(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のVCSELウエハであって、前記歪補償層は、ニッケル−クロム(NiCr)層、プラチナ(Pt)層、またはクロム(Cr)層である、VCSELウエハ。
請求項4に記載のVCSELウエハであって、前記歪補償層と前記アノード層の少なくとも一部との間の接着の促進に関連する接着層が、前記歪補償層と前記アノード層の少なくとも一部との間に配置される、VCSELウエハ。
請求項4に記載のVCSELウエハであって、前記歪補償層は、前記歪補償層に関連する電気抵抗を減少または最小化するために、前記アノード層の一部と部分的にオーバーラップしている、VCSELウエハ。
請求項1に記載のVCSELウエハであって、前記歪補償層は、前記VCSELウエハのVCSELによって光を放出する開口部を含むようにパターニングされている、VCSELウエハ。
請求項10に記載のVCSELウエハであって、前記歪補償層の厚さは、前記歪補償層によって提供され、前記開口部によって引き起こされる、歪補償の減少を補償するように選択される、VCSELウエハ。
請求項1に記載のVCSELウエハであって、前記歪補償層の一体化された応力−厚さの積は、少なくとも約400メガパスカル−メートル(MPa−m)である、VCSELウエハ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の例示的な実施形態の詳細な説明は、添付図面を参照するものである。異なる図面において、同じ参照番号は同一もしくは類似の要素を示している。以下に記載する実施形態は単なる例示であって、これらの実施形態を開示の正確な形態に限定することを意図するものではない。むしろ、これらの実施形態は、当業者がこれらの実施形態を実施できるように説明のために選択されたものである。以下の詳細な説明では、VCSELという用語は、別段の記載がない限り、単一のVCSELまたはVCSELアレイと同義で使用される。更に、層は、単一のVCSELに関連するか、または単一のVCSELによって使用されるものとして説明されているが、いくつかの実施形態では、VCSEL層は、VCSELアレイ内のVCSEL(複数)によって共有されていてもよい。例えば、アノード層およびカソード層は、(例えば、各VCSELが、別の隣接するVCSELのアノード層およびカソード層とは別個のアノード層およびカソード層を有するように)単一のVCSELに関連するか、または単一のVCSELによって使用されるように記載されているが、いくつかの実施形態において、(例えば、VCSELウエハ上に形成されたダイ内の)VCSELアレイのうち2つ以上のVCSELは、共通のアノード層または共通のカソード層を共有してもよい。
【0008】
製造中に、例えば、ダイの分離を容易にするために、VCSELウエハ(例えば、複数の個々のVCSELを含むウエハ)を薄型化することができる。例えば、VCSELウエハは、VCSELウエハが約70マイクロメートル(μm)〜約300μmの範囲の厚さを有するように薄型化することができる。
【0009】
しかしながら、薄型化されたVCSELウエハは、エピタキシャル層、誘電体層、金属層等のVCSELウエハのうち1つ以上の層に関連する歪みによる反りを経験し得る。例えば、従来の材料(例えば、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)エピタキシャル層、窒化ケイ素(SiNx)誘電体層、チタン(Ti)/プラチナ(Pt)/金(Au)アノード、ヒ化ガリウム(GaAs)基板、金−ゲルマニウム(Au−Ge)裏面カソード等)を使用して製造する場合、直径が6インチ(例えば、約15.24センチメートル(cm))のVCSELウエハは、約100μmまで薄型化した後、1cm以上反る場合がある。このような反りは、VCSELウエハを脆弱化し、または、破損の危険なしに取り扱い、輸送または試験するのを困難にする。対照的に、製造プロセス中に使用される(例えば、約400μm〜約700μmの厚さを有する)「厚型」ウエハは、同量の上面側および底面側の歪みに対して、反りがより少なくなる。
【0010】
VCSELウェハは、典型的なVCSELウェハの(例えば、AlGaAsからなる)エピタキシャル層がより厚く、端面発光レーザまたは電界効果トランジスタ用の、一部の他のタイプのAlGaAs/GaAsウェハよりも高い平均Alモル分率を有する故に、特定の課題を提示する。例えば、典型的なVCSELウエハのエピタキシャル層(例えば、GaAs基板上に成長させたAlGaAsエピタキシャル層)は、約10μmの厚さと約50%以上の平均Alモル分率を有する(例えば、Alモル分率は、エピタキシャル層の低屈折率層では70%超となり得る)一方で、一部の他のタイプのAlGaAs/GaAsウエハのエピタキシャル層は、数μmの厚さを有し、平均Alモル分率が50%未満となり得る。GaAs基板上に成長させた場合、AlGaAsは圧縮応力がかかる故に、エピタキシャル層はVCSELウエハの一体化された歪みの大部分を占め、従って、VCSELウエハの大部分に反りを生じさせる。このように、一体化された歪みおよびその結果として生じるウエハの反りは、VCSELウエハにとって特に懸念されるものである。
