特許第6839650号(P6839650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6839650核酸合成用修飾ヌクレオチド及び前記ヌクレオチドを含むキット、並びに合成核酸配列又は遺伝子の製造のためのそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839650
(24)【登録日】2021年2月17日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】核酸合成用修飾ヌクレオチド及び前記ヌクレオチドを含むキット、並びに合成核酸配列又は遺伝子の製造のためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/10 20060101AFI20210301BHJP
   C12N 15/00 20060101ALI20210301BHJP
   C07H 19/20 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   C07H19/10CSP
   C12N15/00ZNA
   C07H19/20
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-510607(P2017-510607)
(86)(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公表番号】特表2017-527556(P2017-527556A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】FR2015052310
(87)【国際公開番号】WO2016034807
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2018年6月13日
(31)【優先権主張番号】1458194
(32)【優先日】2014年9月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516304610
【氏名又は名称】ディーエヌエー スクリプト
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イベール,トマ
(72)【発明者】
【氏名】ガリエル,シルヴァン
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01655381(EP,A1)
【文献】 国際公開第2004/048397(WO,A1)
【文献】 GULILAT GEBEYEHU,NOVEL BIOTINYLATED NUCLEOTIDE - ANALOGS FOR LABELING AND COLORIMETRIC DETECTION OF DNA,NUCLEIC ACIDS RESEARCH,1987年,VOL:15, NR:11,PAGE(S):4513 - 4534,URL,http://dx.doi.org/10.1093/nar/15.11.4513
【文献】 De, S et al.,Synthesis of new biocarrier-nucleotide systems for cellular delivery in bacterial auxotrophic strains,Tetrahedron,2014年,Vol. 70,pp. 8843-8851
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
C12N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の酵素的合成のための修飾ヌクレオチドであって、「天然」窒素塩基又は天然窒素塩基の類似体、リボース又はデオキシリボース炭水化物、及び少なくとも一つのリン酸基を有し、
修飾基と呼ばれる一つのR基を、前記天然窒素塩基もしくはその類似体により、担持されて含んでおり、それは核酸合成中に、前記ヌクレオチドの重合を抑止し及び/又は前記ヌクレオチドのタンパク質などの、他のヌクレオチドとは異なる、他の分子との相互作用を可能にし、ここでRは少なくとも一つの官能性末端基を含み、下記化学式(III)の形態である修飾ヌクレオチド:
【化1】
(ここで(PP)POは、モノ−、ジ−、又は三リン酸塩基を示し、
(OH)はH又はOHを示し、
Tは切断可能な−NHを示し、
Mは、QとZとに共有結合し(Mが有するO原子を介してZと共有結合する場合を除く)、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルコキシアミノ、アミド、アルキルイミド、アルケニルイミド、アリールイミド、フルオロアルキル、アルキルリン酸、アルキルチオ、チオアシル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アルキルアンモニウム、アルキルスルホニウム、アルキルシリル、アルキルカルボニル、アルキルカルバニル、アルキルカルバモイル、アルキルヒドロキシルアミノ、及びニトロフェニルよりなる群から選択される基を示し、
Zは切断可能基であって、−O−であるか、Mがニトロフェニル基である場合はZは−CH−及び−NH−よりなる群から選択される基を示し、
QはR基の末端官能基又はエフェクター基であって、ビオチン基及び二座配位子として使用されるカテコール基よりなる群から選択される基を示し、
「Base」は、アデニン、チミン、シトシン、グアニン及びウラシルよりなる群から選択される「天然」窒素塩基並びに当該天然窒素塩基の類似体を示す)であって、
修飾基Rが、窒素塩基に担持され下記の構造(V)のうちの1つを成す:
【化2】
(ここで、前記各構造において:「Sugar」は、窒素塩基とヌクレオチド分子におけるリボース又はデオキシリボース分子との間における結合を示し、Z及びZは、同一又は異なる切断可能なZ基である。)
ことを特徴とするヌクレオチド。
【請求項2】
合成に係る鎖に対し相補的な鋳型核酸鎖の存在に通常依存するポリメラーゼの基質として、相補的鎖が存在しない場合においてさえ用いることができることを特徴とする請求項1に記載のヌクレオチド。
【請求項3】
R基の末端官能基Qが、以下の相互作用対の一方又は他方により、核酸以外の分子と相互に作用することができることを特徴とする請求項1または2に記載のヌクレオチド。:ビオチン/(ストレプト)アビジン、二座配位子(カテコール基)/金属酸化物。
【請求項4】
T並びにZもしくはZ及びZは、核酸合成において前記ヌクレオチドに対する波長10−3〜10−11メートルの電磁放射線への曝露により切断可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のヌクレオチドの、酵素合成法を用いた遺伝子、合成核酸配列、DNA、RNA、又は核酸ポリマーの製造方法における使用。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のヌクレオチドの、前記ヌクレオチドを固体担持体上に予め固定したポリヌクレオチド鎖に組み込むための使用。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチド鎖がその5’末端において結合しかつその3’末端に前記ヌクレオチドを組み込むことによる請求項6に記載のヌクレオチドの使用。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のヌクレオチドを少なくとも1つ含む核酸合成のためのキット。
【請求項9】
複数のヌクレオチド、伸長酵素及び前記ヌクレオチドの少なくとも一つを結合させることができる固体担持体を含む、請求項8に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的重要性のある官能化されたコポリマーの合成の分野に関する。
