(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840265
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】引き出し壁
(51)【国際特許分類】
A47B 88/913 20170101AFI20210301BHJP
【FI】
A47B88/913
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-554723(P2019-554723)
(86)(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公表番号】特表2020-515354(P2020-515354A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(86)【国際出願番号】AT2018060060
(87)【国際公開番号】WO2018184053
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年10月4日
(31)【優先権主張番号】A50272/2017
(32)【優先日】2017年4月5日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス カンプル
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シュヴァーツマン
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−068530(JP,A)
【文献】
中国実用新案第201319988(CN,Y)
【文献】
独国実用新案第212015000176(DE,U1)
【文献】
中国特許出願公開第104159473(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/913
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側の形材壁(13a)と外側の形材壁(13b)と該両形材壁(13a,13b)を結合する周壁面(13c)とを備える中空室形材として形成された引き出し側壁(4)であって、
前記引き出し側壁(4)の前記内側の形材壁(13a)、前記外側の形材壁(13b)および/または前記周壁面(13c)の少なくとも一方の端領域に配置された開口(10)と、
前記開口(10)を閉鎖位置で閉鎖しかつ前記開口(10)を開放位置で開放する、可動に支持されたカバー部材(11)と、
ばね要素(18)であって、該ばね要素(18)の作用方向で前記カバー部材(11)に前記閉鎖位置に向かって予荷重を加えるばね要素(18)と
を有しており、前記カバー部材(11)が、前記周壁面(13c)に対して平行な方向では不動に支持されていて、前記ばね要素(18)の前記作用方向と逆方向では、前記周壁面(13c)に対してほぼ直角に可動に支持されている、引き出し側壁(4)において、
前記カバー部材(11)が、全ての作動位置において前記引き出し側壁(4)の内部に配置されていることを特徴とする、引き出し側壁(4)。
【請求項2】
前記ばね要素(18)がプラスチック部材の弾性材料によって形成されていることを特徴とする、請求項1記載の引き出し側壁。
【請求項3】
前記カバー部材(11)が前記ばね要素(18)と共に一体に形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の引き出し側壁。
【請求項4】
前記ばね要素(18)が、軸線(X)を中心として撓み可能にまたは傾動可能に基体(20)に支持されており、該基体(20)は前記引き出し側壁(4)の中空室内に配置されており、前記ばね要素(18)が自由端領域を有しており、前記ばね要素(18)の前記自由端領域によって、前記カバー部材(11)が形成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の引き出し側壁。
【請求項5】
前記引き出し側壁(4)が、折り曲げられた金属形材によって形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の引き出し側壁。
【請求項6】
前記金属形材は、金属製の押出し形材または鋼薄板であることを特徴とする、請求項5記載の引き出し側壁。
【請求項7】
前記カバー部材(11)が、該カバー部材(11)の前記閉鎖位置で前記引き出し側壁(4)の前記周壁面(13c)と同一平面を成す突出部(19)を有していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の引き出し側壁。
【請求項8】
