(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表示パネルの1画素を構成する第1サブ画素を形成するための第1開口が一定周期で配列された第1開口パターン、前記1画素を構成する第2サブ画素を形成するための第2開口が前記一定周期で配列された第2開口パターン、及び前記1画素を構成する第3サブ画素を形成するための第3開口が前記一定周期で配列された第3開口パターンの少なくとも1つの開口パターンを有する樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムと接合され、前記樹脂フィルムの前記第1開口、前記第2開口、及び前記第3開口のいずれも包含し得るように形成された第4開口の開口パターンを有する金属支持層と、を備え、
前記樹脂フィルムの前記金属支持層の前記第4開口によって露出した領域に、前記樹脂フィルムの前記第1開口、前記第2開口、及び前記第3開口のいずれか1又は2の開口が形成されており、
前記第4開口が角部を有し、前記角部が、曲率半径1μm以上、5μm以下の弧形に形成されている、蒸着マスク。
前記表示パネルの前記1画素の前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、及び前記第3サブ画素の少なくとも1つが、前記第4開口によって露出した前記樹脂フィルムに2個以上形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸着マスク。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照しながら、本実施形態の蒸着マスクが説明される。
図1Aは、本実施形態である蒸着マスクを用いて形成される表示パネルのサブ画素の配列を示す模式的平面図を、
図1B〜1Dは、この配列に対応したR、G、Bの各サブ画素を形成するための蒸着マスクを示す模式的平面図を、それぞれ示している。なお、
図1B〜1Dに示される各蒸着マスクでは、簡略化のため、各サブ画素のみを形成するための蒸着マスクを示しているが、Rサブ画素とGサブ画素、Gサブ画素とBサブ画素、又はBサブ画素とRサブ画素の2つのサブ画素を形成するための蒸着マスクもあり得る。
【0018】
本実施形態である蒸着マスクは、表示パネルの1画素Pを構成する第1サブ画素54Rを形成するための第1開口11a1が一定周期で配列された第1開口パターン、1画素Pを構成する第2サブ画素54Gを形成するための第2開口11a2が一定周期で配列された第2開口パターン、及び1画素Pを構成する第3サブ画素54Bを形成するための第3開口11a3が一定周期で配列された第3開口パターンの少なくとも1つの開口パターンを有する樹脂フィルム11と、樹脂フィルム11と接合され、樹脂フィルム11の第1開口11a1、第2開口11a2、及び第3開口11a3のいずれも包含し得るように形成された第4開口12の開口パターンを有する金属支持層12と、を備えている。そして、樹脂フィルム11の金属支持層12の第4開口12aによって露出した領域に、樹脂フィルム11の第1開口11a1、第2開口11a2、及び第3開口11a3のいずれか1又は2の開口が形成されている。
【0019】
すなわち、本実施形態では、
図1B〜1Dに示されるように、金属支持層12の1個の第4開口12aによって露出した樹脂フィルム11に、1個ずつの開口11a1、11a2、11a3が形成されている。
図1B〜1Dでは、1画素を構成するサブ画素54R、54G、54Bのそれぞれのみを形成するための第1開口11a1、第2開口11a2、第3開口11a3を形成した蒸着マスク10R、10G、10Bの例が示されている。そして、どのサブ画素用の開口11a1、11a2、11a3が形成される場合でも、金属支持層12に形成される第4開口12aは同じ形状になっている。すなわち、第4開口12aは、各サブ画素用の第1開口11a1、第2開口11a2、第3開口11a3の周縁まで形成されるのではなく、第1開口12a1、第2開口12a2、及び第3開口12a3の組からなる1単位を包含するように第4開口12aが形成されている。換言すると、第4開口12aによって露出する樹脂フィルム11には、サブ画素用の開口を形成する領域がありながら、その領域にサブ画素用の開口が形成されていない領域があることに本実施形態の特徴がある。
【0020】
この例では、1画素を構成する第1開口11a1、第2開口11a2、第3開口11a3を一単位として金属支持層12の第4開口12aが形成されていたが、2単位以上を囲むように第4開口12aが形成されてもよい。ただし、余り多くの単位を囲むように第4開口12aを形成すると、樹脂フィルム11に撓みが生じるため、樹脂フィルム11の補強という観点から、10単位以下を囲むように第4開口12aが形成されることが好ましい。
【0021】
図1Aに示される実施例では、矩形状のR、G、Bのサブ画素54R、54G、54Bが1画素Pを形成している。そして、矩形状のサブ画素54R、54G、54Bは、一定周期で交互に配列されて表示パネルが形成されている。ここで、表示パネルのサイズと画素数が決定されれば、1画素Pのサイズと配列も決定される。そこで、1画素のサイズと配列に合わせて金属支持層12の第4開口12aのサイズと開口パターンが決定されれば、同じ金属支持層12を用いて、R、G、Bのサブ画素を形成するための各蒸着マスク10R、10G、10Bを作製することができる。
