(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧電素子の他方の面を被覆し、他方の面から入射される音の一方の面への透過を実質的に阻止する音遮断シートをさらに備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の楽器用ピックアップ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0018】
〔第一実施形態〕
[センサーユニット]
図1の当該センサーユニット1は、多孔質層を有するシート状の圧電素子2を備えるセンサーユニットである。当該センサーユニット1は、圧電素子2の一方の面を被覆し、一方の面から入射される音を他方の面へ透過する第1音伝搬シート3aと、圧電素子2の他方の面を被覆し、他方の面から入射される音を一方の面へ透過する第2音伝搬シート3bとをさらに備える。
【0019】
<圧電素子>
圧電素子2は、板状で平面視略矩形状に形成されている。この圧電素子2は、
図2に示すように、多孔質層4と、一対の電極層(第1電極層5a及び第2電極層5b)とを有する。圧電素子2は、多孔質層4の圧縮量に対応して電圧を生じさせる。
【0020】
(多孔質層)
多孔質層4を形成する主成分としては、帯電できるものが好ましく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン系、フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
【0021】
また、多孔質層4は、一般的にはこれらの合成樹脂を主成分とする板状体に分極処理を施して形成される。かかる分極処理方法としては、例えば直流又はパルス状の高電圧を付加して電荷を注入する方法、γ線や電子線等の電離性放射線を照射して電荷を注入する方法、コロナ放電処理によって電荷を注入する方法等が挙げられる。
【0022】
多孔質層4の平均厚さの下限としては、30μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、多孔質層4の平均厚さの上限としては、150μmが好ましく、100μmがより好ましい。多孔質層4の平均厚さが前記下限に満たないと、強度の低下により加工性が低下するおそれがある。逆に、多孔質層4の厚さが前記上限を超えると、分極処理効率が低下するおそれがある。
【0023】
多孔質層4の厚さ方向に垂直な方向の弾性率の下限としては、1GPaが好ましく、1.5GPaがより好ましい。一方、厚さ方向に垂直な方向の弾性率の上限としては、3GPaが好ましく、2.5GPaがより好ましい。厚さ方向に垂直な方向の弾性率が前記下限に満たないと、厚さ方向に垂直な方向への歪みが大きくなり、振動の検出精度が低下するおそれがある。逆に、厚さ方向に垂直な方向の弾性率が前記上限を超えると、多孔質層4が第1電極層5a及び第2電極層5bの伸縮に追随し難くなり、第1電極層5a及び第2電極層5bが多孔質層4から剥離し易くなるおそれがある。なお、「弾性率」とは、JIS−K7161(2014)に準拠して測定される値である。
【0024】
多孔質層4の厚さ方向の弾性率の下限としては、0.1MPaが好ましく、0.3MPaがより好ましい。一方、厚さ方向の弾性率の上限としては、10MPaが好ましく、2MPaがより好ましい。厚さ方向の弾性率が前記下限に満たないと、振動の検出誤差が大きくなるおそれがある。逆に、厚さ方向の弾性率が前記上限を超えると、微小な振動が検出され難くなるおそれがある。
【0025】
多孔質層4の密度の下限としては、0.2g/cm
3が好ましく、0.4g/cm
3がより好ましい。一方、多孔質層4の密度の上限としては、0.8g/cm
3が好ましく、0.6g/cm
3がより好ましい。多孔質層4の密度が前記下限に満たないと、多孔質層4の強度が低下するおそれがある。逆に、多孔質層4の密度が前記上限を超えると、多孔質層4が十分に変形せず、振動の検出精度が低下するおそれがある。
【0026】
多孔質層4は、複数の空孔6を有する。空孔6の形状及びサイズは特に限定されないが、空孔6の平均高さの下限としては、例えば1μmが好ましく、3μmがより好ましい。一方、空孔6の平均高さの上限としては、例えば30μmが好ましく、15μmがより好ましい。空孔6の平均高さが前記下限に満たないと、多孔質層4が十分に変形しないおそれがある。逆に、空孔6の平均高さが前記上限を超えると、多孔質層4の強度が低下するおそれがある。なお、空孔6の平均高さは、多孔質層4の厚さ方向の任意の断面における任意の20個の空孔の厚さ方向の最大長さを測定し、その相加平均値によって算出された値をいう。
【0027】
多孔質層4の空孔率の下限としては、20%が好ましく、30%がより好ましい。一方、多孔質層4の空孔率の上限としては、80%が好ましく、70%がより好ましい。多孔質層4の空孔率が前記下限に満たないと、多孔質層4が十分に変形せず、十分な検出精度が得られないおそれがある。逆に、多孔質層4の空孔率が前記上限を超えると、多孔質層4の強度が低下するおそれがある。なお、「空孔率」とは、単位体積当たりの空孔の占める割合をいい、空孔率ε(%)は、例えば質量W(g)と、多孔質層4の見かけの体積V(cm
3)と、真密度ρ(g/cm
3)とから、下記式(1)により求めることができる。ここで、前記真密度ρは、1kg/cm
2の荷重による200℃の熱プレスで5分間加熱した後、冷却プレスで冷却した時の体積V
0(cm
3)から、下記式(2)により求めることができる。さらに、下記式(2)を下記式(1)に代入することで、前記空孔率εは下記式(3)により求めることが可能である。
ε=(1−W/ρV)×100 ・・・(1)
ρ=W/V
0 ・・・(2)
ε=1−V
0/V ・・・(3)
【0028】
(電極層)
