(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839988
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/22 20060101AFI20210301BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20210301BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20210301BHJP
B65D 47/24 20060101ALN20210301BHJP
【FI】
B65D51/22 110
B65D1/02 111
B65D81/24 BBRF
!B65D47/24 200
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-14955(P2017-14955)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-122867(P2018-122867A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】石塚 徹也
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−306414(JP,A)
【文献】
特開2015−155324(JP,A)
【文献】
特開2003−012012(JP,A)
【文献】
特開2015−063342(JP,A)
【文献】
特開2017−165452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/22
B65D 1/02
B65D 81/24
B65D 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する減容変形可能な内層体と、上方を開口させた口部を有し該内層体を内側に収める外層体とを有する容器本体と、
前記内層体の内容物を注出する注出口を有し前記口部に装着される注出キャップとを備える二重容器であって、
前記容器本体は、未使用時において前記口部を封止して前記内層体を気密に維持するシール部材を有し、
前記注出キャップは、前記口部に該注出キャップを装着することによって前記シール部材を破断或いは除去して該口部を開封する開封部と、該開封部が該口部を開封する前及び開封した後の両方で前記容器本体に気密に当接する封止部とを有し、
前記注出キャップは、前記口部の径方向内側に位置する内側壁と、該口部の径方向外側に位置する環状の外側壁とを有し、
前記開封部は、前記内側壁の端部を前記シール部材に向かって尖らせた尖鋭部であって、前記封止部は、前記口部の外周面に気密に当接する前記外側壁の内周面である二重容器。
【請求項2】
前記シール部材は、前記口部の上端部に固着されたシートである請求項1に記載の二重容器。
【請求項3】
内容物を収容する減容変形可能な内層体と、上方を開口させた口部を有し該内層体を内側に収める外層体とを有する容器本体と、
前記内層体の内容物を注出する注出口を有し前記口部に装着される注出キャップとを備える二重容器であって、
前記容器本体は、未使用時において前記口部を封止して前記内層体を気密に維持するシール部材を有し、
前記注出キャップは、前記口部に該注出キャップを装着することによって前記シール部材を破断或いは除去して該口部を開封する開封部と、該開封部が該口部を開封する前から前記容器本体に気密に当接する封止部とを有し、
前記注出キャップは、前記口部の径方向内側に位置する環状の内側壁と、該内側壁の径方向内側に位置していて、自重によって移動可能な移動弁が内側に配置された筒状壁とを有し、
前記シール部材は、前記口部の内周面に沿って延在する周壁と、該周壁に連結して前記口部を封止する隔壁或いはシートとを有し、
前記開封部は、前記内側壁の端部を前記シール部材に向かって尖らせた尖鋭部であって、該尖鋭部は、前記筒状壁の下端部よりも下方に位置し、
前記封止部は、前記周壁の内周面に気密に当接する該内側壁の外周面である二重容器。
【請求項4】
