特許第6840257号(P6840257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6840257画像表示装置封止材および画像表示装置封止シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840257
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】画像表示装置封止材および画像表示装置封止シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20210301BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20210301BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20210301BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20210301BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20210301BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20210301BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210301BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   C08L63/00 A
   C08L71/00
   C08L25/06
   C08L45/00
   C08L65/00
   G09F9/30 309
   H05B33/14 A
   H05B33/04
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-545033(P2019-545033)
(86)(22)【出願日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2018034820
(87)【国際公開番号】WO2019065455
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2019年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2017-191238(P2017-191238)
(32)【優先日】2017年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】富田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高木 正利
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐五
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/038619(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08L 25/06
C08L 45/00
C08L 65/00
C08L 71/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と、硬化剤と、を含有し、
前記樹脂成分は、
重量平均分子量が10,000以上100,000以下であるビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂と、
重量平均分子量が180以上790以下である脂環骨格含有エポキシ樹脂と、
重量平均分子量が750以上4000以下であるスチレン系オリゴマーと、
重量平均分子量が500以上10,000未満であり、溶解度パラメータが8.9(cal/cm1/2以上である非スチレン系オリゴマーと、を含有し、
前記樹脂成分において、前記ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂の含有割合は、5質量%以上50質量%以下であり、
前記樹脂成分において、前記脂環骨格含有エポキシ樹脂の含有割合は、10質量%以上50質量%以下であり、
前記樹脂成分において、前記スチレン系オリゴマーの含有割合は、1質量%以上40質量%以下であり、
前記樹脂成分において、前記非スチレン系オリゴマーの含有割合は、1質量%以上30質量%以下であり、
前記硬化剤の含有割合は、前記樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることを特徴とする、画像表示装置封止材。
【請求項2】
前記非スチレン系オリゴマーは、溶解度パラメータが8.9(cal/cm1/2以上である脂肪族炭化水素樹脂および/またはテルペンフェノール樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の画像表示装置封止材。
【請求項3】
前記樹脂成分において、前記非スチレン系オリゴマーの含有割合は、10質量%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像表示装置封止材。
【請求項4】
前記スチレン系オリゴマーに対する、前記非スチレン系オリゴマーの含有割合は、0.60以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像表示装置封止材。
【請求項5】
前記樹脂成分において、前記スチレン系オリゴマーの含有割合は、10質量%を超過することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像表示装置封止材。
【請求項6】
前記樹脂成分において、前記脂環骨格含有エポキシ樹脂の含有割合は、40質量%未満であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像表示装置封止材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像表示装置封止材からなることを特徴とする、画像表示装置封止シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置封止材および画像表示装置封止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子を備える画像表示装置として、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイなどが知られている。そのような画像表示装置では、光学素子が大気中の水分などにより劣化することを抑制するために、光学素子がシール部材により封止されている。
【0003】
シール部材は、例えば、光学素子を封止用組成物に埋め込んだ後、封止用組成物を硬化させることにより形成される。そこで、シール部材に、各種用途に応じた要求性能を付与すべく、封止用組成物の組成が種々検討されている。
【0004】
例えば、重量平均分子量が3×10〜1×10であるビスフェノール型エポキシ樹脂と、重量平均分子量が200〜800であるフェノール型エポキシ樹脂と、硬化促進剤と、シランカップリング剤とを含有する封止用組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/119706号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の封止用組成物から形成されるシール部材は、例えば、有機ELディスプレイのタッチパネルなどに用いられると、誘電率が高いために、シール部材に起因するノイズにより、タッチパネルに誤作動が生じる場合がある。また、そのような用途では、シール部材に透明性が必要である。
【0007】
本発明は、誘電率が比較的低く、透明性が確保されるシール部材を形成できる画像表示装置封止材および画像表示装置封止シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、樹脂成分と、硬化剤と、を含有し、前記樹脂成分は、重量平均分子量が10,000以上100,000以下であるビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂と、重量平均分子量が180以上790以下である脂環骨格含有エポキシ樹脂と、重量平均分子量が750以上4000以下であるスチレン系オリゴマーと、重量平均分子量が500以上10,000未満であり、溶解度パラメータが8.9(cal/cm1/2以上である非スチレン系オリゴマーと、を含有する、画像表示装置封止材を含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、前記非スチレン系オリゴマーは、溶解度パラメータが8.9(cal/cm1/2以上である脂肪族炭化水素樹脂および/またはテルペンフェノール樹脂である、上記[1]に記載の画像表示装置封止材を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記樹脂成分において、前記非スチレン系オリゴマーの含有割合は、10質量%以上である、上記[1]または[2]に記載の画像表示装置封止材を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、前記スチレン系オリゴマーに対する、前記非スチレン系オリゴマーの含有割合は、0.60以上である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の画像表示装置封止材を含んでいる。
【0012】
本発明[5]は、前記樹脂成分において、前記スチレン系オリゴマーの含有割合は、10質量%を超過する、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の画像表示装置封止材を含んでいる。
【0013】
本発明[6]は、前記樹脂成分において、前記脂環骨格含有エポキシ樹脂の含有割合は、40質量%未満である、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の画像表示装置封止材を含んでいる。
【0014】
