(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピレスロイド系化合物は、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、エムペントリン、プラレトリン、イミプロトリン、デルタメトリン、フェンバレレート、フルバリネート、エトフェンプロックス及びシラフルオフェンのいずれか1つ以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフラックス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような背景も鑑み、本発明は、はんだを用いる部材に対して、昆虫等を寄せ付けないようにするためのフラックス及びソルダーペーストを提供し、また昆虫等を寄せ付けない基板、電子機器及び基板製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるフラックスは、
はんだに用いられるフラックスであって、
樹脂、活性剤、溶剤及び忌避剤を含有し、
前記忌避剤は、前記溶剤に対して溶解性を有し、かつ前記溶剤内で所定の揮発性を有さなくてもよい。
【0007】
本発明によるフラックスにおいて、
前記忌避剤は昇華性を有さなくてもよい。
【0008】
本発明によるフラックスにおいて、
前記忌避剤はピレスロイド系化合物を含有してもよい。
【0009】
本発明によるフラックスにおいて、
前記ピレスロイド系化合物は、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、エムペントリン、プラレトリン、イミプロトリン、デルタメトリン、フェンバレレート、フルバリネート、エトフェンプロックス及びシラフルオフェンのいずれか1つ以上を含有してもよい。
【0010】
本発明によるフラックスにおいて、
前記忌避剤はエステル系溶剤を含有してもよい。
【0011】
本発明によるフラックスにおいて、
0.4重量%以上4重量%以下の忌避剤を含有してもよい。
【0012】
本発明によるフラックスにおいて、
80重量%以上の溶剤及び15重量%以下の樹脂を含有してもよい。
【0013】
本発明によるフラックスは、
はんだに用いられるフラックスであって、
80重量%以上の溶剤、15重量%以下の樹脂及び0.4重量%以上4重量%以下のピレスロイド系化合物を含有してもよい。
【0014】
本発明によるソルダーペーストは、
前述したフラックス及びはんだ合金を含んでもよい。
【0015】
本発明による基板は、
はんだ合金及び忌避剤を含有する導電性接合剤を有してもよい。
【0016】
本発明による電子機器は、
はんだ合金及び忌避剤を含有する導電性接合剤を有してもよい。
【0017】
本発明による基板製造方法は、
基板本体部に設けられた載置部に、前述したフラックスを塗布する工程と、
前記フラックスが塗布された載置部に溶融させたはんだ合金を設ける工程と、
前記はんだ合金に電子部品を設ける工程と、
を備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、はんだを用いる部材に対して、昆虫等を寄せ付けないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施の形態のフラックスは、はんだ合金をプリント配線基板等の基板に設ける際に利用されるものである。フラックスは、忌避剤、樹脂及び溶剤(溶媒)を含有してもよい。忌避剤は、溶剤に対して溶解性を有し、かつ溶剤内で所定の揮発性を有さないものが有益である。特にはんだ合金を基板等に設ける際にフラックスに高い熱が加わることから、忌避剤の揮発性が高いと忌避剤が気化して有意な量で残らないこととなってしまうことがある。このため、溶剤内で所定の揮発性を有さない忌避剤を採用することが有益である。なお、溶剤(溶媒)が必ずしも含まれている必要はなく、溶剤が含まれていない固形のフラックスも本実施の形態では提供される。
【0021】
忌避剤としては、昆虫に対して有意に効果を有する昆虫忌避剤等を用いることができる。フラックスに忌避剤を含有させることで、高い汎用性を実現できる点で有益である。つまり、はんだを導電性接合着剤として用いる態様において、フラックスを塗布するだけで忌避剤を付与することができ、非常に高い汎用性をもって忌避効果を実現できる。また、フラックスに忌避剤を含有させることで、従前と同じ工程で忌避効果を実現できる点でも有益である。つまり、忌避剤を別途追加する工程であれば、当該工程が追加で必要になってしまうところ、本実施の形態のようにフラックスに忌避剤を含有させることで、従前と同様の工程で忌避効果を実現できる点でも有益である。
