(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した蓄電モジュールでは、使用条件等によりバイポーラ電極間の内部空間の内圧が上昇する場合がある。内圧が上昇した場合であっても、電極積層体の中間層では、積層方向に隣り合う内部空間の内圧による荷重がキャンセルされる。また、内部空間自体も僅かな空間であるため、電極の変形は比較的生じにくい。一方、電極積層体の積層端に位置する電極(以下、終端電極と称す)では、中間層とは異なり、内部空間の内圧による荷重はキャンセルされない。このため、内圧が上昇した場合に終端電極が積層方向の外側に変形することが考えられる。
【0005】
終端電極に変形が生じると、封止体に過大な応力がかかり、封止体が破断したり、封止体と終端電極との間に隙間が生じたりするおそれがある。封止体の破断や封止体と終端電極との間の隙間の形成は、電極積層体の外部への電解液の漏出の原因となり得る。したがって、内圧の上昇時においても終端電極の変形を抑制するための技術が望まれる。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、内圧の上昇時においても終端電極の変形を抑制できる蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、セパレータを介して複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体と、電極積層体の側面に設けられ、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体と、を備え、電極積層体の積層端には、積層方向の内側を向く面に正極及び負極の一方が形成された電極板を有する終端電極が配置されており、封止体は、終端電極における電極板の縁部に結合すると共に、当該電極板の縁から電極積層体の積層方向に直交する方向に張り出す張出部分を有する樹脂部を含み、樹脂部において、張出部分に対応する領域には、樹脂部を構成する樹脂材料よりも引張強度の高い樹脂材料によって構成された樹脂フィルムが配置されている。
【0008】
この蓄電モジュールでは、樹脂部において張出部分に対応する領域に樹脂フィルムが配置されている。樹脂フィルムを構成する樹脂材料は、樹脂部を構成する樹脂材料よりも引張強度が高くなっている。したがって、樹脂フィルムによって樹脂部が補強されるため、蓄電モジュールの内圧が上昇した場合であっても、樹脂部が結合している終端電極の変形を抑制できる。終端電極の変形を抑制することで、樹脂部の破断や樹脂部と終端電極との間の隙間の形成を抑制でき、電極積層体の外部への電解液の漏出を防止できる。
【0009】
樹脂フィルムは、樹脂部と電極板とが重なる領域にわたって配置されていてもよい。これにより、樹脂フィルムによって樹脂部を一層十分に補強できる。
【0010】
樹脂フィルムは、樹脂部における積層方向の外側を向く面に配置されていてもよい。この場合、樹脂フィルムの構成材料として、電解液に対する耐性を有しない材料を選択することが可能となる。
【0011】
樹脂フィルムは、樹脂部における積層方向の内側を向く面に配置されていてもよい。このような構成においても、樹脂フィルムによって樹脂部をしっかりと補強できる。
【0012】
正極が形成された電極板を有する終端電極には、樹脂フィルムを介して樹脂部が結合していてもよい。この場合、正極側の終端電極において、樹脂部と終端電極との間の隙間の形成を好適に抑制できる。
【0013】
電極板における樹脂部との結合面は、粗化メッキ面となっていてもよい。粗化メッキ面の形成により、電極板と樹脂部との結合強度の向上が図られる。したがって、樹脂部と終端電極との間の隙間の形成を一層好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内圧の上昇時においても終端電極の変形を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、蓄電モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。
[蓄電装置の構成]
【0017】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。同図に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、複数の蓄電モジュール4を積層してなる蓄電モジュール積層体2と、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えて構成されている。
【0018】
蓄電モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3体)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4枚)の導電板5とによって構成されている。蓄電モジュール4は、例えば後述するバイポーラ電極14を備えたバイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0019】
蓄電モジュール積層体2において、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0020】
