特許第6840134号(P6840134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840134
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】ノイズキャンセリング検出器
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20210301BHJP
   G01N 29/32 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   G01N29/24
   G01N29/32
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-512161(P2018-512161)
(86)(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公表番号】特表2018-528426(P2018-528426A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2016072865
(87)【国際公開番号】WO2017055219
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年8月21日
(31)【優先権主張番号】20151276
(32)【優先日】2015年9月29日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】515299494
【氏名又は名称】シンテフ・ティーティーオー・アクチェセルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イブ−ルネ・ヨハンセン
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−036578(JP,A)
【文献】 特開昭54−071682(JP,A)
【文献】 特開平09−145683(JP,A)
【文献】 特開2009−294023(JP,A)
【文献】 国際公開第03/046498(WO,A1)
【文献】 特開2015−014464(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/202753(WO,A1)
【文献】 特開2013−150764(JP,A)
【文献】 特開昭62−291544(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0126070(US,A1)
【文献】 J. Breguet et al.,Photoacoustic detection of trace gases with an optical microphone,Sensors and Actuators A,1995年,48,pp. 29-35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
G01L 9/00
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G01N 29/00 − G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の波長の光を吸収するガスを検出するための光学ガス検出器であって、前記ガス検出器は、2つの実質的に同一の平行な膜であって、それらの間に調査すべきガスを含むボリュームを画定する膜と、選択された変調周波数で前記ボリュームに前記既知の波長で光を放射する変調光源と、を含み、前記検出器は、前記ガスにおける光吸収によって引き起こされる前記膜間の相対的な運動を検出するように適合されており、前記2つの膜の一方の運動方向は前記2つの膜の他方の運動方向に反対であり、および前記運動は前記変調光源のレートまたはレートの倍数に対応する周波数を有しており、前記ボリュームは、前記ガスが前記ボリューム内に自由に流れるか、または拡散することを可能にする少なくとも1つの開口を有しており、前記運動の検出は、前記2つの膜間の距離を監視するように適合された光学的測定を用いることによって提供される、ガス検出器。
【請求項2】
前記運動の検出は、光学干渉法を用いることによって提供される、請求項1に記載のガス検出器。
【請求項3】
前記距離は、前記膜に実質的に垂直な方向において監視光を透過させることによって光学的に監視され、前記膜は部分的に反射性であり、前記膜の少なくとも1つは前記透過光に対して部分的に透明であり、このようにしてファブリ・ペロー干渉計を提供し、および前記ファブリ・ペロー干渉計からの透過強度または反射強度を監視することによって光学的に監視される、請求項2に記載のガス検出器。
【請求項4】
多数の凹部が少なくとも1つの膜に組み込まれており、前記凹部の深さは、前記膜間の前記距離の監視された変化に対する修正を提供するために、前記透過光および反射光において選択された位相変化を与えるように最適化されている、請求項3に記載のガス検出器。
【請求項5】
前記膜間の監視される前記距離、妥当な作用点を得るために前記2つの膜間の前記距離を監視するための手段からのフィードバックによって調整される、請求項3に記載のガス検出器。
【請求項6】
