特許第6840246号(P6840246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840246
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】石油から硫黄および金属を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 31/08 20060101AFI20210301BHJP
   C10G 31/06 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   C10G31/08
   C10G31/06
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-536158(P2019-536158)
(86)(22)【出願日】2018年1月3日
(65)【公表番号】特表2020-514470(P2020-514470A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】US2018012177
(87)【国際公開番号】WO2018129036
(87)【国際公開日】20180712
【審査請求日】2019年8月30日
(31)【優先権主張番号】15/397,531
(32)【優先日】2017年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,キーヒョク
(72)【発明者】
【氏名】プネタ,アショク,ケー.
(72)【発明者】
【氏名】アルカーゾウ,ムニーフ,エフ.
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0099378(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0312129(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0181217(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0011511(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0166819(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0107433(US,A1)
【文献】 特表2017−504685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物および硫黄を石油原料から選択的に除去する方法であって、
予熱水流れおよび予熱石油原料を混合ゾーンに供給するステップであって、前記予熱水流れは、水の臨界温度よりも高い温度にあり、かつ水の臨界圧力よりも高い圧力にあり、前記予熱石油原料は、150℃よりも低い温度にあり、かつ水の臨界圧力よりも高い圧力にある、ステップと、
混合流れを形成するために、前記予熱水流れと前記予熱石油原料とを混合するステップと、
アップグレーディング流れを生成するために、前記混合流れを第1の超臨界水反応器に導入するステップであって、前記第1の超臨界水反応器は、水の臨界圧力よりも高い圧力にあり、かつ水の臨界温度よりも高い温度にあり、前記第1の超臨界水反応器には外部から供給された水素は存在しない、ステップと、
希釈流れを生成するために、前記アップグレーディング流れと補給水流れとを、補給混合ゾーン内において合わせるステップであって、前記補給水流れは水の臨界温度よりも高く、かつ水の臨界圧力よりも高く、前記補給水流れは、前記希釈流れにおける、油に対する水の体積流量比を、前記アップグレーディング流れに比べて増加させる、ステップと、
生成物流出物流れを生成するために、前記希釈流れを第2の超臨界水反応器に導入するステップであって、前記第2の超臨界水反応器は、前記第1の超臨界水反応器内の前記圧力よりも低い圧力にあり、前記第2の超臨界水反応器内の温度は、前記第1の超臨界水反応器内の前記温度と少なくとも同じであり、前記第2の超臨界水反応器は、転換反応の生起を可能とするように構成されている、ステップと
冷却流れを生成するために、前記生成物流出物流れを冷却装置に供給するステップと、
減圧流れを生成するために、前記冷却流れを圧力降下装置に供給するステップと、
前記減圧流れを、分離器ユニット内において、気相生成物と、水相生成物と、液状石油生成物とに分離するステップと、
軽質油生成物および残渣生成物を生成するために、前記液状石油生成物を炭化水素分離器内において分離するステップであって、前記残渣生成物の金属含有率が5ppm未満である、ステップと
を備える、方法。
【請求項2】
金属化合物および硫黄を石油原料から選択的に除去する方法であって、
予熱水流れおよび予熱石油原料を混合ゾーンに供給するステップであって、前記予熱水流れは、水の臨界温度よりも高い温度にあり、かつ水の臨界圧力よりも高い圧力にあり、前記予熱石油原料は、150℃よりも低い温度にあり、かつ水の臨界圧力よりも高い圧力にある、ステップと、
混合流れを形成するために、前記予熱水流れと前記予熱石油原料とを混合するステップと、
アップグレーディング流れを生成するために、前記混合流れを第1の超臨界水反応器に導入するステップであって、前記第1の超臨界水反応器は、水の臨界圧力よりも高い圧力にあり、かつ水の臨界温度よりも高い温度にあり、前記第1の超臨界水反応器には外部から供給された水素は存在しない、ステップと、
炭素分散水流れを生成するために、炭素分散ゾーン内において、補給水流れに炭素を混合するステップであって、前記炭素は炭素材料を含み、前記炭素は、石油原料の0.05wt%と石油原料の1.0wt%との間の範囲で存在し、前記炭素分散水流れは、水の臨界温度よりも高い温度および水の臨界圧力よりも高い圧力にある、ステップと、
希釈炭素分散流れを生成するために、補給混合ゾーン内において、前記アップグレーディング流れに前記炭素分散水流れを混合するステップであって、前記炭素は、前記希釈炭素分散流れ中に分散され、前記炭素は、前記アップグレーディング流れ中に存在する金属を捕捉することが可能である、ステップと、
炭素分散生成物流出物流れを生成するために、前記希釈炭素分散流れを第2の超臨界水反応器に導入するステップと、
冷却炭素分散流出物を生成するために、前記炭素分散生成物流出物流れをフィルタ冷却装置に導入するステップであって、前記冷却炭素分散流出物は、225℃よりも低い温度にある、ステップと、
使用済み炭素および濾過流れを生成するために、前記冷却炭素分散流出物を濾過要素に導入するステップであって、前記濾過要素は、前記炭素を前記冷却炭素分散流出物から分離するように構成される、ステップと、
冷却流れを生成するために、前記濾過流れを冷却装置に導入するステップと
減圧流れを生成するために、前記冷却流れを圧力降下装置に供給するステップと、
前記減圧流れを分離器ユニット内において、気相生成物と、水相生成物と、液状石油生成物とに分離するステップと、
軽質油生成物および残渣生成物を生成するために、前記液状石油生成物を炭化水素分離器内において分離するステップと
を備える、方法。
【請求項3】
前記炭素材料が、カーボンブラック、活性炭、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素材料が、炭素粒子を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素粒子が、10マイクロメートル未満の粒子直径を有する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭素粒子が、少なくとも80wt%の炭素含有率を有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記石油原料が、全地域原油、常圧蒸留残油、重油、製油所流れ、製油所流れからの残渣、原油精製所からのクラッキング生成物流れ、スチームクラッカーからの流れ、常圧残渣流れ、減圧残渣流れ、石炭由来炭化水素、およびバイオマス由来炭化水素からなる群から選択される石油系炭化水素である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の超臨界水反応器に流入する、水に対する石油原料の体積流量比が、1:10と1:0.1との間である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油残渣流れから硫黄および金属を除去するための方法に関する。より具体的には、本発明は、超臨界状態に維持された直列の反応器内において超臨界水を用いて石油系炭化水素流れから硫黄化合物および金属化合物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油のような石油系炭化水素は、溶媒中の溶解度に基づき、飽和族、芳香族、樹脂、およびアスファルテンの4つの画分に分離できる。アスファルテンは、単一の化学構造によって定義されるとは考えられていないが、複雑な化合物である。図1は、Murray R.Gray,Consistency of Asphaltene Chemical Structures with Pyrolysis and Coking Behavior,Energy&Fuels 17,1566−1569(2003)からのアスファルテンのモデル構造を示す。アスファルテンは、n−アルカン、特に、n−ヘプタンに可溶ではない画分として定義される。他の画分は、樹脂画分を含むが、n−アルカンに可溶であり、マルテンと呼ばれる。
【0003】
アスファルテン画分は、ヘテロ原子を含有し、硫黄、窒素、酸素、または金属を含む化合物である。多くのヘテロ原子化合物は、不純物と考えられていて、精製プロセスの目的は、これらの不純物を除去することである。
【0004】
金属は、除去の目標となる不純物の1つである。金属は、石油系炭化水素中の別の不純物を除去するために使用される精製触媒に対して有毒となる可能性があり、問題の原因となる。金属はまた、発電用に炭化水素と一緒に燃焼させた場合、腐食問題の原因となる。
【0005】
除去の目標となる別のヘテロ原子不純物は、硫黄である。アスファルテン部分中の硫黄は、脂肪族スルフィドと芳香族チオフェンとの2つの種類に分類することができる。アスファルテン中の脂肪族スルフィドおよび芳香族チオフェンの濃度は、アスファルテンの採取元である石油の種類によって変動する。アラビアンヘビー原油由来のアスファルテンは、3重量パーセントを超える脂肪族スルフィドを含め、硫黄が約7.1重量パーセントの総硫黄含有率を有する。換言すれば、アラビアンヘビー原油からのアスファルテン中に含有される硫黄の約半分は、脂肪族スルフィドである。対照的に、マヤ原油からのアスファルテンは、硫黄が約6.6重量パーセントの総硫黄含有率を有し、総硫黄含有量の半分超が、脂肪族スルフィドの形態である。
【0006】