各導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。各流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ直交する方向に互いに平行に延在している。これらの流路5aに冷媒を流通させることで、導電板5は、蓄電モジュール4,4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、
図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0021】
拘束部材3は、蓄電モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8,8と、エンドプレート8,8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(蓄電モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられており、エンドプレート8と導電板5との間が電気的に絶縁されている。
【0022】
エンドプレート8の縁部には、蓄電モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8,8によって挟持されて蓄電モジュール積層体2としてユニット化されると共に、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
[蓄電モジュールの構成]
【0023】
次に、蓄電モジュール4の構成について説明する。
図2は、蓄電モジュールの一実施形態を示す概略断面図である。同図に示すように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。
【0024】
電極積層体11は、セパレータ13を介して複数のバイポーラ電極14が積層されることによって構成されている。本実施形態では、電極積層体11の積層方向と蓄電モジュール積層体2の積層方向とが一致している。電極積層体11は、積層方向に延びる側面11aを有している。バイポーラ電極14は、電極板15、電極板15の一方面15aに設けられた正極16、電極板15の他方面15bに設けられた負極17を含んでいる。正極16は、正極活物質が塗工されてなる正極活物質層である。負極17は、負極活物質が塗工されてなる負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0025】
電極積層体11において、積層方向の一端には、負極終端電極18が配置されている。また、積層方向の他端には、正極終端電極19が配置されている。負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを含んでいる。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して積層方向の一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。負極終端電極18の電極板15の一方面15aには、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5が接触している。正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16とを含んでいる。正極終端電極19の電極板15の他方面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して積層方向の他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0026】
電極板15は、例えばニッケルからなる金属箔、或いはニッケルメッキ鋼板からなり、矩形状をなしている。電極板15の縁部15cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0027】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0028】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって矩形の筒状に形成されている。封止体12は、積層方向に延びる電極積層体11の側面11aにおいて電極板15の縁部15cを保持すると共に、側面11aを取り囲むように構成されている。封止体12は、各バイポーラ電極14の電極板15の縁部15cに沿ってそれぞれ設けられた一次封止体21と、一次封止体21の全体を外側から包囲するように設けられた二次封止体22とによって構成されている。一次封止体21は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、電極板15の一方面15a側の縁部15c(未塗工領域)において、電極板15の全ての辺にわたって連続的に設けられている。一次封止体21は、例えば超音波又は熱を用いた溶着により、縁部15cに対して強固に結合している。
【0029】
一次封止体21は、積層方向に隣り合うバイポーラ電極14,14間を封止するほか、積層方向に隣り合うバイポーラ電極14,14の電極板15,15間のスペーサとして機能する。電極板15,15間には、積層方向の一次封止体21,21の間隔によって規定される内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液Eが収容されている。