第1電極層5a及び第2電極層5bは、多孔質層4の両面に積層される。第1電極層5a及び第2電極層5bは、リード線(図示せず)に接続され、このリード線は出力端子(図示せず)に接続される。
【0029】
第1電極層5a及び第2電極層5bの形成材料としては、導電性を有する限り特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム、銀等の各種金属やこれらの金属の合金、カーボン等が挙げられる。
【0030】
第1電極層5a及び第2電極層5bの平均厚さとしては、特に限定されないが、例えば0.1μm以上30μm以下とすることができる。第1電極層5a及び第2電極層5bの平均厚さが前記下限に満たないと、第1電極層5a又は第2電極層5bに断裂等の破損が発生するおそれがある。逆に、第1電極層5a及び第2電極層5bの平均厚さが前記上限を超えると、振動を的確に検出できないおそれがある。
【0031】
第1電極層5a及び第2電極層5bの多孔質層4への積層方法としては、特に限定されず、例えばアルミニウムの蒸着、カーボン導電インクによる印刷、銀ペーストの塗布乾燥等が挙げられる。
【0032】
多孔質層4は内部に空孔を有していて柔らかく傷が付きやすい。また、多孔質層4の表面に形成される電極層5も柔らかいため傷が付きやすい。そのため、これらから形成される圧電素子2は傷を防ぐためにシートで覆う必要がある。そこで、圧電素子2によって音を検出できるよう圧電素子2を音伝搬シートで覆う。
【0033】
<音伝搬シート>
第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bは、同質の素材で形成され、平面視で圧電素子2の外周で囲まれる範囲を包含するサイズを有する略矩形状のシートである。第1音伝搬シート3aは圧電素子2の一方の面を被覆し、第2音伝搬シート3bは圧電素子2の他方の面を被覆する。これらの第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bは、平面視で外周が略一致するよう配設され、周縁で互いに固定されている。従って、圧電素子2は、第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bで囲まれている。なお、第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bの固定方法は、特に限定されず、例えば接着剤や粘着剤を用いる固定方法であってもよいし、ステープラーのようなピンの刺し込みによる固定方法であってもよいし、縫製による固定方法であってもよい。
【0034】
当該センサーユニット1は、第2音伝搬シート3bの他方の面が、振動の検出対象である楽器などの振動体Pの表面に当接するよう配設される。また、第1音伝搬シート3aは、一方の面側から入射される音を他方の面側に透過するので、当該センサーユニット1は、このように配設されることにより、主に第1音伝搬シート3aを伝搬する空間の音を検出すると共に、第2音伝搬シート3bを伝搬する振動体Pの振動を検出する。
【0035】
第1音伝搬シート3aへの入射音と透過音との音圧レベルの差の上限としては、10dBが好ましく、5dBがさらに好ましい。一方、前記音圧レベルの差の下限としては、1dBが好ましく、2dBがさらに好ましい。前記音圧レベルの差が前記上限を超えると、圧電素子2へ伝搬する音の音圧レベルが小さくなり過ぎ、圧電素子2によって音が検出され難くなるおそれがある。逆に、前記音圧レベルの差が前記下限に満たないと、第1音伝搬シート3aによる圧電素子2の保護効果を維持することが困難となるおそれがある。なお、前記音圧レベルの差は、例えば第1音伝搬シート3aが圧電素子2を被覆した状態と、当該センサーユニット1から第1音伝搬シート3aを除去した状態とでそれぞれ信号音を各センサーユニット1の圧電素子2で検出させ、これらの検出された信号音の差から、相対的に第1音伝搬シート3aへの入射音と透過音との音圧レベルの差を求めることができる。つまり、第1音伝搬シート3aが圧電素子2を被覆した状態で検出した透過音の信号レベルと、当該センサーユニット1から第1音伝搬シート3aを除去した状態で検出した入射音の信号レベルとを比較することで、相対的に音圧レベルの差を求めることができる。具体的には、例えば無響室の中に上述の二種類のセンサーユニット及びスピーカを配置し、スピーカから音を発生させながら音圧レベルの差を測定する。この場合、上述の二種類のセンサーユニットの測定対象と反対側の面は、剛体又は吸音材で遮蔽しておくことが好ましい。音圧レベルの差を求めるための測定は、例えば100Hz以上5000Hz以下の周波数の音圧レベルについて行う。
【0036】
第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bの面密度の下限としては、0.03g/m
2が好ましく、1g/m
2がより好ましい。一方、前記面密度の上限としては、100g/m
2が好ましく、50g/m
2がより好ましい。前記面密度が前記下限に満たないと、第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bの強度が低下し、第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bによる圧電素子2の保護効果が十分に得られないおそれがある。逆に、前記面密度が前記上限を超えると、音が透過し難くなり、圧電素子2で音が検出され難くなるおそれがある。
【0037】
第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bは、一方の面から入射される音を他方の面へ透過させることができればよく、これらの形成材料は特に限定されない。これらの形成材料として、例えば樹脂、金属、無機材料、有機材料等を用いることができる。
【0038】
