特許第6840163号(P6840163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840163
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】ミルクの分画及び乳画分の超高温滅菌
(51)【国際特許分類】
   A23C 3/03 20060101AFI20210301BHJP
【FI】
   A23C3/03
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-545897(P2018-545897)
(86)(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公表番号】特表2019-506885(P2019-506885A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】US2017020202
(87)【国際公開番号】WO2017151770
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】62/302,843
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515301926
【氏名又は名称】フェアライフ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャキル・ウア−レーマン
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン・コペスキー
(72)【発明者】
【氏名】スコット・バッキノフ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ピーター・ドールマン
(72)【発明者】
【氏名】カルヴィン・ホワイト
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0215828(US,A1)
【文献】 特表2012−515537(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/079108(WO,A1)
【文献】 特開平10−028524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00−23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法であって、
(a)タンパク質に富む画分を含む乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、タンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程であって、前記乳製品組成物が、8ら14質量%のタンパク質を含む工程;
(b)脂肪に富む画分及び乳糖に富む画分またはその誘導体を含む第2乳画分にUHT滅菌処理を施して滅菌第2乳画分を形成する工程であって、前記滅菌第2乳画分が
0.2から8質量%の脂肪;及
2から8質量%の乳糖;
を含む工程;
(c)ミネラルに富む画分を含む第3乳画分に滅菌処理を施して滅菌第3乳画分を形成する工程であって、前記滅菌第3乳画分が、0.4から2質量%のミネラルを含む工程;及び
(d)タンパク質に富む滅菌組成物を滅菌第2乳画分及び滅菌第3乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程;
を含む、方法。
【請求項2】
UHT滅菌が、135℃から145℃の範囲の温度で、1ら10秒の範囲の時間に亘って行われ、さらに
UHT滅菌が、間接加熱、直接加熱、直接蒸気注入、直接蒸気吹込み、直接及び間接加熱のハイブリッド、またはこれらの組み合わせを用いて実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)における滅菌処理が、間接加熱を用いて実施されるUHT滅菌、あるいは限外濾過及び/または精密濾過を使用して実施される濾過滅菌である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)における滅菌処理が、間接加熱を用いて実施されるUHT滅菌である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)における滅菌処理が、限外濾過及び/または精密濾過を使用して実施される濾過滅菌である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
第2乳画分及び/または第3乳画分が、乳水画分をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)が、最終乳製品を形成するための1つ以上の成分の添加をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)が、5ら50℃の範囲の温度にて無菌で実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
最終乳製品が、全乳、低脂肪乳、脱脂乳、バターミルク、フレーバーミルク、低ラクトース乳、高タンパク乳、ラクトースフリー乳、限外濾過乳、精密濾過乳、濃縮乳、無糖練乳、あるいは、高タンパク、高カルシウム、及び糖低減乳である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法によって製造された最終乳製品が、全ての乳画分を一緒に含む未殺菌乳製品の、同一の処理条件下及び同一の乳画分量でのUHT滅菌によって得られる最終乳製品よりも、加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化の低減されたものである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法であって、
(a)タンパク質に富む画分を含む乳製品組成物にUHT滅菌を施して、タンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程であって、前記乳製品組成物が
5ら20質量%のタンパク質
0.75質量%未満の乳糖を含む工程;
(b)脂肪に富む画分及び乳糖に富む画分またはその誘導体を含む第2乳画分にUHT滅菌処理を施して滅菌第2乳画分を形成する工程であって、前記滅菌第2乳画分が
0.1から15質量%の脂肪
1ら12質量%の乳糖;及
1質量%未満のタンパク質
を含む工程;及び
(c)ミネラルに富む画分を含む第3乳画分に滅菌処理を施して滅菌第3乳画分を形成する工程であって、前記滅菌第3乳画分が、0.1から8質量%のミネラルを含む工程;
(d)タンパク質に富む滅菌組成物、滅菌第2乳画分、及び滅菌第3乳画分を混合して、最終乳製品を形成する工程;
を含む、方法。
【請求項12】
工程(c)における滅菌処理が、間接加熱を用いて実施されるUHT滅菌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)における滅菌処理が、限外濾過及び/または精密濾過を用いて実施される濾過滅菌である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法であって、
(a)タンパク質に富む画分を含む乳製品組成物にUHT滅菌を施して、タンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程であって、前記乳製品組成物が
3ら14質量%のタンパク質
0.75質量%未満の乳糖を含む工程;
(b)脂肪に富む画分及び乳糖に富む画分またはその誘導体を含む第2乳画分にUHT滅菌処理を施して滅菌第2乳画分を形成する工程であって、前記滅菌第2乳画分が
0.2から10質量%の脂肪
1ら5質量%の乳糖;及
0.75質量%未満のタンパク質
を含む工程;及び
(c)ミネラルに富む画分を含む第3乳画分に滅菌処理を施して滅菌第3乳画分を形成する工程であって、前記滅菌第3乳画分が、0.2から3質量%のミネラルを含む工程;
(d)タンパク質に富む滅菌組成物、滅菌第2乳画分、及び滅菌第3乳画分を混合して、最終乳製品を形成する工程;
を含む、方法。
【請求項15】
工程(c)における滅菌処理が、間接加熱を用いて実施されるUHT滅菌である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(c)における滅菌処理が、限外濾過及び/または精密濾過を用いて実施される濾過滅菌である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願について
本出願は、PCT国際特許出願として2017年3月1日に出願されており、その開示内容全体を参照のため本明細書中に援用することとする、2016年3月3日に出願された米国仮出願第62/302,843号に対する優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般的に、飲料乳または乳飲料の異味及び臭い、例えば、加熱臭、硫黄臭、及び褐色化などを、所定の乳画分を別々にUHT滅菌することによって低減する方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,169,428号
【特許文献2】米国特許第9,510,606号
