(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内容物を収容可能な充填空間を有する内層体と、口部を貫通する通気口を有するとともに該内層体との相互間に該通気口に通じる内部空間を有する外層体と、該充填空間に通じる注出口を有するとともに該通気口を取り囲んで該口部に装着される注出キャップとを備える二重容器であって、
前記注出キャップは、
前記通気口に通じる外気導入口を有するとともに該通気口と該外気導入口との間に空気の通る連通路を備えるキャップ本体と、
径方向内側から外側に向かって延在し、内縁部は前記キャップ本体に直接的あるいは間接的に支持され、外縁部は通常時において前記キャップ本体の裏面に当接して前記連通路を閉鎖する一方、前記内部空間が減圧下になると該キャップ本体の裏面から離反して該連通路を解放する薄肉部を有する空気弁と、
前記口部を覆う隔壁と、該隔壁を貫いて前記通気口と前記外気導入口とを連通させる空気用連通口とを備える中栓と、
前記薄肉部を挟んで前記キャップ本体の裏面に対向して設けられ、該キャップ本体に直接的あるいは間接的に支持される一端部から該薄肉部に向かって、該薄肉部に近づく向きに突出しながら該薄肉部の周方向に向けて延在し、該薄肉部の一部に当接して該キャップ本体の裏面からの前記外縁部の離反を制限する弾性片と、を有し、
前記弾性片は、前記一端部が前記隔壁に連結するとともに前記空気用連通口の直上に設けられている二重容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した注出キャップは、特許文献1に示されているように、外層体に装着されるキャップ本体の内側に空気弁を備えている。そしてキャップ本体は、外層体の通気口に通じる外気導入口を備えていて、また空気弁は、通常時はキャップ本体の裏面に当接して通気口と外気導入口とをつなぐ連通路を閉鎖する一方、内部空間が減圧下になるとキャップ本体の裏面から離反して連通路を解放するように構成されている。
【0006】
ところで、内部空間に導入される空気の量や流速などによっては、キャップ本体の裏面から離反した空気弁が振動して音鳴りが発生することがあった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、空気弁に起因する音鳴りを効果的に抑制することが可能な二重容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内容物を収容可能な充填空間を有する内層体と、口部を貫通する通気口を有するとともに該内層体との相互間に該通気口に通じる内部空間を有する外層体と、該充填空間に通じる注出口を有するとともに該通気口を取り囲んで該口部に装着される注出キャップとを備える二重容器であって、
前記注出キャップは、
前記通気口に通じる外気導入口を有するとともに該通気口と該外気導入口との間に空気の通る連通路を備えるキャップ本体と、
径方向内側から外側に向かって延在し、内縁部は前記キャップ本体に直接的あるいは間接的に支持され、外縁部は通常時において前記キャップ本体の裏面に当接して前記連通路を閉鎖する一方、前記内部空間が減圧下になると該キャップ本体の裏面から離反して該連通路を解放する薄肉部を有する空気弁と、
前記口部を覆う隔壁と、該隔壁を貫いて前記通気口と前記外気導入口とを連通させる空気用連通口とを備える中栓と、
前記薄肉部を挟んで前記キャップ本体の裏面に対向して設けられ、該キャップ本体に直接的あるいは間接的に支持される一端部から該薄肉部に向かって、該薄肉部に近づく向きに突出しながら該薄肉部の周方向に向けて延在し、該薄肉部の一部に当接して該キャップ本体の裏面からの前記外縁部の離反を制限する弾性片と、
を有し、
前記弾性片は、前記一端部が前記隔壁に連結するとともに前記空気用連通口の直上に設けられている二重容器である。
【0009】
また本発明は、内容物を収容可能な充填空間を有する内層体と、口部を貫通する通気口を有するとともに該内層体との相互間に該通気口に通じる内部空間を有する外層体と、該充填空間に通じる注出口を有するとともに該通気口を取り囲んで該口部に装着される注出キャップとを備える二重容器であって、
