【実施例】
【0016】
図1に示すように、実施例に係るアシストグリップ10は、グリップ本体(車両内装部材本体)12と、このグリップ本体12の端部のそれぞれに設けられた取付装置20とを備え、取付装置20によって車体S(
図9)に対して着脱可能に取り付けられている。アシストグリップ10は、取付装置20に対してグリップ本体12が支持軸14で支持されて、車室の壁材T(
図9)に沿う収納姿勢(
図9)と車室の壁材Tから立ち上がる使用姿勢(
図8(a)および(b))との間でグリップ本体12が姿勢変位するようになっている。以下の説明において、アシストグリップ10は、車体Sへの取り付け状態を基準として方向を指称し、具体的には、車室へ向く側を表といい、車両外側へ向く側を裏という。また、アシストグリップ10において、車両の前後に離間して配置されるグリップ本体12の両端の離間方向(支持軸14の軸方向)を左右方向といい、車室側から見て左右を指称する。そして、アシストグリップ10は、左右方向に延在する支持軸14で取付装置20に支持されたグリップ本体12の把持部分が収納姿勢で取付装置20より上方に配置され、グリップ本体12を収納姿勢から下方へ姿勢変位して使用姿勢とされる。
【0017】
図1〜
図3に示すように、取付装置20は、グリップ本体12に繋がるベース部材22と、車体Sに一端部が取り付けられると共に他端部がベース部材22に取り付けられる係合部材24と、ベース部材22に取り付けられ、係合部材24のベース部材22への取付状態を保持する保持部材26とを備えている。実施例のアシストグリップ10は、グリップ本体12の左端部を支持する取付装置20に、グリップ本体12を収納姿勢に向けて付勢する付勢手段としてのトーションばね16が組み込まれている。また、グリップ本体12の右端部を支持する取付装置20には、収納姿勢と使用姿勢との間の姿勢変位を制動する制動手段としてのダンパー18が組み込まれている。なお、グリップ本体12の左右の端部に設けられる取付装置20の構成は、前述した付勢手段と制動手段との違いを除いて基本的に同じなので、片方のみを以下に説明する。
【0018】
図4〜
図6に示すように、前記ベース部材22は、表裏方向に貫通する保持孔28を内側に有する筒状本体を備えている。また、ベース部材22は、筒状本体から延びるように形成されて、左右に離間する一対の支持軸受22aと、筒状本体の外周面から上下左右に延出するフランジ22bとを備えている。なお、実施例のベース部材22は、ガラス繊維を充填した6−ナイロン等の剛性の高い樹脂材料からなる樹脂成形品が用いられている。ベース部材22は、保持孔28が左右方向に長い略矩形状の開口形状に形成され、保持孔28における上下に対向する壁面(保持孔28における一方の対向する壁面)から突出する一対の保持凸部30,30を備えている。一対の保持凸部30,30は、保持孔28において左右方向中央部に対向して配置されると共に、フランジ22bよりも表側に配置されている。各保持凸部30は、四角柱状に形成されて、表側を向く壁面が、表裏方向に対して直交または直交に近い角度で交差するように形成されている。
【0019】
図4〜
図6に示すように、前記ベース部材22は、保持孔28における左右に対向する壁面(保持孔28において前記一方の壁面と直交する他方の対向する壁面)から突出する一対の抜止受部32,32を備えている。一対の抜止受部32,32は、保持孔28において上下方向中央部に対向して配置されると共に、フランジ22bよりも裏側に位置して、保持孔28における裏側の開口縁に配置されている。各抜止受部32は、表側の縁部が表側から裏側へ向かうにつれて保持孔28の内側へ傾斜するテーパ面になっており、裏側に向く面が表裏方向に対して直交または直交に近い角度で交差するように形成されている。
【0020】
図3および
図5に示すように、係合部材24は、上下に対向配置された一対の係止片34,34を有し、両係止片34,34の一端が繋がって側面視で略U字状に形成されている。係合部材24は、両係止片34,34が繋がる連結端を支点として、両係止片34,34が相対的に近づくように弾性変形可能に構成されており、開放端側の端部(開放端部(他端部))の操作により両係止片34,34の間隔を縮小可能である。係合部材24は、両係止片34,34の開放端部を保持孔28に差し込んでベース部材22に取り付け、両係止片34,34の連結端側の端部(連結端部(一端部))を、車体Sに設けられた取付孔Saに差し込んで車体Sに取り付けるようになっている(