【特許文献3】米国特許第9,538,770号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この要約は、本明細書中にさらに説明される選択された概念を、簡略化した形で紹介するために提供される。この要約は、特許請求される主題の必要なもしくは必須の特徴を特定することを意図しない。この要約は、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図しない。
本明細書には、乳製品中の特定の異味及び臭いを低減するための方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施態様によれば、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法が提供され、この実施態様では、当該方法は、(i)タンパク質に富む画分を含む乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、タンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程;及び(ii)タンパク質に富む滅菌組成物を第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程を含む。この実施態様では、第2乳画分は、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、乳水画分、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、乳清タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。
【0006】
本発明の別の実施態様では、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法が提供され、この実施態様では、当該方法は、(i)乳糖に富む画分を含む乳製品組成物(またはその誘導体)に超高温(UHT)滅菌を施して、乳糖に富む滅菌組成物(またはその誘導体)を形成する工程、及び(ii)乳糖に富む滅菌組成物(またはその誘導体)を第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程を含む。この実施態様では、第2乳画分は、タンパク質に富む画分、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、乳水画分、乳清タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。
【0007】
本発明のさらに別の実施態様では、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法が提供され、この実施態様では、当該方法は、(i)脂肪に富む画分を含む乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、脂肪に富む滅菌組成物を形成する工程、及び(ii)脂肪に富む滅菌組成物を第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程を含む。この実施態様では、第2乳画分は、タンパク質に富む画分、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、乳水画分、ミネラルに富む画分、乳清タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。
【0008】
本発明のさらに別の実施態様では、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法が提供され、この実施態様では、当該方法は、(i)カゼインタンパク質に富む画分を含む乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、カゼインタンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程、及び(ii)カゼインタンパク質に富む滅菌組成物を第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程を含む。この実施態様では、第2乳画分は、タンパク質に富む画分、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、乳水画分、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、乳清タンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい。
【0009】
予期せぬことに、かつ有益なことに、これらの方法は、より優れた官能特性を有する最終乳製品をもたらすことができる。
【0010】
前述の要約及び以下の詳細な説明は、いずれも例示を提供するものであり、説明のみを目的とする。したがって、前述の要約及び以下の詳細な説明は、制限的とみなされるべきでない。さらに、本明細書中に記載のものに加えて、特徴または変形を提供することができる。例えば、所定の実施態様は、詳細な説明に記載されている様々な特徴の組み合わせ及び部分的な組み合わせを対象とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義が提供される。特記のない限り、以下の定義が本開示に適用可能である。本開示において用語が使用されているが、本明細書中に特に定義されてはいない場合、その定義が適用される他の開示または定義と矛盾しない限り、あるいは、その定義が適用されうるあらゆる請求項を不明確または不可能にしない限りは、IUPAC化学用語大全第2版(1997)の定義を適用することができる。参照のために本明細書に援用されるあらゆる文書により提供される任意の定義または使用が、本明細書で提供される定義または使用と矛盾する場合には、本明細書中に提供される定義または使用が優先する。
【0012】
本明細書では、特定の態様及び/または実施態様における様々な特徴の組み合わせを想定できるように、主題の特徴を説明する。本明細書で開示される態様及び/または実施態様及び/または特徴のそれぞれについて、本明細書に記載された設計、組成物、処理及び/または方法に有害な影響を及ぼさないすべての組み合わせが、特定の組み合わせの明確な記載の有無によらず想起される。さらに、明確な特記のない限り、本明細書に開示された任意の態様及び/または実施態様及び/または特徴は、本発明と矛盾がなく、創意のある設計、組成物、処理、及び/または方法を説明するために組み合わせることができる。
【0013】
本開示では、組成物及び方法は、様々な構成要素または工程を「含む」という用語でしばしば記載されるが、特記のない限り、様々な構成要素または工程「から本質的になる」または「からなる」こともできる。例えば、本発明の態様と一致する乳製品組成物は、タンパク質に富む画分及び脂肪に富む画分を含むか;あるいはこれらから本質的になるか;あるいはこれらからなることができる。
【0014】
用語「一つ」、「一の」、及び「前記」は、特記のない限り、複数形の代替物、例えば少なくとも一つを含むことが意図される。例えば、「第2乳画分」及び「追加の乳画分」との記載は、特記のない限り、第2乳画分及び追加の乳画分の一つ、または一つ以上の混合物または組合せを包含することを意味する。
【0015】
開示された方法においては、「組み合わせる」との語は、特記のない限り、構成成分を、任意の順序で、任意の方法で、且つ任意の長さの期間に亘って接触させることを包含する。例えば、構成成分は、ブレンドまたは混合によって組み合わせることができる。
【0016】
乳糖に富む画分(またはその誘導体)、乳糖(またはその誘導体)、及び関連する用語は、ラクトース及びそのあらゆる誘導体、例えば、当業者によって認識される通り、滅菌(UHT滅菌または他の方法)の前または後に、加水分解、非加水分解、エピマー化、異性化、またはオリゴ糖に転化されたものを包含することを意図する。さらに、これらの用語は、例えば、ラクトースをラクターゼ酵素で処理することにより生成され得るような、グルコース/ガラクトースを包含することも意図する。
【0017】
本明細書に記載のものと同様または同等の、任意の方法及び材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、典型的な方法及び材料は、本明細書中に記載される。
【0018】
様々な数値範囲が本明細書に開示される。任意のタイプの範囲が本明細書中に記載されるか特許請求の範囲に記載される場合、特記のない限り、範囲の端点並びに任意の部分範囲及びこれらに包含される部分範囲の組み合わせを含む、こうした範囲が合理的に包含しうる適切な各々の数を、個別に開示するか請求することが企図される。代表的な例として、本出願は、タンパク質に富む画分が、特定の態様では、約6から約18質量%のタンパク質を含み得ることを開示する。タンパク質に富む画分のタンパク質含量が約6から約18質量%の範囲であり得るという開示による意図は、タンパク質含量が、前記範囲内のいかなる量であってもよく、例えば、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18質量%と同等であってよい旨を記載することである。さらに、タンパク質に富む画分は、約6から約18質量%のあらゆる範囲(例えば、約8から約14質量%)内のタンパク質の量を含んでよく、これはまた、約6から約18質量%の範囲のあらゆる組み合わせを含む。同様に、本明細書に開示される他のすべての範囲は、この例と同様の方法で解釈されるべきである。