前記監視光の波長は、妥当な作用点を得るために監視距離の測定からのフィードバックによって調整される、請求項3に記載のガス検出器。
【請求項7】
前記ボリュームの内側に前記ガスを取り囲むための光学窓は使用されておらず、前記窓における吸収によって発生する如何なる信号を避けている、請求項1に記載のガス検出器。
【請求項8】
波長を選択し、および/または波長の変調を実行するために、可変ファブリ・ペローフィルタが使用されている、請求項1に記載のガス検出器。
【請求項9】
波長を選択し、および/または波長の変調を実行するために、可変レーザが使用されている、請求項1に記載のガス検出器。
【請求項10】
変調レートおよび前記膜の大きさは、前記ガス中で発生した振動の波長が、前記ガスの音速に応じて、前記膜の直径の半分よりも小さくなるように選択される、請求項1に記載のガス検出器。
【請求項11】
前記ボリュームの全体の大きさは4cm未満である、請求項1に記載のガス検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知の波長の光を吸収するガスを検出するための光学ガス検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収型ガスセンサは、光がガス混合物を通って検出器に向かって送信されるものとしてよく知られており、ここで、特定のガスは特定の固有波長の光を吸収し、透過スペクトルおよび検出スペクトルの両方が既知である場合、ガスの濃度をみることが可能である。しかしながら、透過光のスペクトルを測定することは複雑なプロセスであり、また、アルコール含有量を測定するための装置のような小型で低コストの装置に組み込むことが難しい。
【0003】
いくつかの代替の解法が開発されており、ガス中の特定波長の吸収が使用されてもよく、吸収はガス中の温度の上昇または圧力変動をもたらす。ブリュエルおよびケアー(米国特許第4,818,882号明細書)によって発明された光音響ガス検出器は、非常に低レベルのガスを検出することが実証されている。光音響ガス検出器の心臓部は、ブリュエルおよびケアーによって作られた非常に優れたコンデンサーマイクロフォンである。コンデンサーマイクロフォンの低周波の感度は、膜の必要なプレストレスによって制限される。このプレストレスは、容量性の力が膜をバックプレートに引き込むことを避けるために必要である。本発明は、すなわち、光学的読み出しを使用することによってこれを改善し、膜をさらに軟質(より少ない応力)にすることを可能にする。さらに、ブリュエルおよびケアーのコンデンサーマイクロフォンは、無指向性の応答を有している。無指向性(または非指向性)のマイクロフォンの応答は、一般的に、三次元の完全な球であると考えられている(https://en.wikipedia.org/wiki/Microphoneを参照)。これは、コンデンサーマイクロフォンがあらゆる方向からのノイズを取り出すことを意味している。本発明は、後で説明するように、いくつかの点でこれを改善する。さらに、ブリュエルおよびケアーによって発明された光音響ガス検出器は、適切に機能するために、閉じたボリュームの内側にガスを有する必要がある。これは、ガスセンサが、ガスを閉じたボリュームに運ぶためのポンプと、ボリュームを密閉するためのバルブとを必要とすることを意味している。本発明は、ポンプまたはバルブを必要としない。
【0004】
別の光音響検出方法は、パルス光源が適用される米国特許出願公開第2005/117155号明細書(米国特許第7,245,380号明細書)に記載されている。この発明の最も魅力的な特徴の1つは、標準の光音響のアプローチとしてのポンプまたはバルブの使用を必要としないことである。パルス光は、流体によって吸収され、結果として生じる信号を読み取ることができるフォーク形状の結晶の共振によって検出され得る音波を試料流体において発生させる。吸収されたエネルギーは結晶フォークに蓄積され、結晶フォークは共振周波数で機械的フィルタとして作用する。フォークは好ましくは、液体中での使用に適しているがガス中で制限された結合効率を有している石英で作られている。パルスレートは、フォークの共振周波数によって制限され、これは、励起周波数において非常に良好な制御、並びに温度、フォークの質量の変化(すなわち塵粒子)または他の外部からの影響に起因する共振周波数の変化を補償するための方法を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,818,882号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/117155号明細書(米国特許第7,245,380号明細書)
【特許文献3】国際公開第2011/033028号
【特許文献4】国際公開第2003/046498号
【特許文献5】国際公開第2006/110041号
【特許文献6】国際公開第2006/110042号