特に、核酸、特に非常に長い核酸の合成のために必要なヌクレオチド及び当該ヌクレオチドを含むキット、並びに合成核酸配列又は遺伝子の製造のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、核酸の生体外での合成には、主に化学的合成と酵素的合成との2つのカテゴリがある。
核酸の生体外における化学的合成方法の最も一般的なものとして、ホスホラミダイトを利用した重合法がある(非特許文献1及び非特許文献2)。この方法では、加える各ヌクレオチドは、同種の複数のヌクレオチドの重合が制御不能になることを抑止するため、5’−OH基で保護されている。通常、この5’−OH基の保護にはトリチル基を用いる。強力な試薬を用いることによるいかなる分解も抑止するため、ヌクレオチドが担持する基部も保護できる。この保護基を用いる場合、通常、イソブチリル基を用いる(Reddy et al.1997,Nucleosides & Nucleotides 16:1589)。新しいヌクレオチドの各取込後、次の重合ステップにおいて使用可能とするために、鎖の最後のヌクレオチドの5’−OH基が脱保護反応を受ける。核酸を形成するヌクレオチドが担持する窒素塩基自体の脱保護は、完全な重合の終了後にのみ行う。
【0003】
これらの化学的合成方法は、用いる試薬の性質のため、コストが高くまたその使用において危険性を有することが分かっている。更に、これらの化学的合成方法は、長い核酸断片(約100のヌクレオチドより大きい断片)の合成には非効率的である。
【0004】
核酸合成方法、特に非常に長い断片の高収量での製造のための核酸合成方法であってDNAプラスミドなどの既存の遺伝因子に適合する方法を開発するため、鋳型鎖がなくてもヌクレオチド間においてカップリング反応を行うための酵素触媒を使用する合成技術が開発されてきた。
【0005】
これらの酵素的合成方法において、重合を可能とする酵素を天然ヌクレオチドに対し直接加える場合がある(非特許文献3)。プライマとして知られる出発核酸断片から始めて、重合酵素と1種以上のヌクレオチドをも添加する。その後重合反応が開始すると、核酸は、この重合が物理的方法又は化学的方法により停止されるまで、ホスホジエステル結合形成ステップを繰り返して順次成長する。
【0006】
天然ヌクレオチド(すなわち、修飾されておらずかつ保護されていないヌクレオチド)を用いた場合、核酸分子の極めて異質な混合物をもたらす制御不能な重合を導く。これは、最初の添加の後に同一種の複数のヌクレオチドを添加することを妨げるものが無いためである。よって、このような合成方法は、所望の配列を有する核酸断片の合成には実用的ではないことが分かっている。
【0007】
被保護ヌクレオチドの使用により、この重合の制御不能という現象をある程度解決することができる。被保護ヌクレオチドは、所望の反応に続いて生じるホスホジエステル結合の形成を全部又は部分的に妨げることにより合成を停止させることができる。
【0008】
ヌクレオチドは、核酸合成に用いる「モノマー」である。ヌクレオチドの化学的特性及び反応を生じる否かが、所望の合成が正しく生じることを保証する。所望の配列から成る核酸断片の合成を可能とするためには、各ヌクレオチドを1つずつ所望の順序に従って重合させることを可能とすることが重要である。この重合は、ヌクレオチドを結合させる順番に厳密に従って添加することに等しい。特に、同一の窒素塩基から成っており同時に投入される複数のヌクレオチドが連鎖反応を起こしてしまうと、オリゴマー鎖の成長が制御不能となり、その結果、誤った配列の核酸が製造されてしまうため、このような連鎖反応を生じないよう注意することが必要である。
【0009】
修飾ヌクレオチドは天然ヌクレオチドと比べ修飾された特定の構造を有し、核酸合成に用いた場合に特定の効果を発揮する。修飾ヌクレオチドは、通常、細胞に自然に存在するヌクレオチドの化学的又は酵素的修飾により得られる。修飾ヌクレオチドには、他の反応中に保存される化学官能基の修飾を抑止する化学基を有するため保護されるといわれるものがある。保護基は、ヌクレオチド分子の種々の部位に配置して良い。
【0010】
被保護ヌクレオチドの特定の1種に、重合反応停止機能を有するものがある。これら「鎖終止」ヌクレオチドの役割は、反応媒体に投入するヌクレオチドの過剰かつ望ましくない重合を抑止することにある。核酸分子にターミネーターヌクレオチドを組み込むと、他のヌクレオチドの引き続く重合が抑止される。このように、単一のヌクレオチドは、伸長ステップ中に各核酸分子に加えることができる。合成すべき核酸断片を形成する種々のヌクレオチドが順次投入される場合であっても、望ましくない反復現象を防止するために「ターミネーター」ヌクレオチドを使用することが必要である。
【0011】
「ターミネーター」ヌクレオチドの使用は、化学的方法と酵素的方法とのいずれによるかに関わらず、核酸合成方法の信頼性及び再現性を保証する。「ターミネーター」ヌクレオチドは、所定の方法による合成の性能レベルに大きな影響を及ぼし得る。
【0012】
核酸の化学的合成のために使用する被保護ヌクレオチドは、5’−OH位置において、DMT(4,4’−ジメトキシトリチル)基に対する共有結合による保護基を、及び、3’−OH位置において、ヌクレオチド間の重合反応用触媒として作用するホスホラミダイト基を有する。DMT基とホスホラミダイト基とから成るこれらのヌクレオチドは、「保護されたホスホラミダイトヌクレオチド」と呼ばれている。重合の制御不能に対する保護は、5’−OH位置を保護しているDMT基により行われる。化学的核酸合成における「脱トリチル化」と呼ばれる第1の脱保護相は、DMT基を外すため及び挿入するヌクレオチドとの反応のために用い得る5’−OH基を得るために行われる。いかなる場合においても、次のヌクレオチドの追加を可能とするために可能な限り効果的な脱保護反応を得ることは特に重要である。
【0013】
保護されたホスホラミダイトヌクレオチドは、核酸の化学的合成の場合にのみ使用される。保護されたホスホラミダイトヌクレオチドの「ターミネーター」機能は、実際には、5’−OHに結合するDMT基により提供される。化学的合成が3’〜5’方向において生じるので、5’−OHを保護するDMT基の存在により、次の脱保護ステップまで、過剰な重合の発生を一切抑止することが可能となる。
【0014】
このように、保護されたホスホラミダイトヌクレオチドは酵素的合成方法に適さない。
【0015】
「ターミネーター」ヌクレオチドには、「第二世代」塩基配列決定法のために開発されたものもある。しかしながら、塩基配列決定のために使用するターミネーターヌクレオチドには、核酸合成に全く適さないことに加え、いくつかの点において全く適さないといえる制限が存在する。
【0016】
この制限の主なものとして、伸長酵素により使用されることができるという能力がある。これは、塩基配列決定のためのターミネーターヌクレオチドに結合する蛍光標識のサイズが大きいためである。しかしながら、ヌクレオチドの重合に際し、伸長酵素は、活性部位において極小の空間しか有さないため、共役芳香環から成る基などの付加された蛍光基を収容するターミネーターヌクレオチドをほとんど受容できない。
【0017】
最新のDNA塩基配列決定技術は、鋳型鎖と配列鎖と伸長鎖との間における相補的相互作用に基づく。一般に、塩基配列決定に用いる修飾ヌクレオチドは、相補的ヌクレオチドと対を成すという特性を完全に有していなければならない。修飾ヌクレオチドは、その使用において重要となる相互作用特性を保持するものでなければならない。しかしながら、塩基配列決定に用いる修飾ヌクレオチドを構成する窒素塩基は、天然窒素のアデニン、グアニン、チミン、ウラシル及びシトシンなどの塩基の類似体であり、そのため同一の化学的構造を有していない:いくつかの原子が別の原子に置換されておりいくつかの基が追加又は削除されている。これらの非天然窒素塩基には、例えば生体により認識されないなど多くの欠点がある。