重質留分中に含有される硫黄化合物は、脱アルキル化反応または別の反応を介して、軽質留分中のより軽質な硫黄化合物に転換できる。硫黄化合物をより軽質な化合物に転換できる能力は、炭素―硫黄結合の結合解離エネルギーに依存する。炭素―硫黄結合の結合解離エネルギーは、結合の種類により変動する。例えば、脂肪族スルフィドは、芳香族チオフェンよりも低い結合解離エネルギーを有する。結合解離エネルギーがより低いことは、脂肪族スルフィドが芳香族チオフェンよりも熱クラッキング中にラジカルをより容易に発生させることを意味する。実際に、脂肪族スルフィドは、コーカーユニットのような熱処理システム内におけるラジカル反応を開始するための重要な前駆体である。さらに、脂肪族スルフィド結合を切ると、主生成物として硫化水素(HS)が発生する。HSは、ラジカルが媒介する反応経路網における公知の水素移動試薬である。
【0007】
重質原油と異なり、ナフサおよび軽油のような軽質留分中の硫黄化合物は、芳香族チオフェンとして存在する。芳香族チオフェンは、熱クラッキング条件下で安定な傾向がある。
【0008】
硫黄化合物は、大気中に放出されると問題の原因となるため、各国は放出できる硫黄の量に関する一層厳格な目標値を課しつつある。
【0009】
金属および硫黄の存在に対処する従来の方法は、石油系炭化水素から金属および硫黄を除去する添加剤および処理ステップの使用を含む。1つの応用において、バナジウム化合物を捕捉するために燃焼器内に添加剤が注入される。添加剤はある程度までは有効であるが、金属化合物を完全に除去するわけではなく、それゆえ、金属の存在に起因する腐食を完全に防止できるとは限らない。
【0010】
従来の処理ユニット内において、金属化合物および硫黄化合物は、原油本体またはその誘導体、例えば残渣流れのような製油所流れから除去することができる。従来の水素化処理システムでは、不純物化合物の除去は、触媒の存在下において水素が供給される水素化処理ユニットにより達成される。金属化合物は、水素との反応を通して分解し、次いで触媒上に堆積する。硫黄化合物は、触媒上で分解して、HSを生成する。次いで、金属が堆積した使用済み触媒は、再生ユニット内において再生される。あるいは、一定期間の運転操業後に、使用済み触媒を廃棄または破壊することができる。従来の水素化処理でも炭化水素流れからかなりの量の不純物を除去することができるが、このプロセスは、膨大な量の水素と触媒とを消費する。触媒の寿命が短く、水素消費量が膨大であることが、水素化処理システムの運転操業に伴う出費に影響する主要因となっている。水素化処理ユニットを建設するために必要とされる巨額の資本支出ならびに運転費用は、発電プラントにおける液体燃料の前処理ユニットとして上述の複雑なプロセスを導入することを困難としている。
【0011】
石油系炭化水素から金属を除去するために使用できる別のプロセスは、溶媒抽出プロセスである。そのような溶媒抽出プロセスの1つは、溶媒脱歴(SDA)プロセスである。SDAプロセスは、重質残渣中に存在するアスファルテンのすべてまたは一部を排除して、脱歴油(DAO)を生成することができる。アスファルテンを排除することにより、DAOは、供給重質残渣よりも低い金属の量を有している。金属を多く除去すると、液収率の面で不利益となる。例えば、SDAプロセスにおいて、原油からの常圧残渣の金属含有率を129重量ppm(wt ppm)から3wt ppmに低下させることができるが、脱金属流れの液収率は、75体積パーセント(vol%)程度にとどまる。
【0012】
上述したように、接触水素化処理を用いて、コーカーユニットへの前駆体として使用されている流れから硫黄を除去することができる。脂肪族スルフィドは、接触水素化処理において、芳香族チオフェンよりもさらに活性があるが、アスファルテンの複合体は、水素化処理触媒上の活性部位に脂肪族スルフィドが接近するのを阻害する結果、反応はきわめて遅い。
【0013】
ポルフィリン型金属化合物は、超臨界水中で分解することができる。例えば、バナジウムポルフィリンは、フリーラジカル反応を介して、400℃を超えると分解することが知られている。超臨界水中の反応における分解反応の結果として生成した金属化合物は、酸化物形態および水酸化物形態を含む可能性がある。金属水酸化物化合物または金属酸化物化合物は、超臨界水反応器の下流、例えば、超臨界水反応器と分離器との間に設置された濾過要素により除去することができる。ただし、フィルタの使用は、濾過要素前後の高い圧力降下を保つのに必要な差圧を維持するために大量のエネルギー使用を必要とする。この構成はまた、貴重なアップグレーディングされた炭化水素が濾過要素上に吸収されて損失する結果となる可能性がある。
【0014】
金属は、石油生成物の、炭素/水素比が他の部分よりも高いある特定の部分内に濃縮される可能性がある。例えば、コークス部分またはコークス様部分は高度に濃縮された金属を含有する場合が多い。具体的には、コーキング条件下、一般に高温において、重質油を超臨界水を用いて処理する場合、バナジウムは、コークス内に濃縮される可能性がある。したがって、コークス形成は、液相の油生成物から金属を除去するには有利であり得るが、例えば、コークスによるプロセス配管の閉塞、およびコークス量の増加に伴う液収率の低下といった、コークス起因の問題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、石油残渣流れから硫黄および金属を除去するための方法に関する。より具体的には、本発明は、超臨界状態に維持された直列の反応器内において超臨界水を用いて石油系炭化水素流れから硫黄化合物および金属化合物を除去する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様において、石油原料から金属化合物および硫黄を選択的に除去する方法が提供される。本方法は、予熱水流れおよび予熱石油原料を混合ゾーンに供給するステップであって、上記予熱水流れは、水の臨界温度よりも高い温度にあり、かつ水の臨界圧力よりも高い圧力にあり、上記予熱石油原料は、150℃よりも低い温度にあり、かつ水の臨界圧力よりも高い圧力にある、ステップと、混合流れを形成するために、上記予熱水流れと上記予熱石油原料とを混合するステップと、アップグレーディング流れを生成するために、上記混合流れを第1の超臨界水反応器に導入するステップであって、上記第1の超臨界水反応器は、水の臨界圧力よりも高い圧力にあり、かつ水の臨界温度よりも高い温度にあり、上記第1の超臨界水反応器には外部から供給された水素は存在しない、ステップと、希釈流れを生成するために、上記アップグレーディング流れと補給水流れとを、補給混合ゾーン内において合わせるステップであって、上記補給水流れは上記臨界点よりも高く、上記補給水流れは、上記希釈流れにおける、油に対する水の体積流量比を、前記アップグレーディング流れに比べて増加させる、ステップと、生成物流出物流れを生成するために、上記希釈流れを第2の超臨界水反応器に導入するステップであって、上記第2の超臨界水反応器は、上記第1の超臨界水反応器内の上記圧力よりも低い圧力にあり、上記第2の超臨界水反応器内の温度は、上記第1の超臨界水反応器内の上記温度と少なくとも同じであり、上記第2の超臨界水反応器は、転換反応の生起を可能とするように構成されている、ステップとを備える。
【0017】
本発明のある態様において、本方法は、炭素分散水流れを生成するために、炭素分散ゾーン内において、上記補給水流れに炭素を混合するステップであって、上記炭素は炭素材料を含み、上記炭素は、石油原料の0.05wt%と石油原料の1.0wt%との間の範囲で存在し、上記炭素分散水流れは、水の臨界温度よりも高い温度および水の臨界圧力よりも高い圧力にある、ステップと、希釈炭素分散流れを生成するために、上記補給混合ゾーン内において、上記アップグレーディング流れに上記炭素分散水流れを混合するステップであって、上記炭素は、上記希釈炭素分散流れ中に分散され、上記炭素は、上記アップグレーディング流れ中に存在する金属を捕捉することを実施可能である、ステップと、炭素分散生成物流出物流れを生成するために、上記希釈炭素分散流れを上記第2の超臨界水反応器に導入するステップと、冷却炭素分散流出物を生成するために、上記炭素分散生成物流出物流れをフィルタ冷却装置に導入するステップであって、上記冷却炭素分散流出物は、225℃よりも低い温度にある、導入するステップと、使用済み炭素および濾過流れを生成するために、上記冷却炭素分散流出物を濾過要素に導入するステップであって、上記濾過要素は、上記炭素を上記冷却炭素分散流出物から分離するように構成される、ステップと、冷却流れを生成するために、上記濾過流れを冷却装置に導入するステップとをさらに備える。
【0018】
本発明のある態様において、本方法は、減圧流れを生成するために、上記冷却流れを圧力降下装置に供給するステップと、上記減圧流れを分離器ユニット内において、気相生成物と、水相生成物と、液状石油生成物とに分離するステップと、軽質油生成物および残渣生成物を生成するために、上記液状石油生成物を炭化水素分離器内において分離するステップとをさらに備える。ある態様において、上記炭素材料は、カーボンブラック、活性炭、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある態様において、上記炭素材料は炭素粒子を含む。ある態様において、上記炭素粒子は、10マイクロメートル未満の粒子直径を有する。ある態様において、上記炭素粒子は、少なくとも80wt%の炭素含有率を有する。ある態様において、上記方法は、冷却流れを生成するために、上記反応器流出物を冷却装置内において冷却するステップをさらに備える。ある態様において、上記石油原料は、全地域原油、常圧蒸留残油、重油、製油所流れ、製油所流れからの残渣、原油精製所からのクラッキング生成物流れ、スチームクラッカーからの流れ、常圧残渣流れ、減圧残渣流れ、石炭由来炭化水素、およびバイオマス由来炭化水素からなる群から選択される石油系炭化水素である。
【0019】
本発明の上記および他の特徴、態様、および利点は、以下の記載、特許請求の範囲、および添付図面を参照することにより、さらによく理解されるであろう。ただし、これらの図面は、本発明のいくつかの実施形態を単に例示しているのみであり、それゆえ、別の等しく有効な実施形態を容認できるのであるから、本発明の範囲を限定していると考えるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】アスファルテンのモデル構造を示す図である。
【0021】
図2】本発明に係る炭化水素原料をアップグレーディングする方法の一実施形態のプロセス図である。
【0022】
図3】本発明に係る炭化水素原料をアップグレーディングする方法の一実施形態のプロセス図である。
【0023】
図4】本発明に係る炭化水素原料をアップグレーディングする方法の一実施形態のプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な記載は、説明の目的のために多くの具体的な細目を含有するが、以下の細目に対する数多くの実施例、変更形態、および改変形態は、本発明の範囲および趣旨から逸脱しない範囲内にあることを、当業者は理解するであろうことが了解される。したがって、本明細書に記載され、添付図面に示される発明の例示的実施形態は、一般性を失うことなく、および制限を課することなく、特許請求される発明に関連して述べられる。
【0025】