第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bの形成材料として樹脂を用いる場合、その形成材料の主成分としては、PET、PP、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。また、アルミニウム、ニッケル、白金のような金属膜を第1音伝搬シート3a又は第2音伝搬シート3bとして用いることもできる。ただ、金属膜によって音を伝搬させるには金属膜は薄膜でなければならないが、薄膜であると容易に破けてしまう。そのため、圧電素子2の表面に金属膜を例えば蒸着によって密着するように成膜するとよい。その場合、金属膜の膜厚が10nm程度であれば、音を伝搬することができる。音の検出効率を抑えてもよい場合には、金属膜の膜厚をさらに大きくすることも可能である。
【0039】
また、第1音伝搬シート3aが空隙を有するとよい。内部に空隙を有するシートは、一方の面側への入射音が空隙を経由して他方の面側へ伝搬されるため、圧電素子2へ音が伝搬し易くなり、圧電素子2が音を検出し易くなる。なお、第1音伝搬シート3aに形成される空隙は、厚さ方向に貫通していてもよい。このように、第1音伝搬シート3aに形成される空隙が厚さ方向に貫通していることによって、一方の面側への入射音を他方の面側へ伝搬させ易い。
【0040】
このような空隙を有するシートとして、例えば不織布、布帛、空隙を有する紙、多孔質シート等を用いることができる。前記多孔質シートとして、例えば多孔質層4と同質の素材のシートを用いてもよい。
【0041】
また、第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bは、可撓性を有することが好ましい。第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bが可撓性を有していると、圧電素子2の形状及び圧縮変形に対応して第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bが変形可能なため、圧電素子2を圧迫せずに被覆できるので、圧電素子2の耐久性を向上できる。また、第1音伝搬シート3aが可撓性を有することで、一方の面側への入射音による振動が圧電素子2へ伝搬し易くなり、圧電素子2による音の検出精度が向上し易い。
【0042】
なお、圧電素子2の両面は、第1音伝搬シート3aの他方の面及び第2音伝搬シート3bの一方の面に固定されてもよいし、固定されなくてもよい。圧電素子2が第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bに固定されない場合、圧電素子2が第1音伝搬シート3a又は第2音伝搬シート3bと共に歪むことがないので、圧電素子2がより精度よく音及び振動を検出し易い。なお、圧電素子2の両面を第1音伝搬シート3a又は第2音伝搬シート3に固定する場合の固定方法は、特に限定されず、例えば接着剤や粘着剤を用いる固定方法であってもよいし、圧電素子2の面と第1音伝搬シート3a又は第2音伝搬シート3の面との間の摩擦力による固定方法であってもよい。
【0043】
また、
図1では、第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bが、平面視での周縁で互いに固定されることとしたが、第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bが、一体の音伝搬シートであってもよい。例えば、第1音伝搬シート3a及び第2音伝搬シート3bが1つの袋状の音伝搬シートとして形成されてもよい。
【0044】
<利点>
当該センサーユニット1は、第1音伝搬シート3aが圧電素子2の一方の面を被覆するので、音を検出する圧電素子2の一方の面が傷つかないよう保護でき、その結果、音の検出精度を維持できる。また、当該センサーユニット1は、圧電素子2の一方の面を被覆する第1音伝搬シート3aが一方の面側から入射される音を他方の面側へ透過させるので、当該センサーユニット1の一方の面側から入射する音が第1音伝搬シート3aによって低減され難く、振動体Pの振動と共に一方の面側からの音を検出できる。従って、当該センサーユニット1は、楽器のピックアップとして用いることで、楽器本来の音色を再現し易くできる。
【0045】
また、当該センサーユニット1は、第2音伝搬シート3bが圧電素子2の他方の面を被覆するので、他方の面側から入射する音も検出できると共に、振動体Pへの設置時等における圧電素子2の他方の面への傷つきを防止できる。
【0046】
〔第二実施形態〕
図3の当該センサーユニット11は、圧電素子2の一方の面を被覆するよう音伝搬シート13が配設される。当該センサーユニット11は、圧電素子2と振動体Pとの間には音伝搬シートが配設されず、圧電素子2の他方の面が直接振動体Pの表面に当接するよう配設される。なお、
図3の当該センサーユニット11の圧電素子2は、
図1のセンサーユニット1の圧電素子2と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
<音伝搬シート>
音伝搬シート13として、
図1のセンサーユニット1の第1音伝搬シート3aと同質のものを用いることができる。音伝搬シート13は、
図3に示すように圧電素子2の一方の面全体を被覆するよう圧電素子2の一方の面に固定されている。これにより、圧電素子2への傷つきが防止できる。また、音伝搬シート13は一方の面側から入射される音を他方の面側に透過するので、圧電素子2は一方の面側からの音を検出できる。なお、音伝搬シート13の圧電素子2への固定方法は特に限定されず、例えば音伝搬シート13は、接着剤や粘着剤を用いて圧電素子2の一方の面に固定される。
【0048】
次に、