前記注出キャップは、
前記通気口に通じる外気導入口を有するとともに該通気口と該外気導入口との間に空気の通る連通路を備えるキャップ本体と、
径方向内側から外側に向かって延在し、内縁部は前記キャップ本体に直接的あるいは間接的に支持され、外縁部は通常時において前記キャップ本体の裏面に当接して前記連通路を閉鎖する一方、前記内部空間が減圧下になると該キャップ本体の裏面から離反して該連通路を解放する薄肉部を有する空気弁と、
前記薄肉部を挟んで前記キャップ本体の裏面に対向して設けられ、該キャップ本体に直接的あるいは間接的に支持される一端部から該薄肉部に向かって、該薄肉部に近づく向きに突出しながら該薄肉部の周方向に向けて延在し、該薄肉部の一部に当接して該キャップ本体の裏面からの前記外縁部の離反を制限する弾性片と、を有し、
前記弾性片は、前記薄肉部の一部に当接する部位に凸部を有する二重容器でもある。
【0010】
前記中栓は、前記隔壁を貫いて前記充填空間と前記注出口とを連通させる内容物用連通口を備えることが好ましい。
また、前記薄肉部はドーナツ板状をなしていて、
前記弾性片は前記外縁部に当接し、且つ、前記薄肉部の中心軸を起点として前記外気導入口が位置する方向を0°方向とし、該中心軸周りに90°〜270°の範囲を前方域、残部を後方域とする場合に、少なくとも該前方域に複数設けられていることが好ましい。
【0011】
前記弾性片を、前記前方域から前記後方域に亘って前記中心軸周りに等角度で6個又は8個備えることが好ましい。
【0012】
前記外縁部は、前記内縁部よりも厚肉であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二重容器における注出キャップは、通常時においてキャップ本体の裏面に当接して空気の通る連通路を閉鎖する一方、内部空間が減圧下になるとキャップ本体の裏面から離反して連通路を解放する薄肉部を有する空気弁と、薄肉部を挟んでキャップ本体の裏面に対向して設けられ、キャップ本体に直接的あるいは間接的に支持される一端部から薄肉部に向かって、薄肉部に近づく向きに突出しながら薄肉部の周方向に向けて延在し、薄肉部の一部に当接してキャップ本体の裏面からの前記外縁部の離反を制限する弾性片とを備えている。すなわち、弾性片によって空気弁の振動が抑えられるので音鳴りが効果的に抑制できる。また、弾性片が当接していない部分の空気弁はキャップ本体の裏面から離反可能であるうえ、弾性片が当接する部分も弾性片を撓ませつつ離反することができるため、内部空間への空気の導入は十分に確保される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1を参照して、本発明に従う二重容器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等において、「上」方向、「下」方向とは、
図1に示すように外層体(符号3)が下方に位置し、蓋体(符号9)が上方に位置する状態での向きをいう。
【0017】
本実施形態の二重容器は、容器本体1(内層体2と外層体3で構成される)、注出キャップ4(中栓5、逆止弁6、移動弁7、キャップ本体8で構成される)、及び蓋体9を備えている。
【0018】
内層体2は、その内側に内容物を収容可能な充填空間Sを備えている。本実施形態の内層体2は、薄肉の合成樹脂製であって、減容変形可能に設けられている。
【0019】
外層体3は、中心軸Oに沿って延在する筒状の口部3aを備えている。本実施形態の口部3aは、上端が開口する上部分3bに対し、下部分3cが大径に形成されている。また上部分3bの外周面には雄ねじ部3dが設けられている。更に上部分3bには、径方向に延在して上部分3bを貫通する通気口3eが設けられ、また通気口3eが開口する外周面には、上下方向に延在して雄ねじ部3dを分断する切欠き3fが設けられている。なお、図示は省略するが、口部3aの下方には筒状の胴部と、胴部の下端を閉鎖する底部が設けられている。また本実施形態の外層体3は合成樹脂製であって、胴部は可撓性を有している。
【0020】
また内層体2と外層体3との相互間には、通気口3eに通じる内部空間Nが形成されている。