前記シール部材は、前記周壁及び前記隔壁を有するとともに、該周壁及び該隔壁の少なくとも一方に設けられる弱化部を有する請求項3に記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容する内層体、及び内層体を内側に収める外層体を有する容器本体と、容器本体に装着される注出キャップとを備える二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内容物を収容する容器本体に注出キャップを装着した容器においては、例えば特許文献1に示されているような、容器本体を内層体と外層体とで構成した二重容器(デラミ容器、積層剥離容器ともいう)が使用されている。この種の容器には可撓性を有する外層体が用いられていて、外層体には、外層体と内層体との相互間に位置する内部空間に空気を取り込む通気口が設けられている。また注出キャップには、内部空間の空気が外界へ漏れるのを防ぐ一方、内部空間が減圧されると外界から内部空間へ空気の導入が許容される空気弁が設けられている。
【0003】
このような構成の二重容器によれば、外層体を押圧することによって内部空間が加圧され、これによって充填空間の圧力が高まって内容物を注出させることができる。また外層体への押圧を解除すれば、外層体の復元に伴って内部空間が減圧し、これによって通気口から内部空間へ空気が導入されて内層体のみを減容変形させることができる。すなわち、内容物が少なくなっても容器の自立性を維持することができる。また、外気と置換することなく内容物を注出させることができるので、収容した内容物の品質劣化が生じにくいという利点もある。このためこの種の容器は、例えば醤油、ソースなどの調味料やシャンプー、リンス、液体石鹸、化粧水などの化粧料を収容するのに好適なものとして多用されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−163520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで一般的な容器は、内容物を使い切った後には注出キャップを取り外し、内容物が充填されている新たな容器本体(レフィル容器)に付け替えて使用されている。このため、上述した二重容器にあっても、注出キャップを再利用してこのようなレフィル容器を利用したいとする要望がある。しかし、注出キャップを容器本体に装着する際には内容物と外気との接触が避けられないため、内容物によっては品質が劣化するおそれがある。すなわち、上述した二重容器の利点が得られないことから、二重容器の分野においてはレフィル容器の利用が未だ進んでいないのが現状であった。
【0006】
本発明はこのような点を解決することを課題とし、内容物を使い切った後に注出キャップを新たな容器本体に付け替えるにあたって、内容物と外気との接触を避けることができる二重容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容物を収容する減容変形可能な内層体と、上方を開口させた口部を有し該内層体を内側に収める外層体とを有する容器本体と、
前記内層体の内容物を注出する注出口を有し前記口部に装着される注出キャップとを備える二重容器であって、
前記容器本体は、未使用時において前記口部を封止して前記内層体を気密に維持するシール部材を有し、
前記注出キャップは、前記口部に該注出キャップを装着することによって前記シール部材を破断或いは除去して該口部を開封する開封部と、該開封部が該口部を開封する前
及び開封した後の両方で前記容器本体に気密に当接する封止部とを有し、
前記注出キャップは、前記口部の径方向内側に位置する内側壁と、該口部の径方向外側に位置する環状の外側壁とを有し、
前記開封部は、前記内側壁の端部を前記シール部材に向かって尖らせた尖鋭部であって、前記封止部は、前記口部の外周面に気密に当接する前記外側壁の内周面である二重容器である。
【0009】
前記シール部材は、前記口部の上端部に固着されたシートであることが好ましい。
【0010】
また本発明は、
内容物を収容する減容変形可能な内層体と、上方を開口させた口部を有し該内層体を内側に収める外層体とを有する容器本体と、
前記内層体の内容物を注出する注出口を有し前記口部に装着される注出キャップとを備える二重容器であって、
前記容器本体は、未使用時において前記口部を封止して前記内層体を気密に維持するシール部材を有し、