図9(b)参照)。係合部材24は、係止片34の開放端部がベース部材22の保持孔28に収納されて表方向へ向き、係止片34の連結端部がベース部材22における保持孔28の裏側開口から裏方向へ突出する姿勢で、ベース部材22に取り付けられる。なお、実施例の係合部材24は、所定形状で打ち抜き加工された1枚の金属板を折り曲げて、各部分が形成される。
【0021】
図7に示すように、係合部材24は、対向配置された一対の係止片34,34の間隔が、外力が加わっていない自然状態で、対向する保持凸部30,30の間隔よりも大きく設定されている。係合部材24は、両係止片34,34を相対的に近づけることで、対向する保持凸部30,30の間隔よりも小さくし得る。係合部材24は、対向配置された一対の係止片34,34の間隔が、外力が加わっていない自然状態で、保持孔28における上下の壁面間よりも小さく設定され、保持部材26を両係止片34,34間に差し込んでいない状態で、係止片34と保持孔28の壁面との間に隙間があくように設定されている。係合部材24は、各係止片34の左右幅を保持孔28の左右幅と同じまたは略同じに設定してあり、係止片34を保持孔28に差し込んだ際に、係止片34が保持孔28の左右の壁面に当たることで位置決めされる。
【0022】
図3および
図6に示すように、各係止片34は、該係止片34の開放端側に設けられ、ベース部材22の保持孔28に設けられた保持凸部30を受け入れ可能な保持開口部36を備えている。また、各係止片34は、保持開口部36の開口縁に外側へ延出するように設けられ、保持開口部36に嵌まった保持凸部30と係止可能な保持爪38を備えている。保持開口部36は、保持凸部30の外形形状に合わせた略矩形の開口形状で、係止片34を上下に貫通するように形成されている。保持爪38は、保持開口部36における係止片34の開放端側の開口縁に基端が連なり、該係止片34の開放端側から連結端側に向けて延びるように設けられている。保持爪38は、その先端が自身が連なる係止片34と対向する他方の係止片34から離れる外側へ開くように形成されている(
図7参照)。具体的には、保持爪38は、上側の係止片34であれば該係止片34の連結端側に向けて斜め上方へ延出し、下側の係止片34であれば該係止片34の連結端側に向けて斜め下方へ延出している。また、保持爪38は、係止片34の左右方向中央部に配置され、保持孔28に係止片34を差し込んだ際に、保持凸部30と位置が合うようになっている。係合部材24は、保持開口部36における係止片34の連結端側の開口縁と保持爪38の先端との間隔が、保持凸部30の表裏方向の寸法に合わせて設定されている。係合部材24は、保持開口部36に嵌まった保持凸部30を、保持開口部36における係止片34の連結端側の開口縁と保持爪38の先端との間に挟む。係合部材24は、保持爪38の先端が保持凸部30の表側の壁面に係止されて、ベース部材22に対する連結端側への移動が規制される。また、係合部材24は、保持開口部36における係止片34の連結端側の開口縁が保持凸部30の裏側の壁面に係止されて、ベース部材22に対する開放端側への移動が規制される。
【0023】
図9に示すように、各係止片34は、該係止片34の連結端側に設けられた取付開口部39と、車体Sの取付孔Saの開口縁に係合して、係合部材24を車体Sに固定するための取付片40を備えている。係止片34には、保持開口部36と別に、取付開口部39が該係止片34の左右方向中央に上下に貫通するように形成され、該取付開口部39における係止片34の連結端側の開口縁から延びる取付片40が取付開口部39の開口領域に上下に重なっている。取付片40は、取付開口部39における係止片34の連結端側の開口縁に基端が連なると共に、係止片34の連結端側から開放端側に向かって延びる突片状に形成され、対向する他方の係止片34から離れる外側へ先端側が開いている。すなわち、取付片40は、上側の係止片34であれば該係止片34の開放端側へ向けて斜め上方に延出し、下側の係止片34であれば該係止片34の開放端側へ向けて斜め下方へ延出している。また、取付片40は、係止片34の左右方向中央に配置されている。
【0024】
図5および
