【文献】
KUIJPERS, NIELS G. A. et al.,ONE-STEP ASSEMBLY AND TARGETED INTEGRATION OF MULTIGENE CONSTRUCTS ASSISTED BY THE I-SCEI MEGANUCLEASE IN SACCHAROMYCES CEREVISIAE,FEMS YEAST RESEARCH,2013年,Vol. 13,pp. 769-781
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の核酸挿入物及び前記第1の3’ホモロジーアーム、並びに前記第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームが、隣接する核酸の重複フラグメントであり、それが、前記標的ゲノム遺伝子座への前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み込みによって改質される、請求項1または2に記載の方法。
(I)前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズが100kb〜125kb、125kb〜150kb、150kb〜175kb、175kb〜200kb、200kb〜225kb、225kb〜250kb、250kb〜275kb、275kb〜300kb、300kb〜350kb、350kb〜400kb、400kb〜450kb、若しくは450kb〜500kbであるか、
(II)前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズが少なくとも200kbであり、任意選択的に、前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズが300kbであるか、又は
(III)前記標的化されたマウスES細胞若しくは前記標的化されたラットES細胞が、前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらが100kb〜500kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
(I)前記第1のLTVEC又は前記第2のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が10kb〜20kb、20kb〜40kb、40kb〜60kb、60kb〜80kb、80kb〜100kb、100kb〜120kb、又は120kb〜150kbであり、及び/又は
(II)前記第1のLTVECが少なくとも50kbであり、かつ前記第2のLTVECが少なくとも50kbであり、任意選択的に、前記第1のLTVECが少なくとも100kbであり、かつ前記第2のLTVECが少なくとも100kbである、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
前記第1の核挿入及び前記第1の3’ホモロジーアーム、並びに前記第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームが、隣接する核酸の重複フラグメントであり、前記第2の核挿入及び前記第2の3’ホモロジーアーム、並びに前記第3の核酸挿入物及び第3の5’ホモロジーアームが、前記隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは、前記標的ゲノム遺伝子座への前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み込みによって改質される、請求項10または11に記載の方法。
(I)前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズが100kb〜125kb、125kb〜150kb、150kb〜175kb、175kb〜200kb、200kb〜225kb、225kb〜250kb、250kb〜275kb、275kb〜300kb、300kb〜350kb、350kb〜400kb、400kb〜450kb、450kb〜500kb、500kb〜550kb、550kb〜600kb、600kb〜650kb、又は650kb〜700kbであるか、
(II)前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズが少なくとも200kbであり、任意選択的に、前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズが400kbであるか、又は
(III)前記標的化されたマウスES細胞若しくは前記標的化されたラットES細胞が、前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらが100kb〜700kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する、
請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
(I)前記第1のLTVECの前記第1の重複配列が、前記第2のLTVECの前記第1の重複配列と同一であり、かつ/若しくは前記第2のLTVECの前記第2の重複配列が前記第3のLTVECの前記第2の重複配列と同一であり、及び/又は
(II)前記第1の重複配列の前記サイズが1kb〜70kbであり、かつ/若しくは前記第2の重複配列の前記サイズが1kb〜70kbであり、及び/又は
(III)前記第1の重複配列の前記サイズが少なくとも10kbであり、かつ/若しくは、前記第2の重複配列の前記サイズが少なくとも10kbであり、任意選択的に、前記第1の重複配列の前記サイズが少なくとも20kbであり、かつ/若しくは、前記第2の重複配列の前記サイズが少なくとも20kbである、
請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
(I)前記第1のLTVEC、前記第2のLTVEC、又は前記第3のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が10kb〜20kb、20kb〜40kb、40kb〜60kb、60kb〜80kb、80kb〜100kb、100kb〜120kb、又は120kb〜150kbであり、及び/又は
(II)前記第1のLTVECが少なくとも50kbであり、前記第2のLTVECが少なくとも50kbであり、かつ前記第3のLTVECが少なくとも50kbであり、任意選択的に、前記第1のLTVECが少なくとも100kbであり、前記第2のLTVECが少なくとも100kbであり、かつ前記第3のLTVECが少なくとも100kbである、
請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
前記ヌクレアーゼ剤が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はメガヌクレアーゼである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質と、ガイドRNA(gRNA)とであり、任意選択的に、前記Casタンパク質は、Cas9である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
相同組み換えを通じたゲノム修飾の技術は、過去20年にわたって大幅に進歩しているが、多くの状況において、例えば、げっ歯類ゲノムの大部分が、大型ヒトゲノムフラグメントと置き換えられるか、又はある特定の細胞型、例えば、線維芽細胞若しくは他の体細胞を標的化しているとき、非常に大型の大型標的化ベクター、LTVECを使用した許容できる標的化頻度を実現する困難さはまだ残る。
【0005】
単一の隣接する核酸セグメントを形成するために互いと組み換えることが可能である2つ以上の標的化ベクターを利用する標的化系を介して、細胞内の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法及び組成物が提供される。任意に、標的化ベクターは、大型標的化ベクター(LTVEC)である。任意に、LTVECはそれぞれ、サイズが少なくとも10kbである。
【0006】
本発明は、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法を提供し、(a)標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することと、(b)第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECとを、細胞に導入することであって、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の5’アームは互いに、又は個々に1つ以上の更なるLTVECの更なる5’及び3’ホモロジーアームに相同であり、それぞれは、更なる5’ホモロジーアーム及び更なる3’ホモロジーアームが隣接した更なる核酸挿入物を含み、標的ゲノム遺伝子座は、対応するゲノムセグメント間の第1の核酸挿入物、存在する場合には1つ以上の更なるLTVECの1つ以上の更なる核酸挿入物、及び第2の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、(c)標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた第1の核酸挿入物、存在する場合には1つ以上の更なるLTVECの1つ以上の更なる核酸挿入物、及び第2の核酸挿入物を含む、標的化された細胞を選択することと、を含む。任意に、第1のLTVEC、第2のLTVEC、及び1つ以上の更なるLTVECはそれぞれ、サイズが少なくとも10kbである。いくつかのそのような方法において、更なるLTVECは、存在する場合、第1のLTVECと第2のLTVECとの間に挿入される、1つ以上の他のLTVECである。
【0007】
本発明はまた、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための二重標的化方法を提供し、(a)標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することと、(b)サイズが少なくとも10kbであり、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、サイズが少なくとも10kbであり、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECとを、細胞に導入することであって、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアームは、第2のLTVECの第2の5’ホモロジーアームに相同の第1の重複配列を有し、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、標的ゲノム遺伝子座は、対応するゲノムセグメント間の第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、(c)標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物を含む、標的化された細胞を選択することと、を含む。
【0008】
任意に、第1の核挿入及び第1の3’ホモロジーアーム、並びに第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームは、隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物の組み込みによって改質される。
【0009】
いくつかのそのような方法において、細胞は、ヒト細胞である。他のそのような方法において、細胞は、非ヒト細胞である。いくつかのそのような方法において、細胞は、多能性細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、又は線維芽細胞である。任意に、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である。いくつかのそのような方法において、細胞は、哺乳類細胞である。任意に、哺乳類細胞は、げっ歯類細胞である。任意に、げっ歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。
【0010】
上記の方法のうちのいくつかにおいて、ヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はメガヌクレアーゼを含む。上記の方法のうちのいくつかにおいて、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質と、ガイドRNA(gRNA)とを含む。任意選択的に、Casタンパク質は、Cas9である。
【0011】
いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、細胞の種とは異なる種由来である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、ヒト核酸である。
【0012】
いくつかの方法において、第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約50kb〜約500kb、約50kb〜約300kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、約275kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、又は約450kb〜約500kbである。任意に、第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約100kb〜約500kbである。任意に、第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約300kbである。
【0013】
いくつかの方法において、標的化された細胞は、第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらは、約5kb〜約500kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する。
【0014】
いくつかの方法において、第1のLTVECの第1の重複配列は、第2のLTVECの第1の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である。いくつかの方法において、第1の重複配列のサイズは、約1kb〜約70kbである。いくつかの方法において、第1の重複配列のサイズは、少なくとも10kb又は少なくとも20kbである。
【0015】
いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。任意に、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、又は約700kb〜約800kbである。
【0016】
いくつかの方法において、第1のLTVEC及び第2のLTVECの組み合わせた使用は、単一のLTVECの使用と比較して標的化効率性の増大をもたらす。任意に、標的化効率性の増大は、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である。
【0017】
いくつかの方法において、第1のLTVEC又は第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbであり、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbである。いくつかの方法において、第1のLTVEC又は第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbであり、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbである。
【0018】
本発明はまた、F0世代非ヒト動物を生産するための方法を提供し、(a)非ヒト宿主胚に非ヒトES細胞を導入することであって、非ヒトES細胞は、上記の方法のうちのいずれかによって生産された、導入することと、(b)代理母において非ヒト宿主胚を懐胎させることであって、代理母が、修飾を含むF0世代非ヒト動物を生産する、懐胎させることと、を含む。任意に、非ヒト動物は、マウス又はラットである。
【0019】
本発明はまた、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための三重標的化方法を提供し、(a)標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することと、(b)サイズが少なくとも10kbであり、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、サイズが少なくとも10kbであり、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECと、サイズが少なくとも10kbであり、第3の5’ホモロジーアーム及び第3の3’ホモロジーアームが隣接した第3の核酸挿入物を含む、第3のLTVECとを、細胞に導入することであって、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアームは、第2のLTVECの第2の5’ホモロジーアームに相同の第1の重複配列を有し、第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、第3のLTVECの第3の5’ホモロジーアームに相同の第2の重複配列を有し、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第3のLTVECの第3の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、標的ゲノム遺伝子座は、対応するゲノムセグメント間の第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、(c)標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物を含む、標的化された細胞を選択することと、を含む。
【0020】
任意に、第1の核挿入及び第1の3’ホモロジーアーム、並びに第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームは、隣接する核酸の重複フラグメントであり、第2の核挿入及び第2の3’ホモロジーアーム、並びに第3の核酸挿入物及び第3の5’ホモロジーアームは、隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物の組み込みによって改質される。
【0021】
いくつかのそのような方法において、細胞は、ヒト細胞である。他のそのような方法において、細胞は、非ヒト細胞である。いくつかのそのような方法において、細胞は、多能性細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、又は線維芽細胞である。任意に、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である。いくつかのそのような方法において、細胞は、哺乳類細胞である。任意に、哺乳類細胞は、げっ歯類細胞である。任意に、げっ歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。
【0022】
いくつかのそのような方法において、ヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はメガヌクレアーゼを含む。いくつかのそのような方法において、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質と、ガイドRNA(gRNA)とを含む。任意選択的に、Casタンパク質は、Cas9である。
【0023】
いくつかのそのような方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物のうちの1つ以上は、細胞の種とは異なる種由来である。いくつかのそのような方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物は、ヒト核酸である。
【0024】
いくつかのそのような方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約50kb〜約700kb、約50kb〜約500kb、約50kb〜約300kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、約275kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、約450kb〜約500kb、約500kb〜約550kb、約550kb〜約600kb、約600kb〜約650kb、又は約650kb〜約700kbである。任意に、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約100kb〜約700kbである。任意に、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約400kbである。
【0025】
いくつかのそのような方法において、標的化された細胞は、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらは、約5kb〜約700kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する。
【0026】
いくつかのそのような方法において、第1のLTVECの第1の重複配列は、第2のLTVECの第1の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは99.9%同一であり、かつ/又は第2のLTVECの第2の重複配列は、第3のLTVECの第2の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは99.9%同一である。いくつかのそのような方法において、第1の重複配列のサイズは、約1kb〜約70kbであり、かつ/又は第2の重複配列のサイズは、約1kb〜約70kbである。いくつかのそのような方法において、第1の重複配列のサイズは、少なくとも10kb若しくは少なくとも20kbであり、かつ/又は第2の重複配列のサイズは、少なくとも10kb若しくは少なくとも20kbである。
【0027】
いくつかのそのような方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物のうちの1つ以上の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。任意に、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、又は約700kb〜約800kbである。
【0028】
いくつかの方法において、第1のLTVEC、第2のLTVEC、又は第3のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbであり、第2のLTVECCの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbであり、第3のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbである。いくつかのそのような方法において、第1のLTVEC、第2のLTVEC、又は第3のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbであり、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbであり、第3のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbである。
【0029】
本発明はまた、F0世代非ヒト動物を生産するための方法を提供し、(a)非ヒト宿主胚に非ヒトES細胞を導入することであって、非ヒトES細胞は、上記の方法のうちのいずれかによって生産された、導入することと、(b)代理母において非ヒト宿主胚を懐胎させることであって、代理母が、修飾を含むF0世代非ヒト動物を生産する、懐胎させることと、を含む。任意に、非ヒト動物は、マウス又はラットである。
【0030】
本発明はまた、細胞中の標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化するための方法を提供し、第1の核酸及び第2の核酸を細胞に導入することを含み、第1及び第2の核酸は、重複ヌクレオチド配列を含む。いくつかのそのような方法において、相同組み換えは、単一の核酸のみが細胞に導入される方法と比較して強化される。
【0031】
いくつかのそのような方法において、相同組み換えは、ヌクレアーゼ剤の使用なしで標的ゲノム遺伝子座において強化される。いくつかのそのような方法は、標的ゲノム遺伝子座において、又はその付近で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、前記細胞に導入することを更に含む。いくつかのそのような方法において、ヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はメガヌクレアーゼを含む。いくつかのそのような方法において、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質と、ガイドRNA(gRNA)とを含む。任意選択的に、Casタンパク質は、Cas9である。
【0032】
いくつかのそのような方法において、本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸、第2の核酸、又は両方の相同組み換えを強化する。いくつかのそのような方法は、第1の核酸が第2の核酸なしで導入される方法と比較して、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸の相同組み換えを強化する。いくつかのそのような方法は、第2の核酸が第1の核酸なしで導入される方法と比較して、標的ゲノム遺伝子座における第2の核酸の相同組み換えを強化する。任意に、相同組み換えの強化は、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である。
【0033】
いくつかのそのような方法において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である。いくつかのそのような方法において、重複配列は、約1kb〜約70kbである。任意に、重複配列は、約1kb〜約5kb、約5kb〜約10kb、約10kb〜約15kb、約15kb〜約20kb、約20kb〜約25kb、約25kb〜約30kb、約30kb〜約35kb、約35kb〜約40kb、約40kb〜約45kb、約45kb〜約50kb、約50kb〜約55kb、約55kb〜約60kb、約60kb〜約65kb、又は約65kb〜約70kbである。いくつかのそのような方法において、重複配列は、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも25kb、少なくとも30kb、少なくとも35kb、少なくとも40kb、少なくとも45kb、少なくとも50kb、少なくとも55kb、少なくとも60kb、少なくとも65kb、又は少なくとも70kbである。任意に、重複配列は、少なくとも20kbである。
【0034】
いくつかのそのような方法において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、標的化ベクターであり、第2の核酸は、重複配列を除いて、標的ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない。任意に、第1の標的化ベクターは、約1kb〜約2kb、約2kb〜約5kb、又は約5kb〜約10kbである。任意に、第1の標的化ベクターは、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)である。任意に、第1のLTVECは、長さが少なくとも10kbである。任意に、第1の標的化ベクターは、約20kb〜約200kbに及ぶ第1の大型標的化ベクター(LTVEC)である。任意に、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。
【0035】
いくつかのそのような方法において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の標的化ベクターであり、第2の核酸は、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2の標的化ベクターである。任意に、第1の標的化ベクターは、約1kb〜約2kb、約2kb〜約5kb、若しくは約5kb〜約10kbであり、かつ/又は第2の標的化ベクターは、約1kb〜約2kb、約2kb〜約5kb、若しくは約5kb〜約10kbである。任意に、第1の標的化ベクターは、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)であり、かつ/又は第2の標的化ベクターは、第2の大型標的化ベクター(LTVEC)である。任意に、第1のLTVECは、長さが少なくとも10kbであり、かつ/又は第2のLTVECは、長さが少なくとも10kbである。任意に、第1の標的化ベクターは、約20kb〜約200kbに及ぶ第1の大型標的化ベクター(LTVEC)であり、かつ/又は第2の標的化ベクターは、約20kb〜約200kbに及ぶ第2の大型標的化ベクター(LTVEC)である。任意に、第1のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、若しくは約150kb〜約200kbであり、かつ/又は第2のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、若しくは約150kb〜約200kbである。任意に、第1のLTVEC又は第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。任意に、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbであり、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。
【0036】
いくつかの方法において、重複配列は、第1の核酸の3’末端及び第2の核酸配列の5’末端に位置する。いくつかの方法において、重複ヌクレオチド配列は、標的ゲノム遺伝子座への組み換え機構の誘引を促進する。
【0037】
いくつかのそのような方法において、細胞は、ヒト細胞である。他のそのような方法において、細胞は、非ヒト細胞である。いくつかのそのような方法において、細胞は、多能性細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、又は線維芽細胞である。任意に、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である。いくつかのそのような方法において、細胞は、哺乳類細胞である。任意に、哺乳類細胞は、げっ歯類細胞である。任意に、げっ歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。
【0038】
本発明はまた、F0世代非ヒト動物を生産するための方法を提供し、(a)非ヒト宿主胚に非ヒトES細胞を導入することであって、非ヒトES細胞は、上記の方法のうちのいずれかによって生産された、導入することと、(b)代理母において非ヒト宿主胚を懐胎させることであって、代理母が、修飾を含むF0世代非ヒト動物を生産する、懐胎させることと、を含む。任意に、非ヒト動物は、マウス又はラットである。
【0039】
単一の隣接する核酸セグメントを形成するために互いと組み換えることが可能である2つ以上の標的化ベクターを利用する標的化系を介して、細胞内の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法及び組成物が提供される。様々な実施形態において、標的化ベクターは、大型標的化ベクター(LTVEC)である。任意に、LTVECはそれぞれ、サイズが少なくとも10kbである。
【0040】
一実施形態において、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法が提供される。そのような方法は、標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することと、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECとを導入することであって、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、標的遺伝子座内の対応するセグメントに相同であり、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の5’アームは、互いに、又は個々に1つ以上の更なるLTVECの更なる5’及び3’ホモロジーアームに相同であり、それぞれは、更なる5’ホモロジーアーム及び更なる3’ホモロジーアームが隣接した更なる挿入を含み、標的ゲノム遺伝子座は、対応するゲノムセグメント間の第1の挿入物、存在する場合には1つ以上の更なるLTVECの1つ以上の更なる挿入物、及び第2の核酸挿入物の組み込みによって修飾される。任意に、第1のLTVEC、第2のLTVEC、及び1つ以上の更なるLTVECはそれぞれ、サイズが少なくとも10kbである。本方法は、標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた第1の核酸挿入物、存在する場合には1つ以上の更なる核酸挿入物、及び第2の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することを更に含む。そのような方法において、更なるLTVECは、存在する場合、第1のLTVECと第2のLTVECとの間に挿入される、1つ以上の他のLTVECである。
【0041】
別の実施形態において、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための二重標的化方法が提供される。そのような方法は、標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することと、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECとを導入することと、を含む。任意に、第1のLTVECは、サイズが少なくとも10kbであり、第2のLTVECは、サイズが少なくとも10kbである。そのような方法において、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアームは、第2のLTVECの第2の5’ホモロジーアームに相同の第1の重複配列を有し、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座が、対応するゲノムセグメント間の第1及び第2の核酸挿入物の組み込みによって修飾されるように、標的遺伝子座内の対応するセグメントに相同である。本方法は、標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することを更に含む。
【0042】
いくつかのそのような方法において、第1の核挿入及び第1の3’ホモロジーアーム、並びに第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームは、隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物の組み込みによって改質される。
【0043】
別の実施形態において、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための三重標的化方法が提供される。そのような方法は、標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することと、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECと、第3の5’ホモロジーアーム及び第3の3’ホモロジーアームが隣接した第3の核酸挿入物を含む、第3のLTVECとを導入することと、を含む。任意に、第1のLTVECは、サイズが少なくとも10kbであり、第2のLTVECは、サイズが少なくとも10kbであり、第3のLTVECは、サイズが少なくとも10kbである。そのような方法において、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアームは、第2のLTVECの第2の5’ホモロジーアームに相同の第1の重複配列を有し、第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、第3のLTVECの第3の5’ホモロジーアームに相同の第2の重複配列を有し、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第3のLTVECの第3の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座が、対応するゲノムセグメント間の第1、第2、及び第3の核酸挿入物の組み込みによって修飾されるように、標的遺伝子座内の対応するセグメントに相同である。本方法は、標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することを更に含む。
【0044】
いくつかのそのような方法において、第1の核挿入及び第1の3’ホモロジーアーム、並びに第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームは、隣接する核酸の重複フラグメントであり、第2の核挿入及び第2の3’ホモロジーアーム、並びに第3の核酸挿入物及び第3の5’ホモロジーアームは、隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物の組み込みによって改質される。
【0045】
一実施形態において、細胞は、多能性細胞である。別の実施形態において、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。いくつかの実施形態において、多能性細胞は、造血幹細胞又は神経幹細胞である。別の実施形態において、細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞である。
【0046】
一実施形態において、標的ゲノム遺伝子座は、細胞のゲノム中に存在している。別の実施形態において、標的ゲノム遺伝子座は、細胞内の染色体外DNA上に存在している。
【0047】
一実施形態において、細胞は、線維芽細胞である。
【0048】
いくつかの方法において、細胞は、非ヒト細胞である。他の方法において、細胞は、ヒト由来である。いくつかの実施形態において、細胞は、哺乳類細胞である。別の実施形態において、哺乳類細胞は、げっ歯類由来である。いくつかの場合において、げっ歯類は、マウス、ラット、又はハムスターである。
【0049】
上記の方法のうちのいくつかにおいて、ヌクレアーゼ剤は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む発現コンストラクトから発現され、その核酸は、細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されている。他の方法において、ヌクレアーゼ剤は、ヌクレアーゼをコードするmRNAから発現される。いくつかのそのような方法において、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。他のそのような方法において、ヌクレアーゼは、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。更に他の方法において、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼである。
【0050】
上記の方法のうちのいくつかにおいて、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質と、ガイドRNA(gRNA)とを含む。いくつかのそのような実施形態において、Casタンパク質は、Cas9である。
【0051】
上記の方法のうちのいくつかにおいて、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、細胞の種とは異なる種由来である。一実施形態において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び/又は第3の核酸挿入物は、異なる種由来である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物のうちの1つ以上は、細胞の種とは異なる種由来である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、ヒト核酸である。別の実施形態において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び/又は第3の核酸挿入物は、ヒト核酸である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物のうちの1つ以上は、ヒト核酸である。
【0052】
一実施形態において、第1及び第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約50kb〜約500kb、約50kb〜約300kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、約275kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、又は約450kb〜約500kbである。別の実施形態において、第1及び第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約100kb〜約500kbである。更に別の実施形態において、第1及び第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約300kbである。
【0053】
いくつかの実施形態において、標的化された細胞は、約5kb〜約500kbに及ぶ第1及び第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含む。
【0054】
一実施形態において、第1、第2、及び第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約50kb〜約700kb、約50kb〜約500kb、約50kb〜約300kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、約275kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、約450kb〜約500kb、約500kb〜約550kb、約550kb〜約600kb、約600kb〜約650kb、又は約650kb〜約700kbである。
【0055】
いくつかの実施形態において、標的化された細胞は、約5kb〜約700kbに及ぶ第1、第2、及び第3の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含む。任意に、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約100kb〜約700kbである。いくつかの実施形態において、第1、第2、及び第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズは、約400kbである。