【0022】
なお、忌避剤の沸点ははんだ合金の溶融温度よりも低くなってもよい。忌避剤の沸点がはんだ合金の溶融温度よりも低い場合には、溶融されたはんだ合金がフラックスを塗布した箇所に接触する際やはんだ合金を溶融させる際にフラックスに熱が加わり、忌避剤が気化してしまうことが想定される。このため、通常の当業者であれば、そのような忌避剤を利用できないと考えてしまう。しかしながら、この度、本願の発明者ははんだ合金の溶融温度よりも低い沸点からなる忌避剤を利用できることを見出し、特に忌避剤が後述するピレスロイド系化合物である場合には有益であることを見出したことは留意されるべきである。
【0023】
本実施の形態で用いられるはんだ合金は鉛を含有しない鉛フリーはんだであってもよいし、鉛を含有するものであってもよい。鉛を含有しないはんだ合金としては、Sn−In、Sn−Bi、In−Ag、In−Bi、Sn−Zn、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Sb、Sn−Au、Sn−Bi−Ag−Cu、Sn−Ge、Sn−Bi−Cu、Sn−Cu−Sb−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−Zn、Sn−Cu−Ag、Sn−Bi−Sb、Sn−Bi−Sb−Zn、Sn−Bi−Cu−Zn、Sn−Ag−Sb、Sn−Ag−Sb−Zn、Sn−Ag−Cu−Zn、Sn−Zn−Bi、Sn−Ag−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi等を用いることができる。なお、はんだ合金ははんだ粉末であってもよい。
【0024】
樹脂としては、ロジン系樹脂を用いてもよい。ロジン系樹脂としてはロジン及びその変性ロジン等の誘導体を用いることができる。なお、ロジン系樹脂の中には昆虫等を寄せ付ける性質を有するものがあることから、本実施の形態のような忌避剤が採用されることは昆虫等を寄せ付けない観点からは非常に有益である。
【0025】
活性剤は、有機酸、アミン、有機ハロゲン化合物、アミンハロゲン化合物水素酸塩、アミンハロゲン化合物及び有機リン化合物のいずれか1つ以上を活性剤として含有してもよく、これらの全部を含有してもよい。活性剤は、例えば、はんだ表面や、はんだ付けされる部材表面を覆っている金属酸化物を除去する除去作用を有している。活性剤は0.5重量%以上5重量%以下含むことが好ましい。
【0026】
忌避剤のフラックスにおける含有量は0.4重量%以上4重量%以下であってもよい。但し、忌避剤のフラックスにおける含有量が0.5重量%未満の場合には忌避効果が不十分な場合があった。また、忌避剤のフラックスにおける含有量が3重量%よりも大きくなると忌避剤が溶剤に溶解し難いことがあった。このため、より限定するのであれば、忌避剤のフラックスにおける含有量の下限値は0.5重量%であってもよく、忌避剤のフラックスにおける含有量の上限値は3重量%であってもよい。さらに、忌避剤のフラックスにおける含有量が1.0重量%未満の場合には期待するほどの忌避効果を得られないこともあった。このため、忌避剤のフラックスにおける含有量の下限値を1.0重量%とすることで、より確実に高い忌避効果を実現できる。以上のことから、忌避剤のフラックスにおける含有量は0.5重量%以上3重量%以下であることが有益であり、1.0重量%以上3重量%以下であることが非常に有益である。
【0027】
有機酸のフラックスにおける含有量は0重量%〜4重量%であってもよい。有機酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、パルミチン酸、フタル酸、ステアリン酸、セバシン酸等を用いることができる。
【0028】
アミンのフラックスにおける含有量は0重量%〜1重量%であってもよい。アミンとしては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ポリエーテルアミン、ポリオキシアルキレンアミン、ポリオキシエチレンアミン、ポリオキシプロピレンアミン、2−エチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノアルコール等を用いることができる。
【0029】
有機ハロゲン化合物のフラックスにおける含有量は0重量%〜1重量%であってもよい。有機ハロゲン化合物としては、例えば、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4ジオール等を用いることができる。