【0022】
また、
図1B〜1Dに示されるように、各蒸着マスク10R、10G、10Bは、樹脂フィルム11と金属支持層12とを各々備えている。そして、各蒸着マスク10R、10G、10Bの樹脂フィルム11には、各サブ画素54R、54G、54Bを形成するための第1開口11a1、第2開口11a2、第3開口11a3が一定周期で配列された開口パターンが、それぞれ形成されている。一方、各蒸着マスク10R、10G、10Bの金属支持層12には、R、G、Bのサブ画素を形成するための樹脂フィルム11の第1開口11a1、第2開口11a2、及び第3開口11a3のいずれも囲むように、第4開口12aがそれぞれ形成されている。従って、金属支持層12は、各蒸着マスク10R、10G、10Bに依らず同じである。
【0023】
1画素の寸法は、一辺が約42.5μm(600PPI)であり、金属支持層12の開口12aの寸法は、約37.5μm×約37.5μmであり、樹脂フィルム11の開口11a1、11a2、11a3の寸法は、それぞれ約30μm×約10μmであり、金属支持層12の第4開口12aの間隔(リブ)の幅は約5μmである。なお、
図1B〜1Dに示される四角形状の金属支持層12の第4開口12aの4つの頂点は、丸まっていてもよく、その曲率半径は、1μm以上であって5μm以下、典型的には3μm程度となっている。このようにすれば、樹脂フィルム11と金属支持層12との接合面がより大きくなるので、樹脂フィルム11の撓みをより抑制できる。他の図に示される金属支持層の頂点も同様である。
【0024】
樹脂フィルム11は、例えば、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂、環状オレフィンコポリマー(COC)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエステル(PBT)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリビニルアルコール(PVAL)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコールコポリマー樹脂、エチレン−メタクリル酸コポリマー樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、アイオノマー樹脂からなる。樹脂フィルム11の線膨張係数は、蒸着時の温度上昇に伴う装置基板と蒸着マスクとの位置ズレを防止する観点から、蒸着マスク10R、10G、10Bとして使用される際の装置基板51の線膨張係数に近いことが好ましい。具体的には、装置基板51と蒸着マスク10R、10G、10Bとの線膨張係数の差は、6ppm/℃以下、さらに好ましくは、3ppm/℃以下であることが好ましい。また、一般的に、装置基板51はガラスからなることを考慮すると、樹脂フィルム11は、ポリイミド樹脂であることがさらに好ましい。また、樹脂フィルム11の厚さは、数μm以上であって数10μm以下、例えば5μm程度に形成されている。
【0025】
金属支持層12は、例えばFe、Ni、Fe−Ni合金、インバー(Fe−35wt%Ni)などの金属材料によって形成される。金属支持層12として磁性体を用いれば、蒸着マスク10R、10G、10Bを装置基板51に固定する際に磁力で吸着することができるので好ましい。また、金属支持層12の厚さは、例えば、1μm以上であって15μm以下に形成されている。
【0026】
このような蒸着マスク10R、10G、10Bによれば、例えば、Rサブ画素を形成するための蒸着マスク10Rが、Rサブ画素を形成するための樹脂フィルム11の開口11aの周縁部まで金属支持層12で保護された構造で形成されるのではなく、Gサブ画素及びBサブ画素を形成するための樹脂フィルム11の開口11aをも含んで金属支持層12で保護する構造で形成されるので、樹脂フィルム11にいずれの開口11aが形成されているか否かに依らず、金属支持層12がいずれのサブ画素用の開口11a1、11a2、11a3も塞ぐことはない。従って、この金属支持層12を多数製造しておいて、他の蒸着マスク10G、10Bにも用いることができるので、1組の蒸着マスク10R、10G、10Bを画一的な作業で製造することができる。
【0027】
ここで、本実施形態の蒸着マスク10R、10G、10Bは、例えば、
図2Aに示されるRサブ画素の形成用の蒸着マスク10Rのように、1行×2列からなる2画素に対応する樹脂フィルム11の第1開口11a1のいずれも含むことができるサイズに金属支持層12の第4開口12aを形成してもよい。また、
図2Bに示されるように、2行×1列からなる2画素に対応する第1開口11a1のいずれも含むことができるサイズに第4開口12aを形成してもよい。さらに、
図2Cに示されるように、2行×2列からなる4画素に対応する第1開口11a1のいずれも含むことができるサイズに第4開口12aを形成してもよいし、
図2Dに示されるように、2行×3列からなる6画素に対応する第1開口11a1のいずれも含むことができるサイズに第4開口12aを形成してもよい。
図2A〜2Dに示される蒸着マスクでは、各金属支持層12の第4開口12aに樹脂フィルム11の第1開口11a1が、各々2個、2個、4個、6個含まれることとなる。
