(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840063
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】コネクテッドカー車載器のアプリケーション管理方法および装置
(51)【国際特許分類】
G06F 8/61 20180101AFI20210301BHJP
G06F 9/445 20180101ALI20210301BHJP
G06F 9/455 20060101ALI20210301BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20210301BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20210301BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20210301BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20210301BHJP
【FI】
G06F8/61
G06F9/445 130
G06F9/455 150
G08G1/09 F
G08G1/00 D
G16Y10/40
G16Y20/10
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-188651(P2017-188651)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-66926(P2019-66926A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】加須屋 悠己
【審査官】
杉浦 孝光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−221620(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/072002(WO,A1)
【文献】
特開2006−309664(JP,A)
【文献】
徳永雄一、外2名,CANを用いた階層統合型車載ネットワークの提案,情報処理学会シンポジウムシリーズVol.2017, No.1 マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2017)シンポジウム論文集,日本,一般社団法人情報処理学会,2017年 6月21日,Vol.2017 No.1,pp.768-773
【文献】
MORABITO, Roberto, et al.,Lightweight virtualization as enabling technology for future smart cars,2017 IFIP/IEEE Symposium on Integrated Network and Service Management (IM),2017年 6月,pp.1238-1245,URL,https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/7987466
【文献】
33 最新の仮想化技術を手軽に体験する Dockerで先端アプリを素早く試用,日経Linux,日本,日経BP社,2016年11月 8日,第18巻 第12号,pp.50-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/00 − 8/77
G06F 9/445− 9/455
G08G 1/00
G08G 1/09
G16Y 10/40
G16Y 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを実装したコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理装置において、
コンピュータをインターネットに常時接続する通信手段と、
車載OS上で稼働するコンテナ制御エージェントとを具備し、
前記コンテナ制御エージェントが、
コンテナイメージをインターネット経由で取得する手段と、
取得したコンテナイメージを車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動する手段と、
コネクテッドカーに関連した監視データを収集する手段と、
監視データに基づいてコンテナアプリケーションの停止イベントを検知する手段と、
停止イベントが検知されたコンテナアプリケーションの実行を停止する手段と、
監視データに基づいてコンテナイメージの削除イベントを検知する手段と、
削除イベントが検知されたコンテナイメージを削除する手段とを具備し、
前記削除イベントの頻度が停止イベントの頻度よりも低いことを特徴とするコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理装置。
【請求項2】
前記コンテナ制御エージェントが、
監視データに基づいてコンテナアプリケーションの開始イベントを検知する手段と、
開始イベントが検知されたコンテナアプリケーションのイメージを取得し、車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動する手段とを具備したことを特徴とする請求項1に記載のコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理装置。