本発明は、発電またはコーカーユニットからの高品質コークス製造における使用のための脱硫流れおよび脱金属流れを生成する方法およびシステムを提供する。本方法およびシステムは、石油から硫黄および金属を、高い効率で、かつ水素の外部供給なしに、かつ高い液収率で除去することができる。本方法は、コークス形成を低減し、気相生成物の発生を最小に抑え、そして液収率を向上させつつ、金属を除去する。ある実施形態において、本発明の方法は、従来の水素化処理方法に比べると、きわめて高い、アスファルテン画分中の脱硫および脱金属に対する選択性を有する。本発明の実施形態において、残渣生成物流れを生成する方法は、原油の缶出留分または重質留分に付加価値を与える。発電またはコーカーユニットにおいて有用な流れは、大部分のアップグレーディングされた流れよりも、より多量の重質留分を有する。本発明の利点は、重質留分を含有するが、硫黄および金属の含有量が低減された流れを生成することである。
【0026】
本明細書において使用される場合、「水素の外部供給」とは、反応器への供給物には、ガス(H)または液体である、添加された水素が存在しないことを意味する。換言すれば、(Hの形態にある)水素は、超臨界水反応器への供給物または供給物の一部ではない。
【0027】
本明細書において使用される場合、「触媒の外部供給」とは、反応器への供給物または反応器本体には、添加された触媒(供給物の一部として、または空の反応器に添加された、換言すれば、反応器には触媒床は存在しない)が存在しないことを意味する。
【0028】
本明細書において使用される場合、「金属」または「金属化合物」とは、石油系炭化水素中に存在する金属化合物を指し、バナジウム、ニッケル、および鉄を含むことができる。金属は、炭化水素のアスファルテン画分中に濃縮させることができる。金属存在は、ポルフィリン型化合物として存在することができる。この化合物中で金属は、窒素と配位共有結合により結合しているか、または別のヘテロ原子として存在することができる。
【0029】
本明細書において使用される場合、「重質留分」とは、一般に、原油からの常圧残渣および減圧残渣のような蒸留残渣を指す。一般に、重質留分は、650°F(常圧残渣)または1050°F(減圧残渣)を上回るT5(真沸点(TBP)における5wt%蒸留温度)留分と考えられている。
【0030】
本明細書において使用される場合、「軽質油」とは、超臨界水反応器への供給物流れと比較するとき、超臨界水反応器からの、より少ない重質留分を有する生成物流れを指す。
【0031】
本明細書において使用される場合、「従来の超臨界反応器」とは、水の超臨界状態において運転される単一の反応器を指す。この内部の反応物は、超臨界水および炭化水素流れを含む。
【0032】
特定の理論に束縛されるものではないが、当技術分野においては、超臨界水中の炭化水素の反応は、重質油をアップグレーディングして軽質油を生成することが知られている。超臨界水は、石油反応媒質としての使用に適切となる独自の特性を有し、この反応の目的は、アップグレーディング反応、脱硫反応、および脱金属反応を含む。超臨界水は、水の臨界温度よりも高く、かつ水の臨界圧力よりも高い水である。水の臨界温度は、摂氏373.946度(℃)である。水の臨界圧力は、22.06メガパスカル(MPa)である。超臨界水は、アップグレーディング反応、脱硫反応、および脱金属反応における水素源および溶媒(希釈剤)の両方として作用する。水分子からの水素は、直接移動を介して、または水性ガスシフト反応のような間接移動を介して炭化水素に移動する。希釈剤として作用する超臨界水は、「かご効果」を介してコークス形成を抑制する。特定の理論に束縛されるものではないが、超臨界水が媒介する石油プロセスの基本的な反応機構は、ラジカル反応機構と同じであると理解される。熱エネルギーは、化学結合を切ることにより、ラジカルを生じさせる。超臨界水は、周囲のラジカルによる「かご効果」を生起させる。水分子に囲まれたラジカルは、互いに容易に反応することができない、それゆえ、コークス形成の要因である分子間反応が抑制される。かご効果は、ディレードコーカーのような従来の熱クラッキングプロセスに比べ、ラジカル間反応を制限することによりコークス形成を抑制する。「コークス」とは、一般に、石油中に存在するトルエン不溶性物質として定義される。
【0033】
超臨界水による処理は、残渣生成物流れよりも経済価値がさらに高い軽質油を生成することができる。しかるに、(軽質油中に)重質留分が存在しないと、発電用に利用できる燃料とコーカーユニット用残渣とが減少する。それゆえ、生成物流れを発電またはコークス製造において使用する予定にある場合には、より重質な留分を有することが、有利である可能性がある。
【0034】
本発明の実施形態は、補給水流れが第2の超臨界水反応器またはいずれかの後続の超臨界水反応器に供給される、少なくとも2基の直列の超臨界水反応器の使用に向けられている。この反応器は、従来の超臨界反応器の向上した硫黄および金属の除去を維持しつつ、生成物流れ中の重質留分を有利に増加させる。第1の超臨界水反応器は、超臨界水反応に期待されるよりも低い水/油比で運転することができる。水/油比が低くなると、臨界水反応に比べ、アスファルテン画分中の重質分子の分子間反応に対する障害が少なくなる。第1の超臨界水反応器内において、重質分子のクラッキングにより軽質油が発生し、金属化合物が分解するが、重質分子は、分子間縮合によりさらに重質な分子に変換される。分子間縮合は、従来の超臨界水反応においては、回避される。発電またはコーカーユニットに使用するための脱硫流れを生成するプロセスにおいて、重質留分を増加させることは、有利となる。水/油比が低くなるために、第1の超臨界水反応器内の流体は、従来の超臨界水反応器よりも密度がより高くなる。1つの利点として、炭化水素の濃度がより高いために、硫化水素は、水素移動試薬としてより有効に作用することができる。第1の超臨界水反応器内の温度制御(運転温度の制御)は、重要である。なぜならば、水/油比がより低いために、第1の超臨界水反応器は、水/油比がより高い第2の反応器よりも、コークス形成に対してより脆弱であるためである。固体コークスの生成は、プロセス配管を閉塞させる潜在的可能性がある。
【0035】
第2または後続のいずれかの超臨界水反応器内の水の油に対する体積流量比は、補給水の添加により、第1の超臨界水反応器内よりも高い。第2の超臨界水反応器内のより高い水/油比は、重質分子の分子間縮合反応を抑制する。また、より低い炭化水素濃度は、反応を、芳香族化反応、クラッキング反応、および異性体化反応のような分子内反応に向ける。硫化水素は、第1の超臨界水反応器内において水素移動試薬としての有利な効能を有するが、オレフィンと結合して、有機硫黄化合物を生成する可能性がある。結果としては、第2の超臨界水反応器からの生成物流れ中の硫黄含有量を低減しないのであるから、第2の超臨界水反応器内においては回避することができる。第2の超臨界水反応器内におけるより高い水/油比は、超臨界水中の硫化水素を希釈し、これにより、硫化水素とオレフィンとの化合を抑制する。有利なことに、硫化水素とオレフィンとの生成物は、一般に、超臨界水状態において高い反応性を有する脂肪族スルフィドである。したがって、第1の超臨界水反応器内において生成した脂肪族スルフィドは、より高い水/油比にある第2の超臨界水反応器内において分解することができる。超臨界水中への硫化水素の希釈度向上のため、第2の超臨界水反応器は、第1の超臨界水反応器よりも低い運転圧力で運転することができる。第2の超臨界水反応器内のより低い圧力は、有利である可能性がある。なぜならば、金属を含有する重質分子のような重質分子の溶解度を低下させて、重質分子を第2の超臨界水反応器内の炭素材料上へ堆積させるためである。第1の超臨界水反応器内の圧力と第2の超臨界水反応器内の圧力との差(デルタP)を、第2の超臨界水反応器内の圧力が、第1の超臨界水反応器内の圧力よりも、2MPa以下であるように、維持することができる限りにおいて、第1の超臨界水反応器内および第2の超臨界水反応器内の絶対圧力は、プロセス機器の要件に基づき決定することができる。2MPaを超えるデルタPは、重質分子の急激な沈殿を誘起する可能性がある。
【0036】
直列の超臨界水反応器はまた、石油流れの脱金属に及ぼす効能を有する。石油供給流れ中に存在する金属化合物は、第1の超臨界水反応器内において分解を始める。より高い水/油比で運転される第2または後続の超臨界水反応器内において、より高い水/油比のために、金属化合物分解由来の中間生成物は、さらに分解される。金属酸化物および金属水酸化物の形態にある分解された金属は、超臨界水により希釈される。
【0037】
図2を参照すると、石油原料から硫黄化合物および金属化合物を除去するための方法が提供されている。石油原料120は、石油ポンプ20を介して石油予熱器22に移送される。石油ポンプ20は、石油原料120の圧力を増加させて、加圧原料122を生成する。石油原料120は、重質留分を含み、金属含有量を有する石油系炭化水素のいずれかの源であることができる。例示的な石油系炭化水素源は、全地域原油、常圧蒸留残油、重油、製油所流れ、製油所流れからの残渣、原油精製所からのクラッキング生成物流れ、ナフサクラッカーを含むスチームクラッカーからの流れ、常圧残渣流れ、減圧残渣流れ、ビチューメン、石炭系液体を含む石炭由来炭化水素、およびバイオマテリアル由来炭化水素を含む。本発明の少なくとも1つの実施形態において、金属化合物が存在しない、または金属含有量が低いナフサのような軽質石油系炭化水素は、本発明の原料としては適切ではない。本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油原料120は、全地域原油である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油原料120は、常圧残渣流れである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油原料120は、減圧残渣流れである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油原料120は、石油系炭化水素から分離されたピッチを含み、あるいは石油系炭化水素から分離されたタールを含む。本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油原料120中のピッチは、溶媒脱歴(SDA)プロセスから分離される。常圧残渣流れおよび減圧残渣流れは、常圧蒸留プロセスまたは減圧蒸留プロセスからの缶出流れまたは缶出留分であり、金属化合物を含有する可能性があり、本発明の原料として使用することができる。
【0038】
加圧原料122は、原料圧力を有する。加圧原料122の原料圧力は、水の臨界圧力を超える、あるいは、23MPaを超える、あるいは、約23MPaと約30MPaとの間にある圧力である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、原料圧力は、27MPaである。
【0039】