【0019】
「約」という用語は、量、寸法、処方、パラメータ、及び他の量及び特性が正確ではなく、また正確である必要もなく、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に知られている他の要因を反映して、所望により、より大またはより小であることを含む近似値であってよいことを意味する。一般的に、量、寸法、処方、パラメータまたは他の量または特性は、明確な特定の有無によらず、「約」または「おおよそ」である。「約」なる語はまた、特定の初期混合物から生成する組成物について、様々な平衡条件によって相違する量をさらに包含する。「約」なる語による修飾の有無によらず、特許請求の範囲には、量的な等価物が含まれる。「約」なる語は、報告される数値の10%以内、好ましくは報告される数値の5%以内を意味することができる。
【0020】
乳製品の望ましからぬ味、臭い、及び/または色を低減させるための方法が、本明細書に開示され、説明される。こうした方法は、例えば、乳製品の望ましからぬ加熱臭、乳製品の望ましからぬ硫黄臭、及び/または乳製品の望ましからぬ褐色化を低減するために使用できる。これらの方法は、優れた官能特性を有するより高品質の乳製品をもたらし、ひいては、望ましからぬ風味、臭い、または色のために許容不可能と認識される乳製品から生じる、廃棄物及び消費者の苦情をより低減することができる。
【0021】
本発明は、主として、特定の乳画分の別々のUHT滅菌により、加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化が低減された最終乳製品がもたらされ得るという予期せぬ発見に関する。一例として、乳糖に富む画分(またはその誘導体)の滅菌とは別に実施される、乳蛋白質に富む画分の滅菌の後に、これらの画分を混合する(例えば、別の乳画分または成分と無菌で混合及び実装する)ことにより、タンパク質及び乳糖(例えば、ラクトースまたはその誘導体)成分が一緒に滅菌されたものよりも優れた乳製品が得られる。
【0022】
これは、硫黄含有アミノ酸が非常に多い乳清タンパク質の加熱またはUHT処理は、硫黄/卵臭を引き起こすという、科学界における一般的な認識に反する。本明細書に開示されるように、糖/ラクトース無しに乳タンパク質を加熱すると、加熱臭及び硫黄/卵臭の量が低減される。
【0023】
以下の理論に拘束されることを望まないが、タンパク質に富む画分及び乳糖に富む画分(またはその誘導体)を別々に滅菌またはUHT処理することにより、メイラード反応が起こる機会を減少させ、ひいては褐色の形成、不快な風味、または異臭を低減しうると考えられる。メイラード反応はまた、リシン(タンパク質の必須アミノ酸)をブロックすることによってタンパク質の栄養価を低下させる可能性がある。本明細書に開示されるように、タンパク質に富む画分及び糖に富む画分が別々に滅菌され、次いで混合されて所望の組成物とされた乳製品は、タンパク質及び糖画分が一緒に滅菌されたものよりも白く、優れた官能特性を備える。
【0024】
一実施態様では、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法が提供され、この実施態様では、前記方法は、(i)タンパク質に富む画分を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、タンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程;及び(ii)タンパク質に富む滅菌組成物を第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)。この実施態様では、第2乳画分は、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、乳水画分、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、乳清タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)。典型的には、第2の乳画分は、例えばUHT滅菌または濾過滅菌によって、滅菌されている。
【0025】
さらに、所望により、工程(i)は、タンパク質に富む画分と追加の乳画分との混合物に超高温(UHT)滅菌を施すことを含んでよい。したがって、乳製品組成物は、タンパク質に富む画分と、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、乳水画分、乳清タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)追加の乳画分とを含んで良い。例えば、以下に限定されるものではないが、工程(i)は、タンパク質に富む画分及び脂肪に富む画分を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施すことを含んでよい。
【0026】
別の実施態様では、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法が提供され、この実施態様では、前記方法は、(i)乳糖に富む画分(またはその誘導体)を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、乳糖に富む滅菌組成物(またはその誘導体)を形成する工程;及び(ii)乳糖に富む滅菌組成物(またはその誘導体)を第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)。この実施態様では、第2乳画分は、タンパク質に富む画分、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、乳水画分、乳清タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい(または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなってよい)。典型的には、第2乳画分は、滅菌されている。
【0027】
さらに、所望により、工程(i)は、乳糖に富む画分(またはその誘導体)と追加の乳画分との混合物に超高温(UHT)滅菌を施すことを含んでよい。従って、乳製品組成物は、乳糖に富む画分(またはその誘導体)と、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、乳水画分、またはこれらの任意の組み合わせを含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)追加の乳画分とを含んで良い。例えば、以下に限定されるものではないが、工程(i)は、乳糖に富む画分(またはその誘導体)及びミネラルに富む画分(あるいは乳糖に富む画分(またはその誘導体)及び脂肪に富む画分)を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)乳製品組成物にUHT滅菌を施すことを含んで良い。
【0028】
さらに別の実施態様では、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法が提供され、この実施態様では、前記方法は、(i)脂肪に富む画分を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、脂肪に富む滅菌組成物を形成する工程;及び(ii)脂肪に富む滅菌組成物を第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)。この実施態様では、第2乳画分は、タンパク質に富む画分、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、乳水画分、ミネラルに富む画分、乳清タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい(または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなってよい)。典型的には、第2乳画分は、滅菌されている。
【0029】
さらに、所望により、工程(i)は、脂肪に富んだ画分と追加の乳画分との混合物に超高温(UHT)滅菌を施すことを含んでよい。したがって、乳製品組成物は、脂肪に富む画分と、タンパク質に富む画分、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、乳水画分、ミネラルに富む画分、乳清タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)追加の乳画分とを含んで良い。全ての組み合わせが必ずしも優れた官能特性をもたらすわけではなく、例としては、脂肪に富む画分、タンパク質に富む画分、及び乳糖に富む画分(またはその誘導体)の混合物に超高温(UHT)滅菌を施すことがある。しかしながら、以下に限定されるものではないが、脂肪に富む画分とタンパク質に富む画分との組み合わせ(脂肪に富む画分及びタンパク質に富む画分を含む、または本質的にこれからなる、またはこれらからなる乳製品組成物)にUHT滅菌を施すことは、工程(i)において有利に行うことができる。
【0030】