【0030】
アミンハロゲン化合物水素酸塩のフラックスにおける含有量は0重量%以上1重量%以下であってもよい。アミンハロゲン化水素酸塩のアミン化合物としては、エチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、イソプロピルアミン、ジフェニルグアニジン、シクロヘキシルアミン等を挙げることができ、ハロゲン化水素酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等を挙げることができる。そして、アミンハロゲン化水素酸塩の一例としては、エチルアミン臭化水素酸塩等を挙げることができる。
【0031】
有機リン化合物のフラックスにおける含有量は0重量%以上1重量%以下であってもよい。有機リン化合物としては、例えば、ジエチルベンジルホスホネート、ジエチルアリルホスホネート、ジエチル(p−メチルベンジル)ホスホネート、(2−エチルヘキシル)−2−エチルヘキシルホスホネート等のホスホン酸エステルを挙げることができる。
【0032】
ロジン等の樹脂のフラックスにおける含有量は5重量%以上15重量%以下であってもよい。一般的に冷蔵庫やエアコンといった家電では、大量生産の観点等から粘度の低いフラックスが用いられることが多く、ロジン等の樹脂の含有量が低くなっており、その含有量が15重量%以下であることもある。この点、ロジン等の樹脂は沸点が高いことからその含有量が多いと忌避剤が揮発してしまうことを防止しやすいと考えられる。他方、ロジン等の樹脂のフラックスにおける含有量が15重量%以下というように低い場合には、忌避剤が揮発しやすいとも考えられる。このような事情があるものの、本願の発明者によれば、後述するピレスロイド系化合物のような忌避剤であれば、樹脂の含有量が低くても揮発しにくいことを確認できた。
【0033】
フラックスに含有される忌避剤は昇華性を有さないことが好ましい。なお、本実施の形態において昇華性を有するとは、室温(25℃)において固体から気体へと相転移することを意味する。
【0034】
フラックスに含有される忌避剤は所定の食料由来の成分ではない方がよい。所定の食料由来の成分としては、薄荷(ハッカ)、タンニン、唐芥子、ワサビ等を挙げることができる。
【0035】
忌避剤はピレスロイド系化合物を含有してもよい。当該ピレスロイド系化合物は、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、エムペントリン、プラレトリン、イミプロトリン、デルタメトリン、フェンバレレート、フルバリネート、エトフェンプロックス及びシラフルオフェンのいずれか1つ以上を含有してもよい。本願の発明者が現時点において確認したところ、ピレスロイド系化合物は、イソプロピルアルコールのような溶剤(溶媒)への溶解性が高く、かつ溶剤に溶け込んだときの揮発性が低く、ゴキブリを含む昆虫一般に対して有益な忌避効果を有していることが判明している。このため、冷蔵庫、エアコン等の電子機器に近づいてくるゴキブリのような昆虫に対する昆虫忌避剤として用いるのであれば、ピレスロイド系化合物が非常に有益である。忌避剤としては、ピレスロイド系化合物と後述するエステル系溶剤というように複数の種類のものを含有してもよいが、一種類の忌避剤だけが含まれてもよい。
【0036】
忌避剤はエステル系溶剤を含有してもよい。当該エステル系溶剤は、安息香酸ベンジル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ベンジル、セバチン酸ジブチル、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート及びイソシンコメロン酸ジノルマルプロピルのいずれか1つ以上を含有してもよい。安息香酸ベンジル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ベンジル、セバチン酸ジブチルはダニに対して有得な忌避効果を有し、ジメチルフタレート及びジブチルフタレートはダニ、カ、シラミ等の衛生害虫に対して有益な忌避効果を有し、イソシンコメロン酸ジノルマルプロピルは、カ、アブ、ブユ(ブヨ)、ノミ、ナンキンムシ、ダニ、サシバエ等に対して有益な忌避効果を有している。他方、ゴキブリ等に対して有益な忌避効果を発揮しないことから、この観点から言えば、昆虫忌避剤としては前述したピレスロイド系化合物を用いることが有益である。
【0037】
