(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の駆動装置(29)と第2の駆動装置(30)との間でトルクを断接自在に伝達する、ローテーション軸線(28)を有する摩擦クラッチ(27)であって、少なくとも、
圧接状態においてトルクを伝達する摩擦セット(10)であって、少なくとも1つの摩擦プレート(11)と、対応する少なくとも1つの摩擦ディスク(12)とを有し、前記少なくとも1つの摩擦プレート(11)は、第2の駆動装置(30)に接続可能であり、前記少なくとも1つの摩擦ディスク(12)は、第1の駆動装置(29)に接続可能である、摩擦セット(10)と、
係合状態において前記摩擦セット(10)を第1の軸方向の操作方向(44)で圧接させるように構成された第1の操作要素(17)と、
を備える摩擦クラッチ(27)において、
第2の操作要素(16)をさらに備え、該第2の操作要素(16)は、前記摩擦セット(10)の、前記第1の操作要素(17)とは反対側に配置されており、係合状態において前記摩擦セット(10)を第2の軸方向の操作方向(43)で圧接させるように構成されており、前記第2の軸方向の操作方向(43)は、前記第1の軸方向の操作方向(44)とは反対方向に方向付けられていることを特徴とする摩擦クラッチ(27)。
隣り合う2つの摩擦プレート(11)間および/または隣り合う2つの摩擦ディスク(12)間に、隣り合う前記摩擦プレート(11)あるいは前記摩擦ディスク(12)を軸方向で突き放すそれぞれ1つの離隔ばね(15)、好ましくは波形ばねが設けられている、請求項1または2記載の摩擦クラッチ(27)。
前記摩擦セット(10)は、薄板セットとして形成されており、前記摩擦クラッチ(27)は、アウタケース(5)とインナケース(6)とを備え、前記摩擦プレート(11)は、前記アウタケース(5)内に回転に関して不動に、かつ軸方向で摺動可能に係着されており、前記摩擦ディスク(12)は、前記インナケース(6)内に回転に関して不動に、かつ軸方向で摺動可能に係着されている、請求項3記載の摩擦クラッチ(27)。
前記インナランプレース(20)は、スラスト軸受(23)により前記アウタケース(5)に支持され、好ましくは、入力側で前記フリーホイール(24)に結合されたフリーホイールポット(25)を介して間接的に支持されている、請求項3または4を引用する請求項5記載の摩擦クラッチ(27)。
前記アウタランプレース(21)と前記摩擦セット(10)との間にプレッシャポットが配置されており、該プレッシャポットは、前記アウタケース(5)に回転に関して不動に、かつ軸方向で摺動可能に係着されている、請求項3または4を引用する請求項5または6記載の摩擦クラッチ(27)。
前記インナケース(6)と、前記フリーホイール(24)の前記入力側(46)とは、互いに一直線に並ぶようにかつ/または重なるように方向付け可能なそれぞれ1つの貫通開口(26)を有し、前記摩擦クラッチ(27)を第1の駆動装置(29)および/または第2の駆動装置(30)の被動軸(34,35)にねじ止めすべく、前記貫通開口(26)にねじ器具を通すことが可能である、請求項3または4を引用する請求項5から7までのいずれか1項記載の摩擦クラッチ(27)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の駆動装置と第2の駆動装置との間でトルクを断接自在に伝達する、ローテーション軸線を有する摩擦クラッチ、パワートレーン用のハイブリッドモジュールおよびパワートレーン、好ましくは自動車用のパワートレーンに関する。
【0002】
本発明は、第1の駆動装置と第2の駆動装置との間でトルクを断接自在に伝達する、ローテーション軸線を有する摩擦クラッチであって、少なくとも、
摩擦セットと、
係合状態において摩擦セットを第1の軸方向の操作方向で圧接させるように構成された第1の操作要素と、
を備える摩擦クラッチに関する。摩擦クラッチは、とりわけ、さらに第2の操作要素を備え、第2の操作要素は、摩擦セットの、第1の操作要素とは反対側に配置されており、係合状態において摩擦セットを第2の軸方向の操作方向で圧接させるように構成されており、第2の軸方向の操作方向は、第1の軸方向の操作方向とは反対方向に方向付けられていることを特徴とする。
【0003】
従来技術において、2つの駆動装置を備え、大抵の場合、燃料の補給をせずにより長い距離を走行することが可能な内燃機関と、排ガスを出さない電気モータとが設けられたハイブリッドドライブが公知である。一構成では、電気モータは、走行用モータとして使用され、内燃機関は、必要なとき、作動可能である。本構成では、有利には電気モータは、内燃機関をスタートさせる始動装置として利用可能である。このようなプロセスを実行すべく、摩擦クラッチが両駆動装置間に設けられている。その際、摩擦クラッチは、一方では、内燃機関によって加えられる高いドライビングトルクをできる限り低エネルギに伝達することができ、他方では、内燃機関の、制御されたコースティング運転を実現することができることが望ましい。これにより、内燃機関が従来からもつ機能を引き続き有利な形でハイブリッドドライブに取り込み可能である。
【0004】