【0011】
AlGaAs基板が容易に入手可能であり、そのようなAlGaAs基板上に高品質のエピタキシャル層を成長させることができれば、このような歪みおよび反りは問題ではなくなる。しかしながら、AlGaAs基板は(例えば、商業的に)容易に入手可能ではなく、そのような基板が入手可能であったとしても、AlGaAs基板の表面上にアルミニウムが存在することにより、(例えば、AlGaAs基板表面を空気に曝露した際の結果として生じるAlGaAs基板表面上の薄い表面酸化物の形成による)エピタキシャル層の成長に伴う複雑性が増す。
【0012】
更に、VCSELウエハの反りの問題は、(例えば、選択エッチングを用いて)VCSELウエハからGaAs基板を除去することによって、潜在的に解決することができる。しかしながら、GaAs基板を除去すると、約10μmの厚さを有する、極めて脆弱なAlGaAsVCSELウエハとなり得る。更に、VCSELウエハの反りの問題は、エピタキシャル材料の一部を除去するか、またはエピタキシャル材料内に細く、密接したスロット(例えば、約200μm未満だけ離間したスロット)を設けることによって、潜在的に解決することができる。しかしながら、(例えば、約60μm未満の間隔を有する)VCSELアレイ内のVCSELの近接した間隔を可能にするためには、実質的に平坦な表面が必要となる。
【0013】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、薄型化されたVCSELウエハの反りを制御(例えば、低減、補償等)するためのVCSEL設計を提供することによって、VCSELウエハの脆弱性を低減し、および/または(例えば、従来のVCSELウエハと比較して)破損のリスクを低減しつつ、薄型化されたVCSELウエハの取り扱い、輸送、試験等をより容易にする。特に、本明細書に記載された設計によって対処されるウエハの反りは、VCSELウエハ製造の中間ステップの間に経験される(例えば、基板が約300μm超の厚さを有する場合に経験される)反りではなく、薄型化された(例えば、完成した)VCSELウエハによって経験される反りである。
【0014】
更に、本明細書に記載の設計は、VCSELの文脈で説明されているが、これらの設計は、発光ダイオード(LED)等の別のタイプのエミッタおよび/または光学デバイス、または別のタイプの垂直照射(例えば、上部発光型または下部発光型)光学デバイスに適用してもよい。更に、本明細書に記載の設計は、VCSEL、他のタイプのエミッタ、および/または任意の波長、パワーレベル、エミッションプロファイル等の他のタイプの光学デバイスに適用することができる。換言すると、本明細書に記載の設計は、VCSEL、他のタイプのエミッタ、または所与の性能特性を有する光学デバイスに特定されるものではない。
【0015】
図1A〜
図1Gは、薄型化されたVCSELウエハの反りを制御するための多様な例示的なVCSEL設計に関連する断面図である。
【0016】
図1Aは、基板のエピタキシャル側に歪補償層を含む、薄型化されたVCSELウエハの反り制御に関連する、第1の例示的なVCSEL設計の断面図である。
【0017】
図1Aに示すように、第1の例示的なVCSEL設計は、裏面カソード層102、基板層104、エピタキシャル層106(例えば、
図1Bに更に詳細に示す)、誘電性パッシベーション/ミラー層118、オーミックコンタクト金属層120、アノード層122、およびエピタキシャル側歪補償金属層124(本明細書ではエピ側金属層124と称する)を含む。いくつかの実施形態では、VCSEL100は、一連の手順を使用して製造することができる。例えば、VCSEL100のうち1つ以上の層は、1つ以上の成長手順、1つ以上の堆積手順、1つ以上のエッチング手順、1つ以上の酸化手順、1つ以上の埋め込み手順、1つ以上のメタライゼーション手順等を用いて生成することができる。
【0018】
裏面カソード層102は、基板層104(例えば、
図1Aの基板層104の底面として示される、基板層104の裏面)に電気的にする電極層を含む。例えば、裏面カソード層102は、金−ゲルマニウム−ニッケル(AuGeNi)層、パラジウム−ゲルマニウム−金(PdGeAu)層等のアニールされた金属化層を含むことができる。
【0019】
基板層104は、VCSEL100のエピタキシャル層106を成長させた基板を含む。いくつかの実施形態では、基板層は、GaAs、リン化インジウム(InP)、および/または別のタイプの半導体材料のような半導体材料から形成することができる。
【0020】