石油予熱器22は、加圧原料122の温度を上昇させて予熱石油原料124を生成する。石油予熱器22は、加圧原料122を原料温度にまで加熱する。予熱石油原料124の原料温度は、300℃未満の温度、あるいは約30℃と300℃との間の温度、あるいは30℃と150℃との間の温度、あるいは50℃と150℃との間の温度である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、原料温度は、150℃である。予熱石油原料124の温度を350℃未満に保つことは、反応器の上流の原料を加熱するステップにおいて、コークスの生成を低減、およびいくつかの場合において回避する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、予熱石油原料124の原料温度を約150℃以下に維持することは、予熱石油原料124中のコークスの生成を回避する。さらに、石油系炭化水素流れを150℃にまで加熱するのであれば、熱交換器内に水蒸気を用いて達成できるが、350℃にまで加熱するには、可能であれば、重質加熱装置を必要とする。
【0040】
水流れ110を水ポンプ10に供給して加圧水流れ112を発生させる。加圧水流れ112は、水圧を有する。加圧水流れ112の水圧は、水の臨界圧力を超える、あるいは約23MPaを超える圧力、あるいは約23MPaと約30MPaとの間の圧力である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、水圧は、約27MPaである。加圧水流れ112を水予熱器12に供給して予熱水流れ114を発生させる。
【0041】
水予熱器12は、予熱水流れ114を生成するための水温にまで加圧水流れ112を加熱する。加圧水流れ112の水温は、水の臨界温度より高い温度、あるいは約374℃と約600℃との間の温度、あるいは約374℃と約450℃との間、あるいは約450℃より高い。水温の上限は、配管、フランジ、および他の接続部品などのプロセスの物理的側面の定格により制約される。例えば、316ステンレス鋼の場合、高圧における最高温度は、649℃であることが推奨される。600℃未満の温度が、パイプラインの物理的制約の範囲内にあり実用的である。予熱水流れ114は、水の臨界温度および水の臨界圧力より高い状態にある超臨界水である。
【0042】
水流れ110と石油原料120は、別々に加圧および加熱される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、予熱石油原料124と予熱水流れ114との間の温度差は、300℃を超える。特定の理論に束縛されるものではないが、300℃を超える予熱石油原料124と予熱水流れ114との間の温度差は、混合ゾーン30内における、予熱石油原料124中に存在する石炭系炭化水素の、予熱水流れ114中の超臨界水との混合を増進すると考えられる。予熱水流れ114には、酸化剤が存在しない。混合の順序に関わらず、コークスの生成を避けるため、石油原料120は、水流れ110との混合が完了するまでは、350℃より高く加熱されることはない。
【0043】
予熱水流れ114と予熱石油原料124とは、混合ゾーン30に供給され、混合流れ130を生成する。混合ゾーン30は、炭化水素流れと超臨界水流れとを混合可能ないずれかの混合器を含むことができる。混合ゾーン30のための例示的な混合器は、静止型混合器とキャピラリー型混合器とを含む。特定の理論に束縛されるものではないが、超臨界水と炭化水素とは、接触して瞬時に混合されるものではなく、混合を持続させることが必要であり、その後に十分に混合または完全に混合した流れに発達することができる。十分に混合された流れは、炭化水素に及ぼす超臨界水のかご効果を増進する。混合流れ130は、第1の超臨界水反応器40に導入される。第1の超臨界水反応器40に流入する水に対する石油原料の体積流量比は、標準状態の周囲温度および圧力(SATP)において、約1:10と約1:0.1との間、あるいは約1:1と約1:0.2との間である。少なくとも1つの実施形態において、第1の超臨界水反応器40に流入する石油原料の体積流量に対する水の体積流量の比は、1〜5の範囲にある。
【0044】
第2または後続の超臨界水反応器のいずれかにおいて、石油原料の体積流量に対する水の体積流量のより高い比が、精製石油部分を分散するためには望ましい。第2または後続の超臨界水反応器内のいずれかに、追加の水を添加して、精製石油部分の体積流量に対する水の体積流量の比を、第1の超臨界水反応器内の比を超えるようにすることができる。少なくとも1つの実施形態において、第2またはいずれかの後続の超臨界水反応器に流入する石油原料の体積流量に対する水の体積流量の比は、1.1〜5の範囲にある。第2の超臨界水反応器の流体中で油より多量の水を使用することは、水/油比が低いまたは油の割合が水より多いプロセスよりも、液収率を向上させる。不十分な混合は、オリゴマー化反応および重合反応のような反応を誘発または加速して、より大きな分子またはコークスの形成をもたらす。バナジウムポルフィリンのような金属化合物が、上述の大きな分子またはコークスに包摂されている場合、大きな分子に物理的分離または化学的分離法を施す以外に、金属化合物を除去する方法はない。金属をコークス中に濃縮し次いで液状油生成物中から金属を除去するプロセスよりも、本方法は、液収率を有利に向上させる。上述の金属を濃縮させるプロセスは、液収率が低下するのに加え、プロセス配管の閉塞のような連続運転にとっての問題を発生させる。
【0045】
混合流れ130を十分に混合しているために、本発明の方法に係る金属および硫黄の除去能力が向上する。混合流れ130は、アスファルテン画分、マルテン画分、および超臨界水画分を有する。これらの画分は、混合流れ130中で十分に混合され、分離層としては存在しない。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合流れ130は、エマルションである。混合流れ130の温度は、予熱水流れ114の水温、予熱石油原料124の原料温度、および予熱水流れ114の予熱石油原料124との比に依存し、混合流れ130の温度は、270℃と500℃との間、あるいは300℃と500℃との間、あるいは300℃と374℃との間であることができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合流れ130は、300℃を超える。混合流れ130の圧力は、予熱水流れ114の水圧と予熱石油原料124の原料圧とに依存する。混合流れ130の圧力は、22MPaを超えることができる。
【0046】
混合流れ130は、第1の超臨界水反応器40に導入され、アップグレーディング流れ140を生成する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合流れ130は、さらなる加熱ステップがない場合、混合ゾーン30から第1の超臨界水反応器40に移送される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、さらなる加熱ステップがない場合、混合流れ130は、混合ゾーン30から第1の超臨界水反応器40に移送されるが、温度を維持するために通過する配管には保温が施される。
【0047】
第1の超臨界水反応器40は、水の臨界温度を超える温度、あるいは約374℃と約500℃との間、あるいは約380℃と約460℃との間、あるいは約400℃と約500℃との間、あるいは約400℃と約430℃との間、あるいは約420℃と約450℃との間で運転される。好適な実施形態において、第1の超臨界水反応器40内の温度は、400℃と約430℃との間である。第1の超臨界水反応器40は、水の臨界圧力を超える、あるいは約22MPaを超える、あるいは約22MPaと約30MPaとの間、あるいは約23MPaと約27MPaとの間の圧力にある。第1の超臨界水反応器40内における混合流れ130の滞留時間は、約10秒より長い、あるいは約10秒と約5分との間、あるいは約10秒と10分との間、あるいは約1分と約6時間との間、あるいは約10分と2時間との間である。転換反応は、第1の超臨界水反応器40内において生起することができる。転換反応は、アップグレーディング流れ140中に精製石油部分を生成する。例示的転換反応としては、アップグレーディング、脱金属、脱硫、脱窒素、脱酸素、クラッキング、異性化、アルキル化、縮合、二量体化、加水分解、および水和、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0048】
アップグレーディング流れ140は、補給混合ゾーン35に供給される。アップグレーディング流れ140は、補給混合ゾーン35内において補給水流れ104と混合されて、希釈流れ142を生成する。補給水流れ104は、水の臨界温度および臨界圧力より高い。補給流れ100は、補給ポンプ5内において加圧され、加圧補給流れ102を生成する。加圧補給流れ102の圧力は、第1の超臨界水反応器40内の圧力および第2の超臨界水反応器45内の圧力ならびにこれら2基の反応器間の圧力降下を勘案して設計される。加圧補給流れ102の圧力は、水の臨界圧力より高い圧力にある。次いで、加圧補給流れ102は、補給加熱器2に供給され、加圧補給流れ102を水の臨界温度より高い温度にまで加熱して、補給水流れ104を生成する。補給混合ゾーン35は、炭化水素流れおよび超臨界流れを混合することの可能ないずれかの混合器を含むことができる。補給混合ゾーン35のための例示的な混合器は、静止型混合器とキャピラリー型混合器とを含む。補給流れ104は、アップグレーディング流れ140と混合され、第2の超臨界水反応器45に流入する流れの水/油比を増加させる。希釈流れ142は、第2の超臨界水反応器45に供給され、生成物流出物流れ145を生成する。アップグレーディング流れ140に対する補給水流れ104の体積流量比は、0.1:100、あるいは0.5:10、あるいは0.1:2である。
【0049】
補給流れ104は、第1の超臨界水反応器40後の水/油比を有利に増加させる。アップグレーディング流れ140に比べて増加した、希釈流れ142中の水/油比により、第2の超臨界水反応器40内において硫黄が除去される。特定の理論に束縛されるものではないが、水/油比がより高いと、硫化水素を希釈することができて、硫化水素とオレフィンとの再結合を抑制できることが理解される。プロセスから硫化水素を除去することは、硫黄―炭素化合物を除去するよりも容易である。さらに、希釈が超臨界水反応器45内の炭化水素濃度を低下させるために、補給流れ104は、アスファルテン分解を増進する。補給水により希釈することで、第2の超臨界水反応器45内のHSとオレフィンとの再結合の機会が減る。
【0050】
第2の超臨界水反応器45は、水の臨界温度を超える、あるいは約374℃と約500℃との間、あるいは約380℃と約460℃との間、あるいは約400℃と約500℃との間、あるいは約400℃と約430℃との間、あるいは約420℃と約450℃との間の温度で運転される。第2の超臨界水反応器45の温度は、第1の超臨界水反応器40内の温度を勘案して、第2の超臨界水反応器45の温度が第1の超臨界水反応器40内の温度と同じになるように、あるいは第2の超臨界水反応器の温度が少なくとも第1の超臨界水反応器40内の温度と同じになるように、あるいは第2の超臨界水反応器の温度が第1の超臨界水反応器40内の温度を超えるように選択される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、第2の超臨界水反応器45の温度は、約400℃と約500℃との間である。好適な実施形態において、第2の超臨界水反応器45内の温度は、約420℃と約450℃との間である。第2の超臨界水反応器45の圧力は、第1の超臨界水反応器40内の圧力を勘案して調整される。第2の超臨界水反応器45は、第1の超臨界水反応器40と同じ圧力にある、あるいは水の臨界圧力と第1の超臨界水反応器40の圧力との間の圧力にある。第1の超臨界水反応器40と第2の超臨界水反応器45との圧力差は、2MPa、あるいは2MPa未満、あるいは1.8MPa未満、あるいは1.6MPa未満、あるいは1.5MPa未満であることができる。