【0018】
ターミネーターヌクレオチドは、いったん組み込まれた後、次のヌクレオチドの追加を可能とするために脱保護される。脱保護ステップは、ターミネーターとしての機能を発揮すべき基を削除することができる物理的又は化学的手段を含む。修飾ヌクレオチドと関連する他の官能基は、同様の脱保護ステップにおいて削除される。このように、通常、次のヌクレオチドの決定に進むためには、種々の塩基配列決定プロセスにおいて種々の脱保護ステップが必要となる。これらの種々の脱保護ステップを用いる場合、反応媒体中に存在する種々の種の分解及び特に核酸の分解を促進する強力な試薬の使用又は極度の物理的条件の適用が増加する。更に、脱保護ステップを多数回行う場合、当該プロセスの速度とその性能レベルとを著しく低下させる。
【0019】
塩基配列決定用修飾ヌクレオチドの使用に関し、脱保護ステップ後の瘢痕の発生が更なる大きな課題となる。官能基とヌクレオチドとの間におけるリンクとして機能する種々の化学的構造は、脱保護ステップ中は切断されていて良い。しかしながら、この切断において、化学結合構造を全て切り離すことはできない。このように、これら構造の比較的大きな部分は、種々の脱保護ステップ時以外はヌクレオチドと結合したままである。これら残部は通常、塩基配列決定プロセスに対し並びに核酸のいかなる使用又は修飾に対し非常に有害な影響を及ぼす。
【0020】
担持されたヌクレオチドがどのような構造を有しているかに関わらず、既存の修飾ヌクレオチドは、酵素的合成法に対する期待を実現可能なものではない。伸長酵素により既存の修飾ヌクレオチドが単に使用されてしまうこと、種々の官能基の位置の決定、修飾された窒素塩基の多用、相補的ヌクレオチドとの相互作用を保持する必要性、多数の脱保護ステップを行うこと、及び残留瘢痕の存在は、核酸の酵素的合成法におけるこれらヌクレオチドの使用を妨げる要因となる。
【0021】
このように従来、核酸、特に非常に長い核酸断片の酵素的合成に適した被保護ヌクレオチドを提供する十分な技術的解決法は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Adams et al.,J.Amer.Chem.Soc.105(1983),661)
【非特許文献2】Froehler et al.,Tetrahedron Lett.24(1983),3171)
【非特許文献3】Deng et al.,Meth.Enzymol.100(1983),96
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の第1の目的は、核酸の酵素的合成に適した修飾ヌクレオチドを提供することにある。
【0024】
本発明の別の目的は、種々の官能基によって修飾された、核酸合成プロセスにおける使用に適した天然ヌクレオチドを提供することにある。
【0025】
本発明の別の目的は、特に本願と同一の出願人による未公表出願であるFR14−53455に記載の方法に従い製造される、非常に長い核酸の合成を可能とする修飾ヌクレオチド、すなわち少なくとも数百又は数千のヌクレオチドを含む核酸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的のため、本発明は、長鎖核酸などの核酸の酵素的合成のための修飾ヌクレオチドであって、「天然」窒素塩基又は天然窒素塩基の類似体、リボース又はデオキシリボース炭水化物、及び少なくとも一つのリン酸基を有し、修飾基と呼ばれる少なくとも一つのR基又はR’基を前記天然窒素塩基もしくはその類似体、及び/又はリボース分子もしくはデオキシリボース分子の3’位置の酸素により担持されて含んでおり、それは核酸合成中に、前記ヌクレオチドの重合を抑止し(このとき前記修飾基は保護基である)及び/又は前記ヌクレオチドのタンパク質などの、他のヌクレオチドとは異なる、他の分子との相互作用を可能にし、ここでRは少なくとも一つの官能性末端基(エフェクター基ともいう)を含むことを特徴とする修飾ヌクレオチドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の主題である修飾ヌクレオチドの種々の一般的な構造を示す図である。
図2】化学式(V)における修飾ヌクレオチドの具体的構造を示す図である。
図3】アデニン、チミン、シトシン及びグアニンを塩基とする天然窒素塩基の化学式を示す図である。
図4】化学式(VI)に示す分子内水素結合型の相互作用が可能な修飾基の例を示す図である。
図5】NH−dTTP−ニトロB−ビオの合成を模式的に示す図である。
図6】NH−dGTP−ニトロN−ビオの合成を模式的に示す図である。
図7】FA−ビオ−dNTPの合成を模式的に示す図である。
図8】dATP−ニトロB−ビオの合成を模式的に示す図である。
図9】dCTP−ニトロB−ビオの合成を模式的に示す図である。
図10】高分子化合物NH−dT−ニトロB−ビオの脱保護の例を示す図である。
図11】高分子化合物NH−dG−ニトロB−ビオの脱保護の例を示す。
図12】高分子化合物FA−ビオ−dNTPの脱保護の例を示す図である。
図13】高分子化合物dA−ニトロB−ビオの光切断による脱保護の例を示す図である。
図14】高分子化合物dC−ニトロB−ビオの化学的切断による脱保護の例を示す図である。
図15】Q基をカテコールとした本発明に係る修飾ヌクレオチドの例を示す図である。
図16】FA−Cat−dNTPの合成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
より詳細には、前記修飾基は有利には、特に反応部位への前記酵素のアクセスを可能とするため、共役芳香環などを含む大きな基ではない。
本発明に係るヌクレオチドは、モノリン酸塩、二リン酸塩又は三リン酸塩であって良く、これらリン酸塩基は遊離基、すなわち非修飾基であって良い。
【0029】
本発明に係るヌクレオチドは、下記化学式(I)、(III)、(IV)のうちの1つの形態である:
【0030】
【化1】
【0031】
ここで(PP)POは、モノ−、ジ−、又は三リン酸塩基を示し、
(OH)はリボース又はデオキシリボース分子であって良く、
Tは水素又は−NH、−N、−(C=O)H、−C2n+1(n=1〜30、好ましくは1〜12)、−トリメチルシリル、−リン酸塩、−SO、−(C=O)OC2n+1(n=1〜30、好ましくは1〜12)、−(C=O)SC2n+1(n=1〜30、好ましくは1〜12)、−ニトロベンゼン、−ベンジル、−ハロベンジル、−アミド、−炭酸塩、−ベンゾイル、−パーオキシル、−ニトリル、−チオール、イミド、−カルバミン酸塩、−シアン酸塩、−アルキン、−フェニル、−ハロフェニル、並びに−ピコリルよりなる群から選択される切断可能ラジカルを示し、
Mは任意に存在し、QとZとに共有結合し、アルキル、アルケニル、アルキン、アリール、アルキルアリール、ヘテロアリール、アシル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルコキシアミノ、アミド、アルキルイミド、アルケニルイミド、アリールイミド、フルオロアルキル、アルキルリン酸、アルキルチオ、チオアシル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アルキルアンモニウム、アルキルスルホニウム、アルキルシリル、アルキルカルボニル、アルキルカルバニル、アルキルカルバモイル及びアルキルヒドロキシルアミノよりなる群から選択される基を示し、