図4に本実施形態の他の構成の当該センサーユニット12を示す。当該センサーユニット12の音伝搬シート14は、平面視で圧電素子2の外周で囲まれる範囲を包含するサイズを有し、圧電素子2の一方の面を被覆すると共に、周縁が振動体Pの表面に固定される。このように、音伝搬シート14は振動体Pの表面に固定されるので、圧電素子2の一方の面は、音伝搬シート14の他方の面と固定されなくてもよい。圧電素子2の一方の面を音伝搬シート14の他方の面に固定しないことにより、圧電素子2が音伝搬シート14の伸縮に伴って歪むことがなく、圧電素子2が精度よく音を検出できる。
【0049】
また、
図4の当該センサーユニット12は、圧電素子2の他方の面が振動体Pの表面に固定されなくてもよい。圧電素子2が振動体Pに固定されないと、圧電素子2が振動体Pの伸縮に伴って歪むことがなく、圧電素子2が精度よく振動体Pの振動を検出できる。
【0050】
<利点>
当該センサーユニット11及びセンサーユニット12は、圧電素子2の他方の面が直接振動体Pの表面に当接しているので、振動体Pの振動をより精度よく検出することができる。
【0051】
〔第三実施形態〕
図5の当該センサーユニット21は、多孔質層を有するシート状の圧電素子2を備えるセンサーユニットである。当該センサーユニット21は、圧電素子2の一方の面を被覆し、一方の面側から入射される音を他方の面側へ透過する第1音伝搬シート3aと、圧電素子2の他方の面を被覆し、他方の面から入射される音の一方の面への透過を実質的に阻止する音遮断シート27とをさらに備える。なお、
図5の当該センサーユニット21の第1音伝搬シート3a及び圧電素子2は、
図1のセンサーユニット1の第1音伝搬シート3a及び圧電素子2と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
<音遮断シート>
音遮断シート27は、平面視で圧電素子2の外周で囲まれる範囲を包含するサイズを有する略矩形状のシートであり、例えば金属板等の剛体を用いることができる。音遮断シート27は、他方の面が振動体Pの表面に固定され、一方の面が圧電素子2の他方の面と当接するよう配設される。また、圧電素子2の一方の面を被覆する第1音伝搬シート3aの周縁が、音遮断シート27の一方の面の周縁に固定される。
【0053】
音遮断シート27は、他方の面から入射される音の一方の面への透過を実質的に阻止する。これにより、振動体P側から伝搬する音が大幅に低減されるため、一方の面側すなわち空間側からの音を優先的に圧電素子2に検出させることができるので、圧電素子2で空間側からの音をより精度よく検出させることができる。
【0054】
音遮断シート27への入射音と透過音との音圧レベルの差の下限としては、50dBが好ましく、60dBがさらに好ましい。一方、前記音圧レベルの差の上限としては、100dBが好ましく、90dBがさらに好ましい。前記音圧レベルの差が前記下限に満たないと、振動体P側からの音が圧電素子2で検出され易くなり、空間側からの音の検出精度が低下するおそれがある。逆に、前記音圧レベルの差が前記上限を超えると、音遮断シート27の厚さを大きくしなければならず、当該センサーユニット21が不要に大型となるおそれがある。
【0055】
音遮断シート27の面密度の下限としては、500g/m
2が好ましく、600g/m
2がより好ましい。一方、前記面密度の上限としては、2000g/m
2が好ましく、1500g/m
2がより好ましい。前記面密度が前記下限に満たないと、振動体P側からの音を十分に遮断できなくなり、空間側からの音の検出精度が低下するおそれがある。逆に、前記面密度が前記上限を超えると、当該センサーユニット21の厚さが大きくなり過ぎ、不要に大型となるおそれがある。
【0056】
なお、
図5の当該センサーユニット21を裏返して振動体Pの表面に配設してもよい。すなわち、第1音伝搬シート3aの圧電素子2と反対側の面を振動体Pの表面に固定させ、音遮断シート27が空間側となるよう配設してもよい。音遮断シート27の質量が比較的大きい場合、当該センサーユニット21をこのように配設すると、音遮断シート27が錘となり、振動体Pからの振動が圧電素子2に伝搬し易くなる。従って、振動体Pからの振動を優先的に検出させる場合には、当該センサーユニット21をこのように配設することで、振動体Pからの振動をより精度よく検出させることができる。
【0057】
<利点>
当該センサーユニット21は、音遮断シート27により他方の面側からの透過音を低減できるので、一方の面側からの入射音をより精度よく検出することができる。
【0058】
〔第四実施形態〕
図6の当該センサーユニット31は、多孔質層を有するシート状の圧電素子2を備えるセンサーユニットである。当該センサーユニット31は、圧電素子2の両面を被覆し、外側の面から入射される音を圧電素子2側の面へ透過する音伝搬シート33をさらに備える。なお、
図6の当該センサーユニット31の圧電素子2は、
図1のセンサーユニット1の圧電素子2と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
<音伝搬シート>
音伝搬シート33は、例えば略矩形状のシートであり、平面視で圧電素子2の平面積の2倍以上のサイズを有する。音伝搬シート33は、半分に折り返され、折り返したときの内面に圧電素子2の両面全体が当接するように配設される。これにより、圧電素子2の両面が音伝搬シート33で被覆される。このように両面が音伝搬シート33で被覆された圧電素子2は、1つの端縁が振動体Pの表面に当接するよう配設される。また、折り返された音伝搬シート33の両端は、圧電素子2に対し外側に折り曲げられて振動体Pの表面に固定される。このように、音伝搬シート33の両端部が振動体Pの表面に固定されることにより、当該センサーユニット31が振動体Pに固定される。また、当該センサーユニット31は、圧電素子2の厚さ方向が振動体Pの表面と略平行となるよう振動体Pに固定される。なお、音伝搬シート33として、
図1のセンサーユニット1の第1音伝搬シート3aと同質のものを用いることができる。
