(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6840211
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】指示不要アクティブライブネスチェックシステム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20210301BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20210301BHJP
G06F 3/0484 20130101ALI20210301BHJP
G06F 21/32 20130101ALI20210301BHJP
【FI】
G06F3/01 570
G06T7/20 300A
G06T7/20 300B
G06F3/0484 150
G06F21/32
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-186958(P2019-186958)
(22)【出願日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】397077955
【氏名又は名称】株式会社三井住友銀行
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 良太郎
【審査官】
▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2019/0205680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/0484
G06F 21/32
G06T 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの容姿を撮像している時間内に、
記憶されている効果のうちの1つまたは複数を選択し、
前記ユーザが感知するように、前記ユーザに指示を行うことなく前記選択した効果を前記ユーザに提供し、
前記効果を提供した後、前記ユーザの容姿の変化を検知するかどうかを判定する
ように構成されたプロセッサを備え、前記容姿の変化は、前記ユーザの身体の物理的な変化を含む、システム。
【請求項2】
前記効果は、前記ユーザの容姿を変化させた画像の提供、画像の出現および移動、フラッシュのうちの1つまたは複数を含み、
前記容姿の変化は、表情、視線移動、または顔の向きの変化のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、所定の時間内に変化を検知しない場合、他の効果を選択して提供するようにさらに構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
コンピュータによって実施される方法であって、
ユーザの容姿を撮像している時間内に、
記憶されている効果のうちの1つまたは複数を選択すること、
前記ユーザが感知するように、前記ユーザに指示を行うことなく前記選択した効果を前記ユーザに提供すること、
前記効果を提供した後、前記ユーザの容姿の変化を検知するかどうかを判定する
ことを備え、前記容姿の変化は、前記ユーザの身体の物理的な変化を含む、方法。
【請求項5】
前記選択した効果を前記ユーザに提供することは、前記ユーザの容姿の変化を検知した場合、ただちに終了する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指示不要アクティブライブネスチェックシステム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関の口座開設等に必要な本人確認を郵送によって行う場合、本人確認が完了するまでに時間を要していた。このような状況の中、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)における施行規則の一部改正命令が2018年11月30日付けで施行された。改正によって、本人確認を電子的に行う仕組みであるeKYC(electronic Know Your Customer)が可能となった。
【0003】
eKYCは、ユーザの容姿および運転免許証等の本人確認書類をそれぞれ撮像した画像データにより本人確認を行うことができる。eKYCはまた、なりすまし防止のため容姿や本人確認書類が実物であるかどうかを確認する仕組みが要求される。
【0004】
実物確認は、本人確認の処理中にまばたき・首振り等の動作や、本人確認書類の厚みを判別できるように傾けて撮像する等の動作をユーザに指示し、事前に撮像した画像または偽造した本人確認書類ではないこと等を確認することにより行われ得る。特許文献1には、ユーザに対して動作を指示して、ユーザが指示された動作を行ったか否かを判定するアクティブライブネスチェックに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6541140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のアクティブライブネスチェックはユーザに動作を指示するため、ユーザが「指示されている」という心理的抵抗や動作の負担を感じる場合があった。一方、ユーザの負担低減を目的として、まばたき等の小さな動作を要求すると検知難易度が高くなり、検知できなければ再度動作の指示を与える場合があった。
