(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840152
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】保冷輸送容器用の熱保護貯蔵セル
(51)【国際特許分類】
F25D 3/00 20060101AFI20210301BHJP
B65D 81/18 20060101ALI20210301BHJP
A61J 1/00 20060101ALI20210301BHJP
A01N 1/02 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
F25D3/00 B
B65D81/18 A
F25D3/00 C
A61J1/00 430
A01N1/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-535242(P2018-535242)
(86)(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公表番号】特表2018-532976(P2018-532976A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】EP2016072995
(87)【国際公開番号】WO2017055280
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年6月20日
(31)【優先権主張番号】15187043.3
(32)【優先日】2015年9月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518102539
【氏名又は名称】スイスメドパック テクノロジエン ジェイピー. ビュッティカー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ビュッティカー, ジャン−ピエール
【審査官】
森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0311170(US,A1)
【文献】
特開2001−330351(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0186577(US,A1)
【文献】
特表2013−522134(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0085840(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 3/00
A01N 1/02
A61J 1/00
B65D 81/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度感性物品を、摂氏約2度の下側温度と摂氏約8度の上側温度との間の温度範囲で輸送するための輸送容器(7)であって、
前記温度感性物品を収容する内部空間(6)と、
前記内部空間(6)を取り囲むセル壁(91)であって、底壁、側壁、蓋壁を備えるセル壁(91)と
を備える輸送容器(7)において、
下側温度から上側温度までの温度範囲を確保するための少なくとも1つの熱保護貯蔵セル(1)が、前記内部空間(6)の前記底壁、前記側壁、前記蓋壁の各々に隣り合って、前記セル壁(91)内に配置されており、
前記熱保護貯蔵セル(1)の各々が、セル本体(2)と、前記セル本体(2)内に配置された2つの充填チャンバ(3)と、を備え、
前記熱保護貯蔵セル(1)の各々の前記2つの充填チャンバ(3)が平らに並んでおり、前記2つの充填チャンバ(3)が前記内部空間(6)の前記底壁、前記側壁、前記蓋壁の各々に接し、
前記熱保護貯蔵セル(1)の各々の前記2つの充填チャンバ(3)の1つが、ほぼ前記下側温度で相変化する第1の相変化材料(4)によって充填され、
前記熱保護貯蔵セル(1)の各々の前記2つの充填チャンバ(3)の1つが、ほぼ前記上側温度で相変化する第2の相変化材料(5)によって充填される
ことを特徴とする、輸送容器(7)。
【請求項2】
断熱材(92)を備え、前記断熱材(92)が、前記熱保護貯蔵セル(1)を覆う、請求項1に記載の輸送容器(7)。
【請求項3】