従来から、パワートレーン内でトルクを断接自在に伝達可能とする摩擦クラッチが公知である。断接自在に伝達するために、摩擦クラッチは、少なくとも1つの摩擦セットを備える。摩擦セットは、軸方向で摺動可能であって、通常は被動軸と相対回動不能である圧着プレートを有し、圧着プレートは、対応する少なくとも1つの摩擦ディスクに圧着可能である。多くの構成において、摩擦セットは、1つの圧着プレートと1つのカウンタプレートとを有し、カウンタプレートは、軸方向で固定されており、かつ相対回動不能に被動軸に結合されている。しばしば摩擦薄板として形成される摩擦ディスクは、本構成では、圧着プレートとカウンタプレートとの間に配置されており、圧接可能である。これにより、摩擦ディスクの両側に摩擦力を印加可能であり、つまり2つの摩擦ペアが形成される。別の一構成では、複数の摩擦ディスク(好ましくは摩擦薄板として構成)に、少なくとも1つの付加的な中間プレート(好ましくは摩擦薄板として構成)が設けられている。好ましくは2つの摩擦ディスク毎に1つの中間プレートがその中間に配置されている。少なくとも1つの中間プレートは、まさに圧着プレートと同様に、軸方向で摺動可能にかつ被動軸に相対回動不能に結合される。好ましい一構成では、摩擦セットは、薄板セットとして構成されており、アウタケース内に回転に関して固定され、かつ軸方向で摺動可能に支持された「外側薄板」と、インナケース内に回転に関して固定され、かつ軸方向で摺動可能に支持された「内側薄板」とが交互に設けられている。一方の側から薄板セットに作用する操作要素により、圧着力が伝達され、その結果、複数の摩擦ペア間に摩擦力が形成される。すべての構成において、圧着プレートに作用可能な圧着力の結果として、摩擦力が摩擦面上に生じる。摩擦力は、摩擦面の平均半径と乗算され、伝達可能なトルクを生じる。
【0005】
個別に機械的に制限されたソフトなトルク伝達を保証する摩擦クラッチの使用および操作に関する定まったコンセプトは、これまで知られていない。
【0006】
以上の点を背景に、本発明の根底にある課題は、従来技術において知られる欠点を少なくとも部分的に解消することである。本発明の特徴は、独立請求項に看取可能であり、独立請求項に対する有利な構成は、従属請求項に記載されている。特許請求の範囲の特徴は、技術的に有意義なあらゆる形態で組み合わせ可能であり、組み合わせには、本発明の補足的な構成を包含する明細書中の以下の説明や、図面に示した特徴も援用可能である。
【0007】
本発明は、第1の駆動装置と第2の駆動装置との間でトルクを断接自在に伝達する、ローテーション軸線を有する摩擦クラッチであって、少なくとも、
圧接状態においてトルクを伝達する摩擦セットであって、少なくとも1つの摩擦プレートと、対応する少なくとも1つの摩擦ディスクとを有し、少なくとも1つの摩擦プレートは、第1の駆動装置に接続可能であり、少なくとも1つの摩擦ディスクは、第2の駆動装置に接続可能である、摩擦セットと、
係合状態において摩擦セットを第1の軸方向の操作方向で圧接させるように構成された第1の操作要素と、
を備える摩擦クラッチに関する。摩擦クラッチは、とりわけ、さらに第2の操作要素を備え、第2の操作要素は、摩擦セットの、第1の操作要素とは反対側に配置されており、係合状態において摩擦セットを第2の軸方向の操作方向で圧接させるように構成されており、第2の軸方向の操作方向は、第1の軸方向の操作方向とは反対方向に方向付けられていることを特徴とする。
【0008】
摩擦クラッチは、トルクを断接自在に第1の被動軸から第2の被動軸に伝達するように構成されている。このために、摩擦クラッチは、少なくとも1つの摩擦プレートと、対応する少なくとも1つの摩擦ディスクとを有する摩擦セットを備える。少なくとも1つの摩擦プレートと、対応する少なくとも1つの摩擦ディスクとを圧接させると、上述したようにトルクの伝達が可能になる。少なくとも1つの摩擦ディスクは、好ましくは、ハイブリッドドライブにおいて第1の駆動装置に接続され、少なくとも1つの摩擦プレートは、好ましくは、第2の駆動装置に接続される。この場合、第1の駆動装置は、好ましくは電気モータであり、第2の駆動装置は、好ましくは内燃機関である。しかし、この摩擦クラッチは、別の構成で使用されてもよく、好ましくは、一方の駆動装置は、それぞれ他方の駆動装置を、例えば始動、回生または回転エネルギの機械的な蓄積のために駆動するように構成されている。
【0009】
トルクは、この場合、能動的に外部より切り換え可能に第1の駆動装置から第2の駆動装置に伝達可能である。このために、摩擦セットは、第1の操作要素によって圧接される。このために外的な操作力が、例えばいわゆるコンセントリックスレーブシリンダ(CSC、英:Concentric Slave Cylinder)から摩擦セットに伝達される。第1の操作要素は、摩擦セットの摩擦プレート、例えば第1の端末薄板、つまり第1の側において軸方向外側に配置されている端末薄板に当接する。その際、摩擦セットは、全体として第1の軸方向の操作方向でストッパに向かって摺動され、したがって圧接される。これにより、摩擦セットにより第1の駆動装置から第2の駆動装置にトルクを伝達可能である。
【0010】
従来慣用の摩擦クラッチの摩擦セットとは異なり、同じ摩擦セットを反対方向にストッパに向かって摺動させ、したがって圧接させるように構成された第2の操作要素が設けられている。好ましい一実施の形態では、第1の操作要素の操作力が克服されるか、または、第1の操作要素による操作力の作用が解消される。これとは異なりまたはこれに加えて、第1の操作要素は、別の操作方向のためのストッパを形成している。この摩擦クラッチの場合、トルクが中断なしに伝達可能であること、例えば、第1の操作要素の操作力が克服され、摩擦セットが、第2の操作要素の、第1の操作方向とは反対方向に方向付けられた操作力により、第2のストッパに向かって摺動されるとき、トルクが中断なしに伝達可能であることは、有利である。このプロセス中、少なくとも第1の操作力は作用している。第2の操作要素は、好ましくは、第1の操作要素より大きな(第2の)操作力を及ぼすように構成されている。
【0011】
この摩擦クラッチにより、中断なしのトルク伝達が可能であり、その結果、摩擦クラッチが第1の操作要素によって圧接された状態で、第1の駆動装置の、かかっているトルクから、第2の駆動装置の、通常はそれよりも大きなトルクへのソフトな移行が可能である。その際、操作要素は、それぞれ割り当てられた動力源によって操作可能である。加えて、これにより、例えば操作要素が、(それぞれ異なる)最大の圧着力を伝達可能であることで、その都度所望または要求される圧着力を所定の通り印加可能であり、その結果、その都度(異なる)過大トルクが生じると、摩擦要素は互いにスリップする。これにより、それぞれの駆動装置に関する伝達可能なトルクが確実に制限される。