【特許文献7】国際公開第2014/202753号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Elektroakustikk”、Jens Jorgen Dammerud、第4版、2013年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、高感度のガス検出を有しながら、外部振動に対して感度が低い、小型で安価な光音響式ガスセンサを提供することである。これは、添付の特許請求の範囲に記載の特徴を有する光学ガス検出器によって得られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、ガス検出器はこのように、それらの間にボリュームを画定している2つの平行な膜間の距離を監視することに基づいている。ガスは、膜間のボリュームから外側に伝播する圧力または速度波/パルスとして検出され、それにより、それらを反対方向に押し離す。周囲からの振動および外部音響ノイズは、膜を同じ方向に移動させ、その間の距離を維持し、それにより検出器によって検出されない。
【0009】
コンデンサーマイクロフォンは、閉じたバックボリューム(back volume)に起因して無指向性の応答を有しており、3方向全てからのノイズを取り出す。基本的なリボンマイクのような、バックボリュームのないマイクロフォンは、リボンが両側で開いているので、双方向(八の字とも呼ばれる)パターンで音を検出する。従って、単一の膜は、側面から来る音に敏感ではなく、膜に垂直な方向に主な感度を有している。本発明において、2つの単膜が使用され、それらは依然として側面から来る音または振動に鈍感である。膜に垂直な外部の音または振動は、両方の膜を動かし、2つの膜間の相対運動を測定するので、外部源からの波長が2つの膜間の距離と比較して長い場合、外部源からの寄与が大幅に減少され、および原理的には完全に除去される。膜間のガスの吸収によって生成される信号は、膜を押し離し、打ち消されないであろう。
【0010】
いくつかの異なる手段が、例えば、国際公開第2011/033028号に示されているような、膜が同じ方向に移動する場合に信号を除去するように電気的に接続されている圧電リングを有する対称的な膜を使用して、運動を測定するために提供され得る。ピエゾ抵抗または容量センサのアプローチを使用して、同様な設計を作ることができる。
【0011】
好ましくは、膜間の距離は、干渉法を使用して、すなわち国際公開第2003/046498号で議論されている測定システムの採用によって光学的に測定される。従って、好ましい実施形態によれば、膜は、膜間の距離の関数として共振を変化させるファブリ・ペロー干渉計におけるミラーを構成している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、実施例によって本発明を説明している添付の図面を参照して以下で検討される。
【0013】
図1】2つの膜間に置かれたガス試料を示している。
図2】ガスセンサが共振器を備えた本発明の実施形態を示している。
図3】光学的な読み出しを有するセンサを示している。
図4a】膜間の距離の光学的測定を提供する本発明の好ましい実施形態を示している。
図4b】膜間の距離の光学的測定を提供する本発明の好ましい実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、ガス検出器1は、光源3からのパルス光ビーム8によって照射されたガスボリューム2に実質的に関係している。光が吸収されると、ガスボリュームが膨張し、力Fで2つの膜4a、4bを離すように押す。図に示されているように、膜4a、4b間の距離Dは時間tと共に変化し、Dの変化の振幅は試料中のターゲットガスの濃度に関係している。ガスボリューム2は、密閉容器内に置かれていないが、測定ボリューム内に実質的に自由に移動または拡散し、これはセンサの使用目的および意図した動作に依存するが、このように流れを得るためのポンプまたはその他の手段が不要となる。ガスボリュームは、他の壁または包含される部分なしに、膜の位置によって簡単に決定されてもよい。
【0015】
ガス励起から来る音の非常に単純化されたモデルは、音響点源であり、球面波を発生させる。球面波からの音圧は、伝搬距離rに比例して減少し(“Elektroakustikk”、Jens Jorgen Dammerud、第4版、2013年、100頁を参照)、音の強さはrに比例して減少する。これは、音響点源から膜の内側までの距離が1mmであり、点源から膜の外側までの距離が10mmである場合、音圧は外側で10倍低く、膜の動きは内部からの直接経路によって支配されている。
【0016】
図1に示されているように、ガス試料中に生成された音響信号は、膜4a、4bの周りを流れることができ(流れ5)、このように膜のパルス周波数および大きさは、負のフィードバックを回避するように選択されてもよく、一方でそれと同時に、ボリュームを通ってガスが自由に流れるようにボリュームを開いたままにする。膜の寸法を正確に選択することにより、外側の圧力は、膜4a、4b間の圧力の逆位相を有することができ、これにより信号強度を増大させることができる。20kHzで音響パルスを生成することにより、音の波長は17mmとなる。ボリュームから膜の裏側までの伝播経路が17mmである場合、表側および裏側は同位相であり、膜の動きは低減されるか、または相殺さえされる。しかしながら、伝播経路が17/2=8.5mmである場合、膜の裏の音は逆位相であり、これは膜運動の振幅を増大させ、このように検出器の信号を改善し得る。従って、膜およびガスボリュームの最適寸法は、ガス中の音速に応じて変化し得る。ただし、運動が完全に相殺されていない限り、測定値は得られるであろう。
【0017】
図2において、検出器は、第1および第2の膜4a、4bを囲む音響共振器6を備えており、これは光源のパルスレートと一致するとき、振動を増幅し、このようにして信号を増幅し得る。