前記開口(10)が、前記引き出し側壁(4)の上側に配置されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の引き出し側壁。
【請求項9】
前記開口(10)が配置されている前記端領域は、前記引き出し側壁(4)の前方であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の引き出し側壁。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の引き出し側壁(4)と、組付け位置で前記引き出し側壁(4)に載置された壁要素(5)とを備えたアッセンブリ。
【請求項11】
前記壁要素(5)にフック(14)が配置されているかまたは形成されており、該フック(14)が、前記組付け位置で前記引き出し側壁(4)の開口(10)内に係合していることを特徴とする、請求項10記載のアッセンブリ。
【請求項12】
前記壁要素(5)が、折り曲げられた金属形材によって形成されているかまたは、ガラス、木材、プラスチック、石材またはセラミックスから成る装飾プレートによって形成されていることを特徴とする、請求項10または11記載のアッセンブリ。
【請求項13】
請求項1から9までのいずれか1項記載の少なくとも1つの引き出し側壁(4)または請求項10から12までのいずれか1項記載のアッセンブリを備えた引き出し(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き出し壁であって、
引き出し壁の周壁面に配置された開口と、
開口を閉鎖位置で閉鎖しかつ開口を開放位置で開放する、可動に支持されたカバー部材と、
ばね要素であって、このばね要素の作用方向でカバー部材に閉鎖位置に向かって予荷重を加えるばね要素と
を有しており、カバー部材が、周壁面に対して平行な方向では不動に支持されていて、ばね要素の作用方向と逆方向では、周壁面に対してほぼ直角に可動に支持されている、引き出し壁に関する。
【0002】
さらに、本発明は、記載すべき形態の引き出し壁と、組付け位置で引き出し壁に載置された壁要素とを備えたアッセンブリに関する。
【0003】
さらに、本発明は、このような少なくとも1つの引き出し壁または前述した形態のアッセンブリを備えた引き出しに関する。
【0004】
欧州特許出願公開第1632151号明細書(EP 1 632 151 A1)には、中空室形材として形成された引き出し壁が示されている。この引き出し壁は、保持装置または調整装置を調節するためのねじ回しを導入することができる、周壁面に配置された開口を有している。この開口は、運動可能に支持されたカバー部材によって閉鎖可能である。このカバー部材はばね装置によって、開口を閉鎖する位置に押圧可能である。
【0005】
国際公開第2010/045782号(WO 2010/045782 A1)の
図14に記載の実施例には、引き出し側壁が示されている。この引き出し側壁は、前方の端領域に配置された開口を有している。この開口によって、引き出し側壁を前板に解離可能にロックするためのロック装置への接近が可能となる。開口を閉鎖するために、フレキシブルな材料から製造されたカバー部材が設けられている。このカバー部材は、一方の第1の取付け端部でもって側壁に旋回可能に支持されていて、第2の取付け端部でもって突出部によって引き出し側壁の孔内にスナップ嵌め可能である。これには、カバー部材が開放位置で引き出し側壁から横方向外向きに張り出してしまい、したがって、付加的な構成スペースが設けられなければならないという欠点がある。さらに、カバー部材が物体によって剪断または折損されてしまい、したがって、開口を閉鎖するためにもはや使用できなくなってしまうという危険がある。
【0006】
独国実用新案第202010002617号明細書(DE 20 2010 002 617 U1)の
図3〜
図5には、切抜き部を有する引き出し側壁が示されている。この引き出し側壁では、操作レバーが、組付け位置で鉛直方向に延びる軸線を中心として旋回可能に支持されている。操作レバーは、フロントプレートをばね要素の力によってロックするために設けられており、これによって、フロントプレートに対する保持力が提供される。ロックのためには、操作レバーがばね要素の力に抗して、切抜き部を塞ぐ閉鎖位置に運動させられなければならない。
【0007】
本発明の課題は、上で論じた欠点を回避して、冒頭に述べたカテゴリの、よりコンパクトな引き出し壁を提供することである。
【0008】
このことは、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。本発明の別の有利な実施例は、従属請求項に定義してある。
【0009】
