特許第6839955号(P6839955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839955
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/47 20060101AFI20210301BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20210301BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20210301BHJP
   A61F 13/476 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   A61F13/47 300
   A61F13/472 300
   A61F13/532 200
   A61F13/476
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-201504(P2016-201504)
(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公開番号】特開2018-61688(P2018-61688A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】益井 大和
(72)【発明者】
【氏名】奥田 富美子
(72)【発明者】
【氏名】木村 真由美
(72)【発明者】
【氏名】田中 聰
【審査官】 原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−144140(JP,A)
【文献】 特開2016−120195(JP,A)
【文献】 特開2012−071102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/47
A61F 13/472
A61F 13/476
A61F 13/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の前後方向に沿う縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有すると共に、表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に配置された吸収体を有し、着用者の背中寄りに配される後方部の両側部それぞれに後方フラップ部を有する吸収性物品であって、
前記後方部は、前記吸収体の厚み方向に切り込まれた、前記横方向に離間する複数のスリットを有し、かつ前記後方フラップ部における非肌対向面側にズレ止め部を有し、
前記ズレ止め部は、前記縦方向における位置が、前記スリットと重なっており、
前記後方フラップ部は、該後方フラップ部の前記縦方向に沿う両側縁部に、くびれ部を形成する一対の凹部を有しており、
前記縦方向において前記くびれ部は前記ズレ止め部よりも後方に形成されており
前記表面シートの肌対向面側に、前記表面シート及び前記吸収体が前記裏面シート側に向かって凹陥してなる溝を有しており、
前記溝は、前記後方部に、平面視において前記横方向の外方に向かって凸状の曲線をなす凸部を有し、該凸部の頂部と前記くびれ部を形成する前記凹部の内方端部との前記縦方向における距離が5.0mm以内である、吸収性物品。
【請求項2】
前記縦方向における前記ズレ止め部の後端部から前記くびれ部までの距離が、該後端部から前記吸収性物品の後端部までの距離に対し、25〜75%である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品は、前記表面シートの肌対向面において、前記縦方向の両側部それぞれに、一対のサイドシートを有し、
前記サイドシートと前記表面シートとは、外方に向いた凸部と内方に向いた凸部とが交互に繰り返される連続した波状の接合部により前記縦方向に沿って接合されており、
前記くびれ部は、前記縦方向における位置が、前記接合部の外方に向いた凸部と重なっている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナなどの女性用吸収性物品には、いわゆる夜用ナプキンとして、着用者の前後方向に沿う縦方向に長い吸収性物品が使用される。このような吸収性物品は、経血等の排泄物の漏れを防止するため、着用者の背中寄りに配される後方部にフラップ部を有することが知られている。また、着用者の身体形状に沿うように変形し、着用者の肌にフィット性良く密着することが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の吸収性物品は、排泄口当接領域の中心を含む中央領域よりも後方において、前記本体部の幅方向外縁から幅方向外側に突出するヒップフラップ部と、を備え、ヒップフラップ部は、非肌当接面側にサイド粘着部を備え、ヒップフラップ部は、第1くびれ部と、前記第1くびれ部よりも後方に位置し、前記第1くびれ部よりも幅方向外側に突出すると共に、ヒップフラップ部の幅が最大となる部分を含む第1フラップ部と、第1くびれ部よりも前方に位置し、前記第1くびれ部よりも幅方向外側に突出する第2フラップ部とを備え、サイド粘着部は、前記第1フラップ部の非肌当接面側に配置される。特許文献1によれば、中央領域の幅方向外側から内側に向かって力がかかった際のヒップフラップ部の固定状態を改善するとされている。
【0004】