Zは切断可能基であって−O−、−S−、=SH−、=S=、≡S−、−SiH−、=SiH−、=Si=、≡Si−、−Se−、=SeH−、≡Se−、=Se=、−SeH−、−PH−、=P−、=PH=、≡P=、≡PH−、−PH−、−AsH−、=As−、=AsH=、≡As=、≡AsH−、−ASH−、アミン、エステル、シリル、アルキル、ベンジル、ニトロベンジル、アミド、炭酸塩、ベンゾイル、パーオキシル、ニトリル、チオール、イミド、カルバミン酸塩、シアン酸塩、ヒドロキシルアミン、スルホキシド、スルホン酸塩、チオスルフィン酸塩、チオエステル、ハロゲン化アシル、ヒポヨージル、アルキン、ハロフェニル、ハロベンジル、ピコイル、ジオール及びジスルフィドよりなる群から選択される基である、Mが−ニトロベンジル−、−ニトロトリル−、−ニトロキシリル−、−ニトロナフチル−、若しくは−ニトロフェニル−基である場合はZは−CH及び−NHよりなる群から選択される基を示し、
QはR基又はR’基の末端官能基又はエフェクター基であってビオチン、タンパク質、定義された配列のポリヌクレオチド、炭水化物、抗原、ホルモン、神経伝達物質、ジゴキシンなどのグリコシド、特に、グルタチオンなどの、チオール官能基を有する硫黄含有ラジカル、及びカテコールなどの二座配位子よりなる群から選択される基を示し、
R及びR’は個別に又は同時に存在することができ、RとR’とが同時に存在する場合は:各Z基は同一でも互いに異なっていても良く、
M基は同一でも互いに異なっていても良く、
Q基は同一でも互いに異なっていても良く、
「base」は、アデニン、チミン、シトシン、グアニン及びウラシルよりなる群から選択される「天然」窒素塩基並びに当該天然窒素塩基の類似体を示すが、チミンについてはR’が存在しかつQがビオチンから成る場合には、チミンを除外する。
【0032】
好ましくは、T(水素でない場合)、R及びR’が核酸合成プロセスにおける伸長ステップの鎖終止を成す基を形成する。
【0033】
本書において「切断可能ラジカル」又は「切断可能基」という文言は、リボース分子の3’位置又は2’位置の酸素、デオキシリボース分子の3’位置の酸素、又は窒素塩基の原子に対する共有結合により形成される遊離基又は基を意味し、前記結合は化学的に又は光化学的に切断可能である。切断可能ラジカル若しくは切断可能基における結合全ての切断又は本発明に係るヌクレオチド分子のT基及びZ基の切断は完全に同時に、すなわち同一の「脱保護」ステップにおいて行うことが好ましく、特に同一の条件下又は同一の試薬による作用の組合せにより行うことが好ましい。
【0034】
この修飾基の削除は、修飾基を全く含まないヌクレオチドを生成するために完全に行うこと、すなわち天然ヌクレオチドと(窒素塩基の構造を除き)同様とすることが好ましい。
【0035】
上述の通り、R基及びR’基は、核酸合成プロセスにおける伸長ステップのを終了する鎖を有利に提供する基である。これらのR基及びR’基は、RとR’の自由末端に配置される官能基Qにより、担持体に存在する分子などの核酸とは異なる他の分子と結合するという特性を有していて良い。
【0036】
これは、上記FR14−53455に記載の方法などの核酸合成プロセスにおける特定のステップにおいて、使用する修飾ヌクレオチドが固体担持体と相互に作用可能であると考えられるためである。これら固体担持体は、その表面に、当該ヌクレオチドの修飾基に適合する分子、タンパク質又は化学官能基を担持している。この修飾ヌクレオチドの官能性は、その後に正しい核酸合成プロセスを生じさせるために重要である。好ましい一実施形態において、前記修飾ヌクレオチドは、例えば、固体担持体表面に存在する分子との間で非常に低い分離定数、具体的には10−6mol/l未満の結合複合体を形成して精製されるために固体担持体との結合を可能とする基を有している。この結合官能基を形成する基は、脱保護ステップ後に切断して良く、これによりヌクレオチド及び固体担持体の間の相互作用を抑止する。この場合、本発明に係るヌクレオチドは、精製を可能とする基の存在、及びこの基を同一のヌクレオチドから他の修飾基と同時に切断する能力、という二重の利点を有する。
【0037】
好ましくは、修飾基Rは、窒素塩基に担持され下記の構造(V)のうちの1つを成す:
【0038】
【化2】
【0039】
ここで、前記各構造において:「Sugar」は、窒素塩基とヌクレオチド分子におけるリボース又はデオキシリボース分子との間における結合を示し、Z及びZは、同一又は異なる切断可能なZ基である。
【0040】
「Z基」、「M基」及び「Q基」はそれぞれ上述の意味である。
【0041】
本実施形態において、前記ヌクレオチドは、ワトソン・クリック型塩基対構造を通常有する窒素塩基の原子に担持された基、すなわち通常相補的ヌクレオチドと対を成すアミン官能基の窒素原子に担持された基によって修飾されている。種々の修飾基と窒素塩基の原子との結合は必ず切断可能なZ基による共有結合により成される。
【0042】
アデニン型窒素塩基の場合、本発明の好ましい一実施形態において、修飾基を1級アミン基6−NHと結合する(構造V)。
チミン型窒素塩基の場合、他の本発明の好ましい実施形態において、修飾基を2級アミン基3−NHと結合する(構造V)。
シトシン型窒素塩基の場合、他の本発明の好ましい実施形態において、修飾基を1級アミン基4−NHと結合する(構造V)。
ウラシル型窒素塩基の場合、他の本発明の好ましい実施形態において、修飾基を2級アミン基3−NHと結合する(構造V)。
【0043】
グアニン型窒素塩基の場合、他の本発明の好ましい実施形態において、修飾基を、切断可能基を用いて前記2種のアミノ基、すなわち2級アミノ基1−NH及び1級アミノ基2−NHのうちの1つ又は両方と結合する(構造V)。特に、修飾基を担持するためにこれら2つのアミン基1−NH及びNHを同時に用いる場合、優先的に6つの原子から成る環が、種々の分離したサブグループとの間に生じる。この環は、必要に応じて修飾基の構造の安定化をもたらす。
【0044】
修飾基が窒素塩基に担持されるこれらの実施形態において、ヌクレオチドの3’OH及び/又は2’OH部位は遊離部位であり、これにより、核酸合成においてヌクレオチドの、伸長酵素の基質としての使用を促進している。
【0045】
これにより分子間水素結合が生じ得る。実際、窒素塩基に担持された修飾基Rは、下記の構造(VI)のうちの1つを形成することができる:
【0046】
【化3】
【0047】
ここで、「Sugar」は、窒素塩基とヌクレオチド分子におけるリボース又はデオキシリボース分子との間における結合を示し、
及びXは互いに同一又は異なる窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子であってMに担持されており、前記修飾ヌクレオチドの窒素塩基と分子内水素結合(この時、この水素結合はそれぞれ相補的ヌクレオチド間における従来の塩基対の形成時に観察される分子間水素結合と同様のものである)を形成することができる。
【0048】
この構成により、修飾ヌクレオチドの安定性が向上する。また、この構成は修飾基の小型化を可能とし、これにより、通常鋳型鎖の存在に依存する伸長酵素における修飾基の使用が可能となる。
【0049】
アデニン型窒素塩基の場合、本発明の好ましい一実施形態においては、修飾基を1級アミン基6−NHに結合する(構造VI)。この構造中に存在するX基は、プリン環の窒素原子1との分子内水素結合の形成を促進する。このように相補的チミンの存在を擬似的に模倣している。
【0050】
チミン型窒素塩基の場合、本発明の好ましい一実施形態においては、修飾基を2級アミン基3−NHに結合する(構造VI)。この構造中に存在するX基は、ピリミジン環の位置4に存在する酸素原子との分子内水素結合の形成を促進する。このように相補的アデニンの存在を擬似的に模倣している。
【0051】