【0028】
また、後述するように、樹脂フィルム11の第1開口11a1などの開口パターンを形成するためのレーザ光の照射の単位領域に含まれる複数画素に合わせるように金属支持層12の第4開口12aを形成してもよい。すなわち、各蒸着マスク10R、10G、10Bの金属支持層12の第4開口12aのサイズと開口パターンを同じにすることができ、かつ、樹脂フィルム11をある程度補強できればよい。
【0029】
さらに、
図1B〜1Dに示される樹脂フィルム11の第1開口11a1などのサイズと開口パターンは、R、G、Bのサブ画素54R、54G、54Bを形成するための第1開口11a1、第2開口11a2、第3開口11a3のいずれか1個を有するように形成されているが、各サブ画素に含まれる共通するサブ画素を一度に一括して蒸着するために、共通するサブ画素の数に応じて、2個の開口を有するように、蒸着マスクが形成されてもよい。
【0030】
また、
図1Aに示される1画素は、R、G、Bのサブ画素から構成されていたが、W(白)などの1以上の付加的なサブ画素を含むように構成されていてもよい。この場合、上述の蒸着マスク10R、10G、10Bとは別途に、Wサブ画素を構成する開口11aの開口パターンを有する蒸着マスクを準備することができる。なお、この場合、4つ以上のサブ画素を蒸着して形成することになるが、上述の通り、本実施形態の1組の蒸着マスクのうちの1つの蒸着マスクでは、1画素に対応する領域の樹脂フィルムにサブ画素数よりも1個少ない数を上限として開口が設けられていることが好ましい。
【0031】
図3Aは、他の実施形態である蒸着マスクを用いて形成される表示パネルのサブ画素の配列を示す模式的平面図を、
図3B〜3Dは、この配列に対応したR、G、Bのサブ画素の形成用の蒸着マスクを示す模式的平面図を、それぞれ示している。
【0032】
図3Aに示されるように、表示パネル61には、R、G、Bのサブ画素64R、64G、64Bが各々形成されている。そして、ドット状のサブ画素は、Rサブ画素又はBサブ画素1個当たりにBサブ画素を2個配列するように一定周期で交互に配列されている。ここでは、
図3Aに示される配列において、各1つのRサブ画素及びBサブ画素、並びに2つのGサブ画素が、1画素Pを構成するものとしている。
【0033】
このような配列のR、G、Bのサブ画素の形成用の蒸着マスク20R、20G、20Bにおいても、
図3B〜3Dに示されるように、1画素Pのサイズと一定周期の配列に合わせて金属支持層22の開口22aの開口パターンを設定することによって、
図1B〜1Dに示されるR、G、Bのサブ画素の形成用の蒸着マスク10R、10G、10Bと同様の効果を得ることができる。この場合、各蒸着マスク20R、20G、20Bでは、各金属支持層22の開口22aに樹脂フィルム21の第1開口21a1、及び第3開口21a3が、それぞれ1個、第2開口21a2は、1個形成されている。
【0034】
ここで、
図3Aに示される配列における1画素Pの設定は、これに限定されるものではなく、後述される
図4Aに示されるように、樹脂フィルム21の第2開口21a2のうちの1個は、隣接する画素の第1開口21a1と第3開口21a3との組で1画素を構成してもよい。
【0035】
具体的には、
図3Aに示されるサブ画素の配列の同じ配列において、
図4Aに示されるように1画素Pを設定してもよい。すなわち、
図3Aでは、各1つのRサブ画素64R及びBサブ画素64Bと2つのGのサブ画素64Gを含む四角形状の範囲を1画素に設定したが、
図4Aに示されるように、各1つのRサブ画素64R及びBサブ画素64Bと2つのGサブ画素64Gを含む菱形形状の範囲を1画素Pに設定してもよい。この場合においても、金属支持層22の開口22aは、この1画素Pを構成するR、G、Bのサブ画素を形成するための樹脂フィルム21の第1開口21a1、第2開口21a2、第3開口21a3のいずれも囲むように形成されている。すなわち、
図3B〜3Dに示されるように第4開口22aが形成されてもよいし、
図4B〜4Dに示されるように第4開口22aが形成されてもよい。金属支持層22を容易に設計できるようにするため、金属支持層22の開口22aは、四角形状や菱形形状のような簡単な形状にすることが好ましい。
【0036】
なお、
図3Aに示される配列の場合においても、
図1Aに示される配列の場合と同様に、W(白)などの1以上の付加的なサブ画素を含むように構成されていてもよく、この場合、これに対応する蒸着マスクは、上述と同様の手法で形成され得る。また、各サブ画素の2以上に共通するサブ画素を一度に一括して蒸着するための蒸着マスクについても、上述と同様の手法で形成され得る。
【0037】
次に、このような蒸着マスク10R、10G、10Bの製造方法が、図面に則って説明される。ここでは、
図1Bに示されるRサブ画素の形成用の蒸着マスク10Rの製造方法が、
図5〜
図7を参照しながら説明される。
【0038】