また特許文献2には、本体部分の両側部に夫々、吸収体が介在しないフラップ部を有し、展開状態において、幅方向折り線位置に対応する領域の両側縁間の幅方向長さが、その前後領域の幅方向長さより相対的に小さくなるように形成されていることを特徴とする吸収性物品が記載されている。特許文献2によると、吸収性物品を折り畳んで個装状態としたときに、幅方向折り線位置におけるフラップ部がダボついてシワが形成されることが大幅に軽減され、このため開封後にフラップ部を展開してもフラップ部に折り癖やシワが残らず、違和感なく装着することができるようになるとされている。
【0005】
さらに、本出願人は、先に、吸収体の排泄部対向部における中央部に、縦スリットが分散して形成された中央スリット領域と、吸収体の後方部に、横方向に延びる後方スリットが縦方向に間欠的に配されて形成された後方スリット領域とを有する吸収性物品を提案した(特許文献3)。特許文献3に記載の吸収性物品によれば、深い折れ皺やヨレが発生し難く、フィット性が向上し、着用感が向上する。尚、縦方向は吸収性物品の着用者の前後方向に対応する方向、横方向は該縦方向に直交する方向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−36832号公報
【特許文献2】特開2010−82061号公報
【特許文献3】特開2015−23999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いわゆる夜用ナプキンのような縦方向に長い吸収性物品は、着用者の肌への密着性が求められているが、その他に吸収性物品が縦方向に長ければ長いほど、フラップ部の皺及びめくれが発生しやすくなるという問題がある。特許文献1、2及び3には、着用者の肌への密着性を向上させると共に、フラップ部の皺及びめくれの発生を抑制するための解決方法は記載されていない。
【0008】
本発明の課題は、着用者の肌への密着性を向上させると共に、フラップ部の皺及びめくれの発生を抑制し得る吸収性物品を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、着用者の前後方向に沿う縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有すると共に、表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に配置された吸収体を有し、着用者の背中寄りに配される後方部の両側部それぞれに後方フラップ部を有する吸収性物品であって、前記後方部は、前記吸収体の厚み方向に切り込まれた、横方向に離間する複数のスリットを有しており、かつ前記後方フラップ部における非肌対向面側にズレ止め部を有し、前記ズレ止め部は、縦方向における位置が、前記スリットと重なっており、前記後方フラップ部は、該後方フラップ部の縦方向に沿う両側縁部に、くびれ部を形成する一対の凹部を有し、縦方向において前記くびれ部は前記ズレ止め部よりも後方に形成されている、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、着用者の肌への密着性を向上させると共に、フラップ部の皺及びめくれの発生を抑制し得る吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンの肌対向面側(表面シート側)を模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1におけるくびれ部、接合部及び溝の位置関係を示す拡大模式図である。
図3図3は、図1のI−I線断面を模式的に示す横断面図である。
図4図4は、図1のII−II線断面を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の吸収性物品をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1図4には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に沿い、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有すると共に、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を含む中間部Mと、該中間部Mより着用者の腹側即ち前側に配される前方部Fと、該中間部Mより着用者の背側即ち後側に配される後方部Rとを有する。中間部Mは、その横方向Yの中央部に、着用者の排泄部(膣口等)が対向配置される部分である。
【0013】
ナプキン1は、図1に示すように、縦方向に長い形状の吸収性本体10と、吸収性本体10における中間部Mの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部10W,10Wとを有している。本発明の吸収性物品における中間部Mは、ナプキン1のように吸収性物品がウイング部を有する場合には、該吸収性物品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域を意味し、ナプキン1を例にとれば、一方のウイング部10Wの縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部10Wの縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域である。また、ウイング部を有しない吸収性物品における中間部Mは、吸収性物品が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向(幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折り畳み線について、該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折り畳み線と第2折り畳み線とに囲まれた領域を意味する。図1中符号CFLで示す「中央折り畳み線」は、ここでいう第2折り畳み線に相当する。
