(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端側の絶縁被覆から露出した複数の素線を有する第1芯線に第1端子を接続した端子付き第1電線と、一端側の前記第1電線の絶縁被覆の長さよりも長い絶縁被覆から露出した前記第1芯線の各素線と同じ太さの素線を複数有する第2芯線に第2端子を接続した端子付き第2電線と、を用い、
前記端子付き第1電線の他端側の絶縁被覆から露出した第1芯線と、前記端子付き第2電線の他端側の前記第1電線の絶縁被覆の長さよりも長い絶縁被覆から露出した第2芯線と、を超音波接合用のホーンとアンビル間で超音波接合により接合した端子付き接合電線であって、
前記ホーン側に前記他端側の第2芯線を配置すると共に、前記アンビル側に前記他端側の第1芯線を配置した状態で、前記ホーンとアンビル間で前記他端側の第1芯線と他端側の第2芯線同士が超音波接合により接合されており、
前記ホーン側の前記他端側の第2芯線の複数の素線の方が前記アンビル側の前記他端側の第1芯線の複数の素線の方よりもより圧潰されて接合されていることを特徴とする端子付き接合電線。
【背景技術】
【0002】
この種の電線の接続方法として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この電線の接続方法は、
図10(a),(b)に示すように、電線1及び極細電線2の絶縁被覆を剥ぎ取って芯線(導体)1a,2aを露出させ(準備工程)、次に、
図10(a)に示すように、電線1と極細電線2の露出した芯線1a,2aをホーン6とアンビル8とで挟み込んで加圧し、次に、
図10(b)に示すように、接合工程における超音波振動エネルギーよりも小さい超音波エネルギーで電線1と極細電線2の芯線1a,2a同士を超音波接合して仮接合体3を得て(仮接合工程)、この仮接合工程にて得られた仮接合体3を仮接合工程における超音波振動エネルギーよりも大きい超音波エネルギーで再度超音波接合して完成させる。
【0003】
この接合工程において超音波接合される際、極細電線2はアンビル8側に近くなっており、ホーン6に接するなどの損傷の大きい箇所に位置していないため、断線等の可能性を減じたうえで極細電線2の超音波接合を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の電線の接続方法では、準備工程の後で接合工程の前に仮接合工程が必要なため、その分工程数が多くなって、コスト高であり、また、他方の電線1の芯線1aと接合される芯線2aが損傷等のダメージを受け易い。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、複数の電線の芯線同士を損傷等させることなく簡単かつ低コストで接合することができ、かつ、電線の端部に接続された端子の破損等のダメージを抑制することができる
端子付き接合電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一端側の絶縁被覆から露出した複数の素線を有する第1芯線に第1端子を接続した端子付き第1電線と、一端側の前記第1電線の絶縁被覆の長さよりも長い絶縁被覆から露出した前記第1芯線の各素線と同じ太さの素線を複数有する第2芯線に第2端子を接続した端子付き第2電線と、を用い、前記端子付き第1電線の他端側の絶縁被覆から露出した第1芯線と、前記端子付き第2電線の他端側の前記第1電線の絶縁被覆の長さよりも長い絶縁被覆から露出した第2芯線と、を超音波接合用のホーンとアンビル間で超音波接合により接合した端子付き接合電線であって、前記ホーン側に前記他端側の第2芯線を配置すると共に、前記アンビル側に前記他端側の第1芯線を配置した状態で、前記ホーンとアンビル間で前記他端側の第1芯線と他端側の第2芯線同士が超音波接合により接合されており、前記ホーン側の前記他端側の第2芯線の複数の素線の方が前記アンビル側の前記他端側の第1芯線の複数の素線の方よりもより圧潰されて接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホーン側に端子付き第2電線の他端側の第1電線の絶縁被覆の長さよりも長い絶縁被覆から露出した第2芯線を配置すると共に、アンビル側に端子付き第1電線の他端側の第2電線の絶縁被覆の長さよりも短い絶縁被覆から露出した第1芯線を配置するセット工程と、ホーンとアンビル間で端子付き第1電線の他端側の第1芯線と端子付き第2電線の他端側の第2芯線同士を超音波接合により接合する接合工程と、を有することにより、従来の方法に比べて、工程を削減することができ、その分低コストで簡単に端子付き第1電線の他端側の第1芯線と端子付き第2電線の他端側の第2芯線同士を接合することができ、また、超音波接合の際に各電線の一端が受ける振動を弱くすることができるため、端子付き第1電線の一端側にある第1端子の破損等のダメージを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明の第1実施形態の端子付き電線の接合方法に用いられる両端側の絶縁被覆が皮むきされている端子付き電線の側面図、(b)は同端子付き電線の正面図である。