【0056】
上記の方法のうちのいくつかにおいて、第1のLTVECの第1の重複配列は、第2のLTVECの第1の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である。上記の方法のうちのいくつかにおいて、第2のLTVECの第2の重複配列は、第3のLTVECの第2の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である。上記の方法のうちのいずれかにおいて、重複配列は、約1kb〜約70kbである。具体的な実施形態において、重複配列は、少なくとも10kbである。別の具体的な実施形態において、重複配列は、少なくとも20kbである。上記の方法のうちのいくつかにおいて、第1の重複配列及び/又は第2の重複配列は、約1kb〜約70kbである。いくつかの方法において、第1の重複配列及び/又は第2の重複配列は、少なくとも10kb又は少なくとも20kbである。
【0057】
いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1、第2、及び第3の核酸挿入物のうちの1つ以上の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。
【0058】
いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方の組み込みは、標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加をもたらす。一実施形態において、標的ゲノム遺伝子座への第1、第2、及び/又は第3の核酸挿入物の組み込みは、標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加をもたらす。
【0059】
いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方の組み込みは、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失をもたらす。別の実施形態において、標的ゲノム遺伝子座への第1、第2、及び/又は第3の核酸挿入物の組み込みは、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失をもたらす。いくつかのそのような方法において、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、又は約700kb〜約800kbである。
【0060】
いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方の挿入の組み込みは、ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせをもたらす。更に別の実施形態において、標的ゲノム遺伝子座への第1、第2、及び/又は第3の核酸挿入物の組み込みは、ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせをもたらす。
【0061】
上記の方法のうちのいくつかにおいて、第1のLTVEC及び第2のLTVECの組み合わせた使用は、単一のLTVECの使用と比較して標的化効率性の増大をもたらす。任意に、標的化効率性の増大は、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である。
【0062】
いくつかの方法において、第1のLTVEC又は第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbであり、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbである。いくつかの実施形態において、第1のLTVEC、第2のLTVEC、又は第3のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbであり、第2のLTVECCの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbであり、第3のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約10kb〜約150kbである。他の実施形態において、第1のLTVEC、第2のLTVEC、又は第3のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約1kb〜約5kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜150kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約1kb〜約5kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜150kbであり、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約1kb〜約5kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜150kbであり、第3のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、約1kb〜約5kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜150kbである。
【0063】
F0世代非ヒト動物を生産するための方法が更に提供される。そのような方法は、非ヒト宿主胚に非ヒトES細胞を導入することであって、非ヒトES細胞は、上記の方法のうちのいずれかによって生産された、導入することと、代理母において非ヒト宿主胚を懐胎させることであって、代理母が、修飾を含むF0世代非ヒト動物を生産する、懐胎させることと、を含む。任意に、非ヒト動物は、マウス又はラットである。
【0064】
本発明はまた、細胞中の標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化するための方法を提供し、第1の核酸及び第2の核酸を細胞に導入することを含み、第1及び第2の核酸は、重複ヌクレオチド配列を含む。いくつかのそのような方法において、相同組み換えは、単一の核酸のみが細胞に導入される方法と比較して強化される。いくつかのそのような方法において、相同組み換えは、ヌクレアーゼ剤の使用なしで標的ゲノム遺伝子座において強化される。他のそのような方法は、標的ゲノム遺伝子座において、又はその付近で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することを更に含む。
【0065】
一態様において、ヌクレアーゼ剤の使用なしで細胞中のゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化するための方法が提供され、第1の核酸及び第2の核酸を細胞に導入することを含み、第1及び第2の核酸は、重複ヌクレオチド配列を含む。
【0066】
一実施形態において、本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸の相同組み換えを強化する。いくつかのそのような方法は、第1の核酸が第2の核酸なしで導入される方法と比較して、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸の相同組み換えを強化する。一実施形態において、本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第2の核酸の相同組み換えを強化する。いくつかのそのような方法は、第2の核酸が第1の核酸なしで導入される方法と比較して、標的ゲノム遺伝子座における第2の核酸の相同組み換えを強化する。一実施形態において、本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第1及び第2の核酸の相同組み換えを増大させる。
【0067】
一実施形態において、相同組み換えの強化は、少なくとも0.5倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である。
【0068】
一実施形態において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列に相同である。一実施形態において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である。一実施形態において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸のその重複配列と100%同一である。
【0069】
一実施形態において、重複配列は、約1kb〜約70kbである。いくつかの方法において、重複配列は、少なくとも20kbである。一実施形態において、重複配列は、約1kb〜約5kbである。一実施形態において、重複配列は、約5kb〜約10kbである。一実施形態において、重複配列は、約10kb〜約15kbである。一実施形態において、重複配列は、約15kb〜約20kbである。一実施形態において、重複配列は、約20kb〜約25kbである。一実施形態において、重複配列は、約25kb〜約30kbである。一実施形態において、重複配列は、約30kb〜約35kbである。一実施形態において、重複配列は、約35kb〜約40kbである。一実施形態において、重複配列は、約40kb〜約45kbである。一実施形態において、重複配列は、約45kb〜約50kbである。一実施形態において、重複配列は、約50kb〜約55kbである。一実施形態において、重複配列は、約55kb〜約60kbである。一実施形態において、重複配列は、約60kb〜約65kbである。一実施形態において、重複配列は、約65kb〜約70kbである。
【0070】
一実施形態において、重複配列は、少なくとも5kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも10kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも15kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも20kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも25kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも30kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも35kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも40kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも45kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも50kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも55kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも60kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも65kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも70kbである。
【0071】
一実施形態において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、標的化ベクターであり、第2の核酸は、重複配列を除いて、ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない。
【0072】
一実施形態において、第2の核酸は、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2の標的化ベクターであり、第1の核酸は、重複配列を除いて、ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない。
【0073】
一実施形態において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の標的化ベクターであり、第2の核酸は、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2の標的化ベクターである。一実施形態において、第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物は、隣接する核酸の重複フラグメントである。
【0074】
一実施形態において、標的化ベクターは、約1kb〜約2kbである。一実施形態において、標的化ベクターは、約2kb〜約5kbである。一実施形態において、標的化ベクターは、約5kb〜約10kbである。
【0075】
一実施形態において、標的化ベクターは、大型標的化ベクター(LTVEC)である。いくつかの方法において、標的化ベクターは、約20kb〜約200kbに及ぶLTVECである。いくつかの方法において、第1の標的化ベクターは、約20kb〜約200kbに及ぶ第1のLTVECであり、かつ/又は第2の標的化ベクターは、約20kb〜約200kbに及ぶ第2のLTVECである。一実施形態において、LTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1の標的化ベクターは、第1のLTVECであり、かつ/又は第2の標的化ベクターは、第2のLTVECである。いくつかの方法において、第1のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第2のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbであり、第2のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。
【0076】
一実施形態において、LTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbであり、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。
【0077】
一実施形態において、重複配列は、第1の核酸の3’末端及び第2の核酸配列の5’末端に位置する。一実施形態において、重複配列は、第1の核酸配列の5’末端及び第2の核酸配列の3’末端に位置する。
【0078】
一実施形態において、第1の核酸挿入物及び/又は第2の核酸挿入物は、異なる種由来である。別の実施形態において、第1の核酸挿入物及び/又は第2の核酸挿入物は、ヒト核酸である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、細胞の種とは異なる種由来である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、ヒト核酸である。
【0079】
いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1、第2、及び第3の核酸挿入物のうちの1つ以上の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。
【0080】
一実施形態において、ゲノム遺伝子座への第1及び/又は第2の挿入の組み込みは、ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加をもたらす。
【0081】
いくつかの実施形態において、標的化された細胞は、約5kb〜約500kbに及ぶ第1及び第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含む。いくつかの方法において、標的化された細胞は、第1及び第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらは、約5kb〜約500kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する。
【0082】
別の実施形態において、ゲノム遺伝子座への第1及び/又は第2の核酸挿入物の組み込みは、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失をもたらす。一実施形態において、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、又は約700kb〜約800kbである。
【0083】
いくつかの方法において、細胞は、ヒト細胞である。他の方法において、細胞は、非ヒト細胞である。いくつかの方法において、細胞は、多能性細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、又は線維芽細胞である。任意に、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である。いくつかの方法において、細胞は、哺乳類細胞である。任意に、哺乳類細胞は、げっ歯類細胞である。任意に、げっ歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。
【0084】
一実施形態において、細胞は、多能性細胞である。別の実施形態において、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。いくつかの実施形態において、多能性細胞は、造血幹細胞又は神経幹細胞である。別の実施形態において、細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞である。
【0085】
一実施形態において、標的ゲノム遺伝子座は、細胞のゲノム中に存在している。別の実施形態において、標的ゲノム遺伝子座は、細胞内の染色体外DNA上に存在している。
【0086】
一実施形態において、細胞は、線維芽細胞である。
【0087】
いくつかの方法において、細胞は、非ヒト細胞である。他の方法において、細胞は、ヒト由来である。いくつかの実施形態において、細胞は、哺乳類細胞である。別の実施形態において、哺乳類細胞は、げっ歯類由来である。いくつかの場合において、げっ歯類は、マウス、ラット、又はハムスターである。
【0088】
上記の方法のうちのいくつかにおいて、重複ヌクレオチド配列は、標的ゲノム遺伝子座への組み換え機構の誘引を促進する。
【0089】
本発明はまた、F0世代非ヒト動物を生産するための方法を提供し、(a)非ヒト宿主胚に非ヒトES細胞を導入することであって、非ヒトES細胞は、上記の方法によって生産されたものである、導入することと、(b)代理母において非ヒト宿主胚を懐胎させることであって、代理母が、修飾を含むF0世代非ヒト動物を生産する、懐胎させることと、を含む。任意に、非ヒト動物は、マウス又はラットである。
【0090】
別の態様において、ヌクレアーゼ剤を用いて細胞中のゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化するための方法が提供され、(i)第1の核酸及び第2の核酸(第1及び第2の核酸は重複ヌクレオチド配列を含む)と、(ii)ゲノム遺伝子座において、又はその付近で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤とを、細胞に導入することを含む。
【0091】
一実施形態において、本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸の相同組み換えを強化する。いくつかのそのような方法は、第1の核酸が第2の核酸なしで導入される方法と比較して、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸の相同組み換えを強化する。一実施形態において、本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第2の核酸の相同組み換えを強化する。いくつかのそのような方法は、第2の核酸が第1の核酸なしで導入される方法と比較して、標的ゲノム遺伝子座における第2の核酸の相同組み換えを強化する。一実施形態において、本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第1及び第2の核酸の相同組み換えを増大させる。一実施形態において、相同組み換えの強化は、少なくとも0.5倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である。
【0092】
一実施形態において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列に相同である。一実施形態において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である。一実施形態において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列と100%同一である。
【0093】
一実施形態において、重複配列は、約1kb〜約70kbである。一実施形態において、重複配列は、約1kb〜約5kbである。一実施形態において、重複配列は、約5kb〜約10kbである。一実施形態において、重複配列は、約10kb〜約15kbである。一実施形態において、重複配列は、約15kb〜約20kbである。一実施形態において、重複配列は、約20kb〜約25kbである。一実施形態において、重複配列は、約25kb〜約30kbである。一実施形態において、重複配列は、約30kb〜約35kbである。一実施形態において、重複配列は、約35kb〜約40kbである。一実施形態において、重複配列は、約40kb〜約45kbである。一実施形態において、重複配列は、約45kb〜約50kbである。一実施形態において、重複配列は、約50kb〜約55kbである。一実施形態において、重複配列は、約55kb〜約60kbである。一実施形態において、重複配列は、約60kb〜約65kbである。一実施形態において、重複配列は、約65kb〜約70kbである。
【0094】
一実施形態において、重複配列は、少なくとも5kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも10kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも15kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも20kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも25kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも30kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも35kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも40kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも45kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも50kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも55kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも60kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも65kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも70kbである。
【0095】
一実施形態において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、標的化ベクターであり、第2の核酸は、重複配列を除いて、ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない。
【0096】
一実施形態において、第2の核酸は、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2の標的化ベクターであり、第1の核酸は、重複配列を除いて、標的ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない。
【0097】
一実施形態において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の標的化ベクターであり、第2の核酸は、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2の標的化ベクターである。一実施形態において、第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物は、隣接する核酸の重複フラグメントである。
【0098】
一実施形態において、標的化ベクターは、約1kb〜約2kbである。一実施形態において、標的化ベクターは、約2kb〜約5kbである。一実施形態において、標的化ベクターは、約5kb〜約10kbである。
【0099】
一実施形態において、標的化ベクターは、大型標的化ベクター(LTVEC)である。いくつかの方法において、標的化ベクターは、約10kb〜約200kbに及ぶ大型標的化ベクターである。いくつかの方法において、第1の標的化ベクターは、第1のLTVECであり、かつ/又は第2の標的化ベクターは、第2のLTVECである。いくつかの方法において、第1の標的化ベクターは、約10kb〜約200kbに及ぶ第1の大型標的化ベクターであり、かつ/又は第2の標的化ベクターは、約10kb〜約200kbに及ぶ第2の大型標的化ベクターである。一実施形態において、LTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。任意に、第1のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。任意に、第2のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbであり、第2のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。
【0100】
一実施形態において、LTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1のLTVEC5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbであり、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。
【0101】
一実施形態において、重複配列は、第1の核酸の3’末端及び第2の核酸配列の5’末端に位置する。一実施形態において、重複配列は、第1の核酸配列の5’末端及び第2の核酸配列の3’末端に位置する。
【0102】
一実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む発現コンストラクトから発現され、その核酸は、細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されている。一実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、ヌクレアーゼをコードするmRNAから発現される。一実施形態において、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。一実施形態において、ヌクレアーゼは、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。一実施形態において、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼである。
【0103】
一実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質と、ガイドRNA(gRNA)とを含む。一実施形態において、Casタンパク質は、Cas9である。
【0104】
一実施形態において、第1の核酸挿入物及び/又は第2の核酸挿入物は、異なる種由来である。別の実施形態において、第1の核酸挿入物及び/又は第2の核酸挿入物は、ヒト核酸である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、細胞の種とは異なる種由来である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、ヒト核酸である。
【0105】
いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1、第2、及び第3の核酸挿入物のうちの1つ以上の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。
【0106】
一実施形態において、ゲノム遺伝子座への第1及び/又は第2の挿入の組み込みは、ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加をもたらす。
【0107】
いくつかの実施形態において、標的化された細胞は、約5kb〜約500kbに及ぶ第1及び第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含む。いくつかの方法において、標的化された細胞は、第1及び第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらは、約5kb〜約500kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する。
【0108】
別の実施形態において、ゲノム遺伝子座への第1及び/又は第2の核酸挿入物の組み込みは、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失をもたらす。一実施形態において、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、又は約700kb〜約800kbである。
【0109】
いくつかの方法において、細胞は、ヒト細胞である。他の方法において、細胞は、非ヒト細胞である。いくつかの方法において、細胞は、多能性細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、又は線維芽細胞である。任意に、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である。いくつかの方法において、細胞は、哺乳類細胞である。任意に、哺乳類細胞は、げっ歯類細胞である。任意に、げっ歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。
【0110】
一実施形態において、細胞は、多能性細胞である。別の実施形態において、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。いくつかの実施形態において、多能性細胞は、造血幹細胞又は神経幹細胞である。別の実施形態において、細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞である。
【0111】
一実施形態において、標的ゲノム遺伝子座は、細胞のゲノム中に存在している。別の実施形態において、標的ゲノム遺伝子座は、細胞内の染色体外DNA上に存在している。
【0112】
一実施形態において、細胞は、線維芽細胞である。
【0113】
いくつかの方法において、細胞は、非ヒト細胞である。他の方法において、細胞は、ヒト由来である。いくつかの実施形態において、細胞は、哺乳類細胞である。別の実施形態において、哺乳類細胞は、げっ歯類由来である。いくつかの場合において、げっ歯類は、マウス、ラット、又はハムスターである。
【0114】
上記の方法のうちのいくつかにおいて、重複ヌクレオチド配列は、標的ゲノム遺伝子座への組み換え機構の誘引を促進する。
【0115】
本発明はまた、F0世代非ヒト動物を生産するための方法を提供し、(a)非ヒト宿主胚に非ヒトES細胞を導入することであって、非ヒトES細胞は、上記の方法によって生産されたものである、導入することと、(b)代理母において非ヒト宿主胚を懐胎させることであって、代理母が、修飾を含むF0世代非ヒト動物を生産する、懐胎させることと、を含む。任意に、非ヒト動物は、マウス又はラットである。
【0116】
別の態様において、標的化ベクター上に組み換え機構を搭載することによって、細胞中の標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化するための方法が提供され、第1の核酸及び第2の核酸を細胞に導入することを含み、第1及び第2の核酸は、重複ヌクレオチド配列を含み、重複ヌクレオチド配列は、標的ゲノム遺伝子座への組み換え機構の誘引を促進する。
【0117】
一実施形態において、本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸の相同組み換えを強化する。いくつかのそのような方法は、第1の核酸が第2の核酸なしで導入される方法と比較して、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸の相同組み換えを強化する。一実施形態において、本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第2の核酸の相同組み換えを強化する。いくつかのそのような方法は、第2の核酸が第1の核酸なしで導入される方法と比較して、標的ゲノム遺伝子座における第2の核酸の相同組み換えを強化する。いくつかのそのような方法は、標的ゲノム遺伝子座における第1及び第2の核酸の相同組み換えを強化する。一実施形態において、相同組み換えの強化は、少なくとも0.5倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である。
【0118】
一実施形態において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列に相同である。一実施形態において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である。一実施形態において、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸のその重複配列と100%同一である。
【0119】
一実施形態において、重複配列は、約1kb〜約70kbである。一実施形態において、重複配列は、約1kb〜約5kbである。一実施形態において、重複配列は、約5kb〜約10kbである。一実施形態において、重複配列は、約10kb〜約15kbである。一実施形態において、重複配列は、約15kb〜約20kbである。一実施形態において、重複配列は、約20kb〜約25kbである。一実施形態において、重複配列は、約25kb〜約30kbである。一実施形態において、重複配列は、約30kb〜約35kbである。一実施形態において、重複配列は、約35kb〜約40kbである。一実施形態において、重複配列は、約40kb〜約45kbである。一実施形態において、重複配列は、約45kb〜約50kbである。一実施形態において、重複配列は、約50kb〜約55kbである。一実施形態において、重複配列は、約55kb〜約60kbである。一実施形態において、重複配列は、約60kb〜約65kbである。一実施形態において、重複配列は、約65kb〜約70kbである。
【0120】
一実施形態において、重複配列は、少なくとも5kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも10kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも15kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも20kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも25kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも30kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも35kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも40kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも45kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも50kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも55kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも60kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも65kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも70kbである。
【0121】
一実施形態において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、標的化ベクターであり、第2の核酸は、重複配列を除いて、ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない。
【0122】
一実施形態において、第2の核酸は、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2の標的化ベクターであり、第1の核酸は、重複配列を除いて、ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない。
【0123】
一実施形態において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の標的化ベクターであり、第2の核酸は、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2の標的化ベクターである。一実施形態において、第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物は、隣接する核酸の重複フラグメントである。
【0124】
一実施形態において、標的化ベクターは、約1kb〜約2kbである。一実施形態において、標的化ベクターは、約2kb〜約5kbである。一実施形態において、標的化ベクターは、約5kb〜約10kbである。
【0125】
一実施形態において、標的化ベクターは、大型標的化ベクター(LTVEC)である。いくつかの方法において、標的化ベクターは、約10kb〜約200kbに及ぶLTVECである。いくつかの方法において、第1の標的化ベクターは、第1のLTVECであり、かつ/又は第2の標的化ベクターは、第2のLTVECである。いくつかの方法において、第1の標的化ベクターは、約10kb〜約200kbに及ぶ第1のLTVECであり、かつ/又は第2の標的化ベクターは、約10kb〜約200kbに及ぶ第2のLTVECである。一実施形態において、LTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。任意に、第1のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。任意に、第2のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbであり、第2のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kbである。
【0126】
一実施形態において、LTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。いくつかの方法において、第1のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbであり、第2のLTVECの5’及び3’ホモロジーアームの合計は、10kb〜約200kbである。
【0127】
一実施形態において、重複配列は、第1の核酸の3’末端及び第2の核酸配列の5’末端に位置する。一実施形態において、重複配列は、第1の核酸配列の5’末端及び第2の核酸配列の3’末端に位置する。
【0128】
一実施形態において、第1の核酸挿入物及び/又は第2の核酸挿入物は、異なる種由来である。別の実施形態において、第1の核酸挿入物及び/又は第2の核酸挿入物は、ヒト核酸である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、細胞の種とは異なる種由来である。いくつかの方法において、第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方は、ヒト核酸である。
【0129】
いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は両方の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。いくつかの方法において、標的ゲノム遺伝子座への第1、第2、及び第3の核酸挿入物のうちの1つ以上の組み込みは、(a)標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、(b)標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす。
【0130】
一実施形態において、ゲノム遺伝子座への第1及び/又は第2の挿入の組み込みは、ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加をもたらす。
【0131】
いくつかの実施形態において、標的化された細胞は、約5kb〜約500kbに及ぶ第1及び第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含む。いくつかの方法において、標的化された細胞は、第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらは、約5kb〜約500kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する。
【0132】
別の実施形態において、ゲノム遺伝子座への第1及び/又は第2の核酸挿入物の組み込みは、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失をもたらす。一実施形態において、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、又は約700kb〜約800kbである。
【0133】
いくつかの方法において、細胞は、ヒト細胞である。他の方法において、細胞は、非ヒト細胞である。いくつかの方法において、細胞は、多能性細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、又は線維芽細胞である。任意に、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である。いくつかの方法において、細胞は、哺乳類細胞である。任意に、哺乳類細胞は、げっ歯類細胞である。任意に、げっ歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。
【0134】