本発明[7]は、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の画像表示装置封止材からなる封止層を有する、画像表示装置封止シートを含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像表示装置封止材および画像表示装置封止シートによれば、非スチレン系オリゴマーの溶解度パラメータが上記下限以上であるので、ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂と、脂環骨格含有エポキシ樹脂と、スチレン系オリゴマーと、非スチレン系オリゴマーとを相溶させることができる。そのため、樹脂成分にスチレン系オリゴマーおよび非スチレン系オリゴマーを含有させることができ、誘電率が比較的低く、透明性が確保できるシール部材を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の画像表示装置封止シートの一実施形態としての封止シートの側断面図である。
図2図2は、図1に示す封止層から形成されるシール部材を備える画像表示装置の一実施形態(インセル構造またはオンセル構造を有する態様)としてのタッチセンサ付き有機ELディスプレイの側断面図である。
図3図3Aは、図2に示すタッチセンサ付き有機ELディスプレイの製造方法の一実施形態(ベースフィルム上の封止層を基板に貼り付ける態様)を説明するための説明図であって、素子搭載ユニットを準備する工程を示す。図3Bは、図3Aに続いて、有機EL素子が封止層に埋め込まれるように、封止層を基板に貼り付ける工程を示す。図3Cは、図3Bに続いて、離型フィルムを封止層から剥離し、封止層にカバーガラスを貼り付ける工程を示す。
図4図4は、タッチセンサ付き有機ELディスプレイの製造方法の他の実施形態(カバーガラスまたはバリアフィルム上の封止層を基板に貼り付ける態様)を説明するための説明図である。
図5図5は、画像表示装置の他の実施形態(アウトセル構造を有する態様)としてのタッチセンサ付き有機ELディスプレイの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<画像表示装置封止材>
本発明の画像表示装置封止材(以下、封止材とする。)は、後述する画像表示装置が備える光学素子を封止するための封止樹脂組成物(画像表示装置用封止樹脂組成物)であって、硬化することにより後述するシール部材を形成する硬化性樹脂組成物である。封止材は、樹脂成分と、硬化剤と、を含有する。
【0018】
(1)樹脂成分
樹脂成分は、必須成分として、重量平均分子量(M)が10,000以上100,000以下であるビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂と、重量平均分子量(M)が180以上790以下である脂環骨格含有エポキシ樹脂と、重量平均分子量(M)が750以上4000以下であるスチレン系オリゴマーと、重量平均分子量(M)が500以上10,000未満であり、溶解度パラメータが8.9(cal/cm1/2以上である非スチレン系オリゴマーとを含有する。
【0019】
(1−1)ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂
ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂は、ビスフェノール骨格およびエポキシ基を有する高分子量(M:10,000以上100,000以下)のエポキシ樹脂である。ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂は、常温固形である。なお、「常温固形」とは、常温(23℃)において、流動性を有さない固体状態であることを示し、「常温液状」とは、常温(23℃)において、流動性を有する液体状態であることを示す(以下同様)。
【0020】
樹脂成分がビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂を含むため、封止材のシート成形性の向上を図ることができ、かつ、シール部材(後述)の透湿性の低減を図ることができる。
【0021】
ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂の重量平均分子量(M)は、10,000以上、好ましくは、20,000以上、30,000以上、100,000以下、好ましくは、90,000以下である。重量平均分子量(M)は、ポリスチレンを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる(以下同様)。
【0022】
ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂におけるエポキシ当量は、例えば、2,000g/eq.以上、好ましくは、4,000g/eq.以上、より好ましくは、7,000g/eq.以上、例えば、20,000g/eq.以下、好ましくは、16,000g/eq.以下である。エポキシ当量は、JIS K7236:2001に準拠して測定できる(以下同様)。
【0023】
ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂は、非スチレン系オリゴマーと相溶可能である。ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂の溶解度パラメータ(以下、SP値とする。)は、例えば、11.5(cal/cm1/2以上13.0(cal/cm1/2以下である。SP値は、Million Zillion Software社の計算ソフトCHEOPS(version4.0)にて算出できる(以下同様)。なお、該計算ソフトで用いられる計算手法は、Computational Materials Science of Polymers(A.A.Askadskii、 Cambridge Intl Science Pub (2005/12/30))Chapter XIIに記載されている。
【0024】
このようなビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂は、例えば、複数のビスフェノール骨格と、複数のエポキシ基とを有し(多官能(2官能含む)型エポキシ樹脂)、好ましくは、複数のビスフェノール骨格を含む分子鎖と、分子鎖の両末端に結合するエポキシ基とを有する(2官能型エポキシ樹脂)。なお、ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂は、ビフェニル骨格を含有しない。
【0025】
ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂として、例えば、下記式(1)で示される構成単位I〜IIIを含むビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂などが挙げられる。構成単位I〜IIIを含むビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂は、複数のビスフェノール骨格を含む分子鎖と、分子鎖の両末端に結合するグリシジルエーテルユニットとを有する。
式(1)
【0026】
【化1】
【0027】
[式(1)中において、I、IIおよびIIIは、構成単位であり、IおよびIIIのそれぞれが末端単位、IIが繰り返し単位を示す。Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を示す。]
上記式(1)に示される構成単位I〜IIIを含むビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂は、好ましくは、単独使用される。
【0028】
上記式(1)のRとして示されるアルキル基として、例えば、炭素数1〜6の直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル)、炭素数3〜6の分岐アルキル基(例えば、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルなど)などが挙げられる。上記式(1)のRのなかでは、好ましくは、水素原子が挙げられる。上記式(1)の複数のRは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよいが、好ましくは、同一である。
【0029】
上記式(1)のRとして示される炭化水素基として、例えば、上記Rと同様の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基(例えば、フェニル、トリル、キシリルなど)などが挙げられる。上記式(1)のRのなかでは、好ましくは、水素原子およびメチル基が挙げられる。上記式(1)の複数のRは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0030】
また、上記式(1)に示される構成単位I〜IIIを含むビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂は、複数の構成単位IIを含む。上記式(1)に示される構成単位IIの2つのRの組み合わせは、すべての構成単位IIにおいて同一であってもよく、複数の構成単位IIは、2つのRの組み合わせが互いに異なる構成単位IIを含んでいてもよい。上記式(1)に示されるビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂は、好ましくは、2つのRがメチル基である構成単位II(ビスフェノールA骨格)と、2つのRが水素原子である構成単位II(ビスフェノールF骨格)とを併有する。
【0031】
上記式(1)に示される構成単位I〜IIIを含むビスフェノール骨格フェノキシ樹脂は、例えば、ビスフェノール化合物(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−フェニルプロピリデン)ビスフェノールなど)と、エピクロロヒドリンとの共重合体(反応物)である。
ビスフェノール化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。ビスフェノール化合物のなかでは、好ましくは、ビスフェノールAおよびビスフェノールFが挙げられ、より好ましくは、ビスフェノールAおよびビスフェノールFの併用が挙げられる。
【0032】
また、上記式(1)に示される構成単位I〜IIIを含むビスフェノール骨格フェノキシ樹脂は、構成単位I〜IIIに加えて、他の構成単位を含むこともできる。他の構成単位として、例えば、2価以上のポリオール(例えば、グリコール、ベンゼンジオールなど)に由来するポリオールユニットなどが挙げられる。
【0033】
上記式(1)に示される構成単位I〜IIIを含むビスフェノール骨格フェノキシ樹脂は、市販品を用いることもできる。上記式(1)に示される構成単位I〜IIIを含むビスフェノール骨格フェノキシ樹脂の市販品として、例えば、JER−4275(三菱ケミカル社製、重量平均分子量:約60,000、エポキシ当量:8,400〜9,200g/eq.)、JER−1256(三菱ケミカル社製、重量平均分子量:約90,000、エポキシ当量:7,500〜8,500g/eq.)などが挙げられる。
