(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6840281
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】金型、及びセラミックス成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 7/38 20060101AFI20210301BHJP
B28B 3/02 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
B28B7/38
B28B3/02 F
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-139810(P2020-139810)
(22)【出願日】2020年8月21日
【審査請求日】2020年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2019-175511(P2019-175511)
(32)【優先日】2019年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水木 一博
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 真司
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−269711(JP,A)
【文献】
特開平09−001562(JP,A)
【文献】
特開平06−188142(JP,A)
【文献】
特開2007−279114(JP,A)
【文献】
特開2004−153365(JP,A)
【文献】
特開2001−335371(JP,A)
【文献】
特開2020−131707(JP,A)
【文献】
実開昭51−061346(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/38
B22D 13/10
B22D 17/00
B22D 17/20
B28B 3/02
B29C 33/58
C03B 40/02
C10N 40/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用スラリーを固化させることによってセラミックス成形体を成形するために用いられる金型であって、
前記成形用スラリーが注入される内部空間、及び前記内部空間を画定する内壁面、を含む金型本体と、
前記内壁面上を被覆する離型層と、
を備え、
前記内壁面は、前記離型層によって被覆された被覆領域と、前記離型層から露出する露出領域とを有し、
前記内壁面は、第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、側面と、を含み、
前記側面は、前記被覆領域と前記露出領域とを有する、
金型。
【請求項2】
前記第1主面は、前記被覆領域と前記露出領域とを有する、
請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記側面は、対向する一対の側面を含み、
前記対向する一対の側面のそれぞれに、前記被覆領域と前記露出領域とを有する、
請求項1又は2に記載の金型。
【請求項4】
前記第2主面は、前記被覆領域と前記露出領域とを有する、
請求項1から3のいずれかに記載の金型。
【請求項5】
前記露出領域の最大面積は、0.01mm2以上1mm2以下である、
請求項1から4のいずれかに記載の金型。
【請求項6】
前記内壁面は、複数の前記露出領域を有し、
前記各露出領域の面積は、0.01mm2以上1mm2以下である、
請求項1から5のいずれかに記載の金型。
【請求項7】
前記第1主面を縦方向及び横方向のそれぞれで2等分してなる4つの領域のうち、少なくとも対角に位置する各領域は、前記露出領域を有する、
請求項1から6のいずれかに記載の金型。
【請求項8】
成形用スラリーを固化させることによってセラミックス成形体を成形するために用いられる金型であって、
前記成形用スラリーが注入される内部空間、及び前記内部空間を画定する内壁面、を含む金型本体と、
前記内壁面上を被覆する離型層と、
を備え、
前記内壁面は、前記離型層によって被覆された被覆領域と、前記離型層から露出する露出領域とを有し、
前記露出領域の最大面積は、0.01mm2以上1mm2以下であり、
前記内壁面は、第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面と、側面と、を含み、
前記側面は、前記被覆領域と前記露出領域とを有する、
金型。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の金型に前記成形用スラリーを注入する工程と、