一実施形態において、細胞は、多能性細胞である。別の実施形態において、多能性細胞は、胚性幹(ES)細胞である。いくつかの実施形態において、多能性細胞は、造血幹細胞又は神経幹細胞である。別の実施形態において、細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞である。
【0135】
一実施形態において、標的ゲノム遺伝子座は、細胞のゲノム中に存在している。別の実施形態において、標的ゲノム遺伝子座は、細胞内の染色体外DNA上に存在している。
【0136】
一実施形態において、細胞は、線維芽細胞である。
【0137】
一実施形態において、細胞は、非ヒト細胞である。他の実施形態において、細胞は、ヒト由来である。他の実施形態において、細胞は、哺乳類細胞である。別の実施形態において、哺乳類細胞は、げっ歯類由来である。別の実施形態において、げっ歯類は、マウス、ラット、又はハムスターである。
【0138】
本発明はまた、F0世代非ヒト動物を生産するための方法を提供し、(a)非ヒト宿主胚に非ヒトES細胞を導入することであって、非ヒトES細胞は、上記の方法によって生産されたものである、導入することと、(b)代理母において非ヒト宿主胚を懐胎させることであって、代理母が、修飾を含むF0世代非ヒト動物を生産する、懐胎させることと、を含む。任意に、非ヒト動物は、マウス又はラットである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法であって、
(a)前記標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、前記細胞に導入することと、
(b)長さが少なくとも10kbであり、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、長さが少なくとも10kbであり、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECとを、前記細胞に導入することであって、
前記第1のLTVECの前記第1の3’ホモロジーアームが、前記第2のLTVECの前記第2の5’ホモロジーアームに相同の第1の重複配列を有し、前記第1のLTVECの前記第1の5’ホモロジーアーム及び前記第2のLTVECの前記第2の3’ホモロジーアームが、前記標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、
前記標的ゲノム遺伝子座が、前記対応するゲノムセグメント間の前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、
(c)前記標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することと、を含む、方法。
(項目2)
前記第1の核酸挿入物及び前記第1の3’ホモロジーアーム、並びに前記第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームが、隣接する核酸の重複フラグメントであり、それが、前記標的ゲノム遺伝子座への前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み込みによって改質される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、又は両方が前記細胞の種とは異なる種由来である、項目1又は2に記載の方法。
(項目4)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、又は両方がヒト核酸である、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約50kb〜約500kb、約50kb〜約300kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、約275kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、又は約450kb〜約500kbである、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約100kb〜約500kbである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約300kbである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記標的化された細胞が、前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらが約5kb〜約500kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記第1のLTVECの前記第1の重複配列が、前記第2のLTVECの前記第1の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である、項目1〜8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記第1の重複配列の前記サイズが約1kb〜約70kbである、項目1〜9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記第1の重複配列の前記サイズが少なくとも10kb又は少なくとも20kbである、項目1〜10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、又は両方の前記標的ゲノム遺伝子座への組み込みが、
(a)前記標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、
(b)前記標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、及び
(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記第1のLTVEC及び前記第2のLTVECの組み合わせた使用が、単一LTVECの使用と比較して標的化効率性の増大をもたらす、項目1〜12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記標的化効率性の増大が少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記第1のLTVEC又は前記第2のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbである、項目1〜14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法であって、
(a)前記標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、前記細胞に導入することと、
(b)長さが少なくとも10kbであり、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、長さが少なくとも10kbであり、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECと、長さが少なくとも10kbであり、第3の5’ホモロジーアーム及び第3の3’ホモロジーアームが隣接した第3の核酸挿入物を含む、第3のLTVECとを、前記細胞に導入することであって、
前記第1のLTVECの前記第1の3’ホモロジーアームが、前記第2のLTVECの前記第2の5’ホモロジーアームに相同の第1の重複配列を有し、前記第2のLTVECの前記第2の3’ホモロジーアームが、前記第3のLTVECの前記第3の5’ホモロジーアームに相同の第2の重複配列を有し、前記第1のLTVECの前記第1の5’ホモロジーアーム及び前記第3のLTVECの前記第3の3’ホモロジーアームが、前記標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、
前記標的ゲノム遺伝子座が、前記対応するゲノムセグメント間の前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、
(c)前記標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することと、を含む、方法。
(項目17)
前記第1の核挿入及び前記第1の3’ホモロジーアーム、並びに前記第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームが、隣接する核酸の重複フラグメントであり、前記第2の核挿入及び前記第2の3’ホモロジーアーム、並びに前記第3の核酸挿入物及び第3の5’ホモロジーアームが、前記隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは、前記標的ゲノム遺伝子座への前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み込みによって改質される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物のうちの1つ以上が前記細胞の種とは異なる種由来である、項目16又は17に記載の方法。
(項目19)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物のうちの1つ以上がヒト核酸である、項目16〜18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約50kb〜約700kb、約50kb〜約500kb、約50kb〜約300kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、約275kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、約450kb〜約500kb、約500kb〜約550kb、約550kb〜約600kb、約600kb〜約650kb、又は約650kb〜約700kbである、項目16〜19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約100kb〜約700kbである、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約400kbである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記標的化された細胞が、前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらが約5kb〜約700kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する、項目16〜19のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記第1のLTVECの前記第1の重複配列が、前記第2のLTVECの前記第1の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは99.9%同一であり、かつ/又は前記第2のLTVECの前記第2の重複配列が前記第3のLTVECの前記第2の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは99.9%同一である、項目16〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記第1の重複配列の前記サイズが約1kb〜約70kbであり、かつ/又は前記第2の重複配列の前記サイズが約1kb〜約70kbである、項目16〜24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記第1の重複配列の前記サイズが少なくとも10kb若しくは少なくとも20kbであり、かつ/又は前記第2の重複配列の前記サイズが少なくとも10kb若しくは少なくとも20kbである、項目16〜25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記標的ゲノム遺伝子座への前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物のうちの1つ以上の組み込みが、
(a)前記標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、
(b)前記標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは、
(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす、項目16〜26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記第1のLTVEC、前記第2のLTVEC、又は前記第3のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbである、項目16〜27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記標的ゲノム遺伝子座における前記内因性配列の前記欠失が約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、又は約700kb〜約800kbである、項目12又は27に記載の方法。
(項目30)
細胞中の標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化するための方法であって、第1の標的化ベクターと第2の標的化ベクターとを細胞に導入することを含み、前記第1の標的化ベクターが、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含み、前記第2の標的化ベクターが、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含み、
前記第1の3’ホモロジーアーム及び前記第2の5’ホモロジーアームが、重複ヌクレオチド配列を含み、
前記第1の5’ホモロジーアーム及び前記第2の3’ホモロジーアームが、前記標的ゲノム遺伝子座内の対応するセグメントに相同である、方法。
(項目31)
相同組み換えが、ヌクレアーゼ剤の使用なしで前記標的ゲノム遺伝子座において強化される、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記標的ゲノム遺伝子座において、又はその付近で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、前記細胞に導入することを更に含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記ヌクレアーゼ剤が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はメガヌクレアーゼである、項目1〜29及び32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質と、ガイドRNA(gRNA)とを含む、項目1〜29及び32のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記Casタンパク質は、Cas9である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記方法が、前記標的ゲノム遺伝子座における前記第1の標的化ベクター、前記第2の標的化ベクター、又は両方の前記相同組み換えを強化する、項目30〜35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記相同組み換えの前記強化が少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記第1の標的化ベクターの前記重複配列が、前記第2の標的化ベクターの前記重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である、項目30〜37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記重複配列が約1kb〜約70kbである、項目30〜38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記重複配列が少なくとも20kbである、項目30〜39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記第1の標的化ベクターが、約20kb〜約200kbに及ぶ第1の大型標的化ベクター(LTVEC)である、項目30〜40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記第2の標的化ベクターが、約20kb〜約200kbに及ぶ第2の大型標的化ベクター(LTVEC)である、項目30〜41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記第1のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が10kb〜約200kbである、項目41又は42に記載の方法。
(項目44)
前記第2のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が10kb〜約200kbである、項目42又は43に記載の方法。
(項目45)
前記重複ヌクレオチド配列が、前記標的ゲノム遺伝子座への組み換え機構の誘引を促進する、項目30〜44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記細胞がヒト細胞である、項目1〜45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記細胞が非ヒト細胞である、項目1〜45のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記細胞が多能性細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、又は線維芽細胞である、項目1〜47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記多能性細胞が胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記細胞が哺乳類細胞である、項目47〜49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記哺乳類細胞がげっ歯類細胞である、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記げっ歯類がマウス又はラットである、項目51に記載の方法。
(項目53)
F0世代非ヒト動物を生産するための方法であって、
(a)非ヒト宿主胚に非ヒトES細胞を導入することであって、前記非ヒトES細胞が、項目1〜45及び47〜52のいずれか一項に記載の方法によって生産されたものである、導入することと、
(B)代理母において前記非ヒト宿主胚を懐胎させることと、を含み、
前記代理母が、修飾を含む前記F0世代非ヒト動物を生産する、方法。
(項目54)
前記非ヒト動物がマウス又はラットである、項目53に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0143】
定義
本明細書で互換的に使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、及び「ペプチド」は、コード及び非コードアミノ酸、並びに化学的又は生化学的に修飾又は誘導体化されたアミノ酸を含む、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を含む。それらの用語はまた、修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドなど、修飾されたポリマーを含む。
【0144】
本明細書で互換的に使用される用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はこれらの類似体若しくは修飾バージョンを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含む。それらは、プリン塩基、ピリミジン塩基、又は他の天然の、化学的に修飾された、生化学的に修飾された、非天然の、若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む、一本鎖、二本鎖、及び多重鎖DNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA−RNAハイブリッド、並びにポリマーを含む。
【0145】
標的ゲノム遺伝子座は、標的化ベクターを用いた標的化修飾によって修飾されるゲノムの領域を意味する。その領域は、標的化ベクター内のホモロジーアームに対応するゲノムDNAのセグメントの外縁内の領域として定義され得る。標的ゲノム遺伝子座は、遺伝子、1つ以上のイントロン、1つ以上のエクソン、1つ以上の調節配列などの遺伝子又は遺伝子の群のうちのいずれか又は全部を含むことができる。
【0146】
「コドン最適化」は、天然アミノ酸配列を維持しながら、天然配列の少なくとも1つのコドンを、宿主細胞の遺伝子中でより頻繁に、又は最も頻繁に使用されるコドンと置換することによって、特定の宿主細胞中の発現の強化のために核酸配列を修飾する工程を概ね含む。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、自然発生的核酸配列と比較して、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、又は任意の他の宿主細胞を含む所与の原核又は真核細胞中でより高い使用頻度を有するコドンを置換するように修飾され得る。コドン使用頻度表は、例えば、「Codon Usage Database」で容易に入手可能である。これらの表は、いくつかの方法で適用することができる。Nakamura et al.(2000)Nucleic Acids Research 28:292を参照されたい。特定の宿主における発現に対する特定の配列のコドン最適化のためのコンピュータアルゴリズムもまた、入手可能である(例えば、Gene Forgeを参照されたい)。
【0147】
「操作可能な連結」又は「操作可能に連結」されていることは、両方の構成要素が正常に機能し、かつ構成要素のうちの少なくとも1つが他の構成要素のうちの少なくとも1つに及ぼされる機能を媒介することができる可能性を可能にするような、2つ以上の構成要素(例えば、プロモーター及び別の配列要素)の並置を含む。例えば、プロモーターが、1つ以上の転写調節因子の存在又は非存在に応答して、コード配列の転写レベルを制御する場合、プロモーターは、コード配列に操作可能に連結され得る。
【0148】
用語「多能性細胞」又は「多能性幹細胞」は、2つ以上の分化細胞型に発達する能力を有する未分化細胞を含む。そのような多能性細胞は、例えば、哺乳類胚性幹(ES)細胞又は哺乳類誘導多能性幹(iPS)細胞であってもよい。
【0149】
「胚性幹細胞」又は「ES細胞」という用語には、インビトロで未分化増殖できる、胚由来の全能性又は多能性細胞が含まれ、胚への導入により、発生中の胚のいかなる組織にも寄与することができる。
【0150】
用語「誘導多能性幹細胞」又は「iPS細胞」は、分化した成人細胞から直接誘導することができる多能性幹細胞を含む。ヒトiPS細胞は、例えば、Oct3/4、Soxファミリー転写因子(例えば、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15)、Mycファミリー転写因子(例えば、c−Myc、l−Myc、n−Myc)、クルッペル様ファミリー(KLF)転写因子(例えば、KLF1、KLF2、KLF4、KLF5)、並びに/又は、NANOG、LIN28、及び/若しくはGlis1などの関連転写因子を含んでもよい、非多能性細胞内にリプログラミング因子の特定の一群を導入することによって発生させることができる。ヒトiPS細胞はまた、例えば、miRNA、転写因子の作用を模倣する小分子、又は系譜特異化剤の使用によって発生させてもよい。ヒトiPS細胞は、3種類の脊椎動物胚葉、例えば、内胚葉、外胚葉、又は内胚葉のうちいずれかの細胞に分化する能力によって特徴付けられる。ヒトiPS細胞はまた、好適なインビトロ培養条件下で無限に増殖する能力によっても特徴付けられる。例えば、Takahashi and Yamanaka(Cell(2006)Vol.126(4),pp.663〜676)を参照されたい。
【0151】
免疫グロブリン核酸配列に関する用語「生殖細胞系」には、子孫に継承できる核酸配列が含まれる。
【0152】
核酸の「相補性」は、そのヌクレオ塩基の基の配向によって、核酸の1つの鎖中のヌクレオチド配列が、対向する核酸鎖上の別の配列と水素結合を形成することを意味する。DNA中の相補的塩基は、通常は、TとA及びGとCである。RNA中では、それらは、通常は、GとC及びAとUである。相補性は、完全又は実質的/十分であり得る。2つの核酸間の完全な相補性は、この2つの核酸が、二重鎖中の全ての塩基がワトソン−クリック対合によって相補的塩基に結合される二重鎖を形成することができることを意味する。「実質的な」又は「十分な」相補性は、1つの鎖中の配列が対向する鎖中の配列に全面的及び/又は完璧に相補的ではないが、2つの鎖上の塩基間で十分な結合が生じて、一組のハイブリダイゼーション条件(例えば、塩濃度及び温度)下で、安定したハイブリッド複合体を形成することを意味する。そのような条件は、配列及びハイブリダイズ鎖のTm(融解温度)を予測するための標準的な数学的計算を使用することによって、又は常法を用いたTmの経験的決定によって予測され得る。Tmは、2つの核酸鎖間に形成されたハイブリダイゼーション複合体の集団が50%変性される(即ち、二本鎖核酸分子の集団が半分一本鎖に解離される)温度を含む。Tm未満の温度においては、ハイブリダイゼーション複合体の形成に有利に働く一方で、Tmを超える温度においては、ハイブリダイゼーション複合体中の鎖の融解又は分離に有利に働く。Tmは、例えば、Tm=81.5+0.41(%G+C)を使用することによって、1M NaCl水溶液中で既知のG+C含有量を有する核酸に対して推定されてもよいが、他の既知のTm計算は、核酸構造特徴を考慮に入れる。
【0153】
「ハイブリダイゼーション条件」は、1つの核酸鎖が、ハイブリダイゼーション複合体を生み出すために、相補鎖相互作用及び水素結合によって第2の核酸鎖に結合する、累積的な環境を含む。そのような条件は、核酸を含有する水性又は有機溶液の化学構成成分及びそれらの濃度(例えば、塩、キレート剤、ホルムアミド)、並びに混合物の温度を含む。インキュベーション時間の長さ又は反応チャンバの寸法などの他の要因が環境に寄与し得る。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2.sup.nd ed.,pp.1.90〜1.91,9.47〜9.51,11.47〜11.57(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)を参照されたい。
【0154】
ハイブリダイゼーションは、塩基間のミスマッチの可能性はあるものの、2つの核酸が相補的配列を含むことを必要とする。2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適した条件は、当該技術分野において周知の変数である、核酸の長さ及び相補性の程度によって決まる。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が大きいほど、それらの配列を有する核酸のハイブリッドに対する融解温度(Tm)の値は大きくなる。短区間の相補性(例えば、35個以下、30個以下、25個以下、22個以下、20個以下、又は18個以下のヌクレオチドにわたる相補性)を有する核酸間のハイブリダイゼーションに関して、ミスマッチの位置は重要になる(上記のSambrook et al.、11.7〜11.8を参照されたい)。通常は、ハイブリダイズ可能な核酸に対する長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。ハイブリダイズ可能な核酸に対する例示的な最小長は、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約22ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、及び少なくとも約30ヌクレオチドを含む。更に、温度及び洗浄溶液塩濃度は、相補性の領域の長さ及び相補性の程度などの要因に従って、必要に応じて調整されてもよい。
【0155】
ポリヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸の配列に100%相補的である必要はない。更に、ポリヌクレオチドは、介在又は隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように、1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズしてもよい(例えば、ループ構造又はヘアピン構造)。ポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、それらが標的化される標的核酸配列内の標的領域に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%の配列相補性を含んでもよい。例えば、20個中18個のヌクレオチドが標的領域に相補的であり、したがって特異的にハイブリダイズする、gRNAは、90%の相補性を表す。この例において、残りの非相補的ヌクレオチドには、相補的ヌクレオチドが群がって又は点在していてもよく、互いに又は相補的ヌクレオチドに接触している必要はない。
【0156】
核酸内の核酸配列の特定の区間の間の相補性パーセントは、当該技術分野において既知のBLASTプログラム(基本的な局所的アライメント検索ツール)及びPowerBLASTプログラム(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403〜410、Zhang and Madden(1997)Genome Res.7:649〜656)を使用して、又は、Smith及びWatermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482〜489)を使用するデフォルト設定を用いる、Gapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)を使用して、規定通りに決定することができる。
【0157】
本明細書に提供される方法及び組成物は、様々な異なる構成成分を採用する。いくつかの構成成分が活性な変異体及びフラグメントを有することができることが、本明細書全体を通して認識される。そのような構成成分としては、例えば、ヌクレアーゼ剤、Casタンパク質、CRISPR RNA、tracrRNA、及びガイドRNAが挙げられる。これらの構成成分のそれぞれに関する生物活性は、本明細書の別の箇所に記載される。
【0158】
2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列との関連での「配列同一性」又は「同一性」は、指定された比較ウィンドウにわたって最大限に一致するようにアラインメントされたときに同じである2つの配列中の残基を参照する。配列同一性の百分率がタンパク質に関して使用されるとき、同一ではない残基部分は、多くの場合、保存的アミノ酸置換によって異なることが認識され、この保存的アミノ酸置換において、アミノ酸残基は、同様の化学特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基と置換され、したがって、分子の機能特性を変化させない。配列が保存的置換の点で異なるとき、配列同一性の百分率は、置換の保存的性質を考慮して補正するように上方調節されてもよい。そのような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有すると称される。この調節を行うための手段は、周知である。通常は、これは、保存的置換を完全なミスマッチよりもむしろ部分的なミスマッチとしてスコアリングし、それにより、配列同一性の百分率を増加させることを伴う。したがって、例えば、同一アミノ酸に1のスコアが与えられ、非保存的置換にゼロのスコアが与えられる場合、保存的置換は、ゼロ〜1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,California)で実装されるように計算される。
【0159】
「配列同一性の百分率」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって決定された値を含み、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、基準配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含んでもよい。百分率は、同一核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列中で生じる位置の数を決定して、マッチした位置の数を得て、マッチした位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、結果に100を掛けて、配列同一性の百分率を得ることによって計算される。
【0160】
特に指示がない限り、配列同一性/類似性の値は、以下のパラメータ、即ち、50のGAP重み及び3の長さ重み並びにnwsgapdna.cmpスコアリング行列を使用するヌクレオチド配列に対する%同一性及び%類似性、8のGAP重み及び2の長さ重み並びにBLOSUM62スコアリング行列を使用するアミノ酸配列に対する%同一性及び%類似性、又はそれらの任意の同等のプログラムを用いる、GAP Version 10を使用して得られた値を含む。「同等のプログラム」は、当該の任意の2つの配列に関して、GAP Version 10によって生成された対応するアラインメントと比較したとき、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基マッチ及び同一の配列同一性の百分率を有するアラインメントを生成する、任意の配列比較プログラムを含む。
【0161】
「相同の」配列は、それが既知の基準配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるように、既知の基準配列と同一、又は実質的に同様のいずれかである核酸配列が含まれる。「オルソロガス」配列は、別の種において既知の基準配列と機能的に同等の、ある種からの核酸配列を含む。
【0162】
用語「インビトロ」は、人工環境、及び人工環境(例えば、試験管)内で生じる過程又は反応を含む。用語「インビボ」は、自然環境(例えば、細胞又は生物又は身体)、及び自然環境内で生じる過程又は反応を含む。用語「エクスビボ」は、個体の体から取り出された細胞、及びそのような細胞内で生じる過程又は反応を含む。
【0163】
1つ以上の列挙された要素を「備える(comprising)」又は「含む(including)」組成物又は方法は、特に列挙されていない他の要素を含んでもよい。例えば、あるタンパク質を「備える(comprises)」又は「含む(includes)」組成物は、そのタンパク質を単独で、又は他の成分と組み合わせて含有してもよい。
【0164】
値の範囲の指定は、その範囲内の、又はその範囲を画定する全ての整数、及びその範囲内の整数によって定義される全ての部分範囲を含む。
【0165】
文脈から明らかではない限り、用語「約」は、規定された値の測定の標準的な標準誤差(例えば、SEM)内の値を包含する。
【0166】
単数形の冠詞「a」、「an」、及び「the」は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。例えば、用語「Casタンパク質」又は「少なくとも1つのCasタンパク質」は、これらの混合物を含む複数のCasタンパク質を含むことができる。
【0167】
I.複数の標的化ベクターを使用したゲノムの修飾
細胞内の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法及び組成物が提供される。そのような方法は、単一の隣接する核酸セグメントを形成するために互いと組み換えることが可能である、複数の標的化ベクター(LTVEC)を採用する。そのような方法は、単一の標的化ステップで1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれよりも多くのLTVECを利用することができる。細胞中の標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化するための方法及び組成物もまた提供される。そのような方法は、1つ以上の重複配列を含む2つ以上の核酸を採用する。本明細書に開示される方法のうちのいずれも、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで生じることができる。
【0168】
A.二重標的化
二重標的化方法を介して、細胞内の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法及び組成物が提供される。本方法及び組成物は、単一の隣接する核酸セグメントを形成するために互いと組み換えることが可能である、2つの大型標的化ベクター(LTVEC)(即ち、第1のLTVEC及び第2のLTVEC)を採用する。第1のLTVECは、第1の核酸挿入物を含み、第2のLTVECは、第2の核酸挿入物を含む。核酸挿入物には、5’及び3’ホモロジーアームが隣接している。第1の核酸挿入物及びその3’ホモロジーアーム、並びに第2の核酸挿入物及びその5’ホモロジーアームは、同じ隣接する核酸の重複フラグメントであり得る。第1のLTVECの3’ホモロジーアーム及び第2のLTVEC重複の5’ホモロジーアーム(即ち、互いに相補的である)、並びに第1及び第2の挿入物は、重複ホモロジーアームと隣接する。そのような方法は、任意の順序で生じることができる3つの組み換え事象、(1)第1のLTVECの3’ホモロジーアームと第2のLTVECの5’ホモロジーアームとの間の組み換え、(2)第1のLTVECの5’ホモロジーアームと標的遺伝子座中の対応するセグメントとの間の組み換え、及び(3)第2のLTVECの3’ホモロジーアームと標的遺伝子座中の対応するセグメントとの間の組み換えを伴う。この三元の組み換えは、ホモロジーアームの重複配列が第1の核酸挿入物と第2の核酸挿入物との間に位置付けられた、標的遺伝子座中の隣接する核酸を再構成する。
【0169】
LTVECのそれぞれはまた、単一の隣接する核酸セグメンの組み換え及び組み込みを可能にする、標的ゲノム遺伝子座内、又はその付近のDNAの領域に相同である5’又は3’ホモロジーアームのいずれかを含む。したがって、三元の組み換え事象によって、大きい核酸修飾(即ち、欠失、挿入、及び/又は置き換え)が単一の標的化ステップで、標的遺伝子座において行われ得る。
【0170】
3つの組み換え事象は、任意の順序で生じることができる。一実施形態において、2つのLTVECの重複配列間の組み換え事象は、標的遺伝子座との相同組み換えの前に生じる。別の実施形態において、標的遺伝子座との組み換えは、2つのLTVEC間の組み換え前に生じる。更に別の実施形態において、3つの組み換え事象は、同時に生じることができる。
【0171】
一実施形態において、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法が提供される。そのような方法は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECとを導入することを含み、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアームは、第2のLTVECの第2の5’ホモロジーアームに相同の重複配列を有し、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、標的ゲノム遺伝子座は、対応するゲノムセグメント間の第1及び第2の核酸挿入物の組み込みによって修飾される。本方法は、標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することを更に含む。
【0172】
B.三重標的化
三重標的化方法を介して、細胞内の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法及び組成物もまた提供される。本方法及び組成物は、単一の隣接する核酸セグメントを形成するために互いと組み換えることが可能である、3つの大型標的化ベクター(LTVEC)(即ち、第1のLTVEC、第2のLTVEC、及び第3のLTVEC)を採用する。第1のLTVECは、第1の核酸挿入物を含み、第2のLTVECは、第2の核酸挿入物を含み、第3のLTVECは、第3の核酸挿入物を含む。核酸挿入物には、5’及び3’ホモロジーアームが隣接している。第1の核酸挿入物及びその3’ホモロジーアーム、並びに第2の核酸挿入物及びその5’ホモロジーアームは、同じ隣接する核酸の重複フラグメントであり得る。第2の核酸挿入物及びその3’ホモロジーアーム、並びに第3の核酸挿入物及びその5’ホモロジーアームは、同じ隣接する核酸の重複フラグメントであり得る。第1のLTVECの3’ホモロジーアーム及び第2のLTVEC重複の5’ホモロジーアーム(即ち、互いに相補的である)、並びに第1及び第2の挿入物は、重複ホモロジーアームと隣接する。第2のLTVECの3’ホモロジーアーム及び第3のLTVEC重複の5’ホモロジーアーム(即ち、互いに相補的である)、並びに第1及び第2の挿入物は、重複ホモロジーアームと隣接する。
【0173】
そのような方法は、任意の順序で生じることができる4つの組み換え事象、(1)第1のLTVECの3’ホモロジーアームと第2のLTVECの5’ホモロジーアームとの間の組み換え、(2)第2のLTVECの3’ホモロジーアームと第3のLTVECの5’ホモロジーアームとの間の組み換え、(3)第1のLTVECの5’ホモロジーアームと標的遺伝子座中の対応するセグメントとの間の組み換え、及び(4)第3のLTVECの3’ホモロジーアームと標的遺伝子座中の対応するセグメントとの間の組み換えを伴う。この四元の組み換えは、ホモロジーアームの重複配列が第1の核酸挿入物と第2の核酸挿入物との間に、かつ第2の核酸挿入物と第3の核酸挿入物との間に位置付けられた、標的遺伝子座中の隣接する核酸を再構成する。
【0174】
第1及び第3のLTVECはまた、単一の隣接する核酸セグメンの組み換え及び組み込みを可能にする、標的ゲノム遺伝子座内、又はその付近のDNAの領域に相同である5’又は3’ホモロジーアームのいずれかを含む。したがって、四元の組み換え事象によって、大きい核酸修飾(即ち、欠失、挿入、及び/又は置き換え)が単一の標的化ステップで、標的遺伝子座において行われ得る。
【0175】
4つの組み換え事象は、任意の順序で生じることができる。一実施形態において、3つのLTVECの重複配列間の組み換え事象は、標的遺伝子座との相同組み換えの前に生じる。別の実施形態において、標的遺伝子座との組み換えは、3つのLTVEC間の組み換え前に生じる。更に別の実施形態において、4つの組み換え事象は、同時に生じることができる。
【0176】