【0018】
図3においては、ガス7が、ガスボリューム2を画定する膜4a、4b間の空間に導入され、赤外線広帯域源からの光8が、固有波長の光を吸収するガスボリューム2を照射する概略図が示されている。膜4a、4b間の距離は、干渉計手段を用いて、すなわち国際公開第2003/046498号に記載されている方法の適用によって測定される。これを得るために、膜は少なくとも部分的に反射性の表面を有しており、それにより、膜間の空洞は、膜間の距離に依存する共鳴周波数を有するファブリ・ペローを構成している。膜4a、4bを通って1つまたは複数の検出器16上へ監視光14を透過させるために、1つ(または複数)の狭帯域光源15、すなわちダイオードレーザが使用される。代替の構成は、膜から反射する信号を読み出すことである。光を集束またはコリメートするための任意の光学手段を含む光源15および検出器16は、典型的には、ノイズを発生させるあらゆる形態のスクイズ膜効果を避けるために、膜から0.1mmより大きく、好ましくは数mm離れて配置される。できるだけ高感度のセンサを得るためには、膜の応力はできるだけ低くすべきであり、典型的には5から50MPaとすべきである。
【0019】
図4aおよび図4bは、2つの膜4a、4b間のガス流7を照射する光源を示している。図4aは、本発明によるガス検出器を一側面から示しており、図4bはガス検出器を上から見るように示している。光源は、極めて広い波長範囲で光を放出する広帯域IR光源10であり得る。光は、レンズ11によってコリメートされ、検出すべきガスの固有波長の少なくとも1つを選択するために、ファブリ・ペロー干渉計12を通して透過される。第2のレンズ13は、ガス試料2に光の焦点を合わせるために使用される。この光源ユニットは、動作波長および検出すべきガスに応じて異なる実施形態で設けられてもよく、レンズは、屈折および回折の両方であってもよい。CO測定のために、国際公開第2006/110041号および国際公開第2006/110042号に記載されているようなフィルタが光源で使用されてもよい。他のガスについては、国際公開第2011/033028号に記載されているフィルタが光源で使用されてもよい。
【0020】
ガスボリュームに光の焦点を合わせる第2のレンズ13の焦点距離は、少なくとも膜間の方向に、狭い円錐を画定するように選択されてもよく、これにより膜が光を遮断することなく可能な限り互いに近づくことができる。光8を集束させることによって、測定されるボリューム2はまた、焦点領域において限定され、上述のような音響点源に酷似する。図4bに見られるように、集束された光ビームは、ガス試料ボリューム2に近い任意の窓または他の材料を通って伝播せず、これは試料の状態に影響を及ぼし得る追加の吸収が生じないので有利であるが、最も重要なことは、窓のない使用は、典型的には、光音響分光法の主要な制限となる音響信号の生成を回避する。窓の除去は、ガスが存在しないときにゼロ信号を可能にするが、窓の使用は、典型的には、取り去る必要のある基準信号を与え、この基準信号は時間とともに変化し、それによりセンサ精度の制限となる。
【0021】
光源の変調は、光源をオンとオフに切り替えることによって実行することができるが、これは放射されるスペクトルに影響を及ぼす可能性がある。もう一つの選択肢は、例えば回転ホイールまたはLCDを使用して、ビームを選択された割合で遮蔽することである。好ましい実施形態によれば、ファブリ・ペローは、光が正確な波長を有する時に応じた割合で吸収が生じるように、固有波長にわたって前後に走査するのに使用することができる。典型的には、ソースが周波数fで変調される波長である場合、信号は1f、2f、または3fで復調され、場合によっては高調波が復調に使用される。
【0022】
調査したガスボリュームから膜の背面に伝播する音響波を避けるために、変調周波数は比較的高くなければならない。ファブリ・ペロー干渉計が、例えば10kHzのレートで走査される場合、音響周波数は20kHzとなり、これは、17mmの音響波長を意味している。図4a、4bで示した実施例は、3mmの直径を有するF−Pフィルタを通り、さらに膜間にある光を送信する1mm×0.2mmの光源に基づいており、光源から膜間に光を集束するためにレンズ13を使用する。膜間の距離は、典型的には、光源の大きさに応じて、0.3mmから5mmの間であり得る。膜の大きさは、典型的には1から25mmであり、膜の厚さは、典型的には10から1000nmであり得る。5mmの膜直径および100nmの厚さの窒化ケイ素膜を用いて良好な結果が得られた。
【0023】
わずか100nmの膜厚は、コンデンサーマイクロホンまたはエレクトレットマイクロフォンを使用するいかなるシステムに対して、典型的にはこれらは3000nm以上の膜厚を有するので、大きな利点である。これは、本発明が、膜の重量のみに起因する外部振動に対して30倍も感度が低いことを意味している。さらに、2つの膜間の相対距離を測定する利点がある。
【0024】
ファブリ・ペローによる応答曲線は、膜の反射に依存しており、低い反射はコサインのような応答を与える。とにかく、感度が高い応答曲線上の位置で膜の運動を監視することが重要である。この位置をセンサの作用点と呼ぶことができる。作用点は、2つの膜間の距離を調整することによって得ることができる。これは、静電アクチュエータ、圧電アクチュエータまたは熱アクチュエータを使用することによって行うことができる。あるいは、膜間の相対変位を監視するために使用される光源の波長は、作用点に合致するように調整されてもよい。