【0014】
ナプキン1は、液保持性の吸収体4及び該吸収体4の肌対向面側に配置された表面シート2を具備する。より具体的には、ナプキン1を構成する吸収性本体10は、肌対向面を形成する表面シート2、非肌対向面を形成する裏面シート3、及び両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する。吸収性本体10は、縦方向Xにおいて着用者の腹側から順に、前方部F、中間部M及び後方部Rの3つの領域に区分される。縦方向Xは、ナプキン1及び吸収性本体10の長手方向に一致し、横方向Yは、ナプキン1及び吸収性本体10の長手方向に直交する幅方向に一致する。
【0015】
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、即ち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味し、吸収性物品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
【0016】
図3及び図4に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆し、その縦方向Xに沿う両側縁は、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁と略同位置に存している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出して、後述するサイドシート5と共にサイドフラップ部10Sを形成している。裏面シート3とサイドシート5とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。また、表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の縦方向Xの両端からの延出部において、公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3と吸収体4との間はそれぞれ接着剤によって接合されていても良い。表面シート2、裏面シート3としては、生理用ナプキン等の吸収性物品に従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート3としては、透湿性の樹脂フィルム等を用いることができる。
【0017】
サイドフラップ部10Sは、図1に示すように、中間部Mにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体10の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部10W,10Wが延設されている。ウイング部10Wは、図1に示す如き平面視において、下底(上底に比して長い辺)が吸収性本体10側に位置する略台形形状を有しており、その非肌対向面には、該ウイング部10Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。ウイング部10Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面即ち外面側に折り返されて用いられる。
【0018】
本実施形態のナプキン1は、着用者の背中寄りに配される後方部Rの両側部それぞれに後方フラップ部を有している。図1に示すように、サイドフラップ部10Sが後方部Rにおいても横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより、吸収性本体10の縦方向Xに沿う左右両側に、一対の後方フラップ部10H,10Hが延設されている。後方フラップ部10Hを設けることにより、経血等の排泄液の横漏れを防止することができる。
【0019】
後方フラップ部10Hは、非肌対向面にズレ止め部52を有している。本実施形態において、ズレ止め部52は粘着部であり、この粘着部により、後方フラップ部10Hが、折り返されず、広げられた状態即ち吸収性本体10の側方に延ばされた状態で、着衣に固定される。つまり、後方フラップ部10Hは、非肌対向面に形成されたズレ止め部52(後方粘着部)を介して、着衣の肌対向面即ち内面に固定される。前記ウイング部粘着部及びズレ止め部52は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
【0020】
本実施形態の後方部Rは、吸収体4の厚み方向に切り込まれた、横方向に離間した複数のスリットR1を有している。以下、後方部Rにおけるスリットを後方スリットR1ともいう。当該複数の後方スリットR1によって、後方部Rは着用者の臀部に沿うように変形することが容易となり、フィット性が高くなる。より具体的には、横方向Yに離間する複数の後方スリットR1に挟まれた領域54が、肌対向面側に隆起するように変形することで、後方部Rの横方向中央領域を臀部の溝の形状に沿って密着させることができる。