【0034】
樹脂成分において、ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂の含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0035】
ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂の含有割合が上記範囲内であれば、他の樹脂成分の含有割合を確保することができ、封止材に要求される種々の特性をバランスよく確保できる。
【0036】
(1−2)脂環骨格含有エポキシ樹脂
脂環骨格含有エポキシ樹脂は、エポキシ基と、脂肪族環(脂環骨格)とを少なくとも有する低分子量(M:180以上790以下)のエポキシ樹脂である。脂環骨格含有エポキシ樹脂は、常温液体である。脂環骨格含有エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格およびビフェニル骨格を有さない。
【0037】
樹脂成分が脂環骨格含有エポキシ樹脂を含むため、樹脂成分が芳香環骨格含有エポキシ樹脂を含む場合と比較して、シール部材(後述)のヘイズ値を低減でき、シール部材(後述)の透明性の向上を図ることができ、かつ、シール部材(後述)の透湿性の低減を図ることができる。
【0038】
脂環骨格含有エポキシ樹脂の重量平均分子量は、180以上、790以下、好ましくは、500以下である。脂環骨格含有エポキシ樹脂におけるエポキシ当量は、例えば、90g/eq.以上、好ましくは、100g/eq.以上、例えば、190g/eq.以下、好ましくは、200g/eq.以下である。
【0039】
脂環骨格含有エポキシ樹脂は、非スチレン系オリゴマーと相溶可能であり、非スチレン系オリゴマーと同程度のSP値(例えば、9.0(cal/cm1/2以上11.5(cal/cm1/2以下)を有する。
【0040】
脂環骨格含有エポキシ樹脂は、例えば、複数の脂肪族環と、複数のエポキシ基とを有する(多官能(2官能含む)型エポキシ樹脂)。
【0041】
脂環骨格含有エポキシ樹脂として、例えば、脂肪族環を形成している隣接する2つの炭素原子と、それら2つの炭素原子に結合する1つの酸素原子とから構成されるエポキシ基を有するエポキシ基含有脂環骨格エポキシ樹脂(2官能型エポキシ樹脂)、脂肪族環に結合する複数のグリシジルエーテルユニットを有するグリシジルエーテル含有脂環骨格エポキシ樹脂(多官能型エポキシ樹脂)などが挙げられる。脂環骨格含有エポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0042】
エポキシ基含有脂環式エポキシ樹脂として、例えば、シクロアルケンオキサイド構造を有する脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
【0043】
シクロアルケンオキサイド構造を有する脂環式エポキシ化合物として、例えば、下記式(2)に示されるエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ化合物(以下、ECH構造含有エポキシ化合物とする。)や、その変性物などが挙げられる。
式(2)
【0044】
【化2】
【0045】
[式(2)中において、Xは、単結合または連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。シクロヘキサン環を構成する炭素原子には、アルキル基などの置換基が結合していてもよい。]
上記式(2)に示されるECH構造含有エポキシ化合物は、エポキシシクロヘキサン構造(エポキシシクロヘキシル基)を分子の両末端に有し、2つのエポキシシクロヘキシル基が、単結合により直接結合するか、連結基を介して結合する。なお、エポキシシクロヘキシル基は、シクロヘキサン環と、シクロヘキサン環を形成している隣接する2つの炭素原子と、それら2つの炭素原子に結合する1つの酸素原子とにより構成されるエポキシ基とを含む官能基である。
【0046】
上記式(2)においてXが単結合である場合、一方の末端に位置するエポキシシクロヘキシル基のシクロヘキサン環を形成する炭素原子と、他方の末端に位置するエポキシシクロヘキシル基のシクロヘキサン環を形成する炭素原子とが、直接結合している。
【0047】
上記式(2)においてXで示される連結基として、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、カーボネート基、アミド基、および、これらが連結した基が挙げられる。
【0048】
2価の炭化水素基として、例えば、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基(例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基など)、シクロアルキレン基(例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基など)、シクロアルキリデン基(例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基など)などが挙げられる。
【0049】
上記式(2)においてXで示される連結基のなかでは、シール部材(後述)の接着性の観点から好ましくは、酸素原子を含む連結基が挙げられ、さらに好ましくは、カルボニル基、エーテル基、エステル基、カーボネート基が挙げられ、とりわけ好ましくは、エステル基が挙げられる。
【0050】
シクロヘキサン環を構成する炭素原子に結合可能なアルキル基として、例えば、上記式(1)のRと同様のアルキル基が挙げられる。また、シクロヘキサン環を構成する炭素原子には、好ましくは、置換基が結合せず(無置換)、水素原子が結合している。
【0051】
上記式(2)に示されるECH構造含有エポキシ化合物として、例えば、(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、1,2−エポキシ−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどが挙げられる。
【0052】
上記式(2)に示されるECH構造含有エポキシ化合物は、市販品を用いることもできる。上記式(2)に示されるECH構造含有エポキシ化合物の市販品として、例えば、セロキサイド8000、セロキサイド2021P(エポキシ当量128〜145g/eq.)、セロキサイド2081(いずれもダイセル社製)などが挙げられる。
【0053】
グリシジルエーテル含有脂環骨格エポキシ樹脂として、例えば、下記式(3)に示されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(以下、DCPD型エポキシ樹脂とする。)が挙げられる。
式(3)
【0054】
【化3】
【0055】
[式(3)中において、ジシクロペンタジエンに由来する脂肪族環を構成する炭素原子には、アルキル基などの置換基が結合していてもよい。]
上記式(3)に示されるDCPD型エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエンに由来する脂肪族環と、その脂肪族環に結合する2つのグリシジルエーテルユニットとを有する。
【0056】
ジシクロペンタジエンに由来する脂肪族環を構成する炭素原子に結合可能なアルキル基として、例えば、上記式(1)のRと同様のアルキル基が挙げられる。また、ジシクロペンタジエンに由来する脂肪族環を構成する炭素原子には、好ましくは、置換基が結合せず(無置換)、水素原子が結合している。
【0057】
上記式(3)に示されるDCPD型エポキシ樹脂は、市販品を用いることもできる。上記式(3)に示されるDCPD型エポキシ樹脂の市販品として、例えば、EP−4088S(ADEKA社製、エポキシ当量170g/eq.)などが挙げられる。
【0058】
このような脂環骨格含有エポキシ樹脂は、単独使用または2種類以上併用できるが、好ましくは、単独使用される。つまり、脂環骨格含有エポキシ樹脂は、好ましくは、上記式(2)に示されるECH構造含有エポキシ化合物および上記式(3)に示されるDCPD型エポキシ樹脂のいずれか一方が単独使用される。
【0059】
脂環骨格含有エポキシ樹脂が上記式(2)に示されるECH構造含有エポキシ化合物の単独使用である場合、脂環骨格含有エポキシ樹脂が上記式(3)に示されるDCPD型エポキシ樹脂の単独使用である場合と比較して、封止材の硬化速度の向上を図ることができる。
【0060】
樹脂成分において、脂環骨格含有エポキシ樹脂の含有割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%未満、より好ましくは、35質量%以下である。
【0061】
脂環骨格含有エポキシ樹脂の含有割合が上記範囲内であると、シール部材(後述)のヘイズ値の低減を確実に図ることができる。脂環骨格含有エポキシ樹脂の含有割合が上記上限以下であれば、他の樹脂成分の含有割合を確保することができ、封止材に要求される種々の特性をよりバランスよく確保できる。
【0062】
(1−3)スチレン系オリゴマー
スチレン系オリゴマーは、複数のスチレン骨格が有するビニル基が互いに結合する重合体であって、複数のスチレン骨格に由来する複数のスチレンユニットを有している。スチレン系オリゴマーは、常温固体である。スチレン系オリゴマーは、重量平均分子量(M)が10,000を超える高分子量のスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBSゴム)を含まない。
【0063】
スチレン系オリゴマーの重量平均分子量(M)は、750以上、好ましくは、900以上、4000以下、好ましくは、3800以下である。スチレン系オリゴマーの数平均分子量(M)は、例えば、500以上、好ましくは、600以上、さらに好ましくは、700以上、例えば、2500以下、好ましくは、2000以下、さらに好ましくは、1500以下である。
【0064】
また、重量平均分子量/数平均分子量(M/M)は、例えば、1.1以上、好ましくは、1.2以上、さらに好ましくは、1.3以上、例えば、2.5以下、好ましくは、2.0以下、さらに好ましくは、1.9以下である。
【0065】
スチレン系オリゴマーは、非スチレン系オリゴマーと相溶可能であり、非スチレン系オリゴマーと同程度のSP値(例えば、8.5(cal/cm1/2以上9.1(cal/cm1/2以下)を有する。
【0066】
スチレン系オリゴマーとして、例えば、スチレン骨格含有モノマーの単独重合体、スチレン骨格含有モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体などが挙げられる。スチレン系オリゴマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0067】