【請求項3】
前記コンテナ制御エージェントが、
監視データに基づいてコンテナイメージの取得イベントを検知する手段と、
取得イベントが検知されたコンテナイメージを取得する手段と、
監視データに基づいてコンテナアプリケーションの起動イベントを検知する手段と、
起動イベントが検知されたコンテナアプリケーションのイメージを車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動する手段とを具備したことを特徴とする請求項1に記載のコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理装置。
【請求項4】
前記コンテナ制御エージェントが、
前記監視データをネットワーク上の監視サーバへ送信する手段と、
監視サーバが開始イベントを検知したコンテナアプリケーションのイメージを取得し、車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動する手段とを具備したことを特徴とする請求項1に記載のコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理装置。
【請求項5】
前記コンテナ制御エージェントが、
前記監視データをネットワーク上の監視サーバへ送信する手段と、
監視サーバが取得イベントを検知したコンテナイメージを取得する手段と、
監視サーバが起動イベントを検知したコンテナアプリケーションのイメージを車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動する手段とを具備したことを特徴とする請求項1に記載のコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理装置。
【請求項6】
前記監視データが、車載GPSにより検知された位置、標高および時刻の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理装置。
【請求項7】
前記監視データが、車載センサにより検知された車速、エンジン回転数、加速度、燃費、路面状況、走行距離、走行時間、整備、温度、湿度、照度、無線信号、カレンダの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理装置。
【請求項8】
インターネットに常時接続するコンピュータを実装したコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理方法において、
コンテナイメージをインターネット経由で取得し、
取得したコンテナイメージを車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動し、
コネクテッドカーに関連した監視データを収集し、
監視データに基づいてコンテナアプリケーションの停止イベントを検知し、
停止イベントが検知されたコンテナアプリケーションの実行を停止し、
監視データに基づいてコンテナイメージの削除イベントを検知し、
削除イベントが検知されたコンテナイメージを削除し、
前記削除イベントの頻度が停止イベントの頻度よりも低いことを特徴とするコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理方法。
【請求項9】
監視データに基づいてコンテナアプリケーションの開始イベントを検知し、
開始イベントが検知されたコンテナアプリケーションのイメージを取得し、
取得したイメージを車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動することを特徴とする請求項8に記載のコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理方法。
【請求項10】
監視データをネットワーク上の監視サーバへ送信し、
監視サーバが開始イベントを検知したコンテナアプリケーションのイメージを取得し、
取得したイメージを車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動することを特徴とする請求項8に記載のコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネットへの常時接続機能を具備したコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理方法および装置に係り、特に、コンテナ技術を利用することで即応性、瞬時性を損なうことなく省エネルギおよび省リソースを実現するコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IoT (Internet of Things)の典型として、インターネットへの常時接続機能を具備したコネクテッドカーが注目されている。コネクテッドカーは、コンピュータリソース上に車載OSを実装し、この車載OS上で各種のアプリケーションを実行することでドライバに様々なサービスを提供できる。
【0003】