さらに別の実施態様では、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減する方法が提供され、この実施態様では、前記方法は、(i)カゼインタンパク質に富む画分を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、カゼインタンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程;及び(ii)カゼインタンパク質に富む滅菌組成物を第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)。この実施態様では、第2乳画分は、タンパク質に富む画分、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、乳水画分、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、乳清タンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含んでよい(または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなってよい)。典型的には、第2乳画分は、滅菌されている。
【0031】
さらに、所望により、工程(i)は、カゼインタンパク質に富んだ画分と追加の乳画分との混合物に超高温(UHT)滅菌を施すことを含んでよい。したがって、乳製品組成物は、カゼインタンパク質に富む画分と、タンパク質に富む画分、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、乳水画分、乳清タンパク質に富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)追加の乳画分とを含んで良い。例えば、以下に限定されるものではないが、工程(i)は、カゼインタンパク質に富む画分及び脂肪に富む画分を含む(または本質的にこれらからなる、またはこれらからなる)乳製品組成物にUHT滅菌を施すことを含んで良い。
【0032】
当業者には認識されるように、滅菌乳画分(または組成物)は、殺菌乳画分(または組成物)とも呼称され、UHT滅菌はUHT殺菌とも呼称される。さらに、本発明の実施態様に合致する、最終乳製品の望ましからぬ味、臭い、及び/または色を低減する方法は、殺菌または消毒されたあらゆる最終乳製品に適用可能である。典型的な最終乳製品の非限定的な例には、全乳、低脂肪乳、脱脂乳、バターミルク、フレーバーミルク、低ラクトース乳、高タンパク乳、ラクトースフリー乳、限外濾過乳、精密濾過乳、濃縮乳、無糖練乳、あるいは、高タンパク、高カルシウム、及び糖低減乳などが含まれる。
【0033】
一般に、当該方法の特徴(例えば、最終乳製品のタイプ及び特性、UHT滅菌を施した乳画分または組成物、第2乳画分、前記乳画分と共にUHT滅菌に処され得る追加の乳画分、並びにUHT滅菌の条件など)は、本明細書に個別に記載されており、これらの特徴は、開示された方法をさらに説明するために任意の組み合わせで組み合わせることができる。さらに、特記のない限り、開示の方法に挙げられたあらゆる工程の前、最中及び/または後に、他の処理工程を実施することができる。さらに、開示されたあらゆる方法に従って製造され、得られた乳製品(例えば、消費に適した最終乳製品)は、本開示の範囲内であり、本明細書に包含される。
【0034】
例えば、第2乳画分は、UHT滅菌された第2乳画分であってよく、あるいは、第2乳画分は、混合工程(工程(ii))の前に個別にUHT滅菌されていてもよい。あるいはまた、第2乳画分は、濾過滅菌された第2乳画分であってもよく、あるいは、第2乳画分は、混合工程の前に個別に濾過滅菌されていてよい。一例として、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、ミネラルに富む画分、及び/または乳清タンパク質に富む画分の精密濾過(または限外濾過)を利用することができ、その後濾過滅菌されたこれらの画分の一つ以上をUHT滅菌乳画分と混合することができる。例えば、以下に限定されるものではないが、濾過滅菌された乳糖に富む画分(またはその誘導体)及び濾過滅菌されたミネラルに富む画分を、タンパク質に富む画分と脂肪に富む画分とのUHT滅菌混合物と、所望のあらゆる割合で混合して、最終乳製品を形成することができる。
【0035】
以下の理論に拘束されることを望むものではないが、ミネラルに富む画分及び/または乳糖に富む画分またはその誘導体の、濾過滅菌−限外濾過処理及び/または精密濾過処理の透過流−は、各々の乳画分のUHT滅菌と比較してより優れた官能特性をもたらし、ひいては最終乳製品の異味、異臭、及び/または変色を低減することができると考えられる。典型的な精密濾過膜/細孔サイズは、0.1から10ミクロンの範囲内であってよく、典型的な限外濾過膜/細孔サイズは、0.01から0.1ミクロンの範囲内であってよい(所望により、成分画分、例えばミネラルに富む画分については、ナノ濾過膜/細孔サイズは、0.001から0.01ミクロンの範囲であってよい)。
【0036】
また、以下の理論に拘束されることを望まないが、UHT間接滅菌は、密閉系を利用することにより、蒸気が乳製品/画分と直接接触するUHT直接滅菌と比較してより優れた官能特性をもたらすことができ、(例えば、真空での)水分の除去により乳製品/画分の風味成分のいくつかを揮発させることができると考えられる。したがって、各乳画分(例えば、ミネラルに富む画分、乳糖に富む画分など)のUHT間接滅菌の使用により、各乳画分のUHT直接滅菌と比較してより優れた官能特性をもたらすことができ、ひいては、最終乳製品の異味、異臭、及び/または変色を低減することができる。
【0037】
別の実施態様では、本明細書に開示される方法の工程(ii)における第2乳画分は、任意の適切な濃縮乳画分(1つ以上)を含むことができ、これを各UHT滅菌乳画分と混合して最終乳製品を形成することができる。濃縮乳画分は、タンパク質に富む濃縮画分、ミネラルに富む濃縮画分、乳清タンパク質に富む濃縮画分など、ならびにこれらの組み合わせを含むことができる。濃縮乳画分はまた、ラクトースに富む濃縮画分(例えば、加水分解された、または非加水分解のもの)、グルコースに富む濃縮画分、ガラクトースに富む濃縮画分、乳フルクトースに富む濃縮画分を含むことができ、また、任意のエピマー化ラクトース、あるいはその、個別に異性化またはエピマー化された、個別の加水分解画分、並びにこれらの画分の組み合わせを使用することができる。
【0038】
本明細書中に開示される方法と一貫して、タンパク質に富む画分は、しばしば、約3から約24質量%のタンパク質及び約2.5質量%未満の乳糖(すなわち、任意の形態で、加水分解、非加水分解、エピマー化など)を含んで良い。いくつかの実施態様では、タンパク質に富む画分は、約5から約20質量%のタンパク質、または約6から約18質量%のタンパク質を含んでよい。これに加えてまたはこれに代えて、タンパク質に富む画分は、約2質量%未満の乳糖、約1質量%未満の乳糖、または約0.5質量%未満の乳糖を含んで良い。タンパク質に富む画分のタンパク質含量及び乳糖含量の別の適切な範囲は、本開示から即座に明らかである。
【0039】
本明細書に開示される方法と一貫して、乳糖に富む画分(またはその誘導体)は、しばしば、約3から約20質量%の乳糖(すなわち、任意の形態で、加水分解、非加水分解、エピマー化など)及び約1質量%未満のタンパク質及びを含んで良い。いくつかの実施態様では、乳糖に富む画分(またはその誘導体)は、約3から約15質量%の乳糖、または約4から約15質量%の乳糖を含んでよい。これに加えてまたはこれに代えて、乳糖に富む画分(またはその誘導体)は、約0.5質量%未満のタンパク質、約0.25質量%未満のタンパク質、または約0.15質量%未満のタンパク質を含んで良い。乳糖に富む画分(またはその誘導体)の糖含量及びタンパク質含量の別の適切な範囲は、本開示から即座に明らかである。
【0040】
一実施態様では、脂肪に富む画分は、しばしば、約18から約45質量%の脂肪、約20から43質量%の脂肪、または約22から約40質量%を含んで良い。さらに、脂肪に富む画分は、しばしば、約2質量%未満のタンパク質及び約3質量%未満の乳糖、あるいは約1質量%未満のタンパク質及び約1質量%未満の乳糖、あるいは約0.5質量%未満のタンパク質及び約0.5質量%未満の乳糖を含んで良い。脂肪に富む画分の脂肪、タンパク質、及び糖の含量の別の適切な範囲は、本開示から即座に明らかである。
【0041】
いくつかの実施態様では、ミネラルに富む画分は、約0.2から約20質量%のミネラル、または約0.2から約15質量%のミネラルを含んで良い一方で、別の実施態様では、ミネラルに富む画分は、約0.2から約10質量%のミネラル、または約0.5から約8質量%のミネラルを含んで良い。ミネラルに富む画分のミネラル含量の別の適切な範囲は、本開示から即座に明らかである。
【0042】
いくつかの実施態様では、乳水画分は、少なくとも90質量%の水、少なくとも95質量%水、少なくとも98質量%の水、少なくとも99質量%の水、または少なくとも99.5質量%の水を含んで良い。さらなる実施態様では、所望により、ミネラルに富む画分及び乳水画分は任意の相対的な割合で混合して良い。
【0043】