注入された前記成形用スラリーを固化させることによって前記セラミックス成形体を成形する工程と、
を備えるセラミックス成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型、及びセラミックス成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セラミックス部材は、例えば、電気化学素子用の支持体、フィルター、センサ、触媒担体、断熱材、防音材、防震材、及び生体材などの幅広い用途に利用されている。セラミックス部材は、所定形状のセラミックス成形体を焼成することによって作製される。
【0003】
セラミックス成形体の製造方法としては、鋳込み成形法の一つであるモールドキャスト法が知られている(例えば、特許文献1参照)。モールドキャスト法は、セラミック粉末、分散媒及びゲル化剤などを含有する成形用スラリーを金型に注入した後、成形用スラリーを固化(ゲル化)させることによってセラミック成形体を製造する方法である。固化したセラミックス成形体を金型から取り出しやすくするために、金型の内壁面は離型層によって被覆されている。
【0004】
モールドキャスト法は、流動性の高い成形用スラリーを金型に注入して固化させる手法であるため、金型の内壁面によって規定される成形型をセラミックス成形体に精度よく転写することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−335371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成形用スラリーが固化する際、金型の内壁面を被覆する離型層上をセラミックス成形体が滑りやすく、セラミックス成形体に収
縮が生じやすい。このため、セラミックス成形体の外形寸法精度を向上させるにも限界がある。
【0007】
本発明は、セラミックス成形体の外形寸法精度を向上可能な金型、及びセラミックス成形体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面に係る金型は、成形用スラリーを固化させることによってセラミックス成形体を成形するために用いられる。金型は、金型本体と、離型層とを備える。金型本体は、成形用スラリーが注入される内部空間、及び内部空間を画定する内壁面、を含む。離型層は、内壁面上を被覆する。内壁面は、被覆領域と露出領域とを有する。被覆領域は、離型層によって被覆されている。露出領域は、離型層から露出する。内壁面は、第1主面と、第1主面に対向する第2主面と、側面と、を含む。第1主面及び側面の少なくとも一方は、被覆領域と露出領域とを有する。
【0009】
この構成によれば、セラミックス成形体を露出領域に付着させて状態で固化させることができる。したがって、セラミックス成形体が離型層上を滑りながら固化することを抑制できるため、セラミックス成形体の収
縮を抑制することができる。この結果、セラミックス成形体の外形寸法精度を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、第1主面は、被覆領域と露出領域とを有する。
【0011】
好ましくは、側面は、被覆領域と露出領域とを有する。
【0012】
好ましくは、第2主面は、被覆領域と露出領域とを有する。
【0013】
好ましくは、露出領域の最大面積は、1mm
2以下である。この構成によれば、露出領域において金型内壁面と成形体とが強く付着することを回避できる。この結果、成形体を金型から離型する際に発生し得る成形体表面の欠陥(クラック、欠け等)を抑制できるという効果を得ることもできる。
【0014】
好ましくは、内壁面は、複数の露出領域を有し、各露出領域の面積は、1mm
2以下である。
【0015】
本発明の第2側面に係る金型は、成形用スラリーを固化させることによってセラミックス成形体を成形するために用いられる。金型は、金型本体と、離型層とを備える。金型本体は、成形用スラリーが注入される内部空間、及び内部空間を画定する内壁面、を含む。離型層は、内壁面上を被覆する。内壁面は、被覆領域と露出領域とを有する。被覆領域は、離型層によって被覆されている。露出領域は、離型層から露出する。露出領域の最大面積は、1mm
2以下である。
【0016】
本発明の第3側面に係るセラミックス成形体の製造方法は、上記いずれかの金型に成形用スラリーを注入する工程と、注入された成形用スラリーを固化させることによってセラミックス成形体を成形する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、セラミックス成形体の外形寸法精度を向上可能な金型、及びセラミックス成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】さらに別の実施形態を示す第1金型本体の底面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[金型100の構成]