【0021】
本実施形態における内層体2と外層体3は、相互に相溶性が低い合成樹脂を剥離可能に積層させたものである。内層体2を構成する合成樹脂としては、ナイロン樹脂(PA)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、変性ポリオレフィン樹脂(例えば三井化学株式会社製「アドマー」(登録商標)等)を採用することができる。また外層体3を構成する合成樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)をはじめとするポリエチレン樹脂(PE)を採用することができる。このような内層体2と外層体3は、内層体2を形成する合成樹脂素材と外層体3を形成する合成樹脂素材とが積層されたパリソンを、ブロー成形することによって得ることができるが、他にも、内層体2の合成樹脂素材と外層体3の合成樹脂素材とを積層させた試験管状のプリフォームを準備し、このプリフォームを2軸延伸ブロー成形して形成することや、内層体及び外層体を個別に形成し、その後、内層体を外層体の内側に配置したものも用いることができる。また、図示は省略するが、内層体2と外層体3との間に、縦方向に延在して内層体2と外層体3とを部分的に接合する、1本或いは複数本の接着帯を設けてもよい。
【0022】
中栓5は、口部3aの上方に位置して充填空間Sを閉鎖する隔壁5aを備えている。隔壁5aの中央部分には、隔壁5aを貫通する内容物用連通口5bが設けられている。また、内容物用連通口5bの脇には、全体として円筒状をなすとともに、上部に対して下部を縮径させた筒状壁5cが設けられている。
【0023】
また、内容物用連通口5b及び筒状壁5cの径方向外側において、隔壁5aの下面には、内層体2と液密に当接する環状のシール壁5dが設けられ、隔壁5aの上面には、上方を開口させた環状の凹部5eが設けられている。更に隔壁5aは、その上面における凹部5eの径方向外側に、隔壁5aの外縁から上方に向けて延在する外縁壁5fを備えている。
【0024】
隔壁5aと外縁壁5fとの連結部には、これらを貫通する孔(空気用連通口)5gが設けられている。そして空気用連通口5gの上方には、弾性片5hが設けられている。
図2(b)に示すように弾性片5hは、隔壁5aに一体に連結する一端部5jを起点とし、そこから上方に向かって湾曲するように突出しつつ、
図2(a)に示すように隔壁5aの周方向に向けて延在して薄肉板状になる形態をなすものである。ここで隔壁5aの周方向に向けて延在するとは、図示したように中心軸Oを中心として円弧状に延在する場合に限定されるものではなく、この円弧に接するように(円弧の接線に対して傾いていてもよい)直線状に延在する場合も含む。このような薄肉板状の形態になる弾性片5hは、上方に位置する他端部5kが上下に移動するように撓み変形することが可能である。また、空気用連通口5g及び弾性片5hは、
図2(a)に示すように中心軸O周りに等角度でそれぞれ6個設けられている。なお弾性片は、
図5に示す弾性片5h’ように、隔壁5aに一体に連結する一端部5jを起点とし、そこから上方に向かって屈曲するように(側方から見て逆L字状になるように)突出しつつ、隔壁5aの周方向に向けて延在するものであってもよい。また弾性片は、
図6に示す弾性片5h”のように、他端部5kの上面に凸部5mを備えるものであってもよい。なお凸部5mは、後述する空気弁に対して、その薄肉部の一部に当接する部位である。また、弾性片の厚みは、
図2(b)、
図5に示すように全体として略同一になるようにしてもよいし、
図6に示すように、他端部5k側よりも一端部5j側が厚くなるようにしてもよい。
【0025】
なお、本実施形態の中栓5は、例えばポリプロピレン(PP)のような合成樹脂を金型内で成形して得ることができるが、空気用連通口5gの上方に弾性片5hを設ける場合は、隔壁5aによってアンダーカットになる弾性片5hの下面を、空気用連通口5gを利用して下金型によって形成することができる。すなわち、弾性片5hを成形するにあたっては、金型にスライド等を設ける必要がなく上下方向に移動する金型で形成することができるため、金型の構成が簡素化できるうえ、成形時の形状のばらつきも抑えることができる。