シトシン型窒素塩基の場合、本発明の好ましい一実施形態においては、修飾基を1級アミン基4−NHに結合する(構造VI)。この構造中に存在するX基及びX基は、ピリミジン環の位置3に存在する窒素原子及び位置2に存在する酸素原子との分子内水素結合の形成を促進する。このように、相補的グアニンの存在を擬似的に模倣している。
【0052】
グアニン型窒素塩基の場合、本発明の好ましい一実施形態においては、切断可能なZ基及びZ基を用いて、修飾基を2級1−NH基及び1級2−NH基の2つのアミン基に結合する(構造VI)。この構造中に存在するX基は、プリン環の位置6に存在する酸素原子との分子内水素結合の形成を促進する。このように、相補的シトシンの存在を擬似的に模倣している。
【0053】
ウラシル型窒素塩基の場合、本発明の好ましい一実施形態においては、修飾基を2級アミン基3−NHに結合する(構造VI)。この構造中に存在するX基は、ピリミジン環の位置4の酸素との水素結合の形成を促進する。このように、相補的アデニンの存在を擬似的に模倣している。
【0054】
本発明に係る修飾ヌクレオチドは、何らかの鋳型鎖に担持された相補的ヌクレオチドとなり得るものと塩基対を成さなくとも良い。本発明の主題である修飾ヌクレオチドの使用に関し、核酸の生成において、前記ヌクレオチドは鋳型鎖となり得るものとの相補的相互作用により組み込まれなくとも良い。
【0055】
本発明の主題である修飾ヌクレオチドは、特定のステップにおいて修飾基を外して良いという特徴を備える。本発明のヌクレオチドは、修飾基が全て取り外されると、鋳型鎖に担持された相補的ヌクレオチドと塩基対を形成する能力を回復する。
【0056】
一実施形態によれば、本発明に係るヌクレオチドは、合成に係る鎖に対し相補的な鋳型核酸鎖の存在に通常依存するポリメラーゼの基質として、相補的鎖が存在しない場合においてさえ用いることができる。
【0057】
好ましくは、R基又はR’基の末端官能基Qは、核酸合成において、前記担持体の表面に担持されたタンパク質などの核酸以外の分子により、固体担持体に対し前記ヌクレオチドを結合させることができ、また特に以下の相互作用対の一方又は他方により、核酸以外の分子と相互に作用することができる:抗原/抗体、ホルモン/受容体、ビオチン/(ストレプト)アビジン、神経伝達物質/受容体、ポリメラーゼ/プロモータ、ジゴキシン/アンチジゴキシン、炭水化物/レクチン、硫黄含有基/金などの金属、グルタチオン/グルタチオンS−トランスフェラーゼ、及び二座配位子/金属酸化物。
【0058】
前記金属酸化物は例えば以下のものであって良い:TiO、ZrO、CeO、Fe、Ga、In、Cr、Al、ZnO、CuO、Cu、Mn、Mn、V、及びMoO
【0059】
前記二座配位子は、カテコール、ヒドロオキサメート又はヒドロキシカルボン酸塩であっても良い。
【0060】
Tラジカルは、炭水化物の3’ヒドロキシル基又は2’ヒドロキシル基を追加的に添加されるヌクレオチドから完全に保護するため、「ブロッカー」と呼ばれている。
【0061】
T並びにZもしくはZ及びZは、核酸合成において前記ヌクレオチドに対する波長10−3〜10−11メートルの電磁放射線、特に紫外線への曝露により切断可能であることが好ましい。
【0062】
本発明の有利な実施形態は、以下のヌクレオチドに関する:
−X及びXが−NH、Tが−NH、Zが−CH、Mがメチルニトロベンジル−、Qが−ビオチンであるヌクレオチド、
−X及びXが−NH、Tが−NH、Z、Z及びZがそれぞれ−O−、Mが−ニトロナフチル−、Qが−ビオチンであるヌクレオチド、
−Zが−(C=O)−、Mが−C16−、Qが−NH−ビオチニルであるR’基のみ含む化学式(I)のヌクレオチド、
−Z、Z及びZがそれぞれ−(COO)−、Mが−tert−ブチルニトロベンジル−、Qが−NH−ビオチニルである所定の構造(V)を備えたヌクレオチド。
【0063】
本発明は特に酵素合成法を用いた遺伝子、合成核酸配列、DNA、RNA、又は核酸ポリマーの製造方法における、上述の通りのヌクレオチドの使用にも関する。
【0064】
有利な使用としては、前記固体担持体に固定したポリヌクレオチド鎖に前記ヌクレオチドを組み込むことによる使用、特に前記ポリヌクレオチド鎖がその5’末端において結合しかつその3’末端に前記ヌクレオチドを組み込むことによる使用がある。
【0065】
しかしながら、本発明に係るヌクレオチドは遊離型であり、適宜対イオンと結合して良い。前記ヌクレオチドは固体担持体に対する結合能を有するが、このヌクレオチドは、ポリヌクレオチド鎖に組み込む際に担持体を要しない。すなわち、前記ヌクレオチドの化学的構造は、固体担持体とは関連性が全くない。前記修飾ヌクレオチドは未公表出願FR14−53455に記載の方法においてそれ自体固定された核酸の断片に添加されるため、このヌクレオチドが遊離性を備えていることは前記方法における使用において重要である。前記断片は、放出された後、直前に組み込まれたヌクレオチドのエフェクター基により第2の固体担持体に対向する端部において結合する。このように前記断片が結合し、前記ポリヌクレオチドの形成に用いる本発明に係るヌクレオチドに結合するのではなく固体担持体に結合した所望の配列を有する完全な核酸鎖又はポリヌクレオチドを形成する。
【0066】
本発明は、本発明に係る少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含むキット、特に、少なくとも一つの前記ヌクレオチドを結合させることができる複数の修飾ヌクレオチド、伸長酵素及び固体担持体を含むキットにも関する。
【0067】
次に、下記の添付図面を参照して、具体的な実施例により本発明をより詳細に説明する。図1は本発明の主題である修飾ヌクレオチドの種々の一般的な構造を示す。図2は化学式(V)における修飾ヌクレオチドの具体的構造を示す。図3はアデニン、チミン、シトシン及びグアニンを塩基とする天然窒素塩基の化学式を示す。図4は化学式(VI)に示す分子内水素結合型の相互作用が可能な修飾基の例を示す。図5はNH−dTTP−ニトロB−ビオの合成を模式的に示す。図6はNH−dGTP−ニトロN−ビオの合成を模式的に示す。図7はFA−ビオ−dNTPの合成を模式的に示す。図8はdATP−ニトロB−ビオの合成を模式的に示す。図9はdCTP−ニトロB−ビオの合成を模式的に示す。図10は高分子化合物NH−dT−ニトロB−ビオの脱保護の例を示す。図11は高分子化合物NH−dG−ニトロB−ビオの脱保護の例を示す。図12は高分子化合物FA−ビオ−dNTPの脱保護の例を示す。図13は高分子化合物dA−ニトロB−ビオの光切断による脱保護の例を示す。図14は高分子化合物dC−ニトロB−ビオの化学的切断による脱保護の例を示す。図15はQ基をカテコールとした本発明に係る修飾ヌクレオチドの例を示す。図16はFA−Cat−dNTPの合成を模式的に示す。
【実施例】
【0068】
修飾された(保護された)ヌクレオチドの合成−実施例1〜6
【0069】
実施例1−NH−dTTP−ニトロB−ビオ(図5)の合成
【0070】
ステップA1:EtN(トリエチルアミン)((2.2ml)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)((175mg)を2’−デオキシチミジンのピリジン溶液(5g)に加えた後、DMTCl(塩化4,4’−ジメトキシトリチル)((5.25g)を加え、室温で一晩撹拌した。その後EtN(2.4ml)及びMsCl(メタンスルホニルクロリド)(1.27ml)を混合物に加えた。室温で2時間培養後、混合物を酢酸エチルで濾過し洗浄した。濾液を濃縮しエタノール(75ml)に溶解させ、NaOH(1モル)を加えた。1.5時間還流後、混合物を室温に冷却し、HCl(1モル)を加えた。ロータリーエバポレータを用いてエタノールを留去し、残渣をCHClで抽出した。シリカゲルカラムにより精製して生成物dTTP−A1を得た。
【0071】