【
図2】上記第1実施形態の端子付き電線の接合方法に用いられる超音波接合機のホーンとアンビル間に長短2本の端子付き電線をセットした状態を示す正面図である。
【
図4】上記超音波接合機のホーンとアンビル間で長短2本の端子付き電線を接合した状態を示す正面図である。
【
図5】(a)は
図4中X−X線に沿う断面図、(b)は比較例の
図4中X−X線に沿う断面図である。
【
図6】(a)は上記アンビル側に位置する芯線の複数の素線の接合状態を示す説明図、(b)は上記ホーン側に位置する芯線の複数の素線の接合状態を示す説明図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の長短2本の端子付き電線を中途部と端部とで接合した状態を示す側面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態の端子付き電線の接合方法に用いられる超音波接合機のホーンとアンビル間で長短2本の端子付き電線とダミー電線を接合した状態を示す正面図である。
【
図10】(a)は従来の電線の接合方法の仮接合工程を示す要部の概略図、(b)は接合工程を示す要部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1(a)は本発明の第1実施形態の端子付き電線の接合方法に用いられる両端側の絶縁被覆が皮むきされている端子付き電線の側面図、
図1(b)は同端子付き電線の正面図、
図2は同端子付き電線の接合方法に用いられる超音波接合機のホーンとアンビル間に長短2本の端子付き電線をセットした状態を示す正面図、
図3は
図2中X−X線に沿う断面図、
図4は同ホーンとアンビル間で長短2本の端子付き電線を接合した状態を示す正面図、
図5(a)は
図4中X−X線に沿う断面図、
図5(b)は比較例の
図4中X−X線に沿う断面図、
図6(a)はアンビル側に位置する芯線の複数の素線の接合状態を示す説明図、
図6(b)はホーン側に位置する芯線の複数の素線の接合状態を示す説明図である。
【0013】
図1(a),(b)に示すように、この第1実施形態の端子付き電線の接合方法では、電線の一端側の絶縁被覆から露出した芯線(導体)に端子を接続させた端子付き第1電線10と端子付き第2電線20の長短2本の電線を用意し、
図2及び
図4に示すように、超音波振動付与用のホーン6とグライディングジョー7及び加工対象部分を受ける加圧用のアンビル8とアンビルプレート9を備えた超音波接合機5を用いて、ホーン6とアンビル8間で端子付き第1電線10の第1芯線12と端子付き第2電線20の第2芯線22同士を超音波接合により接合する。即ち、
図3及び
図5(a)に示すように、一端10a側の第2電線20の絶縁被覆21の長さよりも短い(電線長さが短い)絶縁被覆11から露出した複数の素線12aを有する第1芯線12に圧着端子(第1端子)13を接続した端子付き第1電線10と、一端20a側の第1電線10の絶縁被覆11の長さよりも長い(電線長さが長い)絶縁被覆21から露出した第1芯線12の各素線12aと同じ太さの素線22aを複数有する第2芯線22に圧着端子(第2端子)23を接続した端子付き第2電線20と、を用い、端子付き第1電線10の他端10b側の第2電線20の絶縁被覆21の長さよりも短い絶縁被覆11から露出した第1芯線12と、端子付き第2電線20の他端20b側の第1電線10の絶縁被覆11の長さよりも長い絶縁被覆21から露出した第2芯線22と、を超音波接合機5のホーン6とアンビル8間で超音波接合により接合する。
【0014】
端子付き第1電線10と端子付き第2電線20の接合する各芯線12,22の材質は、同じ材質、同じ断面積であり、例えば、アルミニウム製、アルミニウム合金製、銅製、銅合金製、銅に錫めっきしたもの、アルミニウムにカーボンナノチューブを添加した電線でも良く、撚り線でも単芯線であっても良い。
【0015】
また、