前記第1の相変化材料(4)が、ほぼ前記下側温度において固体と液体との間で相変化する、請求項1又は2に記載の輸送容器(7)。
【請求項4】
前記第2の相変化材料(5)が、ほぼ前記上側温度において固体と液体との間で相変化する、請求項1から3のいずれか一項に記載の輸送容器(7)。
【請求項5】
前記充填チャンバ(3)の各々が少なくとも1つのシールを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の輸送容器(7)。
【請求項6】
医薬品の輸送のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の輸送容器(7)の使用法。
【請求項7】
人間または動物の器官の輸送のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の輸送容器(7)の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念と同様な熱保護貯蔵セル(略称:熱セル)、ならびにこの種の熱保護貯蔵セルを有する輸送容器およびその輸送容器の使用法に関する。
【0002】
熱セル本体と、熱セル本体に配置されている少なくとも1つの充填チャンバとを有する熱セルは、下側温度曝露限界から上側温度曝露限界までの温度範囲を確保するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
好ましい、またはさらには必須な温度範囲に物品を守るために、現在、様々な種類の装置が使用されている。中でも、物品を輸送するために、保冷容器、どちらかと云えば保冷輸送容器が使用される可能性がある。薬品および特にバイオ薬品を輸送するとき、輸送全体を通して要求温度範囲が保証されることが極度に重要であることが多い。温度範囲を確保することができなければ、これら薬品が使用できなくなり得る。
【0004】
既知の保冷輸送容器10が、
図3、4、および5に示されている。これら保冷輸送容器10は、基本的に互いに類似な構成になっている。通常、それら保冷輸送容器は、バイオ薬品もしくは旧来の薬品または食料品類など、内部空間14内の物品13を包み込む熱セルの簡単な構造として、一組の温暖エネルギー貯蔵セル11と低温エネルギー貯蔵セル12とを備える。包み込まれた内部空間14は、物品の温度を、確実に、たとえば摂氏2〜8度にするために使用される。他の層は、温暖および低温エネルギー貯蔵セル11、12の外側に配置された断熱材15、および外側段ボール箱16である。全体重量が30kgの重さを超える場合、取扱いを安定させ簡便にするように、木製のパレットが使用される。
【0005】
これら解決手法は現状技術において既知である。1つは、
図3および4に示される別々の温暖エネルギー貯蔵セル11と低温エネルギー貯蔵セル12とが可能性あり、第2は、
図5の温冷組合せセル11/12である。
【0006】
第1の解決策は、摂氏5度の低温貯蔵室内で事前調整する必要のある温暖エネルギー貯蔵セルを、パラフィンまたは水によって充填することである。水で充填されている低温エネルギー貯蔵セルは、冷凍庫内で摂氏−20度または摂氏−10度で事前調整される。
【0007】
第2の解決策は、摂氏3.5度の高精度低温貯蔵室内で摂氏±0.5度まで事前調整する必要のある温冷組合せセルをパラフィンによって充填することである。
【0008】
第1の解決策における別々の温暖エネルギー貯蔵セルと低温エネルギー貯蔵セルとは、輸送容器の熱性能の相互減殺を生じかねない高い温度差を有する。たとえば保冷輸送容器が、空港の貨物ターミナルまたは通関手続きで数日間取り残された場合、薬品が凍結し、患者に投与できなくなり得る。
【0009】
第2の解決策の欠点は、熱性能の冷却と加熱への分離である。この解決策の別の欠点は、高コストの精密な事前調整、ならびにパラフィンの組成変化である。
【0010】
現状技術の上記両方の解決策は、種々の使用済み保冷輸送容器ならびに貯熱セルは、再使用できず、使用後に廃棄する必要があるという環境上および経済上の弱点を通常有する。
【発明の概要】
【0011】
新発明の目的は、温度感性物品を、効率的かつ有用な方式で、特にある温度範囲内での輸送に際し、有効かつ確実に保護することである。
【0012】
本発明によれば、課題は、独立請求項1の特徴部により定義されている熱セル、ならびに従属請求項10の特徴部により定義されている保冷容器によって解決される。発明の有利な変形実施形態が従属請求項からもたらされる。