ステップA2:dTTP−A1(2.237mmol)、トリフェニルホスフィン(2.1g)及びN−ヒドロキシフタルイミド(1.3g)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液にN,N’−ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(1.75ml)を0℃で加えた。室温で一晩再加熱後、反応液を水(0.3ml)で処理し、溶媒を減圧雰囲気下で留去した。不純物の大部分をクロマトグラフィによって除去して生成物dTT−A2を得た。
【0072】
ステップA3:1当量の化合物dTT−A2に10当量のLiHを含むDMF溶液を室温で加えた。混合物を30分間反応させた。3−アミノ−4−(ブロモメチル)−5−ニトロフェニルビオチンを加えて反応を進め、混合物を数時間撹拌した。これにより生成物dTT−A3を得た。
【0073】
ステップA4:化合物dTTP−A3をメタノールで再懸濁させ、濃塩酸水溶液で処理した。反応液を−20℃で一晩冷却して生成物dTTP−A4を得た。
【0074】
ステップA5:2−クロロ−4H−1,2,3−ベンゾジオキサホスホリン−4−オン(130mg)のジオキサン(1.3ml)溶液を、5’−OHヌクレオシド類似体dTTP−A4((425mg)のピリジン(2ml)及びジオキサン(1.7ml)溶液に加えた。混合物を室温で20分間放置した。反応液に、トリブチルアンモニウムピロリン酸塩(1.4mmol)のDMF溶液とトリブチルアミン(3.2mmol)との混合物を加えた。20分後、ヨウ素(180mg)及び水(0.28ml)のピリジン(14ml)溶液を加えた。30分後、5%NaSO水溶液を加えて反応を停止させた。溶媒を減圧雰囲気下で留去した。残渣に水(25ml)及びCHCN(20ml)を加えた。混合物を濾過後逆相HPLCで精製して、三リン酸塩化合物、すなわち本例ではdTTP−A5を得た。
【0075】
ステップA6:冷温のメチルヒドラジン(0.385ml)を化合物dTTP−A5(3.725mmol)の無水CHCl溶液に−5℃で加えた。10分後、1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソフサリジンの沈殿物が形成された。混合物を室温で1時間撹拌した。沈殿物を濾去し、CHClで洗浄した。その後、濾液をロータリーエバポレータで濃縮し、クロマトグラフィで精製して生成物NH−dTTP−ニトロB−ビオを得た。
【0076】
実施例2−NH−dGTP−ニトロN−ビオ(図6)の合成
ステップB1:tert−ブチルジメチルシリルクロリド(2.4mmol)を、無水DMF中に1.845mmolの2’−デオキシグアニンと326mgのイミダゾールを含む撹拌溶液に加えた。反応液を室温で20時間撹拌し培養した。溶媒を減圧雰囲気下で除去し、その後残渣をクロマトグラフィで精製して生成物dGTP−B1を得た。
【0077】
ステップB2:dGTP−B1(2.237mmol)、トリフェニルホスフィン(2.1g)及びN−ヒドロキシフタルイミド(1.3g)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液にN,N’−ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(1.75ml)を0℃で加えた。室温で一晩再加熱後、反応液を水(0.3ml)で処理し、溶媒を減圧雰囲気下で留去した。不純物の大部分をクロマトグラフィで除去して生成物dGTP−B2を得た。
【0078】
ステップB3:化合物dGTP−B2(3.785mmol)をピリジン(10ml)を用いて減圧雰囲気下で気化させることにより数回乾燥させた。残渣をCHCl(12.5ml)に溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン(9mmol)及び6−アミノ−4,5−ビス(ヨードキシ)−3−ニトロナフタレン−1−イル−5−ビオチン(7.57mmol)を加えた。反応終了後、混合物をCHCl(100ml)で希釈し、その後有機相を重炭酸ナトリウム(50ml)及び水(50ml)で洗浄した。その後得られた残渣を硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧雰囲気下で留去し、クロマトグラフィで精製して生成物dGTP−B3を得た。
【0079】
ステップB4:化合物dGTP−B3(3.75mmol)をTHF(20ml)に溶解させ、TBAF(テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド)(1モル)のTHF溶液で処理した。約2時間撹拌後、反応を停止させた。混合物をCHClで抽出し、クロマトグラフィで精製して生成物dGTP−B4を得た。
【0080】
ステップB5:5’−OHヌクレオシド類似体((425mg)を実施例1のステップA5と同様に処理した。得られた混合物を濾過後、逆相HPLCで精製して三リン酸塩合成物、本例ではdGTP−B5を得た。
【0081】
ステップB6:冷温メチルヒドラジン(0.385ml)を化合物dGTP−B5(3.725mmol)の無水CHCl溶液に−5℃で加えた。10分後、1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソフサリジンの沈殿物が形成された。混合物を室温で1時間撹拌した。沈殿物を濾去し、CHClで洗浄した。その後濾液をロータリーエバポレータで濃縮し、クロマトグラフィで精製して生成物NH−dGTP−ニトロN−ビオを得た。
【0082】
実施例3−FA−ビオ−dNTP(図7)の合成
ステップC1:ω1−ビオチンノナン酸(1モル、100μl)のDMF溶液とカルボニルジイミダゾール(1モル、100μl)のDMF溶液とを混合した。室温で30秒放置してイミダゾリドを得た。次いで、混合物にジオキシリボヌクレオチド 5’−三リン酸(50mM、100μl)の水溶液を加えた。反応液を室温で12時間放置して生成物を得た。次いで、反応生成物をアセトンで沈殿後水に溶解させ、クロマトグラフィで精製して生成物FA−ビオ−dNTPを得た。
【0083】
実施例4−化合物dATP−ニトロB−ビオ(図8)の合成
ステップD1:EtN(2.2ml)及びDMAP(175mg)を2’−デオキシアデニン(5g)のピリジン溶液に加え、その後DMTCl(5.25g)を加えた。混合物を室温で一晩反応させた。次いで、混合物にEtN(2.4ml)及びMsCl(1.27ml)を加えた。室温で2時間培養後、混合物を濾過した後、濾液を酢酸エチルによって洗浄した。濾液を濃縮しエタノール(75ml)に溶解し、NaOH(1モル)を加えた。1.5時間還流後、混合物を室温に冷却し、HCl(1モル)を加えた。エタノールはロータリーエバポレータを用いて留去し、残渣をCHClで抽出した。抽出物をシリカゲルカラムで精製して生成物dATP−D1を得た。
【0084】
ステップD2:tert−ブチルジメチルシリルクロリド(2.4mmol)を、撹拌されている、dATP−D1(1.845mmol)及びイミダゾール(326mg)の無水DMF溶液に加えた。反応液を撹拌しながら室温で20時間培養した。溶媒を減圧留去し、その後残渣をクロマトグラフィで精製して生成物dATP−D2を得た。
【0085】
ステップD3:化合物dATP−D2をメタノールで再懸濁させ、濃塩酸水溶液で処理した。溶液を、−20℃で一晩冷却して生成物dATP−D3を得た。
【0086】
ステップD4:5’−OHヌクレオシド類似体(425mg)を実施例1のステップA5と同様に処理した。得られた混合物を濾過後、逆相HPLCで精製して三リン酸塩合成物、本例ではdATP−D4を得た。
【0087】