【0051】
第2の超臨界水反応器45内の希釈流れ142の滞留時間は、約10秒より長い、あるいは約10秒と約5分との間、あるいは約10秒と10分との間、あるいは約1分と約6時間との間、あるいは約10分と約2時間との間である。転換反応は、第2の超臨界水反応器45内において生起することができる。転換反応は、生成物流出物流れ145中に精製石油部分を生成する。例示的な転換反応としては、アップグレーディング、脱金属、脱硫、脱窒素、脱酸素、クラッキング、異性化、アルキル化、縮合、二量体化、加水分解、および水和、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0052】
生成物流出物流れ145は冷却装置50に供給され、冷却流れ150を生成する。冷却装置50は、生成物流出物145を冷却することが可能ないずれかの装置であることができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却装置50は、熱交換器である。冷却流れ150は、水の臨界温度未満、あるいは300℃未満、あるいは150℃未満の温度にある。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却流れ150は、50℃の温度にある。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却装置50は、生成物流出物流れ145を冷却することから熱を回収するために最適化することができ、回収された熱は、本プロセスの別のユニット、または別のプロセスにおいて使用できる。
【0053】
冷却流れ150は、圧力降下装置60を通過して減圧流れ160を生成する。圧力降下装置60は、冷却流れ150の圧力を、水の臨界圧力より低い、あるいは5MPaより低い、あるいは1MPaより低い、あるいは0.1MPaより低い圧力にまで低下させる。
【0054】
分離器ユニット70は、減圧流れ160を気相生成物170と、水相生成物172と、液状石油生成物174とに分離する。気相生成物170は、メタンおよびエタンのような、気体として存在する炭化水素を含むことができる。気相生成物170は、大気中に放出、さらなる処理、または貯蔵もしくは廃棄のために回収することができる。
【0055】
水相生成物172は、水流れ110として使用するために再循環することができ、さらに処理していずれかの不純物を除去し、次いで水流れ110として使用するために再循環することができ、または貯蔵または廃棄のために回収することができる。
【0056】
液状石油生成物174は、炭化水素分離器80に導入される。炭化水素分離器80は、液状石油生成物174を軽質油生成物180と残渣生成物185とに分離する。残渣生成物185は、従来の水素化処理プロセスからの生成物に比べると、金属含有量が低減され、硫黄選択率が低下し、ならびにアスファルテン画分中の金属含有量が低減され、およびアスファルテン画分中の硫黄濃度が低下している。残渣生成物185は、5ppm未満、あるいは1ppm未満、あるいは0.5ppm未満の金属含有率を有する。炭化水素分離器80は、分画プロセスを含むことができ、流れ中の成分の沸点に基づき、液状石油生成物174を軽質油生成物180と残渣生成物185とに分離することができる。例示的な分画プロセスは、蒸留を含む。本発明の少なくとも1つの実施形態において、分画または蒸留プロセスのカットポイントは、軽質油生成物180および残渣生成物185の所望の組成に基づき決定される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、残渣生成物185が発電プロセスにおいて使用される場合、蒸留プロセスのカットポイントは、発電プロセス用の残渣生成物185の目標の粘性、金属総含有量、硫黄含有量、およびコンラドソン残留炭素分(CCR)を達成するように調整される。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態において、残渣生成物185は、発電プロセスにおいて燃焼することができる。本発明のいくつかの実施形態において、残渣生成物185を、コーカーユニットに用いて固体コークスを生成することができる。残渣生成物185から、コーカーユニット内において製造した固体コークスは、コーカーユニットへの従来の供給物から製造したコークスよりも、硫黄および金属含有量が低い。減圧残渣のような重質炭化水素流れからアノードグレードコークスのような高級コークスを製造するために、コーカーユニットへの従来の供給物は、水素化処理ユニットにおいて前処理を施し、ヘテロ原子を除去する必要があるが、これは困難である可能性がある。それゆえ、多くの製油所は、高額の水素化処理ユニットを使用しなくて済む、軽質原油のような軽質流れを使用して高級コークスを製造することを選択する。有利なことに、本発明は、プロセス内に水素化処理ユニットが存在せずとも、重質炭化水素流れからコーカーユニットへの供給物流れを生成することができる。
【0058】
図3は、本発明の代替の実施形態を開示する。図2に記載するプロセスおよび方法を参照すると、補給水流れ104は、炭素分散ゾーン32に供給される。予熱水114の体積流量に対する補給水流れ104の体積流量の比は、標準状態の大気温度および圧力(SATP)において、10:1と0.1:1との間、あるいはSATPにおいて、10:1と1:1との間、あるいはSATPにおいて、1:1と0.1:1との間、あるいはSATPにおいて、1:1と0.5:1との間である。少なくとも1つの実施形態において、予熱水114の体積流量に対する補給水流れ104の体積流量の比は、1:1と0.5:1との間である。プロセスの安定な運転を維持するため、予熱水114の体積流量に対する補給水流れ104の体積流量の比は、この比に維持され、第1の超臨界水反応器40以降の総流量の急激な増加を回避する。
【0059】
炭素108は、炭素分散ゾーン32に導入される。炭素分散ゾーン32は、補給水流れ104中に炭素108を混合して、炭素分散水流れ132を生成する。炭素分散ゾーン32は、スラリーを液体中に、あるいは液体をスラリー中に、あるいは固体を液体中に、あるいは2つの液体を混合することが可能ないずれかの装置を含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、炭素分散ゾーン32は、液体中にスラリーを混合することが可能な装置を含む。少なくとも1つの実施形態において、連続撹拌槽反応器(CSTR)型容器を、炭素分散ゾーン32において使用して、補給水流れ104中に炭素108を混合することができる。
【0060】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、補給水流れ104を炭素分散ゾーン32にまず注入して、次いで炭素108を炭素分散ゾーン32に注入する。
【0061】
炭素108は、超臨界水反応状態において安定であり、かつ、アスファルテン画分中のバナジウムを含む金属を捕捉することができるいずれかの種類の炭素材料を含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、配管を通して移送することを容易にするために、炭素材料を水中に混合することから製造されたペーストまたはスラリーであることができる。少なくとも1つの実施形態において、このペーストは、1:1の水に対する炭素材料の重量比を有する。このペーストは、ボールミルプロセスにより調製することができる。ボールミルプロセスの際に、界面活性剤を添加することができる。
【0062】
少なくとも1つの実施形態において、第1の超臨界水反応器40内の金属化合物の分解から金属を生成することができる。本明細書において使用する場合、「捕捉」とは、金属が炭素材料上に堆積するように、金属を捉えまたは保持することを意味する。炭素材料の役割は、アスファルテン様化合物のような、超臨界水状態において低い溶解度を有する金属化合物を捕捉することである。特定の理論に束縛されるものではないが、脂肪族炭素―硫黄結合および脂肪族炭素―炭素結合は、第1の超臨界水反応器40内において、石油原料120からのアスファルテンのクラッキングの結果として切断されて、アスファルテン様化合物を生成する。アスファルテン様化合物は、金属を含有することができるとはいえ、アスファルテンよりも小さな分子量を有する。有利なことに、分子量がより小さいアスファルテン様化合物は、炭素材料上に堆積する。これは、第2の超臨界水反応器45内のより低い圧力によってもたらされる、第2の超臨界水反応器45内のアスファルテン様化合物の溶解度の減少のためである。炭素材料は、その表面上に高い芳香族性を有し、アスファルテン様化合物の吸着を誘発する。少なくとも1つの実施形態において、多環式芳香族のような他の分子を、炭素材料上に吸着させることができる。
【0063】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、不活性ガス下で約500℃を超える温度にまで加熱することにより前処理することができる。
【0064】
本明細書において特記するように、金属または金属化合物は、石油原料120のアスファルテン画分中に存在し、超臨界反応条件下で分解する。少なくとも1つの実施形態において、金属または金属化合物を、金属酸化物または金属水酸化物に転換することができ、それでもなお炭素材料により吸着させることができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、金属ポルフィリンの分解から生成された金属を捕捉する。
【0065】
炭素材料の例として、カーボンブラック、活性炭、およびこれらの組合せが挙げられる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、カーボンブラックを含む。有利なことに、炭素108の炭素材料を、超臨界反応条件下で、アップグレーディング流れ140中の石油と混合することは、非金属化合物よりも金属化合物の炭素材料表面上への選択的吸着を、さらに亜臨界状態における炭素材料に比べても有利に可能とする。特定の理論に束縛されるものではないが、超臨界水の高い溶解度が非金属化合物の吸着を防止し、それゆえ、金属の吸着には好都合となると考えられる。炭素材料と金属との相互作用には、反応は介在しない。炭素108の存在は、第2の超臨界水反応器45内に触媒効果を生じさせず、炭素材料と、石油生成物と、希釈炭素分散流れ144中に存在する化合物との間には反応は生起しない。炭素108には、触媒作用物質は存在しない。
【0066】