【0012】
摩擦クラッチの別の有利な一実施の形態では、第1の操作要素は、最大の第1の圧着力が最大の第2の圧着力よりも低くなるような柔軟な圧着ばねを有する。
【0013】
本実施の形態では、第1の操作要素によって圧接された状態の摩擦セットにより、最大で、目標回転数時の第2の駆動装置の固有トルクよりも低い限界トルクを伝達可能であることが達成される。伝達可能なトルクは、圧着力、つまり操作力と比例関係にあるため、伝達可能なトルクは、制限された操作力により制限可能である。
【0014】
本実施の形態における第1の操作要素は、第2の駆動装置の目標回転数時の固有トルクを摩擦セットによって伝達するのに必要であるよりも圧着力の弱い柔軟な圧着ばねを有する。つまり、柔軟な圧着ばねにより、摩擦セットが第1の操作要素によって圧接されているとき、限界トルクだけが、好ましくは第2の駆動装置から第1の駆動装置に伝達可能であることになる。而るに限界トルクよりも大きい第2の駆動装置のトルクがかかると、このことは、摩擦ペア間のスリップに至る。
【0015】
第2の操作要素により、好ましくは、第1の操作要素と比較してより高い圧着力が作用可能であり、これにより、より高いトルクを伝達可能である。この場合、摩擦セットは、好ましくは、最大のトルク時にもスリップなしに運転可能である。これにより、第2の操作要素によって圧接された状態では、トルクの主要部分は摩擦セットによって完全に伝達可能である。
【0016】
摩擦クラッチの別の有利な一実施の形態では、隣り合う2つの摩擦プレート間および/または隣り合う2つの摩擦ディスク間に、隣り合う摩擦プレートあるいは摩擦ディスクを軸方向で突き放すそれぞれ1つの離隔ばね、好ましくは波形ばねが設けられている。
【0017】
摩擦セット内に設けられた少なくとも1つの離隔ばねは、トルク伝達が中断されるほど操作力が減じられたとき、隣り合う摩擦ディスクおよび/または隣り合う摩擦プレートを突き放す。その際、離隔ばねは、それぞれの摩擦ペアの係合解除を促進し、これにより、伝達が遮断されているか、または少なくとも十分に減じられていることを保証する。好ましくは、隣り合う摩擦ディスクおよび摩擦プレートの各々の間に、それぞれ1つの離隔ばねが設けられている。この場合、離隔ばねは、好ましくは波形ばねにより形成されている。両操作要素のうちの一方の操作要素の操作力を加えることで、離隔力が克服され、摩擦セットが圧接される。
【0018】
摩擦クラッチの別の有利な一実施の形態では、摩擦セットは、薄板セットとして形成されており、摩擦クラッチは、アウタケースとインナケースとを備え、摩擦プレートは、アウタケース内に回転に関して不動に、かつ軸方向で摺動可能に係着されており、摩擦ディスクは、インナケース内に回転に関して不動に、かつ軸方向で摺動可能に係着されている。
【0019】
本実施の形態では、摩擦セットは、薄板セットにより形成される。薄板セットは、一方では、少なくとも1つの内側薄板を有し、他方では、少なくとも2つの外側薄板を有し、内側薄板は、摩擦ディスクを形成し、外側薄板は、摩擦プレートを形成している。内側薄板は、第1の駆動装置に接続可能であり、外側薄板は、第2の駆動装置に接続可能であり、パワートレーン内に組み付けられた状態においてそれぞれトルクを伝達するように堅固に接続されている。その際、両種の薄板は、対応するケース内で軸方向で摺動可能に、かつ回転に関して不動に、対応する歯列により係着されている。内側薄板は、インナケース内に、外側薄板は、アウタケース内に係着されている。
【0020】
摩擦クラッチの別の有利な一実施の形態では、摩擦クラッチは、少なくとも、
作動長さを有するボールランプ装置であって、アウタランプレースとインナランプレースとを有し、アウタランプレースに対するインナランプレースの相対回動により作動長さが変更可能である、ボールランプ装置と、
フリーホイールであって、出力側と入力側とを有し、入力側は、ボールランプ装置のインナランプレースに結合されており、出力側は、少なくとも1つの摩擦ディスクに結合されている、フリーホイールと、
をさらに備える。
【0021】
このとき、第2の操作要素は、摩擦セットとボールランプ装置のアウタランプレースとの間に配置されている。第2の操作要素は、ボールランプ装置の作動長さが最小であるとき、レリーズされ、ボールランプ装置の作動長さが最大であるとき、ボールランプ装置により係合される。フリーホイールは、インナランプレースのランプ回転数が少なくとも1つの摩擦ディスクのディスク回転数よりも大きいとき、トルクが出力側と入力側との間で、好ましくは等回転数で伝達可能であり、ランプ回転数がディスク回転数よりも小さいとき、出力側と入力側とが遮断されるように構成されている。
【0022】
この構成は、第2の駆動装置のドライビングトルク伝達およびコースティングトルク伝達を伴った、上述の設定にしたがって制御される運転のために、外的なエネルギ供給が必要とされることなく、摩擦セットを第2の操作要素によって圧接させることを可能にする。
【0023】
ボールランプ装置は、第2の操作要素と、フリーホイールの入力側との間に配置されている。その際、ボールランプ装置のアウタランプレースは、好ましくは直接的に、第2の操作要素に接続され、ボールランプ装置のインナランプレースは、好ましくは直接的に、フリーホイールの入力側に接続されている。フリーホイールが遮断されている状態では、インナランプレースは、空転し、アウタランプレースにより連れ回されて引きずられる。フリーホイールがロックされて初めて、つまりトルクが伝達されて初めて、インナランプレースに、アウタランプレースとは異なる回転数を強制可能である。加えて、フリーホイールの出力側には、アウタランプレースとは反対方向に方向付けられたトルクがかかっていなければならない。このことは、第1の駆動装置が第2の駆動装置より低い回転数で運転される際に生じる。この状態を生じさせるために、摩擦クラッチが解除されている、つまりトルク伝達が中断されていなければならないか、摩擦クラッチがスリップ運転されなければならない。後者は、好ましい運転状態であり、スリップ運転は、好ましくは第1の操作要素の柔軟性、ひいては(第1の)圧着力の制限によって機械的に保証される。