【0030】
一次封止体21と電極板15との結合にあたって、電極板15における一次封止体21との結合面は、複数の微細突起が設けられた粗化メッキ面23となっている。本実施形態では、正極16が設けられている電極板15の一方面15aの全面が粗化メッキ面23となっている。微細突起は、例えば電極板15に対する電解メッキによって形成された突起状の析出金属(付与物を含む)である。粗化メッキ面23においては、一次封止体21を構成する樹脂材料が微細突起間の隙間に入り込むことでアンカー効果が生じ、電極板15と一次封止体21との間の結合強度及び液密性の向上が図られる。
【0031】
二次封止体22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、電極積層体11における積層方向の全長にわたって延在している。二次封止体22は、例えば射出成型時の熱により、一次封止体21の外表面に溶着されている。封止体12において、内部空間Vに収容された電解液Eは、積層方向に隣り合う一次封止体21,21間を通り得るが、一次封止体21と二次封止体22との溶着部分で封止されている。
[一次封止体の詳細構成]
【0032】
次に、上述した一次封止体21について更に詳細に説明する。
図3は、蓄電モジュールの負極側の終端電極近傍の構成の一例を示す要部拡大断面図である。また、
図4は、蓄電モジュールの正極側の終端電極近傍の構成の一例を示す要部拡大断面図である。
【0033】
電極積層体11の中間層であるバイポーラ電極14に結合している一次封止体21は、
図3及び
図4に示すように、電極板15の一方面15aの縁部15cに重なる重なり部分31aと、電極板15の縁よりも外側に張り出している張出部分31bとを有する樹脂部31を有している。重なり部分31aは、一次封止体21の内周側を構成している。重なり部分31aには、セパレータ13の縁部が配置される段差部31cが設けられている。段差部31cの高さは、例えばセパレータ13の厚さと同程度であり、セパレータ13と張出部分31bとは略面一となっている。セパレータ13と段差部31cとは、例えば溶着によって互いに結合している。張出部分31bは、一次封止体21の外周側に位置し、電極板15の縁から電極積層体11の積層方向に直交する方向(電極板15の面内方向)に張り出している。張出部分31bの外縁部の一部は、二次封止体22に埋没した状態となっている。
【0034】
電極積層体11の一方の積層端に配置された負極終端電極18に結合している一次封止体21は、
図3に示すように、電極板15の一方面15aの縁部15cに重なる重なり部分32aと、電極板15の縁よりも外側に張り出している張出部分32bとを有する樹脂部32を有している。重なり部分32aと張出部分32bとの境界部分には、電極板15の縁部15cが配置される段差部32cが設けられている。段差部32cは、樹脂部32における積層方向の内側を向く面に形成されている。段差部32cの高さは、例えば電極板15の厚さと同程度であり、電極板15と張出部分32bとは略面一となっている。張出部分32bは、一次封止体21の外周側に位置し、電極板15の縁から電極積層体11の積層方向に直交する方向(電極板15の面内方向)に張り出している。張出部分32bの外縁部の一部は、二次封止体22に埋没した状態となっている。
【0035】
樹脂部32において、張出部分32bに対応する領域には、樹脂部32を構成する樹脂材料よりも引張強度の高い樹脂材料によって構成された樹脂フィルム33が配置されている。本実施形態では、樹脂フィルム33は、樹脂部32における積層方向の外側を向く面に配置されている。また、本実施形態では、樹脂フィルム33は、張出部分32bに対応する領域のみならず、張出部分32bに対応する領域及び重なり部分32aに対応する領域の全域にわたって樹脂部32に結合している。樹脂フィルム33の外縁部の一部は、張出部分32bと共に二次封止体22に埋没した状態となっている。樹脂フィルム33の厚さは、二次封止体22が負極終端電極18に接触している導電板5よりも積層方向に突出しない範囲であれば特に制限はない。樹脂フィルム33の厚さは、例えば樹脂部32の張出部分32bの厚さよりも小さくてもよく、重なり部分32aの厚さよりも小さくてもよい。
【0036】
電極積層体11の他方の積層端に配置された正極終端電極19に結合している一次封止体21は、
図4に示すように、電極板15の一方面15aの縁部15cに重なる重なり部分42aと、電極板15の縁よりも外側に張り出している張出部分42bとを有する樹脂部42を有している。重なり部分42aには、セパレータ13の縁部が配置される段差部42cが設けられている。段差部42cの高さは、例えばセパレータ13の厚さと同程度であり、セパレータ13と張出部分42bとは略面一となっている。セパレータ13と段差部42cとは、例えば溶着によって互いに結合している。張出部分42bは、一次封止体21の外周側に位置し、電極板15の縁から電極積層体11の積層方向に直交する方向(電極板15の面内方向)に張り出している。張出部分42bの外縁部の一部は、二次封止体22に埋没した状態となっている。
【0037】