図6に示すように、取付片40の先端側には、取付孔Saの開口縁を受け入れ可能な掛止部42が設けられている。掛止部42は、取付片40を外側が開口する凹状に折り曲げた形状を基本とし、該掛止部42における取付片40の基端側の開口縁に、取付片40の先端側へ向けて突出する受片44を備えている。なお、実施例の掛止部42は、取付片40の左右方向全体に亘って凹みが延在する溝状に形成されている。受片44は、取付片40の左右方向中央に位置して、掛止部42における取付片40の基端側の開口縁から取付片40の延出方向に沿って突出するように設けられている。係合部材24を取付孔Saに取り付けた際に、受片44は、自身が設けられた係止片34と対向する他方の係止片34より離れるように取付孔Saより外側へ向けて延びて、先端が取付孔Saの開口縁裏面に向くようになっている。取付片40の先端部は、凹状に形成された掛止部42における取付片40の先端側の開口縁から、該取付片40の延出方向に沿って板片が外側へ向けて延びるように形成されている。取付片40は、掛止部42における取付片40の先端側の壁部分が、該掛止部42に受け入れた取付孔Saの開口縁表面に臨むと共に、受片44の先端が該開口縁裏面に臨み、受片44が掛止部42に嵌まった取付孔Saの開口縁裏面に引っ掛かる。そして、係合部材24は、取付孔Saの開口縁に掛止部42を嵌め合わせた取付片40の先端部が、取付孔Saから表側に突出して、ベース部材22を係合部材24から取り外すことで、取付片40の先端部を表側から操作可能になっている。
【0025】
前記取付片40は、係止片34の開放端部を操作することによる係止片34の変形に伴って変位すると共に(
図7(b))、保持部材26で支持される係止片34の本体部と独立して、基端側を支点として内側(他方の係止片34側)へ弾性変形可能に構成されている(
図11(b))。係合部材24は、係止片34の本体部が、保持開口部36および取付開口部39を画成するように、表裏方向に延びる左右の縁部分と、左右方向に延びて左右の縁部分間を繋ぐ梁部分とからなる枠状に形成され、取付片40が、係止片34の本体部において連結端側の梁部分となる取付開口部39の開口縁中央から延びるように形成されている(
図6参照)。実施例の取付片40は、取付開口部39における係止片34の連結端側の開口縁から延出しているので、係止片34の開放端部の操作に伴う左右の縁部分の変形の影響を受け難く、係止片34の本体部の変形に伴う変形量が小さい。
【0026】
前記係合部材24は、対向配置された一対の取付片40,40の先端の間隔が、力が加わっていない自然状態で、取付孔Saの上下の開口幅より大きくなるように設定されている。係合部材24は、一対の取付片40,40を相対的に近づけるように変形させることで、取付片40,40の先端および受片44,44の先端の間隔を取付孔Saの上下の開口幅より縮小し得る。また、係合部材24は、対向配置される掛止部42,42の底の間隔が、力が加わっていない自然状態で、取付孔Saの上下の開口幅と同じまたは略同じに設定されている。係合部材24は、両係止片34,34の開放端部を互いに近づけるように最大限に閉じた状態において、両取付片40,40の先端の間隔が取付孔Saの開口寸法より大きくても(実施例)、小さくなるよう設定していてもよい。なお、実施例のように、両取付片40,40の先端の間隔を取付孔Saの開口寸法より大きく設定することで、取付装置20を車体Sからより外れ難くすることができるので好ましい。
【0027】
図2および
図3に示すように、保持部材26は、係合部材24における上下の係止片34,34の間に差し込まれる差込部46と、ベース部材22における保持孔28の表側開口を塞ぐ被覆部48とを備えている。なお、実施例の保持部材26は、ポリプロピレン(PP)等からなる樹脂成形品が用いられている。保持部材26は、被覆部48の裏面から裏側へ向けて延出する一対の差込部46,46を備えている(