したがって、本発明によれば、カバー部材が、全ての作動位置において引き出し壁の内部に配置されていることが提案されている。このことは、カバー部材が、少なくとも部分的に引き出し壁の壁厚さの内部に配置されていてよいという手段も含んでいる。
【0010】
引き出し壁は、周壁面に配置された少なくとも1つの開口と、この開口を閉鎖するためのカバー部材とを有している。このカバー部材は、閉鎖位置で開口を塞いでいて、ばね要素のばね弾性作用に抗して開口平面に対して垂直な方向で引き出し壁の内部に向かって運動可能である。
【0011】
周壁面に設けられた開口は、例えば、引き出し壁の調整装置を回動させ、かつ/または第2の引き出し壁の取付け要素を導入し、かつ/または引き出し構成部材用の保持体を導入するためのねじ回しの導入を可能にするために設けることができる。第2の引き出し壁は、折り曲げられた金属形材によって形成されていてもよいし、代替的には、例えばガラス、木材、プラスチック、石材またはセラミックスから成る装飾プレートによって形成されていてもよい。
【0012】
ばね要素は、コイルばね、例えば圧縮ばねによって形成することができる。代替的には、ばね要素をプラスチック部材の材料弾性によって形成することが可能である。これに相俟って、カバー部材がばね要素と共に一体に形成されていると有利であり得る。こうして、簡単な構造および経済的な製造が実現可能となる。
【0013】
ばね要素は、軸線を中心として撓み可能にまたは傾動可能に基体に支持することができる。ばね要素は自由端領域を有することができ、ばね要素の自由端領域によって、カバー部材が形成されている。基体は、プラスチックの射出により一体成形することができ、引き出し壁の中空室内に収容することができる。
【0014】
本発明の更なる詳細および利点は、図面に示した実施例に基づき明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】走行可能な引き出しを備えた家具の斜視図である。
【
図1b】壁要素が載置された引き出し壁の斜視図である。
【
図3a】引き出し壁を、載置すべき壁要素と共に前方から見た斜視図である。
【
図3b】引き出し壁の開口内への壁要素のフックの導入を時系列で示す図である。
【
図3c】引き出し壁の開口内への壁要素のフックの導入を時系列で示す図である。
【
図3d】引き出し壁の開口内への壁要素のフックの導入を時系列で示す図である。
【0016】
図1aには、引き出し3を備えた家具1の斜視図が示してある。引き出し3は、(図示していない)引き出し用引出しガイドを介して家具キャビネット2に対して相対的に走行可能に支持されている。引き出し3はそれぞれ、引き出し底板7と、引き出し壁4と、この引き出し壁4に載置された壁要素5とを有している。引き出し壁4と壁要素5とは、それぞれ前板6に結合されている。
【0017】
図1bには、壁要素5が載置された引き出し壁4が斜視図で示してある。この引き出し壁4は、折り曲げられた金属形材、好ましくは金属製の押出し形材または鋼薄板によって形成することができる。前板6には、高さ方向に互いに間隔を置いて配置された2つのプラグ9aを備えた保持部材9が取り付けられていなければならない。前板6に予め組み付けられた保持部材9は、引き出し壁4内に配置されたロック装置16(
図4)に解離可能にロック可能である。引き出し壁4は、さらに、引き出し底板7を支持するための載置ウェブ4aと、引き出し背壁を取り付けるための取付けアダプタ8とを有している。壁要素5も同じく、折り曲げられた中空室形材によって形成することができる。
【0018】
図2aには、引き出し壁4の斜視図が示してある。この引き出し壁4は、内側の形材壁13aと外側の形材壁13bとを備えた中空室形材として形成されている。内側の形材壁13aと外側の形材壁13bとは、好ましくは平らに形成された周壁面13cを介して互いに結合されている。内側の形材壁13aには、取外し可能な閉鎖部材12が配置されている。この閉鎖部材12は、形材壁13aの、工具を通過させるための切抜き部を覆っている。引き出し壁4の周壁面(つまり、内側の形材壁13a、外側の形材壁13bおよび/または符号13cで示した周壁面)には、開口10が配置されている。この開口10は、ねじ回しを通過させるために、かつ/または
図1bに示した壁要素5を取り付けるために、かつ/または引き出し構成部材用の保持体を取り付けるために設けることができる。
【0019】
図2bには、
図2aにおいて枠で囲んだ範囲が拡大図で示してある。引き出し壁4の、例えば方形の開口10は、使用されていない場合には、移動可能に支持されたカバー部材11によって閉鎖されている。このカバー部材11は、周壁面13cに対して平行な方向では不動に支持されていて、ばね要素18(
図4)の作用方向と逆方向では、周壁面13cに対してほぼ直角に可動に支持されている。カバー部材11は、全ての作動位置において引き出し壁4の内部に配置されている。1つの実施例によれば、カバー部材11は突出部19(