本発明の実施形態である蒸着マスクの製造方法は、支持基板の上に樹脂フィルム11を形成する工程(S11)と、樹脂フィルム11の上に第4開口12aのパターンを有する金属支持層12を形成する工程(S12)と、第4開口12aによって露出した樹脂フィルム11にレーザ光を照射して、表示パネルの1画素を構成する第1サブ画素54R、第2サブ画素54G、及び第3サブ画素54Bをそれぞれ形成するための第1開口11a1、第2開口11a2、及び第3開口11a3の1又は2の開口パターンを形成する工程(S13)と、支持基板と樹脂フィルムとの接合部にレーザ光の照射(S16)後、樹脂フィルム11と金属支持層12とを支持基板から剥離する工程(S17)と、を有している。なお、金属支持層12の第4開口12aは、樹脂フィルム12の第1開口11a1、第2開口11a2、及び第3開口11a3のいずれも包含し得るように形成される。
【0039】
さらに詳述すると、まず、
図6Aに示されるように、支持基板15上に液状の樹脂材料を塗布して樹脂塗布膜16を形成する(
図5のS11)。樹脂材料の塗布方法は、膜厚制御が可能な方法であればどのようなものでもよいが、例えば
図6Aに示されるように、スリットコータを用いて塗布され得る。すなわち、スロットダイ71の先端部から帯状に液状の樹脂材料を吐出させながら、スロットダイ71を支持基板15の表面と平行な方向に相対的に移動させることによって塗布される。なお、樹脂材料は、スリットコータの方法でなくても、例えばスピンコータなど、他の方法で塗布されてもよい。このような方法で樹脂フィルム11を形成すれば、支持基板15の表面に密着して樹脂塗布膜16が形成されるので、樹脂塗布膜16が硬化されることによって得られる樹脂フィルム11が支持基板15と密着し、樹脂フィルム11と支持基板15との間に気泡の巻き込みが発生しない。そのため、後述するように、樹脂フィルム11に第1開口11a1を形成する際に、支持基板15と樹脂フィルム11が密着した状態でレーザ光が照射されるので、樹脂フィルム11の開口11aを精度よく形成することができる。樹脂材料は、硬化し得る材料であり、かつ、後述するように、レーザ加工のレーザ光を吸収する材料であればよく、前述の材料が用いられる。
【0040】
支持基板15は、樹脂材料を塗布して硬化させ、レーザ光の照射によって開口パターンを形成するための基板である。支持基板15の材料は、樹脂塗布膜16の硬化温度での耐熱性、及び、後述するように、支持基板15の剥離の際に用いられるレーザ光の透過性の観点から、ガラス、サファイア、GaN系半導体、などを採用することができる。
【0041】
その後、樹脂塗布膜16の温度を加熱し、樹脂塗布膜16を硬化及び焼成させて樹脂フィルム11を形成する(S11)。加熱温度は、例えば、樹脂材料の硬化温度以上である400℃以上であって500℃以下に設定され、この加熱条件によって、樹脂フィルム11の線膨張係数が調整され得る。この際、樹脂フィルム11と支持基板15との線膨張率の差が大きいと、樹脂フィルム11が室温で支持基板15から剥離された後に、熱歪みの影響で樹脂フィルム11がカールしやすい。そのため、この樹脂フィルム11と支持基板15との間の線膨張係数の差は、3ppm/℃以下程度であることが好ましい。
【0042】
ここで、硬化及び焼成の際に、樹脂フィルム11と支持基板15との界面に短波長光吸収層(図示せず)が形成される。短波長光吸収層は、樹脂塗布膜16の焼成の際に、例えば、樹脂材料とは異なる材料のガラスからなる支持基板15と接していることに起因して、支持基板15との接触面の近傍の樹脂フィルム11が変質することによって形成される。その結果、短波長吸収層は、樹脂フィルム11本体よりも紫外線などの短波長の光をよりも吸収しやすくなる。短波長吸収層の厚さとしては、5nm以上であって100nm以下である。短波長吸収層を形成するために、シランカップリング剤などの密着性を改善するための表面改質剤を支持基板15上に極薄に塗布してから、樹脂塗布膜16を形成することが好ましい。
【0043】
次に、
図6Bに示されるように、樹脂フィルム11上に金属支持層12を形成する(S12)。具体的には、無電解めっきによって、樹脂フィルム11上にシード層(図示せず)を0.05μm以上、0.5μm以下の厚さに形成した後、シード層に電流を流して電解めっきによって金属支持層12を形成する。金属支持層12は、めっき法の他、スパッタリング法や真空蒸着法、などによって形成されてもよい。また、電解めっきを用いずに、金属箔を樹脂フィルム11に貼り付けることによって、金属支持層12を形成してもよい。金属箔を貼り付ける場合には、その金属箔に予め第4開口の開口パターンを形成しておいて、その金属箔を貼り付けることができる。そうすることによって、R、G、Bそれぞれの蒸着マスクを形成する場合には、一々
図6Cに示されるような金属支持層12のパターニングを行う必要はなく、非常に簡単に樹脂フィルム11と金属支持層12との接合構造が得られる。
【0044】
そして、
図6Cに示されるように、例えば、エッチングによって、金属支持層12の開口12aの開口パターンを形成する(S13)。上述の通り、R、G、Bのサブ画素を構成する1画素分のいずれの開口11a1、11a2、11a3も含むように、金属支持層12に第4開口12aを形成する。例えば、レジスト膜(図示せず)を介してドライエッチング又はウェットエッチングすることによって、テーパ状に形成されることが好ましい。このようにすれば、