【0060】
当該センサーユニット31は、圧電素子2の厚さ方向が振動体Pの表面と略平行となるよう配設されるので、圧電素子2の両面は、いずれも音伝搬シート33を介して空間に面する。従って、空間からの音が音伝搬シート33を透過して、圧電素子2の両面で検出される。当該センサーユニット31は、このように圧電素子2の両面で空間からの音を検出できるため、空間の音をより精度よく検出することができる。
【0061】
<利点>
当該センサーユニット31は、圧電素子2の両面で空間からの音を精度よく検出できるので、マイク等に組み込むセンサーとして好適に用いることができる。
【0062】
[センサーユニットの取り付け構成]
次に、当該センサーユニットの振動体Pへの取り付け構成について説明する。なお、当該センサーユニットの取り付け構成を示す
図7〜
図19では、センサーユニットとして
図1、
図3又は
図5のセンサーユニットと同様の構成のものを用いることができる。
【0063】
<取り付け構成1>
図7に示す構成では、振動体Pの表面に、非振動伝達材48及び振動伝達材49が配設される。非振動伝達材48及び振動伝達材49は、共に略直方体であり、下面が振動体Pの表面に当接し、かつ側面同士が当接するよう配設される。当該センサーユニット1は、一方の面が空間に面し、他方の面が、非振動伝達材48及び振動伝達材49の上面と当接するよう配設される。非振動伝達材48及び振動伝達材49の高さ(上面と下面との距離)は略同じであり、非振動伝達材48の上面と振動伝達材49の上面とは略面一である。
【0064】
(非振動伝達材)
非振動伝達材48は、振動体Pの振動を伝搬させ難い部材である。非振動伝達材48を形成する材質として、有機材料、無機材料等から構成されるゲルやスポンジ等を用いることができる。
【0065】
(振動伝達材)
振動伝達材49は、振動体Pの振動を伝搬させ易い部材である。振動伝達材49を形成する材料として、例えば木材、セラミックス、金属等を用いることができ、振動伝達材49として、これらの材料で形成された剛体、すなわち空孔を有さずこれらの材料を密集させて形成したもの等を用いることができる。また、振動伝達材49として、振動体Pと同質の素材のものを用いてもよい。従って、振動体Pの表面に凸部を形成させ、その凸部を振動伝達材として使用してもよい。
【0066】
当該センサーユニット1の圧電素子は、当該センサーユニット1の他方の面が非振動伝達材48の上面と当接する領域では、振動体Pの振動が伝搬され難いので、空間からの音が優先的に検出される。一方、前記圧電素子は、当該センサーユニット1の他方の面が振動伝達材49の上面と当接する領域では、振動体Pの振動が伝搬され易いので、振動体Pの振動が優先的に検出される。従って、非振動伝達材48及び振動伝達材49の平面視でのサイズを調整する等により、当該センサーユニット1と、非振動伝達材48及び振動伝達材49のそれぞれとの接触面積を調整することで、圧電素子により検出させる音と振動の割合を調整することができる。これにより、例えば当該センサーユニット1をピックアップで利用する電子楽器の音色を調節することができる。
【0067】
<取り付け構成2>
図8に示す構成では、
図7の構成に加えて、当該センサーユニット1の一方の面のうち、平面視で振動伝達材49の上面に重複する領域にシート状の空気振動遮断材47が配設される。なお、空気振動遮断材47は、平面視で振動伝達材49の上面に重複する全領域に配設されると共に、平面視で非振動伝達材48の上面に重複する領域には配設されていないことが好ましい。
【0068】
(空気振動遮断材)
空気振動遮断材47は、空気振動を伝搬させ難く、固体からの振動を伝搬させ易い部材である。つまり、空気振動遮断材47が
図8のように配設されることにより、空気振動遮断材47が当接する当該センサーユニット1の一方の面の領域への空間からの音の伝搬が抑制される。空気振動遮断材47として、例えば金属板等を用いることができる。
【0069】
平面視で振動伝達材49の上面に重複し、振動体Pの振動を優先的に検出させる領域では、空気振動遮断材47により空間からの音の検出がより確実に抑制されると共に、空気振動遮断材47が錘として機能するため、圧電素子がより精度よく振動体Pの振動を検出することができる。
【0070】
<取り付け構成3>
図9に示す構成では、
図7の構成において、センサーユニット1に代えてセンサーユニット41が配設される。センサーユニット41は、シート状であり、例えばセンサーユニット1の一端から他端にかけての一部に、略平行に谷折り、山折り及び谷折りの折曲げをこの順に形成したものである。センサーユニット41は、前記山折りにより突出している面を一方の面とし、他方の面が非振動伝達材48の上面及び振動伝達材49の上面に当接するよう配設される。また、センサーユニット41は、前記山折りの稜線が、平面視で非振動伝達材48及び振動伝達材49の境界に重複するよう配設される。
【0071】
センサーユニット41をこのように配設することで、振動伝達材49によって伝搬される振動が非振動伝達材48へ伝搬することを抑制でき、より精度よく音を検出させることができる。
【0072】
<取り付け構成4>
図10に示す構成では、
図7の構成において、非振動伝達材48に代えて、非振動伝達材48よりも高さが大きい略直方体形状の非振動伝達材58が配設される。また、
図7の構成のセンサーユニット1に代えて、振動伝達材49の上面及び非振動伝達材58の上面に当接する形状のセンサーユニット51が配設される。センサーユニット51は、シート状であり、例えば隣接して配設される振動伝達材49の上面及び非振動伝達材58の上面に他方の面が当接するようセンサーユニット1に折曲げを形成したものである。
【0073】
