0<H3、且つ上端までの高さ(H0+L)が(H0+L)>H1となるように配置される。尚、厳密には、マグネットシート41Aの下端位置及び上端位置は、内視鏡の第1磁気発生部30の位置を基準として設定されるが、ここでは、便宜上、挿入部先端位置との関係で説明している。
【0033】
更に、トロリー装置本体11側の第2磁気発生部40は、平板状の形状に限定されることなく、内視鏡2の挿入部3先端近傍の第1磁気発生部30の水平方向の周囲を囲む壁部を有する筒状の形状としても良い。例えば、
図4に示すように、トロリー装置本体11の側柱15aからアーム42を延出し、このアーム42の先端に、第2磁気発生部40としての筒状の磁気ケース43を取り付けるようにしても良い。
【0034】
磁気ケース43は、内壁面側に形成される磁極が、内視鏡2の挿入部3外周側に配置される磁極と同じ極性となるように着磁されており、径方向の断面が円形或いは多角形で形成されている。また、磁気ケース43は、筒状の下端側を閉塞した底部43aを有する形状としても良く、筒状の長手方向の両端を開放した形状としても良い。簡易的には、磁気ケース43は、マグネットシート41を円筒状に丸めて形成することができる。
【0035】
更に、磁気ケース43は、内視鏡2の挿入部3を囲むようにセットする際の取り扱い上の自由度を上げるため、外周の一部を開放して長手方向に開口部を有する形状としても良い。例えば、磁気ケース43を、径方向の断面が半円、Uの字状、コの字状等として、内視鏡2の挿入部3を囲む壁部を部分的に形成するようにしても良い。
【0036】
このような磁気ケース43でトロリー装置本体11の第2磁気発生部40を形成することにより、内視鏡2の挿入部3先端側をトロリー装置本体11に接触することなく所定の距離に離間して保持することができるばかりでなく、周囲の人間や物体が内視鏡2の先端側に接触することを防止することができる。
【0037】
以上のように本実施の形態においては、内視鏡2の操作部4を、トロリー装置本体11のハンガー21に係止して保持したとき、内視鏡2の挿入部3がトロリー装置本体11に接触することなく所定の距離に離間して保持されるため、挿入部3の汚染や挿入部3先端の破損を防止することができる。
【0038】
(第2形態)
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。
第2形態は、内視鏡2の第1磁気発生部30とトロリー装置本体11の第2磁気発生部40との少なくとも一方を、電磁石で構成するものである。
【0039】
内視鏡2の第1磁気発生部30を電磁石で構成する場合、
図5に示すように、可撓管部3cの外皮である樹脂チューブ3dの内側に、絶縁被覆された細径の金属導線からなる電磁コイル32aを配設する。電磁コイル32aの両端には、例えばリング状の磁性体からなる磁性部材32bを配置し、この磁性部材32bを金属細線材を編組した金属ブレード等の磁性部材と結合して電磁コアを形成することにより、電磁石32を構成する。
【0040】
また、トロリー装置本体11の第2磁気発生部40を電磁石で構成する場合には、例えば、
図6に示すように、側柱15a内に薄型の電磁石44を埋め込み、一方の磁極を構成するコア端面を露出させる。電磁石44は、複数個設けるようにしても良く、また、側柱15aの側面に複数の薄型の電磁石を貼り付け固定して構成するようにしても良い。
【0041】
これらの電磁石32,44は、内視鏡2がハンガー21に係止されたときにコイルに通電されて磁気が励起され、互いに対向配置される磁極が同じ極性となって互いに反発する斥力が発生するように制御される。このため、ハンガー21には、内視鏡2の操作部4が係止されたときに動作するスイッチが設けられている。例えば、
図7に示すように、ハンガー21には、フック部21a近傍の操作部4が当接される部位に、操作部4が当接されたときにONするプッシュ型のスイッチ22が設けられている。
【0042】
スイッチ22は、トロリー装置本体11の第2磁気発生部40を電磁石44で構成する場合、例えば、電源装置12と電磁石44とを接続する回路に設けられる。これにより、電磁石44に供給する電流を、直接或いはリレーを介して断続することができる。また、内視鏡2の第1磁気発生部30を電磁石32で構成する場合には、例えば、制御装置としてのビデオプロセッサ51でスイッチ22のON,OFFを検出する。そして、ビデオプロセッサ51がスイッチ22のONを検出したとき、電磁石32に通電するように制御する。
【0043】
第2形態においても、内視鏡2の操作部4を、トロリー装置本体11のハンガー21に係止して保持したとき、内視鏡2の挿入部3をトロリー装置本体11から所定の距離に離間して挿入部3の汚染や挿入部3先端の破損を防止することができる。しかも、内視鏡2をトロリー装置本体11に保持したときのみ、内視鏡2の挿入部3とトロリー装置本体11との間に磁気力(反発力)を発生させることができるため、内視鏡2をトロリー装置本体11に保持していないときに不要な物体(磁性体)の吸着を防止することができる。
【0044】
(第3形態)
次に、本発明の実施の第3形態について説明する。
第3形態は、前述の第1,第2形態に対して、トロリー装置本体11の第2磁気発生部40の位置を移動自在とするものである。
【0045】
図8に示すように、第3形態においては、トロリー装置本体11の側柱15aに、磁気発生部40を上下方向に移動自在とする可動レール23を設けている。この可動レール23は、側柱15aに沿って併設するようしても良く、或いは側柱15aと一体的に形成するようにしても良い。
図8における磁気発生部40は、前述したマグネットシート41や電磁石44を採用することができる。
【0046】
可動レール23のトロリー装置本体11正面側には、可動レール23内部で第2磁気発生部40と連結されて手動で第2磁気発生部40を上下方向に移動可能とするノブ23aが備えられている。ノブ23aは、例えば、可動レール23に締結固定することにより、第2磁気発生部40を任意の位置で固定するロック機構を兼用しており、内視鏡2の挿入部3の長さに応じて第2磁気発生部40の位置を最適に調整することができる。
【0047】
また、
図9は、前述した筒状の磁気ケース43を第2磁気発生部40として採用する例を示している。
図9の可動レール23も
図8と同様であり、ノブ23aを把持して磁気ケース43を上下させ、内視鏡2の挿入部3の長さに応じた最適な位置で固定することができる。
【0048】
第3形態においても、内視鏡2の操作部4を、トロリー装置本体11のハンガー21に係止して保持したとき、内視鏡2の挿入部3をトロリー装置本体11から所定の距離に離間して挿入部3の汚染や挿入部3先端の破損を防止することができる。しかも、内視鏡2の挿入部3の長さに応じて第2磁気発生部40の位置を最適に調整することができ、共通のトロリー装置10で様々な長さの内視鏡に対応することができる。