図1(a),(b)に示すように、各端子付き第1、第2電線10,20の一端10a,20a側の第1、第2芯線12,22には、金属製の圧着端子13,23を圧着接続してある。この各圧着端子13,23は、前側に相手端子が電気的に接続される箱形の端子接続部13a,23aと、中央から後側に絶縁被覆11,21から露出した第1,第2芯線12,22に圧着される芯線バレル13b,23b及び絶縁被覆11,21に圧着される被覆バレル13c,23cと、を備えている。
【0016】
次に、第1実施形態の端子付き電線の接合方法を説明すると、まず、
図2及び
図3に示すように、超音波接合機5のホーン6側に電線長さが長い端子付き第2電線20の他端20b側の絶縁被覆21から露出した第2芯線22を配置すると共に、アンビル8側に電線長さが短い端子付き第1電線10の他端10b側の絶縁被覆11から露出した第1芯線12を同じ向きで重ね合わせるように配置する(セット工程)。
【0017】
次に、
図4及び
図5(a)に示すように、ホーン6とアンビル8間で電線長さが長い端子付き第2電線20の他端20b側の絶縁被覆21から露出した第2芯線22と電線長さが短い端子付き第1電線10の他端10b側の絶縁被覆11から露出した第1芯線12同士をホーン6の超音波振動とアンビル8の加圧の超音波接合により接合する(接合工程)。
【0018】
この際、ホーン6から発振される超音波振動は、他端20bから端子付き第2電線20へ伝わり、端子付き第2電線20内で減衰しながら一端20aへ伝播する。また、ホーン6の振動は、アンビル8に向かって振動が減衰しながら伝播する。アンビル8側に配置した電線長さが短い端子付き第1電線10は、ホーン6側の電線長さが長い端子付き第2電線20に比べて減衰した振動を受けるため、一端10aへ伝わる振動は弱くなる。これにより、電線長さが短い端子付き第1電線10の絶縁被覆11から露出した第1芯線12が受ける損傷等のダメージは小さくなる。また、ホーン6側に配置した電線長さが長い端子付き第2電線20は、ホーン6から受けた振動を端子付き第2電線20内で減衰させるため、一端20aへ伝わる振動は弱くなる。
【0019】
即ち、
図5(b)に示す比較例のように、ホーン6側に電線長さが短い端子付き第1電線10の第1芯線12を配置し、アンビル8側に電線長さが長い端子付き第2電線20の第2芯線22を配置して超音波接合すると、電線長さが短い一端10a側の第1芯線12に接続された圧着端子13の箱形の端子接続部13aの折り曲げ部等(図中符号Yで示す部分)が破損等のダメージを受け易く、また、その他端10b側の第2芯線22の他端20bとの接合部強度は接合部中で電線長さが短い端子付き第1電線10の強度に依存するため、電線長さが短い端子付き第1電線10の第1芯線12がダメージを受けると、接合部の強度が低下するが、この第1実施形態では、ホーン6側に電線長さが長い端子付き第2電線20の他端20b側の第2芯線22を配置すると共に、アンビル8側に電線長さが短い端子付き第1電線10の他端10b側の第1芯線12を配置するセット工程と、ホーン6とアンビル8間で他端10b側の第1芯線12と他端20b側の第2芯線22同士を超音波接合により接合する接合工程と、を有することにより、従来の方法に比べて、工程を削減することができ、その分低コストで簡単に2つの芯線12,22(特に電線長さが短い第1芯線12)を損傷等させることなく接合することができ、また、
図5(b)に示す比較例に比べて、また、超音波接合の際に電線長さが短い第1電線10の一端10aが受ける振動を弱くすることができるため、電線長さが短い第1電線10の一端10a側にある圧着端子13の箱形の端子接続部13aの破損等のダメージを抑制することができる。同様に、電線長さが長い第2電線20の一端20a側にある圧着端子23の箱形の端子接続部23aの破損等のダメージを抑制することができる。
【0020】
また、
図5(a)に示すように、電線長さが短い端子付き第1電線10の他端10b側の第1芯線12の複数の素線12a及び電線長さが長い端子付き第2電線20の他端20b側の第2芯線22の複数の素線22a間にホーン6による超音波振動エネルギを伝播させ、各素線12a,22aの表面の酸化膜等を破壊、除去することで超音波接合された端子付き接合電線30は、
図6(b)に示すホーン6側の他端20b側の第2芯線22の複数の素線22aの方が、
図6(a)に示すアンビル8側の他端10b側の第1芯線12の複数の素線12aの方よりもより圧潰されて接合されている。
【0021】