【0024】
アウタランプレースに対するインナランプレースの、結果として生じる相対回動により、ボールランプ機構の作動長さが変更される。ボールランプ装置の作動長さの延長(または、操作要素としてのレバーとの関連では、短縮)の結果として、アウタランプレースに結合された第2の操作要素は、軸方向で摩擦セットに向かって動かされ、好ましくは押され、これにより摩擦セットは圧接される。好ましい一実施の形態では、発生される(第2の)圧着力は、第1の操作要素の(第1の)圧着力よりも大きく、その結果、摩擦セットは、上述したように、この第2の圧接状態では、伝達可能なトルクが第1の圧接状態と比較して拡大されるように圧接される。この状態で第2の駆動装置のトルクは、完全に摩擦クラッチを介して伝達可能である。トルクの小さな部分だけがボールランプ機構に導入され、第2の圧着力に変換される。
【0025】
これに対して、ボールランプ機構が、その最小の(または第2の操作要素としてのレバーにおいて最大の)作動長さを有するとき、第2の操作要素は、最大にレリーズされる。その後、摩擦セットは、第1の操作要素によってのみ圧接可能であり、さもなければ係合解除される。
【0026】
つまり、本構成による摩擦クラッチは、第1の駆動装置が走行運転用の電気モータであり、第2の駆動装置が内燃機関であるとき、以下のように運転可能である:電気的な走行時、セーリング運転時または回生時、摩擦クラッチは係合解除または開放されており、内燃機関は、連れ回されて引きずられない。コースティングトルクを発生させるべく、つまり、内燃機関を始動させるかまたはエンジンブレーキをかけるべく、摩擦セットは、第1の操作要素によって能動的に操作される。内燃機関が回転し、電気モータに追い付くと直ちに、フリーホイールは係合する。このとき伝達されるトルクは、フリーホイールを介してインナランプレースに伝達され、ボールランプ機構内で軸方向の圧着力に変換される。その際、摩擦セットへの力伝達は、第2の操作要素を介して実施される。このプロセス時、摩擦セットは、逆方向の第2の操作方向で、摩擦セットが第2のストッパに当接するまで変位される。いまや摩擦クラッチは、ドライビング運転中、外的なエネルギ追加なしに閉鎖されている。内燃機関がもはや必要でなくなれば、内燃機関を簡単に停止させることができる。電気モータが内燃機関よりも速く回転すると、フリーホイールがもはや係合せず、これによりボールランプ機構がもはやねじられないため、直ちに摩擦クラッチは再び自動的に開く。
【0027】
摩擦クラッチの別の有利な一実施の形態では、インナランプレースは、スラスト軸受によってアウタケースに支持され、好ましくは、入力側でフリーホイールに結合されたフリーホイールポットを介して間接的に支持されている。
【0028】
好ましい本実施の形態では、インナランプレースは、直接的に薄板セットのアウタケースに支持されており、アウタケースは、本実施の形態では、好ましくは、半径方向内向きに案内されており、これにより、半径方向内側で第2の駆動装置の第2の被動軸への直接的な結合または振動ダンパおよび/または動吸振器を介した間接的な結合を形成することができる。この支持部は、本実施の形態では、好ましくは、スラスト転がり軸受、特に好ましくはニードル軸受である。この場合、低摩擦でありながら、必要とされる軸方向の構造空間は特に短い。この軸受構成に関わらず、アウタケースの、半径方向内向きに案内される部分は、第1の操作方向のための(間接的な)ストッパとして構成されている。この間接的な構成の場合、第1の操作要素によって圧接された状態において、第2の操作要素、例えばランプ側のプレッシャポットは、薄板セットとアウタケースとの間に配置されている。
【0029】
ボールランプ機構のインナランプレースは、好ましくはフリーホイールポットに結合されている。フリーホイールポットは、ボールランプ装置のインナランプレースと、フリーホイールとの間の結合部材である。例えばフリーホイールポットは、フリーホイール側に、好ましくは一体に形成されるフリーホイール歯列を有し、ランプ側でインナランプレースに結合されている。一実施の形態では、インナランプレースは、フリーホイールポットによりアウタケースに支持されている。
【0030】
摩擦クラッチの別の有利な一実施の形態では、アウタランプレースと摩擦セットとの間に(ランプ側の)プレッシャポットが配置されており、プレッシャポットは、アウタケース内に回転に関して不動に、かつ軸方向で摺動可能に係着されている。
【0031】
本実施の形態は、ランプ側のプレッシャポットおよび薄板セットが組み立てのためにアウタケース内に装入可能であることにより、特に簡単に組み立て可能である。対応する歯列を介してプレッシャポットは、持続的にアウタポットに回転に関して連れ回され、同時にプレッシャポットは、軸方向で摺動可能に支持されている。さらに、プレッシャポット自体は、少量生産であっても大量生産であっても低コストに製造可能、例えば深絞り加工構成部材としてまたは冷間変形加工により製造可能である。好適な構成では、プレッシャポットは、第1の操作要素による圧接のための薄板セット用の第1のストッパとして使用可能であり、第1のストッパは、アウタケースに支持されている。第2の操作要素、好ましくは、ここで説明するプレッシャポットによる圧接のための薄板セット用の第2のストッパには、好ましくはリテーナリングが設けられている。リテーナリングは、薄板セットの反対側に半径方向で装入されている、好ましくは締着されている。
【0032】
摩擦クラッチの別の有利な一実施の形態では、インナケースと、フリーホイールの入力側とは、互いに一直線に並ぶようにかつ/または重なるように方向付け可能なそれぞれ1つの貫通開口を有し、摩擦クラッチを第1の駆動装置および/または第2の駆動装置の被動軸にねじ止めすべく、貫通開口にねじ器具を通すことが可能である。