一実施形態において、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法が提供される。そのような方法は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECと、第3の5’ホモロジーアーム及び第3の3’ホモロジーアームが隣接した第3の核酸挿入物を含む、第3のLTVECとを導入することを含み、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアームは、第2のLTVECの第2の5’ホモロジーアームに相同の重複配列を有し、第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、第3のLTVECの第3の5’ホモロジーアームに相同の重複配列を有し、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第3のLTVECの第3の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、標的ゲノム遺伝子座は、対応するゲノムセグメント間の第1、第2、及び第3の核酸挿入物の組み込みによって修飾される。本方法は、標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することを更に含む。
【0177】
C.複数のLTVECを用いた標的化
単一の標的化ステップで遺伝子修飾を引き起こすための本明細書に提供される標的化方法は、単一のLTVEC標的化方法で達成されるものと比べて、標的化遺伝子修飾のための新しい可能性及び強化された効率性を提供する。互いと組み換えることが可能である2つ、3つ、又はそれよりも多くのLTVECを用いた標的化は、DNAのより大きいセグメントの修飾を可能にする。組み換え事象は、任意の順序で生じることができる。例えば、LTVECの重複配列間の組み換え事象は、標的遺伝子座との相同組み換え前に生じることができる。あるいは、標的遺伝子座との組み換えは、LTVEC間の組み換え前に生じることができるか、又は組み換え事象は同時に生じることができる。
【0178】
本明細書に記載される標的化方法は、既存の単一のLTVEC標的化方法と比べて、標的化効率性の増大、遺伝子修飾の達成可能なサイズの増大、及び大きいゲノム修飾を得るために必要な標的化ステップの数の低減を含む、いくつかの利点を提供し、それは、時間を節約し、修飾した胚性幹細胞の多能性を維持する。これは、本方法が単一のステップで2つ、3つ、又はそれよりも多くのLTVECからの核酸挿入物の組み合わせを用いたゲノム遺伝子座の修飾を可能にするため、大きいゲノム修飾にとって特に重要である。したがって、そのような修飾は、標的化ゲノム遺伝子座内の非常に大きい(例えば、50kb超の)欠失、置き換え、及び挿入を可能にすることができる。
【0179】
例えば、標的ゲノム遺伝子座を修飾し、標的化修飾をスクリーニング及び確認するために順次に3つのLTVECを使用するために必要とされる時間が、約9ヶ月である一方で、同じ修飾が、3つのLTVECを同時に用いて、わずか約4ヶ月で行われ、かつ確認され得る。
【0180】
順次の修飾はまた、胚性幹細胞などの多能性細胞が修飾されるとき、多能性及び生殖細胞系伝達能力の損失のより高いリスクを引き起こす。培養における継代数が増加し、エレクトロポレーションの数が増加するにつれて、染色体及び核型異常が蓄積し、生殖細胞系能力の損失を引き起こす可能性がある。例えば、Buehr et al.(2008)Cell 135:1287〜1298、Li et al.(2008)Cell 135(7):1299〜1310、及びLiu et al.(1997)Dev.Dyn.209:85〜91を参照されたく、それらのそれぞれは、全ての目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。順次の代わりに同時に複数のLTVECを使用した標的化は、継代数及びエレクトロポレーションの数を低減し、それにより、胚性幹細胞などの多能性細胞中の遺伝子操作を実施すると同時に、それらの生殖細胞系能力を保持する能力を高める。
【0181】
特定の実施形態において、遺伝子修飾は、1つ以上の内因性核酸の修飾、1つ以上の内因性核酸の置換、異種核酸による内因性核酸の置き換え、ノックアウト、又はノックインを含む。具体的な実施例において、遺伝子修飾は、少なくとも2つの大型標的化ベクター(LTVEC)を細胞に導入することによって導入される。別の実施例において、遺伝子修飾は、少なくとも3つの大型標的化ベクター(LTVEC)を細胞に導入することによって導入される。そのような実施例において、LTVECは、細胞の標的ゲノム遺伝子座に挿入されるDNAを含むことができる。
【0182】
いくつかの実施形態において、標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法は、遺伝子修飾を哺乳類細胞に導入することを含む。同様に、本発明は、遺伝子修飾を含む哺乳類細胞を提供する。
【0183】
細胞中で標的化遺伝子修飾を行うための様々な方法が使用され得る。例えば、上記のように、標的化遺伝子修飾は、相同組み換え事象を介して標的化遺伝子修飾を発生させる系を採用する。他の場合には、細胞は、標的化されたゲノム遺伝子座において一本鎖又は二本鎖切断を発生させるヌクレアーゼ剤を使用して修飾され得る。一本鎖又は二本鎖切断は、次いで、非相同末端結合経路(NHEJ)によって修復される。例えば、大型標的化ベクターの使用を含む、そのような標的化遺伝子修飾を発生させるための例示的な方法は、本明細書の別の箇所で詳細に考察される。また、Wang et al.(2013)Cell 153:910〜918、Mandalos et al.(2012)PLOS ONE 7:e45768:1〜9、及びWang et al.(2013)Nat Biotechnol.31:530〜532を参照されたく、それらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0184】
標的化ベクターと標的遺伝子座との間の相同組み換えによる標的化遺伝子改変は、特にげっ歯類胚性幹細胞以外の細胞型で、非常に非効率的であり得る。標的遺伝子座におけるヌクレアーゼ特異的二本鎖DNA切断と組み合わせた標的化ベクターの使用は、欠失又は挿入などの修飾のための標的化効率性を大幅に強化することができる。同様に、標的遺伝子座におけるヌクレアーゼ特異的一本鎖DNA切断と組み合わせた標的化ベクターの使用は、修飾のための標的化効率性を大幅に強化することができる。
【0185】
いくつかの実施形態において、LTVECは、標的化されたゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤と組み合わせて採用され得る。そのような方法は、ヌクレアーゼ剤を細胞に導入することを更に含む。一実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。別の実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系である。
【0186】
一実施形態において、複数のLTVECを利用することによって、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法が提供される。そのような方法は、(a)標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することと、(b)第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECとを導入することであって、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するセグメントに相同であり、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の5’アームは、互いに、又は個々に1つ以上の更なるLTVECの更なる5’及び3’ホモロジーアームに相同であり、それぞれは、更なる5’ホモロジーアーム及び更なる3’ホモロジーアームが隣接した更なる挿入を含み、標的ゲノム遺伝子座は、対応するゲノムセグメント間の第1の核酸挿入物、1つ以上の更なるLTVECの1つ以上の更なる核酸挿入物(存在する場合)、及び第2の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、(c)標的ゲノム遺伝子座中に組み込まれた第1の核酸挿入物、1つ以上の更なる核酸挿入物(存在する場合)、及び第2の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することと、を含む。そのような方法において、更なるLTVECは、存在する場合、第1のLTVECと第2のLTVECとの間に挿入される、1つ以上の他のLTVECである。
【0187】
一実施形態において、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための二重標的化方法が提供され、本方法は、(a)標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することと、(b)第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECとを導入することを含み、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアームは、第2のLTVECの第2の5’ホモロジーアームに相同の重複配列を有し、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、標的ゲノム遺伝子座は、対応するゲノムセグメント間の第1及び第2の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、(c)標的ゲノム遺伝子座中に組み込まれた第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することと、を含む。そのような方法において、第1の核挿入及び第1の3’ホモロジーアーム、並びに第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームは、隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物の組み込みによって改質される。
【0188】
一実施形態において、細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための三重標的化方法が提供され、本方法は、(a)標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、細胞に導入することと、(b)第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECと、第3の5’ホモロジーアーム及び第3の3’ホモロジーアームが隣接した第3の核酸挿入物を含む、第3のLTVECとを導入することを含み、第1のLTVECの第1の3’ホモロジーアームは、第2のLTVECの第2の5’ホモロジーアームに相同の重複配列を有し、第2のLTVECの第2の3’ホモロジーアームは、第3のLTVECの第3の5’ホモロジーアームに相同の重複配列を有し、第1のLTVECの第1の5’ホモロジーアーム及び第3のLTVECの第3の3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、標的ゲノム遺伝子座は、対応するゲノムセグメント間の第1、第2、及び第3の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、(c)標的ゲノム遺伝子座中に組み込まれた第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することと、を含む。そのような三重標的化方法において、第1の核挿入及び第1の3’ホモロジーアーム、並びに第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームは、隣接する核酸の重複フラグメントであり、第2の核挿入及び第2の3’ホモロジーアーム、並びに第3の核酸挿入物及び第3の5’ホモロジーアームは、隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは、標的ゲノム遺伝子座への第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、及び第3の核酸挿入物の組み込みによって改質される。
【0189】
いくつかの場合において、2つ、3つ、又はそれよりも多くのLTVECが同時に導入され得る。あるいは、2つ、3つ、又はそれよりも多くのLTVECが、順次に導入され得るか、又は異なる時間に導入され得る。
【0190】
標的化系の様々な構成要素としては、例えば、標的化ベクター、ヌクレアーゼ剤、標的ゲノム遺伝子座、核酸挿入物、対象となるポリヌクレオチド、及び/又は他の構成要素が挙げられ得、それらのそれぞれは、本明細書の別の箇所で詳細に記載される。
【0191】
D.複数の重複核酸を用いた標的化
単一の標的化ステップで遺伝子修飾を引き起こすための本明細書に提供される標的化方法は、単一の核酸で達成されるものと比べて、標的化遺伝子修飾のための新しい可能性及び強化された効率性を提供する。互いと組み換えることが可能である2つ、3つ、又はそれよりも多くの核酸を用いた標的化は、DNAのより大きいセグメントの修飾を可能にし、ヌクレアーゼ剤の非存在下でさえ、単一の核酸単独よりも強化された標的化効率性を提供することができる。ヌクレアーゼ剤なしのそのような方法は、ヌクレアーゼを使用した方法に必要とされるスクリーニングが、開裂を確認し、オフターゲット効果を調べる追加のスクリーニングステップを伴い、より複雑であり、時間がかかるため、ヌクレアーゼ剤を採用する方法よりも有利であり得る。十分な長さの重複領域を伴う核酸(例えば、LTVEC)は、標的化ヌクレアーゼの非存在下でさえ、標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化することができる。一例として、十分な長さの重複領域を伴う2つの核酸の使用は、単一の核酸の使用と比較して、標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化することができる。機構の理解は実践のために必要とされないが、相同組み換えは、核酸(例えば、LTVEC)上への組み換え機構(例えば、ExoI、Rad51、BRCA2など)の搭載によって、そのような状況下で強化され、それにより、標的遺伝子座への組み換え機構の誘引を促進すると考えられる。
【0192】
細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するか、又は標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化するための方法が本明細書に記載され、第1及び第2の核酸を細胞に導入することを含み、第1及び第2の核酸は、重複ヌクレオチド配列を含む。第1及び第2の核酸は、例えば、直鎖核酸であってもよい。そのような方法は、互いと組み換えることが可能である3つ以上の核酸を細胞に導入することを含むことができる。例えば、第1及び第2の核酸は、第1の重複配列を有することができ、第2及び第3の核酸は、第2の重複配列を有することができる。いくつかの方法において、ヌクレアーゼの補助なしで、標的ゲノム遺伝子座が修飾されるか、又は標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えが強化される。他の方法において、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼ、又はCas9及びガイドRNAなど、標的ゲノム遺伝子座において、又はその付近で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼを用いて、標的ゲノム遺伝子座が修飾されるか、又は標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えが強化される。
【0193】
本方法は、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸の相同組み換えを強化することができる、標的ゲノム遺伝子座における第2の核酸の相同組み換えを強化することができる、又は標的ゲノム遺伝子座における第1及び第2の核酸の両方の相同組み換えを強化することができる。一例として、標的ゲノム遺伝子座における第1の核酸の相同組み換えは、第1の核酸が第2の核酸なしで導入される方法と比較して強化され得る。同様に、標的ゲノム遺伝子座における第2の核酸の相同組み換えは、第2の核酸が第1の核酸なしで導入される方法と比較して強化され得る。相同組み換えの強化は、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍であってもよい。いくつかの方法において、ヌクレアーゼなしの強化は、ヌクレアーゼを用いた強化と比較可能であってもよい。例えば、ヌクレアーゼを用いた強化の倍率変化は、ヌクレアーゼなしの強化と比較して、
0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍、1.0倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍であってもよい。いくつかの場合において、ヌクレアーゼなしの強化は、ヌクレアーゼを用いた強化と同じであるか、又はそれより大きくなってもよい。
【0194】
第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列に相同であってもよい。例えば、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一であってもよい。あるいは、第1の核酸の重複配列は、第2の核酸の重複配列と100%同一であってもよい。
【0195】
重複配列は、例えば、約1kb〜約70kb又はそれよりも長くてもよい。例えば、重複配列は、約1kb〜約5kb、約5kb〜約10kb、約10kb〜約15kb、約15kb〜約20kb、約20kb〜約25kb、約25kb〜約30kb、約30kb〜約35kb、約35kb〜約40kb、約40kb〜約45kb、約45kb〜約50kb、約50kb〜約55kb、約55kb〜約60kb、約60kb〜約65kb、約65kb〜約70kb、約70kb〜約80kb、約80kb〜約90kb、約90kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約140kb、約140kb〜約160kb、約160kb〜約180kb、約180kb〜約200kb、約200kb〜約220kb、約220kb〜約240kb、約240kb〜約260kb、約260kb〜約280kb、又は約280kb〜約300kbであってもよい。一例として、重複配列は、約20kb〜約60kbであってもよい。あるいは、重複配列は、少なくとも1kb、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも25kb、少なくとも30kb、少なくとも35kb、少なくとも40kb、少なくとも45kb、少なくとも50kb、少なくとも55kb、少なくとも60kb、少なくとも65kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも120kb、少なくとも140kb、少なくとも160kb、少なくとも180kb、少なくとも200kb、少なくとも220kb、少なくとも240kb、少なくとも260kb、少なくとも280kb、又は少なくとも300kbであってもよい。
【0196】
重複配列は、第1及び第2の核酸内のどこでも位置することができる。例えば、重複配列は、第1の核酸の3’末端及び第2の核酸の5’末端に位置することができる。あるいは、重複配列は、第1の核酸の5’末端及び第2の核酸の3’末端に位置することができる。
【0197】
いくつかの方法において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、標的化ベクターである。第2の核酸は、プラスミド、標的化ベクター、又は大型標的化ベクターなど、重複配列を含む任意の核酸であってもよい。いくつかの方法において、第2の核酸は、重複配列を除いて、標的ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない。例えば、第2の核酸は、重複配列から本質的になることができるか、又は重複配列からなることができる。
【0198】
いくつかの方法において、第1の核酸は、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、標的化ベクターであり、第2の核酸は、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2の標的化ベクターである。
【0199】
第1の標的化ベクターは、任意のサイズを有することができる。同様に、第2の標的化ベクターは、任意のサイズを有することができる。例えば、第1及び/又は第2の標的化ベクターは、約1kb〜約2kb、約2kb〜約5kb、又は約5kb〜約10kbであってもよい。第1の標的化ベクターはまた、大型標的化ベクター(LTVEC)であってもよい。同様に、第2の標的化ベクターは、LTVECであってもよい。LTVECの例示的なサイズは、本明細書の別の箇所に開示される。例えば、第1及び/又は第2のLTVECは、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約250kb、約250kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、約450kb〜約500kb、約500kb〜約550kb、約550kb〜約600kb、約600kb〜約650kb、約650kb〜約700kb、約700kb〜約750kb、又は約750kb〜約800kbであってもよい。
【0200】
いくつかの方法において、第1の核酸は、LTVECであり、第2の核酸は、プラスミド又は標的化ベクターなど、重複配列を含むより小さい核酸である。いくつかの方法において、第2の核酸は、重複配列を除いて、標的ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない。例えば、第2の核酸は、重複配列から本質的になることができるか、又は重複配列からなることができる。
【0201】
いくつかの方法において、第1の核酸挿入物及び第2の核酸挿入物は、隣接する核酸の重複フラグメントである。いくつかの方法において、第1及び/又は第2の核酸挿入物は、細胞の種とは異なる種由来であってもよい。例えば、第1及び/又は第2の核酸挿入物は、ヒト核酸であってもよい。
【0202】
本方法は、標的ゲノム遺伝子座への第1及び/又は第2の核酸挿入物の組み込みをもたらすことができる。組み込みは、標的ゲノム遺伝子座における配列の付加、標的ゲノム遺伝子座における配列の欠失、又は標的ゲノム遺伝子座における配列の置き換えをもたらすことができる。例えば、組み込みは、標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、又は標的ゲノム遺伝子座における外因性配列での内因性配列の置き換えをもたらすことができる。標的ゲノム遺伝子座に挿入される第1の核酸挿入物、第2の核酸挿入物、又は第1及び第2の核酸挿入物の組み合わせは、例えば、約5kb〜約500kbであってもよい。他の例示的な核酸挿入物及び挿入サイズは、本明細書の別の箇所に開示される。標的ゲノム遺伝子座における欠失は、例えば、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、又は約700kb〜約800kbであってもよい。他の例示的な欠失サイズは、本明細書の別の箇所に開示される。
【0203】
標的化された細胞は、本明細書に提供される細胞型のうちのいずれであってもよく、標的ゲノム遺伝子座は、細胞内の任意のDNAであってもよい。例えば、標的ゲノム遺伝子座は、細胞のゲノム中に存在し得るか、又はそれは、細胞内の染色体外DNA上に存在し得る。
【0204】
II.核酸挿入物及び標的化ベクター
A.核酸挿入物
1つ以上の核酸挿入物は、本明細書に開示される方法で採用され得、それらは、別々の標的化ベクターを介して、又は同じ標的化ベクター上で細胞に導入され得る。核酸挿入物は、ゲノム標的遺伝子座において組み込まれることとなるDNAのセグメントを含む。標的遺伝子座における核酸挿入物の組み込みは、標的遺伝子座への対象となる核酸配列の追加、標的遺伝子座における対象となる核酸配列の欠失、及び/又は標的遺伝子座における対象となる核酸配列の置換をもたらすことができる。
【0205】
本方法は、従来の単一の標的化技術(即ち、単一のLTVEC)を使用して達成され得るサイズよりも大きい核酸挿入物を用いたゲノム遺伝子座の修飾を提供する。そのような方法において、核酸挿入物は、2つ、3つ、又はそれよりも多くのLTVEC上に含まれる。LTVECは、それらが、2つ、3つ、又はそれよりも多くのLTVECからの組み合わせた核酸挿入物を含むDNAの単一の大きいセグメントを形成するために、互いと組み換えることが可能であるように設計される。
【0206】
そのような方法において、核酸挿入物には、5’及び3’ホモロジーアームが隣接している。第1の核酸挿入物に隣接する3’ホモロジーアーム及び第2の核酸挿入物に隣接する5’ホモロジーアームは、同じ隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは次いで、ホモロジーアームの重複フラグメント間の組み換えによって改質される。そのような方法において、2つのLTVEC間の組み換えは、ホモロジーアームの重複配列が第1の核酸挿入物と第2の核酸挿入物との間に位置付けられた、隣接する核酸挿入物をもたらす。三重標的化方法は、第2のLTVECと第3のLTVECとの間の更なる組み換えを伴い、第2の核酸挿入物に隣接する3’ホモロジーアーム及び第3の核酸挿入物に隣接する5’ホモロジーアームは、同じ隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは次いで、ホモロジーアームの重複フラグメント間の組み換えによって改質される。そのような三重標的化方法において、3つのLTVEC間の組み換えは、ホモロジーアームの重複配列が第1、第2、及び第3の核酸挿入物の間に位置付けられた、隣接する核酸挿入物をもたらす。一実施形態において、ホモロジーアームの重複配列は、核酸挿入物の一部分を含む。
【0207】
したがって、これらの方法は、単一の標的化ステップで2つ、3つ、又はそれよりも多くのLTVECからの核酸挿入物を用いたゲノム遺伝子座の修飾を可能にし、したがって、核酸挿入物の全体のサイズを効果的に増大させると同時に、標的化ステップの数を低減する。
【0208】
核酸挿入物又は置換される標的遺伝子座における対応する核酸は、コード領域、イントロン、エクソン、非翻訳領域、調節領域、プロモーター、エンハンサー、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。更に、核酸挿入物(即ち、2つ、3つ、若しくはそれよりも多くのLTVECからの組み合わせた核酸挿入物)又は置き換えられる標的遺伝子座における対応する核酸のサイズは、10〜100ヌクレオチド長、100〜500ヌクレオチド長、500ヌクレオチド〜1kb長、1kb〜1.5kb長、1.5kb〜2kb長、2kb〜2.5kb長、2.5kb〜3kb長、3kb〜5kb長、5kb〜8kb長、8kb〜10kb長、又はそれよりも長い長さを含む、任意の所望の長さであってもよい。他の場合において、長さは、約50kb〜約700kb、約50kb〜約500kb、約50kb〜約300kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、約275kb〜約300kb、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約250kb、約250kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、約450kb〜約500kb、約500kb〜約550kb、約550kb〜約600kb、約600kb〜約650kb、約650kb〜約700kb、約700kb〜約800kb、約800kb〜1Mb、約1Mb〜約1.5Mb、約1.5Mb〜約2Mb、約2Mb〜約2.5Mb、約2.5Mb〜約2.8Mb、又は約2.8Mb〜約3Mbであってもよい。あるいは、2つ、3つ、若しくはそれよりも多くのLTVECからの組み合わせた核酸挿入物又は置き換えられる標的遺伝子座における対応する核酸は、約3Mb〜約4Mb、約4Mb〜約5Mb、約5Mb〜約6Mb、約6Mb〜約7Mb、約7Mb〜約8Mb、約8Mb〜約9Mb、又は約9Mb〜約10Mbであってもよい。更に他の場合には、長さは、少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、若しくは900ヌクレオチド、又は少なくとも1kb、2kb、3kb、4kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、16kb以上であってもよい。例えば、2つ、3つ、若しくはそれよりも多くのLTVECからの組み合わせた核酸挿入物又は置き換えられる標的遺伝子座における対応する核酸は、少なくとも20kb、少なくとも40kb、少なくとも60kb、少なくとも80kb、少なくとも100kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、少なくとも500kb、少なくとも550kb、少なくとも600kb、少なくとも650kb、少なくとも700kb、少なくとも750kb、少なくとも800kb、少なくとも850kb、少なくとも900kb、少なくとも950kb、少なくとも1Mb、少なくとも1.5Mb、少なくとも2Mb、少なくとも2.5Mb、少なくとも3Mb、少なくとも4Mb、少なくとも5Mb、少なくとも6Mb、少なくとも7Mb、少なくとも8Mb、少なくとも9Mb、少なくとも10Mbであってもよい。一実施形態において、核酸挿入物のサイズは、約5kb〜約700kbである。一実施形態において、核酸挿入物のサイズは、約5kb〜約500kbである。別の実施形態において、核酸挿入物のサイズは、約100kb〜約700kbである。別の実施形態において、核酸挿入物のサイズは、約100kb〜約500kbである。具体的な実施形態において、核酸挿入物は、約140kbである。別の具体的な実施形態において、核酸挿入物は、約370kbである。別の具体的な実施形態において、核酸挿入物は、約300kbである。別の具体的な実施形態において、核酸挿入物は、約400kbである。
【0209】
いくつかの個々の標的化ベクターにおいて、(即ち、別の標的化ベクターとの組み換えの前)、核酸挿入物は、10〜100ヌクレオチド長、100〜500ヌクレオチド長、500ヌクレオチド〜1kb長、1kb〜1.5kb長、1.5kb〜2kb長、2kb〜2.5kb長、2.5kb〜3kb長、又は3kb〜5kb長であってもよい。他の場合において、長さは、約5kb〜約200kb、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約30kb、約30kb〜約40kb、約40kb〜約50kb、約60kb〜約70kb、約80kb〜約90kb、約90kb〜約100kb、約100kb〜約110kb、約120kb〜約130kb、約130kb〜約140kb、約140kb〜約150kb、約150kb〜約160kb、約160kb〜約170kb、約170kb〜約180kb、約180kb〜約190kb、又は約190kb〜約200kbであってもよい。あるいは、核酸挿入物は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約250kb、約250kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、又は約350kb〜約400kbであってもよい。あるいは、核酸挿入物は、約400kb〜約450kb、約450kb〜約500kb、約500kb〜約550kb、約550kb〜約600kb、約600kb〜約650kb、約650kb〜約700kb、約700kb〜約750kb、又は約750kb〜約800kbであってもよい。
【0210】
いくつかの場合において、標的遺伝子座における核酸の置き換えは、約1kb〜約200kb、約2kb〜約20kb、又は約0.5kb〜約3Mbに及ぶ核酸配列の欠失をもたらす。いくつかの場合において、欠失の範囲は、5’ホモロジーアームと3’ホモロジーアームとの合計の長さよりも広い。
【0211】
いくつかの場合において、核酸配列の欠失の範囲は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約20kb〜約30kb、約30kb〜約40kb、約40kb〜約50kb、約50kb〜約60kb、約60kb〜約70kb、約70kb〜約80kb、約80kb〜約90kb、約90kb〜約100kb、約100kb〜約110kb、約110kb〜約120kb、約120kb〜約130kb、約130kb〜約140kb、約140kb〜約150kb、約150kb〜約160kb、約160kb〜約170kb、約170kb〜約180kb、約180kb〜約190kb、約190kb〜約200kb、約200kb〜約250kb、約250kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約800kb、約800kb〜1Mb、約1Mb〜約1.5Mb、約1.5Mb〜約2Mb、約2Mb〜約2.5Mb、約2.5Mb〜約2.8Mb、約2.8Mb〜約3Mb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約1Mb、約1Mb〜約1.5Mb、約1.5Mb〜約2Mb、約2Mb〜約2.5Mb、又は約2.5Mb〜約3Mbに及ぶ。あるいは、欠失は、約3Mb〜約4Mb、約4Mb〜約5Mb、約5Mb〜約10Mb、約10Mb〜約20Mb、約20Mb〜約30Mb、約30Mb〜約40Mb、約40Mb〜約50Mb、約50Mb〜約60Mb、約60Mb〜約70Mb、約70Mb〜約80Mb、約80Mb〜約90Mb、又は約90Mb〜約100Mbであってもよい。
【0212】
他の場合において、核酸挿入物又は置き換えられる標的遺伝子における対応する核酸は、少なくとも10kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも120kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、少なくとも500kb、少なくとも550kb、少なくとも600kb、少なくとも650kb、少なくとも700kb、又はそれを超えてもよい。
【0213】
核酸挿入物は、ゲノムDNA又は任意の他の種類のDNAを含んでもよい。例えば、核酸挿入物は、原核生物、真核生物、酵母、鳥類(例えばニワトリ)、非ヒト哺乳動物、げっ歯動物、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えばマーモセット、アカゲザル)、家畜用哺乳動物若しくは農業用哺乳動物、又は他の任意の対象となる生物由来であってもよい。
【0214】
核酸挿入物及び/又は標的遺伝子座における核酸は、調節要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、若しくは転写リプレッサー結合要素)などのコード配列又は非コード配列を含んでもよい。例えば、核酸挿入物は、内因性遺伝子の少なくとも1つのエクソンのノックイン対立遺伝子、又は外因性遺伝子全体のノックイン対立遺伝子(即ち、「遺伝子スワップノックイン」)を含んでもよい。例えば、核酸挿入物は、ゲノム標的遺伝子座における欠失のために標的化される配列に相同であるか、又はオルソロガスであってもよい。相同又はオルソロガス核酸挿入物は、対象となるゲノム遺伝子座における欠失のために標的化される配列を置き換えることができる。これは、核酸挿入物の挿入が、相同又はオルソロガスヒト核酸配列での非ヒト核酸配列の置き換えをもたらす場合、遺伝子座のヒト化をもたらすことができる(即ち、核酸挿入物は、その内因性ゲノム遺伝子座における対応する非ヒトDNA配列の代わりに挿入される)。
【0215】
核酸挿入物はまた、条件付き対立遺伝子を含んでもよい。条件付き対立遺伝子は、参照によりその全体が組み込まれる米国第2011/0104799号に記載されるように、多機能性対立遺伝子であってもよい。例えば、条件付き対立遺伝子は、(a)標的遺伝子の転写に関するセンス配向における作動配列、(b)センス配向又はアンチセンス配向における薬剤選択カセット(DSC)、(c)アンチセンス方向において、対象となるヌクレオチド配列(NSI)、及び(d)反転モジュールによる条件(COIN、エクソン分割イントロン及びジーントラップ様モジュールを利用する)、を含んでもよい。例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国第2011/0104799号を参照されたい。条件付き対立遺伝子は、第1のリコンビナーゼへの暴露時に組み換わり、(i)作動配列及びDSCを欠き、かつ(ii)センス配向においてNSIを含み、アンチセンス配向においてCOINを含む、条件付き対立遺伝子を形成する、組み換え可能単位を更に含んでもよい。米国第2011/0104799号を参照されたい。
【0216】
いくつかの核酸挿入物は、選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含む。選択マーカーは、選択カセット内に含まれてもよい。そのような選択マーカーには、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo
r)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hyg
r)、ピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ(puro
r)、ブラストサイジンSデアミナーゼ(bsr
r)、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、若しくは単純ウイルスチミジンキナーゼ(HSV−k)、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、標的化された細胞中で活性なプロモーターに操作可能に連結されてもよい。プロモーターの例は、本明細書の別の箇所に記載される。
【0217】
いくつかの標的化ベクターでは、核酸挿入物は、レポーター遺伝子を含む。レポーター遺伝子の例は、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、高感度黄色蛍光タンパク質(eYFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(eBFP)、DsRed、ZsGreen、MmGFP、mPlum、tdTomato、mStrawberry、J−Red、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、Cerulean、T−Sapphire、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、及びそれらの組み合わせである。そのようなレポーター遺伝子は、標的化された細胞中で活性なプロモーターに操作可能に連結されてもよい。プロモーターの例は、本明細書の別の箇所に記載される。
【0218】
いくつかの標的化ベクターでは、核酸挿入物は、1つ以上の発現カセット又は欠失カセットを含む。所与の発現カセットは、発現に影響を及ぼす様々な調節成分と共に、対象となるヌクレオチド配列、選択マーカーをコードする核酸配列、及び/又はレポーター遺伝子を含んでもよい。含まれてもよい選択可能なマーカー及びレポーター遺伝子の例は、本明細書の他の箇所で詳細に考察される。
【0219】
いくつかの標的化ベクターにおいて、核酸挿入物は、部位特異的組み換え標的配列が隣接した核酸を含む。核酸挿入物全体に、そのような部位特異的組み換え標的配列が隣接してもよい一方で、核酸挿入物内の任意の領域又は個々の対象となるポリヌクレオチドにもまた、そのような部位が隣接してもよい。核酸挿入物又は核酸挿入物中の任意の対象となるポリヌクレオチドが隣接してもよい部位特異的組み換え標的配列としては、例えば、loxP、lox511、lox2272、lox66、lox71、loxM2、lox5171、FRT、FRT11、FRT71、attp、att、FRT、rox、及びこれらの組み合わせが挙げられ得る。一実施例では、部位特異的組み換え部位は、核酸挿入物内に含まれる選択マーカー及び/又はレポーター遺伝子をコードするポリヌクレオチドに隣接する。標的化された遺伝子座における核酸挿入物の組み込みに続いて、部位特異的組み換え部位間の配列は、除去され得る。
【0220】
B.対象となるポリヌクレオチド
任意の対象となるポリヌクレオチドは、様々な核酸挿入物中に含まれてもよく、それにより標的ゲノム遺伝子座において組み込まれてもよい。本明細書に開示される方法は、少なくとも1、2、3、4、5、6個、又はそれよりも多くの対象となるポリヌクレオチドが標的化されたゲノム遺伝子座に組み込まれることを可能にする。
【0221】
核酸挿入物内の対象となるポリヌクレオチドは、標的ゲノム遺伝子座において組み込まれたとき、1つ以上の遺伝子修飾を細胞に導入することができる。遺伝子修飾は、内因性核酸配列の欠失、及び/又は標的ゲノム遺伝子座への外因性若しくは異種若しくはオルソロガスポリヌクレオチドの付加を含むことができる。一実施形態において、遺伝子修飾は、標的ゲノム遺伝子座における、内因性核酸配列の、対象となる外因性ポリヌクレオチドとの置き換えを含む。したがって、本明細書で提供される方法は、標的ゲノム遺伝子座中のノックアウト、欠失、挿入、置き換え(「ノックイン」)、点突然変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせを含む、遺伝子修飾の発生を可能にする。そのような修飾は、標的ゲノム遺伝子座への第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、又は任意の後続の核酸挿入物の組み込み後に生じてもよい。
【0222】
核酸挿入物内の、かつ/又は標的ゲノム遺伝子座において組み込まれた対象となるポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが導入される細胞を起源とする若しくは細胞に相同な配列を含んでもよいか、対象となるポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが導入される細胞に対して異種であってもよいか、対象となるポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが導入される細胞に対して外因性であってもよいか、対象となるポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが導入される細胞に対してオルソロガスであってもよいか、又は、対象となるポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが導入される細胞と異なる種由来であってもよい。配列に関した「相同な」は、細胞起源の配列を含む。配列に関連した「異種」は、外来種に由来するか、又は同じ種由来である場合、意図的な人間の介入によって組成物及び/又はゲノム遺伝子座内でその天然の形態から実質的に修飾される配列である。配列に関した「外因性の」は、外来種に起源を有する配列を含む。「オルソロガス」は、別の種(即ち種変異体)において既知の参照配列と機能的に同等の、ある種からのポリヌクレオチドを含む。対象となるポリヌクレオチドには、非ヒト、げっ歯動物、ハムスター、マウス、ラット、ヒト、サル、鳥類、農業用哺乳動物、又は非農業用哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない、対象となる任意の生物由来であってもよい。対象となるポリヌクレオチドは、コード領域、非コード領域、制御領域、又はゲノムDNAを更に含むことができる。したがって、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、及び/又は後続の任意の核酸挿入物は、そのような配列を含むことができる。