いくつかの実施態様では、乳清タンパク質に富む画分は、約0.4から約45質量%の乳清タンパク質、または約0.4から25質量%の乳清タンパク質を含んで良い一方で、別の実施態様では、乳清タンパク質に富む画分は、約1から約40質量%の乳清タンパク質、または約1から約20質量%の乳清タンパク質を含んで良い。乳清タンパク質に富む画分の乳清タンパク質含量の別の適切な範囲は、本開示から即座に明らかである。
【0044】
一実施態様では、カゼインタンパク質に富む画分は、しばしば約3から約20質量%のカゼインタンパク質及び約2.5質量%未満の糖またはラクトース(すなわち、任意の形態で、加水分解、非加水分解、エピマー化など)を含んで良い。いくつかの実施態様では、カゼインタンパク質に富む画分は、約3から約12質量%のカゼインタンパク質、または約4から約10質量%のカゼインタンパク質を含んで良い。これに加えてまたはこれに代えて、カゼインタンパク質に富む画分は、約2質量%未満の糖、約1質量%未満の糖、または約0.5質量%未満の糖を含んで良い。カゼインタンパク質に富む画分のカゼインタンパク質含量及び糖含量の別の適切な範囲は、本開示から即座に明らかである。
【0045】
本開示では、超高温(UHT)滅菌(UHT殺菌とも呼称)とは、乳画分(または乳画分の混合物)の比較的短時間に亘る一般的に高温の処理を意味する。UHT滅菌は、当業者には認識されるように、様々に適切な温度及び時間条件で実施可能である。UHT条件の代表的かつ非限定的な例には、約130℃から約150℃の範囲の温度で約1から約15秒の時間、約130℃から約150℃の範囲の温度で約2から約4秒の時間、約135℃から約145℃の範囲の温度で約1から約10秒の時間、または約135℃から約145℃の範囲の温度で約2から約5秒の時間などが含まれる。別の適切なUHT滅菌温度及び時間の条件は、本開示から即座に明らかである。
【0046】
本発明は、特記のない限り、UHT滅菌方法を実施するために使用される方法または装置によって限定されない。使用可能な適切なUHT滅菌技術には、間接蒸気注入、直接蒸気注入、直接蒸気吹込み、間接加熱、直接加熱、直接及び間接加熱のハイブリッドなどが含まれる。前記滅菌方法はまた、例えば121℃で20から30分間などのバッチ滅菌方法、または同等のものであり得る。さらにまた、所望により、これら技術の組み合わせを用いることができる。別の適切な滅菌システム、例えば、限外濾過/精密濾過による濾過滅菌、または紫外線照射、高圧、または通電加熱、キャビテーション、または超音波処理などもまた使用可能である。
【0047】
本発明のいくつかの実施態様では、最終乳製品の望ましからぬ味、臭い、及び/または色の特徴を低減する方法は、UHT滅菌が行われた後に冷却の工程を含んでよい。例えば、こうした方法の一つは、本明細書に開示された乳画分のいずれか(例えば、タンパク質に富む画分、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、脂肪に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分)に超高温(UHT)滅菌を施して滅菌乳画分を形成する工程、滅菌乳画分を任意の適切な温度に冷却する工程、及び滅菌乳画分を第2乳画分と混合して最終乳製品を形成する工程を含んで良い。しばしば、滅菌乳画分は、約50℃以下、約45℃以下、約40℃以下、または約35℃以下の温度に冷却してよい。別の実施態様では、各乳画分は、UHT滅菌後に、約1℃から約50℃の範囲、約5℃から約40℃の範囲、約8℃から約45℃の範囲、約10℃から約45℃の範囲、約15℃から約40℃の範囲、または約20℃から約40℃の範囲などの温度に冷却して良い。別の適切な冷却温度は、本開示から即時に明らかである。
【0048】
本明細書に開示される方法の混合工程(例えば、工程(ii))は、任意の適切な条件、例えば、望ましからぬ加熱臭、望ましからぬ硫黄臭、望ましからぬ褐色化、またはこれらの任意の組み合わせの一つ以上を低減させる(または消滅させる)ために十分な任意の条件で実施可能である。有利には、混合工程は無菌で実施することができ、様々な温度及び時間で実施することができる。一般に、混合工程は、望ましからぬ加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減するために十分な任意の温度で実施することができる。いくつかの例示的かつ非限定的な実施態様では、混合工程は、個別に、約0℃から約75℃、あるいは約0℃から約50℃、あるいは約5℃から約50℃、あるいは約5℃から約35℃、あるいは約10℃から約60℃、あるいは約10℃から約35℃、あるいは約10℃から約25℃、あるいは約15℃から約30℃の範囲の温度で実施することができる。これらの及び別の実施態様では、これらの温度範囲はまた、各混合工程が、それぞれの範囲に入る単一の固定温度ではなく、一連の様々な温度で実施される状況を包含する。滅菌乳画分及び第2乳画分を混合して良い別の適切な温度範囲は、本開示から即座に明らかである。
【0049】
混合工程(例えば、工程(ii))の継続時間は、いかなる特定の期間に限定されない。しかしながら、一般的には、混合工程は、わずか5から30秒から48から72時間もの長さまたはそれ以上の範囲であり得る。適切な混合時間は、例えば、温度、滅菌乳画分及び第2の乳画分の相対量、最終乳製品を形成するために使用される別の材料または乳画分の添加、混合の程度、長期間の保存への考慮、及びその他の変数に依存し得る。いくつかの例示的かつ非限定的な実施態様において、混合工程は、少なくとも約30秒間、少なくとも約5分間、少なくとも約15分間、少なくとも約1時間、少なくとも約3時間、少なくとも約6時間などに亘って実施可能である。混合後の乳製品が長期保存を意図していないが、数週間または数ヶ月に延長され得ると仮定すると、混合時間の典型的な範囲には、以下に限定されるものではないが、約5秒から約48時間、約15分から約48時間、約15分から約12時間、約1分から約48時間、約5分から約24時間、約30分から約15時間、約30分から約8時間、約1時間から約36時間、約1時間から約18時間、または約1時間から約12時間などが含まれ得る。滅菌乳画分及び第2乳画分を混合し得る別の適切な期間は、本開示から即座に明らかである。
【0050】
当業者には容易に理解されるように、工程(ii)において特定の滅菌成分に富む画分と第2乳画分とを混合することに加えて、別の成分(例えば、風味剤及び添加剤)及び乳画分もまた添加して所望の最終乳製品を形成することができる。任意の適切な容器及び条件を、乳画分の混合に使用することができ、これはバッチ式または連続式で達成することができる。一例として、乳画分は、適切な容器(例えば、タンク、サイロなど)中、常圧で、任意に撹拌または混合しつつ、別の材料及び乳画分と混合して、最終乳製品のバッチを形成することができる。別の例として、乳画分は、僅かな圧力(例えば、5から50psig)下、パイプまたは別の適切な容器中で連続的に併合し、任意に別の材料及び乳画分と混合することができ、最終乳製品は、小売の流通及び販売のために貯蔵タンクに移すか容器に充填することができる。この連続的な併合、混合、及び/または実装に使用可能な代表的なシステムには、テトラアルドース(tetra aldose)システム及びテトラフレキシドース(tetra flexidose)システムが含まれ得る。乳画分及び別の材料を混合するための別の適切な方法、システム、及び装置は、本開示から即座に明らかである。
【0051】
本発明のいくつかの実施態様では、最終乳製品の望ましからぬ味、臭い及び/または色の特徴を低減する方法は、最終乳製品を任意の適切な容器中及び任意の適切な条件下で、(無菌的にまたは別の方法で)実装する工程をさらに含んで良い。従って、滅菌乳画分を第2乳画分(及び他の任意の乳画分または材料)と混合して最終乳製品を形成した後には、最終乳製品は無菌条件(または非無菌条件)下で容器中に実装することができる。小売店で乳製品の流通及び/または販売に使用されるような、任意の適切な容器を使用可能である。典型的な容器の例示的及び非限定的な例には、カップ、ボトル、バッグ、またはパウチなどが含まれる。容器は、任意の適切な材料、例えば、ガラス、金属、プラスチックなど、並びにこれらの組み合わせからなるものであってよい。
【0052】
本明細書に開示される方法は、最終乳製品を任意の適切な温度に冷却する工程をさらに含んでよく、この冷却工程は、最終乳製品を容器に実装する前、最中、及び/または後に実施可能である。いくつかの例示的かつ非限定的な実施態様において、最終乳製品は、約0℃から約30℃、あるいは約0℃から約15℃、あるいは約1℃から約30℃、あるいは約1℃から約15℃、あるいは約1℃から約9℃、あるいは約1℃から約6℃、あるいは約2℃から約15℃、あるいは約2℃から約8℃の範囲の温度に冷却することができる。最終乳製品を冷却するための他の適切な温度範囲は、本開示から即座に明らかである。
【0053】
本明細書に開示されているあらゆる乳画分−あらゆる成分に富む画分(例えば、タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、脂肪に富む画分、乳糖に富む画分)、あらゆる第2乳画分、及びあらゆる追加の乳画分−は、当業者に周知の任意の技術によって製造可能である。以下に限定されるものではないが、乳画分(もしくは複数の乳画分)は、参照のためにその全体を本明細書中に援用される米国特許第7,169,428号、第9,510,606号、及び第9,538,770号に開示のもののような膜濾過処理によって製造可能である。例えば、未処理または殺菌された生乳は、遠心分離機によって無脂肪乳及びクリーム(脂肪に富む画分)に分画することができる。無脂肪乳は、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、及び逆浸透の組み合わせによって、乳タンパク質に富む画分、カゼインタンパク質に富む画分、乳可溶性タンパク質に富む画分、乳糖に富む画分、乳ミネラルに富む画分、及び乳水画分に分画することができる。これに加えてまたはこれに代えて、乳画分(もしくは複数の乳画分)は、水と粉末成分(例えば、タンパク質粉末、ラクトース粉末、ミネラル粉末など)とを混合する処理によって製造することができる。