このように非振動伝達材58の高さを大きくすることで、非振動伝達材58に当接するセンサーユニット51の他方の面の部分への振動体Pの振動の伝搬がさらに抑制される。これにより、非振動伝達材58の上面に対応する圧電素子の領域での音の検出精度をより向上させることができる。
【0074】
<取り付け構成5>
図11に示す構成では、
図7の構成において、振動伝達材49に代えて、略三角柱形状の振動伝達材69が配設される。振動伝達材69は、横断面が略直角三角形であり、横断面での直角を挟む2つの面が、振動体Pの表面及び非振動伝達材48の側面に当接するよう配設される。非振動伝達材48の側面に当接する振動伝達材69の側面の高さは、非振動伝達材48の高さと略同じである。
【0075】
また、
図7のセンサーユニット1に代えて、非振動伝達材48の上面及び振動伝達材69の斜面に当接する形状のセンサーユニット61が配設される。センサーユニット61は、シート状であり、例えば隣接して配設される非振動伝達材48の上面及び振動伝達材69の斜面に他方の面が当接するようセンサーユニット1に折曲げを形成したものである。
【0076】
このように振動体Pの表面に対して傾斜した斜面を有する振動伝達材69を用いることで、センサーユニット61の他方の面のうち、振動を検出させる領域と振動体Pの表面との距離を小さくできる。これにより、振動体Pの振動をより精度よく検出させることができる。
【0077】
<取り付け構成6>
図12に示す構成では、
図11の構成において、非振動伝達材48に代えて、横断面が略台形である略四角柱形状の非振動伝達材78が配設される。非振動伝達材78の横断面は、2つの内角が直角であり、長さの異なる底辺を有する台形である。非振動伝達材78は、横断面での直角が形成される頂点を含む面を下面として、この下面が振動体Pの表面に当接するよう配設される。また、非振動伝達材78は、横断面での台形の短い方の底辺を含む側面が振動伝達材69の側面と当接するよう配設される。振動伝達材69の側面に当接する非振動伝達材78の側面の高さは、振動伝達材69の側面の高さと略同じであり、非振動伝達材78の上面の傾斜角度は、振動伝達材69の斜面の傾斜角度と略同じである。従って、非振動伝達材78の上面と振動伝達材69の斜面とは、略面一となる。
【0078】
また、
図11のセンサーユニット61に代えて、非振動伝達材78の上面及び振動伝達材69の斜面に当接する形状のセンサーユニット71が配設される。センサーユニット71は、両面が平面の平板状である。
【0079】
このように、非振動伝達材78の上面と振動伝達材69の斜面とが略面一となるような非振動伝達材78及び振動伝達材69を用いることで、平板状のセンサーユニット71の他方の面を非振動伝達材78の上面及び振動伝達材69の斜面の両方に当接させることができる。これにより、振動体Pの振動を精度よく検出させると共に、センサーユニット71の折り曲げ加工等が必要なく、センサーユニット71を容易に形成できる。
【0080】
<取り付け構成7>
図13に示す構成では、
図7の構成において、非振動伝達材48及び振動伝達材49が間隔を開けて配設される。つまり、
図13に示す構成では、非振動伝達材48及び振動伝達材49の間に空隙が形成される。これにより、
図13に示す構成では、センサーユニット1の下面は、非振動伝達材48の上面が当接する部分と、振動伝達材49の上面が当接する部分と、これらの部材の間において空間に面する部分とを有する。その結果、センサーユニット1は、平面視において、非振動伝達材48の上面に重複する領域と、振動伝達材49の上面に重複する領域と、これらの部材の間において空中に位置する領域とを有する。
【0081】
このように、非振動伝達材48及び振動伝達材49が間隔を開けて配設されることによって、非振動伝達材48及び振動伝達材49の干渉を無くすことができる。そのため、当該センサーユニット1の圧電素子は、平面視で非振動伝達材48の上面と重複する領域における音の検出精度、及び平面視で振動伝達材49の上面と重複する領域における振動体Pの振動の検出精度を共に向上することができる。
【0082】
<取り付け構成8>
図14に示す構成では、
図7の構成において、非振動伝達材48及び振動伝達材49が間隔を開けて配設され、かつ非振動伝達材48及び振動伝達材49の間に略直方体状の吸音材50が配設される。
図14に示す構成では、非振動伝達材48の一方の側面及び吸音材50の他方の側面が当接し、かつ吸音材50の一方の側面及び振動伝達材49の他方の側面が当接している。これにより、
図14に示す構成では、センサーユニット1の下面は、非振動伝達材48の上面が当接する部分と、吸音材50の上面が当接する部分と、振動伝達材49の上面が当接する部分とが一方向に連続して設けられる。その結果、センサーユニット1は、平面視において、非振動伝達材48の上面に重複する領域と、吸音材50の上面に重複する領域と、振動伝達材49の上面に重複する領域とが一方向に連続して設けられる。吸音材50の具体的構成としては、吸音性を有する種々の構成を採用可能であり、例えば不織布又は織布や、不織布又は織布を合成樹脂で被覆した部材等を用いることができる。
【0083】
このように、非振動伝達材48及び振動伝達材49の間に吸音材50が配設されることによって、非振動伝達材48及び振動伝達材49の干渉を低減することができる。そのため、当該センサーユニット1の圧電素子は、平面視で非振動伝達材48の上面と重複する領域における音の検出精度、及び平面視で振動伝達材49の上面と重複する領域における振動体Pの振動の検出精度を共に向上することができる。
【0084】
<取り付け構成9>
図15に示す構成では、
図7の構成において、非振動伝達材48及び振動伝達材49が間隔を開けて配設され、かつ非振動伝達材48及び振動伝達材49の間に略直方体状の緩衝材60が配設される。
図15に示す構成では、非振動伝達材48の一方の側面及び緩衝材60の他方の側面が当接し、かつ緩衝材60の一方の側面及び振動伝達材49の他方の側面が当接している。これにより、