その他、忌避剤は、2‐エチル‐1,3‐ヘキサンジオール、ジエチルアミド・ジ-N-プロピルイソシンコメロネート、2,3:4,5-ビス(Δ2-ブチレン)テトラヒドロフルフラール、N-オクチル-ビシクロヘプテン・ジカルボキシイミド、シトロネラ油、ユーカリ油及びヒノキチオールのいずれか1つ以上を含有してもよい。2‐エチル‐1,3‐ヘキサンジオールはカ,シラミ,ダニ等の衛生害虫に対して有益な忌避効果を有し、ジエチルアミド・ジ-N-プロピルイソシンコメロネート、2,3:4,5-ビス(Δ2-ブチレン)テトラヒドロフルフラール及びN-オクチル-ビシクロヘプテン・ジカルボキシイミドは、カ、アブ、ブユ(ブヨ)、ノミ、ナンキンムシ、ダニ、サシバエ等に対して有益な忌避効果を有している。シトロネラ油及びユーカリ油はゴキブリ等の昆虫一般に忌避効果を有し、ヒノキチオールは、ダニ、シロアリ、ゴキブリ等に対して忌避効果を有している。
【0038】
溶剤はイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコールエーテル等を1つ以上含有してもよいが、溶剤はイソプロピルアルコールのみから構成されてもよい。
【0039】
溶剤はフラックス中において80重量%以上含有されてもよく、より限定するならば84重量%以上含有されてもよい。
【0040】
本実施の形態では、フラックス及びはんだ合金を含むソルダーペーストも提供されてもよい。
【0041】
本実施の形態では、はんだ合金及び忌避剤を導電性接合剤として利用した基板、電子機器も提供される。電子機器の一例としては、冷蔵庫、エアコン等の家電である。
【0042】
ソルダーペーストに粘性を付与するためのチキソ剤は、フラックスに含まれていなくてもよい。このようにチキソ剤を含有しないフラックスでは、忌避剤も揮発しやすくなる傾向にある。このため、チキソ剤を含有しないフラックスにおいては、所定の揮発性を有さない忌避剤を採用することは極めて有益である。
【0043】
<溶解性試験>
フラックスへの溶解性試験として、以下の試験を行った。
【0044】
本実施の形態において、忌避剤が溶剤に対して「溶解性」を有するとは、溶剤内に忌避剤を適宜混合して(必要であれば適宜加熱して)溶解することで作製した溶液を1週間室温(25℃)で放置し、沈殿物及び分離を視認できない場合のことを意味する。他方、溶剤内に忌避剤を適宜混合した後で作製した溶液を1週間室温(25℃)で放置し、沈殿物又は分離を視認できる場合には、本実施の形態において溶解性を有さないことになる。
【0045】
<揮発性試験>
揮発性試験として、TG測定を行った。
【0046】
本実施の形態において、忌避剤が溶剤に対して「所定の揮発性」を有さないとは、忌避剤をULVAC社製 TGD9600を用いて、以下の条件で測定した場合に、50%以上残留していることを意味する。このため、以下の条件で測定した場合に、50%未満しか残留していない場合には、忌避剤が所定の揮発性を有することになる。
忌避剤のサンプル量:2〜5mg
昇温速度:10℃/min 240℃まで加熱
測定雰囲気:N
2
【0047】
なお、所定の揮発性を有さない忌避剤を含むフラックスに関して、はんだ合金成分としてSn−3Ag−0.5Cu(融点217℃)を用い、フローはんだ付けを行った。はんだの溶融温度を250℃、浸漬深さを1mm、浸漬時間を10秒として、はんだ付けを行ったものを用いて確認したところ、忌避効果を有することを確認できた。
【0048】
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。
【0050】
実施例1乃至3のフラックスは、いずれでも有機酸としてのコハク酸を0.5重量%含有し、有機ハロゲン化合物としての2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオールを0.5重量%含有し、アミンハロゲン化水素酸塩としてエチルアミン臭化水素酸塩を0.8重量%含有している。実施例1乃至3のフラックスでは、ロジンの一例である変性ロジンとしての水添ロジンを12重量%含有し、残部は溶剤としてのイソプロピルアルコールによって構成されている。実施例1乃至3では、昆虫忌避剤としてピレトリンを用い、その含有量を1重量%、0.5重量%及び3重量%として変化させた。
【0051】