また、本実施形態の後方部Rにおいて、ズレ止め部52は、縦方向における位置が、横方向に離間した複数の後方スリットR1と重なっている(図1参照)。より具体的には、横方向に離間した2本の後方スリットR1,R1が、左右一対のズレ止め部52、52の前端部どうし及び後端部どうしを結んだ直線で挟まれた領域内に存在している。
一般に、着用者とナプキンとの間には、着用者の股間部から後方にかけての曲率半径が小さくなる部位で隙間が生じ易く、特に、この部位では着用者とナプキンとの間に臀部に沿うようにして隙間が生じやすい傾向にある。これに対して、本実施形態のナプキン1においては、ズレ止め部52と後方スリットR1とは縦方向Xにおける位置が重なっているため、横方向Yに離間した複数の後方スリットR1に挟まれた領域54が臀部の溝に沿うように隆起変形した際、後方部Rの横方向中央領域が臀部の溝に密着しやすくなると共に、臀部の溝の横方向外側においても、肌とナプキンとの間に隙間が発生することが抑制されて、伝い漏れや液流れが発生し難くなる。ズレ止め部52と後方スリットR1とは縦方向Xにおいて重なっていることによって、さらに、臀部の溝の横方向外側におけるナプキン1のヨレを抑制することができ、経血が多量に排泄された場合でも、着用者の股間部から背側にかけて曲率半径が小さくなる部位でナプキン1がヨレずに密着しているので、経血漏れが起き難くなる。
【0021】
臀部の溝の横方向外側の部位とナプキンとの密着性をより向上させる観点から、ズレ止め部52は、縦方向における位置が、横方向に離間した2本の後方スリットR1,R1それぞれの全体又は一部と重なっていることが好ましく、当該2本の後方スリットR1,R1それぞれの縦方向の長さの20%以上100%以下、より好ましくは50%以上100%以下が重なっていることが好ましい。また、その2本の後方スリットR1,R1は、縦方向Xに延びる吸収性物品の縦中心線CLを挟んでその両側に位置することが好ましい。
【0022】
臀部の溝の横方向外側の部位とナプキンとの密着性をより向上させる観点から、縦方向Xにおいて、ズレ止め部52と後方スリットR1とが重なる部分の長さP1(図1参照)は、好ましくは5.0mm以上、より好ましくは7.5mm以上であり、また好ましくは40mm以下、より好ましくは20mm以下であり、また好ましくは5.0mm以上40mm以下、より好ましくは7.5mm以上20mm以下である。
ここで、ズレ止め部52と後方スリットR1とが重なる部分の長さP1は、ズレ止め部52と重なる部分を有する個々の後方スリットR1についての重なる部分の長さである。縦方向における形成位置が異なる複数の後方スリットR1を有する場合、少なくとも1本の後方スリットR1についての重なる部分の長さP1が、上記の範囲であることが好ましく、横方向に離間した2本の後方スリットR1,R1のそれぞれについての重なる部分の長さP1が、上記の範囲であることが好ましい。
【0023】
上記と同様の観点から、縦方向Xにおけるズレ止め部52の長さP2(図1参照)は、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上であり、また好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下であり、また好ましくは15mm以上50mm以下、より好ましくは20mm以上40mm以下である。
また、横方向Yにおけるズレ止め部52の長さP3(図1参照)は、好ましくは5mm以上30mm以下、より好ましくは10mm以上20mm以下である。
【0024】
吸収性物品のよれの発生を防止し、臀部の溝の横方向外側の部位と後方部Rとの密着性を向上させる観点から、ズレ止め部52の後端部から吸収性物品の後端部までの距離L2(図1参照)は、縦方向Xにおける吸収性物品1の全長に対して、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、また好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下であり、また好ましくは10%以上35%以下、より好ましくは15%以上30%以下である。尚、縦方向Xにおける吸収性物品の後端部とは、吸収性物品の縦方向X(前後)において最も後方に位置する端部である(図1参照)。
また、ズレ止め部52の後端部から吸収性物品の後端部までの距離L2は、好ましくは40mm以上、より好ましくは60mm以上であり、また好ましくは140mm以下、より好ましくは120mm以下であり、また好ましくは40mm以上140mm以下、より好ましくは60mm以上120mm以下である。
【0025】
また、後方スリットR1が複数ある場合、縦方向においてズレ止め部52と重なる後方スリットR1は1本以上あれば良いが、ナプキン1の肌への密着性をより向上させる観点から、好ましくは2本以上、より好ましくは4本以上であり、また好ましくは10本以下、より好ましくは6本以下であり、また好ましくは2本以上10本以下、より好ましくは4本以上6以下である。
【0026】
本実施形態のナプキン1においては、図1に示すように、後方スリットR1は平面視直線状をなしているが、後方スリットR1の平面視形状はこれに限定されず波線等でも良い。また後方スリットR1は、縦方向Xに延びていることが好ましい。さらに後方スリットR1は、ナプキン1あるいは吸収体4を横方向Yに二等分して縦方向Xに延びる縦中心線CLに対して平行でなくても良く、この場合、後方スリットR1と該縦中心線CLとのなす角度が45度未満であることが好ましい。
【0027】