【0025】
妥当な作用点を得るための第3の方法は、国際公開第2014/202753号に記載されているように、膜における多数の凹部を用いることによるものである。ファブリ・ペローによって生成された干渉信号は、典型的には、半波長ごとに膜間の距離の増加を繰り返す。低反射の膜に対して、ファブリ・ペロー信号はコサイン波形で近似することができる。2つの膜間の干渉のみを使用する場合、作用点は余弦曲線の上部または下部にあり、感度は非常に低くなる。これを改善する良い方法は、膜間の距離が90°(または90°+/−n×180°、n=0,1,2,3...)位相を異にする第2の領域を導入することである。膜間の距離が変化するとき、正弦曲線および余弦曲線の両方を有しており、正しい距離の変化を計算することができる。第2の領域は、膜における凹部で作ることができる。実用的な観点からは、運動の方向の変化のまわりの曖昧さに起因して、90°の位相シフトだけで正しい距離を計算することは困難な場合がある。もう1つの凹部を使用して、干渉信号の0°、120°、240°の位相オフセット(またはn×120°+m×360°、n=0,1,2. m=0,1,2,3,..)の3つの領域を生成する場合、信号の正しい振幅が、より高い信頼度で計算することができる。場合によっては、2つより多い凹部が有利であり得る。詳細は、国際公開第2014/202753号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本発明は、小型化されたガスセンサシステムに特に適している。数cm以下のセンサを簡単に作ることができ、可変光源とノイズキャンセリング光音響検出法の組み合わせは、このセンサを、アルコロック、証拠的アルコールセンサー、冷蔵庫ガス、麻酔ガスなどのためのセンサを含む多数の異なる応用に十分に適合させる。
【0027】
従って、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つの既知の波長で光を吸収するガスを検出するための光ガス検出器を含む。ガス検出器は、調査すべきガスを収容する、それらの間でボリュームを画定する2つの実質的に同一で平行な膜と、前記既知の波長の光を選択された周波数で前記ボリュームに放射する変調された第1の光源とを含む。
【0028】
検出器は、ガスボリューム2におけるパルス光の吸収によって引き起こされる運動を検出するために、前記パルス光源の周波数または周波数の倍数で前記膜間の関連する運動を検出するように適合される。この方法は、膜を同じ方向に動かす外部ノイズが測定を妨害しない。
【0029】
加えて、ガスは、温度変化などの外部の影響がボリューム内の圧力の変動、ひいては膜間の相対的な運動を生じさせないように、検出器の中に、および外に、自由に流出または拡散することができる。
【0030】
運動は、例えば、監視光を前記膜に実質的に垂直な方向に透過させることによって、前記2つの膜の間の距離を監視することによって検出され得る。前記膜が部分的に反射性であり、前記膜の少なくとも1つが前記透過光に対して部分的に透明である場合、ファブリ・ペロー干渉計が得られ、前記ファブリ・ペロー干渉計からの透過または反射強度を監視することによって、距離Dの変化が測定され得る。
【0031】
また、多数の凹部を膜に組み込むことができ、凹部の深さは関連する位相変化を与えるように最適化される。凹部によって生成された信号を監視することによって、信号の振幅が修正され得る。
【0032】
あるいは、膜間の距離は、妥当な作用点を得るために監視システムからのフィードバックによって調整されるか、または監視光の波長は、妥当な作用点を得るために監視システムのフィードバックによって調整される。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、パルス光は、ガス流に使用される同一の開口のような、膜の中または膜の間の開口を通ってガスボリュームに送信される。標準の光音響センサは、選択された材料に関わらず、音響信号に寄与する窓を有する。このように、本発明の好ましい実施形態によれば、前記ボリュームの内側にガスを包囲するための光学窓は使用されておらず、窓における吸収によって生成される如何なる信号を避ける。
【0034】
光源は、波長を選択し、および/または波長の変調を実行するために使用される可変ファブリ・ペローフィルタを含むことができ、または、波長を選択し、および/または波長の変調を実行するために使用される可変レーザを使用することができる。
【0035】
光学的測定の代替として、膜間の相対的な運動または距離は、ピエゾ抵抗性、圧電性または容量性の手段を使用して監視されてもよい。
【0036】
光パルスのパルスレートおよび膜の大きさは、膜の運動の相殺を避けるために、ガスの音速および光ビームのパルスレートに応じて、発生した振動の波長が膜の直径の半分よりも小さくなるように選択される。また、ガスボリュームの全体の大きさは、短い応答を可能にするために、好ましくは4cm未満である。
【符号の説明】
【0037】
1 ガス検出器
2 ガスボリューム
3 光源
4a、4b 膜
5 流れ
6 音響共振器
7 ガス
8 光ビーム
10 光源
11 レンズ
12 ファブリ・ペロー干渉計
13 レンズ
14 監視光
15 光源
16 検出器
図1
図2
図3
図4a
図4b