特許文献1には、走行する車両の車内及び車外のうち少なくともいずれか一方に対して情報を提供する車両用情報提供システム、車両用情報提供方法、およびプログラムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-309664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、アプリケーションの起動および停止を自動的に制御することで省リソースを実現可能であるが、下記の3つの課題が見られる。
【0006】
(1) java(登録商標)アプリケーションを利用するため、走行中に必要なサービスの瞬時起動が実現不可であること。
【0007】
(2) インストール済みのアプリケーション制御に特化しているため、柔軟なサービス提供が不可であること。
【0008】
(3) アプリケーションの削除制御機構が含まれていないため、保存領域の制御が実現不可であり、ハードウェアリソースの効率的な利用が妨げられる。
【0009】
(4) アプリケーションが常時実行中となるのでCPUの処理負荷が増え、電力消費量が多くなる。
【0010】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、コンテナ技術を用いてアプリケーションを管理することにより、ハードウェアリソースやエネルギの搭載量に制約があるコネクテッドカー車載器において、アプリケーションの即応性、瞬時性を維持したまま省リソース、省エネルギを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、コンピュータを実装したコネクテッドカー車載器のアプリケーション管理装置において、以下の構成を具備した点に特徴がある。
【0012】
(1) コンピュータをインターネットに常時接続する通信手段と、車載OS上で稼働するコンテナ制御エージェントとを具備し、コンテナ制御エージェントが、コンテナイメージをインターネット経由で取得する手段と、取得したコンテナイメージを車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動する手段とを具備した。
【0013】
(2) コンテナ制御エージェントが、コネクテッドカーに関連した監視データを収集する手段と、監視データに基づいてコンテナアプリケーションの開始イベントを検知する手段と、開始イベントが検知されたコンテナアプリケーションのイメージを取得し、車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動する手段とを具備した。
【0014】
(3) コンテナ制御エージェントが、コネクテッドカーに関連した監視データを収集する手段と、監視データに基づいてコンテナイメージの取得イベントを検知する手段と、
【0015】
取得イベントが検知されたコンテナイメージを取得する手段と、監視データに基づいてコンテナアプリケーションの起動イベントを検知する手段と、起動イベントが検知されたコンテナアプリケーションのイメージを車載OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動する手段とを具備した。
【0016】
(4) コンテナ制御エージェントがさらに、監視データに基づいてコンテナアプリケーションの終了イベントを検知する手段と、終了イベントが検知されたコンテナアプリケーションの実行を停止し、当該コンテナアプリケーションのイメージを削除する手段とを具備した。
【0017】
(5) コンテナ制御エージェントがさらに、監視データに基づいてコンテナアプリケーションの停止イベントを検知する手段と、停止イベントが検知されたコンテナアプリケーションの実行を停止する手段と、監視データに基づいてコンテナイメージの削除イベントを検知する手段と、削除イベントが検知されたコンテナイメージを削除する手段とを具備した。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0019】
(1) コンテナアプリケーションの開始イベントが検知されてから、そのイメージがダウンロードされて展開、起動されるので、車載機ハードウェアのハードウェアリソース、特にメモリリソースおよびCPUリソースの有効利用が可能になる。
【0020】
(2) コンテナアプリケーションはJava(登録商標)アプリケーション等に較べて起動に要する時間が極めて短いので、開始イベントが検知されてから、その取得、展開、起動を行っても、開始イベントに応じた処理を実質的な応答遅れなく瞬時的に実行できるようになる。
【0021】
(3) コンテナアプリケーションの停止イベントとコンテナイメージの削除イベントとを区別し、削除イベントの頻度が停止イベントの頻度よりも低くなるようにしたので、コンテナイメージの削除及び取得が短時間で繰り返される無駄を防止できるようになる。
【0022】
(4) コンテナイメージの取得イベントとコンテナアプリケーションの起動イベントとを区別し、コンテナアプリケーションの起動イベントに備えて予めそのイメージを取得しておくことができるので、起動イベントに対して更に短時間でコンテナアプリケーションを起動できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコネクテッドカー車載器1を搭載するコネクテッドカー2に好適なネットワーク構成の一例を示した機能ブロック図である。
【