前記注出キャップは、前記口部に該注出キャップを装着することによって前記シール部材を破断或いは除去して該口部を開封する開封部と、該開封部が該口部を開封する前から前記容器本体に気密に当接する封止部とを有し、
前記注出キャップは、前記口部の径方向内側に位置する環状の内側壁
と、該内側壁の径方向内側に位置していて、自重によって移動可能な移動弁が内側に配置された筒状壁とを有し、
前記シール部材は、前記口部の内周面に沿って延在する周壁と、該周壁に連結して前記口部を封止する隔壁或いはシートとを有し、
前記開封部は、前記内側壁の端部を前記シール部材に向かって尖らせた尖鋭部であって、
該尖鋭部は、前記筒状壁の下端部よりも下方に位置し、
前記封止部は、前記周壁の
内周面に気密に当接する該内側壁の
外周面である
二重容器でもある。
【0011】
前記シール部材は、前記周壁及び前記隔壁を有するとともに、該周壁及び該隔壁の少なくとも一方に設けられる弱化部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二重容器において、容器本体は、未使用時において口部を封止して内層体を気密に維持するシール部材を有し、注出キャップは、口部に注出キャップを装着することによってシール部材を破断或いは除去して口部を開封する開封部と、開封部が口部を開封する前から容器本体に気密に当接する封止部とを有している。すなわち、注出キャップを新たな容器本体に付け替えるにあたって、内容物と外気との接触を極力避けることができる。従ってこのような二重容器によれば、新たな容器本体をレフィル容器として利用する場合でも、外気との接触を原因とする内容物の品質劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従う二重容器の一実施形態を示す側面視での断面図である。
【
図2】(a)は
図1に示す容器本体の未使用時の状態を示す図であり、(b)は(a)の容器本体に注出キャップを装着する状況を説明する図である。
【
図3】本発明に従う二重容器の他の実施形態を示す側面視での断面図である。
【
図4】(a)は
図3に示す容器本体の未使用時の状態を示す図であり、(b)は(a)の容器本体に注出キャップを装着する状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に従う二重容器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等における「上」、「下」は、
図1に示すように外層体(符号3)が下方に位置し、蓋体(符号9)が上方に位置する状態での向きをいう。
【0015】
本実施形態の二重容器は、容器本体1(内層体2と外層体3で構成される)、注出キャップ4(中栓5、逆止弁6、移動弁7、キャップ本体8で構成される)、及び蓋体9を備えている。
【0016】
内層体2は、その内側に内容物を収容可能な充填空間Sを備えている。本実施形態の内層体2は、薄肉の合成樹脂製であって、減容変形可能に設けられている。
【0017】
外層体3は、中心軸Oに沿って延在する筒状の口部3aを備えている。本実施形態の口部3aは、上方を開口させた口部上部分3bと、口部上部分3bよりも大径になる口部下部分3cとで構成されている。また口部上部分3bの外周面には雄ねじ部3dが設けられている。更に口部上部分3bには、径方向に口部上部分3bを貫通する通気口3eが設けられている。そして口部下部分3cの下端には、径方向外側に向けて延在した後、中心軸Oに沿って下向きに延在する筒状の胴部3fと、胴部3fの下端を閉鎖する底部(図示省略)が設けられている。また本実施形態の外層体3は合成樹脂製であって、胴部は可撓性を有している。
【0018】
また内層体2と外層体3との相互間には、通気口3eに通じる内部空間Nが形成されている。
【0019】