図8Aに示されるように、有機材料31Rは、蒸着源30Rから一定の角度θ1(蒸着角度)を有するラッパ状の束(蒸着ビームという)になって飛来するが、蒸着ビームの側端の蒸着粒子でも、遮断されないで、蒸着対象となる装置基板51上の第1電極52(例えば陽極)に到達できるためである。厳密に言えば、マスクのテーパ角度θ2(テーパの底面とのなす鋭角)は、蒸着角度θ1以下であることが好ましい。なお、上述の金属箔を貼り付ける場合には、予め金属箔にプレス加工又はエッチングなどによって、開口パターンが形成しておいて樹脂フィルム11に貼り付けてもよい。本実施形態の蒸着マスク10Rでは、Gサブ画素及びBサブ画素の形成用の蒸着マスク10G、10Bと金属支持層12の第4開口12aのサイズと開口パターンが同じであるため、開口サイズ及び開口パターンが同じレジスト膜によって、エッチングを行うことができるので、蒸着マスク10R、10G、10Bの製造工程が単純になる。
【0045】
次に、
図6Dに示されるように、例えば、レーザ光L1の照射によって、樹脂フィルム11の第1開口11a1の開口パターンを形成する(S14)。具体的には、
図7Aに示されるように、所望のサイズの開口41aが一定周期で配列された開口パターンを備えたレーザ用マスク41、及び凸レンズなどの集光用の光学レンズ42を透過したレーザ光L1を金属支持層12の開口12aを通して樹脂フィルム11上に照射する。そして、レーザ光L1を照射する照射装置(図示せず)とステッパとを支持基板15と平行な方向に相対的に移動させて、レーザ光L1の照射の単位領域毎に、レーザ光L1が照射されたレーザ用マスク41の開口41aの開口パターンに応じて、縮小されたサイズと配列のレーザ光L1を金属支持層12の開口12aから露出した樹脂フィルム11に照射する。このようにして、
図6Dに示されるように、レーザ光L1が照射された樹脂フィルム11の一部を昇華させる。その結果、レーザ光L1の1回の照射によって、R画素のサイズとパターンに合わせた第1開口11a1のパターンが所定領域の樹脂フィルム11に一括して順次形成され、レーザ光L1の照射を繰り返すことによって、全ての第1開口11a1が樹脂フィルム11に形成される。
【0046】
この際、樹脂フィルム11は金属支持層12に貼り付けられているので、樹脂フィルム11内の張力は、金属支持層12の第4開口12aの開口パターンによって異なる。しかし、本実施形態の各蒸着マスク10R、10G、10Bでは、金属支持層12の第4開口11aの開口パターンが同じであるため、各蒸着マスク10R、10G、10Bの樹脂フィルム11内の張力はいずれも同じになる。そのため、レーザ光L1の照射条件が同じであれば、樹脂フィルム11に第1開口11a1、第2開口11a2、及び第3開口11a3を開けた際の樹脂フィルム11内の張力の開放のされ方も同じであるので、第1開口11a1、第2開口11a2、及び第3開口11a3を再現性良く形成することができる。
【0047】
レーザ光の照射条件は、例えば、波長が355nm(YAGレーザの3倍波)のレーザ光が、パルス周波数が60Hz、パルス幅が数nsec〜20nsec、照射面でのレーザ光の強度が1パルス当たり0.25J/cm
2〜0.45J/cm
2以下、ショット数(照射するパルスの数)が50以上であって200以下の条件で、樹脂フィルム11に照射される。照射されるレーザ光は、YAGレーザに限定されるものではなく、樹脂フィルム11が吸収し得る波長のレーザ光であればよい。例えば、エキシマレーザ、He−Cdレーザなど、他のレーザ光が用いられてもよい。また、先に触れた通り、レーザ光L1の照射の単位領域は、金属支持層12の第4開口12aを複数個分まとめた領域であってもよく、開口12aの1個分の領域であってもよい。
【0048】
レーザ用マスク41は、例えば、石英ガラス板などのレーザ光を透過させる透明基板に、クロムなどの遮光薄膜が形成され、この遮光薄膜にパターンが形成されることにより開口41aが形成されている。
【0049】
そして、金属支持層12の表面にフレーム13を貼り付ける(S15)。このフレームの貼り付けは、樹脂フィルム11と金属支持層12とを支持基板15から剥離した後に、樹脂フィルム11にテンションをかけてフレーム13に貼り付けることもできる。具体的には、フレーム13は、金属からなり、レーザ溶接などによって金属支持層12に固定される。フレーム13は、蒸着マスク10Rの取り扱いを容易にすると共に、樹脂フィルム11が伸張した状態で蒸着マスク10Rを得るために用いられる。樹脂フィルム11に撓みがあると、R、G、Bのサブ画素を構成する有機層を形成する際に、いわゆるシャドウを生じてしまい、有機層の積層膜54R、54G、54Bを高い精度で蒸着することができないためである。樹脂フィルム11が常に張られた状態にあれば、必ずしもフレーム13を貼り付けなくてもよい。樹脂フィルム11に、例えば張力(テンション)が掛けられる場合には、フレーム13にその張力に耐え得る剛性が要求され、厚さが25mm以上であって50mm以下の金属板が用いられるが、その必要がないときは、フレーム13が無くても構わない。また、フレーム13を貼り付ける場合、必ずしも、金属支持層12の表面に貼り付ける必要はなく、接着剤によって金属支持層12及び樹脂フィルム11の端面に貼り付けてもよい。
【0050】
そして、支持基板15と樹脂フィルム11との界面にレーザ光を照射する。(S16)。具体的には、