本実施形態に係る金型100の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、金型100の断面図である。
【0020】
金型100は、鋳込み成形法の一つであるモールドキャスト法によって、成形用スラリーを固化(ゲル化)してセラミック成形体を成形するために用いられる。セラミック成形体は、焼成によりセラミックス部材となる。セラミックス部材としては、電気化学素子(例えば、燃料電池セル、電解セルなど)の支持体が挙げられるが、これに限らず幅広い用途に利用され得る。セラミック成形体の製造方法については後述する。金型100は、金型本体2及び離型層3を備える。
【0021】
[金型本体2]
金型本体2は、第1金型本体2a及び第2金型本体2bによって構成される。ただし、金型本体2は、成形されたセラミック成形体を取り出すことができる構造であればよく、例えば、3つ以上の金型本体によって構成されていてもよい。金型本体2の材質は、金属(アルミニウム、アルミニウム合金、SUS鋼、ニッケル合金など)である。
【0022】
第1金型本体2a及び第2金型本体2bそれぞれは、凹部を有する。第1金型本体2a及び第2金型本体2bは、互いの凹部を合わせるように連結される。第1金型本体2aは、第2金型本体2b上に配置される。第1金型本体2aには、成形用スラリーを注入するための注入口21と、成形用スラリーの注入時に空気及び余剰の成形用スラリーを排出するための排出口22とが形成されている。
【0023】
金型本体2は、内部空間4及び内壁面5を有する。内部空間4には、成形用スラリーが注入される。内部空間4は、第1金型本体2aの凹部と第2金型本体2bの凹部とが合わさることによって構成される。内壁面5は、内部空間4を画定する。本明細書において、内壁面5は、注入口21及び排出口22それぞれの開口部を含まれないものとする。
【0024】
内壁面5は、第1主面5a、第2主面5b、及び側面5cを備える。第1主面5aは、第1金型本体2aに形成された凹部の底面である。第2主面5bは、第2金型本体2bに形成された凹部の底面である。第2主面5bは、第1主面5aと対向する。側面5cは、第1主面5a及び第2主面5bに連なる。側面5cは、環状である。側面5cは、第1金型本体2aに形成された凹部の側壁と、第2金型本体2bに形成された凹部の側壁とが合わさることによって形成されている。
図1では、第1主面5a、第2主面5b及び側面5cのそれぞれが平面状に形成されているが、これらのうち少なくとも1つの面には、必要に応じて凹凸が形成されていてもよい。
【0025】
[離型層3]
離型層3は、内壁面5上を被覆している。離型層3の厚さは、例えば、0.1〜100μm程度とすることができる。離型層3は、内壁面5上に離型剤を塗布することによって形成されている。離型層3を構成する離型剤としては、フッ素系、シリコーン系、ウレタン系などの被膜剤を用いることができる。
【0026】
離型層3は、金型本体2の内壁面5を部分的に被覆していない。そのため、金型本体2の内壁面5は、被覆領域51と、露出領域52とを有している。被覆領域51は、離型層3によって被覆されている。露出領域51は、離型層3から露出している。露出領域52は、内壁面5のうち被覆領域51以外の領域である。
【0027】
このように、離型層3によって被覆されていない露出領域52が内壁面5に設けられているため、セラミックス成形体の一部を露出領域52に付着させた状態で固化させることができる。従って、セラミックス成形体が離型層3上を滑りながら固化することを抑制できるため、セラミックス成形体に収
縮が生じることを抑制できる。その結果、セラミックス成形体の外形寸法精度を向上させることができる。
【0028】
図1において、内壁面5には、8つの露出領域52が設けられているが、露出領域52の個数は特に制限されず、1以上の露出領域52が設けられていればよい。
【0029】
内壁面5のうち側面5cに、少なくとも1つの露出領域52が配置されることが好ましい。すなわち、側面5cは、被覆領域51と露出領域52との両方を有している。これにより、セラミックス成形体の外周部分を側面5cに付着させた状態で保持できるため、セラミックス成形体の収
縮をより抑制できる。なお、本実施形態のように側面5cが4つある場合、対向する一対の側面5cのそれぞれに露出領域52が配置されていることがより好ましい。
【0030】
また、内壁面5のうち第1主面5a及び第2主面5bのそれぞれに、少なくとも1つの露出領域52が配置されていることが好ましい。すなわち、第1主面5aは、被覆領域51と露出領域52との両方を有している。また、第2主面5bも、被覆領域51と露出領域52との両方を有している。これにより、セラミックス成形体のうち実際に収
縮する部位を第1主面5a及び第2主面5bに付着させた状態で保持できるため、セラミックス成形体の収