【0054】
本明細書の記載のように製造された最終乳製品は、冷蔵なしまたは冷蔵条件下で、優れた貯蔵安定性を有してよい。一実施態様では、最終乳製品は、有利には、様々な温度及び時間条件下にて冷蔵なしで貯蔵安定、例えば、約10℃から約50℃の範囲の温度で約2から約365日の期間に亘り貯蔵安定、約10℃から約50℃の範囲の温度で約5から約180日の期間に亘り貯蔵安定、約15℃から約40℃の範囲の温度で約2から約365日の期間に亘り貯蔵安定、約15℃から約40℃の範囲の温度で約5から約180日の期間に亘り貯蔵安定、約20℃から約30℃の範囲の温度で約2から約365日の期間に亘り貯蔵安定、または約20℃から約30℃の範囲の温度で約5から約180日の期間に亘り貯蔵安定であり得る。別の実施態様では最終乳製品は、有利には、様々な冷蔵温度及び時間条件下にて貯蔵安定、例えば、約1℃から約9℃の範囲の温度で約7から約365日の期間に亘り貯蔵安定、約1℃から約9℃の範囲の温度で約10から約180日の期間に亘り貯蔵安定、約2℃から約8℃の範囲の温度で約7から約365日の期間に亘り貯蔵安定、約2℃から約8℃の範囲の温度で約10から約180日の期間に亘り貯蔵安定、約3℃から約7℃の範囲の温度で約7から約365日の期間に亘り貯蔵安定、約3℃から約7℃の範囲の温度で約10から約180日の期間に亘り貯蔵安定などでありうる。別の適切な貯蔵安定温度及び時間条件は、本開示から即座に明らかである。
【0055】
有益かつ予想外に、本明細書に開示される方法は、乳製品の望ましからぬ味、臭い、及び/または色の特徴の低減に非常に有効である。本発明の特定の実施態様では、本明細書に開示された方法によって製造された各最終乳製品は、全ての乳画分を一緒に含む未殺菌乳製品の、同様の処理条件(例えばUHT条件)での同様の乳成分量(同量の脂肪、タンパク質、糖/ラクトース等)でのUHT滅菌によって得られる各最終乳製品のものよりも(あるいはこれらと比較して)、より低減された加熱臭、低減された硫黄臭、及び/または低減された褐色化を有し得る。したがって、唯一の相違は、全乳画分に一緒に施される標準的な滅菌に対して、所定の乳画分を別々に滅菌することである。しかるに、一実施態様では、最終乳製品は、低減された加熱臭を有し得る一方で、別の実施態様では、最終乳製品は低減された硫黄臭を有し得る。別の実施態様では、最終乳製品は、低減された褐色化を示し得る。さらに別の実施態様では、最終乳製品は、低減された加熱臭及び低減された硫黄臭、あるいは低減された加熱臭及び低減された褐色化、あるいは低減された硫黄臭及び低減された褐色化を示し得る。さらに別の実施態様では、最終乳製品は、低減された加熱臭、低減された硫黄臭、及び低減された褐色化を示し得る。
【0056】
さらに有益かつ予想外に、本明細書に開示された方法によって製造された各最終乳製品は、タンパク質及び糖/ラクトースを一緒に含む(例えば、タンパク質に富む画分及び乳糖に富む画分(またはその誘導体)を含み、しばしば少なくとも0.5質量%の乳糖及び少なくとも0.25質量%のタンパク質を含む)未殺菌乳製品の、同様の処理条件(例えばUHT条件)での同様の乳成分量(同量の脂肪、タンパク質、糖/ラクトース等)でのUHT滅菌によって得られる各最終乳製品のものよりも(あるいはこれらと比較して)低減された加熱臭、低減された硫黄臭、及び/または低減された褐色化を示し得る。したがって、唯一の相違は、タンパク質及び糖/ラクトースを一緒に含む乳製品の標準的な滅菌に対して、タンパク質に富む画分及び乳糖に富む画分(またはその誘導体)を別々に滅菌することである。しかるに、一実施態様では、最終乳製品は低減された加熱臭を有し得る一方で、別の実施態様では、最終乳製品は低減された硫黄臭を有し得る。別の実施態様では、最終乳製品は、低減された褐色化を示し得る。さらに別の実施態様では、最終乳製品は、低減された加熱臭及び低減された硫黄臭、あるいは低減された加熱臭及び低減された褐色化、あるいは低減された硫黄臭及び低減された褐色化を示し得る。さらに別の実施態様では、最終乳製品は、低減された加熱臭、低減された硫黄臭、及び低減された褐色化を示し得る。
【0057】
さらにまた、有益かつ予想外に、本明細書に開示された方法は、硫黄含有化合物の量を、例えば、異味及び異臭に対する人間の官能閾値レベル未満に低減するために非常に有効である。以下に限定されるものではないが、しばしば異臭及び臭いと関連する例示的な硫黄含有化合物は、硫化水素(H2S)であり、その濃度は、約10ppb(質量に基づく十億分率)の官能閾値未満に低減することができる。
【0058】
本発明による方法の代表的かつ非限定的な例(第1の方法)は、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減することができ、(a)タンパク質に富む画分を含む乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、タンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程;(b)乳糖に富む画分またはその誘導体、乳水画分、脂肪に富む画分、ミネラルに富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含む第2乳画分に滅菌処理を施して滅菌第2乳画分を形成する工程;及び(c)タンパク質に富む滅菌組成物を滅菌第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程;を含んでよい。この第1の方法の一実施態様では、乳製品組成物(またはタンパク質に富む滅菌組成物)は、約5から約20質量%のタンパク質(または約8から約14質量%のタンパク質)を含んでよく、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約0.1から約25質量%の脂肪(または約0.2から約20質量%の脂肪)、約0.1から約2質量%のミネラル(または約0.2から約1質量%のミネラル)、及び約1から約12質量%の乳糖(または約2から約8質量%の乳糖)を含んで良い一方で、別の実施態様では、乳製品組成物(またはタンパク質に富む滅菌組成物)は、約6から約18質量%のタンパク質(または約4から約7質量%のタンパク質)を含んでよく、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約0.2から約10質量%の脂肪(または約0.2から約5質量%の脂肪)、約0.3から約1質量%のミネラル(または約0.1から約0.8質量%のミネラル)、及び約2から約7質量%の乳糖(または約1から約5質量%の乳糖)を含んでよい。さらなる実施態様では、乳製品組成物(またはタンパク質に富む滅菌組成物)は、約1質量%未満の乳糖、約0.75質量%未満の乳糖、約0.5質量%未満の乳糖、または約0.25質量%未満の乳糖を含んで良い。これに加えて、またはこれに代えて、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約1質量%未満のタンパク質、約0.75質量%未満のタンパク質、約0.5質量%未満のタンパク質、または約0.25質量%未満のタンパク質を含んで良い。さらにまた、以上に開示のように、工程(c)は、タンパク質に富む滅菌組成物、滅菌第2乳画分、及び追加成分(もしくは複数の追加成分)(例えば、風味剤、添加剤、追加の乳画分または成分)を組み合わせて最終
乳製品を形成する工程を含んで良い。
【0059】
本発明による方法の別の代表的かつ非限定的な例(第2の方法)は、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減することができ、(a)タンパク質に富む画分及び脂肪に富む画分を含む乳製品組成物に超高温(UHT)滅菌を施して、滅菌組成物を形成する工程;(b)乳糖に富む画分またはその誘導体、乳水画分、ミネラルに富む画分、またはこれらの任意の組み合わせを含む第2乳画分に滅菌処理を施して、滅菌第2乳画分を形成する工程;及び(c)滅菌組成物を滅菌第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程;を含んでよい。この第2の方法では、工程(b)における滅菌は、例えば、間接加熱を用いたUHT滅菌、あるいは限外濾過及び/または精密濾過を用いた濾過滅菌であり得る。この第2の方法の一実施態様では、乳製品組成物(もしくは滅菌組成物)は、約6から約15質量%のタンパク質(または約9から約14質量%のタンパク質)及び約0.1から約10質量%の脂肪(または約0.2から約6質量%の脂肪)を含んでよく、また、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約0.2から約2質量%のミネラル(または約0.4から約1質量%ミネラル)及び約1から約8質量%の乳糖(または約2から約8質量%の乳糖)を含んでよく、一方で、別の実施態様では、乳製品組成物(もしくは滅菌組成物)は、約3から約14質量%のタンパク質(または約3から約8質量%のタンパク質)及び約0.2から約8質量%の脂肪(または約0.2から約5質量%の脂肪)を含んでよく、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約0.4から約1.5質量%のミネラル(または約0.3から約1質量%のミネラル)及び約0.5から約5質量%の乳糖(または約2から約5質量%の乳糖)を含んで良い。さらなる実施態様では、乳製品組成物(または滅菌組成物)は、約1質量%未満の乳糖、約0.75質量%未満の乳糖、約0.5質量%未満の乳糖、または約0.25質量%未満の乳糖を含んで良い。これに加えて、またはこれに代えて、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約1質量%未満のタンパク質、約0.75質量%未満のタンパク質、約0.5質量%未満のタンパク質、または約0.25質量%未満のタンパク質を含んで良い。さらにまた、以上に開示のように、工程(c)は、滅菌組成物、滅菌第2乳画分、及び追加成分(もしくは複数の追加成分)(例