図7Bに示されるように、線状光源72を用いて、支持基板15の裏面と平行な方向に移動させることによって、支持基板15の裏面から支持基板15と樹脂フィルム11との界面に形成された図示しない短波長光吸収層にレーザ光L2を支持基板15の一端から他端まで走査する。そうすると、短波長光吸収層はさらに変質して、支持基板15と樹脂フィルム11との間の接合力が、これらの全面に亘って失われる。ここで用いられるレーザ光L2の強度は、樹脂フィルム11本体を変質させない程度に小さい。その観点から、レーザ光でなくてもよく、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、紫外線LEDなど波長の短い光を放射する光源であればよい。この際、金属支持層12のある部分では、レーザ光L2が反射して、短波長光吸収層へのレーザ光L2の影響が大きくなる。そのため、レーザ光L2の照射方向と直角方向の金属支持層12の部分の影響は小さいが、レーザ光L2の照射方向と平行な金属支持層12の部分では、レーザ光L2の出力を弱くする必要がある。しかし、本実施形態では、各蒸着マスク10R、10G、10Bの金属支持層12の開口12aの開口パターンが同じであるので、各蒸着マスク10R、10G、10Bによって、レーザ光L2の出力を変える必要がない。
【0051】
最後、
図6Eに示されるように、樹脂フィルム11及び金属支持層12を支持基板15から剥離させることで、蒸着マスク10Rを完成させる(S17)。具体的には、上述のように、レーザ光L2の照射によって、支持基板15と樹脂フィルム11との間の接合力が、これらの界面全面に亘って失われるので、樹脂フィルム11及び金属支持層12は、支持基板15から容易に分離される。
【0052】
このような蒸着マスク10Rの製造方法によれば、Rサブ画素を形成するための蒸着マスク10Rを、Rサブ画素、Gサブ画素及びBサブ画素を形成するためのいずれの開口11aをも含んで金属支持層12で保護するように製造するので、金属支持層12を他の蒸着マスク10G、10Bにも用いることができる。従って、各蒸着マスク10R、10G、10Bを製造する際に、金属支持層12に開口12aをエッチングによって形成する際のレジスト膜の形状を共通化したり、共通する金属支持層12を予め作製しておいて、Gサブ画素及びBサブ画素の樹脂フィルム11に貼り付けることもできるので、1組の蒸着マスク10R、10G、10Bを画一的な作業で製造することができる。
【0053】
次に、有機EL表示装置の製造方法が、
図8A〜8Bを参照しながら、Rサブ画素を構成する有機層の積層膜の形成工程を主として説明される。
【0054】
本実施形態の有機EL表示装置の製造方法は、ベース基板上にTFT、平坦化膜及び第1電極などを少なくとも形成して装置基板51にする工程と、装置基板51の表面に蒸着マスク10Rを用いて有機材料を蒸着することによって有機層の積層膜54を形成する工程と、積層膜54の上に第2電極55(
図8B参照)を形成する工程とを含んでいるものである。
【0055】
1画素Pを構成する有機層の積層膜54R、54G、54Bを形成するためには、例えば、
図8Aに示されるRサブ画素の有機層の積層膜54Rを形成する場合のように、蒸着マスク10Rと装置基板51とを位置合せして重ね合せ、第1電極52(陽極)上に有機材料31Rを蒸着させて有機層の積層膜54Rを形成する。なお、図示されていないが、第1開口11a1のない部分では、有機材料31Rが蒸着マスク10R上に堆積する。そして、R、G、Bのサブ画素の全てに有機材料が積層された後に、有機層の積層膜54R、54G、54B上に第2電極55(陰極)を形成する。
【0056】
装置基板51には、図示していないが、ガラス基板などからなるベース基板に、各画素のR、G、Bの各サブ画素にTFTが形成され、TFTに接続された第1電極52が、平坦化膜上に、AgあるいはAPCなどの金属膜とITO膜との組み合わせによって形成されている。サブ画素間には、
図8A〜8Bに示されるように、サブ画素間を区分すると共に、第1電極52と第2電極55との接触を防止すため、SiO
2又はアクリルなどからなる絶縁バンク53が形成されている。
【0057】
この絶縁バンク53上に、Rサブ画素の形成用の蒸着マスク10Rを位置合せして固定する。この固定は、例えば、蒸着マスク10Rの金属支持層12を磁性体によって形成した場合には、装置基板51の裏面に磁石を配置し、装置基板51を挟んで蒸着マスク51を磁石に吸引させること(磁気チャック)によって行われる。なお、蒸着マスク10Rの第1開口11a1は、絶縁バンク53の表面の間隔よりも小さく形成されている。これによって、絶縁バンク53の側壁には有機材料31Rができるだけ被着しないようにし、発光効率の低下の防止が図られる。
【0058】
この状態で、
図8Aに示されるように、蒸着装置内でRサブ画素を形成するための蒸着源(るつぼ)30Rから有機材料31Rを蒸発させて、蒸着マスク10Rの開口11a内にのみ有機材料31Rを蒸着し、Rサブ画素の第1電極52上にRサブ画素の有機層の積層膜54Rを形成する。上述のように、蒸着マスク10Rの開口11aは、絶縁バンク53の表面の間隔より小さく形成されているので、絶縁バンク53の側壁には有機材料31Rは堆積されにくくなる。その結果、ほぼ、第1電極52上にのみ有機層の積層膜54Rが堆積される。この蒸着工程が終了した後、同様の方法で、Gサブ画素及びBサブ画素の形成用の蒸着マスク10G、10Bを用いて、各々、Gサブ画素及びBサブ画素の有機層の積層膜54G、54Bを形成する。
【0059】