エピタキシャル層106は、基板層104上に成長させた1セットの層を含む。例えば、エピタキシャル層106は、1対の反射器(例えば、一対の分布ブラッグ反射器(DBR)、1対の誘電体ミラー等)および能動利得媒体(本明細書では活性領域と称する)を含む光学共振器と、(例えば、光学的および/または電気的閉じ込め(optical and/or electrical confinement)のための)1つ以上のアパチャを形成するのに使用される1つ以上の層と、等を含むことができる。いくつかの実施形態では、エピタキシャル層106は、基板層104(例えば、GaAs基板)上に成長させた1セットのAlGaAs層を含むことができる。いくつかの実施形態では、有機金属化学蒸着(MOCVD)技術、分子線エピタキシー(MBE)技術等を使用して、基板層104上にエピタキシャル層106を成長させることができる。いくつかの実施形態では、エピタキシャル層106は、約7μm〜約16μmの範囲、例えば8μmまたは10μmの厚さを有することができる。以下で更に詳述するように、エピタキシャル層106は、エピ側金属層124によって補償される基板層104上に成長させた場合、圧縮歪みがかかり得る。
【0021】
図1Aに示すように、また
図1Bを参照すると、VCSELのエピタキシャル層106は、下部ミラー108、活性領域110、(酸化アパチャ132を画定する)酸化層112、上部ミラー114、および分離材料116を含む。
【0022】
下部ミラー108は、VCSEL100の光学共振器の下部反射器を含む。例えば、下部ミラー108は、分布ブラッグ反射器(DBR)、誘電体ミラー等を含むことができる。いくつかの実施形態では、下部ミラー108は、約3.5μm〜約9μmの範囲、例えば5μmの厚さを有することができる。
【0023】
活性領域110は、電子および正孔が再結合して光を放出し、VCSEL100の発光波長範囲を画定する1つ以上の層を含む。例えば、活性領域110は、1つ以上の量子井戸を含むことができる。活性領域110は、DBRミラー114とDBRミラー108との間にキャビティスペーサ層も含む。活性領域110の光学的厚さ(キャビティスペーサ層を含む)並びにDBRミラー114および108の光学的厚さは、レージングを可能にするように活性領域の発光波長範囲内に設計されたVCSEL100の共振キャビティ波長を画定する。いくつかの実施形態では、活性領域110は、約0.06μm〜約0.5μmの範囲、例えば0.15μmまたは0.30μmの厚さを有することができる。
【0024】
酸化層112は、光学的および電気的閉じ込めを提供する酸化層を含む。いくつかの実施形態では、酸化層112は、1つ以上のエピタキシャル層の酸化の結果として形成されてもよい。例えば、酸化層112は、エピタキシャル層(例えば、AlGaAs層、ヒ化アルミニウム(AlAs)層等)の酸化の結果として形成された酸化アルミニウム(Al
2O
3)層であってもよい。いくつかの実施形態では、酸化層112は、約0.007μm〜約0.04μmの範囲、例えば0.02μmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、VCSEL100の周囲にエッチングされた酸化トレンチ(図示せず)により、スチームをエピタキシャル層にアクセス可能とし、これにより酸化層112を形成する。図示するように、酸化層112は、酸化アパチャ132(例えば、光学活性アパチャ)を画定することができる。いくつかの実施形態では、酸化アパチャ132は、非円形形状であってもよいが、ほぼ同じ領域の円は、約1μm〜約300μmの範囲、例えば5μmまたは8μmの直径を有することができる。
【0025】
上部ミラー114は、VCSEL100の上部反射層を含む。例えば、上部ミラー114は、DBR、誘電体ミラー等を含むことができる。いくつかの実施形態では、上部ミラー114は、約2μm〜約6μmの範囲、例えば4μmの厚さを有することができる。
【0026】
分離材料116は、VCSEL100の電気的絶縁を提供する材料を含む。例えば、分離材料116は、水素注入材料または水素/プロトン注入材料等のイオン注入材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、分離材料116は、基板層104上に成長させた1つ以上のエピタキシャル層にイオン注入プロセスを適用することによって形成してもよい。いくつかの実施形態では、分離材料116は、約3μm〜約7μmの範囲、例えば5μmの厚さを有することができる。
【0027】
図1Aに戻ると、誘電性パッシベーション/ミラー層118は、保護パッシベーション層として作用する層および/または付加的なDBRとして作用する層を含む。例えば、誘電性パッシベーションミラー層は、(例えば、化学気相成長法を用いて)VCSEL100の1つ以上のエピタキシャル層106(例えば、分離材料116および上部ミラー114)上に堆積された1つ以上のサブ層(例えば、二酸化シリコン(SiO