えば、風味剤、添加剤、追加の乳画分または成分)を組み合わせて最終乳製品を形成する工程を含んで良い。
【0060】
さらに、本発明による方法の別の代表的かつ非限定的な例(第3の方法)は、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減することができ、(a)タンパク質に富む画分を含む組成物にUHT滅菌を施して、タンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程;(b)脂肪に富む画分及び乳糖に富む画分またはその誘導体を含む第2乳画分にUHT滅菌を施して、滅菌第2乳画分を形成する工程;(c)ミネラルに富む画分を含む第3乳画分に滅菌処理を施して、滅菌第3乳画分を形成する工程;及び(d)タンパク質に富む滅菌組成物、滅菌第2乳画分、及び滅菌第3乳画分を混合して、最終乳製品を形成する工程を含んでよい。この第3の方法では、工程(c)における滅菌は、例えば、間接加熱を用いたUHT滅菌、または限外濾過及び/または精密濾過を用いた濾過滅菌であり得る。この第3の方法の一実施態様では、乳製品組成物(もしくはタンパク質に富む滅菌組成物)は、約5から約20質量%のタンパク質(または約8から約14質量%のタンパク質)を含んでよく、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約0.1から約15質量%の脂肪(または約0.2から約8質量%の脂肪)及び約1から約12質量%の乳糖(または約2から約8質量%の乳糖)を含んでよく、第3乳画分(または滅菌第3乳画分)は、約0.1から約8質量%のミネラル(または約0.4から約2質量%のミネラル)を含んでよく、一方で、別の実施態様では、乳製品組成物(またはタンパク質に富む滅菌組成物)は、約3から約14質量%のタンパク質(または約3から約8質量%のタンパク質)を含んでよく、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約0.2から約10質量%脂肪(または約0.2から約6質量%の脂肪)、約0.5から約6質量%の乳糖(または約1から約5質量%の乳糖)を含んでよく、第3乳画分(または滅菌第3乳画分)は、約0.2から約3質量%のミネラル(または約0.4から約1質量%のミネラル)を含んでよい。さらなる実施態様では、乳製品組成物(またはタンパク質に富む滅菌組成物)は、約1質量%未満の乳糖、約0.75質量%未満の乳糖、約0.5質量%未満の乳糖、または約0.25質量%未満の乳糖を含んで良い。これに加えて、またはこれに代えて、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約1質量%未満のタンパク質、約0.75質量%未満のタンパ
ク質、約0.5質量%未満のタンパク質、または約0.25質量%未満のタンパク質を含んで良い。さらにまた、以上に開示のように、工程(d)は、タンパク質に富む滅菌組成物、滅菌第2乳画分、滅菌第3乳画分、及び追加成分(もしくは複数の追加成分)(例えば、風味剤、添加剤、追加の乳画分または成分)を混合して最終乳製品を形成する工程を含んで良い。
【0061】
本発明による方法の別の代表的かつ非限定的な例(第4の方法)は、最終乳製品の加熱臭、硫黄臭、及び/または褐色化を低減することができ、(a)カゼインタンパク質に富む画分を含む組成物にUHT滅菌を施して、カゼインタンパク質に富む滅菌組成物を形成する工程;(b)乳糖に富む画分またはその誘導体を含む第2乳画分に滅菌処理を施して、滅菌第2乳画分を形成する工程;及び(c)カゼインタンパク質に富む滅菌組成物を滅菌第2乳画分と混合して、最終乳製品を形成する工程を含んでよい。この第4の方法において、工程(b)における滅菌は、例えば、直接及び/または間接加熱を用いて行われるUHT滅菌、あるいは限外濾過及び/または精密濾過を用いた滅菌濾過であってよい。この第4の方法の一実施態様では、乳製品組成物(またはカゼインタンパク質に富む滅菌組成物)は、約1から約12質量%のカゼインタンパク質(または約2から約8質量%のカゼインタンパク質)、約0.1から約15質量%の脂肪(または約0.2から約8質量%の脂肪)、及び約0.1から約5質量%第2のミネラル(または約0.4から約2質量%のミネラル)を含んでよく、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約2から約10質量%の乳糖(または約3から約14質量%の乳糖)を含んでよく、一方で、別の実施態様では、乳製品組成物(またはカゼインタンパク質に富む滅菌組成物)は、約3から約7質量%のカゼインタンパク質(または約4から約6質量%のカゼインタンパク質)、約0.2から約6質量%の脂肪(または約0.2から約4質量%の脂肪)、及び約0.3から約1.5質量%のミネラル(または約0.6から約1質量%のミネラル)を含んでよく、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約1.5から約7質量%の乳糖(または約1から約6質量%の乳糖)を含んで良い。さらなる実施態様では、乳製品組成物(またはカゼインタンパク質に富む滅菌組成物)は、約1質量%未満の乳糖、約0.75質量%未満の乳糖、約0.5質量%未満の乳糖、または約0.25質量%未満の乳糖を含んで良い。これに加えて、またはこれに代えて、第2乳画分(または滅菌第2乳画分)は、約1質量%未満のタンパク質、約0.75質量%未満のタンパク質、約0.5質量%未満のタンパク質、または約0.25質量%未満のタンパク質を含んで良い。さらにまた、以上に開示のよう
に、工程(c)は、カゼインタンパク質に富む滅菌組成物、滅菌第2乳画分、及び追加成分(もしくは複数の追加成分)(例えば、風味剤、添加剤、追加の乳画分または成分)を組み合わせて最終乳製品を形成する工程を含んで良い。
【0062】
一般に、第1、第2、第3及び第4の方法の特徴(例えば、滅菌(UHTまたはその他の方法)を施された最終乳製品、乳画分、または組成物のタイプ及び特性)は、本明細書に個別に記載され、これらの特徴は、開示の方法をさらに説明するために、任意の組み合わせで組み合わせ可能である。さらにまた、別の処理工程を、開示の方法において挙げられた任意の工程の前、最中及び/または後に、特記のない限り、実施することができる。さらにまた、開示の方法のいずれに従って製造され、得られた乳製品(例えば、消費に適した最終乳製品)も、本開示の範囲内であり、本明細書に包含される。
【0063】
有益かつ予想外に、本明細書に開示される第1、第2、第3及び第4の方法は、乳製品の異味、異臭及び/または変色の特性の低減に非常に有効である。本発明の特定の実施態様では、これらの方法によって製造されたそれぞれの最終乳製品は、全ての乳画分を一緒に含む未殺菌乳製品の、同様の処理条件(例えばUHT条件)での同様の乳成分量(同量の脂肪、タンパク質、糖/ラクトース等)でのUHT滅菌によって得られる各最終乳製品のものよりも(あるいはこれらと比較して)、より低減された加熱臭、低減された硫黄臭、及び/または低減された褐色化を有し得る。したがって、唯一の相違は、全乳画分に一緒に施される標準的な滅菌に対して、所定の乳画分を別々に滅菌することである。しかるに、一実施態様では、最終乳製品は、低減された加熱臭を有し得る一方で、別の実施態様では、最終乳製品は低減された硫黄臭を有し得る。別の実施態様では、最終乳製品は、低減された褐色化を示し得る。さらに別の実施態様では、最終乳製品は、低減された加熱臭及び低減された硫黄臭、あるいは低減された加熱臭及び低減された褐色化、あるいは低減された硫黄臭及び低減された褐色化を示し得る。さらに別の実施態様では、最終乳製品は、低減された加熱臭、低減された硫黄臭、及び低減された褐色化を示し得る。
【実施例】
【0064】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは本発明の範囲にいかなる限定も加えるものでないと解釈されるべきである。様々な他の態様、実施態様、変形及び等価物が、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の精神または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る。