スチレン骨格含有モノマーとして、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロぺニルトルエンなどが挙げられ、好ましくは、イソプロぺニルトルエンが挙げられる。スチレン骨格含有モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0068】
他の重合性モノマーは、スチレン骨格含有モノマーと共重合可能なモノマーであって、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する。他の重合性モノマーとして、例えば、炭素数2〜10の不飽和脂肪族系モノマー(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ブタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、メチルブテンなど)、炭素数5〜20の不飽和脂環族系モノマー(例えば、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなど)、α、β−不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸など)、(メタ)アクリレート、石油の精製や分解などによって得られるC留分などが挙げられる。C5留分は、常圧下における沸点範囲が通常−15℃〜+45℃の留分であって、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−ペンテン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエンなどを含んでいる。他の重合性モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0069】
スチレン骨格含有モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体において、スチレン骨格含有モノマーに由来する構成単位の含有割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、80質量%以上、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
【0070】
また、スチレン系オリゴマーのなかでは、好ましくは、スチレン骨格含有モノマーの単独重合体が挙げられる。つまり、スチレン系オリゴマーは、好ましくは、スチレン骨格含有モノマーの単独重合体を含み、さらに好ましくは、スチレン骨格含有モノマーの単独重合体が単独使用される。
【0071】
スチレン系オリゴマーが、スチレン骨格含有モノマーの単独重合体を含む場合(とりわけ、スチレン骨格含有モノマーの単独重合体が単独使用される場合)、シール部材(後述)の透湿性の低減を確実に図ることができる。
【0072】
樹脂成分において、スチレン系オリゴマーの含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、10質量%を超過し、とりわけ好ましくは、15質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0073】
スチレン系オリゴマーの含有割合が上記下限以上であると、シール部材(後述)のヘイズ値の低減を確実に図ることができる。スチレン系オリゴマーの含有割合が上記上限以下であると、他の樹脂成分の含有割合を確保することができ、封止材に要求される種々の特性をよりバランスよく確保できる。
【0074】
(1−4)非スチレン系オリゴマー
非スチレン系オリゴマーは、重量平均分子量が500以上10,000未満であり、SP値が8.9(cal/cm1/2以上である。非スチレン系オリゴマーは、スチレン骨格を有さない。非スチレン系オリゴマーは、環骨格(脂肪族環および/または芳香族環)を含有しており、エポキシ基を含有しない。非スチレン系オリゴマーは、常温固体である。
【0075】
樹脂成分がスチレン系オリゴマーおよび非スチレン系オリゴマーを含むため、シール部材(後述)の誘電率を低減できながら、シール部材(後述)のヘイズ値を低減できる。
【0076】
非スチレン系オリゴマーのSP値は、8.9(cal/cm1/2以上、例えば、11.5(cal/cm1/2以下、好ましくは、11.5(cal/cm1/2未満、さらに好ましくは、10.0(cal/cm1/2以下である。
【0077】
非スチレン系オリゴマーのSP値が上記下限以上であれば、他の樹脂成分との相溶性の向上を図ることができ、封止材のシート成形性の向上を図ることができる。
【0078】
非スチレン系オリゴマーの重量平均分子量(M)は、500以上、10,000未満、好ましくは、4000以下である。
【0079】
非スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が上記の範囲内であれば、他の樹脂成分との相溶性の向上を図ることができる。
【0080】
また、非スチレン系オリゴマーの軟化点は、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、120℃以上、例えば、150℃以下である。なお、軟化点は、JIS K2207に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
【0081】
非スチレン系オリゴマーの軟化点が上記下限以上であれば、シール部材(後述)の透湿性を確実に低減できる。
【0082】
非スチレン系オリゴマーとして、例えば、SP値が8.9(cal/cm1/2以上である脂肪族炭化水素樹脂(以下、脂肪族炭化水素樹脂(A)とする。)、SP値が8.9(cal/cm1/2以上であるテルペンフェノール樹脂(以下、テルペンフェノール樹脂(B)とする。)などが挙げられる。非スチレン系オリゴマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0083】
脂肪族炭化水素樹脂(A)は、SP値が上記の非スチレン系オリゴマーのSP値の範囲内である脂肪族炭化水素樹脂であって、好ましくは、SP値が9.0(cal/cm1/2以上である脂肪族炭化水素樹脂である。脂肪族炭化水素樹脂(A)は、常温でフレーク状の固体である。
【0084】
脂肪族炭化水素樹脂(A)として、例えば、ナフサ分解によって得られるC5留分から抽出されるジシクロペンタジエンを主原料とする石油系炭化水素樹脂(好ましくは、ジシクロペンタジエンの単独重合体)に、エステル基が導入されたエステル変性炭化水素樹脂などが挙げられる。エステル変性炭化水素樹脂は、好ましくは、単独使用される。エステル変性炭化水素樹脂は、ジシクロペンタジエンに由来する脂肪族環と、エステル基を含む原子団とを有している。エステル基を含む原子団として、例えば、酢酸ビニルに由来する酢酸ビニルユニットなどが挙げられる。
【0085】
エステル変性炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲は、上記の非スチレン系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)の範囲と同じであり、好ましくは、500以上4000以下である。エステル変性炭化水素樹脂の軟化点の範囲は、例えば、上記の非スチレン系オリゴマーの軟化点の範囲同じであり、好ましくは、80℃以上120℃未満である。
【0086】
エステル変性炭化水素樹脂のケン価は、例えば、100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である。なお、ケン価は、JIS K0070に記載の方法に準拠して測定できる。
【0087】
このようなエステル変性炭化水素樹脂は、市販品を用いることもできる。エステル変性炭化水素樹脂の市販品として、例えば、Quintone1500、Quintone1525L(いずれも日本ゼオン社製)などが挙げられる。
【0088】
テルペンフェノール樹脂(B)は、SP値が上記の非スチレン系オリゴマーのSP値の範囲内であるテルペンフェノール樹脂であって、好ましくは、SP値が9.3(cal/cm1/2以上であるテルペンフェノール樹脂である。テルペンフェノール樹脂(B)は、常温固体である。テルペンフェノール樹脂(B)は、好ましくは、単独使用される。テルペンフェノール樹脂(B)は、テルペン化合物と、フェノール化合物との共重合体(反応物)である。テルペンフェノール樹脂(B)は、テルペン化合物とフェノール化合物とを、酸性触媒(例えば、塩酸、硫酸、陽イオン交換樹脂など)の存在下において、20℃〜150℃で1〜20時間反応させることにより調製される。
【0089】
テルペン化合物は、イソプレン(C)を構成単位とする炭化水素を主骨格として有する化合物である。テルペン化合物として、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、ミルセン、アロオシメン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−ターピネオール、β−ターピネオール、γ−ターピネオール、4−ターピネオール、サビネン、カンフェン、トリシクレン、パラメンテン−1、パラメンテン−2、パラメンテン−3、パラメンテン−8、パラメンタジエン類、Δ2−カレン、Δ3−カレン、カリオフィレン、ロンギフォーレンなどが挙げられる。テルペン化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0090】
フェノール化合物として、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどが挙げられる。フェノール化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。フェノール化合物のなかでは、好ましくは、フェノールが挙げられる。
【0091】
テルペンフェノール樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)の範囲は、上記の非スチレン系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)の範囲と同じである。テルペンフェノール樹脂(B)の軟化点の範囲は、例えば、上記の非スチレン系オリゴマーの軟化点の範囲同じであり、好ましくは、120℃以上150℃以下である。
【0092】
このようなテルペンフェノール樹脂(B)は、市販品を用いることもできる。テルペンフェノール樹脂(B)の市販品として、例えば、YSポリスターK−125(ヤスハラケミカル社製)などが挙げられる。
【0093】
樹脂成分において、非スチレン系オリゴマーの含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0094】