図8A〜8Bでは、有機層の積層膜54R、54G、54Bが単層で示されているが、実際には、これらは、異なる材料からなる複数層の積層膜で形成される。例えば第1電極(陽極)52に接する層として、正孔の注入性を向上させるイオン化エネルギーの整合性の良い材料からなる正孔注入層が設けられる場合がある。この正孔注入層上に、正孔の安定な輸送を向上させると共に、発光層への電子の閉じ込め(エネルギー障壁)が可能な正孔輸送層が、例えばアミン系材料によって形成される。さらに、その上に発光波長に応じて選択される発光層が、例えば赤色、緑色に対してはAlq
3に赤色又は緑色の有機物蛍光材料をドーピングして形成される。また、青色系の材料としては、DSA系の有機材料が用いられる。発光層の上には、さらに電子の注入性を向上させると共に、電子を安定に輸送する電子輸送層が、Alq
3などによって形成される。これらの各層がそれぞれ数十nm程度ずつ積層されることによって有機層の積層膜54R、54G、54Bが形成される。なお、この有機層と金属電極との間にLiFやLiqなどの電子の注入性を向上させる電子注入層が設けられることもある。
【0060】
各有機層の積層膜54R、54G、54Bの発光層として、R、G、Bの各色に応じた材料の有機層を堆積させる。また、正孔輸送層、電子輸送層などは、発光性能を重視すれば、発光層に適した材料で別々に堆積されることが好ましい。しかし、材料コストの面を勘案して、R、G、Bの2色に共通して同じ材料で積層される場合もある。RとG、RとB、GとBの2色のサブ画素で共通する有機材料が積層される場合には、積層される有機材料が共通するサブ画素に開口が形成された蒸着マスクが形成される。個々のサブ画素で有機層が異なる場合には、例えば、上述のように、R、G、Bの各サブ画素の形成用の蒸着マスク10R、10G、10Bを用いて、各有機層の積層膜54R、54G、54Gを連続して蒸着することができるし、2色のサブ画素において共通の有機材料が蒸着させたい場合には、その共通層の下側まで、各サブ画素の形成用の蒸着マスク10R、10G、10Bを用いてR、G、Bのサブ画素の有機材料の蒸着を行い、共通の有機材料を蒸着する際に、2色のサブ画素に対応する開口が形成された蒸着マスクを用いて一度に2色のサブ画素の有機材料を蒸着する。
【0061】
そして、全ての有機層の積層膜54R、54G、54Bの形成が終了したら、第2電極55を全面に形成する。
図8Bに示されるトップエミッション型の有機EL表示装置の場合、保護膜56側から光を放射する方式になっているので、第2電極55には、例えば、Mg−Ag合金などの仕事関数の小さい金属の薄膜が用いられる。なお、装置基板51側から光を放射するボトムエミッション型の場合には、第1電極52にITOなどが用いられ、第2電極としては、Alなどの仕事関数の小さい金属の厚膜が用いられる。その後、第2電極55の表面に、例えばSi
3N
4などからなる保護膜56を形成する。そして、これら全体をガラス、樹脂フィルムなどからなるシール層(図示せず)によって封止し、有機層の積層膜54R、54G、54Bが水分を吸収しないように構成する。なお、有機層をできるだけ共通化し、その表面側にカラーフィルタを設けるように構成することもできる。
【0062】
このような有機EL表示装置の製造方法によれば、上述の蒸着マスク10R、10G、10Bを用いて有機層の積層膜54R、54G、54Bを形成するので、有機層の積層膜を効率的に作製することができる。
【0063】
[まとめ]
本発明の態様1に係る蒸着マスクは、表示パネルの1画素を構成する第1サブ画素を形成するための第1開口が一定周期で配列された第1開口パターン、前記1画素を構成する第2サブ画素を形成するための第2開口が前記一定周期で配列された第2開口パターン、及び前記1画素を構成する第3サブ画素を形成するための第3開口が前記一定周期で配列された第3開口パターンの少なくとも1つの開口パターンを有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムと接合され、前記樹脂フィルムの前記第1開口、前記第2開口、及び前記第3開口のいずれも包含し得るように形成された第4開口の開口パターンを有する金属支持層と、を備え、前記樹脂フィルムの前記金属支持層の前記第4開口によって露出した領域に、前記樹脂フィルムの前記第1開口、前記第2開口、及び前記第3開口のいずれか1又は2の開口が形成されている、ことを特徴としている。
【0064】
本発明の態様1の構成によると、金属支持層の第4開口が、樹脂フィルムの第1開口、第2開口及び第3開口のいずれも包含するように形成されているので、第1開口、第2開口及び第3開口のいずれが形成されているかに関わらず、金属支持層が、これらを塞ぐことがない。従って、いずれのサブ画素を形成するための蒸着マスクにおいても金属支持層の開口パターンは同じであり、樹脂フィルム及び金属支持層を剥離する際のレーザ光の照射条件を同じにすることができる。さらに、これらのサブ画素用の蒸着マスクを製造する場合に、金属支持層を共通化することができる。
【0065】
本発明の態様2に係る蒸着マスクでは、上記態様1において、前記1画素を構成する前記第1開口、前記第2開口、及び前記第3開口の配置を1単位として、前記第4開口が1単位以上で10単位以下を包含するように形成されていてもよい。
【0066】