図15に示す構成では、センサーユニット1の下面は、非振動伝達材48の上面が当接する部分と、緩衝材60の上面が当接する部分と、振動伝達材49の上面が当接する部分とが一方向に連続して設けられる。その結果、センサーユニット1は、平面視において、非振動伝達材48の上面に重複する領域と、緩衝材60の上面に重複する領域と、振動伝達材49の上面に重複する領域とが一方向に連続して設けられる。緩衝材60の具体的構成としては、例えば音及び振動を適度に伝搬可能であると共に、非振動伝達材48よりも音を伝搬させ難く、かつ振動伝達材49よりも振動を伝達し難い構成を採用することが可能であり、例えば発泡材に基づく複数の気孔を有する発泡部材を用いることができる。
【0085】
このように、非振動伝達材48及び振動伝達材49の間に緩衝材60が配設されることによって、当該センサーユニット1の圧電素子は、緩衝材60が音及び振動を共に適度に伝搬させることで、深みのある音及び振動を検出することができる。また、前記圧電素子は、緩衝材60の弾性、密度等の物性を調整することで、音及び振動の両方を所望の感度で検出することができる。
【0086】
<取り付け構成10>
図16に示す構成では、振動体Pの表面に、センサーユニット81a、非振動伝達材88a及びセンサーユニット81bがこの順に積層される。非振動伝達材88aは、平面視でセンサーユニット81a及びセンサーユニット81bの外周で囲まれる範囲を包含するサイズを有し、両面が平面のシート状の部材である。センサーユニット81a及びセンサーユニット81bは、例えば
図1のセンサーユニット1と同一形状のセンサーユニットである。非振動伝達材88aは、例えば
図7の非振動伝達材48と同質のものを用いることができる。
【0087】
非振動伝達材88aの他方の面に配設されるセンサーユニット81aは、振動体Pの表面に直接当接しており、主に振動体Pの振動を検出する。一方、非振動伝達材88aの一方の面に配設されるセンサーユニット81bは、非振動伝達材88aにより振動体Pの振動の伝搬が抑制されるので、空間の音を精度よく検出できる。従って、センサーユニット81aとセンサーユニット81bとの平面積の比率を調整することで、音と振動との検出割合を調整することができる。
【0088】
<取り付け構成11>
図17に示す構成では、
図16の構成におけるセンサーユニット81bを分割してセンサーユニット81c及びセンサーユニット81dとし、これら2つのセンサーユニット81b,81cが非振動伝達材88aの一方の面に配設される。
【0089】
このように、音を検出するセンサーユニットを分割して配設することで、音を検出させるセンサーユニットを選択できるので、音と振動との検出割合を容易に調整することができる。
【0090】
なお、
図17では、音を検出させるセンサーユニットを2つに分割する構成としたが、音を検出させるセンサーユニットを3つ以上に分割してもよい。また、振動を検出するセンサーユニット81aを分割して配設してもよい。
【0091】
<取り付け構成12>
図18に示す構成では、
図16の構成において、センサーユニット81aと非振動伝達材88aとの間に、さらに空気振動遮断材87が配設される。空気振動遮断材87は、平面視でセンサーユニット81aの外周で囲まれる範囲を包含するサイズを有し、両面が平面のシート状の部材であり、例えば金属板を用いることができる。
【0092】
このように空気振動遮断材87を配設することで、音が非振動伝達材88aを透過してセンサーユニット81aに伝搬することを抑制でき、センサーユニット81aでの振動体Pの振動の検出精度を向上させることができる。
【0093】
<取り付け構成13>
図19に示す構成では、
図16の構成において、センサーユニット81bの一方の面側に、さらに非振動伝達材88b及びセンサーユニット81eがこの順で配設される。センサーユニット81eは、例えばセンサーユニット81aと同一形状のセンサーユニットである。また、非振動伝達材88bは、例えば非振動伝達材88aと同一形状の非振動伝達材である。
【0094】
非振動伝達材88a及び非振動伝達材88bは、振動を伝搬し難いが音を伝搬し易いので、センサーユニット81bでは、振動体Pからの振動は検出され難く、空間からの音は検出され易い。従って、振動体Pの振動はセンサーユニット81aで検出され、空間からの音はセンサーユニット81b及びセンサーユニット81eで検出される。つまり、
図19の構成により、センサーユニットで音を検出するための面積を振動を検出するための面積より大きくでき、音の検出割合を大きくすることができる。
【0095】
さらに、非振動伝達材及びセンサーユニットの積層する数を多くすることで、音の検出割合をさらに大きくすることができる。
【0096】
なお、この場合、非振動伝達材としては、音を伝搬し易いものが好ましく、例えばスポンジのような連続する空孔を有する材料で形成したものが好ましい。
【0097】
[圧電素子の構成例]
次に、当該センサーユニットが備える圧電素子の構成例について説明する。
【0098】
矩形平面状の多孔質体を有する圧電素子を用いて音を検出させる場合、波長が圧電素子の幅よりも小さくなると、その波長は相殺されて検出できない。従って、面積の大きな圧電素子は、周波数が高域になると感度が低下する。しかし、3次モードのような奇数モードでは、
図20に示すように高域の周波数でも相殺されない波長が存在する。
【0099】
圧電素子の音を検知する面積を小さくすることで、より高域の周波数まで感度をフラットにできるが、この場合、静電容量が低下するため感度が低下する。この静電容量の低下は、圧電素子の表面積を大きくすることにより抑制できる。圧電素子を以下の構成とすることにより、表面積を大きくでき、高域の周波数まで感度よく音を検出させることができる。
【0100】
<構成例1>