2)層、SiNx層等)を含むことができる。いくつかの実施形態では、誘電性パッシベーション/ミラー層118は、約0.25μm〜約2.5μmの範囲、例えば1.5μmの厚さを有することができる。図示されるように、酸化アパチャ132上の誘電性パッシベーション/ミラー層118の一部は、光学アパチャ134(例えば、光を放出するアパチャ)を形成することができる。いくつかの実施形態では、光学アパチャ134は、酸化アパチャ132の直径によって画定され、また、付加的なアパチャは、モード選択のために誘電性パッシベーション/ミラー層118に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、光学アパチャ134は、約2μm〜約300μmの範囲、例えば15μmの直径を有することができる。更に図示されるように、誘電性パッシベーション/ミラー層118は、オーミックコンタクト金属層120への電気的アクセスを提供する(例えば、エッチングによって形成された)1つ以上の開口部を含むことができる。
【0028】
オーミックコンタクト金属層120は、電流を流すことができる半導体と電気的に接触する層を含む。オーミックコンタクト金属層120は、アニールされた金属化層を含むことができる。例えば、オーミックコンタクト金属層120は、電流を流すことができるクロム−金(Cr−Au)層、金−亜鉛(Au−Zn)、チタン−プラチナ−金(TiPtAu)層等を含むことができる。いくつかの実施形態では、オーミックコンタクト金属層120は、約0.03μm〜約0.3μmの範囲、例えば0.2μmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、オーミックコンタクト金属層120は、(例えば、
図1Dおよび
図1Eに示すように)リング形状、スロットリング形状、または(例えば、VCSEL設計に依存する)他のタイプの円形あるいは非円形形状を有することができる。図示しないが、いくつかの実施形態では、オーミックコンタクト金属層120は、オーミックコンタクト金属層120が酸化、エッチング等のために使用されるキャビティ上に、またはキャビティ内に延在しないように堆積させる。
【0029】
アノード層122は、(例えば、誘電性パッシベーション/ミラー層118内のビアを介して)オーミックコンタクト金属層120と電気的に接触するための1つ以上の電極層を含む。
図1Aに示されるように、VCSEL100において、アノード層122は、エピ側金属層124がアノード層122の2つの部分の間に配置されるように形成してもよい。例えば、アノード層122の第1部分は、誘電性パッシベーション/ミラー層118上に堆積され、続いてエピ側金属層124が堆積され、続いてアノード層122の第2部分が堆積される。いくつかの実施形態では、アノード層122の第1部分は、約0μm〜約0.5μmの範囲、例えば0.2μmの厚さを有することができる一方、アノード層122の第2部分は、約0.2μm〜約4μmの範囲、例えば2μmの厚さを有することができる。あるいは、別の設計では、アノード層122は、(例えば、アノード層122の部分の間に他の層が配置されないように)単一層であってもよい。一般的に、アノード層122は、少なくとも部分的に誘電性パッシベーション/ミラー層118内に埋め込まれてもよく、(例えば、誘電性パッシベーション/ミラー層がアノード層122の上面の任意の部分を被覆しないように)誘電性パッシベーション/ミラー層118上に配置されてもよく、(例えば、誘電性パッシベーション/ミラー層118の開口部が、エピ側金属層124の上面の一部上に形成されるように)誘電性パッシベーション/ミラー層118の第1部分上に配置され、かつ誘電性パッシベーション/ミラー層118の第2部分によって部分的に被覆される等してもよい。
【0030】
エピ側金属層124は、基板層104のエピタキシャル側に配置され、エピタキシャル層106(および/または圧縮歪みを受けた1つ以上の他のエピタキシャル側層VCSEL100)の歪みを補償する(例えば、部分的に補償する、完全に補償する、または過剰に補償する)金属層を含む。
図1Aに示すように、エピ側金属層124は、基板層104のエピタキシャル側(例えば、
図1Aにおいて基板層104の上面として示される、エピタキシャル層106が成長する基板層104の側面)上に配置することができる。例えば、
図1Aに示すように、いくつかの実施形態では、エピ側金属層124は、アノード層122の部分の間に配置されてもよい。
【0031】
上述したように、エピタキシャル層106は、圧縮歪みを受けていてもよい。エピタキシャル層106の圧縮応力を補償するために、基板層104のエピタキシャル側の層、または、基板層104の非エピタキシャル側(例えば、
図1Aにおいて基板層104の底面として示される、エピタキシャル層106が成長する側面とは反対の基板層104の側面)の層のいずれかの一体化された応力−厚さの積は、ほぼゼロに等しくなければならず、あるいは、エピタキシャル側の層の一体化された応力−厚さの積は、非エピタキシャル側の層の一体化された応力−厚さの積にほぼ等しくなければならない。これらの条件は、それぞれ、F