【0007】
他の実物確認の手法として、短時間に複数の色をディスプレイに表示して容姿に対する反射を検知するカラーリフレクションが考えられる。しかしながら、カラーリフレクションは人型のパネル、お面、蝋人形等に対する検知精度が低く、視覚的な刺激が強いためユーザが心理的抵抗を感じる場合があった。
【0008】
本発明はこのような課題に対し、指示不要アクティブライブネスシステム、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様である、システムは、ユーザの容姿を撮像している時間内に、記憶されている効果のうちの1つまたは複数を選択し、ユーザが感知するように、ユーザに指示を行うことなく選択した効果をユーザに提供し、効果を提供した後、ユーザの容姿の変化を検知するかどうかを判定するように構成されたプロセッサを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザに動作を指示することがないため従来のアクティブライブネスチェックによってユーザが感じる心理的抵抗や動作の負担を軽減でき、自然発生的な容姿の変化を検知することによってユーザの容姿の実物確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るユーザデバイス100の構成を例示する図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る指示不要アクティブライブネスチェックシステムの機能ブロックを例示する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る効果を例示する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る効果を例示する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る指示不要アクティブライブネスチェックの処理フローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。複数の図面において同一の符号は同一の要素を表し、重複した説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るユーザデバイス100の構成を例示する図である。ユーザデバイス100は、制御部101、記憶部102、操作部103、表示部104、通信部105、およびカメラ106がバス107等によって接続されることを例示している。
【0014】
制御部101は、CPU等により構成され、記憶部102に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、システムの各構成要素の情報処理または制御処理等を行うことができる。記憶部102は、例えばRAM、ROM等により構成され、制御部101が処理を実行するために必要なプログラムまたはデータ等を記憶できる。記憶部102はまた、制御部101が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶できる。
【0015】
操作部103は、タッチパネル、キーボード、マウス等により構成され、アプリケーションの各種操作や入力データを受け付けることができる。表示部104は、ディスプレイ等により構成され、アプリケーションの各種画面等を提供できる。通信部105は、他のシステムまたは装置との間でデータを送受信する際のインタフェースである。
【0016】
カメラ106は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等により構成され得る。カメラ106は、ユーザ側に構成されたインカメラ(フロントカメラ)等によりユーザデバイス100を使用するユーザの容姿を撮像できる。カメラ106の被写体は表示部104に表示され、ユーザが確認できる。
【0017】
ユーザデバイス100は、本人確認を行うユーザによって使用されるデバイスであり、スマートフォン、タブレット、PC等とすることができる。ユーザデバイス100は、本人確認を行うアプリケーションをインストールするか、またはネットワークを介して本人確認を行うアプリケーションを利用できる。本人確認を行うアプリケーションは、ユーザの容姿を撮像した自撮り動画像を要求する処理を含む。ユーザデバイス100はまた、フラッシュ機能、効果音/音声等の発音機能、バイブレーション機能等を備え得る。
【0018】
ユーザは、ユーザデバイス100のカメラ106を使用して自撮り動画像を撮像する。自撮りは、ユーザデバイス100に表示されたユーザ自身の容姿画像を確認しながら行われ得る。撮像は、所定の撮像基準を満たす容姿画像データを取得する目的のほか、アクティブライブネスチェックのために行われ得る。アクティブライブネスチェックは、ユーザの容姿を撮像している時間内に行われる。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係る指示不要アクティブライブネスチェックシステムの機能ブロックを例示する図である。