図2】コンテナ制御エージェント(12)の第1実施形態の機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態の動作を示したフローチャートである。
【
図4】開始イベントおよび終了イベントの一例を示した図である。
【
図5】開始イベントおよび終了イベントの他の例を示した図である。
【
図6】コンテナアプリ開始処理のフローチャートである。
【
図7】コンテナアプリ終了処理のフローチャートである。
【
図8】コンテナ制御エージェント(12)の第2実施形態の機能ブロック図である。
【
図9】第2実施形態の動作を示したフローチャートである。
【
図10】取得、起動、停止、削除の各イベントの一例を示した図である。
【
図11】取得、起動、停止、削除の各イベントの他の例を示した図である。
【
図12】コンテナイメージ取得処理のフローチャートである。
【
図13】コンテナイメージ起動処理のフローチャートである。
【
図14】コンテナイメージ停止処理のフローチャートである。
【
図15】コンテナイメージ削除処理のフローチャートである。
【
図16】本発明の第3実施形態の構成を示した機能ブロック図である。
【
図17】本発明の第7実施形態の構成を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクテッドカー車載器1を搭載するコネクテッドカー2に好適なネットワーク構成の一例を示した機能ブロック図である。
【0025】
コネクテッドカー車載機1は、コネクテッドカー2に搭載されてインターネットに常時接続され、同じくインターネットに常時接続する複数のサーバ資源3から各種のコンテナイメージを取得できる。各サーバ資源3には、作業者端末4を操作する作業者により、各種のコンテナイメージが予め蓄積、管理されている。
【0026】
コネクテッドカー車載機1において、車載機ハードウェア10は、専用または汎用のコンピュータハードウェアにより構成され、オペレーティングシステム(OS)を含む基本プログラムや各種の基本データを記憶するROM101、基本プログラムや各種のコンテナアプリケーションを実行するCPU102、このCPU102にワークエリアを提供するRAM103、インターネットとの常時接続を確保する無線インターフェースIF104およびディスプレイやタッチパネル等のユーザインタフェースUI105等を含み、さらにインターネット経由で取得したデータやアプリケーションを一時記憶する車載器ストストレージ14が接続されている。
【0027】
車載機ハードウェア10上では車載器OS11が稼働し、車載器OS11上ではコンテナ制御エージェント12が稼働する。コンテナイメージ13aは、各サーバ資源3から車載器ストストレージ14上にダウンロードされて一時記憶され、その後、車載器OS11上でコンテナアプリケーション13bに展開されて起動、実行される。
【0028】
前記コンテナ制御エージェント12は、コネクテッドカー2の状態、路面状態、位置あるいは環境等に関する監視データに基づいて、実行/停止すべきコンテナアプリケーションを選択し、さらに当該コンテナアプリケーションの実行/停止およびそのコンテナイメージの取得/削除を制御する。
【0029】
図2は、前記コンテナ制御エージェント12の第1実施形態の機能ブロック図である。監視データ取得部121は、コネクテッドカー2に実装されているGPS(図示省略)が出力する緯度,経度,高度および時刻に関する監視データ、ならびに車載センサが検知した車速、エンジン回転数、加速度、燃費、路面状況、走行距離、走行時間、整備、温度、湿度、照度、無線信号、カレンダが出力する各種の監視データを収集する。
【0030】
イベント検知部122は、前記各監視データに基づいて、コンテナイアプリケーションの開始トリガとなるコンテナアプリ開始イベントを検知する検知部122a、およびコンテナアプリケーションの終了トリガとなるコンテナアプリ終了イベントを検知する検知部122bを含む。
【0031】
コンテナ選択部123は、前記コンテナアプリケーションの開始イベントまたは終了イベントに基づいて、それぞれ開始または終了するコンテナアプリケーションを選択する。
【0032】
コンテナイメージ管理部124は、前記コンテナ選択部123の選択結果に基づいて、サーバ資源3から対応するコンテナイメージをダウンロードして車載器ストレージ14に蓄積し、あるいは終了するコンテナアプリケーションに対応する車載器ストストレージ14上のコンテナイメージを削除する。
【0033】
コンテナアプリ管理部125は、前記コンテナ選択部123による選択結果に基づいて、車載器ストストレージ14上のコンテナイメージを車載器OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動し、あるいは車載器OS上で起動中のコンテナアプリケーションを停止させる。
【0034】
本実施形態では、例えばコネクテッドカー2の位置情報に基づいて、当該コネクテッドカー2が所定の観光地域に入ったことが検知されると、当該観光地域に固有の観光案内アプリケーションが選択され、そのコンテナイメージを対応するサーバ資源3から自動的に取得、展開、起動することでドライバに観光案内サービスを提供できるようになる。
【0035】
また、コネクテッドカー2が当該観光地域から脱出したことが検知されると、前記取得した観光案内アプリケーションを自動的に終了、削除することで、ドライバに操作負担を強いることなくCPUリソースやメモリリソースを開放することができ、省リソースのみならず省エネルギが実現される。