スチレン系オリゴマーに対する、非スチレン系オリゴマーの含有割合は、例えば、0.10以上、好ましくは、0.30以上、より好ましくは、0.60以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.0以下である。
【0095】
非スチレン系オリゴマーの含有割合が上記下限以上であれば、シール部材(後述)のヘイズ値の低減を確実に図ることができる。非スチレン系オリゴマーの含有割合が上記上限以下であれば、他の樹脂成分の含有割合を確保することができ、封止材に要求される種々の特性をよりバランスよく確保できる。
【0096】
(1−5)任意の樹脂成分
また、樹脂成分は、任意成分として、重量平均分子量が800以上10,000未満であるビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂をさらに含有することができる。
【0097】
ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂は、複数のビスフェノール骨格と、複数のエポキシ基とを有し(多官能(2官能含む)型エポキシ樹脂)、常温固形である。ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂は、上記のビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂よりも低分子量であり、かつ、上記の脂環骨格含有エポキシ樹脂よりも高分子量である。
【0098】
具体的には、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、800以上、好ましくは、900以上、10,000未満、好ましくは、8,000以下である。
【0099】
ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂におけるエポキシ当量は、例えば、100g/eq.以上、好ましくは、150g/eq.以上、例えば、2,000g/eq.以下、好ましくは、1500g/eq.以下である。
【0100】
ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂は、非スチレン系オリゴマーと相溶可能であり、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂のSP値は、例えば、11.5(cal/cm1/2以上13.0(cal/cm1/2以下である。
【0101】
ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂は、例えば、上記のビスフェノール化合物とエピクロロヒドリンとの共重合体であって、複数のビスフェノール骨格を含む分子鎖と、分子鎖の両末端に結合するグリシジルエーテルユニットとを有する(2官能型エポキシ樹脂)。ビスフェノール化合物のなかでは、好ましくは、ビスフェノールFが挙げられる。
【0102】
ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂は、シール部材(後述)の成形性を目的とした樹脂成分における含有割合の調整として含有される。後述する実施例では、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂の含有割合は、他の樹脂成分の含有割合が変更された場合に、樹脂成分の総和が100質量部となる含有割合(つまり、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂の含有割合=100−他の樹脂成分の含有割合の総和)に調整されている。
【0103】
具体的には、樹脂成分において、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂の含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、15質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂の含有割合が、上記の範囲内であると、シール部材(後述)の成形性の向上を図ることができる。
【0104】
なお、樹脂成分は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記した特定の樹脂成分(ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂、脂環骨格含有エポキシ樹脂、スチレン系オリゴマー、非スチレン系オリゴマー、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂)以外の他の樹脂成分を含有することができる。
【0105】
他の樹脂成分として、例えば、他のエポキシ樹脂(例えば、重量平均分子量が800未満のビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂など)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリブタジエンなど)、ポリクロロプレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、シリコーン樹脂などが挙げられる。これら他の樹脂成分は、単独使用または2種以上併用することができる。樹脂成分において、他の樹脂成分の含有割合は、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0106】
(2)硬化剤
硬化剤は、樹脂成分を重合させて封止材を硬化させる。硬化剤は、封止材を硬化できれば特に制限されない。硬化剤として、例えば、アミン系硬化剤(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールなど)、イミダゾール系硬化剤(例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなど)、酸無水物系硬化剤(例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸など)、熱カチオン系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0107】
硬化剤のなかでは、好ましくは、熱カチオン系硬化剤が挙げられる。つまり、硬化剤は、好ましくは、熱カチオン系硬化剤を含み、好ましくは、熱カチオン系硬化剤が単独使用される。硬化剤が熱カチオン系硬化剤を含有すれば、封止材の硬化速度の向上を図ることができる。
【0108】
熱カチオン系硬化剤は、加熱により酸を発生する熱酸発生剤である。熱カチオン系硬化剤は、加熱によりカチオンを生成し、上述の(1−1)ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂および(1−2)脂環骨格含有エポキシ樹脂の重合を開始させることが可能な化合物であれば特に制限されないが、表示素子(例えば、有機EL素子など)などの耐熱温度である120℃以下で重合を開始させることが可能な化合物であることが好ましい。熱カチオン系硬化剤としては、公知のカチオン重合開始剤を用いることができる。熱カチオン重合開始剤として、例えば、AsF、SbF、PF、BF、B(C、CFSOなどを対アニオンとする、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。
【0109】
スルホニウム塩として、例えば、フッ化ホウ素系スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素など)、フッ化ヒ素系スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウム六フッ化ヒ素、トリ(4−メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素など)、フッ化アンチモン系スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモンなど)、フッ化リン系スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウム六フッ化ホスフェートなど)などが挙げられる。
【0110】
ホスホニウム塩として、例えば、フッ化アンチモン系ホスホニウム塩(例えば、エチルトリフェニルホスホニウム六フッ化アンチモン、テトラブチルホスホニウム六フッ化アンチモンなど)などが挙げられる。
【0111】
4級アンモニウム塩として、例えば、フッ化アンチモン系4級アンモニウム塩(例えば、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモンなど)、フッ化ホウ素系4級アンモニウム塩(例えば、N,N−ジエチル−N−ベンジルアニリニウム四フッ化ホウ素など)、有機酸系4級アンモニウム塩(例えば、N,N−ジエチル−N−ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸など)などが挙げられる。
【0112】
ヨードニウム塩として、例えば、フッ化アンチモン系ヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードニウム六フッ化アンチモンなど)、フッ化リン系ヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードニウム六フッ化ホスフェートなど)、フッ化ホウ素系ヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードニウム四フッ化ホウ素など)などが挙げられる。
【0113】
熱カチオン系硬化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0114】
熱カチオン系硬化剤のなかでは、好ましくは、4級アンモニウム塩が挙げられ、さらに好ましくは、フッ化アンチモン系4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0115】
このような熱カチオン系硬化剤は、市販品を用いることもできる。熱カチオン系硬化剤の市販品として、例えば、CXC−1612、CXC−1733、CXC1821(いずれもKing Industries社製)、サンエイドSI−60、サンエイドSI−80、サンエイドSI−B3、サンエイドSI−B3A、サンエイドSI−B4(いずれも三新化学工業社製)、TA−100(サンアプロ社製)などが挙げられる。
【0116】
硬化剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0117】
(3)他の添加剤
封止材は、必要に応じて、他の添加剤として、シランカップリング剤、レベリング剤などを含有することができる。