また、樹脂部42において、張出部分42bに対応する領域には、樹脂部41を構成する樹脂材料よりも引張強度の高い樹脂材料によって構成された樹脂フィルム43が配置されている。本実施形態では、樹脂フィルム43は、樹脂部42における積層方向の外側を向く面に配置されている。また、本実施形態では、樹脂フィルム43は、張出部分42bに対応する領域のみならず、張出部分42bに対応する領域及び重なり部分42aに対応する領域の全域にわたって樹脂部42に結合している。樹脂フィルム43の外縁部の一部は、張出部分42bと共に二次封止体22に埋没した状態となっている。樹脂フィルム43の厚さは、二次封止体22が正極終端電極19に接触している導電板5よりも積層方向に突出しない範囲であれば特に制限はない。樹脂フィルム43の厚さは、例えば樹脂部42の張出部分42bの厚さと同程度であってもよく、張出部分42bの厚さよりも小さくてもよい。
【0038】
樹脂フィルム43において、重なり部分42aと張出部分42bとの境界部分に対応する位置には、電極板15の縁部15cが配置される段差部43aが設けられている。段差部43aは、樹脂フィルム43における積層方向の外側を向く面に形成されている。この段差部43aを利用し、正極終端電極19の電極板15の縁部15cには、樹脂フィルム43を介して樹脂部42が結合している。段差部43aの高さは、例えば電極板15の厚さと同程度であり、電極板15と樹脂フィルム43とは略面一となっている。
【0039】
一次封止体21の樹脂部31,32,42を構成する樹脂材料としては、例えば酸変性ポリプロピレン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン、ゴム成分とポリプロピレンとを混合した熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。また、二次封止体22を構成する材料としては、例えば変性ポリフェニレンエーテルが挙げられる。樹脂フィルム33,43を構成する樹脂材料としては、酸変性ポリプロピレン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
[作用効果]
【0040】
図5は、比較例に係る蓄電モジュールにおける内圧上昇時の負極側の終端電極の様子を示す要部拡大断面図である。また、
図6は、比較例に係る蓄電モジュールにおける内圧上昇時の正極側の終端電極の様子を示す要部拡大断面図である。
図5及び
図6に示す比較例に係る蓄電モジュール100では、上記実施形態に係る蓄電モジュール4とは異なり、負極終端電極118及び正極終端電極119に結合している一次封止体121に樹脂フィルム33,43が設けられていない。蓄電モジュール100では、使用条件等によりバイポーラ電極114,114間の内部空間Vの内圧が上昇した場合、電極積層体111の中間層では、積層方向に隣り合う内部空間Vの内圧による荷重がキャンセルされる。また、内部空間V自体も僅かな空間であるため、バイポーラ電極114の変形は比較的生じにくい。
【0041】
一方、電極積層体111の積層端に位置する負極終端電極118及び正極終端電極119では、中間層とは異なり、内部空間Vの内圧による荷重はキャンセルされない。このため、
図5及び
図6に示すように、内圧が上昇した場合に負極終端電極118及び正極終端電極119が積層方向の外側に変形することが考えらえる。かかる変形は、特に導電板と二次封止体122との間の拘束力が付加されない部分で生じ易い。負極終端電極118及び正極終端電極119に変形が生じると、一次封止体121に過大な応力がかかり、一次封止体121が破断したり、一次封止体121と負極終端電極118及び正極終端電極119との間に隙間が生じたりするおそれがある。一次封止体121の破断や一次封止体121と負極終端電極118及び正極終端電極119との間の隙間の形成は、電極積層体111の外部への電解液Eの漏出の原因となり得る。
【0042】
これに対し、蓄電モジュール4では、負極終端電極18に結合している一次封止体21の樹脂部32において、張出部分32bに対応する領域に樹脂フィルム33が配置されている。同様に、正極終端電極19に結合している一次封止体21の樹脂部42において、張出部分42bに対応する領域に樹脂フィルム43が配置されている。これらの樹脂フィルム33,43を構成する樹脂材料は、樹脂部32,42を構成する樹脂材料よりも引張強度が高くなっている。したがって、樹脂フィルム33,43によって樹脂部32,42が補強されるため、蓄電モジュール4の内圧が上昇した場合であっても、樹脂部32が結合している負極終端電極18及び樹脂部42が結合している正極終端電極19の変形を抑制できる。
【0043】
負極終端電極18及び正極終端電極19の変形を抑制することで、樹脂部32,42の破断、樹脂部32と負極終端電極18との間の隙間の形成、樹脂部42と正極終端電極19との間の隙間の形成を抑制でき、電極積層体11の外部への電解液Eの漏出を防止できる。このような構成は、一次封止体21として電解液Eに対する耐性(ここではアルカリ耐性)を有する樹脂材料を選択する観点から、一次封止体21自体の引張強度が得られにくい場合に特に有意なものとなる。
【0044】
また、蓄電モジュール4では、張出部分32bに対応する領域に加えて、電極板15と重なる重なり部分32aに対応する領域にわたって樹脂フィルム33が配置されている。同様に、蓄電モジュール4では、張出部分42bに対応する領域に加えて、電極板15と重なる重なり部分42aに対応する領域にわたって樹脂フィルム43が配置されている。これにより、樹脂フィルム33,43によって樹脂部32,42を一層十分に補強できる。