【0065】
(実施例1-2)
実施例1では、生乳を、一連の膜技術工程により、脂肪に富む画分、タンパク質に富む画分、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、及びミネラルに富む画分に分画した。表Iは、実施例1の比較用乳組成物を製造するために使用された、生乳画分の組成をまとめたものである。これらの画分は、ラクターゼ酵素での処理によってラクトースフリーとされたか、あるいは、膜の透過流またはその完全保持のために、ラクトースを全く含んでいない画分もあった。乳画分を、表IIIにある相対量でブレンドして、2質量%の脂肪、5.2質量%のタンパク質、2.5質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.75質量%のミネラルを含む、ブレンド乳組成物を製造した。次いで、ブレンド乳組成物に、140℃の温度で3秒間に亘り、直接蒸気注入によってUHT滅菌を施し、実施例1の乳製品を得た。
【0066】
実施例2では、生乳を、一連の膜技術工程により、脂肪に富む画分、タンパク質に富む画分、乳糖に富む画分(またはその誘導体)、及びミネラルに富む画分に分画した。表IIは、実施例2の本発明による乳組成物を製造するために使用された、生乳画分の組成をまとめたものである。これらの画分は、ラクターゼ酵素での処理によってラクトースフリーとされたか、あるいは、膜の透過流またはその完全保持のために、ラクトースを全く含んでいない画分もあった。次いで、(i)タンパク質に富む画分、(ii)脂肪に富む画分、(iii)乳糖に富む画分(またはその誘導体)、及び(iv)ミネラルに富む画分に、140℃の温度で3秒間に亘り、直接蒸気注入によって、別々にUHT滅菌を施した。滅菌乳画分を、表IIIの相対量でブレンドして、2質量%の脂肪、5.2質量%のタンパク質、2.5質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.75質量%のミネラルを含む、実施例2のブレンド乳製品を製造した。
【0067】
UHT滅菌後24時間保存した後、実施例1−2の最終乳製品を、4名の個人によって官能特性について評価した。表IVは、最も許容し難い「1」から最も許容できる「10」までのスケールで官能試験パラメータをまとめたものである。各官能試験パラメータについて、実施例2の乳製品は、実施例1の乳製品のものと同等かまたはより優れていた。これらの結果は、実施例1と比較して、実施例2においては“卵”臭及び“加熱”臭が低減されたことを示しており、ミルクの所定画分の別々の加熱がもたらしうる、予期せぬ有益な結果を確証するものである。
【0068】
実施例1−2の最終乳製品に色分析を行い、変色または褐色化の差異を測定した。各乳製品の試料を透明なガラスペトリ皿に注いだ。ハンター比色計値{L*:暗(0), 明(100);a*:緑(-), 赤(+);b*:青(-), 黄(+)}を、ペトリ皿中の乳製品で3回測定した。表Vは平均値をまとめたものである。表Vには、実施例1の乳製品では、実施例2のものよりも変色/褐色化が見られることが示され、このこともまた、ミルクの所定画分の別々の加熱がもたらしうる、予期せぬ有益な結果を確証するものである。
【0069】
(構成例3)
構成例3では、表IIの生乳画分を使用することができ、ラクターゼ酵素での処理によってラクトースフリーとすることができ、あるいは、膜の透過流またはその完全保持のために、ラクトースを全く含んでいない画分もある。タンパク質に富む画分(13質量%のタンパク質、0.5質量%の糖(グルコース/ガラクトース))に、138から142℃の温度で1から6秒間に亘ってUHT直接滅菌を施し、タンパク質に富む滅菌組成物を形成する。別途、76質量%の糖に富む画分(またはその誘導体)、7質量%の脂肪に富む画分、及び17質量%のミネラルに富む画分を含む第2乳画分を、およそ3質量%の脂肪、0.2質量%のタンパク質、3.9質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.6質量%のミネラルを含むようにブレンドする。第2乳画分に、138から142℃の温度で1から6秒間に亘るUHT直接滅菌を施し、滅菌第2乳画分を形成する。次いで、39質量%のタンパク質に富む滅菌組成物及び61質量%の滅菌第2乳画分をブレンドして、およそ2質量%の脂肪、5.2質量%のタンパク質、2.5質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.75質量%のミネラルを含む最終乳製品を製造する。
【0070】
UHT滅菌及びブレンドにより最終乳製品を形成した後に、24時間に亘って貯蔵した後、構成例3の最終乳製品の官能特性は、表IV及び表Vに示されるように、実施例1のものよりも優れ、且つ、実施例2のものに匹敵することが期待される。タンパク質に富む画分は、0.5質量%の糖を含むのみであり、糖に富む画分とは別にUHT滅菌を施される。第2乳画分は、3.9質量%の糖を含むが、0.2質量%のタンパク質を含むのみである。
【0071】
(構成例4)
構成例4では、表IIの生乳画分を使用することができ、ラクターゼ酵素での処理によってラクトースフリーとすることができ、あるいは、膜の透過流またはその完全保持のために、ラクトースを全く含んでいない画分もある。90質量%のタンパク質に富む画分及び10質量%の脂肪に富む画分を含む乳製品組成物を、およそ4.4質量%の脂肪、11.8質量%のタンパク質、0.7質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.95質量%のミネラルを含むようにブレンドする。この乳製品組成物に、138から142℃の温度で1から6秒間に亘ってUHT直接滅菌を施し、滅菌組成物を形成する。別途、82質量%の糖に富む画分(またはその誘導体)及び18質量%のミネラルに富む画分を含む第2乳画分を、実質的に脂肪を含まず、0.07質量%のタンパク質、4質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.6質量%のミネラルを含むようにブレンドする。第2乳画分に、限外濾過/精密濾過を用いる濾過滅菌を施す。次いで、43.6質量%の滅菌組成物及び56.4質量%の滅菌第2乳画分をブレンドして、およそ2質量%の脂肪、5.2質量%のタンパク質、2.5質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.75質量%のミネラルを含む最終乳製品を製造する。
【0072】
滅菌及びブレンドにより最終乳製品を形成させた後に24時間に亘って貯蔵した後、構成例4の最終乳製品の官能特性は、表IV及び表Vに示されるように、実施例1のものよりも優れ、且つ、実施例2のものに匹敵することが期待される。タンパク質に富む画分は、0.7質量%の糖を含むのみであり、糖に富む画分とは別にUHT滅菌を施される。第2乳画分は、4質量%の糖を含むが、0.07質量%のタンパク質を含むのみであり、濾過滅菌される。
【0073】
(構成例5)
構成例5では、表IIの生乳画分を使用することができ、ラクターゼ酵素での処理によってラクトースフリーとすることができ、あるいは、膜の透過流またはその完全保持のために、ラクトースを全く含んでいない画分もある。タンパク質に富む画分(13質量%のタンパク質、0.5質量%の糖(グルコース/ガラクトース))に、138から142℃の温度で1から6秒間に亘ってUHT直接滅菌を施し、タンパク質に富む滅菌組成物を形成する。別途、91質量%の糖に富む画分(またはその誘導体)及び9質量%の脂肪に富む画分を含む第2乳画分を、およそ3.5質量%の脂肪、0.2質量%のタンパク質、4.6質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.5質量%のミネラルを含むようにブレンドする。第2乳画分に、138から142℃の温度で1から6秒間に亘るUHT直接滅菌を施し、滅菌第2乳画分を形成する。別途、ミネラルに富む画分(0.75質量%のミネラル)を含む第3乳画分に、限外濾過/精密濾過を用いる濾過滅菌を施す(あるいはまた、138から142℃の温度で1から6秒間に亘ってUHT間接滅菌を施す)。次いで、39質量%のタンパク質に富む滅菌組成物及び61質量%の滅菌第2乳画分をブレンドして、およそ2質量%の脂肪、5.2質量%のタンパク質、2.5質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.75質量%のミネラルを含む最終乳製品を製造する。次いで、39質量%のタンパク質に富む滅菌組成物、50質量%の滅菌第2乳画分、及び11質量%の滅菌第3乳画分をブレンドして、およそ2質量%の脂肪、5.2質量%のタンパク質、2.5質量%の糖(グルコース/ガラクトース)、及び0.75質量%のミネラルを含む最終乳製品を製造する。
【0074】
滅菌及びブレンドにより最終乳製品を形成した後に24時間に亘って貯蔵した後、構成例5の最終乳製品の官能特性は、表IV及び表Vに示されるように、実施例1のものよりも優れ、且つ、実施例2のものに匹敵することが期待される。タンパク質に富む画分は、0.5質量%の糖を含むのみであり、糖に富む画分とは別にUHT滅菌を施される。第2乳画分は、4.6質量%の糖を含むが、0.2質量%のタンパク質を含むのみであり、第3乳画分は濾過滅菌される。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】