ステップD5:化合物dATP−D4(3.1μmol)のNaHCO(0.1モル、200μl)溶液(pH:8.0)を、2,2−tert−ブチル−1−(2−ニトロ−4−ビオチン)フェニル)ヘキシル(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)炭酸塩(3.4μmol)のジメチルホルムアミド(200μl)溶液と混合した。反応液を室温で一晩放置して生成物dATP−D5を得た。(Olejnik et al.,PNAS,1995,Vol 92,7590−7594)。
【0088】
ステップD6:化合物dATP−D5(3.75mmol)をTHF(20ml)に溶解させ、TBAF(テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド)(1モル)のTHF溶液で処理した。約2時間撹拌後、反応を停止させた。混合物をCHClで抽出し、クロマトグラフィで精製して生成物dATP−ニトロB−ビオを得た。。
【0089】
実施例5−化合物dCTP−ニトロB−ビオ(図9)の合成
ステップE1:EtN(2.2ml)及びDMAP(175mg)を2’−デオキシシチジン(5g)のピリジン溶液に加え、次いでDMTCl(5.25g)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、EtN(2.4ml)及び(1.27ml)MsClを混合物に加えた。室温で2時間培養後、混合物を酢酸エチルによって濾過後、洗浄した。濾液を濃縮しエタノール(75ml)に溶解させ、NaOH(1モル)を加えた。1.5時間還流後、混合物を室温に冷却し、HCl(1モル)を加えた。エタノールはロータリーエバポレータを用いて留去し、残渣をCHClで抽出した。次いで、シリカゲルカラムで精製して生成物dCTP−E1を得た。
【0090】
ステップE2:tert−ブチルジメチルシリルクロリド(2.4mmol)をdCTP−E1(1.845mmol)の撹拌溶液及びイミダゾール(326mg)の無水DMF溶液に加えた。反応液を室温で20時間撹拌し培養した。溶媒を減圧留去し、その後残渣をクロマトグラフィで精製して生成物dCTP−E2を得た。。
【0091】
ステップE3:化合物dCTP−E2を無水エタノールに溶解させ、0℃まで冷却した。等モルの2,2−tert−ブチル−1−(2−ニトロ−4−ビオチン)フェニル)プロピルフェニル炭酸塩の無水エタノール溶液を滴下した。混合物を室温で一晩撹拌した。溶液を濾過し、水で洗浄し、CHClで抽出して生成物dCTP−E3を得た。
【0092】
ステップE4:化合物dCTP−E3をメタノールで再懸濁させ、濃塩酸水溶液で処理した。反応液を−20℃で一晩冷却して生成物dCTP−E4を得た。
【0093】
ステップE5:5’−OHヌクレオシド類似体(425mg)を実施例1のステップA5と同様に処理した。得られた混合物を濾過後、逆相HPLCで精製して三リン酸塩合成物、本例ではdCTP−E5を得た。
【0094】
ステップE6:化合物dCTP−E5(3.75mmol)をTHF(20ml)に溶解させ、TBAF(テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド)(1モル)のTHF溶液で処理した。約2時間撹拌後、反応を停止させた。混合物をCHClで抽出し、クロマトグラフィで精製して生成物dCTP−ニトロB−ビオを得た。。
【0095】
実施例6−FA−Cat−dNTP(図16)の合成
ステップF1:修飾子カテコールエステル(100μl)のDMF溶液(1モル)をジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1モル、110μl)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(100%、5μl)のDMF溶液と混合した。混合物を0℃で5分間培養した。次いでデオキシリボヌクレオチド5’−三リン酸(50mM、500μl)のDMF溶液を混合物に加えた。室温で3時間放置し生成物を得た。次いで得られた生成物をアセトンで沈殿させ、水に溶解させ、クロマトグラフィで精製して生成物FA−Cat−dNTPを得た。
【0096】
脱保護
ヌクレオチドの核酸鎖への添加後に実施した以下の実施例7〜11により、前記分子の脱保護の実施例、すなわち修飾基の除去を説明する。
【0097】
実施例7−重合ヌクレオチドNH−dT−ニトロB−ビオ(図10)の脱保護
複数の修飾基の切断を以下のプロセスにおいて、同時に実施した。化合物NH−dT−ニトロB−ビオの20mM水溶液を350〜700mMのNaNO及び1モルのNaOAcを含む溶液(pH:5.5)で処理した。波長365ナノメートルの紫外線を照射し、室温で1〜2分間培養後、1モルのリン酸塩バッファ(pH:7.0)を加えて反応を停止させ、照射を停止した。脱保護反応液はdTとした。
【0098】
実施例8−重合ヌクレオチドNH−dG−ニトロN−ビオ(図11)の脱保護
複数の修飾基の切断を以下のプロセスにおいて同時に実施した:NH−dG−ニトロN−ビオの20mM水溶液を350〜700mMのNaNO及び1モルのNaOAcを含む溶液(pH:5.5)で処理した。波長365ナノメートルの紫外線を照射し、室温で1〜2分間培養後、1モルのリン酸塩バッファ(pH:7.0)を加えて反応を停止させ、照射を停止した。脱保護反応液はdGとした。
【0099】
実施例9−重合ヌクレオチドFA−ビオ−dN型(図12)の脱保護
3’−OH端に担持された修飾基の切断を、1〜100mMのアンモニア水溶液中におけるエステル官能基の加水分解(室温、1時間)により実施した。これによりdN型の生成物を得た。
【0100】
実施例10−光切断(図13)による重合ヌクレオチドdA−ニトロB−ビオの脱保護
窒素塩基に担持された修飾基の切断を光切断により実施した。化合物dA−ニトロB−ビオに対し、室温で波長300〜370ナノメートルのUV源からの紫外線照射を行った。UV源からの紫外線照射を30〜300秒後に停止させ、生成物dAを得た。。
【0101】
実施例11−化学的切断(図14)による重合ヌクレオチドdC−ニトロB−ビオールの脱保護
窒素塩基に担持された修飾基の切断を化学的切断により実施した。化合物dC−ニトロB−ビオ(0.01mmol)をエタノール(0.1ml)中に溶解させた。テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム(0.02mmol)のエタノール溶液を加えた。混合物を20分間撹拌後、混合物に二水素ガスが泡立った。これにより生成物dCを得た。
【0102】
固定パラジウムを使用し1ml/分の水素気流下でTHF溶液を用いる同様の手順は、小林らによる記載(Science,2004,304,1305−1308)があり、
変形例として使用することができる。。
【0103】
実施例12−核酸合成のための本発明のヌクレオチドの使用
【0104】
本発明の主題である修飾ヌクレオチドは、特許出願FR14−53455に記載の方法により鋳型鎖の非存在下における核酸の酵素的合成に有利に用いることができる。修飾ヌクレオチド添加ステップの実施にあたり選択される酵素としては、市販のTerminal Deoxynucleotidyl Transferase又はTdTがある。
【0105】
合成開始に用いるプライマには以下のものがある:
【0106】
【化4】
【0107】
実施例1に従って調製されるNH−dTTP−ニトロB−ビオを、修飾ヌクレオチドとして使用した。この修飾ヌクレオチドにおいては、Tを上記配列番号1に加えることができる。後述するように、各伸長ステップにおいて、1つのヌクレオチドだけ各DNA断片に対し加えられることとしている。
【0108】
以下の配列を有する「捕獲」断片:
【0109】
【化5】
【0110】