本実施形態における内層体2と外層体3は、相互に相溶性が低い合成樹脂を剥離可能に積層させたものである。内層体2を構成する合成樹脂としては、ナイロン樹脂(PA)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、変性ポリオレフィン樹脂(例えば三井化学株式会社製「アドマー」(登録商標)等)を採用することができる。また外層体3を構成する合成樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)をはじめとするポリエチレン樹脂(PE)の他、ポリプロピレン(PP)を採用することができる。このような内層体2と外層体3は、内層体2を形成する合成樹脂素材と外層体3を形成する合成樹脂素材とが積層されたパリソンを、ブロー成形することによって得ることができるが、他にも、内層体2の合成樹脂素材と外層体3の合成樹脂素材とを積層させた試験管状のプリフォームを準備し、このプリフォームを2軸延伸ブロー成形して形成することや、内層体及び外層体を個別に形成し、その後、内層体を外層体の内側に配置したものも用いることができる。また、図示は省略するが、内層体2と外層体3との間に、縦方向に延在して内層体2と外層体3とを部分的に接合する、1本或いは複数本の接着帯を設けてもよい。
【0020】
中栓5は、口部3aの上方に位置して充填空間Sを閉鎖する天壁5aを備えている。天壁5aの中央部分には、天壁5aを貫通する内容物用連通口5bが設けられている。また、内容物用連通口5bの脇には、全体として円筒状をなすとともに、上部に対して下部を縮径させた筒状壁5cが設けられている。
【0021】
また天壁5aの下面には、口部上部分3bの径方向内側に位置する内側壁5dが設けられている。本実施形態の内側壁5dは、環状をなすものである。また内側壁5dは、口部上部分3bとの間で内層体2を挟んで内層体2に気密且つ液密に当接するものである。また、内側壁5dの下方の端部は水平方向に対して傾いていて、最も下方に位置する端部は、先が尖った尖鋭部5eとなっている。
【0022】
そして天壁5aの上面には、環状の凹部5fが設けられている。また凹部5fの径方向外側には、天壁5aの外縁から上方に向けて延在する外縁壁5gが設けられている。また天壁5aと外縁壁5gとの連結部には、これらを貫通する空気用連通口5hが設けられている。なお、本実施形態の中栓5は、例えばポリプロピレン(PP)のような合成樹脂で形成されている。
【0023】
逆止弁6は、ゴムやエラストマー等の軟質材で形成されていて、空気の流れを規制するための空気弁としての機能と、内容物の流れを規制するための注出弁としての機能を有している。
【0024】
逆止弁6における空気弁は、下端部が凹部5fによって支持される環状の基部6aと、弾性変形可能なドーナツ板状であって、内縁部が基部6aに一体に連結する薄肉部6bとで構成されている。
【0025】
また逆止弁6における注出弁は、内容物用連通口5b及び筒状壁5cの上方に位置し、天壁5aに着座して内容物用連通口5bを閉鎖する一方、筒状壁5cの一部は解放させたままとする板状の注出弁本体6cと、注出弁本体6cと基部6aとを弾性的に連結する連結片6dとで構成されている。
【0026】
移動弁7は、筒状壁5c内に配置されていて、容器本体1の姿勢変更に応じて筒状壁5cの内周面に沿って移動するように設けられている。移動弁7は、
図1に示すように容器本体1を正立姿勢にした状態においては、筒状壁5cの縮径した下部に着座して、筒状壁5cと充填空間Sとを非連通状態にしている。なお移動弁7は、筒状壁5cの内周面に合わせた種々の形状のものが採用可能であるが、本実施形態では球状のものを使用している。
【0027】
本実施形態のキャップ本体8は合成樹脂製であって、逆止弁6の上方に位置する天壁8aと、天壁8aの下面に連結するとともに口部上部分3bの径方向外側に位置する外側壁8bと、天壁8aの外縁部から胴部3fの上端部に向けて延在する外周壁8cとを備えている。ここで、外側壁8bの内周面には、雄ねじ部3dに対応する雌ねじ部8dが設けられている。また、雌ねじ部8dの下方における外側壁8bの内周面は、口部下部分3cの外周面に気密に当接している。
【0028】
天壁8aの中央部には、天壁8aを貫く孔の縁部から上方に向けて延在し、その上部開口を内容物の注出口8eとする注出筒8fが設けられている。また天壁8aの下面には、基部6aの上端部を支持する凹部8gと、薄肉部6bの外縁部が当接する段部8hが設けられている。
【0029】
また天壁8aには、その表裏を貫通する外気導入口8jが設けられている。ここで、外気導入口8jから通気口3eに至る間には、空気用連通口5hから雄ねじ部3dと雌ねじ部8dとの間に形成される螺旋状の隙間を経由する連通路が設けられている。なお、通気口3eを設けた位置において、雄ねじ部3dを上下方向に切り欠く切り欠きを設け、この切り欠きを介して外気導入口8jと通気口3eとを連通させてもよい。
【0030】