本実施形態の後方部Rにおいて後方スリットR1は2本以上あれば良く、後方スリットR1の数は特に制限されないが、好ましくは4本以上、より好ましくは6本以上であり、また好ましくは18本以下、より好ましくは14本以下であり、また好ましくは4本以上18本以下、より好ましくは6本以上14以下である。
本実施形態において、後方部Rは、後方スリット領域RSに後方スリットR1を複数有している。複数の後方スリットR1は互いに、平面視形状及び縦中心線CLに対する傾斜角度が同じでも良く、それぞれ異なっていても良い。また、複数の後方スリットR1が縦方向Xに一列に並ぶパターンよりも、横方向Yの位置が異なる2本以上の後方スリットR1が存するパターンが好ましい。
【0028】
本実施形態のナプキン1において、着用者の肌に対する密着性をより向上させる観点から、後方スリットR1の各部の寸法は下記のように設定することが好ましい。
後方スリットR1の縦方向Xの長さは、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm、そして、好ましくは35mm以下、さらに好ましくは25mm以下である。
後方スリットR1の横方向Yの長さ即ち幅は、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上、そして、好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。
【0029】
本実施形態において、後方スリットR1は、吸収体4を構成する吸収性シートの積層体を貫通していてもよいし(図4参照)、貫通していなくてもよい。また後方スリットR1は、図4に示すように、吸収体4の上下に配される表面シート2及び裏面シート3には形成されておらず、さらに、表面シート2と吸収体4との間に配されることのある不織布からなる中間シートに形成されていないことが好ましい。
【0030】
本実施形態の後方フラップ部10Hは、図1に示すように、該後方フラップ部10Hの縦方向Xに沿う両側縁部に、くびれ部53を形成する一対の凹部53aを有している。縦方向に長い吸収性物品は、後方フラップ部10Hに皺が発生しやすく、さらにその皺によって後方フラップ部10Hがめくれやすいという問題がある。しかし、本実施形態のナプキン1のように、後方フラップ部10Hにおいてくびれ部53を設けることにより、くびれ部53が可撓軸として働き、後方フラップ部10Hにおける皺の発生を抑制して、後方フラップ部10Hのめくれを抑制することができる。
【0031】
本実施形態において、くびれ部53は、縦方向Xにおいてズレ止め部52よりも後方に形成されている。一般に、吸収性物品が縦方向Xに長ければ長いほど、ズレ止め部52によって固定されない領域が大きくなることから、後方フラップ部に皺やめくれが発生する傾向にある。特に上記のようにズレ止め部52を、縦方向Xにおいて臀部の溝が当接する部分、即ち後方スリットR1と重なる位置に配すると、後方フラップ部に皺やめくれが発生しやすくなる。
これに対して、本実施形態のように、くびれ部53を、ズレ止め部52よりも後方に形成することにより、後方フラップ部10Hにおける皺及びめくれの発生を効果的に抑制することができる。尚、くびれ部53が、縦方向Xにおいてズレ止め部52よりも後方に形成されているとは、くびれ部53を形成する凹部53aの内方端部がズレ止め部52の後端部よりも後方に位置することを意味するが、凹部53の全体が、ズレ止め部52の後端部より後方に位置することが好ましい。
【0032】
また、後方フラップ部10Hにおける皺及びめくれを抑制する効果をより確実に奏させる観点から、縦方向Xにおけるズレ止め部52の後端部からくびれ部53までの距離L1が、縦方向Xにおけるズレ止め部52の後端部から吸収性物品の後端部までの距離L2に対し、25%以上75%以下であることが好ましい。ここで、縦方向Xにおけるズレ止め部52の後端部からくびれ部53までの距離L1とは、縦方向Xにおけるズレ止め部52の後端部から、くびれ部53を形成する凹部53aの内方端部までの長さである。また、縦方向Xにおけるズレ止め部の後端部とは、ズレ止め部52の縦方向X(前後)において最も後方に位置する端部である(図1参照)。
上記の縦方向Xにおけるズレ止め部52の後端部からくびれ部53までの距離L1は、ズレ止め部52の後端部から吸収性物品の後端部までの距離L2に対する割合が、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上であり、またより好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下であり、また、より好ましくは30%以上60%以下、さらに好ましくは40%以上60%以下である。
縦方向Xにおけるズレ止め部52の後端部から前記くびれ部53までの距離L1は、好ましくは25mm以上、より好ましくは35mm以上であり、また好ましくは65mm以下、より好ましくは55mm以下であり、また好ましくは25mm以上65mm以下、より好ましくは35mm以上55mm以下である。
【0033】
図1に示すように、くびれ部53は凹部53aにより形成されている。また、凹部53aについて、凹部53aの両端を結ぶ直線を直線L5とし、凹部53aの内方端部を通り直線L5に垂直に交わる直線を直線L6とした場合、直線L5と直線L6との交点から凹部53の内方端部までの距離をdとする(図2参照)。この距離dは凹部53aの凹みの長さに相当する。また、この距離dは、後方フラップ部10Hにおける皺及びめくれの発生をより抑制する観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは5.0mm以下であり、また好ましくは0.5mm以上10mm以下、より好ましくは1.0mm以上5.0mm以下である。