炭素108は、粒子直径、表面積、および炭素含有量を有する炭素粒子の形態にある炭素材料を含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、炭素粒子の形態にあるカーボンブラックである。少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、炭素粒子の形態にある活性炭である。少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、粒子の形態にあるカーボンブラックと活性炭との混合物である。この混合物中には、カーボンブラック粒子と、活性炭粒子と、混合されたカーボンブラック―活性炭粒子が存在することができる。
【0067】
炭素粒子は、10マイクロメートルより小さい、あるいは8マイクロメートルより小さい、あるいは6マイクロメートルより小さい、あるいは5マイクロメートルと1マイクロメートルとの間の二次粒径を有するミクロサイズ粒子であることができる。本明細書において使用する場合、「二次粒径」とは、炭素粒子の凝集体の平均直径または寸法(凝集体が球状でも概ね球状でもない場合)を指す。炭素粒子という用語は、別段の指示がない場合、その意味の中に粒子の凝集体を包含する。当業者は、カーボンブラックのような、炭素材料の炭素粒子を、一次粒径と二次粒径という2つの大きさにより言及することができることを理解するであろう。本明細書において使用する場合、「一次粒径」は、個々の粒子の平均直径を指し、電子顕微鏡により測定することができる。二次粒径は、凝集体の大きさを指す。ASTM規格 D3053、カーボンブラックに関する標準用語集(ASTM D3053,Standard Terminology Relating to Carbon Black)に記載されているように、「カーボンブラックは、互いに強く融合して凝集体と呼ばれる離散した実体を形成する球状の「一次粒子」から構成されるモルホロジーを示す。一次粒子は、本質上概念的なものであり、ひとたび凝集体が形成されると「一次粒子」はもはや存在せず、その粒子は、もはや離散的ではなく、その粒子間に物理的境界を有さない。凝集体は、比較的弱い力により緩く集合して、集塊と呼ばれるより大きな実体を形成する。集塊に、(例えば、剪断力のような)十分な力を印加すると、凝集体に分解する。凝集体は、分散可能な最小単位である。カーボンブラックは、集塊の形態で市販されている」。国際カーボンブラック協会、ファクトシート:カーボンブラックの粒子特性(Factsheet:Particle Properties of Carbon Black)に特記されているように、「凝集体は、剪断力に耐える、頑丈な構造体であり、約80〜約800nmの測定値を有する分散可能な最小単位である」。二次粒径は、いずれかの公知の方法により決定することができる。例えば、平均直径を決定する1つの方法は、レーザー回折法である。炭素粒子は、界面活性剤のような分散剤を用いると、水のような液体中に分散する。レーザーを照射し、散乱パターンを記録して、粒径分布を推定する。レーザー回折法は、優れた方法であり、最適な分散剤および凝集体の大きさを決定するために使用される。レーザー回折法においては、すべての粒子は、球状であると仮定される。レーザー回折法からの結果は、球相当径である。レーザー回折装置は、まず「球状」標準粉体を用いて校正される。「校正」を用いて、散乱パターンと「球状」粉体の大きさとを関連付ける。校正後に、実際の試料を測定して、球相当径を決定する。少なくとも1つの実施形態において、レーザー回折法を使用して、二次粒径を測定する。したがって、炭素粒子が球状でない場合でも、当業者は、直径を決定することができる。特定の理論に束縛されるものではないが、1マイクロメートルを超える二次粒径が望ましい。なぜならば、1マイクロメートル未満の炭素粒子は、液状流体から分離することが困難なためである。10マイクロメートル未満の二次粒径が望ましい。なぜならば、10マイクロメートルを超える二次粒径は、プロセス配管内の弁を含むプロセス配管を閉塞させる可能性があるためである。例えば、10マイクロメートルを超える二次粒径は、圧力調節弁を閉塞させる可能性がある。なぜならば、圧力調節弁は、粒子による閉塞に脆弱な小さなオリフィスを有するためである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、1マイクロメートルと5マイクロメートルとの間の粒子直径を有する炭素粒子を含む。炭素粒子は、25平方メートル毎グラム(m/g)を超える、あるいは50m/gを超える、あるいは75m/gを超える、あるいは100m/gを超える、あるいは125m/gを超える表面積を有することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素粒子は、100m/gを超える表面積を有する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素粒子は、110m/gを超える表面積を有する。炭素粒子は、炭素含有量を有する他の化合物を含有することができる。炭素粒子の炭素含有率は、少なくとも炭素80wt%、あるいは少なくとも85wt%、あるいは少なくとも90wt%、あるいは少なくとも95wt%、あるいは少なくとも97wt%、あるいは97wt%と99wt%との間である。特定の理論に束縛されるものではないが、炭素80wt%未満の炭素含有率は、炭素粒子の金属捕捉能の効率を低下させる。
【0068】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、0.024ミクロンの一次粒径、110m/gの比表面積、および97と99wt%との間の炭素含有率を有するカーボンブラック炭素粒子を含む。カーボンブラックを含有する炭素108は、1リットル(L)の水当たり25グラムのカーボンブラックの割合で、補給水104と混合することができる。
【0069】
炭素108には、アルミナは存在しない。特定の理論に束縛されるものではないが、アルミナは、水熱安定性が低く、アルミナの解砕および集塊の再形成をもたらし、集塊の再形成は、プロセス配管を閉塞させる粒子を発生させる可能性があると考えられる。
【0070】
炭素108および炭素分散ゾーン32には、固定床は存在しない。炭素108および炭素分散ゾーン32を通過する炭素材料は、本明細書において論じられるように、濾過要素90により液状流体から濾過されるまで、補給混合ゾーン35、第2の超臨界水反応器45、および冷却装置50を通して、流体中に依然として分散されたままである。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態において、分散界面活性剤を添加して、炭素分散ゾーン32内の炭素の分散を向上させることができる。分散界面活性剤は、炭素材料が補給水流れ104中に分散する能力を増強することが可能であり、そして炭素材料の凝集体を最小限に抑えることが可能であるいずれかの界面活性剤であることができる。界面活性剤の例には、アクリル樹脂系界面活性剤が含まれる。少なくとも1つの実施形態において、第2の超臨界水反応器45には、固体炭素材料の直接注入は存在しない。特定の理論に束縛されるものではないが、第2の超臨界水反応器45内の高圧状態のために、固体炭素材料を直接注入することは実現不可能である。
【0072】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素108は、補給ポンプ5および補給加熱器2(図示せず)の上流の補給流れ100と混合することができる。炭素を分散した補給流れ100は、次いで、水の臨界点より高い温度および圧力にまで、補給ポンプ5により加圧され、補給加熱器2により加熱されて、炭素分散水流れ132を生成する。
【0073】
炭素分散水流れ132は、石油原料120の約0.01重量パーセント(wt%)〜石油原料120の約1.0wt%の範囲、あるいは石油原料120の約0.05wt%〜石油原料120の約0.1wt%の範囲、あるいは石油原料120の約0.1wt%〜石油原料120の約0.2wt%の範囲、あるいは石油原料120の0.2wt%〜石油原料120の約0.3wt%の範囲、あるいは石油原料120の0.3wt%〜石油原料120の約0.4wt%の範囲、あるいは石油原料120の約0.4wt%〜石油原料120の約0.5wt%の範囲、あるいは石油原料120の約0.5wt%〜石油原料120の約0.6wt%の範囲、あるいは石油原料120の約0.6wt%〜石油原料120の約0.7wt%の範囲、あるいは石油原料120の約0.7wt%〜石油原料120の約0.8wt%の範囲、あるいは石油原料120の約0.8wt%〜石油原料120の約0.9wt%の範囲、あるいは石油原料120の約0.9wt%〜石油原料120の約1.0wt%の範囲の量の炭素を含有する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素分散水流れ132は、石油原料120の約0.05wt%〜石油原料120の約1wt%の範囲の量の炭素を含有する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、炭素材料は、水の0.1wt%と水の5wt%との間の炭素の量となるように、補給水流れ104と混合される。炭素分散水流れ132中の炭素材料の総重量の比は、石油原料120の合計量に関係する。なぜならば、炭素材料は、金属化合物を捕捉する目的で添加されるためであり、それゆえ、添加される炭素材料の量は、石油原料および石油原料中の金属含有量の測定値に関連する。
【0074】
少なくとも1つの実施形態において、炭素分散水流れ132は、炭素分散ゾーン32から補給混合ゾーン35まで、分散した炭素材料の水からの沈殿を防止する空塔速度を維持するために十分に小さい内径を有する配管内を移送される。所望の空塔速度は、炭素粒子のような炭素材料の大きさおよび濃度によって決定される。所望の空塔速度は、配管中の炭素材料の蓄積を監視することにより別々に測定することができる。
【0075】
炭素材料は、補給混合ゾーン35において、金属化合物の捕捉を始めることができる。しかるに、第2の超臨界水反応器45の低下された圧力のために、第2の超臨界水反応器45内において、金属化合物が一層容易に炭素材料上に吸着される結果をもたらすことができる。
【0076】
本明細書において図3を参照して記載されるように、炭素分散水流れ132は、補給混合ゾーン35内において、アップグレーディング流れ140と混合され、希釈炭素分散流れ144を生成する。希釈炭素分散流れ144は、第2の超臨界水反応器45に注入され、炭素分散流出物流れ148を生成する。
【0077】
第2の超臨界水反応器45において、希釈炭素分散流れ144中に存在する炭素材料は、金属を捕捉する。炭素材料は、亜臨界状態よりも超臨界水状態において一層効率的に金属を捕捉する。
【0078】