【0013】
本発明の基盤は以下により構成される。すなわち、下側温度曝露限界から上側温度曝露限界までの温度範囲を確保するための熱セルが、熱セル本体と、熱セル本体内に配置された少なくとも1つの充填チャンバから構成される。充填チャンバが、下側温度点で相変化する第1の相変化材料(略号:PCM)によって充填される。少なくとも1つの充填チャンバは、さらに、上側温度点で相変化する第2の相変化材料によって充填される。
【0014】
PCMに関連する用語「相」は、PCMの集合状態を表すことができる。用語「相」と「集合状態」とは、同義に使用することができる。
【0015】
本発明に関連する用語「確保(保護)」は、ある期間ある状態に保つことを意味し得る。このある状態には、温度感性物品を保つべき温度が含まれる。確保とは、物品をたとえば輸送に必要なある期間ある温度範囲内に保つべきことを表し得る。
【0016】
用語「温度感性物品」は、必要とされる温度範囲外で保持されると組成または品質が損なわれる物体または物質を意味し得る。品質は、必要とされる温度範囲外である期間保持されると損なわれ得る。温度感性物品は、たとえば薬品および特にバイオ薬品であり得る。
【0017】
熱セル本体は、たとえばポリエチレンまたは同様な固体材料から製作することができる。
【0018】
少なくとも1つの充填チャンバは、PCMを安全に収容することができる。充填チャンバは、PCMが真正であることを保証することができる不正開封防止保安シールを備えるべきである。それによって、PCMの不正操作を防止することができる。
【0019】
本発明は、保冷輸送容器または輸送容器もしくは保冷容器に使用することができる温冷組合せセルを使用する。本発明による少なくとも1つの充填チャンバは、同時温冷保護機能を装備することができる。
【0020】
下側温度は、通常、上側温度とは異なる。上側温度は下側温度より高い。したがって、温度幅は、上側温度から下側温度を差し引くことによって確定することができる。通常のPCMは、水性塩溶液、水、塩水和物、アルカンからなるパラフィンでもよい。
【0021】
本発明は、物品の保護目的のために、PCM集合状態変化にエンタルピーを使用することによる比較的高い融解潜熱、溶解熱、または吸収熱を利用する。たとえば固体と液体との間の相転移に伴うエンタルピーの使用は、多数の凝固/融解サイクル後も高い非劣化性を有する可逆的な熱力学プロセスである。エンタルピーは、示差走査熱量測定法によって、
図2に示されたJ/gで測定することができる。物品の貯蔵温度が、ある温度範囲に定められている場合、熱セル内での保護または熱セル内での輸送は、それと同じ温度範囲内でなければならない。
【0022】
これが、最大および最小バリヤ温度、または温度範囲の上側温度および下側温度の設定の仕方である。熱セルは、その温度範囲からの逸脱を防止する。能動的な冷却または加熱は行われない。
【0023】
熱セルは、2つの独立した保護機能を有する。最小バリヤ温度についての保護に関する機能、および最大バリヤ温度についての保護に関する機能である。
【0024】
冷気側から最小バリヤ温度を保護するために、適切な量の第1のPCMが境界に配置される。冷気または冷気エネルギーが熱セルに近付くと、冷気エネルギーが、たとえば液体PCMの、たとえば固体または結晶相への相変化を生じさせる。
【0025】
暖気から最大バリヤ温度を保護するために、適切な量の第2のPCMが境界に配置される。暖気または暖気エネルギーが熱セルに近付くと、暖気エネルギーが、たとえば固体または結晶PCMの、たとえば液相への相変化を生じさせる。
【0026】
本発明は、現状技術に比較して利点をもたらす。
【0027】
様々な種類の第1および第2のPCMを使用することによって、温度を、物品の必要性に応じて効果的に設定することができる。たとえば、物品が薬品であれば、温度範囲を、薬品の保護範囲に設定することができる。
【0028】
さらに、少なくとも1つの熱セル内の異なる2つのPCMが、最大および最小バリヤ温度を正確に、かつ潜熱の損失なしに守ることができる。
【0029】
熱性能の相互減殺を起こさず、したがって熱損失を防止することができるために、2つのPCMが比較的高い潜熱貯蔵量を達成するので、熱セルは、数倍の保護性能または性能重量比を有し得る。