【0036】
図3は、本発明の第1実施形態の動作を示したフローチャートであり、主にコンテナ制御エージェント12の動作を示している。
【0037】
ステップS11では、前記監視データ取得部121によりGPSおよび各センサ等から監視データが取得される。ステップS12では、前記各監視データに基づいて、前記イベント検知部122により、コンテナアプリケーションの開始イベントが発生したか否かが判断される。開始イベントが発生していれば、ステップS13へ進んでコンテナアプリ開始処理(
図6)が実行される。
【0038】
本実施形態では、例えば
図4の右側に示したように、GPSから取得した監視データ(緯度,経度)に基づいて、コネクテッドカー2の走行位置が所定のアプリ開始エリアA1に接近または到達したと判断されると、これがコンテナアプリケーションの開始イベントと判断される。
【0039】
あるいは、
図5の右側に示したように、GPSにより取得される監視データ(高度)に基づいてコネクテッドカー2の走行高度が所定のアプリ開始高度H1に接近または到達したと判断されると、これがコンテナアプリケーションの開始イベントと判断される。
【0040】
図6は、前記ステップS13で実行されるコンテナアプリ開始処理の手順を示したフローチャートである。
【0041】
ステップS21では、前記コンテナアプリ開始イベントに基づいて、新たに起動すべきコンテナアプリケーションが前記コンテナ選択部123により選択される。ステップS22では、前記コンテナイメージ管理部124により、前記選択されたコンテナアプリケーションを管理するサーバ資源3に対して当該アプリケーションのイメージが要求される。
【0042】
ステップS23では、前記コンテナイメージ管理部124が、前記要求したコンテナイメージを前記サーバ資源3から取得して車載器ストストレージ14に一時記憶する。ステップS24では、前記コンテナアプリ管理部125が、前記一時記憶したコンテナイメージを車載器OS上でコンテナアプリケーションに展開して起動、実行する。
【0043】
図3へ戻り、前記ステップS12において、コンテナ開始イベントが発生していないと判断されるとステップS14へ進み、コンテナアプリケーションの終了イベントが発生したか否かが判断される。終了イベントが検知されると、ステップS15へ進んでコンテナアプリ終了処理(
図7)が実行される。
【0044】
本実施形態では、前記
図4の左側に示したように、GPSから取得した監視データに基づいて検知されたコネクテッドカー2の走行位置が所定のアプリ開始エリアA1から脱出していると、これがコンテナアプリケーションの終了イベントと判断される。
【0045】
あるいは、前記
図5の左側に示したように、GPSにより取得される監視データに基づいて検知されたコネクテッドカー2の走行高度が所定のアプリ開始高度H1よりも低くなっていると、これがコンテナアプリケーションの終了イベントと判断される。
【0046】
図7は、前記コンテナアプリ終了処理の手順を示したフローチャートであり、ステップS31では、前記コンテナアプリ終了イベントに基づいて、前記コンテナ選択部123により、新たに終了させるコンテナアプリケーションが選択される。ステップS32では、前記コンテナアプリ管理部125により、前記選択されたコンテナアプリケーションが停止される。ステップS33では、前記コンテナイメージ管理部124により、前記停止させたコンテナアプリケーションのイメージが車載器ストストレージ14から削除される。
【0047】
本実施形態によれば、コンテナアプリケーションの開始イベントが検知されてから、そのコンテナイメージがダウンロードされて起動されるので、車載機ハードウェア10のハードウェアリソース、特にメモリリソースおよびCPUリソースの有効利用が可能になる。
【0048】
また、コンテナアプリケーションはJava(登録商標)アプリケーション等に較べて起動に要する時間が極めて短いので、開始イベントが検知されてから、その取得、展開、起動を行っても、開始イベントに応じた処理を実質的な応答遅れなく瞬時的に実行できるようになる。
【0049】
図8は、本発明の第2実施形態に係るコンテナ制御エージェント12の構成を示した機能ブロック図であり、
図2と同一の符号は同一又は同等部分を表しているので、その説明は省略する。
【0050】
上記の第1実施形態では、コンテナアプリケーションの開始イベントに応答して取得したコンテナイメージを直ぐに展開してコンテナアプリケーションを起動し、またコンテナアプリケーションの終了イベントに応答して停止したコンテナアプリケーションのイメージを直ぐに削除するものとして説明した。
【0051】
第1実施形態によれば、車載機ハードウェア10のハードウェアリソースを極めて有効に利用できる。しかしながら、コネクテッドカー2がアプリ開始エリアA1への接近および離脱を短時間で繰り返すような状況下では、コンテナイメージの取得および削除が繰り返されて無線リソースを無駄に消費することになりかねない。そこで、第2実施形態では車載機ハードウェア10のハードウェアリソースのみならず、無線リソースの有効利用をも可能にしている。
【0052】