図2は概略的に、効果選択部201、効果提供部202、変化判定部203を備えるユーザデバイス100が例示されている。
【0020】
ユーザデバイス100は、ユーザの反応を取得するための効果を記憶する。効果は、例えばユーザの容姿(目、鼻、口等の任意の部分、顔の全部等)に他の画像を重ねること、輪郭を歪めたり大きさを変形させたりすること、化粧を施したように加工すること、動物や昆虫、任意のマーク等の画像を表示すること等の任意の加工を含み得る。効果はまた、上下反転、左右反転、明度/彩度の変化、解像度の変化、透過/変色等の加工としてもよい。効果はまた、複数の加工の組み合わせとしてもよく、本人確認を行うアプリケーションの処理中に取得したユーザの属性(性別、年齢等)に応じて異なる加工を施してもよい。効果はまた、フラッシュ、効果音/音声、バイブレーション等のユーザが反応し得る任意の機能により実現されてもよい。
【0021】
加工は、例えばユーザデバイス100のカメラ106で撮像している顔等の動画像データに対してリアルタイムで動画像認識を実行して、取得されたユーザの顔等の特徴点/座標の情報に基づいて他の画像を描画する等により行われ得る。動画像認識は、任意の動画像処理アルゴリズム、認識技術等を使用して実施され得る。加工はまた、被写体に仮想の視覚情報を重ねて表示する等のAR(Augmented Reality:拡張現実)技術を使用してもよい。
【0022】
ユーザは、例えばユーザデバイス100に表示された効果を感知することによって、驚き、笑い等の表情変化や、視線移動、顔の向き等の変化が生じ得る。変化は、例えばユーザデバイス100に表示されているユーザ自身の顔に対し、突然他の画像が重なって表示されたり輪郭が変化したりすると、ユーザは驚くか、または笑う等の反応があると想定される。また、例えばユーザデバイス100に星型のマーク等の画像が突然表示されたり、マークが移動したりすると、ユーザはマークに視線を移すか、および/または顔の向きを変える等の反応があると想定される。
【0023】
効果選択部201は、ユーザデバイス100に記憶された効果のうちの1つまたは複数を順番に、またはランダムに選択する。効果提供部202は、ユーザデバイス100の表示部104やその他任意の機能を使用して、選択された効果をユーザに提供する。
【0024】
変化判定部203は、ユーザの表情、手、首、視線、顔の向き等の動作の変化を検知するかどうかを判定する。判定は、例えばユーザデバイス100のカメラ106で撮像している顔等の動画像データに対してリアルタイムで動画像認識を実行して、所定の時間前の特徴点/座標の情報と現在の情報とを比較して差があるかどうか等により行われ得る。所定の時間内に変化を検知した場合、ユーザが実物であり、事前に撮像された動画像やパネル等ではないという実物確認(アクティブライブネスチェック)が可能となる。所定の時間内に変化を検知しない場合は、効果選択部201により他の効果を選択して、効果提供部202により他の効果を提供してもよい。変化を検知した時点で、アクティブライブネスチェックを完了してもよく、いくつかの変化を検知した時点でアクティブライブネスチェックを完了してもよい。
【0025】
変化判定部203は、任意的に、提供した効果と反応との関連性に基づいて判定してもよい。関連性は、例えばユーザの容姿を変化させる効果を提供した場合、驚き、笑い等の表情変化が起こることが想定されるため、首振り等の他の動作を検知したとしても、変化を検知しないと判定してもよい。変化判定部203はまた、例えば効果をユーザに提供する前に表情や動作の変化を検知したとしても、変化を検知しないと判定してもよい。変化判定部203はまた、効果をユーザに提供した時間を基準として、所定の時間内に変化を検知するかどうかに基づいて判定してもよい。変化判定部203はまた、効果としてマークが選択され、かつマークの位置(座標)と視線の向きが一致しない場合、変化を検知しないと判定してもよい。
【0026】
ユーザデバイス100は、任意のネットワークを介して他のシステム、サーバ等に効果と変化を検知したかどうかのデータを送信してもよい。他のシステム、サーバ等は、複数のユーザデバイス100から受信したユーザの容姿を変化させる確率が高い効果や表情の変化等の検知精度の高い効果を集積してもよい。効果は検知精度の高い効果の優先度を高くするように優先度付けされてもよく、集積した効果に応じて作成(追加)または変更されてもよい。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態に係る効果を例示する図である。
図3(a)は、ユーザが自撮りを行う際、ユーザデバイス100の画面に被写体であるユーザが表示されていることを例示している。
図3(a)は、自撮りを開始してから所定の時間(例えば数秒)内の画面であり、効果が画面に表示されていないことを例示している。
【0028】
図3(b)は、自撮りを開始してから所定の時間経過後の画面であり、ユーザの容姿を加工した効果が表示されていることを例示している。効果は突然表示されてよく、アニメーション等により段階的に表示されてもよい。ユーザは、自撮り中に突然加工されたユーザ自身の容姿を見ることによって、表情の変化が想定される。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態に係る効果を例示する図である。
