【実施例】
【0017】
以下に実施例、試験例を示し、本発明をさらに説明する。
実施例 ジェル状マッサージ用化粧料 (質量%)
グリセリン 5
エタノール 3
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー 0.3
PEG−80水添ヒマシ油 0.3
水酸化カリウム 0.11
ゲラニオール 0.1
水 残余
水、グリセリン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー、PEG−80水添ヒマシ油、を加熱溶解させる。冷却後、水酸化カリウムで中和し、あらかじめゲラニオールとエタノールを分散していたものをさらに投入し、混合してジェル状マッサージ化粧料を得た。得られたマッサージ用化粧料は、好ましいゲラニオールの香(バラの香)を有していた。
【0018】
前記の組成のマッサージ用化粧料を本発明品として用いて試験を行った。なおゲラニオールを含まない以外は同様の組成でマッサージ用化粧料を調製し、これを比較例品とした。
【0019】
試験例1:マッサージ用化粧料による脳血流への影響評価試験
(1)試験デザイン
試験協力者に対して下記の介入試験を行い、介入前後の比較を行った。
1)何もしない
2)ゲラニオールの香りのみを嗅ぐ(以下、香りのみ)
3)比較例品(無賦香)のマッサージ用化粧料でセルフマッサージを3分間行う(以下、マッサージのみ)。
4)本発明品(ゲラニオール含有マッサージ用化粧料)でセルフマッサージを3分間行う。(以下、香り+マッサージ、香りマッサージ)
なおゲラニオール(試薬名:ゲラニオール、和光純薬工業社製)とエタノールを2:1で混合したのち、ビン詰めしたコットンにこの混合物を2mL含ませ、香りのみの条件時に使用する。このコットンを鼻先から3cm程度のところにもっていき、3分間吸引した。
またマッサージは、
図1に示す方法に従った。特に、呼気(吐くこと)を意識ながら行うマッサージであり、ゲラニオールの香りを十分に取り込むことができる。
【0020】
(2)被験者
同意を得られた健常女性4名(平均年齢34.2歳)
【0021】
(3)試験スケジュール
被験者一人あたり2日に分け測定し、測定は午後1時から午後5時の間のなるべく同時間となるようにした。一日の条件として1)と2)を同日に行い、3)と4)を同日に行った。
【0022】
(4)脳血流の測定
使用機器:日立製作所製 近赤外光トポグラフィー OT−R40を用いて酸素化ヘモグロビンの変化量を測定し、脳血流変化量とした。また測定手順は
図2のとおりである。
【0023】
(5)測定結果の解析方法
初期安静、介入、介入後安静の3つのイベントごとにわけ、52個の電極の酸素化ヘモグロビン量の平均値を各イベントの値とした。
【0024】
(6)結果
初期安静時から血流量がどれくらい変化したか、その変化量を下記表1及び
図3に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
表1及び
図3から明らかなように、本発明品とマッサージを併用することで、脳血流は明らかに低下することがわかった。すなわち、脳血流の低下は、介入時よりも介入後安静において酸素化ヘモグロビン量が減少していることから、介入後しばらくの間脳血流が低下することが確認できた。したがってゲラニオールを0.1質量%以上含有するマッサージ用化粧料は、脳血流を低下させることが明らかである。
【0027】
試験例2:マッサージ化粧料による睡眠への影響評価試験
試験例1から本発明品(ゲラニオール含有マッサージ用化粧料)は、脳血流を低下させる効果を確認できたため睡眠に及ぼす影響を評価した。
(1)試験デザイン
同一試験協力者に対して下記の2通りの介入試験を行い、クロスオーバー試験を行った。
1)夜寝る前に、比較例品のみを塗布し、睡眠計をつけて就寝する。(以下、対照期間)
2)夜寝る前に、本発明品でマッサージを行い、睡眠計をつけて就寝する。(以下、介入期間)
試験協力者に対して介入試験を行い、介入前後の比較を行った。
【0028】
(2)被験者
軽度な睡眠困難を自覚した女性16名(平均年齢39.6歳)
【0029】
(3)試験スケジュール
被験者をA群、B群の2群にわけ、対照期間4週間と介入期間の4週間の2つの期間にわけ、クロスオーバー試験を行った。
【0030】
(4)睡眠状態の評価
使用機器:スリープウェル社製 スリープスコープを用いて、入眠潜時及び睡眠効率を測定して評価した。
睡眠は、大脳の活動がほとんど停止しているノンレム睡眠と全身は脱力状態にあるが脳の一部は活発に活動し夢を見ているレム睡眠の2種に大別される。この2種の眠りが一定の間隔で繰り返され、眠りが形成されるが、入眠潜時は、就寝からノンレム睡眠出現までの時間をいう。特に睡眠初期の十分に深いノンレム睡眠の確保が効率的な睡眠をもたらす。入眠潜時が短いほど好ましい入眠があったものと評価できる。
睡眠効率は、睡眠中における実質的な睡眠を意味し、睡眠中の中途覚醒を除いた睡眠時間(総睡眠時間)を、入眠から起床までの時間(総就床時間)で除した値である。従って、中途覚醒が多いと睡眠効率は低下する。この睡眠効率が高いほど好ましいと評価できる。
【0031】
(5)測定結果の解析方法
介入期間、対照期間のうち任意の6日間を解析対象日とし、上記の入眠潜時及び睡眠効率の平均を求めて評価した。介入期間、対照期間の測定結果は対応のあるt検定を行った(*:P<0.05、**:P<0.01)。
【0032】
(6) 結果
図3に入眠潜時の測定結果、
図4に睡眠効率の測定結果を示す。本発明品(ゲラニオール含有マッサージ用化粧料)によるマッサージにより、有意に入眠潜時の短縮と睡眠効率増加が確認された。すなわち、ゲラニオールの香りを嗅ぎながらマッサージをすると脳血流が低下し、その結果、睡眠へも良い影響を与えたのではないかと考えられた。