炭素分散流出物流れ148は、フィルタ冷却装置55に移送され、冷却炭素分散流出物154を生成する。フィルタ冷却装置55は、炭素分散流出物流れ148の温度を低下することが可能ないずれかのタイプの冷却装置であることができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、フィルタ冷却装置55は、熱交換器である。冷却炭素分散流出物154は、水の臨界温度未満、あるいは300℃未満、あるいは275℃未満、あるいは250℃未満、あるいは225℃未満の温度にある。冷却炭素分散流出物154は、濾過要素90に導入される。少なくとも1つの実施形態において、冷却炭素分散流出物154は、濾過要素90内における大きな圧力降下を避けるために50℃を超える温度に保たれる。
【0079】
濾過要素90は、冷却炭素分散流出物154中における捕捉した金属を有する炭素材料を液状流体から分離可能ないずれかの静止型装置である。例示的な装置としては、濾過ユニット、遠心分離器、および固体ミクロサイズ粒子を液状流体から除去する当技術分野において公知の別の方法が挙げられる。濾過要素90は、使用済み炭素190と濾過流れ152とを生成する。少なくとも1つの実施形態において、捕捉した金属を有する炭素材料を除去する濾過要素90を有するシステムは、金属粒子単体を除去する従来のフィルタよりも必要とするエネルギーが少ない。金属粒子単体を濾過することは、金属粒子の大きさのために、きわめて目が細かいフィルタを必要とする。捕捉金属を有する炭素材料は、金属粒子単体よりも大きいために、従来のフィルタに比べて、より目の粗いフィルタを濾過要素90内に使用することができる。濾過要素90を有するシステムは、必要とするエネルギーが少ない。なぜならば、金属粒子単体を除去する従来のフィルタに比べて目が粗いことに起因して、フィルタ前後で起こる圧力降下が小さいためである。
【0080】
使用済み炭素190は、冷却炭素分散流出物154から分離された捕捉金属を有する炭素材料を含有する。使用済み炭素190は、さらなる処理のためのユニットに送ることができる、または廃棄することができる。少なくとも1つの実施形態において、さらなる処理のためのユニットは燃焼ユニットである。燃焼ユニット内において、捕捉金属を有する炭素材料は、燃焼されて金属を放出し、金属はその後に回収することができる。この燃焼ユニットは、金属に起因する装置腐食を最小に抑えるために、(例えば、ガスタービン内の燃焼よりも低い)比較的低い燃焼範囲で運転される。回収された金属は、販売することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、使用済み炭素190には、再循環ラインまたはプロセスは存在しない。分離後の炭素材料上に残存する金属化合物を除去して、本来の炭素材料を取り戻すことは容易ではなく、たとえ再循環したとしても、炭素108における炭素材料の効率を下げることになりかねない。
【0081】
有利なことに、金属酸化物、および金属水酸化物の形態を含む金属および金属化合物の炭素材料上への捕捉は、濾過による分離を促進する。炭素材料が存在しない場合、金属および金属化合物の大きさは、効率的に濾過するには、あまりにも小さく、あまりにも濃度が低い。少なくとも1つの実施形態において、冷却炭素分散流出物154中の金属および金属化合物の濃度は、10重量ppm未満である一方、炭素材料の濃度は、原油の0.001wt%と1wt%との間である。
【0082】
濾過要素90は、それぞれが異なるフィルタサイズおよび効率を有する直列のフィルタユニットであることができる。濾過要素90には、内部撹拌機は存在しない。
【0083】
濾過流れ152には、捕捉金属を有する炭素材料は存在しない可能性がある。一実施形態において、濾過流れ152は、ある量の捕捉金属を有する炭素材料を含み、この炭素材料は、分離器ユニット70内における分離以降に、水相生成物172中に濃縮することができる。少なくとも1つの実施形態において、捕捉金属を有する炭素材料を含有する水相生成物172を、さらに処理して、残留する炭素材料を水から分離することができる。少なくとも1つの実施形態において、さらなる処理は、濾過ユニットを用いて、捕捉金属を有する炭素材料を水から分離することを含む。
【0084】
濾過流れ152は、冷却装置50を通過して、冷却流れ150を生成する。冷却装置50は図2を参照して記載される。冷却流れ150は、冷却炭素分散流出物154の温度未満、あるいは300℃未満、あるいは275℃未満、あるいは250℃未満、あるいは225℃未満、あるいは200℃未満、あるいは150℃未満の温度にある。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却流れ150は、50℃の温度にある。図2を参照して記載するように、冷却流れ150は、圧力降下装置60に移送される。
【0085】
本発明のある実施形態において、炭化水素のアップグレーディングのためのプロセスが図3に示され、濾過要素90は、第2の超臨界水45の下流のいずれかの地点にあることができる。ある実施形態において、炭素108を有する図3に示される炭化水素のアップグレーディングのためのプロセスには、分離器ユニット70の上流に濾過要素90は存在しない。炭素分散流出物流れ148を、50℃未満の温度および0.1MPa未満の圧力にまで冷却および減圧し、次いで、分離器ユニット70に供給する。分離器ユニット70内における分離に続き、炭素材料を水相生成物172中に濃縮する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、遠心分離器は、濾過要素90の一部であることができ、水相生成物172中の炭素材料濃度を増加する。炭素材料を水から分離するために、水相生成物172をさらに処理することができ、水はプロセス内に再循環することができる。本発明のいくつかの実施形態において、プロセスに濾過要素が存在しない場合、残渣生成物185中に存在する捕捉金属を有する炭素材料を燃焼して、エネルギーを発生させ、かつ金属酸化物の形態で有価金属を回収することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、残渣生成物185には、再循環ラインまたはプロセスは存在しない。分離後の炭素材料上に残存する金属化合物を除去して、本来の炭素材料を取り戻すことは容易ではなく、炭素108における炭素材料の効率は低下すると思われる。
【0086】
図4は、本発明の代替の実施形態を開示する。図2および図3に記載されているプロセスおよび方法を参照すると、アップグレーディング流れ140は、圧力制御装置62を通過して、減圧アップグレーディング流れ146を生成する。圧力制御装置62は、アップグレーディング流れ140の圧力を下げるための圧力降下をもたらすことが可能ないずれかのタイプの圧力調整器であることができる。例示的な圧力制御装置62は、圧力調節弁および流量制限器を含む。本発明の実施形態において、第1の超臨界水反応器40の圧力と、第2の超臨界水反応器45の圧力とは、同じであることができる。本発明の実施形態において、第1の超臨界水反応器40の圧力は、第2の超臨界水反応器45の圧力を超えることができる。第2の超臨界水反応器45内の圧力は、第1の超臨界水反応器40内の圧力を超えることはできない。第2の超臨界水反応器45内の圧力は、第1の超臨界水反応器40内の圧力よりも低い。この目的は、アスファルテンまたはアスファルテン様化合物のような大きな分子の溶解度を下げることで、そのような重質分子の炭素材料上への吸着を向上させるためである。圧力制御装置62は、少なくとも約0.1MPa、あるいは少なくとも約0.2MPa、あるいは少なくとも約0.5MPa、あるいは少なくとも約1.0MPa、あるいは少なくとも約1.5MPa、あるいは約2.0MPaの圧力降下を有するように設計することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、圧力制御装置62前後の圧力降下は、2.0MPaを超えない。有利なことに、圧力降下を2MPaより低く維持することは、第1の超臨界水反応器40と第2の超臨界水反応器45の両方の運転条件の制御能力を向上する。圧力制御装置62は、減圧アップグレーディング流れ146を水の臨界圧力を超えた圧力に維持すべきである実際を勘案した圧力降下を有するように設計される。減圧アップグレーディング流れ146は、補給混合ゾーン35に導入され、炭素分散水流れ132と混合され、希釈炭素分散流れ144を生成する。
【0087】
本発明の利点は、常圧残渣流れおよび減圧残渣流れのような残渣流れを転換して、発電および高級コークス製造における使用に適切な生成物流れを生成することである。
【0088】
本発明のプロセスにおいて使用される超臨界水反応器の基数は、プロセスの設計要求に応じて変動する。重質留分炭化水素流れから金属および硫黄を除去するプロセスは、直列に配列された2基の超臨界水反応器を、あるいは直列に配列された3基の超臨界水反応器を、あるいは直列に配列された4基の超臨界水反応器を、あるいは直列に配列された5基以上の超臨界水反応器を含むことができる。本発明の好適な実施形態において、2基の超臨界水反応器は、直列に配列される。3基以上の超臨界水反応器が使用される実施形態において、補給水流れ、あるいは、炭素分散水流れを、直列の第1の反応器を除く、いずれかの反応器内に注入することができる。直列の第1の超臨界水反応器には、炭素材料は存在しない。なぜならば、金属を含有するアスファルテンは、炭素材料上に捕捉される可能性があり、金属を含有するアスファルテンはこれ以上は反応しない。その結果、貴重な石油成分が回収されないことになるからである。というのも、貴重な石油成分は、金属を含有するアスファルテンがクラッキング反応を受けることにより回収されるからである。補給水流れは、直列の第1の超臨界水反応器より後に添加される。これは、アップグレーディング反応中に形成されるラジカルの増殖ができないほどに、第1の超臨界水反応器が希釈されないようにするためである。換言すれば、追加の水が必要とされるのは、直列の第2またはいずれかの後続の反応器であるが、プロセスに必要な水の全容積は、第1の超臨界水反応器の上流では添加できない。なぜならば、そうすると第1の超臨界水反応器が、過度に希釈されて、アップグレーディング反応中に形成されるラジカルが、必要とされる増殖をしないと考えられるためである。少なくとも1つの実施形態において、直列の3基以上の超臨界水反応器の場合、補給水は、第2または後続の超臨界水反応器のそれぞれの上流、例えば、第1の超臨界水反応器と第2の超臨界水反応器との間、そして第2の超臨界水反応器と第3の超臨界水反応器との間で添加される。
【0089】