【0118】
封止材がシランカップリング剤を含有すれば、基板(後述)に対するシール部材(後述)の密着性の向上を図ることができる。
【0119】
シランカップリング剤として、例えば、エポキシ基含有シランカップリング剤(例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなど)、アミノ基含有シランカップリング剤(例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなど)、メタクリロイル基含有シランカップリング剤(例えば、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなど)などが挙げられる。シランカップリング剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0120】
シランカップリング剤のなかでは、好ましくは、エポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられ、さらに好ましくは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0121】
シランカップリング剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、例えば、30質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0122】
封止材がレベリング剤を含有すれば、封止材を塗工したときに、封止材の表面を平滑にすることができる。レベリング剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、例えば、5.0質量部以下、好ましくは、1.0質量部以下である。
【0123】
また、封止材は、さらに必要に応じて、他の添加剤として、充填剤、重合開始助剤、老化防止剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤などを、適宜の割合で含有してもよい。
【0124】
<画像表示装置封止シート>
上記した封止材は、そのまま単独で流通可能であり、産業上利用可能な製品であるが、取扱性の観点から好ましくは、画像表示装置封止シートとして流通する。
【0125】
図1を参照して、本発明の画像表示装置封止シートの一実施形態としての封止シート1について説明する。
【0126】
図1に示すように、封止シート1は、上記した封止材からなる封止層2と、ベースフィルム3と、離型フィルム4とを備える。なお、封止シート1は、画像表示装置を作製するための部品であり、表示素子および表示素子を搭載する基板を含まず、具体的には、封止層2と、ベースフィルム3と、離型フィルム4とからなり、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0127】
封止層2に異物が付着することなどを防ぐため、封止シート1の保管時には、ベースフィルム3と、離型フィルム4とで封止層2が保護されていることが好ましい。なお、封止シート1の使用時には、ベースフィルム3と、離型フィルム4とは剥離される。
【0128】
封止層2は、上記した封止材の乾燥物であって、フィルム形状(平板形状)を有する。具体的には、封止層2は、所定の厚みを有し、前記厚み方向と直交する所定方向に延び、平坦な表面および平坦な裏面を有している。
【0129】
封止層2では、上記したエポキシ成分(ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂、脂環骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂)は反応しておらず、封止層2は、それらエポキシ成分を未硬化の状態で含有する。
【0130】
封止層2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、例えば、100μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0131】
ベースフィルム3は、封止シート1がシール部材(後述)の形成に用いられるまでの間、封止層2を支持および保護するために、封止層2の裏面に剥離可能に貼着されている。
つまり、ベースフィルム3は、封止シート1の出荷・搬送・保管時において、封止層2の裏面を被覆するように、封止層2の裏面に積層され、封止シート1の使用直前において、封止層2の裏面から略U字状に湾曲するように引き剥がすことができる可撓性フィルムである。
【0132】
ベースフィルム3は、平板形状を有し、具体的には、所定の厚みを有し、前記厚み方向と直交する所定方向に延び、平坦な表面および平坦な裏面を有している。ベースフィルム3の貼着面(表面)は、必要により剥離処理されている。
【0133】
ベースフィルム3の材料として、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などの樹脂材料が挙げられ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0134】
ベースフィルム3のなかでは、好ましくは、水分バリア性あるいはガスバリア性を有するフィルムが挙げられ、さらに好ましくは、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが挙げられる。ベースフィルム3の厚みは、フィルムの材質にもより適宜選択されるが、表示素子などの被封止材への追従性を有する点などから、例えば、25μm〜150μm程度とすることができる。
【0135】
離型フィルム4は、封止シート1がシール部材(後述)の形成に用いられるまでの間、封止層2を保護するために、封止層2の表面に剥離可能に貼着されている。つまり、離型フィルム4は、封止シート1の出荷・搬送・保管時において、封止層2の表面を被覆するように、封止層2の表面に積層され、封止シート1の使用直前において、封止層2の表面から略U字状に湾曲するように引き剥がすことができる可撓性フィルムである。
【0136】
離型フィルム4は、平板形状を有し、具体的には、所定の厚みを有し、前記厚み方向と直交する所定方向に延び、平坦な表面および平坦な裏面を有している。また、離型フィルム4の貼着面(裏面)は、必要により剥離処理されている。離型フィルム4の材料として、例えば、ベースフィルム3と同様の樹脂材料が挙げられる。離型フィルム4の厚みは、フィルムの材質にもより適宜選択されるが、表示素子などの被封止材への追従性を有する点などから、例えば、25μm〜150μm程度とすることができる。
【0137】
<画像表示装置封止シートの製造方法>
次に、封止シート1の製造方法について説明する。
【0138】
封止シート1を製造するには、例えば、上記した封止材を準備して、封止材をベースフィルム3の表面に公知の方法により塗工する。
【0139】
封止材は、上記した樹脂成分、硬化剤および添加剤を、上記の割合で混合することにより準備される。また、封止シート1の製造において、封止材は、好ましくは、有機溶媒に希釈され、封止材のワニスが調製される。
【0140】
有機溶媒は、樹脂成分および硬化剤を均一に分散または溶解できれば特に制限されない。有機溶媒として、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル類(例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノールなど)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、含窒素化合物類(例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルホルムアルデヒドなど)などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0141】
有機溶媒のなかでは、好ましくは、ケトン類が挙げられ、さらに好ましくは、メチルエチルケトンが挙げられる。有機溶媒がケトン類を含む場合、樹脂成分(特に、ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂)を均一に溶解することができる。
【0142】
有機溶媒の添加割合は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
【0143】
各成分は、例えば、ボールミルで分散したり、フラスコに装入して攪拌したり、三本ロールで混練することで、混合することができる。
【0144】
また、封止材の塗工方法として、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサー、塗布ロールなどが挙げられる。
【0145】
次いで、封止材を乾燥して、必要に応じて有機溶媒を揮発させることで、塗膜を形成する。
【0146】
加熱温度は、封止材が硬化することなく乾燥する温度であって、例えば、20℃以上、好ましくは、90℃以上、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃未満である。加熱時間は、例えば、1分以上、好ましくは、2分以上、例えば、30分以下、好ましくは、15分以下である。
【0147】
これにより、塗膜が乾燥して、封止材から形成される封止層2が調製される。次いで、封止層2の表面に、離型フィルム4を貼り付ける。
【0148】
以上によって、封止シート1が製造される。
【0149】
<画像表示装置の製造>
次に、図2図3A図3C図4を参照して、画像表示装置の製造方法の一実施形態としてのタッチセンサ付き有機ELディスプレイ(以下、有機ELディスプレイ10とする。)の製造方法について説明する。
【0150】
なお、本実施形態では、画像表示装置としてタッチセンサ付き有機ELディスプレイを挙げるが、画像表示装置は、特に制限されない。画像表示装置として、例えば、液晶ディスプレイ(タッチセンサ付き液晶ディスプレイを含む)、有機ELディスプレイ(タッチセンサ付き有機ELディスプレイを含む)などが挙げられる。このような画像表示装置のなかでは、好ましくは、タッチセンサ付き有機ELディスプレイ、さらに好ましくは、静電容量方式のタッチセンサ付き有機ELディスプレイが挙げられる。つまり、封止材は、好ましくは、タッチセンサ付き有機ELディスプレイの封止材であり、封止シートは、好ましくは、タッチセンサ付き有機ELディスプレイの封止シートである。
【0151】
有機ELディスプレイ10の製造方法は、素子搭載ユニット11を準備する工程(図3A参照)と、封止シート1が有する封止層2を、バリア層16に被覆された有機EL素子12を埋め込むように、基板13に貼り付ける工程(図3B参照)と、封止層2にカバーガラスまたはバリアフィルム15を貼り付ける工程(図3C参照)と、封止層2を硬化させてシール部材14を形成する工程(図2参照)とを含む。