【0033】
顧客、特に車両メーカは、前組み立てが完了したモジュールを求める傾向を強めている。これには、サプライヤにとっても、自社の従業員により組み立て、検査し終えたシステム全体をモジュールの形で納品できるという利点がある。しかし、このことは、モジュールの組み立て性に関して複数の欠点を結果として伴う。このことは、特に、高いコンパクト性が必要であるときに当てはまる。ここでは、摩擦クラッチの取り付けのために必要な貫通開口を設けることを提案する。ねじ器具用の、互いに一直線に並ぶように方向付け可能な貫通開口は、フリーホイールポットおよびインナケース内に設けられていると同時に、運転中、回転し、加速される構成部材の質量を減じる。一直線に並んだ貫通穴を通して、摩擦クラッチは、駆動装置の被動軸、好ましくは、第2の駆動装置の第2の被動軸にねじ止め可能である。特に好ましくは、必要なねじは、同様に貫通開口を通して挿通可能である。好ましくは、周囲にわたって設けられる貫通開口の数は、ねじ止めの数よりも少なく、かつ/または貫通開口は、それぞれ軸線対称に配置されている。
【0034】
本発明の別の一態様によれば、パワートレーン、好ましくは自動車のパワートレーン用のハイブリッドモジュールであって、少なくとも、
上述の実施の形態による摩擦クラッチと、
電気モータである第1の駆動装置と、
を備えるハイブリッドモジュールを提案する。その際、電気的な駆動装置は、少なくとも1つの摩擦ディスクにトルクを伝達するように接続され、かつ好ましくはフリーホイールの出力側に接続されている。
【0035】
ハイブリッドモジュールは、既に、上述の一実施の形態における摩擦クラッチを有する電気モータを備える。ハイブリッドモジュールは、好ましくは、前組み立てされた構成ユニットとして、特に好ましくは、すべての機能を果たすことができる構成ユニットとして、パワートレーン内に組み立て可能である。特に好ましい一実施の形態では、摩擦クラッチは、電気モータのロータ内に統合されており、好ましくは、ロータは、ロータポットとして構成されている。第2の駆動装置、好ましくは内燃機関と、ハイブリッドモジュールとの合体は、好ましくは、上述の貫通開口を介して可能である。
【0036】
特に好ましくは、ハイブリッドモジュールは、さらに振動ダンパ、例えばデュアルマスフライホイールおよび/または動吸振器、例えば遠心振り子を備える。ハイブリッドモジュールは、好ましくは、直接的に内燃機関のクランク軸に一直線に並ぶように組み立て可能である。ハイブリッドモジュールは、出力側で例えばトランスミッションにまたは直接的に消費器に接続可能である。
【0037】
本発明の別の一態様によれば、第2の被動軸を有する第2の駆動装置と、ハイブリッドモジュールとを備えるハイブリッド車両用のパワートレーンを提案する。その際、摩擦クラッチの摩擦セットが圧接されているとき、第2の駆動装置は、第2の被動軸を介して第1の駆動装置により駆動可能である。
【0038】
パワートレーンは、少なくとも1つの消費器用の、ハイブリッドモジュールおよび/または第2の駆動装置から放出されるトルクを、断接自在、つまり接続および切断可能に提供するように構成されている。消費器の一例は、自動車の少なくとも1つの駆動輪および/または(例えば回生された)電気的なエネルギを蓄積し、提供する電気的なアキュムレータ装置である。反対に、例えば駆動輪から入力される慣性エネルギを吸収することも可能である。少なくとも1つの駆動輪の慣性エネルギは、摩擦クラッチにより内燃機関のエンジンブレーキによって導出可能かつ/または回生のために電気的な発電機として運転可能な電気モータに、つまり制動エネルギを電気的に蓄積するために導入可能である。ハイブリッドモジュールを備えるここで提案するパワートレーンは、簡単に組み立て可能であり、コンパクトな構造空間で、両駆動装置の機能の有用性に対する複雑な要求を充足する。さらに好ましい一実施の形態では、まさに始動される第2の駆動装置、つまり内燃機関のクラッチ係合、またはエンジンブレーキを利用するためのクラッチ係合は、外的なエネルギ供給および外部からの制御入力なしに、機械的に連結されて実施される。
【0039】
本発明の別の一態様によれば、上述のパワートレーンにより駆動可能な少なくとも1つの駆動輪を備えるハイブリッド車両を提案する。
【0040】
今日、大抵の自動車は、フロントドライブを有し、それゆえ好ましくは、駆動ユニットを運転手席の前に、主走行方向に対して横置きしている。まさにこのような配置において、構造空間は特に逼迫しており、それゆえ、小型のハイブリッドモジュールを使用することが特に有利である。
【0041】
この問題は、欧州の分類によるクラインワーゲン(Kleinwagen:小型車)クラスの乗用車において先鋭化してしまう。クラインワーゲンクラスの乗用車において使用される機能ユニットは、より大型の車両クラスの乗用車と比較してそれほど小型化されているわけではない。それにもかかわらず、利用可能な構造空間は、クラインワーゲンの場合、大幅に小さい。上述のパワートレーンは、小型のハイブリッドモジュールを備える。内燃機関の接続時のソフトなクラッチ係合が機械的に制御されていることにより、内燃機関のすべての利点と、電気モータのすべての利点とが、同時に利用可能である。特に好ましくは、始動された内燃機関は、運転回転数に達したとき、機械的に連結され接続され、このために外的なエネルギが供給される必要はないか、または外的な入力が行われる必要はない。
【0042】
乗用車は、例えば寸法、価格、重量および出力に応じて車両クラスに分類される。この定義は、市場の要求に合わせて絶えず変化する。米国市場では、欧州の分類でいうクラインワーゲンおよびクラインストワーゲン(Kleinstwagen:最小型車)のクラスの車両は、サブコンパクトカー(Subcompact Car)のクラスに分類され、英国市場では、スーパーミニ(Supermini)のクラスあるいはシティカー(City Car)のクラスに相当する。クラインストワーゲンクラスの例は、フォルクスワーゲン・アップ!またはルノー・トゥインゴである。クラインワーゲンクラスの例は、アルファロメオ・ミト、フォルクスワーゲン・ポロ、フォード・フィエスタまたはルノー・クリオである。