T=0およびF
B=0、並びにF
T=F
Bとして表すことができ、ここで、F
Tはエピタキシャル側の層の一体化された応力−厚さの積を表し、F
Bは非エピタキシャル側の層の一体化された応力−厚さの積を表す。F
TおよびF
Bは、以下のように計算することができる。
【数1】
【0032】
AlGaAsエピタキシャル層106の厚さに典型的な値(例えば、約10μm)を使用すると、エピタキシャル層106に関連する一体化された応力−厚さの積は、約400パスカルメートル(Pa−m)となり得る。従って、この圧縮歪みを(少なくとも部分的に)補償するために、かつ、(例えば、VCSELの全体の厚さに数マイクロメートル以下を追加することによって)過度な厚さが追加されるのを避けるために、エピタキシャル層106の応力を補償するのに使用される層の応力は、(例えば、200MPa×2μm=400Pa−mである故、)約200メガパスカル(MPa)以上であるべきである。
【0033】
VCSEL100に関して、(例えば、エピ側金属層124が基板層104のエピタキシャル側に配置される故、)エピ側金属層124は、エピタキシャル層106の圧縮歪みを補償するために、引張歪材料から構成されるべきである。
【0034】
いくつかの実施形態では、エピ側金属層124は金属層であってもよい。一般的に、金属は、AlGaAsおよびGaAs等の半導体材料の熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有し、堆積された場合、または(例えば、高温で)塑性変形した場合、(例えば、典型的な半導体材料の引張歪みと比較して)室温で引張歪みを受け得る。従って、いくつかの実施形態では、エピ側金属層124は、ニッケル−クロム(NiCr)、クロム(Cr)、あるいはプラチナ(Pt)または他のタイプの金属あるいは合金等の金属材料から形成されてもよい。
【0035】
蒸発したNiCrは、約500MPa〜約1000MPaの範囲の引張応力を有する。このように、エピ側金属層124がNiCrから形成される場合、エピ側金属層124は、(例えば、500MPa>200MPaである故、)エピタキシャル層106の圧縮歪みを少なくとも部分的に補償する。NiCrの引張応力は、Ni対Crの比に依存し、相対的に多量のNiは、NiCrの引張応力を低下させる。従って、エピ側金属層124のNi対Cr比により、エピ側金属層124の引張応力を画定することができる。いくつかの実施形態では、エピ側金属層124のNi対Cr比は、0〜6の範囲、例えば4である得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、上述の範囲の量の引張応力を提供するために、NiCrは、ブランケットフィルムの場合、約0.2μm〜約0.4μmの範囲の厚さを必要とし得る。しかしながら、この場合、光学アパチャ134を介して光を放出させるために、エピ側開口部から光を放出するVCSELを設ける必要がある。このような開口部を設けるために、エピ側金属層124をVCSEL100のウエハ上にパターニングしてもよい。しかしながら、エピ側金属層124のこのような開口部は、(例えば、開口部を有しないブランケット層と比較して)エピ側金属層124によって供給される歪補償量を減少させ得る。従って、いくつかの実施形態では、十分な歪補償を提供するために、エピ側金属層124は、(例えば、ブランケットフィルムと比較して)厚さを増加させる必要がある。例えば、歪補償を提供するために、NiCrエピ側金属層124は、約0.2μm〜約0.7μmの範囲、例えば0.3μmの厚さを有することができる。
【0037】
上述したように、Ptをエピ側金属層124として堆積してもよい。要求される応力の範囲および結果として得られる厚さは、堆積速度に応じてNiCrに類似している。Ptの場合、Pt下のTiの薄い層を用いて接着を促進させることができる(本明細書では接着層と称される)。いくつかの実施形態では、そのようなTi層は、約0.005μm〜約0.030μmの範囲、例えば0.010μmの厚さを有することができる。Ptは、p型GaAsとのTi/Pt/Auコンタクトの一部として使用される場合が多いが、歪補償に使用されるPtの厚さ範囲は、一般的に、厚さが0.02μm〜0.06μmの範囲にあり、かつ、半導体と混合する金に対する障壁として必要とされるコンタクト層において典型的に使用される厚さよりも大きくてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、
図1Aに示すように、エピ側金属層124が誘電性パッシベーション/ミラー層118に埋め込まれ、または、その上に配置されたアノード層122の一部と完全にオーバーラップするように、エピ側金属層124をパターニングしてもよい。あるいは、エピ側金属層124は、誘電性パッシベーション/ミラー層118に埋め込まれ、またはその上に配置されたアノード層122の一部と部分的にオーバーラップしてもよい。