図6参照)。一対の差込部46,46は、係合部材24における両係止片34,34の対向方向である上下方向および両係止片34,34の開放端側から連結端側に向けた延在方向(表裏方向)と直交する左右方向に離れて、長手が並行するように設けられている。保持部材26は、差込部46を対向する係止片34,34の間に差し込んで、係止片34の本体部における左右の縁部分を内側から支持する。また、保持部材26は、係合部材24と組み合わせた際に、左右の差込部46,46の間に取付片40が位置するように形成され、差込部46により係止片34の本体部の内側への変形を規制する状態であっても、取付片40の内側への変形を許容する。差込部46は、その上下寸法が、自然状態にある上下の係止片34,34の間隔より大きく形成され、両係止片34,34の間に差し込んだ際に、係止片34,34同士を相対的に遠ざけるように上下に拡開する。保持部材26は、上下の係止片34,34の間に差し込んだ差込部46により、該係止片34,34の間隔を保持孔28の上下の開口寸法に合わせて拡開して、各保持爪38が対応の保持凸部30の根元側に引っ掛かるように変位させる。
【0028】
図6および
図10に示すように、保持部材26は、左右の差込部46,46の間に渡して設けられた梁部50,52を備えている。実施例の保持部材26は、左右の差込部46,46の中間部に架設された第1梁部50と、左右の差込部46,46の先端側に架設された第2梁部52とを備え、該差込部46の延在方向に離して配置した複数の梁部50,52により左右の差込部46,46を支持している。また、差込部46を両係止片34,34の間に差し込んで保持部材26をベース部材22に取り付けた際に、第1梁部50は、係合部材24が差し込まれた取付孔Saより表側に配置されると共に、第2梁部52は、取付孔Saの裏側に配置される(
図10(c)参照)。両梁部50,52は、差込部46よりも上下寸法が小さく設定されると共に、保持部材26を係合部材24に組み付けた際に取付片40の先端部から外れた位置に配置され、取付片40の内側への変形に干渉しない。
【0029】
図10に示すように、保持部材26は、各差込部46の外面から左右方向へ突出するよう形成され、保持部材26をベース部材22に取り付けた際に保持孔28の左右の壁面に当たる位置決め部54を備えている。左右の差込部46,46に設けられた位置決め部54は、右側の差込部46であれば右面から右方へ突出するように形成され、左側の差込部46であれば左面から左方へ突出するように形成され、互いに反対向きに突出している。保持部材26は、左右の位置決め部54,54の先端間が保持孔28の左右の開口寸法と同じまたは略同じに設定されている。位置決め部54は、差込部46における第1梁部50より基端側(被覆部48側)に配置されて、差込部46の先端側の縁部が該差込部46の先端側から基端側に向かうにつれて左右方向における外側へ突出するように傾くテーパ面となっている。
【0030】
図6および
図10に示すように、保持部材26は、位置決め部54より差込部46の先端側に位置して、差込部46の外面から左右方向へ突出するよう形成された抜止部56を備えている。保持部材26は、ベース部材22に組み付けた際に、保持孔28の裏側開口縁に設けられた抜止受部32に抜止部56が引っ掛かって、ベース部材22に対する表側への移動が規制される。左右の差込部46,46に設けられた抜止部56は、右側の差込部46であれば右面から右方へ突出するように形成され、左側の差込部46であれば左面から左方へ突出するように形成され、互いに反対向きに突出している。保持部材26は、抜止部56が、第1梁部50と第2梁部52との間に配置され、第1梁部50が、位置決め部54と抜止部56との間に配置されている。抜止部56は、位置決め部54より突出寸法が小さく、抜止部56,56の先端間が保持孔28の左右の開口寸法より小さく設定されている。抜止部56は、差込部46における先端側の縁部が差込部46の先端側から基端側に向かうにつれて左右方向における外側へ突出するように傾くテーパ面となっているのに対して、差込部46における基端側の面が差込部46の延在方向と略直交するように延在している。保持部材26は、保持孔28の表側から差込部46を挿入する際に抜止部56のテーパ面により抜止受部32を乗り越え易く、ベース部材22に取り付けた後に抜止部56と抜止受部32との引っ掛かりにより、ベース部材22から外れ難くしてある。
【0031】
次に、実施例に係る取付装置20の組み立てについて説明する。まず、ベース部材22の保持孔28の裏側開口から、係合部材24における両係止片34,34の開放端部を挿入する(
図7(a))。両係止片34,34の開放端部を互いに近づけるように変形させて、該開放端部を上下の保持凸部30,30の間に差し込み、係合部材24を表側へ押し込む。この際に、各係止片34の開放端側に設けられて該係止片34の開放端側から連結端側へ向かうにつれて外側へ突出する保持爪38が保持凸部30に当たり、係合部材24の保持孔28への押し込みに伴って、該保持爪38の傾斜に案内されて係止片34が更に内側に変形される(