【0026】
逆止弁6は、空気の流れを規制するための空気弁6aと、内容物の流れを規制するための注出弁6bとを有している。本実施形態の逆止弁6は、ゴム、エラストマー、低密度ポリエチレン(LDPE)、或いは直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等の比較的軟質な材料で形成されている。
【0027】
空気弁6aは、中心軸Oを中心とする筒状であって、下端部が凹部5eによって支持される基部6cを備えている。また基部6cの径方向外側には、中心軸Oを中心とするドーナツ板状であって弾性変形可能な薄肉部6dが設けられていて、薄肉部6dの内縁部が基部6cと一体に連結している。なお空気弁6aは、本実施形態のように基部6cと薄肉部6dとが一体に連結するものに限られず、例えば基部と薄肉部とを別異に形成し、薄肉部の内縁部が基部に嵌め合わされるものであってもよい。また薄肉部6dの外縁部6eは、薄肉部6dの内縁部よりも厚肉になっている。
【0028】
また注出弁6bは、内容物用連通口5b及び筒状壁5cの上方に位置し、隔壁5aに着座して内容物用連通口5bを閉鎖する一方、筒状壁5cの一部は解放させたままとする板状の注出弁本体6fと、注出弁本体6fと基部6cとを弾性的に連結する連結片6gとを備えている。
【0029】
移動弁7は、筒状壁5c内に配置されていて、容器本体1の姿勢変更に応じて筒状壁5cの内周面に沿って移動するように設けられている。移動弁7は、
図1に示すように容器本体1を正立姿勢にした状態においては、筒状壁5cの縮径した下部に着座して、筒状壁5cと充填空間Sとを非連通状態にしている。
【0030】
キャップ本体8は、逆止弁6の上方に位置する天壁8aと、天壁8aの外縁に一体に連結するとともに口部3aを取り囲む外周壁8bとを備えている。なお、外周壁8bの内面には、中栓5の外縁壁5fが嵌合保持されている。また本実施形態のキャップ本体8は、合成樹脂製である。
【0031】
天壁8aの中央部には、天壁8aを貫く孔の縁部から上方に向けて延在し、その上部開口を内容物の注出口8cとする注出筒8dが設けられている。また天壁8aの下面には、下方を開口した凹部8eが設けられている。
図1に示すように凹部8eは、中栓5の凹部5eによって下端部が支持された基部6cに対し、その上端部を支持するものである。また、前述のように中栓5の外縁壁5fはキャップ本体8の内面に嵌合保持されることから、先に述べた薄肉部6dの内縁部は、中栓5及び基部6cを介してキャップ本体8に間接的に支持されるものであるといえる。更に、天壁8aの下面において、弾性片5hの直上には、
図1の部分拡大図に示すように、空気弁6aの外縁部6eが当接する段部8fが設けられている。なお本実施形態では、外縁部6eの上面が段部8fの下面に当接した状態において、外縁部6eの下面は、弾性片5hにおける他端部5k(
図2(b)参照)の上面に当接している。ところで、
図2(b)や
図5に示す実施形態では、外縁部6eの下面に対して他端部5kの上面が面接触しているが、接触面積が大きすぎる場合は外縁部6eからの抵抗が大きくなって弾性片5h、5h’が動きにくくなり、空気弁6aに必要以上の抵抗がかかってしまい、空気弁6aの機能に影響を及ぼすことがある。このような場合には、
図6に示す実施形態のように凸部5mを設けて、この凸部5mの上面が外縁部6eの下面に対して線接触するようにする構成や、更にこの凸部5mの上面を幅方向に湾曲させて、外縁部6eの下面に対して点接触する構成を採用してもよい。このような凸部5mを設ける場合は、外縁部6eとの接触面積が減って弾性片5h”が動きやすくなるため、空気弁6aにかかる抵抗を最適化することができる。
【0032】
また天壁8aには、その表裏を貫通する外気導入口8gが設けられている。ここで、外気導入口8gから通気口3eに至る間には、空気用連通口5gから切欠き3fを経由する、或いは、空気用連通口5gから雄ねじ部3dと雌ねじ部8jとの間に形成される螺旋状の隙間を経由する連通路Tが設けられている。なお、切欠き3fを設けることで連通路Tを通る空気が流れやすくなるが、これを省略してもよい。更に天壁8aの外縁部には、蓋体9を保持する爪部8hが設けられている。