図1Cは、VCSEL100の代替的な設計の図であり、ここで、エピ側金属層124は、誘電性パッシベーション/ミラー層118に埋め込まれたアノード層122の一部に部分的にオーバーラップしている。いくつかの実施形態では、このような部分的なオーバーラップを有するエピ側金属層124を形成することにより、例えば、エピ側金属層124を、アノード層122およびオーミックコンタクト金属層120からエピタキシャル層106への直接的な電流経路の外に保持することによって、エピ側金属層124によって誘発されるVCSEL100の電気抵抗を(例えば、
図1Aに示す設計と比較して)減少または最小化することができる。いくつかの実施形態では、このような部分的なオーバーラップは、エピ側金属層124がアノード層122の第1の部分上にパターニングされる領域を減少させることによって達成することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、エピ側金属層124は、アノード層122の部分上、誘電性パッシベーション/ミラー層118の部分上等にパターニングされてもよい。いくつかの実施形態では、エピ側金属層124は、リフトオフ工程、エッチング工程等を使用してパターニングすることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、エピ側金属層124が、VCSEL100のデバイス特性(例えば、電気光学特性)を妨害することなく、可能な限り最大の領域を被覆するように、エピ側金属層124をパターニングすることができる。このような特性は、例えば、電流対電圧応答、光強度対電流応答、光対電流の発散特性(例えば、遠視野)、放出される光のパターン(例えば、近接場)、レーザ発振波長、印加された電流の変調下でのこれらの特性の変化、これらの特性の温度による変化等を含むことができる。
【0041】
例えば、エピ側金属層124が、ウエハ上のVCSEL100の動作に影響を与えることなく、VCSEL100のウエハの大部分の表面を被覆するように、エピ側金属層124をパターニングすることができる。特定の例として、エピ側金属層124がオーミックコンタクト金属層120のいずれの部分も被覆しないように、エピ側金属層124をパターニングしてもよい。
図1Dは、エピ側金属層124がオーミックコンタクト金属層120のいずれの部分も被覆しないように、エピ側金属層124をパターニングした、共通のアノードを有する個別のVCSELアレイの上面図である。
図1Dのアレイにおける所与の個々のエミッタは、
図1Cに示されるものと同様の断面図を有することができる。エピ側金属層124とオーミックコンタクト金属層120との間の関係を説明するために、他の層(例えば、誘電性パッシベーション/ミラー層118、アノード層122等)の部分は、
図1Dには図示していない。
図1Dに示すように、エピ側金属層124が、(VCSELウエハ上のアノード層122の一部と同じ領域を被覆しつつ)オーミックコンタクト金属層120のいずれの部分も被覆しないように、エピ側金属層124をパターニングしてもよい。いくつかの実施形態では、このようなパターニングにより、(例えば、エピ側金属層124によって導入される抵抗を低減または最小化することによって)エピ側金属層124がVCSEL100の特性を妨害するのを防ぐ。
【0042】
別の例として、エピ側金属層124が、オーミックコンタクト金属層120を少なくとも部分的に被覆するように(例えば、エピ側金属層124がアノード層122と実質的に同一の領域を被覆するように)エピ側金属層124をパターニングしてもよい。
図1Eは、エピ側金属層124がオーミックコンタクト金属層120を少なくとも部分的に被覆するように、エピ側金属層124をパターニングした、共通のアノードを有する個々のVCSELアレイの上面図である。
図1Eのアレイにおける所与の個々のエミッタは、
図1Aに示されるものと同様の断面図を有することができる。エピ側金属層124とオーミックコンタクト金属層120との間の関係を説明するために、他の層(例えば、誘電性パッシベーション/ミラー層118、アノード層122等)の部分は、
図1Eには図示していない。
図1Eに示されるように、エピ側金属層124が、オーミックコンタクト金属層120を少なくとも部分的に被覆するように、エピ側金属層124をパターニングすることができ、(エピ側金属層124の下にある)所定のVCSEL100に関連するオーミックコンタクト金属層120の範囲は、
図1Eにて破線の円として示されている。いくつかの実施形態では、エピ側金属層124がアノード層122と実質的に同一の領域を被覆するように、エピ側金属層124をパターニングしてもよい。あるいは、エピ側金属層124が、オーミックコンタクト金属層120を少なくとも部分的に被覆しつつ、アノード層122によって被覆された領域よりも小さい領域を被覆するように、エピ側金属層124をパターニングしてもよい。いくつかの実施形態では、エピ側金属層124が、アノード層122とオーミックコンタクト金属層120との間の抵抗量を著しく変化させない場合、エピ側金属層124は、オーミックコンタクト金属層120を部分的に被覆することができる。