【0043】
以下に、上述の発明について、該当する技術的背景を前提に、好ましい形態を示す添付図面を参照しながら詳しく説明する。本発明は、純然たる概略図によって何ら限定されるものではない。ここで附言しておくと、図面は、正しい縮尺で示したものではなく、大きさの関係を規定するには不適である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、デュアルマスフライホイールと、内燃機関(第2の駆動装置30)をハイブリッド車両33のパワートレーンに連結したり、パワートレーンから連結解除したりする摩擦クラッチ27と、電気機械(第1の駆動装置29(電気モータまたは電気的な走行用モータともいう))とのアッセンブリの好ましい一実施例に関する。駆動装置29および30は、
図2に示してある。本明細書中、本発明にとって本質的とはいえない特徴は、任意選択的と解すべきである。それゆえ、以下の説明は、以下に説明する特徴の部分的な組み合わせを含む、パワートレーン、例えばハイブリッド車両33のパワートレーンの別の実施例にも関する。特に以下の説明は、摩擦クラッチ27の複数の実施例に関する。
【0046】
ハイブリッド車両33のパワートレーン32(
図2参照)の
図1に示した部分の入力側には、デュアルマスフライホイール36の一次側2に、第2の駆動装置30を形成する図示しない内燃機関のクランク軸への結合用の取り付け部1が設けられている。デュアルマスフライホイール36の二次側3は、遠心振り子4を有する。パワートレーン32とともに摩擦クラッチ27は、ローテーション軸線28ともいう回転軸線(D)回りに回転可能に支持されている。デュアルマスフライホイール36の二次側3は、摩擦クラッチ27のアウタケース5に結合されている。
【0047】
摩擦クラッチ27は、内燃機関30をハイブリッド車両33のパワートレーン32に連結し、パワートレーン32から連結解除するように形成されており、C0クラッチともいう。摩擦クラッチ27は、本実施の形態では、乾式の薄板を積層した多板クラッチとして形成されており、図示しない外部のアクチュエータ装置、例えばコンセントリックスレーブシリンダ(CSC)により、コースティング運転中、内燃機関30のスタートまたはエンジンブレーキの利用のために係合可能である。アウタケース5に対して付加的に摩擦クラッチ27は、摩擦クラッチ27の半径方向45(R)でアウタケース5の内側に配置されるインナケース6と、アウタケース5とインナケース6との間に配置される摩擦ペア10とを備えている。摩擦ペア10により、係合状態では、アウタケース5からインナケース6にトルクを伝達可能である。さらに、摩擦クラッチ27は、第2の操作要素、本実施の形態では第1のプレッシャポット16を備え、第2の操作要素により、摩擦ペア10は、摩擦クラッチ27の軸方向42(A)の第2の操作方向43(B1)で係合可能である。さらに、摩擦クラッチ27は、第1の操作要素、本実施の形態では第2のプレッシャポット17を備え、第1の操作要素により、摩擦ペア10は、第2の操作方向43とは反対方向に方向付けられた第1の操作方向44(B2)で係合可能である。
【0048】
第1のプレッシャポット16は、ボールランプ機構19と相互作用関係にあり、ボールランプ機構19により、摩擦クラッチ27の被動側にかかっているトルクの一部が、第2の操作方向43(B1)で作用する(第2の)圧着力に変換可能である。
【0049】
第2のプレッシャポット17は、半径方向内側で、上述の図示しないアクチュエータ装置により第1の操作方向44(B2)で操作可能であり、これにより、摩擦ペア10を第1のプレッシャポット16とは無関係に係合させることができる。同様に、第1のプレッシャポット16も、摩擦ペア10を第2のプレッシャポット17とは無関係に係合させることができる。
【0050】
ボールランプ機構19は、半径方向45(R)および/または軸方向42(A)で摩擦クラッチ27の内側、好ましくはアウタケース5の内側および/または摩擦ペア10の内側に配置されている。さらに、ボールランプ機構19は、本実施の形態では、軸方向42(A)でスラスト軸受23を介して回動可能にアウタケース5に支持されている。ボールランプ機構19は、第1のプレッシャポット16に結合された少なくとも1つのアウタランプレース21と、間接的または直接的にスラスト軸受23に支持された少なくとも1つのインナランプレース20とを有する。好ましくは、インナランプレース20とアウタランプレース21との間に、摩擦クラッチ27の周方向で複数のボール22が配置されている。
【0051】
半径方向45(R)でインナケース6の内側には、フリーホイール24が配置されており、フリーホイール24を介して一方の回転方向でトルクがボールランプ機構19に、好ましくはフリーホイールポット25を介して伝達可能であり、これにより、摩擦ペア10を第1の操作方向43で係合させることができる。インナランプレース20は、フリーホイールポット25を介してスラスト軸受23に支持されている。フリーホイール24のアウタレース、つまり出力側は、インナケース6に相対回動不能に結合されているか、またはインナケース6と一体に形成されるボス7内に、相対回動不能に配置されている。代わりに、インナケース6は、ボス7と一体に形成されていてもよい。ボス7は、第1の駆動装置29の第1の被動軸34に、好ましくは差し込み歯列8を介して結合可能である。
【0052】
フリーホイールポット25および/またはボス7は、軸方向42(A)で延在する少なくとも1つのねじ止め開口26を有している。ねじ止め開口26は、アウタケース5、またはアウタケース5に結合される構成部材、例えばデュアルマスフライホイール36、すなわちデュアルマスフライホイール36の一次側2を、第2の駆動装置30の第2の被動軸、例えば内燃機関のクランク軸にねじ止めすることができるように形成されている。この場合、このアッセンブリの図示の部分は、そのように前組み立てされて第2の被動軸と結合可能である。