【0033】
外周壁8bは、その内周面に雄ねじ部3dに適合する雌ねじ部8jを備えている。また外周壁8bの下端部は、キャップ本体8を口部3aに装着した状態において、下部分3cに気密に当接している。
【0034】
蓋体9は、天壁8aの上方に位置する頂壁9aと、頂壁9aに一体に連結する蓋体外周壁9bとを備えている。
【0035】
頂壁9aの下面には、注出筒8dの内側に挿入されるとともに注出筒8dの内面と気密に当接するシール筒9cが設けられている。
【0036】
蓋体外周壁9bの内周面には、爪部8hに係合する係合凹部9dが設けられている。また蓋体外周壁9bの外周面には、外気導入口8gの径方向外側において、キャップ本体8の外周壁8bに一体に連結するヒンジ部9eが設けられている。なお、本実施形態の蓋体9はキャップ本体8と一体に連結するものであるが、キャップ本体8とは別異に設け、ねじやアンダーカットによってキャップ本体8に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0037】
このような構成になる二重容器おいては、外層体3の胴部を押圧することによって内部空間Nが加圧され、これによって充填空間Sの圧力が高まるため、充填空間Sの内容物は、注出弁本体6fを上昇させつつ、内容物用連通口5bから連結片6gの周囲の隙間を通って基部6cの内側に流れ込み、注出筒8dの内部を通って注出口8cから注出される。ここで、通気口3eと外気導入口8gとをつなぐ連通路Tは、空気弁6aの外縁部6eが段部8fに当接して閉鎖されているため、内部空間Nの空気が外界へ漏れ出すことはない。なお、筒状壁5c内の移動弁7は、内容物を注出させるべく容器本体1を傾倒姿勢に変位させた状態において、自重や筒状壁5cの下方側の開口から流入する内容物によって、注出弁本体6f側(
図1に破線で示す位置)に移動している。
【0038】
その後、外層体3への押圧を解除しつつ容器本体1を正立姿勢に戻すことによって、充填空間Sの圧力が元の状態に戻って注出弁本体6fが隔壁5aの上面に着座するため、内容物用連通口5bから充填空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。また、移動弁7は、それ自身の自重や充填空間S内の圧力低下によって下方に移動し、これによって筒状壁5cの上方内側には、移動弁7が移動した分のスペースが形成されることになるため、このスペース分に相当する分の内容液を注出筒8dから筒状壁5c内へ引き戻すことができ(サックバック機能)、液だれを有効に防止することができる。なお、下方に移動した移動弁7は、筒状壁5cの縮径した下部に着座するので、筒状壁5cから充填空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。ここで空気弁6aにおいて、外縁部6eにおける弾性片5hが当接していない部分は、段部8fから離反することが可能であり、また、弾性片5hが当接する部分も弾性片5hを撓ませつつ段部8fから離反可能である。このため、外層体3の復元に伴って内部空間Nが減圧されると、外気導入口8gから入り込む空気は、段部8fから離反した外縁部6eと段部8fとの隙間を経て、空気用連通口5gと通気口3eとを介して内部空間Nへ導入される。これにより、内層体2を減容変形させたまま、外層体3を復元させることができる。また、弾性片5hが外縁部6eに当接していることによって空気弁6aの振動が抑えられるので、音鳴りを効果的に抑制することができる。
【0039】
ところで
図1、
図2に示す実施形態においては、弾性片5hを、中心軸Oを中心として等角度で6個備えるものであるが、
図3(a)に示すように、弾性片5hが1個の場合でも音鳴りを抑制することができる。なお、