(第2の超臨界水反応器に続く)直列のいずれかの後続の超臨界水反応器内における滞留時間は、約10秒より長い、あるいは約10秒と約5分との間、あるいは約10秒と10分との間、あるいは約1分と約6時間との間、あるいは約10分と2時間との間である滞留時間を有することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、転換反応の触媒作用をさせるために、触媒を第1の超臨界水反応器40に添加することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、第1の超臨界水反応器40内のクラッキングの触媒作用およびある分子から別の分子への水素移動を促進させるために、触媒を添加することができる。転換反応の触媒作用をすることが可能ないずれかの触媒を使用することができる。触媒の例は、遷移金属酸化物のような金属酸化物系触媒、および貴金属のような金属系触媒を含むことができる。触媒支持体は、アルミナ、シリカ、シリカ―アルミナ、およびゼオライトを含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、触媒には、アルミナは存在しない。なぜならば、ガンマアルミナは、超臨界水中で砕解する可能性があるからである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合流れ中に存在するバナジウムは、触媒として作用することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、第1の超臨界水反応器40には、触媒は存在しない。第1の超臨界水反応器40には、外部から供給された水素は存在しない。第1の超臨界水反応器40には、外部から供給された酸化剤は存在しない。本発明の少なくとも1つの実施形態において、超臨界水反応器の運転条件である温度、圧力、および滞留時間は、転換された金属をアスファルテン画分中に濃縮させつつ、固体コークスの生成を低減するまたは最小に抑えるように設計される。
【実施例】
【0090】
比較例 シミュレーションスキーム1:単一反応器のプロセスシミュレーション。1,000バレル毎日の流量の原油の石油原料を150℃の温度にまで加熱し、25MPaの圧力にまで加圧して、加熱された加圧石油流れを生成した。水流れを450℃の温度、および25MPaの圧力にまで加熱して、流れを超臨界水流れにした。加熱された加圧石油流れと超臨界水流れとを混合ゾーンにおいて混合した。供給状態における水に対する石油原料の流量の体積比は、1:2であった。供給物流れの運転条件は、表1にある。加熱された加圧流れと超臨界水流れとを混合ゾーンにおいて混合して、混合流れを形成した。混合流れを超臨界水反応器に供給した。超臨界水反応器を、生成物流出物流れが450℃の温度および25MPaの圧力であるような状態を有するように設定した。生成物流出物は、冷却装置により50℃にまで冷却した。冷却流れを、圧力降下装置により、0.11MPaの圧力にまで減圧して、分離器ユニットに供給した。分離器ユニットは、冷却された減圧流れを気相生成物流れと、液状石油生成物と、水相生成物流れとに分離するようにシミュレーションした。液収率は、97.0wt%であった。液収率は、液状石油生成物の重量を石油原料の重量で除したものに等しい。ガス収率は、約3.0wt%であった。液状石油生成物と比較した石油原料の特性は、表2にある。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
シミュレーションスキーム2:直列の反応器2基を用いたプロセスシミュレーション。1,000バレル毎日の流量の原油の石油原料を150℃の温度にまで加熱し、25MPaの圧力にまで加圧して、加熱された加圧石油流れを生成した。水流れを450℃の温度、および25MPaの圧力にまで加熱して、流れを超臨界水流れにした。加熱された加圧石油流れと超臨界水流れとを混合ゾーンにおいて混合した。供給状態における水に対する石油原料の体積流量比は、1:1であった。供給物流れの運転条件は、表3にある。加熱された加圧流れと超臨界水流れとを混合ゾーンにおいて混合して、混合流れを形成した。混合流れを第1の超臨界水反応器に供給した。第1の超臨界水反応器から流出するアップグレーディング流れが450℃の温度および25MPaの圧力であるような状態を有するように、第1の超臨界水反応器を設定した。1000バレル/日の流量の第2の水流れを450℃の温度にまで加熱し、25MPaの圧力にまで加圧して補給水流れを生成した。補給水流れを、混合器内においてアップグレーディング流れと混合して、希釈流れを生成した。第2の超臨界水反応器に流入する希釈流れの圧力が24.5MPaであるように、混合器前後の圧力降下を0.5MPaに設定した。第2の超臨界水反応器から流出する生成物流出物流れが450℃の温度および25MPaの圧力であるような状態を有するように、第2の超臨界水反応器をシミュレーションにおいて設計した。生成物流出物は、冷却装置により50℃にまで冷却した。冷却流れを、圧力降下装置により、0.11MPaの圧力にまで減圧して、分離器ユニットに供給した。分離器ユニットは、冷却された減圧流れを気相生成物流れと、液状石油生成物と、水相生成物流れとに分離するようにシミュレーションした。液収率は、96.0wt%であった。液収率は、液状石油生成物の重量を石油原料の重量で除したものに等しい。ガス収率は、約4.0wt%であった。液状石油生成物と比較した石油原料の特性は、表4にある。液収率は、スキーム1よりも低い一方、硫黄含有量およびバナジウム含有量もまた低下している。
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
シミュレーションスキーム3:直列の反応器2基および炭素添加を用いたプロセスシミュレーション。1,000バレル毎日の流量の原油の石油原料を150℃の温度にまで加熱し、25MPaの圧力にまで加圧して、予熱石油原料を生成した。水流れを450℃の温度、および25MPaの圧力にまで加熱して、予熱水流れを生成し、予熱水流れを超臨界水流れにした。供給状態における水に対する石油原料の体積流量比は、1:1であった。供給物流れの運転条件は、表5にある。予熱石油原料と予熱水流れとを、混合ゾーンにおいて混合して、混合流れを生成した。混合流れを第1の超臨界水反応器に供給した。第1の超臨界水反応器から流出するアップグレーディング流れが450℃の温度および25MPaの圧力であるような状態を有するように、第1の超臨界水反応器を設定した。1000バレル/日の流量の第2の水流れを450℃の温度にまで加熱し、25MPaの圧力にまで加圧して補給水流れを生成した。0.024μmの粒径および110m/gの比表面積を有するカーボンブラックの形態にある炭素を、1リットルの補給水当たり250グラムの炭素の割合で、補給水流れ内に分散させて、炭素分散水流れを生成した。スキーム3のシミュレーションにおいて、補給水に添加した炭素は、石油原料の0.2wt%になるようにシミュレーションした。炭素含有水流れを、アップグレーディング流れと混合器内において混合して、希釈炭素分散流れを生成した。第2の超臨界水反応器に流入する希釈流れの圧力が24.5MPaであるように、混合器前後の圧力降下を0.5MPaに設定した。第2の超臨界水反応器から流出する生成物流出物流れが450℃の温度および25MPaの圧力であるような状態を有するように、第2の超臨界水反応器をシミュレーションにおいて設計した。生成物流出物は、冷却装置により250℃にまで冷却した。冷却流れを濾過要素に供給して、炭素を分離し、濾過流れを生成した。濾過流れを、50℃の温度にまで冷却して、次いで、圧力降下装置により、0.11MPaの圧力にまで減圧して分離器ユニットに供給した。分離器ユニットは、冷却された減圧流れを気相生成物流れと、液状石油生成物と、水相生成物流れとに分離するようにシミュレーションした。濾過要素内において除去されなかった炭素は、水相生成物中に残留する。液収率は、96.5wt%であった。液収率は、液状石油生成物の重量を石油原料の重量で除したものに等しい。ガス収率は、約3.0wt%であった。炭化水素の約0.5%が、炭素とともに濾過要素から除去された。水相生成物に対する炭化水素の損失は、ごく微量であった。液状石油生成物と比較した石油原料の特性は、表6にある。液収率は、スキーム2よりも向上している一方、スキーム1よりは低下している。硫黄含有量およびバナジウム含有量もまた低下している。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
この結果は、スキーム2およびスキーム3により代表される本発明が、従来の水素化脱金属プロセスまたはSDAプロセス(SDAプロセスは75%の液収率である)に比べて高い液収率を維持しながら、バナジウム濃度が1重量ppmより低いバナジウム除去を達成できることを示している。さらに、水素化脱金属プロセスは、高額の装置を必要とし、水素および触媒要件による多額の運転経費を伴う。したがって、スキーム2およびスキーム3は、本発明のプロセスが、より低額の経済的負担において金属除去を達成する方法を提供できることを例証している。言及するまでもないことではあるが、硫黄濃度およびアスファルテン濃度も低下している。
【0101】
この結果は、本発明のプロセスが、触媒不在の独自の反応器ユニットを用いて、96.0%以上の液収率を達成でき、1.0wt ppm以下のバナジウム、1.5wt%より低い硫黄を有する生成物をもたらすことを示している。
【0102】
本発明を詳細にわたり記載してきたが、本発明の原理および範囲から逸脱することなく、本明細書の記載内容に対する様々な変更、置換え、および改変を加えることができることを了解されたい。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの適切な法的均等物により決定されるべきである。
【0103】
別段の指示がない場合、本明細書において記載されている様々な要素は、別のすべての要素と組み合わせて使用することができる。
【0104】
文脈上明確に別段の指示をする場合を除き、単数形の「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(この)」は、複数の指示対象を含む。
【0105】
任意選択または任意選択的は、次に記載される事象または状況が生起しても、生起しなくてもよいことを意味する。この記述は、事象または状況が生起する事例と、生起しない事例とを含む。
【0106】
本明細書において、範囲は、ある特定のおよその値から、および/または、別の特定のおよその値までと表記される場合がある。上述の範囲表記がなされる場合、別の実施形態は、上記範囲内のすべての組合せに加えて、ある特定の値から、および/または、別の特定の値までと了解されたい。
【0107】
本出願の全体を通して、特許または刊行物が参照される場合、本明細書中の記述に相反する場合を除き、本発明が関する先行技術をより完全に記載するために、これら参考文献の開示は、その全体が参照により、本出願に組み込まれることが意図される。
【0108】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、語句「備える(comprise)」、「有する(has)」、および「含む(include)」、ならびにそれらの文法的変化形のすべては、それぞれ、追加の要素またはステップを排除することのない、開放式で、非限定的な意味を有するように意図される。
【0109】
本明細書において使用される場合、「第1の」および「第2の」のような言葉遣いは、恣意的に割り当てられており、装置の2つ以上の構成要素を単に区別することだけを意図している。語句「第1の」および「第2の」は、別の目的を有することはなく、そして構成要素の名称また描写の一部となることはなく、さらに、必ずしも、構成要素の相対的な位置または場所を画定するとは限らないことを了解されたい。さらに、「第1の」と「第2の」との用語を単に使用することがすなわち、いずれかの「第3の」構成要素の存在を要求するものではないが、本発明の範囲内においてその可能性が企図されていることを了解されたい。
図1
図2
図3
図4