【0152】
有機ELディスプレイ10の製造方法では、まず、図3Aに示すように、素子搭載ユニット11を準備する。素子搭載ユニット11は、基板13と、光学素子(表示素子)の一例としての有機EL素子12と、バリア層16と、電極(図示せず)とを備える。
【0153】
基板13は、有機EL素子12を支持している。基板13は、好ましくは、可撓性を有する。
【0154】
有機EL素子12は、公知の有機EL素子であり、基板13に搭載されている。有機EL素子12は、図示しないが、カソード反射電極と、有機EL層と、アノード透明電極とを備えている。
【0155】
バリア層16は、有機EL素子12を被覆しており、大気中の水分が有機EL素子12に接触することを抑制する。バリア層16は、第1無機バリア層17と、平坦化層19と、第2無機バリア層18とを備える。
【0156】
第1無機バリア層17は、有機EL素子12を囲むように、有機EL素子12の上面および側面に配置されている。第1無機バリア層17の材料として、例えば、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化銅など)、金属窒化物(例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素など)などが挙げられる。第1無機バリア層17の材料は、単独使用または2種以上併用することができる。第1無機バリア層17の材料のなかでは、好ましくは、金属窒化物、さらに好ましくは、窒化ケイ素が挙げられる。
【0157】
平坦化層19は、第1無機バリア層17の上面に配置されている。平坦化層19の材料として、公知の樹脂材料が挙げられる。
【0158】
第2無機バリア層18は、平坦化層19を囲むように、平坦化層19の上面および側面に配置されている。第2無機バリア層18の材料として、例えば、第1無機バリア層17と同様の材料が挙げられる。
【0159】
電極(図示せず)は、タッチセンサ付き有機ELディスプレイのセンサを構成する。電極(図示せず)は、基板13からシール部材14(後述)の間に位置する。例えば、電極(図示せず)は、基板13内に位置してもよく、有機EL素子12上に位置してもよい。
【0160】
次いで、図1に仮想線で示すように、封止シート1から離型フィルム4を剥離して除去する。そして、図3Bに示すように、封止シート1を貼付温度に加熱した後、封止層2がバリア層16に被覆された有機EL素子12を埋め込むように、封止層2を基板13に貼り付ける。
【0161】
貼付温度は、封止層2が硬化することなく軟化する温度であって、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。
【0162】
次いで、図3Bに仮想線で示すように、封止層2からベースフィルム3を剥離して除去する。そして、図3Cに示すように、封止層2の上面にカバーガラスまたはバリアフィルム15を貼り付ける。カバーガラスまたはバリアフィルム15は、図示しないが、ガラス板と、ガラス板の下面に設けられ、タッチセンサ付き有機ELディスプレイのセンサを構成する電極を備えている。
【0163】
また、図4に示すように、カバーガラスまたはバリアフィルム15に封止層2を貼り付けた後、封止層2を素子搭載ユニット11に貼り付けてもよい。
【0164】
次いで、図2に示すように、封止層2を硬化温度に加熱して、封止層2を硬化させてシール部材14を形成する。
【0165】
硬化温度は、上記した乾燥温度よりも高い。硬化温度は、例えば、70℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。硬化時間は、例えば、10分以上、好ましくは、30分以上、例えば、2時間以下、好ましくは、60分以下である。
【0166】
以上によって、素子搭載ユニット11と、シール部材14と、カバーガラスまたはバリアフィルム15とを備える有機ELディスプレイ10が製造される。このような有機ELディスプレイ10は、静電容量方式のタッチセンサ付き有機ELディスプレイである。また、有機ELディスプレイ10は、有機EL素子12がセンサを構成する2つの電極の間に配置されるインセル構造、または、センサを構成する2つの電極のうち1つが有機EL素子12上に配置されるオンセル構造を有している。
【0167】
シール部材14は、封止層2(封止材)の硬化物であって、バリア層16に被覆された有機EL素子12を封止している。
【0168】
シール部材14の誘電率は、例えば、3.0以上、好ましくは、3.2以上、例えば、3.80未満、好ましくは、3.70以下である。なお、誘電率は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
【0169】
シール部材14の誘電率が上記下限以上であれば、材料選択の自由度の向上を図ることができる。シール部材14の誘電率が上記上限以下であれば、タッチセンサ付き有機ELディスプレイなどにおいて、誤作動が生じることを抑制できる。
【0170】
シール部材14のヘイズ値は、例えば、0.1以上、例えば、2.0%未満、好ましくは、1.5%以下、より好ましくは、1.0未満である。ヘイズ値は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
【0171】
シール部材14のヘイズ値が上記上限以下であれば、ディスプレイ(タッチセンサ付きディスプレイ含む)の視認性の向上を図ることができる。
【0172】
シール部材14の透湿度は、例えば、20g/m・24h以上、例えば、50g/m・24h以下、好ましくは、45g/m・24h未満、さらに好ましくは、40g/m・24h以下である。なお、透湿度は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
【0173】
シール部材14の透湿度が上記上限以下であれば、シール部材14が封止する光学素子の劣化を抑制することができる。
【0174】
<作用効果>
しかるに、液晶ディスプレイのシール部材は、例えば、基材とガラス板との間に配置される液晶の周囲を囲むように枠状に設けられる。これに対して、有機ELディスプレイのシール部材は、図2に示すように、その内部に有機EL素子が埋め込まれるように設けられる。そのため、有機ELディスプレイのシール部材は、液晶ディスプレイのシール部材よりも、誘電率の影響が大きく、誘電率の低減を図ることが望まれる。
【0175】
一方、有機ELディスプレイのシール部材は、通常の半導体部品のシール部材に要求されるほどの低誘電率を要求されるものではない。
【0176】
本発明者らは、封止材の樹脂成分に、通常、粘着付与剤などとして使用されるスチレン系オリゴマーに加え、SP値が上記下限以上である非スチレン系オリゴマーを添加することにより、ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂と、脂環骨格含有エポキシ樹脂と、スチレン系オリゴマーと、非スチレン系オリゴマーとを相溶させることができ、その封止材から形成されるシール部材の誘電率を、画像表示装置、とりわけ有機ELディスプレイに要求される範囲に調整できることを見出した。さらに、樹脂成分にスチレン系オリゴマーおよび非スチレン系オリゴマーを添加すると、シール部材において、誘電率の低減を図ることができながら、高い透明性を確保できることも見出した。
【0177】
上記した封止材では、樹脂成分がスチレン系オリゴマーおよび非スチレン系オリゴマーを含有するので、シール部材において、誘電率を画像表示装置(とりわけ有機ELディスプレイ)に要求される範囲まで低減できながら、画像表示装置(とりわけ有機ELディスプレイ)に要求される高い透明性を確保することができる。
【0178】
また、非スチレン系オリゴマーは、好ましくは、脂肪族炭化水素樹脂および/またはテルペンフェノール樹脂である。そのため、シール部材の誘電率の低減を確実に図ることができながら、シール部材のヘイズの低減を確実に図ることができる。
【0179】
また、図1に示すように、封止シート1は、封止材からなる封止層2を有する。そのため、封止材の取扱性の向上を図ることができる。また、シール部材において、誘電率の低減を図ることができながら、高い透明性を確保することができる。
【0180】
<変形例>
変形例において、上記の実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0181】
図1に示すように、封止シート1は、封止層2と、ベースフィルム3と、離型フィルム4とを備えるが、本発明の画像表示装置封止シートは、これに限定されない。画像表示装置封止シートは、封止層2を備えていれば、ベースフィルム3および/または離型フィルム4を備えなくてもよい。つまり、画像表示装置封止シートは、封止層2のみから構成されてもよく、また、封止層2と、ベースフィルム3および離型フィルム4のいずれか一方とを備えてもよい。
【0182】
図2に示すように、有機ELディスプレイ10は、バリア層16を備えるが、これに限定されない。有機ELディスプレイ10は、バリア層16を備えなくてもよい。
【0183】
また、有機ELディスプレイ10は、有機EL素子12が、センサを構成する2つの電極の間に配置されるインセル構造、または、2つの電極のうちの1つが、有機EL素子12上に配置されるオンセル構造を有するが、これに限定されない。
【0184】
例えば、図5に示すように、有機ELディスプレイ20は、センサを構成する2つの電極がシール部材14よりも上側に配置されるアウトセル構造を有してもよい。有機ELディスプレイ20は、上記した素子搭載ユニット11と、上記したシール部材14と、センサユニット25とを備える。
【0185】
センサユニット25は、ガラス基板23と、接着剤層21と、カバーガラス22とを備える。ガラス基板23は、シール部材14の上面に配置されている。ガラス基板23は、タッチセンサ付き有機ELディスプレイのセンサを構成する電極を備えている。接着剤層21は、ガラス基板23とカバーガラス22との間に配置され、ガラス基板23とカバーガラス22とを接着している。カバーガラス22は、接着剤層21の上側に配置されている。カバーガラス22は、タッチセンサ付き有機ELディスプレイのセンサを構成する電極を備えている。なお、有機ELディスプレイ20では、基板13は、電極を備えていない。
【0186】
上記した各変形例についても、上記の一実施形態と同様の作用効果を奏する。上記の実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0187】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0188】
実施例1〜4
ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂(商品名:JER−4275、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA骨格[上記式(1)において2つのRがメチル基である構成単位II]およびビスフェノールF骨格[上記式(1)において2つのRが水素原子である構成単位II]を含有、重量平均分子量:約60,000、エポキシ当量:8,400〜9,200g/eq.)と、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂(商品名:JER−4005P、三菱ケミカル社製、重量平均分子量:6,200、エポキシ当量:1070g/eq.)と、ECH構造含有エポキシ化合物(商品名:セロキサイド2021P、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、分子量:252.3、エポキシ当量:128〜145g/eq.)と、スチレン系オリゴマー(イソプロぺニルトルエン(IPT)の単独重合体、重量平均分子量:1200)と、エステル変性炭化水素樹脂(非スチレン系オリゴマー、SP値9.0、商品名:Quintone1500、日本ゼオン社製、重量平均分子量:750)と、熱カチオン開始剤(商品名:CXC−1612、King Industries社製)と、メチルエチルケトン(有機溶媒)とを、表1に示す処方で混合して、封止材のワニスを調製した。
【0189】
実施例5
ECH構造含有エポキシ化合物の添加量を40質量部に変更したこと、および、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂を添加しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0190】
実施例6
ECH構造含有エポキシ化合物を、DCPD型エポキシ樹脂(商品名:EP−4088S、ADEKA社製、重量平均分子量:308.2、エポキシ当量:170g/eq.)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0191】
実施例7〜9
エステル変性炭化水素樹脂を、SP値9.3のテルペンフェノール樹脂(非スチレン系オリゴマー、商品名:YSポリスターK125、ヤスハラケミカル社製)に変更したこと以外は、実施例1〜3と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0192】
実施例10
スチレン系オリゴマーの添加量を10質量部に変更したこと、および、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂の添加量を25質量部に変更したこと以外は、実施例9と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0193】
比較例1
ビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂(商品名:JER−4275、三菱ケミカル社製)と、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂(商品名:JER4005P、三菱ケミカル社製)と、芳香環骨格含有エポキシ樹脂(商品名:YL−983U、三菱ケミカル社製、エポキシ当量:169g/eq.、重量平均分子量:326.2)と、熱カチオン開始剤(商品名:CXC−1612、King Industries社製)と、メチルエチルケトン(有機溶媒)とを、表1に示す処方で混合して、封止材のワニスを調製した。
【0194】
比較例2
芳香環骨格含有エポキシ樹脂を、ECH構造含有エポキシ化合物(商品名:セロキサイド2021P)に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0195】
比較例3
スチレン系オリゴマー(イソプロぺニルトルエン(IPT)の単独重合体、重量平均分子量:1200)25質量部をさらに添加したこと、および、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂の添加量を25質量部に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0196】
比較例4
エステル変性炭化水素樹脂(非スチレン系オリゴマー、SP値9.0、商品名:Quintone1500、日本ゼオン社製)25質量部をさらに添加したこと、および、ビスフェノール骨格含有エポキシ樹脂の添加量を25質量部に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0197】
比較例5
エステル変性炭化水素樹脂を、SP値9.3のテルペンフェノール樹脂(非スチレン系オリゴマー、商品名:YSポリスターK125、ヤスハラケミカル社製)に変更したこと以外は、比較例4と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0198】
比較例6
スチレン系オリゴマー(イソプロぺニルトルエン(IPT)の単独重合体、重量平均分子量:1200)15質量部と、エステル変性炭化水素樹脂(非スチレン系オリゴマー、SP値9.0、商品名:Quintone1500、日本ゼオン社製)10質量部とをさらに添加したこと以外は、比較例1と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0199】
比較例7
エステル変性炭化水素樹脂を、芳香族変性炭化水素樹脂(SP値8.5、商品名:Quintone1920、日本ゼオン社製)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0200】
比較例8
エステル変性炭化水素樹脂を、水添テルペン樹脂(SP値8.4、商品名:クリアロンP−105、ヤスハラケミカル社製)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0201】
比較例9
エステル変性炭化水素樹脂を、水添芳香族テルペン樹脂(SP値8.5、商品名:クリアロンM−105、ヤスハラケミカル社製)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0202】
比較例10
エステル変性炭化水素樹脂を、ロジンエステル樹脂(SP値8.5、商品名:パインクリスタルKE−100、荒川化学工業社製)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0203】
比較例11
エステル変性炭化水素樹脂を、ロジン樹脂(SP値8.4、商品名:パインクリスタルKR−85、荒川化学工業社製)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0204】
比較例12
SP値9.3のテルペンフェノール樹脂を、SP値8.8のテルペンフェノール樹脂(商品名:YSポリスターT130、ヤスハラケミカル社製)に変更したこと以外は、実施例10と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0205】
比較例13
SP値9.3のテルペンフェノール樹脂を、SP値8.8のテルペンフェノール樹脂(商品名:YSポリスターT160、ヤスハラケミカル社製)に変更したこと以外は、実施例10と同様にして、封止材のワニスを調製した。
【0206】
<評価>
・誘電率
各実施例および各比較例の封止材のワニスを、塗工機によりPETフィルム(離型処理されたPETフィルム(商品名:ピューレックスA53、帝人デュポンフィルム社製、厚さ:38μm、ベースフィルム)上に塗工した後、窒素パージオーブンにて、90℃で3分間乾燥させて、厚さ15μmの封止層を形成した。
【0207】
次いで、封止層に、熱ラミネーターによりPETフィルム(離型処理されたPETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム社製、厚さ:38μm、離型フィルム)を80℃で貼り合せた。
【0208】
以上によって、ベースフィルムと、封止層と、離型フィルムとを備える封止シートを調製した。これを繰り返して、封止シートを、実施例および比較例毎に、2つずつ調製した。そして、同じ実施例または比較例に対応する2つの封止シートのそれぞれにおいて、離型フィルムを封止層から剥離した後、2つの封止層を厚み方向に互いに貼り合わせて、それらの厚さを30μmとした。
【0209】
次いで、互いに貼り合わされた2つの封止層を、片面のベースフィルムを剥離して100℃で1時間硬化させた後、もう片面のベースフィルムを、硬化後の封止層から剥離して測定用サンプルを得た。得られたサンプルの100kHzにおける誘電率を、LCRメーターHP4284A(アジレント・テクノロジー社製)を用いて、自動平衡ブリッジ法により測定した。
【0210】
そして、誘電率を下記の基準により評価した。その結果を表1および表2に示す。
○:3.80未満
×:3.80以上。
【0211】
・ヘイズ値
上記の誘電率の評価と同様にして、各実施例および各比較例の封止シートを調製した。そして、離型フィルムを封止層から剥離した後、封止層を100℃で1時間硬化させた。
次いで、ベースフィルムを、硬化後の封止層から剥離して測定用サンプルを得た。得られたサンプルのヘイズ値を、日本電色工業社製のヘーズメーターNDH2000を用いて測定した。
【0212】
そして、ヘイズ値を下記の基準により評価した。その結果を表1および表2に示す。
○:2.0%未満
×:2.0%以上。
【0213】
・透湿度
上記の誘電率の評価と同様にして、各実施例および各比較例の封止シートを調製した。そして、離型フィルムを封止層から剥離した後、封止層を100℃で1時間硬化させた。
次いで、ベースフィルムを、硬化後の封止層から剥離して測定用サンプルを得た。得られたサンプルの透湿度(透湿量)を、JIS Z0208に準拠して、60℃90%RH条件で測定した。その後、測定に使用したサンプルの膜厚から、サンプルの厚みが100μmである場合の値に換算した。
【0214】
そして、透湿度を下記の基準により評価した。その結果を表1および表2に示す。
○:45g/m・24h未満
△:45g/m・24h以上。
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の画像表示装置封止材および画像表示装置封止シートは、各種画像表示装置の封止材、具体的には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの封止材として、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0219】
1 封止シート
2 封止層
図1
図2
図3
図4
図5