【0030】
熱セルの比較的高い保護性能によって、保冷輸送容器または保冷容器の壁厚を減らすことができ、したがって、従来の輸送容器と比較して3乗の割合で容器の利用容量が増える。
【0031】
バイオ薬品が凍結する危険性を最小限に抑え、または無くすことができる。これは、たとえば保冷輸送容器が、空港の貨物ターミナルまたは通関手続きで数日間取り残された場合に、重要なことになり得、それは、熱セルが、下側または上側温度で、反対向きに、蓄熱または再蓄熱することができるからである。
【0032】
本発明によれば、熱セルは、特に輸送中に、簡単かつ安全な方式で、温度感性物品をその温度範囲内に効果的かつ安全に確保することを容易にする。
【0033】
好ましくは、第1のPCMが、ほぼ下側温度で固相と液相との間で変化する。第2のPCMは、同様に、ほぼ上側温度で固相と液相との間で変化する。この種のPCMは、効果的かつ正確な熱セルの実現に役立つ。
【0034】
下側温度は、好ましくは摂氏2度であり、上側温度は、好ましくは摂氏8度である。この種の最小および最大バリヤ温度は、様々な領域において望まれる温度範囲を画定する。たとえば、薬品、特にバイオ薬品は、この温度範囲内に保持すべきである。また、乳製品、肉、野菜などの食料品類も、この温度範囲内に保持する必要がある。
【0035】
あるいは、下側温度は摂氏約15度であり、上側温度は摂氏約25度である。この種の温度限界は、通常の室温をカバーする温度範囲を容易に画定する。この通常の室温範囲は、たとえば様々な薬品を貯蔵するために望まれ得る。
【0036】
あるいは、上側温度は、摂氏約15〜25度の範囲にある。この範囲の上側温度は、室温の範囲として様々な領域で望まれ得る。
【0037】
あるいは、下側温度は摂氏約−25度であり、上側温度は摂氏約−18度である。この種の温度限界は、凍結温度を容易に設定する。この種の温度範囲は、物品を長期間貯蔵しておかねばならない分野で望まれ得る。たとえば、この種の温度範囲は、食料品類を冷凍し貯蔵するために使用することができる。
【0038】
あるいは、下側温度は摂氏約−90度であり、上側温度は摂氏約−70度である。この種の温度限界は、通例薬品産業で望まれる温度範囲を容易に実現する。
【0039】
好ましくは、少なくとも1つの充填チャンバが、少なくとも2つ、もしくはきっかり2つの充填チャンバを備え、それによって、少なくとも2つの充填チャンバの1つには第1のPCMを入れ、第2のその少なくとも2つの充填チャンバには第2のPCMを入れる。そのような熱セルによって、互いに独立にPCMを選択することが可能になる。2つのPCMが、混合せざるを得ず、その結果相互に作用してしまうことを、防止することができる。2つのPCMを、それらが互いに損ない合うか否かを斟酌することなしに、使用目的に適するように選択することができる。
【0040】
本発明の別の態様は、温度感性物品を下側温度から上側温度までの温度範囲内で輸送するための輸送容器に関する。輸送容器は、温度感性物品を収容する内部空間と、内部空間を取り囲むセル壁とを備える。少なくとも1つの熱セルが、前述のように、セル壁内に配置される。
【0041】
用語「収容する」は、熱セルの内部空間内に物品を置き、横たえ、または配置することのいずれをも意味し得る。したがって、内部空間は、たとえば開けることが可能でなければならないというように、アクセス可能でなければならない。物品を、ここで、内部空間内に置き、横たえ、または配置することができ、次いで、内部空間を再び閉じることができる。内部空間は、完全に閉鎖可能であり、その結果、物品は、セル壁によって完全に取り巻かれる。
【0042】
この種の上述の熱セルは、自己治療患者用の小さな輸送容器もしくは宅配輸送容器、または航空コンテナもしくは舶用コンテナの大きさのパレットベースの輸送容器など、あらゆる種類の輸送容器に使用することができる。熱セルの上述の効果および利点は、この種の輸送容器によって効果的に実現することができる。特に、これら効果および利点は、輸送容器が頻繁に使用されるときに達成することができる。
【0043】
本発明による、輸送容器の熱セル、または輸送容器全体は、様々な方式で再使用することができる。それら容器は、たとえば薬品輸送用に使用した後に食料品類用の保冷容器として使用することができる。これは、環境的ならびに経済的に有利かつ有益であり得る。
【0044】