【0223】
一実施形態において、核酸挿入物内のかつ/又は標的ゲノム遺伝子座において組み込まれた対象となるポリヌクレオチドは、ヒト核酸に相同である。なお更なる実施形態において、標的遺伝子座において組み込まれた対象となるポリヌクレオチドは、ゲノム核酸のフラグメントである。一実施形態において、ゲノム核酸は、マウスゲノム核酸、ヒトゲノム核酸、非ヒト核酸、げっ歯動物核酸、ラット核酸、ハムスター核酸、サル核酸、農業用哺乳動物核酸、若しくは非農業用哺乳動物核酸、又はこれらの組み合わせである。
【0224】
一実施形態において、対象となるポリヌクレオチドは、上記のように、約500ヌクレオチド〜約200kbの範囲に及んでもよい。対象となるポリヌクレオチドは、約500ヌクレオチド〜約5kb、約5kb〜約200kb、約5kb〜約700kb、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約30kb、約30kb〜約40kb、約40kb〜約50kb、約60kb〜約70kb、約80kb〜約90kb、約90kb〜約100kb、約100kb〜約110kb、約120kb〜約130kb、約130kb〜約140kb、約140kb〜約150kb、約150kb〜約160kb、約160kb〜約170kb、約170kb〜約180kb、約180kb〜約190kb、約190kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、又は約600kb〜約700kbであってもよい。
【0225】
核酸挿入物内の、かつ/又は標的ゲノム遺伝子座において挿入された対象となるポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードすることができ、miRNAをコードすることができ、長い非コードRNAをコードすることができるか、又は対象となるポリヌクレオチドは、例えば、調節配列、プロモーター配列、エンハンサー配列、転写リプレッサー結合配列を含む、対象となる任意の調節領域若しくは非コード領域、又は非タンパク質コード配列の欠失を含むことができるが、タンパク質コード配列の欠失を含まない。加えて、核酸挿入物内の、かつ/又は標的ゲノム遺伝子座において挿入された対象となるポリヌクレオチドは、神経系、骨格系、消化器系、循環系、筋系、呼吸器系、心臓血管系、リンパ系、内分泌系、泌尿器系、生殖器系、又はこれらの組み合わせにおいて発現するタンパク質をコードすることができる。
【0226】
核酸挿入物内の、かつ/又は標的ゲノム遺伝子座において組み込まれた対象となるポリヌクレオチドは、コード配列中の遺伝子修飾を含むことができる。そのような遺伝子修飾には、コード配列の欠失突然変異又は2つのコード配列の融合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0227】
核酸挿入物内の、かつ/又は標的ゲノム遺伝子座において組み込まれた対象となるポリヌクレオチドは、突然変異タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。一実施形態において、突然変異タンパク質は、変異した結合特徴、変異した局所化、変異した発現、及び/又は変異した発現パターンを特徴とする。一実施形態において、核酸挿入物内の、かつ/又は標的ゲノム遺伝子座において組み込まれた対象となるポリヌクレオチドは、少なくとも1つの疾病対立遺伝子を含む。そのような場合、疾病対立遺伝子は、優性対立遺伝子であってもよく、又は疾病対立遺伝子は、劣性対立遺伝子である。更に、疾病対立遺伝子は、一塩基多型(SNP)対立遺伝子を含んでもよい。突然変異タンパク質をコードする対象となるポリヌクレオチドには、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、げっ歯動物、マウス、ラット、ヒト、サル、農業用哺乳動物、又は家畜哺乳動物の突然変異タンパク質をコードするポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない、任意の生物由来であってもよい。
【0228】
核酸挿入物内の、かつ/又標的ゲノム遺伝子座において組み込まれた対象となるポリヌクレオチドはまた、例えば、プロモーター配列、エンハンサー配列、転写リプレッサー結合配列、又は転写ターミネーター配列を含む、調節配列を含むことができる。具体的な実施形態において、核酸挿入物内の、かつ/又は標的ゲノム遺伝子座において組み込まれた対象となるポリヌクレオチドは、非タンパク質コード配列の欠失を有するポリヌクレオチドを含むが、タンパク質コード配列の欠失は含まない。一実施形態において、非タンパク質コード配列の欠失は、調節配列の欠失を含む。別の実施形態において、調節要素の欠失は、プロモーター配列の欠失を含む。一実施形態において、調節要素の欠失は、エンハンサー配列の欠失を含む。そのような対象となるポリヌクレオチドには、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、げっ歯動物、マウス、ラット、ヒト、サル、農業用哺乳動物、又は家畜哺乳動物の突然変異タンパク質をコードするポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない、任意の生物由来であってもよい。
【0229】
標的化された遺伝子修飾は、対象となるポリヌクレオチドに対する標的化された変異を含んでもよい。そのような標的化された修飾には、1つ以上のヌクレオチドの付加、1つ以上のヌクレオチドの欠失、1つ以上のヌクレオチドの置換、対象となるポリヌクレオチド若しくはその一部分のノックアウト、対象となるポリヌクレオチド若しくはその一部分のノックイン、異種核酸配列による内因性核酸配列の置換、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施形態において、少なくとも1、2、3、4、5、7、8、9、10、100、500個、若しくはそれよりも多くのヌクレオチド、又は少なくとも10kb〜500kb若しくはそれよりも多くが、標的化されたゲノム修飾を形成するように変化されている。
【0230】
C.標的化ベクター
標的化ベクターは、標的ゲノム遺伝子座に核酸挿入物を導入するために採用され得、核酸挿入物及び核酸挿入物に隣接するホモロジーアームを含む。標的化ベクターは、直線形状又は円形形状であってもよく、かつそれらは、一本鎖又は二本鎖であってもよい。標的化ベクターは、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)であってもよい。参照を容易にするために、ホモロジーアームは、本明細書において5’及び3’(即ち、上流及び下流)ホモロジーアームと称される。この用語は、標的化ベクター内の核酸挿入物に対するホモロジーアームの相対位置に関する。5’及び3’ホモロジーアームは、本明細書においてそれぞれ「5’標的配列」及び「3’標的配列」と称される、標的化された遺伝子座内の領域又は別の標的化ベクター内の領域に対応する。いくつかの場合において、ホモロジーアームはまた、5’又は3’標的配列として機能することができる。
【0231】
本方法は、互いと組み換えることが可能である2つ、3つ、又はそれよりも多くの標的化ベクターを採用する。様々な実施形態において、標的化ベクターは、本明細書で別の箇所に記載される大型標的化ベクター(LTVEC)である。そのような方法において、第1、第2、及び第3の標的化ベクターはそれぞれ、5’及び3’ホモロジーアームを含む。第1の標的化ベクターの3’ホモロジーアームは、第2の標的化ベクターの5’ホモロジーアームと重複する配列(即ち、重複配列)を含み、それは、第1のLTVECと第2のLTVECとの間の相同組み換えを可能にする。
【0232】
二重標的化方法の場合、第1の標的化ベクターの5’ホモロジーアーム及び第2の標的化ベクターの3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するセグメント(即ち、標的配列)に相同であり、それは、対応するゲノムセグメントとの第1及び第2の標的化ベクターの相同組み換えを促進し、標的ゲノム遺伝子座を修飾する。
【0233】
三重標的化方法の場合、第2の標的化ベクターの3’ホモロジーアームは、第3の標的化ベクターの5’ホモロジーアームと重複する配列(即ち、重複配列)を含み、それは、第2のLTVECと第3のLTVECとの間の相同組み換えを可能にする。第1の標的化ベクターの5’ホモロジーアーム及び第3の標的化ベクターの3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の対応するセグメント(即ち、標的配列)に相同であり、それは、対応するゲノムセグメントとの第1及び第3の標的化ベクターの相同組み換えを促進し、標的ゲノム遺伝子座を修飾する。
【0234】
ホモロジーアーム及び標的配列又は2つのホモロジーアームは、2つの領域が相同組み換え反応の基質として機能するために、相互に対して十分なレベルの配列同一性を共有するとき、相互に「対応する」又は「対応している」。用語「相同性」は、対応する配列に対して同一であるか、又は配列同一性を共有するかのいずれかであるDNA配列を含む。所与の標的配列と標的化ベクター上で見られる対応するホモロジーアームとの間(即ち、重複配列)、又は2つのホモロジーアーム間の配列同一性は、相同組み換えが生じることを可能にする任意の程度の配列同一性であってもよい。例えば、標的化ベクターのホモロジーアーム(若しくはそのフラグメント)、及び別の標的化ベクターの標的配列、又は標的ゲノム遺伝子座の標的配列(若しくはそのフラグメント)によって共有される配列同一性の量は、配列が相同組み換えを受けるように、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性であってもよい。
【0235】
更に、ホモロジーアームと対応する標的配列との間の相同性の対応領域は、開裂された標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを促進するために十分である任意の長さであってもよい。例えば、所与のホモロジーアーム及び/又は対応する標的配列は、ホモロジーアームが、細胞の標的ゲノム遺伝子座内又は別の標的化ベクター内の対応する標的配列との相同組み換えを受けるために十分な相同性を有するように、(例えば、本明細書の別の箇所に記載のLTVECベクターにおいて記載される)少なくとも約5〜10kb、5〜15kb、5〜20kb、5〜25kb、5〜30kb、5〜35kb、5〜40kb、5〜45kb、5〜50kb、5〜55kb、5〜60kb、5〜65kb、5〜70kb、5〜75kb、5〜80kb、5〜85kb、5〜90kb、5〜95kb、5〜100kb、100〜200kb、若しくは200〜300kb長、又はそれよりも長い、相同性の対応する領域を含むことができる。
【0236】
第1の標的化ベクターの3’ホモロジーアーム及び第2の標的化ベクターの5’ホモロジーアーム、又は第2の標的化ベクターの3’ホモロジーアーム及び第3の標的化ベクターの5’ホモロジーアームの重複配列は、標的化ベクター間の相同組み換えを促進するのに十分である任意の長さであってもよい。例えば、ホモロジーアームの所与の重複配列は、ホモロジーアームの重複配列が、別の標的化ベクター内の対応する標的配列との相同組み換えを受けるために十分な相同性を有するように、少なくとも約1〜5kb、5〜10kb、5〜15kb、5〜20kb、5〜25kb、5〜30kb、5〜35kb、5〜40kb、5〜45kb、5〜50kb、5〜55kb、5〜60kb、5〜65kb、5〜70kb、5〜75kb、5〜80kb、5〜85kb、5〜90kb、5〜95kb、5〜100kb、100〜200kb、若しくは200〜300kb長、又はそれよりも長い、対応する重複領域を含むことができる。一実施形態において、重複配列は、1〜5kbである。一実施形態において、重複配列は、約1kb〜約70kbである。一実施形態において、重複配列は、約10kb〜約70kbである。別の実施形態において、重複配列は、約10kb〜約50kbである。一実施形態において、重複配列は、少なくとも10kbである。別の実施形態において、重複配列は、少なくとも20kbである。例えば、重複配列は、約1kb〜約5kb、約5kb〜約10kb、約10kb〜約15kb、約15kb〜約20kb、約20kb〜約25kb、約25kb〜約30kb、約30kb〜約35kb、約35kb〜約40kb、約40kb〜約45kb、約45kb〜約50kb、約50kb〜約60kb、約60kb〜約70kb、約70kb〜約80kb、約80kb〜約90kb、約90kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、約120kb〜約140kb、約140kb〜約160kb、約160kb〜約180kb、約180kb〜約200kb、約200kb〜約220kb、約220kb〜約240kb、約240kb〜約260kb、約260kb〜約280kb、又は約280kb〜約300kbであってもよい。一例として、重複配列は、約20kb〜約60kbであってもよい。あるいは、重複配列は、少なくとも1kb、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも25kb、少なくとも30kb、少なくとも35kb、少なくとも40kb、少なくとも45kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも120kb、少なくとも140kb、少なくとも160kb、少なくとも180kb、少なくとも200kb、少なくとも220kb、少なくとも240kb、少なくとも260kb、少なくとも280kb、又は少なくとも300kbであってもよい。
【0237】
ホモロジーアームは、細胞起源の遺伝子座(例えば、標的化された遺伝子座)に対応してもよいか、又は、ホモロジーアームは、例えば、導入遺伝子、発現カセット、又はDNAの異種若しくは外因性の領域を含む、細胞のゲノムに組み込まれるDNAの異種若しくは外因性のセグメントの領域に対応してもよい。あるいは、ホモロジーアームは、細胞中の標的化ベクター上の領域に対応することができる。標的化ベクターのホモロジーアームは、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、ヒト人工染色体の領域、又は適切な宿主細胞中に含まれる任意の他の操作された領域に対応することができる。なお更に、標的化ベクターのホモロジーアームは、BACライブラリー、コスミドライブラリー、又はP1ファージライブラリーの領域に対応してもよいか、又はそれに由来してもよい。ある特定の場合、標的化ベクターのホモロジーアームは、原核生物、酵母、鳥類(例えばニワトリ)、非ヒト哺乳動物、げっ歯類、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)、家畜用哺乳動物、農業用哺乳動物、又は他の対象となる生物にとって天然、異種、又は外来性である遺伝子座に対応する。いくつかの場合において、ホモロジーアームは、ヌクレアーゼ剤によって誘発される切れ目若しくは二本鎖切断が存在しなければ、従来法を用いて標的化できないか、又は、誤って若しくは顕著に低い効率でのみ標的化される恐れがある、細胞内の遺伝子座に対応する。いくつかの場合において、ホモロジーアームは、合成DNAに由来する。
【0238】
いくつかの標的化ベクターにおいて、5’又は3’ホモロジーアームのうちの一方が標的化されたゲノム遺伝子座に対応する一方で、5’又は3’ホモロジーアームのうちのもう一方は、別の標的化ベクター上の領域に対応する。
【0239】
いくつかの標的化ベクターにおいて、5’及び3’ホモロジーアームは、標的化されたゲノムに対応する。あるいは、ホモロジーアームは、関連したゲノム由来であってもよい。例えば、標的化されたゲノムは、第1の系統のマウスゲノムであり、標的化アームは、第2の系統のマウスゲノム由来であり、第1の系統及び第2の系統は異なる。ある特定の場合、ホモロジーアームは、同じ動物のゲノム由来であるか、又は同じ系統のゲノム由来であり、例えば、標的化されたゲノムは、第1の系統のマウスゲノムであり、標的化アームは、同じマウスから、又は同じ系統からのマウスゲノム由来である。
【0240】
標的化ベクターのホモロジーアームは、対応する標的配列との相同組み換え事象を促進するために十分な任意の長さであってもよく、例えば、少なくとも1〜5kb、5〜10kb、5〜15kb、5〜20kb、5〜25kb、5〜30kb、5〜35kb、5〜40kb、5〜45kb、5〜50kb、5〜55kb、5〜60kb、5〜65kb、5〜70kb、5〜75kb、5〜80kb、5〜85kb、5〜90kb、5〜95kb、5〜100kb、100〜200kb、若しくは200〜300kb長、又はそれを超える長さを含む。以下で更に詳細に説明されるように、大型標的化ベクターは、より長い長さの標的化アームを採用してもよい。
【0241】
ヌクレアーゼ剤(例えば、CRISPR/Cas系)は、標的遺伝子座の修飾を補助するために標的化ベクターと組み合わせて採用されてもよい。そのようなヌクレアーゼ剤は、標的化ベクターと標的遺伝子座との間の相同組み換えを促進してもよい。ヌクレアーゼ剤が標的化ベクターと組み合わせて採用されるとき、標的化ベクターは、ヌクレアーゼ開裂部位における切れ目又は二本鎖切断の際に標的配列とホモロジーアームとの間の相同組み換えイベントの発生を促進するように、ヌクレアーゼ開裂部位に十分に近接して位置する5’及び3’標的部位に対応する5’及び3’ホモロジーアームを含んでもよい。用語「ヌクレアーゼ開裂部位」は、切れ目又は二本鎖切断がヌクレアーゼ剤によって生じるDNA配列を含む(例えば、Cas9開裂部位)。標的化ベクターの5’及び3’ホモロジーアームに対応する標的化された遺伝子座内の標的配列は、距離が認識部位における切れ目又は二本鎖切断の際に5’及び3’標的配列とホモロジーアームとの間の相同組み換えイベントの発生を促進するようなものであるとき、ヌクレアーゼ開裂部位に「十分に近接して位置」する。したがって、具体的な場合には、標的化ベクターの5’及び/又は3’ホモロジーアームに対応する標的配列は、所与の認識部位の少なくとも1ヌクレオチド以内であるか、又は所与の認識部位の少なくとも10ヌクレオチド〜約14kbの範囲内である。いくつかの場合において、ヌクレアーゼ開裂部位は、標的配列のうち少なくとも片側又は両側に直接隣接する。
【0242】
標的化ベクターのホモロジーアームに対応する標的配列とヌクレアーゼ開裂部位との位置関係は、変動してもよい。例えば、標的配列は、ヌクレアーゼ開裂部位に対して5’に位置してもよいか、標的配列は、認識部位に対して3’に位置してもよいか、又は、標的配列は、ヌクレアーゼ開裂部位に隣接してもよい。
【0243】
(例えば、大型標的化ベクターを含む)標的化ベクターとヌクレアーゼ剤との併用は、標的化ベクター単独での使用と比較して、標的化効率の向上をもたらす場合がある。例えば、標的化ベクターがヌクレアーゼ剤と併用されるとき、標的化ベクターの標的化効率性は、標的化ベクター単独での使用と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、若しくは少なくとも10倍増大され得るか、又は2〜10倍などのこれらの整数から形成される範囲内で増大され得る。
【0244】
D.大型標的化ベクター
いくつかの標的化ベクターは、「大型標的化ベクター」又は「LTVEC」であり、細胞内で相同組み換えを実施することを意図した他の手法により通常使用される核酸配列よりも大きな核酸配列に相当し、かつ核酸配列に由来するホモロジーアームを含む標的化ベクターを含む。LTVECは、例えば、長さが少なくとも10kbであってもよく、又は5’ホモロジーアーム及び3’ホモロジーアームの合計は、例えば、少なくとも10kbであってもよい。LTVECはまた、細胞内で相同組み換えを実施することを意図した他の手法により通常使用される核酸配列よりも大きな核酸配列を有する核酸挿入物を含む標的化ベクターも含む。例えば、LTVECは、それらのサイズ制限のため、従来のプラスミド系標的化ベクターが対応することができない大型遺伝子座の修飾を可能にする。例えば、標的化された遺伝子座は、ヌクレアーゼ剤(例えば、Casタンパク質)によって引き起こされる切れ目若しくは二本鎖切断が存在しなければ、従来法を用いて標的化できないか、又は誤って若しくは顕著に低い効率性でのみ標的化される可能性がある、細胞の遺伝子座であってもよい(即ち、5’及び3’ホモロジーアームは、細胞の遺伝子座に対応してもよい)。
【0245】
本明細書に提供される方法は、本明細書の別の箇所に記載される三元又は四元の組み換え事象で、互いと、かつ標的ゲノム遺伝子座と組み換えることが可能である、2つ又は3つのLTVECを採用する。これらの方法は、単一のLTVECを使用して達成され得ない大型遺伝子座の修飾を可能にする。
【0246】
LTVECの例には、細菌人工染色体(BAC)、ヒト人工染色体、又は酵母人工染色体(YAC)に由来するベクターが挙げられるが、これらに限定されない。LTVEC及びそれらを作製するための方法の例は、例えば、米国特許第6,586,251号、米国特許第6,596,541号、米国特許第7,105,348号、及び国際公開第WO 2002/036789(PCT/US01/45375)号に記載され、それらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。LTVECは、直線形状又は円形形状であってもよい。
【0247】
LTVECは、例えば、約20kb〜約300kb、約20kb〜約50kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、又は約275kb〜約300kbを含む、任意の長さであってもよい。あるいは、LTVECは、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、又は少なくとも500kb以上であってもよい。LTVECのサイズは、従来のアッセイ、例えばサザンブロッティング及びロングレンジ(例えば、1kb〜5kb)PCR)による標的化イベントのスクリーニングを可能とするにはあまりに大きい恐れがある。
【0248】
いくつかの場合において、LTVECは、約5kb〜約200kb、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約30kb、約30kb〜約40kb、約40kb〜約50kb、約60kb〜約70kb、約80kb〜約90kb、約90kb〜約100kb、約100kb〜約110kb、約120kb〜約130kb、約130kb〜約140kb、約140〜約150kb、約150kb〜約160kb、約160kb〜約170kb、約170kb〜約180kb、約180kb〜約190kb、又は約190kb〜約200kbに及ぶ核酸挿入物を含む。他の場合、核酸挿入物は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約250kb、約250kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、又は約350kb〜約400kbに及ぶことができる。いくつかの場合において、LTVECは、約400kb〜約450kb、約450kb〜約500kb、約500kb〜約550kb、約550kb〜約600kb、約600kb〜約650kb、約650kb〜約700kb、約700kb〜約750kb、又は約750kb〜約800kbに及ぶ核酸挿入物を含む。
【0249】
いくつかのLTVECSにおいて、5’ホモロジーアーム及び3’ホモロジーアームの合計は、少なくとも10kbである。いくつかのLTVECSにおいて、5’ホモロジーアームは約1kb〜約100kbに及ぶ、かつ/又は3’ホモロジーアームは約1kb〜約100kbに及ぶ。5’及び3’ホモロジーアームの合計は、例えば、約1kb〜約5kb、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約30kb、約30kb〜約40kb、約40kb〜約50kb、約50kb〜約60kb、約60kb〜約70kb、約70kb〜約80kb、約80kb〜約90kb、約90kb〜約100kb、約100kb〜約110kb、約110kb〜約120kb、約120kb〜約130kb、約130kb〜約140kb、約140kb〜約150kb、約150kb〜約160kb、約160kb〜約170kb、約170kb〜約180kb、約180kb〜約190kb、又は約190kb〜約200kbであってもよい。あるいは、各ホモロジーアームは、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも110kb、少なくとも120kb、少なくとも130kb、少なくとも140kb、少なくとも150kb、少なくとも160kb、少なくとも170kb、少なくとも180kb、少なくとも190kb、又は少なくとも200kbであってもよい。同様に、5’及び3’ホモロジーアームの合計は、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも110kb、少なくとも120kb、少なくとも130kb、少なくとも140kb、少なくとも150kb、少なくとも160kb、少なくとも170kb、少なくとも180kb、少なくとも190kb、又は少なくとも200kbであってもよい。
【0250】
いくつかの場合において、LTVEC及び核酸挿入物は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、又は約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、約700kb〜約800kb、約500kb〜約1Mb、約1Mb〜約1.5Mb、約1.5Mb〜約2Mb、約2Mb〜約2.5Mb、又は約2.5Mb〜約3Mbの標的遺伝子座における内因性配列の欠失を可能にするように設計される。あるいは、欠失は、約3Mb〜約4Mb、約4Mb〜約5Mb、約5Mb〜約10Mb、約10Mb〜約20Mb、約20Mb〜約30Mb、約30Mb〜約40Mb、約40Mb〜約50Mb、約50Mb〜約60Mb、約60Mb〜約70Mb、約70Mb〜約80Mb、約80Mb〜約90Mb、又は約90Mb〜約100Mbであってもよい。あるいは、欠失は、少なくとも10kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、又は少なくとも500kb以上であってもよい。
【0251】
他の場合には、LTVEC及び核酸挿入物は、約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約250kb、約250kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、又は約350kb〜約400kbに及ぶ外因性核酸配列の標的遺伝子座内への挿入を可能にするように設計されている。あるいは、挿入は、約400kb〜約450kb、約450kb〜約500kb、約500kb〜約550kb、約550kb〜約600kb、約600kb〜約650kb、約650kb〜約700kb、約700kb〜約750kb、又は約750kb〜約800kbであってもよい。あるいは、挿入は、少なくとも10kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、又は少なくとも500kb以上であってもよい。
【0252】
更に他の場合には、核酸挿入物及び/又は欠失される内因性遺伝子座の領域は、少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、若しくは900ヌクレオチド、又は少なくとも1kb、2kb、3kb、4kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、16kb以上である。
【0253】
E.ゲノム及び標的ゲノム遺伝子座
本明細書に開示される方法によって修飾されたゲノム又はゲノム標的遺伝子座は、細胞内のDNAの任意のセグメント又は領域を含むことができる。ゲノム又はゲノム標的遺伝子座は、細胞にとって天然であってもよく、細胞のゲノムに組み込まれたDNAの異種若しくは外来性セグメントであってもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。DNAのそのような異種又は外因性セグメントは、導入遺伝子、発現カセット、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド、又はゲノムDNAの異種若しくは外因性領域を含むことができる。
【0254】
ゲノム又はゲノム標的遺伝子座はまた、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、ヒト人工染色体、又は適切な宿主細胞中に含まれる任意の他の操作された領域など、細胞内の染色体外DNAを含むことができる。
【0255】
III.ヌクレアーゼ剤
本明細書に提供される標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法及び組成物は、所望の認識部位への切れ目又は二本鎖切断を誘発するヌクレアーゼ剤を採用することができる。
【0256】
用語「ヌクレアーゼ剤の認識部位」は、切れ目又は二本鎖切断がヌクレアーゼ剤によって誘発されるDNA配列を含む。ヌクレアーゼ剤の認識部位は、細胞に対して内因性(若しくは天然)であってもよく、又は認識部位は、細胞に対して外因性であってもよい。具体的な実施形態において、認識部位は、細胞に対して外因性であり、それにより、細胞のゲノム中で自然発生的ではない。なお更なる実施形態において、認識部位は、細胞に対して、かつ標的遺伝子座に位置付けられることが望まれる対象となるポリヌクレオチドに対して外因性である。更なる実施形態において、外因性又は内因性認識部位は、宿主細胞のゲノム中で一度のみ存在する。具体的な実施形態において、ゲノム内で一度のみ生じる内因性又は天然部位が特定される。次いで、そのような部位は、内因性認識部位において切れ目又は二本鎖切断を生じさせるヌクレアーゼ剤を設計するために使用されてもよい。
【0257】
認識部位の長さは変動してもよく、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)対については約30〜36bp(即ち、各ZFNに対して約15〜18bp)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)については約36bp、又はCRISPR/Cas9ガイドRNAについては約20bpである認識部位を含む。
【0258】
所望の認識部位への切れ目又は二本鎖切断を誘発する任意のヌクレアーゼ剤が、本明細書に開示される方法及び組成物で使用されてもよい。自然発生的な若しくは生来のヌクレアーゼ剤は、ヌクレアーゼ剤が目的の認識部位でニック又は二本鎖切断を誘発する限り、使用できる。あるいは、修飾又は操作されたヌクレアーゼ剤が採用され得る。「操作されたヌクレアーゼ剤」は、所望の認識部位での切れ目又は二本鎖切断を特異的に認識及び誘発するようにその天然の形態から操作される(修飾される、又はそれに由来する)ヌクレアーゼを含む。したがって、操作されたヌクレアーゼ剤は、天然の自然発生的なヌクレアーゼ剤由来であってもよく、又はそれは、人工的に作り出されるか、若しくは合成されてもよい。ヌクレアーゼ剤の修飾は、タンパク質開裂剤中の1つのアミノ酸、又は核酸開裂剤中の1つのヌクレオチドほどわずかであってもよい。いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、認識部位での切れ目又は二本鎖切断を誘発し、この認識部位は、天然(操作されていない又は修飾されていない)ヌクレアーゼ剤によって認識されたであろう配列ではなかった。認識部位又は他のDNAで切れ目又は二本鎖切断を生じさせることは、本明細書において、認識部位又は他のDNAを「切断する」又は「開裂する」と称されてもよい。
【0259】
例示的な認識部位の活性変異体及びフラグメントもまた提供される。そのような活性変異体は、所与の認識部位に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれを超える配列同一性を含むことができ、活性変異体は、生物活性を保持し、したがって、配列特異的様式でヌクレアーゼ剤によって認識かつ開裂されることが可能である。ヌクレアーゼ剤による認識部位の二本鎖切断を測定するためのアッセイは、当該技術分野において既知である(例えば、TAQMAN(登録商標)qPCRアッセイ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるFrendewey D.et al.,Methods in Enzymology,2010,476:295〜307)。
【0260】
ヌクレアーゼ剤の認識部位は、標的遺伝子座の中又は近くのいかなる場所に位置付けられてもよい。認識部位は、遺伝子のコード領域内、又は遺伝子の発現に影響を及ぼす調節領域内に位置してもよい。ヌクレアーゼ剤の認識部位は、イントロン、エクソン、プロモーター、エンハンサー、調節領域、又は任意の非タンパク質コード領域の中に位置してもよい。具体的な実施形態において、認識部位は、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド内に位置付けられる。そのような位置は、選択マーカーのコード領域内、又は選択マーカーの発現に影響を及ぼす調節領域内に位置してもよい。したがって、ヌクレアーゼ剤の認識部位は、選択マーカー、プロモーター、エンハンサー、調節領域、又は選択マーカーをコードするポリヌクレオチドの任意の非タンパク質コード領域のイントロン内に位置してもよい。具体的な実施形態において、認識部位における切れ目又は二本鎖切断は、選択マーカーの活性を妨害する。機能的な選択マーカーの存在又は非存在についてアッセイするための方法は、既知である。
【0261】
一実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。TALエフェクターヌクレアーゼは、原核又は真核生物のゲノム中の特定の標的配列において二本鎖切断を行うために使用され得る、配列特異的ヌクレアーゼの種類である。TALエフェクターヌクレアーゼは、天然の、若しくは操作された転写活性化因子様(TAL)エフェクター、又はその機能部を、例えば、FokIなどのエンドヌクレアーゼの触媒ドメインと融合させることによって作り出される。独特のモジュラーTALエフェクターDNA結合ドメインは、潜在的に任意の所与のDNA認識特異性を有するタンパク質の設計を可能にする。したがって、TALエフェクターヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、特異的なDNA標的部位を認識するように操作することができ、したがって、所望の標的配列において二本鎖切断を行うために使用することができる。国際公開第WO 2010/079430号、Morbitzer et al.(2010)PNAS 10.1073/pnas.1013133107、Scholze & Boch(2010)Virulence 1:428〜432、Christian et al.Genetics(2010)186:757〜761、Li et al.(2010)Nuc.Acids Res.(2010)doi:10.1093/nar/gkq704、及びMiller et al.(2011)Nature Biotechnology 29:143〜148を参照されたく、それらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0262】
好適なTALヌクレアーゼの例、及び好適なTALヌクレアーゼを調製するための方法は、例えば、米国第2011/0239315 A1号、米国第2011/0269234 A1号、米国第2011/0145940 A1号、米国第2003/0232410 A1号、米国第2005/0208489 A1号、米国第2005/0026157 A1号、米国第2005/0064474 A1号、米国第2006/0188987 A1号、及び米国第2006/0063231 A1号に開示される(それぞれが参照により本明細書に組み込まれる)。様々な実施形態において、例えば、対象となる遺伝子座又は対象となるゲノム遺伝子座において、標的核酸配列中、又はその近くで切断するTALエフェクターヌクレアーゼが操作され、標的核酸配列は、標的化ベクターによって修飾される配列にあるか、又はその近くにある。本明細書に提供される様々な方法及び組成物と共に使用するのに好適なTALヌクレアーゼには、本明細書に記載されるような標的化ベクターによって修飾される標的核酸配列において、又はその近くで結合するように特異的に設計されるTALヌクレアーゼが含まれる。
【0263】
一実施形態において、TALENの各単量体は、2つの高度可変残基を介して単一の塩基対を認識する33〜35個のTAL反復を含む。一実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、独立ヌクレアーゼに操作可能に連結されたTAL反復ベースのDNA結合ドメインを含む、キメラタンパク質である。一実施形態において、独立ヌクレアーゼは、FokIエンドヌクレアーゼである。一実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、第1のTAL反復ベースのDNA結合ドメインと、第2のTAL反復ベースのDNA結合ドメインとを含み、第1及び第2のTAL反復ベースのDNA結合ドメインのそれぞれは、FokIヌクレアーゼに作動可能に連結され、第1及び第2のTAL反復ベースのDNA結合ドメインは、異なる長さ(12〜20bp)のスペーサー配列によって隔てられた標的DNA配列の各鎖において2つの隣接標的DNA配列を認識し、FokIヌクレアーゼサブユニットは、標的配列において二本鎖切断を行う活性ヌクレアーゼを作り出すように二量体化する。
【0264】
本明細書に開示される様々な方法及び組成物で採用されるヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を更に含むことができる。一実施形態において、ZFNの各モノマーは、3つ以上のジンクフィンガーに基づくDNA結合ドメインを含み、各ジンクフィンガーに基づくDNA結合ドメインは3bpのサブサイトに結合する。他の実施形態において、ZFNは、独立ヌクレアーゼに操作可能に連結されたジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを含む、キメラタンパク質である。一実施形態において、独立エンドヌクレアーゼは、FokIエンドヌクレアーゼである。一実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、第1のZFNと第2のZFNとを含み、第1のZFNと第2のZFNの各々は、FokIヌクレアーゼサブユニットに作動可能に連結し、第1及び第2のZFNは、約5〜7bpのスペーサーで分離された標的DNA配列の各鎖中の2つの連続する標的DNA配列を認識し、FokIヌクレアーゼサブユニットは二量体化し、二本鎖切断をする活性ヌクレアーゼ剤を形成する。例えば、米国第20060246567号、米国第20080182332号、米国第20020081614号、米国第20030021776、国際公開第WO/2002/057308A2号、米国第20130123484号、米国第20100291048号、国際公開第WO/2011/017293A2号、及びGaj et al.(2013)Trends in Biotechnology,31(7):397〜405を参照されたく、それらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0265】
更に別の実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、メガヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づく4つのファミリーに分類されており、このファミリーは、LAGLIDADG、GIY−YIG、H−N−H、及びHis−Cysボックスファミリーである。これらのモチーフは、金属イオンの配位及びホスホジエステル結合の加水分解に関与する。メガヌクレアーゼは、それらの長い認識部位、及びそれらのDNA基質におけるいくつかの配列多型性に対する耐性が注目すべき点である。メガヌクレアーゼのドメイン、構造、及び機能は、既知であり、例えば、Guhan and Muniyappa(2003)Crit Rev Biochem Mol Biol 38:199〜248、Lucas et al.,(2001)Nucleic Acids Res 29:960〜9、Jurica and Stoddard,(1999)Cell Mol Life Sci 55:1304〜26、Stoddard,(2006)Q Rev Biophys 38:49〜95、及びMoure et al.,(2002)Nat Struct Biol 9:764を参照されたい。いくつかの実施例では、自然発生的変異体、及び/又は操作された誘導体メガヌクレアーゼが使用される。動態、補因子相互作用、発現、最適条件、及び/又は部位特異性の認識を修飾するための方法、並びに活性度をスクリーニングするための方法は、既知であり、例えば、Epinat et al.,(2003)Nucleic Acids Res 31:2952〜62、Chevalier et al.,(2002)Mol Cell 10:895〜905、Gimble et al.,(2003)Mol Biol 334:993〜1008、Seligman et al.,(2002)Nucleic Acids Res 30:3870〜9、Sussman et al.,(2004)J Mol Biol 342:31〜41、Rosen et al.,(2006)Nucleic Acids Res 34:4791〜800、Chames et al.,(2005)Nucleic Acids Res 33:e178、Smith et al.,(2006)Nucleic Acids Res 34:e149、Gruen et al.,(2002)Nucleic Acids Res 30:e29、Chen and Zhao,(2005)Nucleic Acids Res 33:e154、国際公開第WO2005105989号、同第WO2003078619号、同第WO2006097854号、同第WO2006097853号、同第WO2006097784号、及び同第WO2004031346号を参照されたい。
【0266】
本明細書で使用してもよい任意のメガヌクレアーゼには、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、PI−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NcIIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp6803I、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、I−UarAP、I−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliI、PI−TliII、又はこれらの任意の活性変異体若しくはフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0267】
一実施形態において、メガヌクレアーゼは、12〜40塩基対の二本鎖DNA配列を認識する。一実施形態において、メガヌクレアーゼは、ゲノム中の1つの完全にマッチした標的配列を認識する。一実施形態において、メガヌクレアーゼは、ホーミングヌクレアーゼである。一実施形態において、ホーミングヌクレアーゼは、LAGLIDADGファミリーのホーミングヌクレアーゼである。一実施形態において、LAGLIDADGファミリーのホーミングヌクレアーゼは、I−SceI、I−CreI、及びI−Dmolから選択される。
【0268】