【0034】
本実施形態において表面シート2は、その肌対向面に、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって凹陥した溝6を有している。また、溝6は、図1に示すように、後方部Rに配されており、且つ図2に示すように、横方向の外方に向かって凸状の曲線をなす凸部61を有している。斯かる構成により、ナプキン1の縦及び横方向の屈曲に対する安定性をより向上させることができる。このように、表面シート2は、その肌対向面に、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって凹陥してなる溝6を有し、溝6は、後方部Rに、平面視において、横方向Yの外方に向かって凸状の曲線をなす凸部61を有していることが好ましい。
【0035】
また、本実施形態における溝6は、上記の凸部61を有しているが、該凸部61の頂部とくびれ部を形成する凹部53aの内方端部との縦方向Xにおける距離L3(図2参照)が5.0mm以内であることが好ましい。凸部61の頂部と内方端部との縦方向Xにおける距離L3とは、くびれ部53を形成する凹部53aの内方端部の縦方向Xの位置と、溝6における凸部61の頂部の縦方向Xの位置との距離である。斯かる構成により、ナプキン1の縦及び横方向の屈曲に対する安定性をさらに向上させることができる。また、吸収体4に対し横方向外方に向かって張りを付与することができ、これにより吸収体4に皺が発生した場合、皺の伝達をより抑制することができる。なお、溝6が、上記の凸部61を複数有する場合、凸部61の頂部と、凹部53aの内方端部との縦方向Xにおける距離L3は、凹部53aの内方端部と、縦方向Xにおいて最も近い凸部61の頂部との距離とする。
【0036】
上記の効果をより確実に奏させる観点から、溝6における凸部61の頂部と、凹部53aの内方端部との縦方向Xにおける距離L3は、より好ましくは4.0mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下であり、最も好ましくは0mmである。
【0037】
さらに、溝6に囲まれた領域に位置し、ナプキン1の縦方向Xの後端に向けて凸の凸状をなす内溝7が形成されている。溝6,7は平面視において線状をなしている。ここでいう「線状」とは、溝即ち凹陥部の形状が平面視において直線に限られず、曲線を含んでいることを意味する。線状の溝6,7は、連続線でも破線等のような不連続線でも良い。溝6,7によって、吸収体4の平面方向、特に横方向Yの液の拡散の抑制、吸収体4のヨレの防止などの効果が奏され得る。溝6,7は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。溝6,7においては、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化しており、溝6,7の底部はそれらの周辺部に比して高密度である。
【0038】
本実施形態の溝6は、図1に示す如き平面視において、後述する中高部43及び内溝7を包囲する閉じた環状をなし、縦中心線CLを基準として左右対称に形成されている。溝6は、後方部Rのみならず、前方部Fから中間部Mを通って後方部Rにわたって連続している。
【0039】
内溝7は、後述する中高部43より縦方向Xの後方に、縦中心線CLを基準として左右対称に形成されている。また、内溝7は、縦方向Xの後端70に、後方に向かう凸部を有している一方、縦方向Xの前端側即ち中高部43側は開放されている。
【0040】
本実施形態のナプキン1は、表面シート2の肌対向面において、縦方向の両側部それぞれに、一対のサイドシート5,5を有している。
サイドシート5,5と表面シートとは、接合部51により縦方向に沿って接合されている。サイドシート5は、接合部51より横方向Yの内方に位置する内側縁部が自由端部となっている。サイドシート5は、例えば、自由端部側を折り返し、その折り返し部分の内部に縦方向Xに延びる弾性部材を配しても良い。このように弾性部材を配すると、弾性部材の収縮力により、折り返し部分が着用者の肌側に向かって起立する、防漏カフが形成されるようになる。このように防漏カフが形成されると、ナプキン1の肌対向面に排泄された経血等の排泄液の横漏れを防止することができる。
【0041】
本実施形態のナプキン1において、サイドシート5,5と表面シート2とは、図1及び図2に示すように、外方に向いた凸部51aと内方に向いた凸部とが交互に繰り返される連続した波状の接合部51により縦方向に沿って接合されている。また、くびれ部53は、縦方向における位置が、接合部51の外方に向いた凸部51aと重なっている。これにより、ナプキン1の縦及び横方向の屈曲に対する安定性がより向上し、さらに、ナプキン1の横方向外方に向かって張りをより付与することができる。なお、接合部51の外方に向いた凸部51aとは、図2に示すように、接合部51を横方向に二等分する中央線よりも外方に向いた部分である。くびれ部53と接合部51の外方に向いた凸部51aとは、くびれ部53を形成する凹部53aの内方端部と凸部51aとが少なくとも部分的に重なっていればよい。
【0042】