蓋体9は、天壁8aの上方に位置する頂壁9aと、頂壁9aに一体に連結する蓋体外周壁9bとを備えている。頂壁9aの下面には、注出筒8fの内側に挿入されるとともに注出筒8fの内面と気密に当接するシール筒9cが設けられている。また蓋体外周壁9bの外周面には、キャップ本体8の外周壁8cに一体に連結するヒンジ部9dが設けられている。なお、本実施形態の蓋体9はキャップ本体8と一体に連結するものであるが、キャップ本体8とは別異に設け、ねじやアンダーカットによってキャップ本体8に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0031】
このような構成になる二重容器おいては、外層体3の胴部を押圧することによって内部空間Nが加圧され、これによって充填空間Sの圧力が高まるため、充填空間Sの内容物は、注出弁本体6cを上昇させつつ、内容物用連通口5bから連結片6dの周囲の隙間を通って基部6aの内側に流れ込み、注出筒8fの内部を通って注出口8eから注出される。ここで、通気口3eと外気導入口8jとをつなぐ連通路は、薄肉部6bの外縁部が段部8hに当接して閉鎖されているため、内部空間Nの空気が外界へ漏れ出すことはない。なお、筒状壁5c内の移動弁7は、内容物を注出させるべく容器本体1を傾倒姿勢に変位させた状態において、自重や筒状壁5cの下方側の開口から流入する内容物によって、注出弁本体6c側に移動している。
【0032】
その後、外層体3への押圧を解除すれば、充填空間Sの圧力が元の状態に戻って注出弁本体6cが天壁5aの上面に着座するため、内容物用連通口5bから充填空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。また、容器本体1を元の正立姿勢に変位させることによって、移動弁7は、それ自身の自重や充填空間S内の圧力低下によって下方に移動する。これによって筒状壁5cの上方内側には、移動弁7が移動した分のスペースが形成されることになるため、このスペース分に相当する分の内容液を注出筒8fから筒状壁5c内へ引き戻すことができ(サックバック機能)、液だれを有効に防止することができる。なお、下方に移動した移動弁7は、筒状壁5cの縮径した下部に着座するので、筒状壁5cから充填空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。そして、外層体3の復元に伴って内部空間Nが減圧されると、外気導入口8jから外気が取り込まれ、連通路を通して通気口3eから内部空間Nへ外気が導入される。これにより、内層体2を減容変形させたまま、外層体3を復元させることができる。
【0033】
ところで内容物を使い切った後は、注出キャップ4を容器本体1から取り外し、内容物が充填されている新たな容器本体1に注出キャップ4を付け替えることができる。ここで新たな容器本体1には、未使用時において口部3aを封止して内層体2を気密に維持するシール部材10が設けられている。本実施形態のシール部材10は、
図2(a)に示すように、口部上部分3bの上端部に固着される薄手のシートである(以下、シール部材10をシート10と称する)。また本実施形態においては、流通時等にシート10が不用意に破損してしまうことを防ぐために、雄ねじ部3dにねじ止めされるキャップ11が設けられている。
【0034】
このような新たな容器本体1に注出キャップ4を装着するにあたっては、容器本体1に対して注出キャップ4を回転させて雄ねじ部3dに雌ねじ部8dをねじ込んでいく。ここで、
図2(b)に示すように尖鋭部5eがシート10に押し当たる直前においては、口部下部分3cの外周面に外側壁8bの内周面が気密に当接している。すなわちこの状態において、容器本体1の口部3aは、外側壁8bによって外界と遮断されているため、雄ねじ部3dに雌ねじ部8dを最後までねじ込んで、尖鋭部5eによってシート10を破断させても、内層体2の内容物と外気との接触を避けることができる。
【0035】
なお本実施形態における内側壁5dは、シート10を破断して口部3aを開封する機能に加えて、外層体3を傾倒姿勢に変位させた際に内容物が漏れ出すのを防止する機能を備えるものである。このため本実施形態での内側壁5dは、環状に形成され、また口部上部分3bとの間で内層体2を挟むように構成しているが、例えばこのような内容物の漏れ出しを防止する機能を他で代用させる場合は、内側壁5dを環状に形成する必要はなく、また内層体2との間に隙間を持たせてもよい。また、シート10に替えて弱化部を有する板状の部材を採用して、注出キャップ4を付け替える際には内側壁5dによって弱化部が破断して口部3aが開封されるように構成してもよい。