ヌクレアーゼ剤は、I型、II型、III型、及びIV型エンドヌクレアーゼを含む、制限エンドヌクレアーゼを更に含んでもよい。I型及びIII型制限エンドヌクレアーゼは、特異的認識部位を認識するが、通常は、ヌクレアーゼ結合部位からの可変位置において開裂し、それは、開裂部位(認識部位)から数百塩基対離れていてもよい。II型系において、制限活性は、任意のメチラーゼ活性とは無関係であり、開裂は、通常は、結合部位内、又はその近くの特定の部位において生じる。ほとんどのII型酵素が回文配列を切断するが、IIa型酵素は、非回文認識部位を認識し、かつ認識部位の外側で開裂し、IIb型酵素は、認識部位の外側の両方の部位で2回配列を切断し、IIs型酵素は、非対称認識部位を認識し、片側で、かつ認識部位から約1〜20ヌクレオチドの定められた距離において開裂する。IV型制限酵素は、メチル化DNAを標的化する。制限酵素は、例えば、REBASEデータベース(rebase.neb.comのウェブページ、Roberts et al.,(2003)Nucleic Acids Res 31:418〜20)、Roberts et al.,(2003)Nucleic Acids Res 31:1805〜12、及びBelfort et al.,(2002)in Mobile DNA II,pp.761〜783,Eds.Craigie et al.,(ASM Press,Washington,DC)に更に記載され、分類されている。
【0269】
様々な方法及び組成物において採用されるヌクレアーゼ剤はまた、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系又はそのような系の構成成分を含んでもよい。CRISPR/Cas系は、Cas遺伝子の発現に関与するか、又はその活性を誘導する、転写物及び他の要素を含む。CRISPR/Cas系は、I型、II型、又はIII型系であってもよい。本明細書に開示される方法及び組成物は、核酸の部位特異的な開裂のためのCRISPR複合体(Casタンパク質と複合体を形成したガイドRNA(gRNA)を含む)を利用することによって、CRISPR/Cas系を採用する。
【0270】
本明細書に開示される方法で使用されるいくつかのCRISPR/Cas系は、非自然発生的である。「非自然発生的」な系は、系の1つ以上の構成成分がそれらの自然発生的な状態から変異若しくは突然変異されること、それらが本質的に自然に関連する少なくとも1つの他の構成成分を少なくとも実質的に含まないこと、又はそれらが自然に関連していない少なくとも1つの他の構成成分と関連していることなど、人の手の関与を示すいかなるものをも含む。例えば、いくつかのCRISPR/Cas系は、一緒に自然発生しないgRNA及びCasタンパク質を含む、非自然発生的CRISPR複合体を採用する。
【0271】
Casタンパク質は、概して、少なくとも1つのRNA認識又は結合ドメインを含む。そのようなドメインは、ガイドRNA(gRNA、以下でより詳細に記載される)と相互作用することができる。Casタンパク質はまた、ヌクレアーゼドメイン(例えば、DNase又はRNaseドメイン)、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質間相互作用ドメイン、二量化ドメイン、及び他のドメインを含んでもよい。ヌクレアーゼドメインは、核酸開裂のための触媒活性を有する。開裂は、核酸分子の共有結合の切断を含む。開裂は、平滑末端又は互い違いの末端を生じさせることができ、それは、一本鎖又は二本鎖であってもよい。Casタンパク質は、完全開裂活性を有することができ、かつ標的ゲノム遺伝子座において二本鎖切断を行うことができるか(例えば、平滑末端を有する二本鎖切断)、又はそれは、標的ゲノム遺伝子座において一本鎖切断を行うニッカーゼであってもよい。
【0272】
Casタンパク質の例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9(Csn1若しくはCsx12)、Cas10、Casl0d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、及びCu1966、並びにこれらの相同体又は修飾バージョンが挙げられる。
【0273】
いくつかの場合において、Casタンパク質は、II型CRISPR/Cas系由来である。例えば、Casタンパク質は、Cas9タンパク質であってもよいか、又はCas9タンパク質に由来してもよい。Cas9タンパク質は、通常は、保存された構造を有する4つの主要なモチーフを共有する。モチーフ1、2、及び4は、RuvC様モチーフであり、モチーフ3は、HNHモチーフである。Cas9タンパク質は、例えば、化膿レンサ球菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス属、ノカルジオプシス・ダソンビレイ、ストレプトミセス・プリスチナエスピラリス、ストレプトミセス・ビリドクロモゲネス、ストレプトミセス・ビリドクロモゲネス、ストレプトスポランギウム・ロセウム、ストレプトスポランギウム・ロセウム、アリサイクロバチルス・アシドカルダリウス、バチルス・シュードミコイデス、バチルス・セレニティレドセンス、イグジォバクテリウム・シビリカム、ラクトバチラス・デルブリッキー、ラクトバチラス・サリバリウス、ミクロシラ・マリナ、バークホルデリア・バクテリウム、ポラロモナス・ナフタレニボランス、ポラロモナス属、クロコスファエラ・ワトソニイ、シアノセイス属、ミクロキスティス・エルギノーサ、シネココックス属、アセトハロビウム・アラビティカム、アンモニフェツクス・デゲンシイ、カルディセルロシルプター・ベシー、カンジデイタス・デサルホルディス、クロストリジウム・ボツリナム、クロストリジウム・ディフィシル、フィネゴルディア・マグナ、ナトロアナエロビウス・サーモフィルス、ペロトマクルム・サーモプロピオニカム、アシディチオバチルス・カルダス、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス、アロクロマチウム・ビノスム、マリノバクター属、ニトロソコッカス・ハロフィルス、ニトロソコッカス・ワトソニイ、シュードアルテロモナス・ハロプランクティス、クテドノバクター・ラセミファー、メタノハロビウム・エベスチガータム、アナベナ・バリアビリス、ノジュラリア・スプミゲナ、ノストック属、アルスロスピラ・マキシマ、アルスロスピラ・プラテンシス、アルスロスピラ属、リングビア属、ミクロコレウス・クソノプラステス、オスキラトリア属、ペトロトガ・モビリス、サーモシフォ・アフリカヌス、又はアカリオクロリス・マリナ由来であってもよい。Cas9タンパク質はまた、黄色ブドウ球菌由来であってもよい。Cas9ファミリーメンバーのその他の例には、参照よりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO2014/131833号に記載されるCas9ファミリーメンバーが挙げられる。具体的な実施例では、Cas9タンパク質は、化膿レンサ球菌由来のCas9タンパク質であるか、又はそれに由来する。化膿レンサ球菌由来のCas9タンパク質のアミノ酸配列は、例えば、SwissProtデータベースにおいてアクセッション番号Q99ZW2の下で見出すことができる。
【0274】
Casタンパク質は、野生型タンパク質(即ち、自然に発生するもの)、修飾Casタンパク質(即ち、Casタンパク質変異体)、又は野生型若しくは修飾Casタンパク質のフラグメントであってもよい。Casタンパク質はまた、野生型又は修飾Casタンパク質の活性変異体又はフラグメントであってもよい。活性変異体又はフラグメントは、野生型若しくは修飾Casタンパク質又はこれらの一部分に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれを超える配列同一性を含むことができ、活性変異体は、所望の開裂部位において切断する能力を保持し、したがって、切れ目誘発又は二本鎖切断誘発活性を保持する。切れ目誘発又は二本鎖切断誘発活性に対するアッセイは既知であり、概して、開裂部位を含有するDNA基質上のCasタンパク質の全体的な活性及び特異性を測定する。
【0275】
Casタンパク質は、核酸結合親和性、核酸結合特異性、及び/又は酵素活性を増加又は減少させるように修飾され得る。Casタンパク質はまた、安定性など、タンパク質の任意の他の活性又は特性を変化させるように修飾され得る。例えば、Casタンパク質の1つ以上のヌクレアーゼドメインは、修飾、欠失、若しくは不活性化され得るか、あるいはCasタンパク質は、タンパク質の機能に必須ではないドメインを除去するために、又はCasタンパク質の活性を最適化(例えば、強化若しくは低減)するために切断され得る。
【0276】
いくつかのCasタンパク質は、DNaseドメインなどの少なくとも2個のヌクレアーゼドメインを含む。例えば、Cas9タンパク質は、RuvC様ヌクレアーゼドメイン及びHNH様ヌクレアーゼドメインを含んでもよい。RuvC及びHNHドメインはそれぞれ、DNA中で二本鎖切断を行うために、二本鎖DNAの異なる鎖を切断することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Jinek et al.(2012)Science 337:816〜821を参照されたい。
【0277】
ヌクレアーゼドメインのうちの一方又は両方は、それらがもはや機能的ではないか、又はヌクレアーゼ活性が低減しているように、欠失又は突然変異されてもよい。ヌクレアーゼドメインのうちの一方が欠失する又は突然変異する場合、得られるCasタンパク質(例えば、Cas9)は、ニッカーゼと称してもよく、二本鎖切断ではなく、二本鎖DNA内の標的配列において一本鎖切断を発生させることができる(即ち、相補鎖又は非相補鎖を開裂することができるが、両方ではない)。ヌクレアーゼドメインの両方が欠失されるか又は突然変異される場合、得られるCasタンパク質(例えば、Cas9)は、二本鎖DNAの両方の鎖を開裂する能力が低下することとなる(例えば、ヌクレアーゼヌルCasタンパク質)。Cas9をニッカーゼに変換する突然変異の一例は、化膿レンサ球菌由来のCas9のRuvCドメインにおける(Cas9の位置10におけるアスパラギン酸からアラニンへの)D10A突然変異である。同様に、化膿レンサ球菌由来のCas9のHNHドメインにおける(アミノ酸位置839におけるヒスチジンからアラニンへの)H939A又は(アミノ酸位置840におけるヒスチジンからアラニンへの)H840Aは、Cas9をニッカーゼに変換することができる。Cas9をニッカーゼに変換する突然変異の他の例は、S.サーモフィルス由来のCas9への対応する突然変異を含む。例えば、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSapranauskas et al.(2011)Nucleic Acids Research 39:9275〜9282及び国際公開第WO 2013/141680号を参照されたい。そのような突然変異は、部位特異的突然変異誘発、PCR媒介性突然変異誘発、又は全遺伝子合成などの周知の方法を使用して発生させてもよい。ニッカーゼを作り出す他の突然変異の例は、例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO2013/176772A1号及び同第WO2013/142578A1号に見出すことができる。
【0278】
Casタンパク質はまた、融合タンパク質であってもよい。例えば、Casタンパク質は、開裂ドメイン、後成的修飾ドメイン、転写活性化ドメイン、転写抑制因子ドメインと融合され得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO 2014/089290号を参照されたい。Casタンパク質はまた、増加又は減少した安定性を提供する異種ポリペプチドと融合されてもよい。融合ドメイン又は異種ポリペプチドは、N末端、C末端、又はCasタンパク質内に内部的に位置してもよい。
【0279】
Cas融合タンパク質の一例は、細胞内局在性を提供する異種ポリペプチドと融合されたCasタンパク質である。そのような配列は、例えば、核を標的化するためのSV40 NLSなどの核局在シグナル(NLS)、ミトコンドリアを標的化するためのミトコンドリア局在シグナル、ER保持シグナルなどを含んでもよい。例えば、Lange et al.(2007)J.Biol.Chem.282:5101〜5105を参照されたい。Casタンパク質は、例えば、1つ以上の核局在シグナル(例えば、2つの核局在シグナル)を含むことができる。そのような細胞内局在シグナルは、N末端、C末端、又はCasタンパク質内のどの場所に位置してもよい。NLSは、塩基性アミノ酸の区間を含むことができ、一分配列又は二分配列であってもよい。
【0280】
Casタンパク質はまた、細胞透過性ドメインを含んでもよい。例えば、細胞透過性ドメインは、HIV−1 TATタンパク質、ヒトB型肝炎ウイルス由来のTLM細胞透過性モチーフ、MPG、Pep−1、VP22、単純ヘルペスウイルスからの細胞透過性ペプチド、又はポリアルギニンペプチド配列に由来してもよい。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO2014/089290号を参照されたい。細胞透過性ドメインは、N末端、C末端、又はCasタンパク質内のどこにでも位置してよい。
【0281】
Casタンパク質はまた、蛍光タンパク質、精製タグ、又はエピトープタグなど、追跡又は精製を容易にするための異種ポリペプチドを含んでもよい。蛍光タンパク質の例には、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP−2、tagGFP、turboGFP、eGFP、Emerald、Azami Green、単量体Azami Green、CopGFP、AceGFP、ZsGreenl)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、Citrine、Venus、YPet、PhiYFP、ZsYellowl)、青色蛍光タンパク質(例えば、eBFP、eBFP2、Azurite、mKalamal、GFPuv、Sapphire、T−Sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、eCFP、Cerulean、CyPet、AmCyanl、Midoriishi−Cyan)、赤色蛍光タンパク質(mKate、mKate2、mPlum、DsRed単量体、mCherry、mRFP1、DsRed−エクスプレス、DsRed2、DsRed−単量体、HcRed−タンデム、HcRedl、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberry、Jred)、オレンジ色蛍光タンパク質(mOrange、mKO、Kusabira−Orange、単量体Kusabira−Orange、mTangerine、tdTomato)、及び任意の他の好適な蛍光タンパク質が挙げられる。タグの例には、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン(TRX)、ポリ(NaNP)、タンデム親和性精製(TAP)タグ、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、血球凝集素(HA)、nus、Softag 1、Softag 3、Strep、SBP、Glu−Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV−G、ヒスチジン(His)、ビオチンカルボキシルキャリアータンパク質(BCCP)、及びカルモジュリンが挙げられる。
【0282】
Casタンパク質は、任意の形態で提供されてもよい。例えば、Casタンパク質は、gRNAと複合体を形成したCasタンパク質などのタンパク質の形態で提供されてもよい。あるいは、Casタンパク質は、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNR))又はDNAなど、Casタンパク質をコードする核酸の形態で提供されてもよい。任意に、Casタンパク質をコードする核酸は、特定の細胞又は生物中のタンパク質への効率的な翻訳のために最適化されたコドンであってもよい。Casタンパク質をコードする核酸が細胞に導入されるとき、Casタンパク質は、細胞中で一時的に、条件付きで、又は構成的に発現されてもよい。
【0283】
Casタンパク質をコードする核酸は、細胞のゲノム中に安定して組み込まれ、かつ細胞中で活性なプロモーターに操作可能に連結されてもよい。あるいは、Casタンパク質をコードする核酸は、発現構築物中のプロモーターに操作可能に連結されてもよい。発現構築物には、遺伝子又は他の対象となる核酸配列(例えば、Cas遺伝子)の発現を誘導することができ、かつそのような対象となる核酸配列を標的細胞に導入することができる、任意の核酸構築物が挙げられる。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、gRNAをコードするDNAを含むベクター中にあってもよい。あるいは、それは、gRNAをコードするDNAを含むベクターとは別であるベクター又はプラスミド中にあってもよい。発現構築物中で使用され得るプロモーターとしては、例えば、多能性ラット、真核、哺乳類、非ヒト哺乳類、ヒト、げっ歯類、マウス、又はハムスター細胞中で活性なプロモーターが挙げられる。他のプロモーターの例は、本明細書の別の箇所で記載される。
【0284】
「ガイドRNA」又は「gRNA」は、Casタンパク質と結合し、Casタンパク質を標的DNA内の特定の位置に標的化するRNA分子を含む。ガイドRNAは、2つの部分、即ち「DNA標的化セグメント」と「タンパク質結合セグメント」とを含んでもよい。「セグメント」は、RNA中のヌクレオチドの隣接区間など、分子のセグメント、セクション、又は領域を含む。いくつかのgRNAは、2つの別々のRNA分子、即ち「アクチベーターRNA」と「ターゲッターRNA」とを含む。他のgRNAは、「単一分子gRNA」、「単一ガイドRNA」、又は「sgRNA」とも呼ばれ得る、単一RNA分子(単一RNAポリヌクレオチド)である。例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO2013/176772A1号、同第WO2014/065596A1号、同第WO2014/089290A1号、同第WO2014/093622A2号、同第WO2014/099750A2号、同第WO2013142578A1号、及び同第WO2014/131833A1号を参照されたい。用語「ガイドRNA」及び「gRNA」は、二重分子gRNA及び単一分子gRNAの両方を含む。
【0285】
例示的な二分子gRNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」又は「ターゲッターRNA」又は「crRNA」又は「crRNA反復」)分子と、対応するtracrRNA様(「トランス作用CRISPR RNA」又は「アクチベーターRNA」又は「tracrRNA」又は「足場」)分子とを含む。crRNAは、gRNAのDNA標的化セグメント(一本鎖)、及びgRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の半分を形成するヌクレオチドの区間の両方を含む。
【0286】
対応するtracrRNA(アクチベーターRNA)は、gRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の他方の半分を形成するヌクレオチドの区間を含む。crRNAのヌクレオチドの区間は、tracrRNAのヌクレオチドの区間に相補的であり、かつそれとハイブリダイズして、gRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖を形成する。したがって、各crRNAは、対応するtracrRNAを有すると言える。
【0287】
crRNA及び対応するtracrRNAは、ハイブリダイズしてgRNAを形成する。crRNAは、標的化配列にハイブリダイズする一本鎖DNA標的化セグメントを追加的に提供する。細胞内での修飾のために使用される場合、所与のcrRNA又はtracrRNA分子の正確な配列は、RNA分子が使用される種に特異的になるように設計されてもよい。例えば、Mali et al.(2013)Science 339:823〜826、Jinek et al.(2012)Science 337:816〜821、Hwang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:227〜229、Jiang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:233〜239、及びCong et al.(2013)Science 339:819〜823を参照されたく、それらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0288】
所与のgRNAのDNA標的化セグメント(crRNA)は、標的DNA中の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む。gRNAのDNA標的化セグメントは、ハイブリダイゼーションを介して、配列特異的な様式で標的DNAと相互作用する(即ち、塩基対合)。したがって、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は異なってもよく、かつgRNA及び標的DNAが相互作用する標的DNA内の位置を決定する。対象となるgRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNAの任意の所望の配列にハイブリダイズするように修飾されてもよい。自然発生的crRNAは、Cas9系及び生物によって異なるが、多くの場合、21〜46ヌクレオチド長の2つの直列反復(DR)が隣接した、21〜72ヌクレオチド長の標的化セグメントを含有する(例えば、国際公開第WO2014/131833号を参照されたい)。化膿レンサ球菌では、DRは、36ヌクレオチド長であり、標的化セグメントは、30ヌクレオチド長である。3’位置のDRは、対応するtracrRNAに相補的であり、かつそれとハイブリダイズし、このtracrRNAが次いでCas9タンパク質と結合する。
【0289】
DNA標的化セグメントは、約12ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド長を有してもよい。例えば、DNA標的化セグメントは、約12ヌクレオチド(nt)〜約80nt、約12nt〜約50nt、約12nt〜約40nt、約12nt〜約80nt、約12nt〜約25nt、約12nt〜約20nt、又は約12nt〜約19ntの長さを有してもよい。あるいは、DNA標的化セグメントは、約19nt〜約20nt、約19nt〜約25nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約19nt〜約70nt、約19nt〜約80nt、約19nt〜約90nt、約19nt〜約100nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、約20nt〜約60nt、約20nt〜約70nt、約20nt〜約80nt、約20nt〜約90nt、又は約20nt〜約100ntの長さを有してもよい。
【0290】
標的DNAのヌクレオチド配列(標的化配列)に相補的であるDNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は、少なくとも約12ntの長さを有してもよい。例えば、DNA標的化配列(即ち、標的DNA内の標的配列に相補的であるDNA標的化セグメント内の配列)は、少なくとも約12nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35nt、又は少なくとも約40ntの長さを有してもよい。あるいは、DNA標的化配列は、約12ヌクレオチド(nt)〜約80nt、約12nt〜約50nt、約12nt〜約45nt、約12nt〜約40nt、約12nt〜約35nt、約12nt〜約30nt、約12nt〜約25nt、約12nt〜約20nt、約12nt〜約19nt、約19nt〜約20nt、約19nt〜約25nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、又は約20nt〜約60ntの長さを有してもよい。いくつかの場合において、DNA標的化配列は、約20ntの長さを有してもよい。
【0291】
TracrRNAは、任意の形態(例えば、完全長のtracrRNA又は活性部分tracrRNA)及び異なる長さであってもよい。それらは、一次転写産物又は処理された形態を含んでもよい。例えば、tracrRNA(単一ガイドRNAの一部として、若しくは二分子gRNAの一部としての別個の分子として)は、野生型tracrRNA配列の全部若しくは一部分(例えば、野生型tracrRNA配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85以上、若しくはそれを超えるヌクレオチド)を含んでもよいか、又はそれからなっていてもよい。化膿レンサ球菌由来の野生型tracrRNA配列の例には、171ヌクレオチド、89ヌクレオチド、75ヌクレオチド、及び65ヌクレオチドバージョンが挙げられる。例えば、Deltcheva et al.(2011)Nature 471:602〜607、国際公開第WO 2014/093661号を参照されたく、それらのそれぞれは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。単一ガイドRNA(sgRNA)内のtracrRNAの例としては、sgRNAの+48、+54、+67、及び+85バージョン内に見出されるtracrRNAセグメントが挙げられ、ここで「+n」は、野生型tracrRNAの最大で+n個のヌクレオチドがsgRNAに含まれることを示す。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国第8,697,359号を参照されたい。
【0292】
DNA標的化配列と標的DNA内の標的配列との間の相補性の割合は、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)であってもよい。いくつかの場合において、DNA標的化配列と標的DNA内の標的配列との間の相補性パーセントは、約20個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも60%であってもよい。一実施例では、DNA標的化配列と標的DNA内の標的配列との間の相補性の割合は、標的DNAの相補鎖内の標的配列の5’末端における14個の隣接ヌクレオチドにわたって100%であり、残りの部分にわたって0%まで下がる。そのような場合、DNA標的化配列は、14ヌクレオチド長であると見なしてもよい。別の実施例では、DNA標的化配列と標的DNA内の標的配列との間の相補性の割合は、標的DNAの相補鎖内の標的配列の5’末端における7個の隣接ヌクレオチドにわたって100%であり、残りの部分にわたって0%まで下がる。そのような場合、DNA標的化配列は、7ヌクレオチド長であると見なしてもよい。
【0293】
gRNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的であるヌクレオチドの2つの区間を含んでもよい。タンパク質結合セグメントの相補的ヌクレオチドは、ハイブリダイズして二本鎖RNA二重鎖(dsRNA)を形成する。対象となるgRNAのタンパク質結合セグメントは、Casタンパク質と相互作用し、gRNAは、DNA標的化セグメントを介して、結合したCasタンパク質を、標的DNA内の特定のヌクレオチド配列に誘導する。
【0294】
ガイドRNAは、追加の所望の特性(例えば、修飾された又は調節された安定性、細胞内標的化、蛍光ラベルによる追跡、タンパク質又はタンパク質複合体に対する結合部位など)を提供する修飾又は配列を含んでもよい。そのような修飾の例には、例えば、5’キャップ(例えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7G))、3’ポリアデニル化鎖(即ち、3’ポリAテール)、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及び/又はタンパク質複合体による調節された安定性及び/又は調節された接近性を可能にすること)、安定性制御配列、dsRNA二本鎖(即ち、ヘアピン型)を形成する配列、細胞内部位(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に対してRNAを標的化する修飾又は配列、追跡用に提供される修飾又は配列(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を容易にする部位への結合、蛍光検出を可能にする配列など)、タンパク質(例えば、転写アクチベーター、転写リプレッサー、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含むDNAに作用するタンパク質)との結合部位を提供する修飾又は配列、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0295】
ガイドRNAは、任意の形態で提供されてもよい。例えば、gRNAは、2つの分子(別々のcrRNA及びtracrRNA)として、又は1つの分子(sgRNA)としてのいずれかのRNAの形態で、並びに任意に、Casタンパク質との複合体の形態で提供されてもよい。gRNAはまた、gRNAをコードするDNAの形態で提供されてもよい。gRNAをコードするDNAは、単一RNA分子(sgRNA)又は別々のRNA分子(例えば、別々のcrRNA及びtracrRNA)をコードしてもよい。後者の場合、gRNAをコードするDNAは、crRNA及びtracrRNAをそれぞれコードする別々のDNA分子として提供されてもよい。あるいは、gRNAをコードするDNAは、1つのDNA分子として提供され得る。
【0296】
gRNAをコードするDNAが細胞に導入されるとき、gRNAは、細胞中で一時的に、条件に応じて、又は構成的に発現されてもよい。gRNAをコードするDNAは、細胞のゲノム中に安定して組み込まれ、かつ細胞中で活性なプロモーターに操作可能に連結されてもよい。あるいは、gRNAをコードするDNAは、発現構築物中のプロモーターに操作可能に連結されてもよい。例えば、gRNAをコードするDNAは、Casタンパク質をコードする核酸を含むベクター中にあってもよい。あるいは、それは、Casタンパク質をコードする核酸を含むベクターとは別であるベクター又はプラスミド中にあってもよい。そのような発現構築物中で使用され得るプロモーターとしては、例えば、多能性ラット、真核、哺乳類、非ヒト哺乳類、ヒト、げっ歯類、マウス、又はハムスター細胞中で活性なプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、又は組織特異的プロモーターであってもよい。いくつかの場合において、プロモーターは、ヒトU6プロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターである。
【0297】
あるいは、gRNAは、様々な他の方法によって調製されてもよい。例えば、gRNAは、例えば、T7 RNAポリメラーゼを使用したインビトロ転写によって調製され得る(例えば、国際公開第WO 2014/089290号及び同第WO 2014/065596号を参照されたく、それらのそれぞれは、全ての目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ガイドRNAはまた、化学合成によって調製された、合成的に生み出された分子であってもよい。
【0298】
CRISPR/Cas系に対する標的配列は、結合のための十分な条件が存在する場合には、gRNAのDNA標的化セグメントが結合する標的DNA中に存在する核酸配列を含む。例えば、標的配列は、ガイドRNAが相補性を有するように設計される配列を含み、標的配列とDNA標的化配列との間のハイブリダイゼーションは、CRISPR複合体の形成を促進する。完全な相補性は必ずしも必要ではないが、ただしハイブリダイゼーションを引き起こし、かつCRISPR複合体の形成を促進するために十分な相補性があることを条件とする。標的配列は、以下でより詳細に記載される、Casタンパク質のための開裂部位も含む。標的配列は、任意のポリヌクレオチドを含んでもよく、それは、例えば、細胞の核若しくは細胞質内に、又はミトコンドリア若しくは葉緑体などの細胞のオルガネラ内に位置してもよい。
【0299】
標的DNA内の標的配列は、Casタンパク質又はgRNAによって標的化され得る(即ち、それによって結合されてもよい、又はそれとハイブリダイズしてもよい、又はそれに相補的であってもよい)。好適なDNA/RNA結合条件は、細胞中に通常存在する生理学的条件を含む。他の好適なDNA/RNA結合条件(例えば、無細胞系における条件)は、当該技術分野において既知である(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,Harbor Laboratory Press 2001を参照されたい))。Casタンパク質又はgRNAに相補的であり、かつそれとハイブリダイズする標的DNAの鎖は、「相補鎖」と呼ばれてもよく、「相補鎖」に相補的である(したがって、Casタンパク質又はgRNAに相補的ではない)標的DNAの鎖は、「非相補鎖」又は「テンプレート鎖」と呼ばれてもよい。
【0300】
Casタンパク質は、gRNAのDNA標的化セグメントが結合する標的DNA中に存在する核酸配列の内側又は外側の部位で核酸を開裂することができる。「開裂部位」は、Casタンパク質が一本鎖切断又は二本鎖切断を生じさせる核酸の位置を含む。例えば、CRISPR複合体の形成(標的配列にハイブリダイズされ、かつCasタンパク質と複合体を形成されたgRNAを含む)は、gRNAのDNA標的化セグメントが結合する標的DNA中に存在する核酸配列中、又はその近くで(例えば、そこから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50塩基対、又はそれを超える塩基対以内で)、一方又は両方の鎖の開裂をもたらしてもよい。開裂部位が、gRNAのDNA標的化セグメントが結合する核酸配列の外側にある場合、開裂部位はなおも「標的配列」内にあると見なされる。開裂部位は、核酸の一方のみの鎖又は両方の鎖上にあってもよい。開裂部位は、核酸の両方の鎖上の同じ位置にあってもよく(平滑末端を生じさせる)、又はそれぞれの鎖上の異なる部位にあってもよい(互い違いの末端を生じさせる(即ち、オーバーハング))。互い違いの末端は、例えば、異なる鎖上の異なる開裂部位において一本鎖切断を生じさせ、したがって、二本鎖切断を生じさせる、2つのCasタンパク質を使用することによって生じ得る。例えば、突出配列が作り出されるように、第1のニッカーゼは、二本鎖DNA(dsDNA)の第1の鎖上で一本鎖切断を引き起こしてもよく、第2のニッカーゼは、dsDNAの第2の鎖上で一本鎖切断を引き起こしてもよい。いくつかの場合において、第1の鎖上のニッカーゼの標的配列は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100、250、500、又は1,000塩基対だけ、第2の鎖上のニッカーゼの標的配列から隔てられている。
【0301】
Cas9による標的DNAの部位特異的開裂は、標的DNA中の(i)gRNAと標的DNAとの間の塩基対合相補性、及び(ii)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短いモチーフの両方によって決定される位置で生じてもよい。PAMは、標的配列に隣接してもよい。任意選択的に、標的配列には、3’末端でPAMが隣接してもよい。例えば、Cas9の開裂部位は、PAM配列の約1〜約10又は約2〜約5塩基対(例えば、3塩基対)上流又は下流であってもよい。いくつかの場合において(例えば、化膿レンサ球菌からのCas9又は近縁のCas9が使用されるとき)、非相補鎖のPAM配列は、5’−N
1GG−3’であってもよく、N
1は、任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの非相補鎖の標的配列のすぐ3’である。したがって、相補鎖のPAM配列は、5’−CCN
2−3’であり、N
2は、任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの相補鎖の標的配列のすぐ5’である。いくつかのそのような場合において、N
1及びN
2は相補的であり得、N
1−N
2塩基対は、任意の塩基対であり得る(例えば、N
1=C及びN
2=G、N
1=G及びN
2=C、N
1=A及びN
2=T、又はN
1=T及びN
2=A)。
【0302】
標的配列の例は、gRNAのDNA標的化セグメントに相補的なDNA配列、又はPAM配列に加えたそのようなDNA配列を含む。標的配列の一例は、GNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGG(GN
1〜20Gg、配列番号1)のヌクレオチド配列を含む。5’末端におけるグアニンは、細胞中のRNAポリメラーゼによる転写を促進することができる。標的配列の他の例は、インビトロでのT7ポリメラーゼによる効率的な転写を促進するために、5’末端において2つのグアニンヌクレオチドを含むことができる。例えば、全ての目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO 2014/065596号を参照されたい。他の標的配列は、5’G及び3’GGを含む、配列番号1の4〜22ヌクレオチド長を有してもよい。更に他の標的配列は、配列番号1の14〜20ヌクレオチド長を有してもよい。
【0303】
標的配列は、細胞に対して内因性又は外因性の任意の核酸であってもよい。標的配列は、遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードする配列若しくは非コード配列(例えば、調節配列又はジャンクDNA)であってもよいか、又は両方を含んでもよい。
【0304】
ヌクレアーゼ剤の活性変異体及びフラグメント(即ち、操作されたヌクレアーゼ剤)もまた提供される。そのような活性変異体は、天然ヌクレアーゼ剤に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれを超える配列同一性を含んでもよく、活性変異体は、所望の認識部位において切断する能力を保持し、したがって、切れ目又は二本鎖切断誘発活性を保持する。例えば、本明細書に記載されるヌクレアーゼ剤のいずれも、天然エンドヌクレアーゼ配列から修飾され、かつ天然ヌクレアーゼ剤によって認識されなかった認識部位における切れ目又は二本鎖切断を認識及び誘発するように設計され得る。したがって、いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、対応する天然ヌクレアーゼ剤認識部位とは異なる認識部位において切れ目又は二本鎖切断を誘発する特異性を有する。切れ目又は二本鎖切断誘発活性に対するアッセイは既知であり、概して、認識部位を含有するDNA基質上のエンドヌクレアーゼの全体的な活性及び特異性を測定する。
【0305】
ヌクレアーゼ剤は、当該技術分野において既知の任意の手段によって細胞に導入されてもよい。ヌクレアーゼ剤をコードするポリペプチドは、細胞に直接導入されてもよい。あるいは、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドが細胞に導入され得る。ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドが細胞に導入されるとき、ヌクレアーゼ剤は、細胞中で一次的に、条件付きで、又は構成的に発現されてもよい。したがって、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、発現カセット中に含有され、かつ条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、又は組織特異的プロモーターに操作可能に連結されてもよい。あるいは、ヌクレアーゼ剤は、ヌクレアーゼ剤をコードするmRNAとして細胞に導入される。
【0306】
具体的な実施形態において、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、細胞のゲノム中に安定して組み込まれ、かつ細胞中で活性なプロモーターに操作可能に連結される。他の実施形態において、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドが挿入ポリヌクレオチドを含む同じ標的化ベクター内にある一方で、他の場合には、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、挿入ポリヌクレオチドを含む標的化ベクターとは別であるベクター又はプラスミド内にある。
【0307】
ヌクレアーゼ剤が、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドの導入を通じて細胞に提供されるとき、ヌクレアーゼ剤をコードするそのようなポリヌクレオチドは、ヌクレアーゼ剤をコードする自然発生的ポリヌクレオチド配列と比較して、対象となる細胞中でより高い使用頻度を有するコドンを置換するように修飾され得る。例えば、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、自然発生的ポリヌクレオチド配列と比較して、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、又は任意の他の宿主細胞を含む原核又は真核細胞中でより高い使用頻度を有するコドンを置換するように修飾され得る。
【0308】
上記の様々な方法は、連続的に繰り返すことにより、染色体上の所与の標的遺伝子座への任意の数の核酸挿入物の標的組み込みが可能となる。したがって、様々な方法は、染色体上の標的遺伝子座に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上の核酸挿入物の挿入を提供する。特定の実施形態において、そのような連続的なタイリング方法は、染色体上の標的化されたゲノム遺伝子座内への、動物細胞又は哺乳類細胞(即ち、ヒト、非ヒト、げっ歯動物、マウス、サル、ラット、ハムスター、家畜哺乳動物、又は農業用動物)由来の大きいゲノム領域の再構成を可能にする。そのような場合、コード及び非コード領域の両方を含むゲノム領域の導入及び再構成は、所与の領域の複雑性が、少なくとも部分的に、コード領域、非コード領域、及び天然ゲノム領域内に見出されるコピー数多型を保持することによって維持されることを可能にする。したがって、様々な方法が、例えば、細胞内で「異種」又は「外因性」ゲノム領域を生成するための方法を提供する。
【0309】
IV.選択マーカー
本明細書で提供される様々な方法及び組成物では、選択マーカーと組み合わせて、ヌクレアーゼ剤及びその対応する認識部位を採用することができる。本明細書に記載のように、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド内への認識部位の配置により、標的遺伝子座での組み込みイベントの効率的な確認方法が提供され得る。更に、本明細書に記載の様々な方法では、ヌクレアーゼ認識部位を有する交替される選択マーカーが、導入効率及び効果の改善のために使用され、それにより、目的の複数のポリヌクレオチドが、所与の標的遺伝子座内に組み込まれる。
【0310】
様々な選択マーカーが、本明細書に開示される方法及び組成物で使用できる。そのような選択マーカーは、例えば、G418、ハイグロマイシン、ブラストシジン、ネオマイシン又はピューロマイシンなどの抗生物質に対する抵抗性を付与できる。かかる選択マーカーとしては、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo
r)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hyg
r)、ピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ(puro