図7(b))。保持爪38が保持凸部30を乗り越えて、保持開口部36に保持凸部30が整合すると、弾性変形していた係止片34が元に戻り、保持開口部36に保持凸部30が嵌まり、係合部材24がベース部材22に取り付く(
図7(c))。係止片34が元に戻る際に、ベース部材22と当たって音がでたり、係合部材24を保持孔28に差し込む負荷が急になくなる等の嵌め込み感が得られ、また保持孔28を介して保持爪38が保持凸部30に引っ掛かっていることを目視で確認できる。
【0032】
前記取付装置20は、係合部材24の保持孔28への押し込みに伴って、保持爪38の傾斜によって係止片34を内側へ変形させることができるので、係止片34を変形させるために要する力や手間を軽減することができ、係合部材24をベース部材22に簡単に取り付けることができる。換言すると、係止片34を変形し難く設定しても係合部材24をベース部材22に取り付け可能であり、変形し難い係止片34を用いることで、ベース部材22から係合部材24をより外れ難くすることができる。
【0033】
次に、ベース部材22の保持孔28の表側開口から、保持部材26の差込部46を両係止片34,34の間に挿入する(
図8(a)および(b))。差込部46に設けられた抜止部56がベース部材22における保持孔28の裏側開口縁に設けられた抜止受部32を乗り越えるまで差込部46を保持孔28に挿入することで、保持部材26の被覆部48が保持孔28の表側開口を塞ぐ(
図8(c))。なお、抜止部56を抜止受部32における差込部36の基端側に当てて、保持部材26をベース部材22に対して仮止めすることも可能である。取付装置20は、抜止部56が抜止受部32に引っ掛かることで、保持部材26がベース部材22から抜けることを規制し、被覆部48で保持孔28が塞がれることで、係合部材24の係止片34を表側から操作できない。また、両係止片34,34の間隔よりも大きい差込部46を両係止片34,34間に差し込むので、係止片34が保持孔28の壁面に向けて押されて、保持爪38が保持凸部30の根元側で引っ掛かるようになる。
【0034】
実施例の取付装置20は、ベース部材22、係合部材24および保持部材26を組み付けた状態で車体Sに対して取り付けられる。具体的には、係合部材24における両係止片34,34の連結端部を取付孔Saに差し込むと、係止片34に設けられた取付片40が取付孔Saの開口縁に当たって自身の傾斜に案内されて内側へ変形する(
図9(a))。係合部材24を掛止部42が取付孔Saの開口縁に整合するまで挿入すると、弾性変形していた取付片40が元に戻り、掛止部42に受け入れた取付孔Saの開口縁を掛止部42における取付片40の先端側の壁部分と受片44との間に挟んで、取付装置20が車体Sに取り付けられる(
図9(b))。
【0035】
前記取付装置20を車体Sから取り外す場合は、まず保持部材26をベース部材22から取り外す。これにより、保持孔28の表側開口が開放され、係合部材24における両係止片34,34の開放端部に表側からアクセス可能となる。両係止片34,34の開放端部を相対的に近づけるように変形させ、保持凸部30から保持爪38および保持開口部36を外し、ベース部材22を係合部材24から取り外す。車体Sに残った係合部材24は、取付片40の先端部が表側に突出しているので、取付片40の先端部を操作して取付片40を内側に変形させることで、掛止部42および受片44が取付孔Saの開口縁から外れ、係合部材24を車体Sから取り外すことができる。
【0036】
実施例の取付装置20によれば、ベース部材22の保持凸部30を係合部材24の保持開口部36に嵌め合わせるだけでなく、保持開口部36の開口縁に設けられた保持爪38が保持凸部30の表側の壁面に係止可能な状態で、係合部材24とベース部材22とが取り付けられる。このように、保持開口部36における係止片34の開放端側の開口縁から外側へ延出する保持爪38が保持凸部30に引っ掛かる構成とすることで、係合部材24からベース部材22が表側へより外れ難くすることができる。従って、取付装置20を車体Sに取り付けた際に、グリップ本体12を表側へ引っ張ったときの耐荷重を向上することができる。また、アシストグリップ10の設置位置近傍に配置されたエアバッグが展開したときなどのように、取付装置20やグリップ本体12に外力が加わっても、取付装置20が車体Sから外れることを防止できる。