図4)を有することもできる。この突出部19は、カバー部材11の閉鎖位置で引き出し壁4の周壁面13cと同一平面を成しており、これによって、周壁面13cとカバー部材11との間に段部または段付け部が生じないようになっている。
【0020】
図3aには、引き出し壁4が、載置すべき壁要素5と共に前方から見た斜視図で示してある。図示の実施例では、開口10が引き出し壁4の前方の端部に配置されている。しかしながら、開口10は、引き出し壁4の裏側の端領域および/または両形材壁13a,13bのうちの一方の形材壁に配置されていてもよい。壁要素5は、引き出し壁4の開口10内に導入可能であるフック14を有している。このフック14を開口10内に導入することによって、カバー部材11が、開口10を塞ぐ閉鎖位置を起点として、ばね要素18のばね弾性作用に抗して、開口10を開放する開放位置に運動可能となる。壁要素5が、(例えばガラスから成る)中実の装飾プレートを有している事例では、フック14は、装飾プレートに結合可能なアダプタ片に配置されなければならない。
【0021】
図3bには、
図3aにおいて円で囲んだ範囲が拡大図で示してある。この拡大図には、壁要素5の、開口10内に導入すべきフック14を認めることができる。カバー部材11は、開口10を覆う閉鎖位置にある。
図3cでは、フック14がカバー部材11に接触しており、フック14を引き続き下方に運動させることによって、
図3dに示したように、フック14がカバー部材11をばね要素18のばね弾性作用に抗して、開口10を開放する開放位置に押圧する。つまり、壁要素5のフック14は、組付け位置で引き出し壁4の開口10内に係合しており、これによって、引き出し壁4に対して相対的な壁要素5の側方へのかつ/または鉛直方向への変位が阻止されているかまたは制限されている。壁要素4はフック14に対する固定装置(図示せず)を有していてもよい。この固定装置によって、フック14が引き出し壁4に対して相対的に形状接続的にまたは力接続的に位置固定可能となる。フック14が再び開口10から取り出されると、カバー部材11がばね要素18の作用によって、開口10がカバー部材11により閉鎖されている閉鎖位置に自動的にスナップバックする。こうして、1つには、見栄えの良い外観像が得られ、もう1つには、引き出し壁4の内部への汚物の侵入を阻止することもできる。
【0022】
図4には、引き出し壁4の支持レール15が斜視図で示してある。この支持レール15は、組付け位置で形材壁13a,13b(
図2)に結合、好ましくは溶接されている。支持レール15は、横断面で見て、U字形に成形された区分を有しており、この区分内に引き出し用引出しガイドの引出し可能なレールが配置可能となる。組付け位置で水平方向に延在する載置ウェブ4aは、支持レール15に一体に結合することができる。支持レール15の前方の領域には、前板6に組み付けるべき保持部材9を取り付けるためのロック装置16が配置されている。保持部材9は、蓄力器17の作用によって自動的にロック装置16に係止可能である。カバー部材11に閉鎖位置の方向で力を加えるためのばね要素18が軸線(X)を中心として撓み可能にまたは傾動可能に支持されていて、ばね要素18の作用方向と逆方向の矢印21の方向で壁要素4の周壁面13cに対してほぼ直角に可動に支持されている基体20を認めることができる。ばね要素18は自由端領域を有している。このばね要素18の自由端領域によって、カバー部材11が形成されている。つまり、図示の実施例では、カバー部材11がばね要素18と共に一体に形成されている。このばね要素18はプラスチック部材の弾性材料によって形成されている。カバー部材11は突出部19を有することもできる。この突出部19によって、引き出し壁4の開口10が形状接続的に閉鎖可能となり、これによって、カバー部材11が閉鎖位置で引き出し壁4の周壁面13cと同一平面を成している。こうして、この周壁面13cとカバー部材11との間に段部または段付け部が形成されることなく、開口10の、形の美しい閉鎖が達成される。その上、基体20は少なくとも1つの当接要素22を有している。この当接要素22によって、図示の図面で見て、上方への、つまり、記入した矢印21と逆方向へのカバー部材11の運動が制限可能となる。こうして、カバー部材11は休止位置では、カバー部材11が引き出し壁4の開口10を閉鎖している規定された終端位置をとっている。
【0023】
図面に示した形態と異なり、カバー部材11は、移動可能に支持された円筒状のピンを有していてもよい。このピンには、コイルばねによって閉鎖位置の方向に予荷重が加えられている。円筒状のピンは、閉鎖位置で引き出し要素4の円形の開口10を閉鎖していて、コイルばねの作用方向と逆方向で、例えばガイド内にまたはガイドに沿って可動に支持されている。