図3(a)における弾性片5hは、中心軸Oを起点として外気導入口8gが位置する方向を0°方向とする場合に180°方向に位置するものであるが、外気導入口8gに対して弾性片5hを、中心軸O周りに相対的に回転させて確認したところ、何れの方向に位置する場合でも音鳴りを抑制することが可能であった。また、何れの方向に位置する場合でも外層体3は問題なく復元していた。ここで弾性片5hが180°方向に位置するとは、弾性片5hが薄肉部6dに当接する部位(本実施形態では
図2(b)に示す他端部5k)の位置をいい、以下の説明においても他端部5kの位置を基準とする。
【0040】
そして更に検討を重ねたところ、
図3(b)に示すように弾性片5hを0°方向と180°方向に2個設ける場合の音鳴りは、
図3(a)の場合よりも抑制可能であったが、
図3(c)に示すように45°方向、135°方向、225°方向、及び315°方向に4個設ける場合、及び
図3(d)に示すように45°方向、90°方向、135°方向、225°方向、270°方向、及び315°方向に6個設ける場合は、更に音鳴りを抑制することが可能であった。なお
図3(b)〜
図3(d)に示す弾性片5hについても、外気導入口8gに対して全体的に回転させて確認を行ったが、音鳴りの結果に殆ど変化は認められず、外層体3の復元にも影響は認められなかった。
【0041】
ところで、
図4(a)に示すように弾性片5hを45°方向、90°方向、135°方向、180°方向、225°方向、270°方向、及び315°方向に7個設ける場合について、弾性片5hを全体的に回転させて音鳴りの状況を確認したところ、外気導入口8gに対する位置によって変化が認められた。この点について
図4(a)〜(f)を参照して説明すると、中心軸O周りに90°〜270°(90°と270°を含む)の範囲を前方域Fとし、残部(0°〜90°、270°〜360°)を後方域Rとする場合に、
図4(d)〜(f)に示す位置では、
図3(c)〜(d)と略同等に音鳴りを抑制することができたが、
図4(a)〜(c)に示す位置では、より一層音鳴りを抑制することが可能であった。すなわち、音鳴りを抑制するには、後方域Rよりも前方域Fに弾性片5hを設ける方が抑制に効果的であるといえる。なお、
図4(a)〜(f)の場合も外層体3の復元は良好であった。
【0042】
このように、弾性片5hを少なくとも1個設けることによって空気弁6aの音鳴りを抑制することが可能であるが、
図3(c)等のように前方域Fに弾性片5hを複数設ける場合は、更に音鳴りを抑制することができる。
【0043】
そして、
図3(e)に示すように弾性片5hを中心軸O周りに等角度で8個設ける場合は、外気導入口8gに対して弾性片5hを全体的に回転させた何れの位置であっても、音鳴りの発生は認められなかった。また、
図3(f)に示すように弾性片5hを中心軸O周りに等角度で6個設ける場合も音鳴りの発生は認められなかった。このことから、空気弁6aの音鳴りを抑制するには、弾性片5hを中心軸O周りに等角度で6個、又は8個設ける場合が最も好ましいといえる。なお、
図3(e)の場合も、外層体3の復元は良好であったが、弾性片5hの数が増えるにつれて、外縁部6eは段部8fから離反しにくくなって外層体3の復元に影響を及ぼすおそれがある。このため、空気弁6aの音鳴りの抑制と外層体3の復元性の両立を考慮すると、弾性片5hを中心軸O周りに等角度で6個設ける場合が特に好ましいといえる。
【0044】
本発明に従う二重容器は、これまでに述べた実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更を行ったものでもよいし、また他の構成を付加したものでもよい。例えば本実施形態における空気弁6aの薄肉部6dは、キャップ本体8とは別異に設けた逆止弁6の基部6cに一体に連結していて、キャップ本体8に対して間接的に支持されるものであるが、キャップ本体8にこの基部6cに相当する部位を設けることによって、キャップ本体8に直接的に支持されるようにしてもよい。また、弾性片5hが薄肉部6dに当接する部位は、本実施形態においては他端部5kであったが、他端部5kよりも弾性片5hの中間部を上方に位置させ、この中間部が薄肉部6dに当接するようにしてもよい。また、空気弁6aの外縁部6eはキャップ本体8の段部8fに当接しているが、段部8fを設けずに天壁8aの下面に当接させるようにしてもよい。