【0036】
次に、本発明に従う二重容器の他の実施形態について、
図3、
図4を参照しながら説明する。なお、前述の実施形態に対して形状と機能が同じ部分、及び形状は相異するものの機能が同じ部分については、図に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施形態の二重容器における容器本体1は、
図3、
図4(a)に示すように、外層体3における口部上部分3bの上端部に、爪状の係合部3gを備えている。また、前述のシート10に替えてシール部材12を備えている。
【0038】
シール部材12は合成樹脂製であって、
図4(a)に示すように、口部上部分3bの内周面に沿って延在する周壁12aと、周壁12aに連結して口部3aを封止する隔壁12bを備えている。また隔壁12bには、厚みを薄くした弱化部12cが設けられている。そして周壁12aの上端部には、係合部3gに対応する被係合部12dが設けられている。
【0039】
なお、前述の実施形態における内側壁5dは、注出キャップ4を容器本体1に装着した状態において、口部上部分3bとの間で内層体2を挟んで内層体2に気密且つ液密に当接するものであったが、本実施形態の内側壁5dは、
図3に示すように周壁12aの
内周面に気密且つ液密に当接するものである。
【0040】
このような本実施形態の二重容器において、
図4(a)に示す新たな容器本体1に対して、
図4(b)に示すように注出キャップ4を回転させて雄ねじ部3dに雄ねじ部3dをねじ込んでいくと、尖鋭部5eが隔壁12bに押し当たる直前において、内側壁5dは、周壁12aの
内周面に気密に当接している。すなわちこの状態において、容器本体1の口部3aは、周壁12a及び隔壁12bによって外界と遮断されているため、雄ねじ部3dに雄ねじ部3dを最後までねじ込んで、尖鋭部5eによって弱化部12cを破断させても、内層体2の内容物と外気との接触を避けることができる。
【0041】
なお、本実施形態におけるシール部材12は、隔壁12bに弱化部12cを備えるものであるが、弱化部12cは周壁12aに設けてもよい。またシール部材12は、周壁12aに隔壁12bを一体に連結させたものであったが、隔壁12bに替えてシートを周壁12aの下端部に固着させたものであってもよい。
【0042】
本発明に従う二重容器は、これまでに説明した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更を含むものである。例えば口部を封止するシール部材は、これまでに説明した実施形態では尖鋭部によって破断されるものであったが、注出キャップを装着することによって、口部から除去されるものであってもよい。このようなものとしては、例えば
図3に示すシール部材12から被係合部12dを省いておき、注出キャップ4を装着することによって、内側壁5dが隔壁12bを押し込んでシール部材12が口部3aから脱落するように構成することが挙げられる。なお、この場合にあっては、内側壁5dに尖鋭部5eを設ける必要はなく、内側壁5dの下方の端部を水平方向に延在させてもよい。また、弱化部12cを省いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1:容器本体
2:内層体
3:外層体
3a:口部
3b:口部上部分
3c:口部下部分
3d:雄ねじ部
3e:通気口
3f:胴部
3g:係合部
4:注出キャップ
5:中栓
5a:天壁
5b:内容物用連通口
5c:筒状壁
5d:内側壁
5e:尖鋭部
5f:凹部
5g:外縁壁
5h:空気用連通口
6:逆止弁
6a:基部
6b:薄肉部
6c:注出弁本体
6d:連結片
7:移動弁
8:キャップ本体
8a:天壁
8b:外側壁
8c:外周壁
8d:雌ねじ部
8e:注出口
8f:注出筒
8g:凹部
8h:段部
8j:外気導入口
9:蓋体
9a:頂壁
9b:蓋体外周壁
9c:シール筒
9d:ヒンジ部
10:シール部材(シート)
11:キャップ
12:シール部材
12a:周壁
12b:隔壁
12c:弱化部
12d:被係合部
N:内部空間
O:中心軸
S:充填空間