上記の効果をより確実に奏させる観点から、横方向Yにおける接合部51の外方に向いた凸部51aと、くびれ部53の凹部53aの内方端部との距離L7は、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり、また好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下であり、また好ましくは10mm以上50mm以下、より好ましくは20mm以上40mm以下である。この凸部51aと、凹部53aの内方端部との距離L7は、横方向Yにおける凹部53aの内方端部と凸部51aとの最短距離を意味する。
【0043】
吸収体4について説明すると、吸収体4は高吸収性ポリマー及び親水性繊維を含有する。高吸収性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状は球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでも良い。高吸収性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。また、親水性繊維としては、本来的に親水性の繊維でも良く、あるいは疎水性繊維を親水化処理した繊維でも良いが、前者の繊維が特に好ましい。本来的に親水性の繊維としては、天然系の繊維、セルロース系の再生繊維又は半合成繊維が好ましい例として挙げられ、好ましいものとして、パルプ、レーヨンを例示できる。パルプには、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプなどの木材パルプの他に、木綿パルプ、藁パルプなどの非木材パルプなどがあるが、特に制限されない。また、セルロース繊維の分子内及び/又は分子間を架橋させた架橋セルロース繊維、木材パルプをマーセル化処理して得られるような嵩高性のセルロース繊維を用いても良い。
【0044】
ナプキン1における吸収体4は、図1、3及び4に示すように、着用時に着用者の排泄部に対向配置される中央吸収性シート41と、平面視において中央吸収性シート41と重なる部分及び中央吸収性シート41の周縁から外方に延出する部分を有する本体吸収性シート42とを含んで構成されており、複数枚のシートの積層構造体である。両吸収性シート41,42は何れも、親水性繊維及び高吸収性ポリマーを含有する。
【0045】
本発明において「吸収性シート」とは、高吸収性ポリマー、親水性繊維等の吸収性材料を含むシート状の吸収構造体を意味し、吸収性材料を積繊してなる積繊体とは区別される。一般に、吸収性シートは、吸収性材料の積繊体に比して厚みが薄く低剛性であるため、吸収性シートを備えた吸収性物品は、厚みが薄い薄型であり、柔軟で着用感に優れ、またコンパクトに折り畳めてハンドリング性にも優れる。斯かる吸収性シートの特長をより有効に活用し、液拡散性、液保持性を十分に備え装着感の良好な吸収性物品を得る観点から、吸収性シートの1枚あたりの無荷重下における厚みは、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下である。吸収性シートとしては例えば、特許第2963647号公報、特許第2955223号公報に記載のものを利用することができる。吸収性シートとして好ましいものを例示すると、湿潤状態の高吸収性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と高吸収性ポリマーとの間を結合させてシート状としたものが挙げられる。
【0046】
中央吸収性シート41は、図1に示すように、中間部M、あるいは中間部M並びに前方部F及び後方部Rそれぞれの中間部M寄りの部分において、ナプキン1又は吸収性本体10の横方向Yの中央部に配されている。また中央吸収性シート41は、図4に示すように、該シート41を折り畳んでなる多層構造をなしている。この中央吸収性シート41の折り畳み多層構造は、1枚の平面視略矩形形状の該シート41が、該シート41を横方向Yに略三等分する位置を通って縦方向Xに延びる2本の折り曲げ線にて同一面側(肌対向面側)に折り曲げられて、いわゆる巻き三つ折り状態に形成されたものであり、該シート41の3層構造を有している。
【0047】
また、本体吸収性シート42も、図3及び図4に示すように、該シート42を折り畳んでなる多層構造をなしている。この本体吸収性シート42の折り畳み多層構造は、1枚の平面視略矩形形状の該シート42が、縦方向Xに延びる2本の折り曲げ線にて同一面側(非肌対向面側)に折り曲げられ、且つ該シート41の縦方向Xに沿う両端縁どうしが横方向Yの中央部で重ね合わされて形成されたものであり、その両端縁の重ね合わせ部は該シート42の3層構造、該重ね合わせ部以外の部分は該シート42の2層構造を有している。本体吸収性シート42の折り畳み多層構造は、吸収体4の外形を形成している。
【0048】
このように、本実施形態におけるナプキン1における吸収体4は、1枚の本体吸収性シート42の折り畳み構造の内部に、1枚の中央吸収性シート41の折り畳み構造が内包された構成を有しているところ、中間部Mの横方向Yの中央部は、この中央吸収性シート41の折り畳み構造が配されていることによって、周辺部に比して厚みが大きく且つ肌対向面側に隆起した中高部43となっていることが好ましい。一方、吸収体4における中高部43以外の部位は、中央吸収性シート41の折り畳み構造が無く、本体吸収性シート42の折り畳み構造を含んで構成されており、中高部43に比して厚みの小さい標準吸収部44となっていることが好ましい。
【0049】
本実施形態のナプキン1において、中高部43は、図1に示すように、平面視において長方形形状をなし、その長手方向を縦方向Xに一致させて、中間部Mの横方向Yの中央部に配されている。但し、中高部43の平面視形状は任意に選択可能であり、長方形形状に限定されない。