図4(a)、
図4(b)および
図4(c)は、ユーザが自撮りを行う際、ユーザデバイス100の画面に被写体であるユーザおよび効果として星型のマークが表示されることを例示している。
図4(a)、
図4(b)および
図4(c)は、経時的に遷移する。
【0030】
図4(a)は、マークが画面右下側に表示されていることを例示している。マークは自撮りを開始した所定の時間経過後に表示され得る。マークは、任意の表示方法でよく、例えば突然出現するように表示されてもよく、拡大や透明度の変化等のアニメーションにより徐々に判別可能なように表示されてもよい。自撮り中にマークが表示されることによって、ユーザは視線および/または顔の向きを出現したマークの方に向けると想定される。
【0031】
図4(b)は、マークが
図4(a)の位置(画面右下側)から画面上側に移動することを例示している。マークの移動方向および範囲はランダムに決定されてよく、点滅等の他の視覚的効果を伴って移動してもよい。自撮り中にマークが移動することによって、ユーザは視線および/または顔の向きを移動したマークの方に向けると想定される。
【0032】
図4(c)は、マークが
図4(b)の位置(画面上側)から画面左下側に移動することを例示している。マークの移動方向および範囲はランダムに決定されてよく、点滅等の他の視覚的効果を伴って移動してもよい。自撮り中にマークが移動することによって、ユーザは視線および/または顔の向きを移動したマークの方に向けると想定される。
【0033】
ユーザデバイス100の変化判定部203は、
図4(a)〜
図4(c)で例示したマークの移動に対し、ユーザの視線および/または顔の向きの変化を検知して判定できる。変化判定部203は、マークの移動中に変化を検知した時点で判定を終了してもよく、マークの移動に伴っていくつかの変化を検知した時点で判定を終了してもよい。変化判定部203はまた、複数回マークが移動した位置と一致するかどうかに基づいて視線および/または顔の向きの変化を検知してもよく、変化を検知した場合、事前に撮像された動画像を流用したものではないと想定される。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態に係る指示不要アクティブライブネスチェックの処理フローを例示する図である。
図5は、本人確認を行うアプリケーションの処理において、アクティブライブネスチェックのためにユーザの容姿の動画像を撮像する場面を例示している。
【0035】
S501:ユーザは、ユーザデバイス100を使用して自撮りを開始する。
【0036】
S502:ユーザデバイス100の効果選択部201は、ユーザデバイス100に記憶された効果のうちの1つまたは複数を順番に、またはランダムに選択する。
【0037】
S503:ユーザデバイス100の効果提供部202は、ユーザデバイス100の表示部やその他任意の機能を使用して効果を表現するように、効果をユーザに提供する。効果は、例えば
図3に例示されたような画面とすることができる。
【0038】
S504:ユーザデバイス100の変化判定部203は、ユーザの表情、手、首、視線、顔の向き等の動作の変化を検知するかどうかを判定する。変化を検知した場合(S504:YES)、処理を終了する。
【0039】
S505:変化を検知しない場合(S504:NO)、所定の時間が経過するかどうかを判定する。所定の時間が経過していない場合(S505:NO)、S504に戻り、再度ユーザの表情や動作の変化を検知するかどうかの判定を行う。なお、スリープ、ディレイ等によりS504に戻るタイミングを調整してもよい。所定の時間が経過した場合(S505:YES)、S502に戻り、他の効果を選択する。
【0040】
このようにすることで、ユーザに動作を指示することなく、自然発生的な容姿の変化を検知することにより、ユーザが実物であり、事前に撮像された動画像やパネル等ではないという実物確認(アクティブライブネスチェック)が可能となる。
【0041】
説明のため各処理を分けて記載したが、各処理を統合、連携させ、それぞれが有する処理の一部または全部を他方が行うように実装されてもよい。
【0042】
以上、例示的な実施形態を参照しながら本発明の原理を説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく、構成および細部において変更する様々な実施形態を実現可能である。すなわち、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様を採用することが可能である。
【要約】
【課題】指示不要アクティブライブネスチェックシステム、方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】本発明の一態様である、システムは、ユーザの容姿を撮像している時間内に、記憶されている効果のうちの1つまたは複数を選択し、ユーザが感知するように、ユーザに指示を行うことなく選択した効果をユーザに提供し、効果を提供した後、ユーザの容姿の変化を検知するかどうかを判定するように構成されたプロセッサを備える。
【選択図】
図5