【0053】
摩擦ペア10は、軸方向42で交互に、好ましくは乾式動作型の外側薄板11および内側薄板12を有する。外側薄板11および内側薄板12のうちの第1の端末薄板13は、第1のプレッシャポット16と当接し、第1の端末薄板13に対して軸方向42で反対側に位置する第2の端末薄板14は、第2のプレッシャポット17と当接している。外側薄板11は、図示の実施例では、両端末薄板13および14を含めて、相対回動不能にアウタケース5に取り付けられている一方、内側薄板12は、相対回動不能にインナケース6に取り付けられており、それぞれ、好ましくは差し込み歯列が使用されている。さらに、外側薄板11および/または内側薄板12は、軸方向42(A)でプレッシャポット16および17によって変位可能である。第1のプレッシャポット16は、軸方向42(A)でアウタケース5と第1の端末薄板13との間に配置されている。
【0054】
隣り合う外側薄板11間および/または隣り合う内側薄板12間には、それぞれ少なくとも1つの波形ばね15が配置されている。波形ばね15は、相応のプリロードを有し、これにより、摩擦ペア10がレリーズされる際、薄板11および12を引き離すことができる。リテーナリング18は、第2の端末薄板14に当接するように構成されており、薄板11および12、特に外側薄板11を、アウタケース5の開放側に向かって止めている。
【0055】
ボス7の差し込み歯列8に差し込まれる第1の被動軸34には、電気機械あるいは電気モータ29のロータ9が相対回動不能に結合されている。これによりロータ9は、インナケース6に相対回動不能に結合される。さらに、第1の被動軸34は、トランスミッション入力軸として形成されているか、またはトルクコンバータまたは発進クラッチ(シングルクラッチまたはデュアルクラッチ)に結合されていることができる。
【0056】
電気機械29あるいは電気モータは、好ましくは電気的な走行用モータとして形成されており、電気的な走行用モータは、走行運転のみならず、ジェネレータ運転でも運転可能である。
【0057】
次のことは図示していないが、摩擦クラッチ27が半径方向45(R)および/または軸方向42(A)で少なくとも部分的にロータ9の内側に収容されていると、有利である。このことは、例えばロータ9が、ポット形に形成されていて、
図1に関して半径方向45(R)でアウタケース5の外側に(図中、右向きに)デュアルマスフライホイール36に向かって延在していることによって実現される。これにより、軸方向の構造空間を減じることができる。
【0058】
電気的な走行、セーリング運転または回生時、摩擦クラッチ27はレリーズされており、内燃機関30は連れ回されて引きずられない。引きずりトルクを最小限に減じるべく、薄板11および12は、波形ばね15により均等に離間されている。
【0059】
コースティングトルク(内燃機関スタート/エンジンブレーキ)を発生させるべく、薄板11および12は、第2のプレッシャポット17を介して、外部からの入力と外的なエネルギとにより直接的に操作され、
図1に関して左向きに押圧される。
【0060】
その際、第2のプレッシャポット17は、圧着力、ひいてはトルクを正確にコントロールすることができるように、ある程度の柔軟性を有している。
【0061】
内燃機関が作動し、電気的な走行用モータに追い付く(内燃機関の回転数と電気的な走行用モータの回転数とが同じになる)と、フリーホイール24は係合し、フリーホイール24により、トルクの一部が、ボールランプ機構19のインナランプ20に伝達される。このことは、結果として、ランプレース20および21相互の相対回動、つまりボールランプ機構19のねじり運動を発生させる。
【0062】
ボールランプ機構19の相対回動により、ボールランプ機構19の(最小の)作動長さ48が、(最大の)作動長さ49に拡大され、軸方向力が発生される。この軸方向力により、摩擦クラッチ27は、内燃機関30のドライビング運転中、持続的に閉鎖されたままになる。このプロセス時、薄板11および12は、
図1に関して右向きに、第2の端末薄板14がリテーナリング18に当接するまで変位される。これにより、摩擦クラッチ27は、ドライビング運転中、エネルギを要さずに閉鎖されている。
【0063】
内燃機関30がもはや必要とされなければ、例えば燃料供給が断たれる。内燃機関30の回転数が電気的な走行用モータ29の回転数よりも低くなると直ちに、摩擦クラッチ27は、自動的に開き、薄板11および12間に配置される波形ばね15は、個々の薄板11および12を突き放し、その際、ボールランプ機構19をその相対的な初期位置へと逆回転させ、その結果、再び最小の作動長さ48が生じる。
【0064】
電気的な走行、セーリング運転および回生時、C0クラッチは、内燃機関を連れ回して引きずる必要がないように、レリーズされている。
【0065】
この装置の場合、コースティング運転からドライビング運転への移行時、摩擦クラッチ27が開放されず、薄板11および12の(
図1で見て左から右への)変位だけが実施されることは、有利である。
【0066】
上述の実施例は、ロータ内蔵型のC0クラッチに関し、ロータ内蔵型のC0クラッチは、コースティングトルクを発生させるべくアクチュエータ装置を介して(電気式、液圧式または空気圧式に)操作されることができる。ドライビング運転中、トルク伝達は、エネルギを要さずに、ボールランプ機構19のパイロット制御要素として形成されたフリーホイール24を介して実施される。主トルクは、摩擦ペア10を介して伝達される。
【0067】