以上より、電線長さが短い端子付き第1電線10の他端10b側の第1芯線12をアンビル8側に配置して接合を行うことで、各電線10,20の一端10a,20aの芯線12,22(圧着端子13,23)が受ける振動を小さくすることができ、かつ、電線長さが短い端子付き第1電線10が受けるダメージを最小限に抑えながら、端子付き第1電線10と端子付き第2電線20との接合を行うことが可能となる。
【0022】
図7は本発明の第3実施形態の長短2本の端子付き電線を中途部と端部とで接合した状態を示す側面図である。
【0023】
この第2実施形態の端子付き電線の接合方法では、電線長さが長い端子付き第2電線20の絶縁被覆21の中間部20cを皮剥きして露出した第2芯線22と電線長さが短い端子付き第1電線10の他端10b側の絶縁被覆11から露出した第1芯線12を超音波接合する点が、前記第1実施形態とは異なる。尚、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0024】
この第2実施形態の端子付き電線の接合方法を説明すると、セット工程にて、ホーン6側に電線長さが長い端子付き第2電線20の絶縁被覆21の中剥ぎで露出した第2芯線22を配置すると共に、アンビル8側に電線長さが短い端子付き第1電線10の他端10b側の絶縁被覆11から露出した第1芯線12を配置し、接合工程にて、ホーン6とアンビル8間で電線長さが長い端子付き第2電線20の絶縁被覆21の中剥ぎで露出した第2芯線22と電線長さが短い端子付き第1電線10の他端10b側の絶縁被覆11から露出した第1芯線12同士を超音波接合により接合する。これにより、
図7に示す端子付き接合電線31が完成し、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0025】
図8は本発明の第3実施形態の端子付き電線の接合方法に用いられる超音波接合機のホーンとアンビル間で長短2本の端子付き電線とダミー電線を接合した状態を示す正面図、
図9は
図8中X−X線に沿う断面図である。
【0026】
この第3実施形態の端子付き電線の接合方法では、端子付き第1電線10及び端子付き第2電線20へのホーン6による超音波振動を減衰させるためのダミー電線25の他端25b側の絶縁被覆26から露出した複数の素線27aからなる芯線27を、他端20b側の第2芯線22よりもホーン6側に配置して超音波接合する点が、前記第1実施形態とは異なる。尚、他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
この第3実施形態の端子付き電線の接合方法を説明すると、セット工程にて、電線長さが短い端子付き第1電線10及び電線長さが長い端子付き第2電線20へのホーン6による超音波振動の伝達を弱くするためのダミー電線25の絶縁被覆26から露出した芯線27を、電線長さが長い端子付き第2電線20の他端20b側の第2芯線22よりもホーン6側に混在させて配置し、接合工程にて、ホーン6とアンビル8間で他端10b側の第1芯線12と他端20b側の第2芯線22及びダミー電線25の芯線27同士を超音波接合により接合する。これにより、
図9に示す端子付き接合電線32が完成し、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏し、特に、電線長さが短い端子付き第1電線10及び電線長さが長い端子付き第2電線20に伝わるダメージを可及的に小さくして接合することができる。また、第1、第2電線10,20の一端10a,20a側の圧着端子13,23に振動が伝達しても、圧着端子13,23の損傷を確実に抑制することができる。
【0028】
尚、前記各実施形態によれば、電線の一端側の絶縁被覆から露出した芯線に端子を圧着により接続したが、芯線と端子を超音波接合やレーザ接合、抵抗接合や電磁圧接等により接続するようにしても良い。
【0029】
また、前記各実施形態によれば、電線の一端側の絶縁被覆から露出した芯線に端子を圧着により接続した後で、長短2本の電線の他端側の芯線同士を超音波接合により接合したが、長短2本の電線の他端側の芯線同士を超音波接合により接合した後で、長短2本の電線の一端側の絶縁被覆から露出した各芯線に端子を圧着等により接続するようにしても良い。
【0030】
さらに、前記各実施形態によれば、芯線が同じ材質の電線を接合するようにしたが、異種の材質の電線を接合するようにしても良い。例えば、銅(Cu)電線とアルミ(Al)電線を接合する場合には、Cu電線をホーン側に配置して接合させ、さらに、本数も2本に限らず、例えば、細いCu電線2本と太いAl電線1本の3本を接合する場合には、細いCu電線をホーン側にそれぞれ配置して接合させる。