【0050】
図1に示すように、本実施形態のナプキン1の後方部Rには、ナプキン1の折り畳みによって形成された中央折り畳み線CFLが1本形成されている。中央折り畳み線CFLは、肌対向面を形成する表面シート2を内側にして(非肌対向面を形成する裏面シート3を外側にして)、ナプキン1を縦方向Xに折り畳むことによって形成されており、横方向Yに延びる直線状をなしている。中央折り畳み線CFLは、ナプキン1の縦方向Xの中央部に形成されていれば良く、後方部Rではなく、中間部Mに形成されていても良い。ここでいう「ナプキン1の縦方向Xの中央部」とは、ナプキン1の縦方向Xの中央及びその近傍を意味し、具体的には、ナプキン1の縦方向Xの中央を基準として、その基準から縦方向Xの前方側及び後方側それぞれにナプキン1の縦方向Xの全長の10%以内の領域である。
【0051】
また、本実施形態のナプキン1の後方部Rには、後述する後方スリット領域RSより縦方向Xの後方に、ナプキン1の折り畳みによって形成された後方折り畳み線RFLが1本形成されている。後方折り畳み線RFLも、中央折り畳み線CFLと同様に、肌対向面を形成する表面シート2を内側にしてナプキン1を縦方向Xに折り畳むことによって形成されており、横方向Yに延びる直線状をなしている。後方折り畳み線RFLは、溝6と内溝7との間を横方向Yに延びている。中央折り畳み線CFL及び後方折り畳み線RFLは何れも、ナプキン1が折り畳まれて個包装される際に使用される。後方折り畳み線RFLは通常、ナプキン1の縦方向Xの後端から縦方向Xの前方側にナプキン1の縦方向Xの全長の10〜30%離間した位置に形成される。なお、本実施形態のナプキン1では、後方折り畳み線RFLとくびれ部53とは重なっていない。このような構成によって、後方折り畳み線RFLを起点とした、皺の伝達を抑制できるという効果がある。
【0052】
本実施形態のナプキン1においては、図1に示すように、吸収体4は中間部Mに複数のスリットを有している。以下、中間部Mにおけるスリットを中央スリットM1ともいう。縦方向Xに延びる中央スリットM1が複数分散配置された中央スリット領域MSを有している。中央スリット領域MSは中高部43に存している。
ナプキン1においては、中央スリットM1は平面視直線状をなしているが、中央スリットM1の平面視形状はこれに限定されず波線等でも良い。また中央スリットM1は、縦方向Xに延びていれば良く、図示の如く縦中心線CLに対して平行でなくても良い。中央スリットM1が縦中心線CLに対して平行でない場合、中央スリットM1と縦中心線CLとのなす角度が45度未満であることが好ましい。
【0053】
中央スリット領域MSには中央スリットM1が1本以上あれば良い。中央スリット領域MSに存する中央スリットM1の数は特に制限されない。また、中央スリット領域MSが中央スリットM1を複数有している場合、その複数の中央スリットM1は互いに、平面視形状及び縦中心線CLに対する傾斜角度の何れか一方又は両方が同じでも良く、異なっていても良い。
【0054】
中央スリットM1の各部の寸法等は下記のように設定することが好ましい。
中央スリットM1の縦方向Xの長さは、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm、そして、好ましくは35mm以下、さらに好ましくは25mm以下である。中央スリットM1の横方向Yの長さ即ち幅は、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上、そして、好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。
【0055】
中央スリットM1は、吸収体4を構成する吸収性シートの積層体を貫通していても、貫通していなくても良い。また中央スリットM1は、吸収体4の上下に配される表面シート2及び裏面シート3には形成されておらず、さらに、表面シート2と吸収体4との間に配されることのある不織布からなる中間シートにも形成されていないことが好ましい。
【0056】
以上、本発明について説明したが、本発明は前述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、前記実施形態においては、吸収体が吸収性シートのみから構成されていたが、吸収性材料を積繊してなる積繊体のみから構成されていても良く、両者を含んで構成されていても良い。また、吸収体における吸収性シートの多層構造は、前記実施形態のように、1枚の吸収性シートが折り重ねられて形成された構成でも良く、あるいは複数枚の吸収性シートを折り畳まずに積層した構成でも良く、あるいは両構成を複合した構成でも良い。
【0057】
本発明は、経血の吸収に用いられる物品全般に適用することができる。そのような物品の例としては、前記実施形態の如き生理用ナプキンの他に、パンティライナ等が挙げられるが、それらに限られない。
【符号の説明】
【0058】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
41 中央吸収性シート
42 本体吸収性シート
43 中高部
44 標準吸収部
5 サイドシート
51 接合部
51a 凸部
52 ズレ止め部
53 くびれ部
6 溝
61 凸部
7 内溝
10 吸収性本体
10H 後方フラップ部
F 前方部
M 中間部
R 後方部
CFL 中央折り畳み線
RFL 後方折り畳み線
M1 中央スリット
MS 中央スリット領域
R1 後方スリット
RS 後方スリット領域
CL 縦中心線
X 縦方向
Y 横方向
図1
図2
図3
図4