図2は、ハイブリッド車両33内のパワートレーン32を示している。パワートレーンは、第1の駆動装置29、好ましくは走行用モータとして構成される電気モータと、第2の駆動装置30、好ましくは内燃機関とを備え、両駆動装置29,30は、それぞれ個々にまたは直列に運転可能である。このために、両駆動装置29および30間には、摩擦クラッチ27が、好ましくは上述したように配置されている。この駆動ユニット全体は、トルクを伝達するように、左側の駆動輪37と右側の駆動輪38とに接続されている。この接続関係は、
図2では概略的に示してあり、必要な中間要素の図示は省略した。駆動ユニットの原動機軸線41は、長手方向軸線40に対して横方向に、運転手席39の前方に配置されている。
【0068】
本明細書において提案するハイブリッドモジュール用の摩擦クラッチにより、内燃機関と電気モータとの有利な協働が、機械的に保証される。
【0069】
さらに、本発明によって以下の実施の形態を提案する:
1.内燃機関をハイブリッド車両のパワートレーンに連結し、パワートレーンから連結解除する摩擦クラッチ(27)であって、アウタケース(5)と、摩擦クラッチ(27)の半径方向(R)でアウタケース(5)の内側に配置されるインナケース(6)と、アウタケース(5)とインナケース(6)との間に配置され、係合状態においてトルクをアウタケース(5)からインナケース(6)に伝達可能である摩擦ペア(10)と、を備え、摩擦クラッチ(27)は、第1のプレッシャポット(16)を備え、第1のプレッシャポット(16)により摩擦ペア(10)は、摩擦クラッチ(27)の軸方向(A)で第1の操作方向(B1)で係合可能であり、かつ摩擦クラッチ(27)は、第2のプレッシャポット(17)を備え、第2のプレッシャポット(17)により摩擦ペア(10)は、第1の操作方向(B1)とは反対方向に方向付けられた第2の操作方向(B2)で係合可能である、摩擦クラッチ(27)。
2.第1のプレッシャポット(16)は、ボールランプ機構(19)と相互作用関係にあり、ボールランプ機構(19)により、摩擦クラッチ(27)の被動側にかかっているトルクは、第1の操作方向(B1)で作用する力に変換可能である、実施の形態1に記載の摩擦クラッチ(27)。
3.ボールランプ機構(19)は、半径方向で(R)および/または軸方向(A)で摩擦クラッチ(27)の内側、好ましくはアウタケース(5)および/または摩擦ペア(10)の内側に配置されている、実施の形態2に記載の摩擦クラッチ(27)。
4.ボールランプ機構(19)は、軸方向(A)でスラスト軸受(23)を介して回動可能にアウタケース(5)に支持されている、実施の形態2または3に記載の摩擦クラッチ(27)。
5.ボールランプ機構(19)は、第1のプレッシャポット(16)に結合された少なくとも1つの好ましくはリング形のアウタランプ(21)と、間接的または直接的にスラスト軸受(23)に支持された少なくとも1つの好ましくはリング形のインナランプ(20)とを有する、実施の形態4に記載の摩擦クラッチ(27)。
6.半径方向(R)でインナケース(6)の内側にフリーホイール(24)が配置されており、摩擦ペア(10)を第1の操作方向(B1)で係合させるべく、フリーホイール(24)を介して一方の回転方向でボールランプ機構(19)に、好ましくはフリーホイールポット(25)を介してトルクを伝達可能である、実施の形態2から5までのいずれか1つの実施の形態に記載の摩擦クラッチ(27)。
7.インナランプ(20)は、フリーホイールポット(25)を介してスラスト軸受(23)に支持されている、実施の形態5を引用する実施の形態6に記載の摩擦クラッチ(27)。
8.フリーホイール(24)のアウタレースは、相対回動不能にインナケース(6)に結合またはインナケース(6)と一体に形成されるボス(7)内に相対回動不能に配置されているか、またはボス(7)と一体に形成されており、ボス(7)は、被動軸に結合可能である、実施の形態6または7に記載の摩擦クラッチ(27)。
9.フリーホイールポット(25)および/またはボス(7)は、軸方向(A)で延在する少なくとも1つのねじ止め開口(26)を有し、ねじ止め開口(26)は、アウタケース(5)またはこのアウタケース(5)に結合される構成部材、例えばデュアルマスフライホイールを、内燃機関のクランク軸にねじ止めすることができるように形成されている、実施の形態6から8までのいずれか1つに記載の摩擦クラッチ(27)。
10.摩擦ペア(10)は、軸方向(A)で交互に、好ましくは乾式動作型の外側薄板(11)および内側薄板(12)を有し、外側薄板(11)および内側薄板(12)のうちの第1の端末薄板(13)が、第1のプレッシャポット(16)と当接し、第1の端末薄板(13)とは軸方向(A)で反対側に位置する第2の端末薄板(14)が、第2のプレッシャポット(17)と当接し、好ましくは、外側薄板(11)は、相対回動不能にアウタケース(5)に、内側薄板(14)は、相対回動不能にインナケース(6)に取り付けられている、実施の形態1から9までのいずれか1つに記載の摩擦クラッチ(27)。
11.隣り合う外側薄板(11)間および/または隣り合う内側薄板(12)間には、それぞれ少なくとも1つの波形ばね(15)が配置されており、波形ばね(15)は、摩擦ペア(10)がレリーズされる際、薄板(11,12)を引き離すように形成されている、実施の形態10に記載の摩擦クラッチ(27)。
12.第1のプレッシャポット(16)は、軸方向(A)でアウタケース(5)と第1の端末薄板(13)との間に配置されている、実施の形態10または11に記載の摩擦クラッチ(27)。
13.実施の形態1から12までのいずれか1つの実施の形態による摩擦クラッチ(27)と、好ましくは電気的な走行用モータとして形成されており、特に好ましくは走行運転だけではなく、ジェネレータ運転でも運転可能な電気機械であって、電気機械は、ロータ(9)を有し、ロータ(9)は、インナケース(6)に相対回動不能に結合されている電気機械と、のアッセンブリであって、好ましくは、摩擦クラッチ(27)は、半径方向(R)および/または軸方向(A)で少なくとも部分的にロータ(9)の内側に収容されている、アッセンブリ。