【0043】
いくつかの実施形態(例えば、
図1Dおよび
図1Eに関連して記載した実施形態)では、プロセスアライメント公差を可能にするために、エピ側金属層124の端縁が、アノード層122の端縁および/またはオーミックコンタクト金属層120の端縁から特定の距離に配置されるように、エピ側金属層124をパターニングしてもよい。例えば、VCSEL100のウエハの製造に関連するプロセスアライメント公差を可能にするために、エピ側金属層124を、アノード層122の端縁および/またはオーミックコンタクト金属層120の端縁から約1μm〜約3μmの範囲の距離にてパターニングしてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、エピ側金属層124は、少なくとも部分的に誘電性パッシベーション/ミラー層118内に埋め込まれてもよい。
図1Fおよび
図1Gは、エピ側金属層124が誘電性パッシベーション/ミラー層118に埋め込まれたVCSEL100の代替的な設計図である。VCSELウエハ上のVCSELがアノード層122を共有している場合、所与のVCSEL100のエピ側金属層124が、
図1に示すように、VCSELの端縁まで延在しないように、エピ側金属層124をパターニングしてもよい。あるいは、
図1Gに示すように、VCSELウエハ上のVCSEL100が別個のアノード層122を有する場合、エピ側金属層124が所与の一対のVCSEL100の間の領域を被覆するように、エピ側金属層124をパターニングしてもよい。換言すると、いくつかの実施形態では、カバー範囲を最大化し、および/またはウエハの反り補償に必要な膜応力を最小化するために、アノード層122の部分間の領域を完全に被覆するように、エピ側金属層124をパターニングしてもよい。
【0045】
図1Fおよび
図1Gに示すような設計を生成するために、いくつかの実施形態では、エピ側金属層124を製造プロセスの比較的初期に(例えば、分離材料116の形成に関連するイオン注入の前に)堆積させる場合、エピ側金属層124は、その後のイオン注入の障壁となり得る。従って、いくつかの実施形態では、エピ側金属層124を製造プロセスの比較的後期に(例えば、イオン注入後に)堆積させてもよい。
【0046】
図1Fおよび
図1Gに示される実施形態では、アノード層122と裏面カソード層102との間の寄生容量がより大きくなり、また、アノード層122の個々の部分間の寄生容量が大きくなる場合がある。この増加により、VCSELの応答が遅くなり、かつ、個々のアノード層122の間の電気的クロストークが増加する可能性がある故に、変調速度が比較的高い用途では問題となり得る。例えば、VCSEL100アレイまたはVCSEL100のアノード層122の一部と、アノード層122の部分の下のエピ側金属層124の一部と、について考える。ここで、アノード層122の部分の下のエピ側金属層124の部分は、アノード層122の部分の下ではない、エピ側金属層124の比較的大きな面積に電気的に接続されており、続いて、アノード層122の部分と裏面カソード層102との間のキャパシタンスが、(例えば、何らかのエピ側金属を有しない設計のキャパシタンスと比較して、)増加する。更に、アノード層122の第1部分の下のエピ側金属層124が、アノード層122の第2部分の下にあるエピ側金属層124の別の部分に電気的に接続されている場合、アノード層122の2つの部分の間における寄生容量を、(例えば、エピ側金属を有しない設計と比較して)大幅に増加させることができる。特に、アノード層122内に配置されたエピ側金属層124を有するVCSEL設計(例えば、
図1Aおよび
図1Cに示される設計)は、このような設計がエピ側金属を有しないアノードとほぼ同じ領域および配置を有する故に、この問題に直面しない。
【0047】
いくつかの実施形態では、アノード層122は、比較的厚い(例えば、1μm〜5μmの)金メッキを含むことができる。純金は容易に変形し、かつエピ側金属層124の歪みを著しく減少させ得る故、いくつかの実施形態では、エピ側金属層124をVCSEL100の任意のメッキ金属の下に配置することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、VCSEL100のウエハが反らないように、エピタキシャル層106の圧縮歪みを補償するよう、エピ側金属層124を設計することができる。あるいは、VCSEL100のウエハが特定量の反りを経験するように(例えば、僅かな残留歪みが残るように)、エピタキシャル層106の圧縮歪みを部分的に補償または過補償するよう、エピ側金属層124を設計することができる。いくつかの実施形態では、過補償/補償不足の範囲は、エピタキシャル歪みを補償するのに必要な応力−厚さの約+/−30%以内であることができる。