輸送容器内の少なくとも1つの熱セルを、断熱材によって覆うべきである。用語「覆う」は、本文脈では、熱セルを少なくとも部分的に外側から囲むことを意味し得る。たとえば、少なくとも1つの熱セルを、このように断熱材によって囲むことができる。
【0045】
断熱材は、セル壁にぴったり付けられる柔軟な材料でもよいし、パネルなどのような固い材料から構成することもできる。
【0046】
この種の断熱材は、輸送容器の有効性を向上させることができる。特に、輸送容器の外側の極端な温度変化が熱セルへ伝わるのを低減させることができる。
【0047】
好ましくは、輸送容器は、内部空間を画成する内壁に配置された保護被覆を備える。この種の保護被覆は、物品の極めて効率的、防護的、かつ安全な収容を容易にすることができる。保護被覆は、内側容器の形でたとえば段ボール紙から製作することができる。
【0048】
本発明の別の態様は、上述の方式の輸送容器の好ましい使用法に関する。
【0049】
本発明によれば、輸送容器は、薬品の輸送に使用することができ、下側温度が摂氏約2度かつ上側温度が摂氏約8度であり、下側温度が摂氏約15度かつ上側温度が摂氏約25度であり、下側温度が摂氏約−25度かつ上側温度が摂氏約−18度であり、または、下側温度が摂氏約−90度かつ上側温度が摂氏約−70度である。
【0050】
本発明によれば、輸送容器は、食料品類の輸送に使用することができ、下側温度が摂氏約−25度かつ上側温度が摂氏約−18度であり、または上側温度が摂氏約2度かつ上側温度が摂氏約8度である。
【0051】
本発明によれば、輸送容器は、人間または動物の器官の輸送に使用することができ、上側および下側温度は、人間または動物の器官に適合させなければならない。
【0052】
本発明が、好ましい設計形態で説明されているが、本発明の範囲を逸脱することなく多くの変更および変形を行うことができる。したがって、添付特許請求の範囲は、本発明の範囲の一部である変更および変形を包含することに留意されたい。
【0053】
諸概略図が、本発明のさらに多くの詳細および利点を示す。特に、本発明による熱セルおよび本発明による輸送容器(
図1および2)がより詳細に示されている。
図3、4、および5に上記の現状技術が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明による熱セルを有する本発明による輸送容器の設計例の図である。
【
図2】示差走査熱量測定法によって測定されたPCMの熱流の過程のグラフである。
【
図3】現状技術の輸送容器の第1の設計形態の図である。
【
図4】現状技術の輸送容器の第2の設計形態の図である。
【
図5】現状技術の輸送容器の第3の設計形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
ある種の用語が、実際的な理由で以下の説明に使用されるが、限定するものではない。用語「右」、「左」、「下」、および「上」は、図面内での方向である。用語「内側へ」、「外側へ」、「下方へ」、「上方へ」、「左方へ」、「右方へ」、または類似語は、個々の部品の配置、個々の部品の移動、ならびに図面に示された発明品および個々の部品の幾何学的中心への、またはそれらからの方向を記述するために使用される。たとえば、図面の部品が反転されると、「下方」と記述されている要素および特徴は、以降「上方」になる。術語には、上記の用語に加えて、派生語および類似語も含まれる。
【0056】
図1は、本発明による輸送容器の設計形態としての保冷輸送容器7を示す。保冷輸送容器7は、セル壁91によって囲まれた、温度感性物品を収容するための約8リットルの内部空間6を有する。セル壁91の一方の側面には、内部空間6を画定する保護層8が装着されている。内部空間6は、平坦な水平底壁、垂直な側壁、水平な蓋壁による正方形断面を有する。薬品は、内部空間6の底壁上に置くことができる。
【0057】
セル壁91には、内部空間6の周りに配置された複数の熱セル1が設置されている。各側壁、底壁、蓋壁において、熱セルは、内部空間6に接している。熱セル1は、それぞれ、2つの充填チャンバ3がその中に配置されているセル本体2を含む。充填チャンバ3は、平らに並んでおり、その結果、両方共に、対応する内部空間6壁に接する。各熱セル1の2つの充填チャンバ3には、第1および第2のチャンバ3が含まれる。第1の充填チャンバ3は、摂氏約2度の温度で相変化する第1のPCM4によって充填される。第2の充填チャンバ3は、摂氏約8度の温度で相変化する第2のPCM5によって充填される。第1および第2のPCM4、5は、それぞれ摂氏2度の温度および摂氏8度の温度で固体と液体との間で相変化する。