本実施形態では、イベント検知部122が、前記第1実施形態のコンテナアプリ開始イベント検知部122aに代えて、コンテナイメージを各サーバ資源3から取得して車載器ストストレージ14上に一時記憶させるコンテナイメージ取得イベントを検知する検知部122c、および取得したコンテナイメージを車載器OS11上でコンテナアプリケーションに展開して起動するコンテナアプリ起動イベントを検知する検知部122dを備える。
【0053】
前記イベント検知部122は更に、前記第1実施形態のコンテナアプリ終了イベント検知部122bに代えて、起動中のコンテナアプリケーションを停止させるコンテナアプリ停止イベントを検知する検知部122e、および前記停止させたコンテナアプリケーションのイメージを車載器ストストレージ14上から削除するコンテナイメージ削除イベントを検知する検知部122fを備える。
【0054】
コンテナ選択部123は、前記コンテナイメージ取得イベント又はコンテナイメージ削除イベントに基づいて、それぞれ取得また削除するコンテナイメージを選択する。コンテナ選択部123はさらに、前記コンテナアプリ起動イベント又はコンテナアプリ停止イベントに基づいて、それぞれ起動または停止するコンテナアプリケーションを選択する。
【0055】
図9は、本発明の第2施形態の動作を示したフローチャートであり、ステップS41では、前記監視データ取得部121が各センサ等から監視データを取得する。ステップS42では、前記各監視データに基づいて、コンテナイメージの取得イベントが発生したか否かが判断される。取得イベントが発生していれば、ステップS43へ進んでコンテナイメージ取得処理(
図12)が実行される。
【0056】
ステップS44では、前記各監視データに基づいて、コンテナイメージの起動イベントが発生したか否かが判断される。起動イベントが発生していれば、ステップS45へ進んでコンテナイアプリ起動処理(
図13)が実行される。
【0057】
本実施形態では、例えば
図10の右側に示したように、GPSから取得した監視データに基づいて、コネクテッドカー2の走行位置が所定のアプリ取得エリアA2に接近あるいは達したことが検知されると、これがコンテナイメージ取得イベントと判断され、サーバ資源3から対応するコンテナイメージが取得されて車載器ストストレージ14上に記憶される。
【0058】
さらに、コネクテッドカー2の走行位置が前記アプリ取得エリアA2の内側に設定された所定のアプリ起動エリアA3に接近あるいは達したことが検知されると、これがコンテナアプリ起動イベントと判断される。
【0059】
あるいは、
図11の右側に示したように、GPSにより取得される監視データに基づいて、コネクテッドカー2の走行高度が所定のアプリ取得高度H2に達したことが検知されると、これがコンテナアプリ取得イベントと判断される。
【0060】
さらに、コネクテッドカー2の走行高度が前記アプリ取得高度A2よりも高く設定された所定のアプリ起動高度H3に接近あるいは達したことが検知されると、これがコンテナアプリ起動イベントと判断される。
【0061】
図12は、前記コンテナイメージ取得処理の手順を示したフローチャートであり、ステップS51では、前記コンテナアプリ取得イベントに基づいて、取得すべきコンテナアプリケーションが前記コンテナ選択部123により選択される。ステップS52では、前記コンテナイメージ管理部124により、前記選択されたコンテナアプリケーションを管理するサーバ資源3に対して、前記コンテナアプリケーションのイメージが要求される。ステップS53では、前記コンテナイメージ管理部124が、前記要求したコンテナイメージを前記サーバ資源3から取得して車載器ストストレージ14に一時記憶する。
【0062】
図13は、前記コンテナアプリ起動処理の手順を示したフローチャートであり、ステップS61では、前記コンテナアプリ起動イベントに基づいて、新たに起動すべきコンテナアプリケーションが前記コンテナ選択部123により選択される。ステップS62では、前記選択されたアプリケーションのイメージを取得済みであるか否かが判断される。取得済みでなければステップS63へ進み、対応するコンテナイメージを前記サーバ資源3から取得して車載器ストストレージ14に記憶する。
【0063】
ステップS64では、前記コンテナイメージ管理部124により、前記選択されたコンテナアプリケーションに対応した車載器ストストレージ14上のコンテナイメージを車載器OS上でコンテナアプリケーションに展開して実行する。
【0064】
図9へ戻り、ステップS46では、前記取得した各監視データに基づいて、コンテナアプリ停止イベントが発生したか否かが判断される。停止イベントが発生していれば、ステップS47へ進んでコンテナアプリ停止処理(
図14)が実行される。
【0065】
ステップS48では、前記各監視データに基づいて、コンテナイメージ削除イベントが発生したか否かが判断される。削除イベントが発生していれば、ステップS49へ進んでコンテナイメージ削除処理(
図15)が実行される。
【0066】
本実施形態では、前記
図10の左側に示したように、GPSから取得した監視データに基づいて、コネクテッドカー2の走行位置が所定のアプリ起動エリアA3から離脱したことが検知されると、これがコンテナアプリ停止イベントと判断される。
【0067】
さらに、コネクテッドカー2の走行位置が前記アプリ取得エリアA2からも離脱したことが検知されると、これがコンテナイメージ削除イベントと判断される。
【0068】
あるいは、前記