図21Aの圧電素子92は、箱型に形成した圧電素子である。例えば、このように無蓋立方体形状の箱型の構成とすることで、圧電素子の表面積をシート状に形成した場合の約5倍に増加させることができ、静電容量の低下を抑制できる。
【0101】
図21Aの圧電素子92は、例えば
図21Bのような、平面視で1つの正方形を中心とし、この正方形の各辺を共通とする4つの正方形が連結した平板状の圧電素子を形成した後、この平板状の圧電素子を中心の正方形の4辺に沿って折り曲げることにより形成できる。
【0102】
<構成例2>
図22の圧電素子102は、シート状に形成した圧電素子102を複数の円柱状のスペーサ103の周面に沿って曲折させて構成したものである。圧電素子102は、具体的には、スペーサ103の周面で曲折された前後の圧電素子が略平行となるように複数のスペーサ103を略平行に配設し、これらの複数のスペーサ103にシート状の圧電素子を掛け渡すことにより形成される。例えば
図22の圧電素子102の場合、同一平面面積における圧電素子の表面積を約5倍に増加させることができる。
【0103】
<構成例3>
図23の圧電素子112は、シート状に形成した圧電素子112を複数箇所で折り曲げて、円柱状のスペーサ103で支持させて、蛇腹状にしたものである。圧電素子102は、具体的には、2つのスペーサ103間に蛇腹状に形成されたシート状の圧電素子を挿入することで圧電素子の形状を維持できる位置に複数のスペーサ103を略平行に配設しておき、蛇腹状に折り曲げたシート状の圧電素子をこれらの複数のスペーサ103間に挿入することで形成される。例えば
図23の圧電素子112の場合、同一平面面積における圧電素子の表面積を約6倍に増加させることができる。
【0105】
<弦楽器>
図24及び
図25の弦楽器121は、響板122を有する中空状のボディ123と、響板122の外面側に設けられ複数の弦124を支持するブリッジ125と、ブリッジ125の外面に設けられるサドル126と、ボディ123に連結され、響板122の一端側から延出するネック127と、ネック127の一端側に設けられるヘッド128とを主として備える。複数の弦124は、ヘッド128に設けられる複数のペグ129に一端側が巻きつけられて係止され、かつ他端側がサドル126を介してブリッジ125に支持された上、複数のピン130に係止されている。また、響板122は、ネック127の他端とブリッジ125との間に響孔131を有する。
【0106】
図25に示すように、響板122の内面には、複数の響棒132が付設されている。また、響板122の内面には、響板122を挟んでブリッジ125と対向する位置に配置されるプレート133と、響板122の強度を補強するための補強板134とが設けられている。
【0107】
当該弦楽器121は、
図1のセンサーユニット1を備える。当該センサーユニット1は、プレート133の内面に取り付けられている。つまり、当該弦楽器121は、プレート133が振動体Pとして構成され、この振動体Pの表面に当該センサーユニット1が配設されている。当該弦楽器121は、弦124の振動を当該センサーユニット121によって電気信号に変換して出力するエレクトリックアコースティックギターとして構成されている。
【0108】
<利点>
当該弦楽器121は、振動体Pの振動及びボディ123が複数の弦124の振動に共鳴することで生じる音を当該センサーユニット1によって検出することができるので、楽器本来の音色を電気信号に変換して出力することができる。
【0109】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0110】
例えば
図26に示すように、第二実施形態のセンサーユニット11を
図3とは異なる面が振動体Pの表面に当接するように配設してもよい。つまり、センサーユニット11の音伝搬シート13が振動体Pの表面に当接するよう配設してもよい。この場合、例えば圧電素子2の音伝搬シート13と反対側の面の電極層として強度の高い材料で形成したものを用いることで、多孔質層への傷つきを抑制しつつ、精度よく音を検出できる。
【0111】
また、第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態のセンサーユニットにおける振動体と反対側に配置される音伝搬シートは錘としての効果を有するので、これらの音伝搬シートの厚さ又は質量を調整することで圧電素子によって検出される特性を変化させることができる。さらに、センサーユニットの振動体と反対側に錘を配設してもよい。具体的には、センサーユニットの振動体と反対の面側に合成樹脂で形成されるシートを配設してもよいし、金属で形成されるシートや板等を配設してもよい。このようなシート状の錘を配設する場合、音を伝搬し易くするために錘に貫通孔を形成してもよい。また、センサーユニットと振動体との間にクッション層を配設してもよい。このようにクッション層を配設することで、振動体からセンサーユニットへ伝わる振動を低減することができ、音の検出割合を増加させることができる。
【0112】
当該センサーユニットは、必ずしもエレクトリックアコースティックギターに取り付けられる必要はない。当該センサーユニットは、例えばクラシックギター、ヴァイオリン、チェロ、マンドリン、ピアノ等種々の弦楽器に取り付けられてもよく、打楽器等の弦楽器以外の楽器に取り付けられてもよい。つまり、本発明に係る楽器は、必ずしも弦楽器である必要はなく、打楽器等として構成することも可能である。また、センサーユニットの取り付け箇所は、特に限定されるものではなく、楽器の任意の振動体に取付可能である。さらに、当該楽器に取り付けられるセンサーユニットは、
図1のセンサーユニット1に限定されるものではなく、前記実施形態における任意のセンサーユニットを用いることが可能である。
【0113】
当該センサーユニットは、楽器に取り付けられる楽器用ピックアップとして構成することもできるが、バウンダリーマイクロホン等の楽器以外の部材に用いられてもよい。