【0058】
セル壁91は、外側を、断熱材92によって取り囲まれている。そのようにして、熱セル1は、断熱材92内に包み込まれ、その結果、短期間の温度変化および日照から防護される。断熱材92は、輸送容器底部および輸送容器蓋になる。断熱材92の輸送容器蓋は、持ち上げることができ、したがって、内側部分をアクセス可能にすることができる。輸送容器7は、外方へ、外側壁93によって終わる。外側壁93は、輸送容器7のあらゆる部分を包容する。外側壁は上部から開けることができる。外側壁93は、ボール紙または段ボール紙から製作することができる。
【0059】
内部空間6は、PCM4、5がそれぞれ中に入っている第1および第2の充填チャンバ3によって、摂氏2〜8度の温度に保持することができる。内部空間6に入れられている薬品を、輸送中、保護することができる。
【0060】
摂氏2度より低い低温が断熱材92を通り抜けた場合、第1の充填チャンバ3内の第1のPCM4が液体から固体へ相変化する。そのようにして、内部空間6は、低温放射から守られ続ける。第1のPCM4は、低温バリヤとして働く。
【0061】
摂氏8度より上の暖温が、断熱材92を通り抜けた場合、第2の充填チャンバ3内の第2のPCM5が、固体から液体へ相変化する。そのようにして、相対的に適切な量の暖温を吸収することができ、内部空間6は、暖温放射から守られ続ける。第2のPCM5が暖温バリヤとして働く。
【0062】
図2は、例示的に、熱流が、どのように熱セル1の第2のPCM5を通って流れるかを示す。摂氏−50度から摂氏+50度まで、約1mWのほぼ一定の熱流が存在することが明白である。摂氏−24度の温度で、約4mWへの偏倚が存在する。約18J/gをこの偏倚中に取り込むことができる。より大きい第2の偏倚が、摂氏約8度の温度で示され、この箇所で第2のPCM5が固体から液体へ相変化する。この偏倚中に、第2のPCM5は約150J/gを吸収することができる。それぞれ
図2の測定のようなこの種の解析によって、必要な条件を正確に満たすPCMを同定することができる。特に
図2に示された材料は、摂氏8度の温度に対する温度バリヤとして有効である。
【0063】
本発明が、図および図の説明を用いて記述されているが、この記述は、説明のための例であり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明を限定しないように、一部の構造および技法は、詳細に示されていない。当業者が、本発明の範囲を逸脱することなく、変更または改変を行うことができることは言うまでもない。本発明は、説明された特徴とは異なり得る特徴の様々な組合せを有するさらに多くの実施形態を包含する。たとえば、本発明を以下のように実現することができる。すなわち、
− 第1および第2のPCMを共通の充填チャンバに充填することができる。これによって、熱セルの構造を簡略化することができる。ただし、2つのPCMがそれぞれ相互に悪影響を及ぼさないことが重要である。
− パレット上または航空もしくは舶用コンテナによる輸送容器は、蓋の代わりに側面における開口を設置することができる。
【0064】
この開示は、諸特徴の任意の組合せを有する様々な設計形態を包含する。この開示は、また、異なる種類の指定された特徴に付随して示されているときでも、図中の個々の特徴を包含する。図および説明に示された設計形態からの代替形態を排除することができる。本開示は、特許請求の範囲または設計例で指定された特徴を排他的に含む設計形態、ならびに様々な特徴を含むある種の形態を包含する。
【0065】
用語「包含」およびその派生語は、他の要素または別のステップを排除しない。用語「a」はその多様性を排除しない。特許請求の範囲において言及される一部の特徴の機能は、装置またはステップによって実現することができる。質または結果に関する用語「ほぼ」および類似語は、質または結果を綿密に定義する。値に関する用語「約」は、所与の値の20%以内、10%以内、5%以内、または2%以内にある量または範囲を意味し得る。特許請求の範囲における各参照記号は、本発明の範囲に対する制約を意味しない。