【0037】
前記取付装置20は、両係止片34,34の間に差し込んだ保持部材26の差込部46によって、保持爪38を保持凸部30の根元側に配置しているので、係合部材24からベース部材22が表側へより外れ難くすることができる。そして、保持爪38が保持孔28の上または下の壁面に当たることで、係合部材24をベース部材22に対して位置決めできる。また、保持孔28の上下の壁面間よりも両係止片34,34の間隔を狭く設定して、保持孔28への係合部材24の取り付けを容易にしているが、両係止片34,34を差込部46で保持孔28の上下の壁面に向けて拡開しているので、保持孔28の上および下の壁面に当たって係止片34が位置決めされる。両係止片34,34の左右幅は、保持孔28の左右の開口寸法に合わせてあるので、保持孔28の右および左の壁面に挟まれて係止片34が位置決めされる。このように、取付装置20は、保持部材26を組み付けることで、ベース部材22に対して係合部材24が上下左右にがたつきなく取り付けられる。
【0038】
前記取付装置20は、両係止片34,34の間隔よりも差込部46を大きく設定しているので、係合部材24および保持部材26の寸法精度のばらつきを吸収し、車体Sへの取付位置を正確にしている。これにより、取付装置20と車体Sとの隙に起因する異音の発生を防止し得る。また、係合部材24と保持部材26との間の隙もできないので、アシストグリップ10を繰り返し使用した際に、荷重による係合部材24の材料疲労を抑え、アシストグリップ10に要求される耐久荷重を充足できる。
【0039】
前記取付装置20は、係合部材24の保持爪38が係止片34の開放端側から連結端側に向かうにつれて外側へ延出するように形成されているので、係合部材24における係止片34,34の開放端部を保持孔28に裏側から差し込んだ際に、保持爪38の傾斜によって両係止片34,34を内側へ変形させるように案内することができる。これにより、ベース部材22に対する係合部材24の取り付けをより容易にすることができる。
【0040】
前記取付装置20は、梁部50,52によって左右の差込部46,46を支持しているので、両係止片34,34を支持する差込部46の剛性を向上させることができる。また、取付装置20は、保持部材26の位置決め部54が保持孔28の左右の壁面に当たることで、ベース部材22に対して保持部材26を位置決めすることができる。このように、保持孔28の左右の壁面に位置決め部54が当たる構成としても、位置決め部54が設けられた差込部46が梁部50,52によって支持されているので、保持孔28の左右の壁面と位置決め部54との当たりによる位置決め状態を適切に保持できる。更に、梁部50,52によって差込部46が左右に変形し難くなっているので、保持部材26をベース部材22に取り付けた際に抜止部56が抜止受部32を乗り越え難くなり、ベース部材22から保持部材26をより外れ難くすることができる。
【0041】
例えば、板材を凹状(溝状)に折り曲げて形成される掛止部42は、取付片40における基端側の壁部分が取付孔Saの開口縁裏面に面するが、当該壁部分が取付片40の基端側から先端側に向かうにつれて内側(対向する他方の取付片40側)へ延びるので、係合部材24に表側へ向けて力が加わった際に、取付片40を内側へ変形させるように案内する。これに対して、受片44は、取付片40の基端側から先端側へ向かうにつれて外側(対向する他方の取付片40と反対側)へ延びているので、係合部材24に表側へ向けて力が加わった際に、取付片40を外側へ変形させるように案内し、取付孔Saから抜けることはない。このように、取付装置20は、掛止部42に嵌まった取付孔Saの開口縁裏面に、外側へ向けて延出する受片44が引っ掛かる構成とすることで、車体Sから係合部材24をより外れ難くすることができる。係合部材24は、取付片40を直接操作して車体Sから取り外し可能であるので、取り外すために係止片34の本体部の変形に関連させて変形させる必要はない。
【0042】
(変更例)
前述した構成に限定されず、例えば以下のようにも変更することができる。
(1)実施例では、車両内装部材としてアシストグリップを挙げたが、サンバイザーやルームランプなどの取り付けに用いる取付装置にも適用可能である。