r)及びブラスチシジンSデアミナーゼ(bsr
r)が挙げられる。更に他の実施形態において、選択マーカーは、誘導性プロモーターに作動可能に連結され、選択マーカーの発現は、細胞に対する毒性を示す。かかる選択マーカーの非限定的な例としては、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)又は単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)が挙げられる。
【0311】
一実施形態において、ヌクレアーゼ認識部位は、選択マーカーをコードする遺伝子内に位置付けられる。具体的な実施形態において、ヌクレアーゼ認識部位は、ハイグロマイシン遺伝子内に位置付けられる。
【0312】
選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、細胞中で活性なプロモーターに操作可能に連結される。そのような発現カセット及びそれらの様々な制御成分は、本明細書の別の箇所で更に詳細に考察される。
【0313】
V.プロモーター
本明細書に記載される様々な核酸配列は、プロモーターに作動可能に連結され得る。そのようなプロモーターは、例えば、多能性、真核、哺乳類、非ヒト哺乳類、ヒト、げっ歯類、マウス、又はハムスター細胞中で活性であってもよい。プロモーターは、例えば、構成的活性プロモーター、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、時間限定的プロモーター(例えば、発生段階調節プロモーター)、又は空間限定的プロモーター(例えば、細胞特異的若しくは組織特異的プロモーター)であってもよい。プロモーターの例は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO 2013/176772号に見出すことができる。
【0314】
誘導性プロモーターの例としては、例えば、化学的に調節されるプロモーター及び物理的に調節されるプロモーターが挙げられる。化学的に調節されるプロモーターとしては、例えば、アルコール調節されるプロモーター(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ(alcA)遺伝子プロモーター)、テトラサイクリン調節されるプロモーター(例えば、テトラサイクリン応答性プロモーター、テトラサイクリンオペレーター配列(tetO)、tet−Onプロモーター、若しくはtet−Offプロモーター)、ステロイド調節されるプロモーター(例えば、ラットグルココルチコイドレセプター、エストロゲンレセプターのプロモーター、若しくはエクジソンレセプターのプロモーター)、又は金属調節されるプロモーター(例えば、金属タンパク質プロモーター)が挙げられる。物理的に調節されるプロモーターとしては、例えば、温度調節されるプロモーター(例えば、ヒートショックプロモーター)、及び光調節されるプロモーター(例えば、光誘導性プロモーター、又は光抑制性プロモーター)が挙げられる。
【0315】
組織特異的プロモーターは、例えば、神経特異的プロモーター、グリア特異的プロモーター、筋細胞特異的プロモーター、心臓細胞特異的プロモーター、腎細胞特異的プロモーター、骨細胞特異的プロモーター、内皮細胞特異的プロモーター、又は免疫細胞特異的プロモーター(例えば、B細胞プロモーター若しくはT細胞プロモーター)であってもよい。
【0316】
発生段階調節プロモーターとしては、例えば、胚発生段階中でのみ、又は成熟細胞中でのみ活性なプロモーターが挙げられる。
【0317】
プロモーターはまた、細胞型に基づき選択され得る。例えば、様々な既知のプロモーターは、真核細胞、哺乳類細胞、非ヒト細胞、非ヒト哺乳類細胞、多能性細胞、非ヒト多能性細胞、ヒト多能性細胞、ヒトES細胞、ヒト成体幹細胞、発達制限されたヒト前駆細胞、ヒトiPS細胞、ヒト細胞、げっ歯類細胞、ラット細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、線維芽細胞、又はCHO細胞中で用途を見出す。
【0318】
VI.発現カセット
本明細書に提供される標的化系の様々な構成要素(即ち、ヌクレアーゼ剤、認識部位、核酸挿入物、対象となるポリヌクレオチド、標的化ベクター(即ち、LTVEC)、選択マーカー、及び他の構成要素)を含むポリヌクレオチド又は核酸分子が、本明細書に提供される。
【0319】
標的化系の様々な構成要素を含む組み換えポリヌクレオチドが更に提供される。用語「組み換えポリヌクレオチド」及び「組み換えDNA構築物」は、本明細書において互換的に使用される。組み換え構築物は、核酸配列の人工又は異種の組み合わせ、例えば、自然界で一緒に見出されない制御配列及びコード配列を含む。他の実施形態において、組み換え構築物は、異なる源由来である制御配列及びコード配列、又は同じ源由来であるが、自然界で見出されるものとは異なる様式で配列された制御配列及びコード配列を含んでもよい。そのような構築物は、それ自体で使用されてもよく、又はベクターと併用されてもよい。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者に周知であるような宿主細胞を変換するために使用される方法によって決まる。例えば、プラスミドベクターが使用され得る。本発明においては、宿主細胞を好適に形質転換し、選択し、増殖させるのに必要な、何らかの単離された核酸断片を含む遺伝的要素が提供される。スクリーニングは、とりわけ、DNAのサザン解析、mRNA発現のノザン解析、タンパク質発現の免疫ブロット解析、又は表現型解析によって達成されてもよい。
【0320】
具体的な実施形態において、本明細書に記載の標的化系の構成要素のうちの1つ以上は、原核細胞、真核細胞、細菌、酵母細胞、哺乳類細胞、又は対象となる他の種類の生物若しくは細胞における発現用の発現カセット中に提供され得る。カセットは、本明細書に提供されるポリヌクレオチドに作動可能に連結された5’及び3’調節配列を含むことができる。2つのタンパク質コード領域の結合に言及するために使用されるとき、「操作可能に連結された」は、コード領域が同じリーディングフレームにあることを意味する。別の例において、タンパク質をコードする核酸配列は、調節配列(例えばプロモーター、エンハンサー、サイレンサー配列等)に作動可能に連結させてもよく、それにより、適切な転写調節が維持される。
【0321】
カセットは、生物に共導入される少なくとも1つの追加の目的ポリヌクレオチドを追加で含んでもよい。あるいは、追加の対象となるポリヌクレオチドが、複数の発現カセット上に提供され得る。そのような発現カセットは、組み換えポリヌクレオチドの挿入が制御領域の転写制御下にあるための複数の制限部位及び/又は組み換え部位が提供される。発現カセットは、選択マーカー遺伝子を更に含有してもよい。
【0322】
発現カセットは、転写の5’−3’方向に、転写及び翻訳開始領域(即ち、プロモーター)、本明細書に提供される組み換えポリヌクレオチド、並びに対象となる哺乳類細胞又は宿主細胞中で機能的な転写及び翻訳終止領域(即ち、終止領域)を含むことができる。調節領域(即ちプロモーター、転写調節領域及び翻訳終結領域)及び/又は、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、宿主細胞に対して又は互いに、生来のものであっても類似のものであってもよい。あるいは、制御領域及び/又は本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、宿主細胞に対して又は互いに異種であってもよい。例えば、異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターは、当該ポリヌクレオチドが由来する種と異なる種に由来するか、或いは同じ/類縁の種に由来するか、それらの1つ又は両方が、それらの元の形態及び/又は遺伝子座から実質的に修飾されるか、あるいは、プロモーターは、作動可能に連結されたポリヌクレオチドについての生来のプロモーターでない。あるいは、制御領域及び/又は本明細書に提供される組み換えポリヌクレオチドは、完全に合成であってもよい。
【0323】
終結領域は、転写開始領域に生来のものであってもよく、作動可能に連結された組み換えポリヌクレオチドに生来のものであってもよく、宿主細胞に生来のものであってもよく、又は、プロモーター、組み換えポリヌクレオチド、宿主細胞又はそのあらゆる組合せとは別の給源に由来する(即ち無縁の若しくは異種の)ものであってもよい。
【0324】
発現カセットの調製において、適切な配向でDNA配列を提供するために、様々なDNAフラグメントが操作されてもよい。この目的で、アダプター若しくはリンカーがDNAフラグメントを結合するために採用されてもよく、又は好都合な制限部位、不必要なDNAの除去、制限部位の除去などを提供するために、他の操作が関与してもよい。この場合、インビトロ変異導入、プライマー修復、制限酵素処理、アニーリング、再置換(例えば塩基転移及び塩基転換)を行ってもよい。
【0325】
多くのプロモーターが、本明細書に提供される発現カセット中で使用され得る。プロモーターは、所望の結果に基づき選択され得る。対象となるポリヌクレオチドのタイミング、位置、及び/又は発現レベルを調節するために、発現カセット中の異なるプロモーターの使用によって、異なる適用が強化され得ることが認識される。そのような発現構築物はまた、必要に応じて、プロモーター制御領域(例えば、誘導性、構成的、環境若しくは発達制御、又は細胞若しくは組織特異的/選択的発現を与えるもの)、転写開始起始部位、リボソーム結合部位、RNA処理シグナル、転写終止部位、及び/又はポリアデニル化シグナルを含有してもよい。
【0326】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドを含む発現カセットは、形質転換された細胞の選択用の選択マーカーを含んでもよい。当該選択マーカー遺伝子は、形質転換された細胞又は組織の選択に利用される。
【0327】
必要に応じて、本発明の方法及び組成物で使用される配列(即ち目的ポリヌクレオチド、ヌクレアーゼ剤等)は、細胞内での更なる発現のために最適化され得る。即ち、目的遺伝子の発現向上のために、哺乳動物に好適なコドン、ヒトに好適なコドン、齧歯動物に好適なコドン、マウスに好適なコドン、ラットに好適なコドン等、所与の目的の細胞内での好ましいコドンを使用して合成され得る。
【0328】
一実施形態において、ヌクレアーゼ剤は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む発現構築物から発現され、その核酸は、細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されている。
【0329】
VII.遺伝子修飾非ヒト動物を作製する方法
遺伝子修飾非ヒト動物は、本明細書に開示される様々な方法を採用して生成され得る。いくつかの場合において、遺伝子修飾非ヒト動物を生産する方法は、(1)本明細書に記載される方法を使用して、多能性細胞のゲノムを修飾することと、(2)遺伝子修飾多能性細胞を選択することと、(3)遺伝子修飾多能性細胞を宿主胚に導入することと、(4)遺伝子修飾多能性細胞を含む宿主胚を、代理母に着床させることと、を含む。遺伝子修飾多能性細胞からの子孫が生成される。ドナー細胞は、胚盤胞期又は前桑実胚期(即ち、4細胞期又は8細胞期)など、任意の段階において宿主胚に導入され得る。生殖細胞系を通じて遺伝子修飾を伝達することが可能である子孫が生成される。多能性細胞は、本明細書の別の箇所で考察されるES細胞(例えば、マウスES細胞又はラットES細胞)であってもよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,294,754号を参照されたい。
【0330】
核移植技術もまた、非ヒト哺乳動物を生産するために使用され得る。簡潔に、核移植のための方法は、(1)卵母細胞を除核するか、又は除核した卵母細胞を提供するステップと、(2)除核した卵母細胞と組み合わされるドナー細胞又は核を単離又は提供するステップと、(3)細胞又は核を除核した卵母細胞に挿入して、再構成細胞を形成するステップと、(4)再構成細胞を動物の子宮に着床させて、胚を形成するステップと、(5)胚を発生させるステップと、を含むことができる。そのような方法において、卵母細胞は、概して、死亡動物から回収されるが、それらは、生存動物の卵管及び/又は卵巣のいずれかからも単離され得る。卵母細胞は、除核前に当業者に既知の様々な培地中で成熟させられ得る。卵母細胞の除核は、当業者に周知のいくつかの方法で実施され得る。再構成細胞を形成するための除核卵母細胞へのドナー細胞又は核の挿入は、融合前の透明帯下でのドナー細胞の微量注射によるものであってもよい。融合は、接触/融合面(電気融合)にわたるDC電気パルスの印加によって、ポリエチレングリコールなどの融合促進化学物質への細胞の曝露によって、又はセンダイウイルスなどの不活性化ウイルスによって誘発されてもよい。再構成細胞は、核ドナー及びレシピエント卵母細胞の融合前、中、及び/又は後に、電気及び/又は非電気手段によって活性化され得る。活性化方法としては、電気パルス、化学誘導ショック、精子による侵入、卵母細胞内の二価陽イオンのレベルの増加、及び卵母細胞内の(キナーゼ阻害剤などによる)細胞タンパク質のリン酸化の低減が挙げられる。活性化された再構成細胞又は胚は、当業者に周知の培地中で培養され、次いで、動物の子宮に移され得る。例えば、米国第20080092249号、国際公開第WO/1999/005266A2号、米国第20040177390号、国際公開第WO/2008/017234A1号、及び米国特許第7,612,250号を参照されたく、これらのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0331】
本方法は、F0世代非ヒト動物を生産する方法を更に含むことができ、(1)標的化修飾を含む非ヒトES細胞を同定することと、(2)標的化修飾を含む非ヒトES細胞を、非ヒト宿主胚に導入することと、(3)代理母において非ヒト宿主胚を懐胎させることと、を含む。次いで、代理母は、標的化修飾を含むF0世代非ヒト動物を生産することができる。遺伝子修飾多能性又は全能性細胞(例えば、非ヒトES細胞)を含む宿主胚は、胚盤胞期までインキュベートされ、次いで、代理母に移植されて、F0動物を生産することができる。遺伝子修飾ゲノム遺伝子座を有する動物は、本明細書に記載されるように、対立遺伝子の修飾(MOA)を介して同定され得る。
【0332】
本明細書に提供される様々な方法は、遺伝子修飾F0動物の細胞が標的化修飾を含む、遺伝子修飾非ヒトF0動物の生成を可能にする。F0動物を生産するために使用される方法に応じて、標的化遺伝子修飾を有するF0動物内の細胞数が変化することが認識される。例えば、VELOCIMOUSE(登録商標)方法を介した、対応する生物からの前桑実胚期胚(例えば、8細胞期マウス胚)へのドナーES細胞の導入は、F0動物のより大きい割合の細胞集団が、標的化遺伝子修飾を有する細胞を含むことを可能にする。特定の場合、非ヒトF0動物の少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の細胞寄与が、標的化修飾を有する細胞集団を含む。他の場合、F0動物の生殖細胞のうちの少なくとも1つ以上が標的化修飾を有する。
【0333】
いくつかの場合において、遺伝子修飾F0動物の細胞は、標的化修飾に対してヘテロ接合であるが、又はヘテロ接合の化合物である。例えば、遺伝子修飾F0動物の細胞は、標的化修飾に対して半接合であってもよい。他の場合、遺伝子修飾F0動物の細胞は、標的化修飾に対してホモ接合である。
【0334】
いくつかの場合において、本明細書に開示される方法及び組成物によって生成されたF0動物は、野生型動物に交配されて、標的化修飾に対してヘテロ接合であるF1世代を生成することができる。F1世代からの動物は、次いで、互いに交配されて、標的化修飾に対してホモ接合のF2動物を生産することができる。F1子孫は、標的化遺伝子修飾が存在するかを決定するための特異的なプライマー及び/又はプローブを使用して、遺伝子型決定され得る。
【0335】
VIII.核酸及びタンパク質を細胞に導入する方法
細胞への核酸の導入を可能にするための様々な方法及び組成物が本明細書に提供される。いくつかの場合において、核酸を導入するために採用される系は、特定のゲノム遺伝子座における標的化組み込みを可能にする。そのような系は、様々な構成要素を採用し、参照の便宜のため、用語「標的化組み込み系」は、広義に、組み込み事象に必要とされる全ての構成要素(例えば、様々なヌクレアーゼ剤、ヌクレアーゼ開裂部位、核酸挿入物、標的化ベクター、標的ゲノム遺伝子座、及び対象となるポリヌクレオチドのうちの1つ以上)を含む。
【0336】
本明細書に提供される方法は、細胞に、標的化ゲノム組み込み系の1つ以上の構成要素を含む1つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド構築物を導入することを含むことができる。「導入すること」は、配列が細胞の内部に接近するような様式で、細胞に配列(ポリペプチド又はポリヌクレオチド)を提示することを含む。本明細書に提供される方法は、核酸又はタンパク質が少なくとも1つの細胞の内部に接近する限り、核酸又はタンパク質を細胞に導入するための特定の方法に依存しない。様々な細胞型に核酸及びタンパク質を導入するための方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、安定トランスフェクション方法、一過性トランスフェクション方法、及びウイルス媒介性方法が挙げられる。
【0337】
いくつかの場合において、本方法及び組成物で採用される細胞は、それらのゲノムに安定的に組み込まれたDNA構築物を有する。「安定的に組み込まれた」又は「安定的に導入された」は、ヌクレオチド配列が細胞のゲノムに組み込み、その子孫によって遺伝され得るような、細胞へのポリヌクレオチドの導入を含む。DNA構築物又は標的化されたゲノム組み込み系の様々な構成成分の安定的な組み込みのために、任意のプロトコルが使用されてもよい。
【0338】
トランスフェクションプロトコル並びに細胞中にポリペプチド又はポリヌクレオチド配列を導入するためのプロトコルは、異なり得る。トランスフェクション方法は、リポソーム、ナノ粒子、リン酸カルシウム(Graham et al.(1973)Virology 52(2):456〜67,Bacchetti et al.(1977)Proc Natl Acad Sci USA 74(4):1590〜4、及びKriegler,M(1991).Transfer and Expression:A Laboratory Manual.New York:W.H.Freeman and Company.pp.96〜97)、デンドリマー、又はDEAE−デキストラン若しくはポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーを使用した、化学ベースのトランスフェクション方法を含む。非化学的な方法としては、エレクトロポレーション、ソノポレーション、及び光学的トランスフェクションが挙げられる。粒子ベースのトランスフェクションとしては、遺伝子銃、又は磁性補助トランスフェクション(Bertram(2006)Current Pharmaceutical Biotechnology 7,277〜28)が挙げられる。ウイルス方法もまた、トランスフェクションのために使用され得る。
【0339】
いくつかの場合において、細胞への核酸又はタンパク質の導入は、エレクトロポレーションによって、細胞質内注入によって、ウイルス感染によって、アデノウイルスによって、レンチウイルスによって、レトロウイルスによって、トランスフェクションによって、脂質媒介トランスフェクションによって、又はNucleofection(商標)によって仲介される。
【0340】
細胞への核酸又はタンパク質の導入は、1回又はある期間にわたって複数回実施され得る。例えば、導入は、ある期間にわたって少なくとも2回、ある期間にわたって少なくとも3回、ある期間にわたって少なくとも4回、ある期間にわたって少なくとも5回、ある期間にわたって少なくとも6回、ある期間にわたって少なくとも7回、ある期間にわたって少なくとも8回、ある期間にわたって少なくとも9回、ある期間にわたって少なくとも10回、ある期間にわたって少なくとも11回、ある期間にわたって少なくとも12回、ある期間にわたって少なくとも13回、ある期間にわたって少なくとも14回、ある期間にわたって少なくとも15回、ある期間にわたって少なくとも16回、ある期間にわたって少なくとも17回、ある期間にわたって少なくとも18回、ある期間にわたって少なくとも19回、又はある期間にわたって少なくとも20回実施され得る。
【0341】
ヌクレアーゼ剤及び標的化ベクター(例えば、LTVEC)の両方が細胞に導入されるとき、それらは、同時に導入され得る。あるいは、ヌクレアーゼ剤は、標的化ベクターとは別々に導入され得る。例えば、ヌクレアーゼ剤は、標的化ベクターの導入前に導入され得るか、又はそれは、標的化ベクターの導入後に導入され得る。2つ以上のLTVECが細胞に導入されるとき、それらは、同時に導入され得るか、あるいは、それらは、別々に導入され得る。
【0342】
IX.細胞及び動物
本明細書に提供される様々な組成物及び方法は、動物由来の細胞などの細胞を採用する。そのような細胞は、非ヒト細胞であってもよく、非ヒト動物由来であってもよい。そのような細胞は、例えば、菌性細胞(例えば、酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、及びヒト細胞を含む、真核細胞であってもよい。哺乳類細胞は、例えば、非ヒト哺乳類細胞、ヒト細胞、げっ歯類細胞、ラット細胞、マウス細胞、ハムスター細胞、線維芽細胞、又はCHO細胞であってもよい。真核細胞は、全能性細胞、非ヒト多能性細胞(例えば、マウス胚性幹(ES)細胞若しくはラットES細胞)又はヒト多能性細胞などの多能性細胞、あるいは非多能性細胞であってもよい。全能性細胞は、任意の細胞型を生じさせることができる未分化細胞を含み、多能性細胞は、2つ以上の分化細胞型に成長する能力を有する未分化細胞を含む。そのような多能性及び/又は全能性細胞は、例えば、胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞などのES様細胞であってもよい。胚性幹細胞は、胚への導入後に発達中の胚の任意の組織に寄与することが可能である胚由来全能性又は多能性細胞を含む。ES細胞は、胚盤胞の内部細胞塊由来であってもよく、3つの脊椎動物胚葉(内胚葉、外胚葉、及び中胚葉)のうちのいずれかの細胞に分化することができる。そのような細胞はまた、造血幹細胞又は神経幹細胞であってもよい。
【0343】
真核細胞はまた、一次体細胞ではない細胞であってもよい。体細胞は、配偶子、生殖細胞、生殖母細胞、又は未分化幹細胞ではない任意の細胞を含むことができる。
【0344】
真核細胞はまた、一次細胞を含む。一次細胞は、生物、器官、又は組織から直接単離された細胞又は細胞の培養物を含む。一次細胞は、形質転換されてもなく、不死でもない細胞を含む。それらは、組織培養物中に以前に通されていないか、又は組織培養物中に以前に通されているが、組織培養物に無限に通されることが不可能である生物、器官、又は組織から得られた任意の細胞を含む。そのような細胞は、従来の技術によって単離され得、例えば、体細胞、造血細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、間葉細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、単球、単核球、脂肪細胞、前脂肪細胞、ニューロン、グリア細胞、肝細胞、骨格筋芽細胞、及び平滑筋細胞を含む。例えば、一次細胞は、結合組織、筋組織、神経系組織、又は上皮組織由来であってもよい。
【0345】
真核細胞はまた、不死化細胞を含む。不死化細胞は、通常は無限に増殖しないが、突然変異又は変化によって、正常な細胞老化を回避しており、代わりに、分裂を経験し続けることができる、多細胞生物からの細胞を含む。そのような突然変異又は変化は、自然に生じ得るか、又は意図的に誘発され得る。不死化細胞の例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓細胞(例えば、HEK 293細胞)、及びマウス胚線維芽細胞(例えば、3T3細胞)が挙げられる。多くの種類の不死化細胞が当該技術において周知である。
【0346】
不死化又は一次細胞は、組み換え遺伝子又はタンパク質を培養するか、又は発現させるために通常使用される細胞を含む。
【0347】
細胞、多能性及び/若しくは全能性細胞、ES細胞、ドナー細胞、並びに/又は宿主胚に関連した用語「動物」としては、哺乳動物、魚類、及び鳥類が挙げられる。哺乳動物としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、サル、類人猿、ネコ、イヌ、ウマ、雄ウシ、シカ、バイソン、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット)、家畜(例えば、雌ウシ、去勢雄ウシなどのウシ種、ヒツジ、ヤギなどのヒツジ種、並びにブタ及びイノシシなどのブタ種)が挙げられる。鳥類としては、例えば、鶏、七面鳥、ダチョウ、ガン、アヒルなどが挙げられる。家畜動物及び農業用動物もまた含まれる。用語「非ヒト動物」は、ヒトを除外する。
【0348】
マウス多能性及び/又は全能性細胞は、129系統、C57BL/6系統、129及びC57BL/6の混合、BALB/c系統、又はSwiss Webster系統由来であってもよい。129系統の例としては、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/Svlm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、及び129T2が挙げられる。例えば、Festing et al.(1999)Mammalian Genome 10:836)を参照されたい。C57BL系統の例としては、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/Kal_wN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaが挙げられる。マウス多能性及び/又は全能性細胞はまた、上記の129系統及び上記のC57BL/6系統の混合由来であってもよい(例えば、50%の129及び50%のC57BL/6)。同様に、マウス多能性及び/又は全能性細胞は、上記の129系統の混合又は上記のBL/6系統(例えば、129S6(129/SvEvTac)系統)の混合由来であってもよい。マウスES細胞の具体的な例は、VGF1マウスES細胞である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Auerbach et al.(2000)Biotechniques 29,1024〜1028,1030,1032を参照されたい。
【0349】
ラット多能性及び/又は全能性細胞は、例えば、ACIラット系統、Dark Agouti(DA)ラット系統、Wistarラット系統、LEAラット系統、Sprague Dawley(SD)ラット系統、又はFisher F344若しくはFisher F6などのFischerラット系統が挙げられる、任意のラット系統由来であってもよい。ラット多能性及び/又は全能性細胞はまた、上記で列挙された2つ以上の系統の混合由来の系統から得ることができる。例えば、ラット多能性及び/又は全能性細胞は、DA系統又はACI系統由来であってもよい。ACIラット系統は、白色の腹及び足、並びにRT1
av1ハプロタイプを有する、黒いアグーチを有するものと特徴付けられる。そのような系統は、Harlan Laboratoriesを含む様々な供給元から入手可能である。ACIラット由来のラットES細胞株の例は、ACI.G1ラットES細胞である。Dark Agouti(DA)ラット系統は、アグーチコート及びRT1
av1ハプロタイプを有することを特徴とする。そのようなラットは、Charles River及びHarlan Laboratoriesを含む様々な供給元から入手可能である。DAラット由来のラットES細胞株の例は、DA.2BラットES細胞株及びDA.2CラットES細胞株である。いくつかの場合において、ラット多能性及び/又は全能性細胞は、近交ラット系統由来である。例えば、2014年2月20日出願の米国第2014/0235933 A1号、及び2014年4月16日出願の米国第2014/0310828 A1号を参照されたく、それらの両方は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0350】
ヒト多能性細胞の例としては、ヒトES細胞、ヒト成体幹細胞、発達制限されたヒト前駆細胞、並びにプライム型ヒトiPS細胞及びナイーブ型ヒトiPS細胞などのヒト人工多能性幹(iPS)細胞が挙げられる。例えば、2014年10月15日に出願され、かつ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第14/515,503号を参照されたい。人工多能性幹細胞は、分化した成人細胞から直接誘導することができる多能性幹細胞を含む。ヒトiPS細胞は、例えば、Oct3/4、Soxファミリー転写因子(例えば、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15)、Mycファミリー転写因子(例えば、c−Myc、l−Myc、n−Myc)、クルッペル様ファミリー(KLF)転写因子(例えば、KLF1、KLF2、KLF4、KLF5)、並びに/又はNANOG、LIN28、及び/若しくはGlis1などの関連転写因子を含んでもよい、リプログラミング因子の特定の一群を細胞に導入することによって発生させることができる。ヒトiPS細胞はまた、例えば、miRNA、転写因子の作用を模倣する小分子、又は系譜特異化剤の使用によって発生させてもよい。ヒトiPS細胞は、3種類の脊椎動物胚葉、例えば、内胚葉、外胚葉、又は内胚葉のうちいずれかの細胞に分化する能力によって特徴付けられる。ヒトiPS細胞はまた、好適なインビトロ培養条件下で無限に増殖する能力によっても特徴付けられる。例えば、Takahashi and Yamanaka(2006)Cell 126:663〜676を参照されたい。プライム型ヒトES細胞及びプライム型ヒトiPS細胞は、着床後胚盤葉上層細胞の特徴に類似した特徴を発現し、系統仕様及び分化に関与する細胞を含む。ナイーブ型ヒトES細胞及びナイーブ型ヒトiPS細胞は、着床前胚の内部細胞塊のES細胞の特徴に類似した特徴を発現し、系統仕様に関与しない細胞を含む。例えば、Nichols and Smith(2009)Cell Stem Cell 4:487〜492を参照されたい。
【0351】
宿主胚に着床した細胞は、「ドナー細胞」と称され得る。遺伝子修飾多能性及び/又は全能性細胞は、宿主胚と同じ系統由来又は異なる系統由来であってもよい。同様に、代理母は、遺伝子修飾多能性及び/若しくは全能性細胞並びに/又は宿主胚と同じ系統由来であってもよく、あるいは代理母は、遺伝子修飾多能性及び/若しくは全能性細胞並びに/又は宿主胚とは異なる系統由来であってもよい。
【0352】
様々な宿主胚が、本明細書に開示される方法及び組成物において採用され得る。例えば、標的化遺伝子修飾を有する多能性及び/又は全能性細胞は、対応する生物に対して、前桑実胚期胚(例えば、8細胞期胚)に導入され得る。例えば、米国第7,576,259号、米国第7,659,442号、米国第7,294,754号、及び米国第2008/0078000 A1号を参照されたく、それらの全ては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。他の場合、ドナーES細胞は、前桑実胚期、例えば、2細胞期、4細胞期、8細胞期、16細胞期、32細胞期、又は64細胞期において宿主胚に着床されてもよい。宿主胚はまた、胚盤胞であってもよく、又は胚盤胞前胚、前桑実胚期胚、桑実胚期胚、コンパクションを起こしていない桑実胚期、若しくはコンパクションを起こした桑実胚期であってもよい。マウス胚を採用するとき、宿主胚の段階は、Theiler(1989)「The House Mouse:Atlas of Mouse Development,」Springer−Verlag,New Yorkに記載されるTheiler stageを参照して、Theiler Stage 1(TS1)、TS2、TS3、TS4、TS5、及びTS6であってもよい。例えば、Theiler Stageは、TS1、TS2、TS3、及びTS4から選択され得る。いくつかの場合において、宿主胚は、透明帯を含み、ドナー細胞は、透明帯の孔を通じて宿主胚に導入されるES細胞である。他の場合、宿主胚は、帯なし胚である。更に他の場合、桑実胚期宿主胚は、凝集される。
【0353】
X.修飾標的ゲノム遺伝子座を有する細胞を同定する方法
上記の方法のうちのいくつかは、修飾標的ゲノム遺伝子座(例えば、修飾ゲノム)を有する細胞を同定することを更に含む。様々な方法が、欠失又は挿入などの標的化修飾を有する細胞を同定するために使用され得る。そのような方法は、標的遺伝子座における標的化修飾を有する1つの細胞を同定することを含むことができる。修飾ゲノム遺伝子座を有するそのような細胞を同定するために、スクリーニングが行われ得る。
【0354】
スクリーニングステップは、親染色体の対立遺伝子の修飾(MOA)を評価するための定量的アッセイを含むことができる。例えば、定量的アッセイは、リアルタイムPCR(qPCR)などの定量的PCRを介して実施され得る。リアルタイムPCRは、標的遺伝子座を認識する第1プライマーセットと、標的化されない参照遺伝子座を認識する第2プライマーセットとを採用することができる。プライマーセットは、増幅された配列を認識するための蛍光プローブを含むことができる。
【0355】
他の場合、標的化遺伝子修飾を有する細胞は、例えば、サザンブロット解析、DNA配列決定法、PCR解析、又は表現型解析を含む方法を使用して選択される。次いで、そのような細胞は、本明細書に記載される様々な方法及び組成物において採用される。
【0356】
好適な定量的アッセイの他の例としては、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション、等温DNA増幅、固定化プローブ(複数可)であるInvader Probes(登録商標)への定量的ハイブリダイゼーション、MMPアッセイ(登録商標)、TAQMAN(登録商標)Molecular Beacon、又はEclipse(商標)プローブ技術が挙げられる(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国第2005/0144655号を参照されたい)。
【0357】
スクリーニングステップはまた、概して、標的ゲノム遺伝子座以の外側のゲノム位置への核酸挿入物のランダム形質転換挿入から、標的ゲノム遺伝子座への核酸挿入物の正確な標的化挿入を区別するために使用されるアッセイであり、かつ単一の構築物への2つ以上の重複LTVECの正確な集合を検出するためにも使用される、アーム特異的アッセイを含む。長距離PCR又はサザンブロッティングなどの標的化修飾に対するスクリーニングのための従来のアッセイは、挿入された標的化ベクターを標的化遺伝子座に結合する。しかしながら、それらの大きいホモロジーアームサイズのため、LTVECは、そのような従来のアッセイによるスクリーニングを可能にしない。LTVEC標的化をスクリーニングするために、対立遺伝子の欠失(LOA)及び対立遺伝子の獲得(GOA)アッセイを含む、対立遺伝子の修飾(MOA)アッセイが使用され得る(例えば、全ての目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国第2014/0178879号及びFrendewey et al.(2010)Methods Enzymol.476:295〜307を参照されたい)。対立遺伝子の欠失(LOA)アッセイは、従来のスクリーニングロジックを反転させ、突然変異が向けられた天然遺伝子座のコピー数を定量化する。正確に標的化された細胞クローンにおいて、LOAアッセイは、2つの天然対立遺伝子のうちの一方を検出し(X又はY染色体上にない遺伝子に対して)、もう一方は、標的化修飾によって破壊される。同じ原理が、対立遺伝子の獲得(GOA)アッセイとして逆に適用されて、挿入された標的化ベクターのコピー数を定量化することができる。例えば、GOA及びLOAアッセイの組み合わせた使用は、天然標的遺伝子の欠失した1つのコピー及び薬物耐性遺伝子の獲得した1つのコピー、又は他の挿入されたマーカーを有するものとして、正確に標的化されたヘテロ接合クローンを示す。
【0358】
一例として、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)が対立遺伝子定量化方法として使用され得るが、標的遺伝子のゼロ、1つ、及び2つのコピー間、又は核酸挿入物のゼロ、1つ、及び2つのコピー間の違いを確実に区別することができる任意の方法が、MOAアッセイを展開するために使用され得る。例えば、TAQMAN(登録商標)は、特に、参照遺伝子との比較によって、ゲノムDNA試料中のDNAテンプレートのコピー数を定量化するために使用され得る(例えば、全ての目的で、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国第6,596,541号を参照されたい)。参照遺伝子は、標的遺伝子(複数可)又は遺伝子座(複数可)として、同じゲノムDNA中で定量化される。したがって、2つのTAQMAN(登録商標)増幅(それぞれその対応するプローブを有する)が実施される。一方の(登録商標)プローブが参照遺伝子の「Ct」(閾値サイクル)を決定する一方で、もう一方のプローブは、標的化の成功によって置き換えられる標的遺伝子(複数可)又は遺伝子座(複数可)の領域のCtを決定する(即ち、LOAアッセイ)。Ctは、TAQMAN(登録商標)プローブのそれぞれに対する開始DNAの量を反映する量であり、即ち、あまり大量ではない配列が、閾値サイクルに到達するためにより多くのPCRサイクルを必要とする。TAQMAN(登録商標)反応に対するテンプレート配列のコピー数を半分に減少させることは、約1のCt単位の増加をもたらす。標的遺伝子(複数可)又は遺伝子座(複数可)の1つの対立遺伝子が相同組み換えによって置き換えられた、細胞中のTAQMAN(登録商標)反応は、非標的化細胞からのDNAと比較して、参照遺伝子に対するCtの増加なしで、標的TAQMAN(登録商標)反応に対する1つのCtの増加をもたらす。GOAアッセイに対して、別のTAQMAN(登録商標)プローブは、標的化の成功によって標的遺伝子(複数可)又は遺伝子座(複数可)を置き換えている、核酸挿入物のCtを決定するために使用され得る。
【0359】
それは、LTVECによって正確な標的化を検証するための有用で増強された標準的なLOA及びGOAアッセイであり得る。例えば、LOA及びGOAアッセイは単独で、標的ゲノム遺伝子座のCas誘発欠失が、ゲノム中の別の場所でのLTVECのランダム組み込みと同時に起こるクローンと、正確に標的化された細胞クローンを区別しない可能性がある。標的化された細胞中の選択圧が選択カセットに基づくため、ゲノム中の別の場所でのLTVECのランダム形質転換組み込みは、概して、選択カセット及びLTVECの隣接領域を含むが、LTVECのより遠位の領域を除外し得る。例えば、LTVECの一部分がゲノムにランダムに組み込まれ、LTVECが約5kb以上の長さの核酸挿入物を含み、選択カセットが3’ホモロジーアームに隣接する場合、いくつかの場合において、5’ホモロジーアームではなく3’ホモロジーアームが、選択カセットと形質転換で組み込まれる。あるいは、選択カセットが5’ホモロジーアームに隣接する場合、いくつかの場合において、3’ホモロジーアームではなく5’ホモロジーアームが、選択カセットと形質転換で組み込まれる。一例として、LTVECの標的化組み込みを評価するために、LOA及びGOAアッセイが使用され、かつGOAアッセイが選択カセット又はLTVECの任意の他の特有の(非アーム)領域に対してプローブを利用する場合、LTVECのランダム形質転換組み込みと組み合わせた標的ゲノム遺伝子座におけるヘテロ接合欠失は、標的ゲノム遺伝子座におけるLTVECのヘテロ接合の標的化組み込みとして、同じ読み出しを示す。LTVECによる正確な標的化を検証するために、アーム特異的アッセイは、LOA及び/又はGOAアッセイと併用され得る。
【0360】
アーム特異的アッセイは、LTVECホモロジーアーム中のDNAテンプレートのコピー数を決定する。そのようなホモロジーアームは、別のLTVECと重複しないが、細胞中の標的配列と一致する、LTVECのホモロジーアームを含むことができる(例えば、マウス細胞中のゲノム標的配列と重複しているホモロジーアーム(mArm))。そのようなホモロジーアームはまた、2つの重複LTVEC中に存在する重複ホモロジーアームを含むことができる(例えば、第1のLTVECの3’ホモロジーアーム及び第2のLTVECの5’ホモロジーアーム中の重複ヒト配列(hArm))。複数の重複LTVECが細胞に導入される実験に対して、スクリーニングは、概して、LOAアッセイ、全ての特有の挿入された配列に対するGOAアッセイ、及び相同性の全ての領域に対するアーム特異的アッセイを含む(即ち、細胞中のLTVECと標的配列との間、及び2つの異なる重複LTVECの間)。一例として、野生型マウス標的遺伝子座をヒト化するために、マウス細胞に導入される3つの重複LTVECの場合、ヘテロ接合標的化挿入に対する予測されるコピー数は、以下の通りになる。5’mArmの2つのコピー(5’マウス標的配列と重複する相同性アーム)、hArm1の1つのコピー(LTVEC1と2との間の重複配列)、hArm2の1つのコピー(LTVEC2と3との間の重複配列)、及び3’mArmの2つのコピー(3’マウス標的配列と重複する相同性アーム)。上記の例において、3つ以上のmArmコピー数は、概して、標的ゲノム遺伝子座におけるよりもむしろ、標的ゲノム遺伝子座の外側でのランダムに形質転換LTVEC組み込みを示し、それは、望ましくない。正確に標的化されたクローンは、2つのmArmコピー数を保持する。加えて、そのようなアーム特異的アッセイにおける2つ未満のmArmコピー数は、概して、欠失のために標的化される領域を越えて延在する大きいCas誘発欠失を示し、それもまた望ましくない。同様に、ヘテロ接合標的化修飾に関して、hArm1及びhArm2に対する1つのコピー数は、概して、3つ全てのLTVECが単一の構築物に集合したことを示す。
【0361】
上記又は以下で引用した全ての特許出願、ウェブサイト、他の刊行物、アクセッション番号などは、あたかもそれぞれ個々のアイテムが参照により組み込まれると具体的かつ個別的に示されるように、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。異なるバージョンの配列がその時々においてアクセッション番号と関連付けられる場合、本願の有効出願日に当該アクセッション番号と関付けられたバージョンを意図する。有効出願日は、実際の出願日又は、該当する場合、アクセッション番号を参照する優先出願の出願日の早い方を意図する。同様に、異なるバージョンの出版物、ウェブサイトなどが異なる時点で公開される場合、別に指示がない限り、出願の有効出願日の直前に公開されたバージョンが有意である。本発明の機構、工程、要素、実施形態、又は態様はいずれも、別途記載のない限り、組み合わせて使用することができる。本発明が、明確さ及び理解の目的で例証及び実例として、ある程度詳細に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲内である特定の変更及び修正が実施され得ることが明らかになるであろう。
【実施例】
【0362】
以下の実施例は、当業者に本発明をどのように作製し、使用するかの完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、発明者が彼らの発明と見なすものの範囲を制限することを意図するものでも、以下の実験が、行われた全て又は唯一の実験であると示すことを意図するものでもない。使用された数字(例えば、量、温度など)に対する精度を確保する努力がなされたが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気又はほぼ大気である。