本発明の態様2の構成によると、第4開口が1単位以上で10単位以下の小さい単位を包含するように形成されているので、樹脂フィルムに撓みを生じないようにしながら金属支持層を共通化することができる。
【0067】
本発明の態様3に係る蒸着マスクでは、上記態様1又は2において、前記第4開口の平面形状が、四角形状又は菱形形状であってもよい。
【0068】
本発明の態様3の構成によると、四角形状や菱形形状のような簡単な形状に第4開口の平面形状を形成しているので、第4開口を容易に設計することができる。
【0069】
本発明の態様4に係る蒸着マスクでは、上記態様3において、前記第4開口の角部が、曲率半径1μm以上、5μm以下の弧形に形成されていてもよい。
【0070】
本発明の態様4の構成によると、第4開口を所定の曲率半径の弧形にすることによって、樹脂フィルムと金属支持層との接合面がより大きくなるので、樹脂フィルムの撓みをより抑制できる。
【0071】
本発明の態様5に係る蒸着マスクでは、上記態様2〜4のいずれか1態様において、前記表示パネルの前記1画素の前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、及び前記第3サブ画素の少なくとも1つが、前記第4開口によって露出した前記樹脂フィルムに2個以上形成されていてもよい。
【0072】
本発明の態様5の構成によると、種々のサブ画素の配列に合わせて蒸着マスクを作製することができる。
【0073】
本発明の態様6に係る蒸着マスクの製造方法は、支持基板の上に樹脂フィルムを形成する工程と、前記樹脂フィルムの上に第4開口の開口パターンを有する金属支持層を形成する工程と、前記第4開口によって露出した前記樹脂フィルムにレーザ光を照射することによって、表示パネルの1画素を構成する第1サブ画素、第2サブ画素、及び第3サブ画素をそれぞれ形成するための第1開口、第2開口、及び第3開口の1又は2の開口パターンを形成する工程と、前記支持基板と前記樹脂フィルムとの接合部にレーザ光の照射後、前記樹脂フィルムと前記金属支持層とを前記支持基板から剥離する工程と、を備え、前記金属支持層の前記第4開口を、前記樹脂フィルムの前記第1開口、前記第2開口、及び前記第3開口のいずれも包含し得るように形成する、ことを特徴としている。
【0074】
本発明の態様6の構成によると、第1〜第3のいずれのサブ画素を形成するための蒸着マスクにおいても、金属支持層を共通化することができるので、樹脂フィルムと金属支持層とを支持基板から剥離する際に、これらのいずれのサブ画素を形成するための蒸着マスクであっても、レーザ光の照射条件をその都度変える必要がなく、これらを画一的な作業で製造することができる。
【0075】
本発明の態様7に係る蒸着マスクの製造方法では、上記態様6において、前記樹脂フィルムの形成を、前記支持基板の上に液状樹脂を滴下した後、焼成して前記樹脂フィルムと前記支持基板との間に短波長光吸収層を形成することで行ってよい。
【0076】
本発明の態様7の構成によると、樹脂フィルムと支持基板との間に短波長光吸収層を形成しているので、レーザ光の照射によって樹脂フィルムと金属支持層とを支持基板から容易に剥離することができる。
【0077】
本発明の態様8に係る蒸着マスクの製造方法では、上記態様6又は7において、前記金属支持層の形成を、前記樹脂フィルムの上に金属層を形成した後、該金属層をパターニングして前記第4開口の開口パターンを形成することで行ってもよい。
【0078】
本発明の態様8の構成によると、第1〜第3のいずれのサブ画素を形成するための蒸着マスクにおいても、金属層をパターニングする際のレジスト膜などの形状を共通化することができるので、1組の蒸着マスクを画一的な作業で製造することができる。
【0079】
本発明の態様9に係る蒸着マスクの製造方法では、上記態様6又は7において、前記金属支持層の形成を、前記第4開口の開口パターンを形成した金属箔を前記樹脂フィルムに貼付することで行ってもよい。
【0080】
本発明の態様9の構成によると、第1〜第3のサブ画素を形成するための蒸着マスクに共通する金属支持層を予め作製しておいて、これらの蒸着マスクの樹脂フィルムに共通する金属支持層を貼付することができるので、1組の蒸着マスクを画一的な作業で製造することができる。
【0081】
本発明の態様10に係る蒸着マスクの製造方法では、上記態様6〜9のいずれか1態様において、前記第1開口、前記第2開口、及び前記第3開口の形成を、レーザ用マスクの開口を介してレーザ光を照射することによって行ってもよい。
【0082】
本発明の態様10の構成によると、第1開口、第2開口、及び第3開口の1又は2の開口パターンを形成する工程を一括して形成することができる。
【0083】
本発明の態様11に係る有機EL表示装置の製造方法は、装置基板上にTFT及び第1電極を少なくとも形成する工程と、前記装置基板の表面に上記態様1〜5のいずれか1態様に記載の蒸着マスクを用いて有機材料を蒸着することによって有機層の積層膜を形成する工程と、前記積層膜の上に第2電極を形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0084】
本発明の態様11の構成によると、上記態様1〜5のいずれかの蒸着マスクを用いて有機層の積層膜を形成するので、有機層の積層膜を効率的に作製することができる。