図11の左側に示したように、GPSにより取得される監視データに基づいて、コネクテッドカー2の走行高度が所定のアプリ停止高度H4まで低下したことが検知されると、これがコンテナアプリ停止イベントと判断される。
【0069】
さらに、コネクテッドカー2の走行高度が前記アプリ停止高度H4よりも低く設定されたコンテナイメージ削除高度H5まで低下したことが検知されると、これがコンテナアプリ削除イベントと判断される。
【0070】
図14は、前記コンテナアプリ停止処理の手順を示したフローチャートであり、ステップS71では、前記コンテナアプリ停止イベントに基づいて、前記コンテナ選択部123により、停止させるコンテナアプリケーションが選択される。ステップS72では、前記コンテナアプリ管理部125により、前記選択されたコンテナアプリケーションが停止される。
【0071】
図15は、前記コンテナイメージ削除処理の手順を示したフローチャートであり、ステップS81では、前記コンテナアプリ削除イベントに基づいて、前記コンテナ選択部123により、削除するコンテナイメージが選択される。ステップS82では、前記コンテナアプリ管理部125により、前記選択されたコンテナイメージに対応するコンテナアプリケーションが停止済みであるか否かが判断される。停止済みでなければ、ステップS83へ進んで当該アプリケーションが停止される。ステップS84では、前記選択されたコンテナイメージが車載器ストストレージ14上から削除される。
【0072】
本実施形態によれば、コンテナアプリケーションの停止イベントとコンテナイメージの削除イベントとを区別し、削除イベントの頻度が停止イベントの頻度よりも低くなるようにしたので、コンテナイメージの削除及び取得が短時間で繰り返される無駄を防止できるようになる。
【0073】
また、本実施形態によれば、コンテナイメージの取得イベントとコンテナアプリケーションの起動イベントとを区別し、コンテナアプリケーションの起動イベントに備えて予めそのイメージを取得しておくことができるので、起動イベントに対して更に短時間でコンテナアプリケーションを起動できるようになる。
【0074】
なお、上記の各実施形態では、コネクテッドカー2が自ら取得した監視データに基づいて、開始または終了するコンテナアプリケーションを選択して処理し、あるいは取得、起動、停止、削除するコンテナアプリケーション/コンテナイメージを選択して処置するものとして説明した。
【0075】
しかしながら、本発明はこれのみに限定されるものではなく、
図16に示した第3実施形態のように、コネクテッドカー2が自ら取得した監視データをインターネット経由で監視サーバ5へ送信すると、当該監視サーバ5が、上記と同様の手順で各イベントを検知するようにしても良い。
【0076】
あるいは、
図17に示した第4実施形態のように、コネクテッドカー2が自ら取得した監視データをインターネット経由で監視サーバ5へ送信すると共に、監視サーバ5も自ら温度や湿度といった各コネクテッドカーに固有ではない監視データを別途に取得し、これらの監視データに基づいて、上記と同様の手順で各イベントを検知するようにしても良い。
【0077】
その場合、監視サーバ5は、開始イベント(第1実施形態)や取得イベント(第2実施形態)を検知すると、これに応答してコンテナアプリケーションを選択し、そのコンテナイメージを対応するサーバ資源3からサーバプッシュ方式でコネクテッドカー2へ提供して処理させることができる。
【0078】
同様に、終了イベント(第1実施形態)や削除イベント(第2実施形態)に応答してコンテナアプリケーションを選択して、その結果をコネクテッドカー2へサーバプッシュで通知し、これに応答してコネクテッドカー2がコンテナアプリケーションの停止やコンテナイメージの削除を処理するようにしても良い。
【0079】
さらに、上記の各実施形態では、コネクテッドカー2の位置や高度に基づいて各イベントが検知されるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、例えば、所定の基準値を超える負の加速度が検知されるとコネクテッドカー2の急制動と判断し、これを開始/取得イベントとしてドライブレコーダの撮影アプリケーションを取得、展開、起動する一方、所定時間の経過を終了/停止イベントと判断してドライブレコーダの撮影を終了するようにしても良い。
【0080】
あるいは、ETCシステムが発する無線信号を受信すると、これを開始/取得イベントと判断し、ETC処理用のアプリケーションを取得、展開、起動するようにしても良い。
【0081】
あるいは、著作権により使用地域や使用時間等が限定されている地図、音楽、動画等のコンテンツの再生について、当該使用地域や時間帯に入ったことを開始/取得イベントとして再生アプリケーションを取得し、使用地域や時間帯から離脱したことを終了/削除イベントと判断して削除等するようにしても良い。
【0082】
あるいは、降雨や降雪の量が所定の基準値を超えたことを開始/取得イベントとして、安全運転を支援するアプリケーションを取得、起動し、降雨量等が基準値を下回ると、これを終了/削除イベントと判断して当該アプリケーションを削除等するようにしても良い。
【符号の説明】
【0083】
1…コネクテッドカー車載機,2…コネクテッドカー,3…サーバ資源,4…作業者端末,5…監視サーバ,10…車載機ハードウェア,11…車載器OS,12…コンテナ制御エージェント,13a…コンテナイメージ,13b…コンテナアプリケーション,14…車載器ストストレージ