【0363】
実施例1:ジンクフィンガーヌクレアーゼと組み合わせた、2つのLTVECを用いたTCRアルファ遺伝子座の標的化
2つの大型標的化ベクター(LTVEC)が単一の標的化ステップでゲノム遺伝子座を修飾するように、二重標的化系を設計した。
図1に示されるように、ハイグロマイシン選択カセットを含むマウス染色体14上にTCRアルファ遺伝子座のヘテロ接合型修飾を有する細胞を、二重標的化系によって標的化して、追加のIgκ可変遺伝子セグメントを含むES細胞を生成した。
【0364】
図1に要約されるこの二重標的化アプローチは、標的遺伝子座において、又はその付近で二本鎖切断を行うエンドヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ)をコードするヌクレオチド配列と一緒の、2つの異なる大型標的化ベクター(LTVEC)の、ES細胞への二重標的化又は共エレクトロポレーションを伴う。
【0365】
このアプローチでは、第1の大型標的化ベクター(MAID 1710と表記)は、ヒトVκ1−5及びVκ1−6遺伝子セグメントの配列を含む3’30kbホモロジーアームと、ヒトVκ3−7〜Vκ3−15遺伝子セグメントを含む120kb配列と、ヒトVκ1−16遺伝子セグメントを含む5’20kb領域(「重複領域」)と、を含んだ。第2の大型標的化ベクター(MAID 6600と表記)は、3’20kb重複領域(第1のベクターと同様に、ヒトVκ1−16遺伝子セグメントを含む領域)と、ヒトVκ1−17〜Vκ2−30遺伝子セグメントを含む140kb配列と、FRT−Ub−Neo−FRT選択カセットと、15.5kb3’マウスTCR Aホモロジーアームと、を含んだ。
【0366】
標的TCR A遺伝子座における2つのLTVECの相同組み換えを促進するために、ハイグロマイシン耐性遺伝子内で標的配列を認識及び開裂する、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を設計した。
図1で生成されたES細胞(全てのヒトJκセグメント及び4個の機能的ヒトVκ遺伝子セグメントに対してヘテロ接合のMAID 6548)を、ZFNの各半分(1/2)を発現させる上記の2つの大型標的化ベクター(MAID6600及びMAID1700トリミング)及び2つのプラスミドでエレクトロポレーションし、それは、ハイグロマイシン耐性遺伝子中の認識配列に結合し、標的部位における二本鎖切断に触媒作用を及ぼす(TGCGATCGCTGCGGCCGAtcttagCCAGACGAGCGGGTTCGG(配列番号2)(開裂部位は小文字)(表1を参照されたい)。ヌクレオチド配列CGCTGCGGCCGATCTtagccaGACGAGCGGGTTCGG(配列番号3)においてハイグロマイシン遺伝子を標的化するZFN(3/4)、及びヌクレオチド配列AGCGTGTCCGACCTGATGcagctcTCGGAGGGCGAAGAA(配列番号4)においてハイグロマイシン遺伝子を標的化するZFN(5/6)の2つの追加のZFNを、ハイグロマイシンを標的化するために設計した(表1を参照されたい)。
【0367】
【表1】
【0368】
2つの大型標的化ベクターを相同組み換えによってDNA配列に挿入し、Hyg選択カセットを含み、これを包囲する領域を置き換えた。得られたES細胞は、内在性TCR A遺伝子座において、ヒトJκ1〜Jκ5及びVκ4−1〜Vκ2−30遺伝子セグメントを含む、ヒト免疫グロブリン可変領域を含んだ。上記のTAQMAN(登録商標)アッセイを用いて、
図1に示され、かつ以下の表2に列挙されるプローブ及びプライマー(GOA=対立遺伝子の獲得、LOA=対立遺伝子の欠失、コピー数=形質転換組み込み対標的化組み込みを追跡するために配列のコピー数を調査する、hArm1=第1の標的化ベクター(MAID 1710)の30kb3’ホモロジーアーム、hArm2=第1(MAID 1710)及び第2(MAID 6600)の大型標的化ベクターの20kb重複、mArm=第2の標的化ベクター(MAID 6600)の15.5kb5’ホモロジーアーム、WTマウス対照−マウスTCR A遺伝子座に存在する配列)を使用して、2つの大型標的化ベクターの組み込みの成功を確認した(参照により本明細書に組み込まれる、Lie and Petropoulos,1998.Curr.Opin.Biotechnology 9:43〜48)。アーム特異的アッセイとも称される、LTVECのホモロジーアーム中の配列を認識するリアルタイムPCRアッセイを使用して、マウスゲノムへのLTVECの正確な標的化を検証した。これらのアーム特異的アッセイのコピー数を決定することは、例えば、2つのmArmコピー数を保持する正確に標的化されたESクローンを、標的マウス遺伝子座のCas9誘発欠失がゲノム中の別の場所のLTVECのランダム組み込みと同時に起きる(その場合、mArmコピー数は3(又はそれよりも多く)である)クローンと区別するのに役立つための更なる明確化を提供した。
【0369】
【表2】
【0370】
得られた、ES細胞中の標的化遺伝子座は、以下の接合配列を有した(マウス配列は丸括弧で囲まれ、ヒト配列は通常フォントであり、マルチクローニング部位は太字であり、Frt配列はイタリック体である(表3))。
【0371】
【表3】
【0372】
単離されたES細胞コロニーの対立遺伝子の修飾(MOA)スクリーニングは、スクリーニングされた960個のコロニーのうち、27個の正確に標的化されたクローンの同定をもたらし、2.81%の標的化効率であった。
【0373】
追加の免疫グロブリン可変領域遺伝子セグメントを含むTCR A遺伝子座を生成するための別の戦略は、連続的な大型標的化ベクターでの連続標的化を伴う(例えば、FIG.2を参照されたい)。したがって、全てのヒトJκ遺伝子セグメント及び4個の機能的ヒトVκ遺伝子セグメント(MAID 6548)に対してヘテロ接合のES細胞を、5’から3’の方向に、15.5kb5’マウスホモロジーアーム、Frt−Ub−Neo−Frt選択カセット、Vκ3−7〜Vκ3−15遺伝子セグメントを含む120kbフラグメント、並びにVκ1−5及びVκ1−6遺伝子セグメント(MAID 6548配列中にも存在)を含む30kb3’ヒトホモロジーアームを含む、大型標的化ベクターでエレクトロポレーションした。組み込みの成功を、上記のTAQMAN(登録商標)アッセイを用いて、上記の表2に記載のプライマー及びプローブ、並びに
図2に示されるHyg、hIgK5、hIgK6、hIgK12、Neo、親1540m3、親1540m1を使用して確認した。具体的には、TCRA Arm4及びhIgK6プローブをアーム特異的プローブとして使用して、LTVECの正確なゲノム標的化を立証した。組み込みの成功を確認するためにプライマー及びプローブ、hIgK10の追加セットも使用され得る:順方向プライマー−CGATTATGACTGGTTAGGTAGAAAGGTG(配列番号65)、プローブ−GCCACTGGTTTCTCCAAATGTTTTCAATCCAT(配列番号66)、逆方向プライマー−GGGAGTACTTGGAGATCCCTAAGC(配列番号67)。
【0374】
得られた、ES細胞中の標的化遺伝子座は、以下の接合配列を有した(マウス配列は丸括弧で囲まれ、ヒト配列は通常フォントであり、マルチクローニング部位は太字であり、Frt配列はイタリック体である(表4))。
【0375】
【表4】
【0376】
単離されたコロニーのMOAスクリーニングは、スクリーニングされた440個のコロニーのうち、5個の正確に標的化されたクローンの同定をもたらし(LTVEC単独)、1.1%の標的化効率であった。LTVEC+ZFN又はLTVEC+CRISPR−Cas9で標的化された、単離されたコロニーのスクリーニングに関する結果は、表9に示される。
【0377】
図2に示される単一標的化の完了後に、ES細胞は、機能的ヒト免疫グロブリンVκ遺伝子セグメントの全レパートリーになるために、追加のVκを含む大型標的化ベクターで連続的に標的化されてもよい。
【0378】
更に他の代替の戦略では、連続的な追加のヒトIg Vκ遺伝子セグメントの二重又は単一標的化は、選択(例えば、ハイグロマイシン)カセット(複数可)の、ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介又はCRISPR媒介破壊を伴う、二重(2つの大型標的化ベクター)、又は単一(1つの大型標的化ベクター)標的化スキームを使用して達成されてよい。
【0379】
上記の標的化ES細胞は、ドナーES細胞として使用され、VELOCIMOUSE(登録商標)方法によって、前桑実胚期胚、例えば、8細胞期マウス胚に導入される(例えば、米国第7,576,259号、米国第7,659,442号、米国第7,294,754号、及び米国第2008−0078000 A1号を参照されたい)。ドナーES細胞を含むマウス胚は、胚盤胞期までインキュベートされ、次いで、代理母に着床されて、ドナーES細胞に完全に由来するF0マウスを生産する。キメラヒトIgK V−マウスTcra C遺伝子を独立して有するドナーES細胞に完全に由来するF0マウスは、特異的な遺伝子配列の存在を検出する対立遺伝子アッセイの修飾を使用した遺伝子型判定によって同定される。
【0380】
実施例2:CRISPR/Cas系と組み合わせた2つのLTVECを使用したハイグロマイシン遺伝子の標的化
ジンクフィンガーヌクレアーゼを採用する実施例1に記載される二重標的化方法もまた、CRISPR/Cas9系を用いて実施した。
【0381】
様々なガイドRNA(gRNA)を、ハイグロマイシン耐性遺伝子内の様々な標的配列を(CRISPR認識配列)を認識するように設計した。ハイグロマイシン遺伝子内のCRISPR認識配列は以下の通りであった。gRNA#1:ACGAGCGGGTTCGGCCCATTCGG(配列番号70)、gRNA#6:CTTAGCCAGACGAGCGGGTTCGG(配列番号71)、gRNA#10:GCCGATCTTAGCCAGACGAGCGG(配列番号72)、及びgRNA#16:CGACCTGATGCAGCTCTCGGAGG(配列番号73)。ハイグロマイシン遺伝子内の認識配列の位置は、
図3に示され、
図3は、標的化ベクターMAID 1545中のハイグロマイシンのCRISPR/Cas媒介破壊を示す。gRNA#1、gRNA#6、gRNA#10、及びgRNA#16をスクリーニングし、ハイグロマイシン遺伝子を特異的に標的化することが確認された(
図3を参照されたい)。様々なハイグロマイシン特異的gRNAを使用した一次スクリーニングからの結果は、表5に提供される。
【0382】
【表5】
【0383】
ES細胞、例えば、
図1で生成されたES細胞(全てのヒトJκセグメント及び4個の機能的ヒトVκ遺伝子セグメントに対してヘテロ接合のMAID 6548)を、単一ベクターと、又はハイグロマイシン耐性遺伝子内の標的部位を認識及び開裂する、Cas9及びgRNA(例えば、gRNA#1、gRNA#6、gRNA#10、若しくはgRNA#16)をコードする複数のベクターと一緒に、2つの大型標的化ベクター(実施例1に記載)でエレクトロポレーションした。
【0384】
2つの大型標的化ベクターを相同組み換えによってDNA配列に挿入し、Hyg選択カセットを含み、これを包囲する領域を置き換えた。2つの大型標的化ベクターの組み込みの成功を、TAQMAN(登録商標)アッセイを使用して確認した。
【0385】
上記の標的化ES細胞は、ドナーES細胞として使用され、VELOCIMOUSE(登録商標)方法によって、前桑実胚期胚、例えば、8細胞期マウス胚に導入される(例えば、米国第7,576,259号、米国第7,659,442号、米国第7,294,754号、及び米国第2008−0078000 A1号を参照されたい)。遺伝子修飾ES細胞を含むマウス胚は、胚盤胞期までインキュベートされ、次いで、代理母に着床されて、ドナーES細胞に完全に由来するF0マウスを生産する。ドナーES細胞に完全に由来するF0マウスは、特異的な遺伝子配列の存在を検出する対立遺伝子アッセイの修飾を使用した遺伝子型判定によって同定される。
【0386】
実施例3:ジンクフィンガーヌクレアーゼと組み合わせた、3つのLTVECを用いたTCRアルファ遺伝子座の標的化
3つの大型標的化ベクター(LTVEC)が単一の標的化ステップでゲノム遺伝子座を修飾するように、三重標的化系を設計した。
図4に示されるように、ハイグロマイシン選択カセットを含むマウス染色体上にTCRアルファ遺伝子座のヘテロ接合型修飾を有する細胞を、三重標的化系によって標的化して、追加のIgκ可変遺伝子セグメントを含むES細胞を生成した。
【0387】
図4に要約されるこの三重標的化アプローチは、標的遺伝子座において、又はその付近で二本鎖切断を行うエンドヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ又はCas9及びgRNA)をコードするヌクレオチド配列と一緒の、3つの異なる大型標的化ベクター(LTVEC)(MAID 6647、MAID 6600、及びMAID 1710)の、ES細胞への三重標的化又は共エレクトロポレーションを伴う。
【0388】
このアプローチでは、第1の大型標的化ベクター(MAID 1710と表記)は、ヒトVκ1−5及びVκ1−6遺伝子セグメントの配列を含む3’30kbホモロジーアームと、ヒトVκ3−7〜Vκ3−15遺伝子セグメントを含んだ120kb配列と、ヒトVκ1−16遺伝子セグメントを含んだ5’20kb領域(「重複領域」)と、を含んだ。第2の大型標的化ベクター(MAID 6600と表記)は、3’ 20kb重複領域(第1のベクターと同様に、ヒトVκ1−16遺伝子セグメントを含む領域)と、ヒトVκ1−17〜Vκ2−24遺伝子セグメントを含む140kb配列と、ヒトVκ3−25〜Vκ2−30を含んだ5’60kb領域(「重複領域」)と、を含んだ。第3の大型標的化ベクター(MAID 6647と表記)は、3’60kb重複領域(第2のベクターと同様に、ヒトVκ3−25〜Vκ2−30を含む領域)と、ヒトVκ3−31〜Vκ2−40を含む90kb配列と、FRT−Ub−Neo−FRT選択カセットと、15.5kb5’マウスTCR Aホモロジーアームと、を含んだ。
【0389】
標的TCR A遺伝子座における3つのLTVECの相同組み換えを促進するために、ハイグロマイシン耐性遺伝子内で標的配列を認識及び開裂する、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を設計した。
図4で生成されたES細胞(全てのヒトJκセグメント及び4個の機能的ヒトVκ遺伝子セグメントに対してヘテロ接合のMAID 6548)を、ZFNの各半分(1/2)を発現させる上記の3つの大型標的化ベクター(MAID6600トリミング、MAID1700トリミング、及びMAID6647)及び2つのプラスミドでエレクトロポレーションし、それは、ハイグロマイシン耐性遺伝子中の認識配列に結合し、標的部位における二本鎖切断に触媒作用を及ぼす(TGCGATCGCTGCGGCCGAtcttagCCAGACGAGCGGGTTCGG(配列番号2)(開裂部位は小文字)(表1を参照されたい)。
【0390】
3つの大型標的化ベクターを相同組み換えによってDNA配列に挿入し、Hyg選択カセットを含み、これを包囲する領域を置き換えた。得られたES細胞は、内在性TCR A遺伝子座において、ヒトJκ1〜Jκ5及びVκ4−1〜Vκ2−40遺伝子セグメントを含む、ヒト免疫グロブリン可変領域を含んだ。上記のTAQMAN(登録商標)アッセイを用いて、
図4に示され、かつ上記の表2及び以下の6に列挙されるプローブ及びプライマー(GOA=対立遺伝子の獲得、LOA=対立遺伝子の欠失、コピー数=形質転換組み込み対標的化組み込みを追跡するために配列のコピー数を調査する、hArm1=第1の標的化ベクター(MAID 1710)の30kb3’ホモロジーアーム、hArm2=第1(MAID 1710)及び第2(MAID 6600)の大型標的化ベクターの20kb重複、hArm3=第2(MAID 6600)及び第3(MAID6647)の標的化ベクターの60kb重複、mArm=第3の標的化ベクター(MAID 6647)の15.5kb5’ホモロジーアーム、WTマウス対照−マウスTCR A遺伝子座に存在する配列)を使用して、3つの大型標的化ベクターの組み込みの成功を確認した(参照により本明細書に組み込まれる、Lie and Petropoulos,1998.Curr.Opin.Biotechnology 9:43〜48)。アーム特異的アッセイとも称される、LTVECのホモロジーアーム中の配列を認識するリアルタイムPCRアッセイを使用して、マウスゲノムへのLTVECの正確な標的化を検証した。これらのアーム特異的アッセイのコピー数を決定することは、マウスプローブ(mArm)に対して2つのコピー数及びヒトプローブ(hArm1)に対して1つのコピー数を保持した、正確に標的化されたESクローンを、標的マウス遺伝子座のCas9誘発欠失がゲノム中の別の場所のLTVECのランダム組み込みと同時に起きる(その場合、マウスプローブ(mArm)に対して3(又はそれよりも多く)のコピー数及びヒトプローブ(hArm1)に対して2(又はそれよりも多く)のコピー数がある)クローンと区別するのに役立つための更なる明確化を提供した。所望の遺伝子座への相同組み換えによる3つのLTVECの正確な集合を検出するために、我々は、アーム特異的TAQMAN(登録商標)アッセイを利用した。hArm2及びhArm3に対して予測されたコピー数、1は、3つ全てのLTVECが単一の構築物に集合したことを示した。
【0391】
【表6】
【0392】
得られた、ES細胞中の標的化遺伝子座は、以下の接合配列を有した(マウス配列は丸括弧で囲まれ、ヒト配列は通常フォントであり、マルチクローニング部位は太字であり、Frt配列はイタリック体である(表7))。
【0393】
【表7】
【0394】
単離されたES細胞コロニーの対立遺伝子の修飾(MOA)スクリーニングは、0.4%の標的化効率をもたらした(表8を参照されたい)。
【0395】
【表8】
【0396】
上記の標的化ES細胞は、ドナーES細胞として使用され、VELOCIMOUSE(登録商標)方法によって、前桑実胚期胚、例えば、8細胞期マウス胚に導入される(例えば、米国第7,576,259号、米国第7,659,442号、米国第7,294,754号、及び米国第2008−0078000 A1号を参照されたい)。ドナーES細胞を含むマウス胚は、胚盤胞期までインキュベートされ、次いで、代理母に着床されて、ドナーES細胞に完全に由来するF0マウスを生産する。キメラヒトIgK V−マウスTcra C遺伝子を独立して有するドナーES細胞に完全に由来するF0マウスは、特異的な遺伝子配列の存在を検出する対立遺伝子アッセイの修飾を使用した遺伝子型判定によって同定される。
【0397】
実施例4:CRISPR/Cas系と組み合わせた3つのLTVECを使用したハイグロマイシン遺伝子の標的化
ジンクフィンガーヌクレアーゼを採用する実施例3に記載される三重標的化方法もまた、CRISPR/Cas9系を用いて実施した。
【0398】
様々なガイドRNA(gRNA)を、ハイグロマイシン耐性遺伝子内の様々な標的配列を(CRISPR認識配列)を認識するように設計した。ハイグロマイシン遺伝子内のCRISPR認識配列は以下の通りであった。gRNA#1:ACGAGCGGGTTCGGCCCATTCGG(配列番号70)、gRNA#6:CTTAGCCAGACGAGCGGGTTCGG(配列番号71)、gRNA#10:GCCGATCTTAGCCAGACGAGCGG(配列番号72)、及びgRNA#16:CGACCTGATGCAGCTCTCGGAGG(配列番号73)。ハイグロマイシン遺伝子内の認識配列の位置は、
図3に示される。gRNA#1、gRNA#6、gRNA#10、及びgRNA#16をスクリーニングし、ハイグロマイシン遺伝子を特異的に標的化することが確認された(
図3及び表5を参照されたい)。
【0399】
MAID 6548 ES細胞(全てのヒトJκセグメント及び4個の機能的ヒトVκ遺伝子セグメントに対してヘテロ接合)を、ハイグロマイシン耐性遺伝子内の標的部位を認識及び開裂するCas9及びgRNA#16をコードするベクターと一緒に、実施例3に記載の3つの大型標的化ベクターでエレクトロポレーションした。
【0400】
3つの大型標的化ベクターを相同組み換えによってDNA配列に挿入し、Hyg選択カセットを含み、これを包囲する領域を置き換えた。3つの大型標的化ベクターの組み込みの成功を、実施例3に記載のTAQMAN(登録商標)アッセイを使用して確認した。
【0401】
得られた、ES細胞中の標的化遺伝子座は、表7に示される接合配列を有した(マウス配列は丸括弧で囲まれ、ヒト配列は通常フォントであり、マルチクローニング部位は太字であり、Frt配列はイタリック体である)。
【0402】
単離されたES細胞コロニーの対立遺伝子の修飾(MOA)スクリーニングは、0.4%の標的化効率をもたらした(表8を参照されたい)。
【0403】
上記の標的化ES細胞は、ドナーES細胞として使用され、VELOCIMOUSE(登録商標)方法によって、前桑実胚期胚、例えば、8細胞期マウス胚に導入される(例えば、米国第7,576,259号、米国第7,659,442号、米国第7,294,754号、及び米国第2008−0078000 A1号を参照されたい)。遺伝子修飾ES細胞を含むマウス胚は、胚盤胞期までインキュベートされ、次いで、代理母に着床されて、ドナーES細胞に完全に由来するF0マウスを生産する。ドナーES細胞に完全に由来するF0マウスは、特異的な遺伝子配列の存在を検出する対立遺伝子アッセイの修飾を使用した遺伝子型判定によって同定される。
【0404】
実施例5:2つのLTVEC間の重複配列を介したLTVEC標的化の強化
実施例1に記載の二重標的化系を採用して、2つの大型標的化ベクター(LTVEC)を使用して、単一の標的化ステップでゲノム遺伝子座を修飾した。
図1に示されるように、ハイグロマイシン選択カセットを含むマウス染色体14上にTCRアルファ遺伝子座のヘテロ接合型修飾を有する細胞を、二重標的化系によって標的化して、追加のIgκ可変遺伝子セグメントを含むES細胞を生成した。2つの異なるLTVECを、マウス胚性幹(ES)細胞中に一緒に共エレクトロポレーションした。任意に、エンドヌクレアーゼ(ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又はCRISPR−Cas9のいずれか)をコードする核酸を共エレクトロポレーションして、標的遺伝子座において、又はその付近で二本鎖切断を行った。
【0405】
実施例1にあるように、LTVEC(MAID 1710と表記)は、ヒトVκ1−5及びVκ1−6遺伝子セグメントの配列を含んだ3’30kbホモロジーアームと、ヒトVκ3−7〜Vκ3−15遺伝子セグメントを含んだ120kb配列と、ヒトVκ1−16遺伝子セグメントを含んだ5’20kb領域(「重複領域」)と、を含んだ。第2のLTVEC(MAID 6600と表記)は、3’20kb重複領域(第1のベクターと同様に、ヒトVκ1−16遺伝子セグメントを含む領域)と、ヒトVκ1−17〜Vκ2−30遺伝子セグメントを含む140kb配列と、FRT−Ub−Neo−FRT選択カセットと、15.5kb3’マウスTCR Aホモロジーアームと、を含んだ。
【0406】
標的化の成功は、DNA配列への相同組み換えによって2つのLTVECの挿入をもたらし、Hyg選択カセットを含み、これを囲む領域を置換した。得られたES細胞は、内在性TCR A遺伝子座において、ヒトJκ1〜Jκ5及びVκ4−1〜Vκ2−30遺伝子セグメントを含む、ヒト免疫グロブリン可変領域を含んだ。上記のTAQMAN(登録商標)アッセイを用いて、2つの大型標的化ベクターの組み込みの成功を、
図1及び表2に示されるプローブ及びプライマーを使用して、確認した(参照により本明細書に組み込まれる、Lie and Petropoulos,1998.Curr.Opin.Biotechnology 9:43〜48)。
【0407】
比較として、実施例1に記載の単一のLTVEC系も採用して、単独で、又はZFN又はCRISPR−Cas9と組み合わせてのいずれかで、単一のLTVECを使用して同じゲノム遺伝子座を修飾した(
図2を参照されたい)。組み込みの成功を、上記のTAQMANアッセイを用いて、上記の表2に列挙され、かつ
図2に示されるプライマー及びプローブを使用して確認した。
【0408】
表9は、単一のLTVECを使用した(単独で、ZFNと、若しくはCas9と)、2つのLTVECを同時に使用した(単独で、ZFNと、若しくはCas9と)、又は2つのLTVEC及び第3のLTVECを同時に使用した(単独で、ZFNと、若しくはCas9と)、標的化実験における標的化効率を比較する。表9に示される標的化効率は、表2のTAQMANプライマー及びプローブを使用した初期スクリーニング、確認スクリーニング、及び再確認スクリーニングを通じて正確に標的化されたことが決定された、スクリーニングされたESCクローンの割合である。単一のLTVECを単独で用いた標的化は、1.1%の正確に標的化されたクローンをもたらした。ZFNを用いた開裂は、単一のLTVECの標的化効率を4.4%まで増加させ、CRISPR−Cas9を用いた開裂は、単一のLTVECの標的化効率を5.5%まで増加させた。驚くべきことに、重複配列中で20kbを有する2つのLTVECを用いた標的化は、ヌクレアーゼを使用しなかったときでさえ、1.4%の標的化効率をもたらした。標的化効率は、ZFNを使用したときに2.81%まで増加し、Cas9を使用したときに1.6%まで増加した。
【0409】
【表9】
【0410】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法であって、
(a)前記標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、前記細胞に導入することと、
(b)長さが少なくとも10kbであり、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、長さが少なくとも10kbであり、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECとを、前記細胞に導入することであって、
前記第1のLTVECの前記第1の3’ホモロジーアームが、前記第2のLTVECの前記第2の5’ホモロジーアームに相同の第1の重複配列を有し、前記第1のLTVECの前記第1の5’ホモロジーアーム及び前記第2のLTVECの前記第2の3’ホモロジーアームが、前記標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、
前記標的ゲノム遺伝子座が、前記対応するゲノムセグメント間の前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、
(c)前記標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することと、を含む、方法。
(項目2)
前記第1の核酸挿入物及び前記第1の3’ホモロジーアーム、並びに前記第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームが、隣接する核酸の重複フラグメントであり、それが、前記標的ゲノム遺伝子座への前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み込みによって改質される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、又は両方が前記細胞の種とは異なる種由来である、項目1又は2に記載の方法。
(項目4)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、又は両方がヒト核酸である、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約50kb〜約500kb、約50kb〜約300kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、約275kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、又は約450kb〜約500kbである、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約100kb〜約500kbである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約300kbである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記標的化された細胞が、前記第1の核酸挿入物及び前記第2の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらが約5kb〜約500kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記第1のLTVECの前記第1の重複配列が、前記第2のLTVECの前記第1の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である、項目1〜8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記第1の重複配列の前記サイズが約1kb〜約70kbである、項目1〜9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記第1の重複配列の前記サイズが少なくとも10kb又は少なくとも20kbである、項目1〜10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、又は両方の前記標的ゲノム遺伝子座への組み込みが、
(a)前記標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、
(b)前記標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、及び
(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記第1のLTVEC及び前記第2のLTVECの組み合わせた使用が、単一LTVECの使用と比較して標的化効率性の増大をもたらす、項目1〜12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記標的化効率性の増大が少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記第1のLTVEC又は前記第2のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbである、項目1〜14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
細胞中の標的ゲノム遺伝子座を修飾するための方法であって、
(a)前記標的ゲノム遺伝子座内で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、前記細胞に導入することと、
(b)長さが少なくとも10kbであり、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の大型標的化ベクター(LTVEC)と、長さが少なくとも10kbであり、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2のLTVECと、長さが少なくとも10kbであり、第3の5’ホモロジーアーム及び第3の3’ホモロジーアームが隣接した第3の核酸挿入物を含む、第3のLTVECとを、前記細胞に導入することであって、
前記第1のLTVECの前記第1の3’ホモロジーアームが、前記第2のLTVECの前記第2の5’ホモロジーアームに相同の第1の重複配列を有し、前記第2のLTVECの前記第2の3’ホモロジーアームが、前記第3のLTVECの前記第3の5’ホモロジーアームに相同の第2の重複配列を有し、前記第1のLTVECの前記第1の5’ホモロジーアーム及び前記第3のLTVECの前記第3の3’ホモロジーアームが、前記標的ゲノム遺伝子座内の対応するゲノムセグメントに相同であり、
前記標的ゲノム遺伝子座が、前記対応するゲノムセグメント間の前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み込みによって修飾される、導入することと、
(c)前記標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物を含む標的化された細胞を選択することと、を含む、方法。
(項目17)
前記第1の核挿入及び前記第1の3’ホモロジーアーム、並びに前記第2の核酸挿入物及び第2の5’ホモロジーアームが、隣接する核酸の重複フラグメントであり、前記第2の核挿入及び前記第2の3’ホモロジーアーム、並びに前記第3の核酸挿入物及び第3の5’ホモロジーアームが、前記隣接する核酸の重複フラグメントであり、それは、前記標的ゲノム遺伝子座への前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み込みによって改質される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物のうちの1つ以上が前記細胞の種とは異なる種由来である、項目16又は17に記載の方法。
(項目19)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物のうちの1つ以上がヒト核酸である、項目16〜18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約50kb〜約700kb、約50kb〜約500kb、約50kb〜約300kb、約50kb〜約75kb、約75kb〜約100kb、約100kb〜125kb、約125kb〜約150kb、約150kb〜約175kb、約175kb〜約200kb、約200kb〜約225kb、約225kb〜約250kb、約250kb〜約275kb、約275kb〜約300kb、約300kb〜約350kb、約350kb〜約400kb、約400kb〜約450kb、約450kb〜約500kb、約500kb〜約550kb、約550kb〜約600kb、約600kb〜約650kb、又は約650kb〜約700kbである、項目16〜19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約100kb〜約700kbである、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物の組み合わせたサイズが約400kbである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記標的化された細胞が、前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物を一緒に含む、ゲノムDNAを含み、それらが約5kb〜約700kbに及ぶ組み合わせたサイズを有する、項目16〜19のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記第1のLTVECの前記第1の重複配列が、前記第2のLTVECの前記第1の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは99.9%同一であり、かつ/又は前記第2のLTVECの前記第2の重複配列が前記第3のLTVECの前記第2の重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは99.9%同一である、項目16〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記第1の重複配列の前記サイズが約1kb〜約70kbであり、かつ/又は前記第2の重複配列の前記サイズが約1kb〜約70kbである、項目16〜24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記第1の重複配列の前記サイズが少なくとも10kb若しくは少なくとも20kbであり、かつ/又は前記第2の重複配列の前記サイズが少なくとも10kb若しくは少なくとも20kbである、項目16〜25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記標的ゲノム遺伝子座への前記第1の核酸挿入物、前記第2の核酸挿入物、及び前記第3の核酸挿入物のうちの1つ以上の組み込みが、
(a)前記標的ゲノム遺伝子座における外因性配列の付加、
(b)前記標的ゲノム遺伝子座における内因性配列の欠失、あるいは、
(c)ノックイン、ノックアウト、点変異、ドメインスワップ、エクソンスワップ、イントロンスワップ、調節配列スワップ、遺伝子スワップ、又はこれらの組み合わせ、のうちの1つ以上をもたらす、項目16〜26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記第1のLTVEC、前記第2のLTVEC、又は前記第3のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約120kb、又は約120kb〜約150kbである、項目16〜27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記標的ゲノム遺伝子座における前記内因性配列の前記欠失が約5kb〜約10kb、約10kb〜約20kb、約20kb〜約40kb、約40kb〜約60kb、約60kb〜約80kb、約80kb〜約100kb、約100kb〜約150kb、約150kb〜約200kb、約200kb〜約300kb、約300kb〜約400kb、約400kb〜約500kb、約500kb〜約600kb、約600kb〜約700kb、又は約700kb〜約800kbである、項目12又は27に記載の方法。
(項目30)
細胞中の標的ゲノム遺伝子座における相同組み換えを強化するための方法であって、第1の核酸及び第2の核酸を前記細胞に導入することを含み、前記第1及び前記第2の核酸が重複ヌクレオチド配列を含む、方法。
(項目31)
相同組み換えが、ヌクレアーゼ剤の使用なしで前記標的ゲノム遺伝子座において強化される、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記標的ゲノム遺伝子座において、又はその付近で一本鎖又は二本鎖切断を行うヌクレアーゼ剤を、前記細胞に導入することを更に含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記ヌクレアーゼ剤が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はメガヌクレアーゼである、項目1〜29及び32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質と、ガイドRNA(gRNA)とを含む、項目1〜29及び32のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記Casタンパク質は、Cas9である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記方法が、前記標的ゲノム遺伝子座における前記第1の核酸、前記第2の核酸、又は両方の前記相同組み換えを強化する、項目30〜35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記相同組み換えの前記強化が少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記第1の核酸の前記重複配列が、前記第2の核酸の前記重複配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%同一である、項目30〜37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記重複配列が約1kb〜約70kbである、項目30〜38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記重複配列が少なくとも20kbである、項目30〜39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記第1の核酸が、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、標的化ベクターであり、前記第2の核酸が、前記重複配列を除いて、前記標的ゲノム遺伝子座に相同であるヌクレオチド配列を含まない、項目30〜40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記第1の核酸が、第1の5’ホモロジーアーム及び第1の3’ホモロジーアームが隣接した第1の核酸挿入物を含む、第1の標的化ベクターであり、前記第2の核酸が、第2の5’ホモロジーアーム及び第2の3’ホモロジーアームが隣接した第2の核酸挿入物を含む、第2の標的化ベクターである、項目30〜40のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記第1の標的化ベクターが、約20kb〜約200kbに及ぶ第1の大型標的化ベクター(LTVEC)である、項目41又は42に記載の方法。
(項目44)
前記第2の標的化ベクターが、約20kb〜約200kbに及ぶ第2の大型標的化ベクター(LTVEC)である、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記第1のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が10kb〜約200kbである、項目43又は44に記載の方法。
(項目46)
前記第2のLTVECの前記5’及び前記3’ホモロジーアームの合計が10kb〜約200kbである、項目44又は45に記載の方法。
(項目47)
前記重複配列が、前記第1の核酸の前記3’末端及び前記第2の核酸配列の前記5’末端に位置する、項目30〜46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記重複ヌクレオチド配列が、前記標的ゲノム遺伝子座への組み換え機構の誘引を促進する、項目30〜47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記細胞がヒト細胞である、項目1〜48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記細胞が非ヒト細胞である、項目1〜48のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記細胞が多能性細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、又は線維芽細胞である、項目1〜50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記多能性細胞が胚性幹(ES)細胞又は人工多能性幹(iPS)細胞である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記細胞が哺乳類細胞である、項目50〜52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記哺乳類細胞がげっ歯類細胞である、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記げっ歯類がマウス又はラットである、項目54に記載の方法。
(項目56)
F0世代非ヒト動物を生産するための方法であって、
(a)非ヒト宿主胚に非ヒトES細胞を導入することであって、前記非ヒトES細胞が、項目1〜48及び50〜55のいずれか一項に記載の方法によって生産されたものである、導入することと、
(b)代理母において前記非ヒト宿主胚を懐胎させることと、を含み、
前記代理母が、前記修飾を含む前記F0世代非ヒト動物を生産する、方法。
(項目57)
前記非ヒト動物がマウス又はラットである、項目56に記載の方法。