実施例1乃至3のフラックスに含有される成分を示すと「表1」のようになる。以下に示すいずれの表においても「溶解性」が「〇」というのは、前述した溶解性試験において溶解性を確認できたことを意味し、「揮発性」が「〇」というのは、前述した揮発性試験において所定の揮発性を有さないことを確認できたことを意味している。「総合評価」が「〇」というのは、溶解性試験及び揮発性試験の結果を受けた総合評価が良いことを意味している。他方、「溶解性」が「×」というのは、前述した溶解性試験において溶解性を確認できなかったことを意味し、「揮発性」が「×」というのは、前述した揮発性試験において所定の揮発性を有することを確認できたことを意味している。そして、「総合評価」が「×」というのは、溶解性試験及び揮発性試験の結果を受けた総合評価が悪いことを意味しており、忌避性について問題があるという意味ではないので留意が必要である。
【0053】
(実施例4乃至8)
実施例4乃至8では、昆虫忌避剤をピレトリンから別の材料に変更した以外は実施例1と同様のものを用い、具体的には以下の「表2」に示すような成分を含有している。
【表2】
【0054】
(実施例9乃至13)
実施例9乃至13では、昆虫忌避剤をピレトリンから別の材料に変更した以外は実施例1と同様のものを用い、具体的には以下の「表3」に示すような成分を含有している。
【表3】
【0055】
(実施例14乃至16)
実施例14乃至16では、以下の「表4」に示すような成分を含有している。具体的には、実施例14乃至16のフラックスは、昆虫忌避剤としてのピレトリン、有機酸としてのコハク酸、グルタル酸及びパルミチン酸のいずれか1つ以上、ロジンの一例である変性ロジンである水添ロジン、及び、溶剤としてイソプロピルアルコールを含有している。実施例14のフラックスは、有機ハロゲン化合物としての2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール及びアミンハロゲン化水素酸塩としてのエチルアミン臭化水素酸塩も含有している。実施例15のフラックスは、有機ハロゲン化合物としての2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、アミンハロゲン化水素酸塩としてのエチルアミン臭化水素酸塩及び有機リン化合物としての(2−エチルヘキシル)−2−エチルヘキシルホスホネートも含有している。実施例16のフラックスは、アミンの一例であるアルカノールアミンとしてのジエタノールアミンも含有している。
【表4】
【0056】
(比較例1乃至4)
比較例1乃至4では、以下の「表5」に示すような成分を含有している。ボルドー液、イソピンピネリン及びベルガプテンでは溶解性に問題があり、ジエチルトルアミドでは揮発性に問題があった。なお、比較例4で用いられるジエチルトルアミドにおけるTG測定結果は
図1で示されているとおりである。
【表5】
【0057】
溶剤への溶解性の点からは好ましくない忌避剤としては、その他に、酸化第二鉄、タンニン、唐芥子、ワサビ等を挙げることができる。
【0058】
所定の揮発性を有するという点からは好ましくない忌避剤としては、その他に、ケロシン等を挙げることができる。
【0059】
また、昇華性を有し、フラックスから抜けやすくなる点からは好ましくない忌避剤としては、クレオソート、βナフトール、樟脳、薄荷(ハッカ)等を挙げることができる。
【0060】
忌避効果を有するものであっても有害性のある毒性の強すぎるものは用いることを避けた方がよい。有害性のある材料としては、環境ホルモンであるフタル酸ジエステル等を挙げることができる。
【0061】
本実施の形態では、電子素子等が実装されたプリント配線基板等の基板を製造するための基板製造方法も提供される。一例としては、
図2に示すような態様を採用することができる。
【0062】
まず、表面に銅パターン等の載置部11が設けられた基板本体部10を有する基板を準備する(
図2(a)参照)。
【0063】
塗布装置のノズル等の塗布部材25を用いて載置部11にフラックス20を塗布する(
図2(b)参照)。
【0064】
基板を反転し、溶融させたはんだ合金30を載置部11に設ける(
図2(c)参照)。
【0065】
その後、はんだ合金30を介して半導体素子、コンデンサ、抵抗等の電子部品40を載置部11に設け、またはんだ合金30を介して接続子45やワイヤ(図示せず)を載置部11に設ける(
図2(d)参照)。その後、必要に応じてリフロー処理を行ってもよい。
【0066】
また、別の態様としては、粉末状のはんだ合金をフラックスに溶かしたソルダーペーストを載置部11に載置するようにしてもよい。
【0067】
上述した実施の形態及び実施例の記載は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎない。また、出願当初の特許請求の範囲の記載は本件特許明細書の範囲内で適宜変更することもでき、その範囲を拡張及び変更することもできる。