【0045】
なお、樹脂フィルム33は、必ずしも重なり部分32aに対応する領域の全域に対して配置されていなくてもよく、張出部分32bに対応する領域の全域と重なり部分32aに対応する領域の一部とにわたって配置されていてもよい。同様に、樹脂フィルム43は、必ずしも重なり部分42aに対応する領域の全域に対して配置されていなくてもよく、張出部分42bに対応する領域の全域と重なり部分42aに対応する領域の一部とにわたって配置されていてもよい。
【0046】
また、蓄電モジュール4では、樹脂フィルム33が樹脂部32における積層方向の外側を向く面に配置されている。同様に、樹脂フィルム43が樹脂部42における積層方向の外側を向く面に配置されている。これにより、樹脂フィルム33,43の構成材料として、電解液Eに対する耐性を有しない材料を選択することが可能となる。したがって、構成材料の選択幅が広がり、引張強度が一層十分な樹脂材料を樹脂フィルム33,43の構成材料として用いることができる。
【0047】
また、蓄電モジュール4では、正極終端電極19の電極板15が樹脂フィルム43を介して樹脂部42に結合している。これにより、正極終端電極19において、樹脂部42と正極終端電極19との間の隙間の形成を好適に抑制できる。
【0048】
さらに、蓄電モジュール4では、電極板15における樹脂部32,42との結合面が粗化メッキ面23となっている。粗化メッキ面23の形成により、電極板15と樹脂部32,42との結合強度の向上が図られる。したがって、樹脂部32と負極終端電極18との間の隙間の形成、樹脂部42と正極終端電極19との間の隙間の形成を一層好適に抑制できる。
[変形例]
【0049】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、負極終端電極18の電極板15に結合している樹脂部32において、張出部分32bに対応する領域及び重なり部分32aに対応する領域の全域にわたって樹脂フィルム33が配置されているが、例えば
図7に示すように、樹脂部32において張出部分32bに対応する領域のみに樹脂フィルム33が配置されていてもよい。
【0050】
正極終端電極19の電極板15に結合している樹脂部42においても同様に、例えば
図8に示すように、樹脂部42において張出部分42bに対応する領域のみに樹脂フィルム43が配置されていてもよい。
図8の例では、樹脂フィルム43に段差部43aは設けられておらず、電極板15と等厚の樹脂フィルム43が張出部分42bに対応する領域に設けられることによって、電極板15と樹脂フィルム43とが略面一となっている。
【0051】
電極板15と結合している部分では、樹脂部32,42の強度は比較的確保しやすい。このため、
図7及び
図8に示す構成においても、樹脂フィルム33,43によって樹脂部32,42が十分に補強される。したがって、蓄電モジュール4の内圧が上昇した場合であっても、樹脂部32が結合している負極終端電極18及び樹脂部42が結合している正極終端電極19の変形を抑制できる。
【0052】
また、例えば上記実施形態では、負極終端電極18の電極板15に結合している樹脂部32において、積層方向の外側を向く面に樹脂フィルム33が配置されているが、例えば
図9に示すように、樹脂フィルム33は、樹脂部32における積層方向の内側を向く面に配置されていてもよい。
図9の例では、樹脂フィルム33は、電極板15と重ならないように、張出部分32bに対応する領域にのみ配置されている。また、
図9の例では、樹脂フィルム33の厚さの分だけ樹脂部32の張出部分32bの厚さが小さくなっており、これにより、電極板15と樹脂フィルム33とが略面一となっている。
【0053】
正極終端電極19の電極板15に結合している樹脂部42においても同様に、例えば
図10に示すように、積層方向の内側を向く面に樹脂フィルム43が配置されていてもよい。
図10の例では、
図4の例と比べて樹脂部42と樹脂フィルム43との位置関係が反転し、電極板15の縁部15cに樹脂部42が直接結合している。樹脂部42において、重なり部分42aと張出部分42bとの境界部分に対応する位置には、電極板15の縁部15cが配置される段差部42cが設けられている。段差部42cは、樹脂部42における積層方向の外側を向く面に形成されている。段差部42cの高さは、例えば電極板15の厚さと同程度であり、電極板15と樹脂部42とは略面一となっている。
【0054】
また、
図10の例では、樹脂フィルム43は、樹脂部42における積層方向の内側を向く面において、張出部分42bに対応する領域及び重なり部分42aに対応する領域の全域にわたって配置されている。また、樹脂フィルム43には、重なり部分42aに対応する領域において、セパレータ13の縁部が略面一に配置される段差部43aが設けられている。段差部43aの高さは、例えばセパレータ13の厚さと同程度であり、セパレータ13と樹脂フィルム43とは略面一となっている。
【0055】
樹脂フィルム33,43を構成する樹脂材料として電解液Eに対する耐性を有する樹脂材料を選択する場合、
図9及び
図10に示す構成においても、樹脂フィルム33,43によって樹脂部32,42をしっかりと補強できる。したがって、蓄電モジュール4の内圧が上昇した場合であっても、樹脂部32が結合している負極終端電極18及び樹脂部42が結合している正極終端電極19の変形を抑制できる。