このような設計では、常に同じ方向に反って、最終的なウエハおよびデバイス構造の一部であるVCSEL100の他の層の歪み等を補償する故に、有利となり得る。例えば、VCSELウエハを真空チャック上に配置し、VCSELウエハを表面まで引っ張るためのプロセスを実施するとき、ウエハ検査に関連する自動化されたハンドリングツールを使用するとき等、VCSELウエハ間で結果として生じた同一の形状(例えば、凸状の反りではなく凹状の反り、凹状の反りではなく凸状の反り)を有することは、有利となり得る。このようにして、VCSEL100は、エピタキシャル層106によって導入される圧縮歪みを少なくとも部分的に補償するように設計され、それにより、VCSEL100の薄型化されたウエハが経験する反りの量を制御することができる。いくつかの実施形態では、エピ側金属層124は、(例えば、VCSELウエハがほぼ平坦であるか、または特定量の反りを経験するように、)VCSEL100の別の層、例えば、誘電性パッシベーション/ミラー層118、VCSEL100の別の金属層等の歪みを少なくとも部分的に補償するように設計することもできる。
【0049】
特に、従来のVCSELは、エピ側金属層124を含まない。換言すると、従来のVCSELは、VCSEL100のエピ側金属層124のような薄型化されたVCSELウエハの反り制御に関連する層を含まない。
図2は、従来のVCSEL設計200の断面図を示す図である。
【0050】
いくつかの実施形態では、VCSEL100の設計は、基板層104を通じて光を放射する(即ち、底部放射)VCSELに使用することができる。なぜなら、例えば、エピ側金属層124は、基板層104の非エピタキシャル側の金属層と同様に光を遮断しないからである。このような底部放射の場合、基板層104の非エピタキシャル側の誘電体層を使用することができるが、このような設計では、設計上の複雑さが増し、および/または、応力補償誘電体層の接着の維持に関連する課題により実施が困難である、付加的な反射防止コーティングが必要となるだろう。
【0051】
図1A〜
図1Gに示す層の数および配置は、一例として提供されるものである。実際には、VCSEL100は、
図1A〜
図1Gに示すよりも、更なる層、より少ない層、異なる層、異なるように配置された層、異なる厚さまたは相対的な厚さを有する層等を含むことができる。更に、
図1A〜
図1C、
図1Fおよび
図1Gに関連するVCSEL設計は、単一のエミッタの断面図を示しているが、これらの設計は、(例えば、共通のアノードおよび基板側カソードを有するまたは有しない)エミッタのアレイに適用してもよい。付加的または代替的に、VCSEL100の層のセット(例えば、1層以上)は、VCSEL100の別の層のセットによって実行されるものとして記載した1つ以上の機能をそれぞれ実行することができる。
【0052】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、薄型化されたVCSELウエハの反りを制御(例えば、低減、制御等)するためのVCSEL設計を提供することによって、VCSELウエハの脆弱性を低減し、および/または(例えば、従来のVCSEL設計を有するVCSELウエハと比較して)破損のリスクを低減しつつ、薄型化されたVCSELウエハの取り扱い、輸送、試験等をより容易にする。
【0053】
上記の開示は、図示および説明のために提示したものであり、網羅的であることを意図するものではなく、あるいは本発明を開示される正確な形式に限定することを意図するものでもない。上記の開示に照らして、変更および変形が可能であり、または実施形態の実践からの変更および変形が可能である。
【0054】
特定の特徴の組み合わせが請求の範囲に列挙されおよび/または明細書に開示されているが、これらの組み合わせは可能な実施形態の開示を限定するものではない。実際には、これらの特徴の多くは請求の範囲に明確に列挙されていないおよび/または明細書に開示されていない方法で組み合わせてもよい。以下に列挙される各従属請求項は一つの請求項にのみ直接従属してよいが、可能な実施形態の開示は、各従属請求項と請求の範囲内の全ての他の請求項との組み合わせも含むものである。
【0055】
本明細書で使用する要素、操作または指示は、特に明記されない限り、決定的または本質的と解釈されるべきである。また、冠詞「a」および「an」は1つ以上の要素を含むことが意図され、「1つ以上」と互換的に使用され得る。更に、本明細書で使用される「セット」とは、1つ以上の要素(例えば、関連要素、非関連要素、関連要素と非関連要素との組み合わせ等)を含むことが意図され、「1つ以上」と互換的に使用され得る。唯一の要素が意図される場合には、「1つ」または類似の用語が使用される。また、本明細書で使用する用語「有する(「has」,「have」,「having」)」等は、オープンエンデッドタームであることが意図されている。更に、語句「基づく」は、特に明記されない限り、「少なくとも部分的に基づく」を意味することが意図されている。