であってガラスプレートに3’末端において担持されたものを、配列1のプライマを捕獲するために使用した。このガラスプレートは、容積50μlの平行六面体の反応室の基部を構成する。捕獲の実施には、以下を含む緩衝液を使用した:20mMのトリス−HCl(pH=7.5)、500mMのLiCl、及び2pmolのプライマを加えた1mMのEDTA。捕獲ステップは室温で30分間実施した。プライマの捕獲後、プレートは、以下を含む緩衝液(50μl)を加えてその後除去することによって3回洗浄した:20mMのトリス−HCl(pH=7.5)、200mMのLiCl及び1mMのEDTA。
【0111】
合成は、反応室に対する以下の試薬の投入により開始した:TdT(50U)、1モルのカリウムカコジル酸塩、125mMのトリス−HCl、0.05%(v/v)トリトンX−100、5mMのCoCl(pH:7.2)。次いで、遊離性NH−dTTP−ニトロB−ビオヌクレオチド(100μM)の対イオン溶液を添加した。最後に、付加反応を開始するために、2μMの酵素を加えた。総反応量は、50μlであった。混合物を37℃で5分間培養した。
【0112】
合成反応終了後、プレートを、以下を含む緩衝液によって3回洗浄した:20mMのトリス−HCl(pH=7.5)、200mMのLiCl及び1mMのEDTA。これは、投入するNH−dTTP−ニトロB−ビオヌクレオチドの余剰分を確実に除去し、反応室と固体担持体とに未反応のヌクレオチドが残留しないようにする効果を有する。洗浄終了後、20mMのトリス−HClバッファ(pH=7.5、50μl)を反応室に加え、温度を90℃に上昇させた。これは、修飾ヌクレオチドNH−dTTP−ニトロB−ビオを組み込んだ断片の分離を確実にする効果を有する。断片を回収し、新しいエッペンドルフ管に移した。
【0113】
被保護ヌクレオチドNH−dTTP−ニトロB−ビオを組み込んだDNA断片は、その後以下の手順により精製した。製造業者の手順に従って調製したストレプトアビジン(ThermoScientific社製)でコーティングされた市販の磁気ビーズを、前記反応混合物(50μl)に加えた。室温で1時間培養後、磁気ビーズを適切な磁石を用いて回収した。次いで、上澄みを除去した。次いで以下を含む洗浄バッファによりビーズを3回洗浄した:トリスバッファ(pH:7.2、0.1%Tween−20を含む)。
【0114】
修飾ヌクレオチドNH−dTTP−ニトロB−ビオを組み込んだDNA断片が結合した磁気ビーズを、pH:5.5で、350〜700mMのNaNO及び1モルのNaOAcを含む溶液中に再懸濁した。混合物をUV(365ナノメートル)に曝露し、室温で1〜2分間培養した。リン酸塩バッファ(pH:7.0、1モル)を加え、照射を停止して反応を停止させた。この操作により、担持体(ビーズ)からのDNA断片の「分離」が可能となった。
【0115】
磁気ビーズを適切な磁石により回収した。上澄みを回収し、99%以上のケースで配列番号1の3’末端にT塩基が正しく組み込まれたか確認するため、電気泳動ゲル及びMALDI−TOF MS分光計を用いて分析した。
【0116】
同様の手順にて新たな伸長ステップをその後必要に応じ実施して良い。
【0117】
実施例13−核酸合成のための本発明のヌクレオチドの使用の他の実施例
本発明の主題である修飾ヌクレオチドは、特許出願FR14−53455に記載の方法により鋳型鎖の非存在下における核酸の酵素的合成に有利に用いることができる。修飾ヌクレオチド添加ステップの実施にあたり選択される酵素としては、市販のTerminal Deoxynucleotidyl Transferase又はTdTがある。
【0118】
合成開始に用いるプライマには以下のものがある:
【0119】
【化6】
【0120】
実施例2に従って調製されるNH−dGTP−ニトロB−ビオを修飾ヌクレオチドとして使用した。この修飾ヌクレオチドにおいては、Gを上記配列番号1に加えることができる。後述するように、各伸長ステップにおいて、1つのヌクレオチドだけ各DNA断片に対し加えられることとしている。
【0121】
以下の配列を有する「捕獲」断片:
【0122】
【化7】
【0123】
であってガラスプレートに3’末端において担持されたものを、配列1のプライマを捕獲するために使用した。このガラスプレートは、容積50μlの平行六面体の反応室の基部を構成する。捕獲の実施には、以下を含む緩衝液を使用した:20mMのトリス−HCl(pH=7.5)、500mMのLiCl、及び2pmolのプライマを加えた1mMのEDTA。捕獲ステップは室温で30分間実施した。プライマの捕獲後、プレートは、以下を含む緩衝液(50μl)を加えてその後除去することによって3回洗浄した:20mMのトリス−HCl(pH=7.5)、200mMのLiCl及び1mMのEDTA。
【0124】
合成は、反応室に対する以下の試薬の投入により開始した:TdT(50U)、1モルのカリウムカコジル酸塩、125mMのトリス−HCl、0.05%(v/v)トリトンX−100、5mMのCoCl(pH:7.2)。次いで、遊離性NH−dGTP−ニトロB−ビオヌクレオチド(100μM)の対イオン溶液を添加した。最後に、付加反応を開始するために、2μMの酵素を加えた。総反応量は、50μlであった。混合物を37℃で5分間培養した。
【0125】
合成反応終了後、プレートを、以下を含む緩衝液によって3回洗浄した:20mMのトリス−HCl(pH=7.5)、200mMのLiCl及び1mMのEDTA。これは、投入するNH−dGTP−ニトロB−ビオヌクレオチドの余剰分を確実に除去し、反応室と固体担持体とに未反応のヌクレオチドが残留しないようにする効果を有する。洗浄終了後、20mMのトリス−HClバッファ(pH=7.5、50μl)を反応室に加え、温度を90℃に上昇させた。これは、修飾ヌクレオチドNH−dGTP−ニトロB−ビオを組み込んだ断片の分離を確実にする効果を有する。断片を回収し、新しいエッペンドルフ管に移した。
【0126】
被保護ヌクレオチドNH−dGTP−ニトロB−ビオを組み込んだDNA断片は、その後以下の手順により精製した。製造業者の手順に従って調製したストレプトアビジン(ThermoScientific社製)でコーティングされた市販の磁気ビーズを、前記反応混合物(50μl)に加えた。室温で1時間培養後、磁気ビーズを適切な磁石を用いて回収した。次いで、上澄みを除去した。次いで以下を含む洗浄バッファによりビーズを3回洗浄した:トリスバッファ(pH:7.2、0.1%Tween−20を含む)。
【0127】
修飾ヌクレオチドNH−dGTP−ニトロB−ビオを組み込んだDNA断片が結合した磁気ビーズを、pH:5.5で、350〜700mMのNaNO及び1モルのNaOAcを含む溶液の中に再懸濁した。混合物をUV(365ナノメートル)に曝露し、室温で1〜2分間培養した。リン酸塩バッファ(pH:7.0、1モル)を加え、照射を停止して反応を停止させた。この操作により、担持体(ビーズ)からのDNA断片の「分離」が可能となった。
【0128】
磁気ビーズを適切な磁石により回収した。上澄みを回収し、99%以上のケースで配列番号1の3’末端にT塩基が正しく組み込まれたか確認するため、電気泳動ゲル及びMALDI−TOF MS分光計を用いて分析した。
【0129】
同様の手順にて新たな伸長ステップをその後必要に応じ実施して良い。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の主題である修飾ヌクレオチドは、特に非常に長い核酸の非常に高品質な合成を可能とし、これにより核酸合成法の性能を向上させる。前記ヌクレオチドは合成核酸配列又は遺伝子の製造のために比較的大規模に使用することができる。前記修飾ヌクレオチドは、特に生物工学分野又は広く一般に生物学分野における研究開発用あるいは商用DNAもしくはRNAなどの核酸の合成を目的とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]