縮をより抑制できる。
【0031】
図2に示すように、内壁面5の第1主面5aを縦方向及び横方向のそれぞれで2等分してなる4つの領域のうち、対角に位置する領域のそれぞれに露出領域52が形成されている。なお、
図3に示すように、上記4つの領域のそれぞれに露出領域52が形成されていてもよい。また、
図4に示すように、1つの領域内に、複数の露出領域52が形成されていてもよい。
【0032】
同様に、内壁面5の第2主面5bにおいて、露出領域52は、第2主面5bの対角位置のそれぞれに形成されている。
【0033】
内壁面5において全ての露出領域52が占める面積割合は、0.01%以上が好ましい。これにより、セラミックス成形体が離型層3上を滑ることをより抑制できる。全ての露出領域52が占める面積割合は、0.02%以上がより好ましく、0.03%以上が特に好ましい。
【0034】
内壁面5において全ての露出領域52が占める面積割合は、1%以下が好ましい。これにより、セラミックス成形体が内壁面5に付着して取り出しにくくなることを抑制できる。全ての露出領域52が占める面積割合は、0.8%以下がより好ましく、0.6%以下が特に好ましい。
【0035】
内壁面5において全ての露出領域52が占める面積割合は、第1主面5a、第2主面5b及び側面5cそれぞれの平面視において測定した全ての露出領域52それぞれの面積の合計値を内壁面5の全面積で除することによって算出される。各露出領域52の面積は、顕微鏡観察等を用いて測定することができる。
【0036】
内壁面5の平面視において、露出領域52それぞれの面積は、0.01mm
2以上が好ましい。これにより、セラミックス成形体が離型層3上を滑ることをより抑制できる。露出領域52それぞれの面積は、0.03mm
2以上がより好ましく、0.05mm
2以上が特に好ましい。
【0037】
内壁面5の平面視において、露出領域52それぞれの面積は、1mm
2以下が好ましい。すなわち、複数の露出領域52のうち、最大の露出領域52の面積を1mm
2以下とすることが好ましい。これにより、金型と成形体が強く付着することを抑制し、成形体を金型から離型する際の成形体の破損を抑制することができる。露出領域52それぞれの面積は、1mm
2以下がより好ましく、0.8mm
2以下が特に好ましい。
【0038】
(セラミックス成形体の製造方法)
次に、セラミックス成形体の製造方法について説明する。
【0039】
まず、第1金型本体2aに形成された凹部の底面及び側壁のうち露出領域52を設ける領域にマスクを施す。また、第2金型本体2bに形成された凹部の底面及び側壁のうち露出領域52を設ける領域にもマスクを施す。マスクは、離型剤が塗布されないようにできるものであればよく、例えば、粘着テープ、磁石、樹脂部材などを用いることができる。マスクのサイズ及び個数を調整することによって、全露出領域52が占める面積割合と露出領域52の面積とを制御できる。
【0040】
次に、第1金型本体2aに形成された凹部の底面及び側壁に離型剤を塗布する。また、第2金型本体2bに形成された凹部の底面及び側壁にも離型剤を塗布する。離型剤の塗布方法は特に制限されず、例えば、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法などを用いることができる。以上により、離型層3が形成される。
【0041】
次に、第1金型本体2a及び第2金型本体2bのそれぞれからマスクを取り外す。これにより、金型本体2の内壁面5に被覆領域51と露出領域52とが設けられる。
【0042】
次に、セラミックス粉末、分散媒、及びゲル化剤を混合して成形用スラリーを調製する。セラミックス粉末は、セラミックス部材に必要とされる特性に応じて適宜選択される。
【0043】
次に、第2金型本体2b上に第1金型本体2aを連結して、第1金型本体2aの注入口21から内部空間4に成形用スラリーを注入する。
【0044】
次に、一定時間(例えば、0.1〜24時間)放置して、成形用スラリーを固化(ゲル化)させることによって、セラミックス成形体を形成する。この際、金型本体2の内壁面5には、離型層3によって被覆されていない露出領域52が設けられているため、セラミックス成形体の収
縮が抑制されて、セラミックス成形体の外形寸法精度を向上させることができる。
【0045】
次に、第2金型本体2bから第1金型本体2aを取り外して、セラミックス成形体を取り出す。
【0046】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0047】
上記実施形態では、第1金型本体2a及び第2金型本体2bのそれぞれが凹部を有することとしたが、これに限られない。第1金型本体2a及び第2金型本体2bの一方には、凹部が形成されていなくてもよい。この場合、第1金型本体2a及び第2金型本体2bの一方に形成された凹部の側壁が、内部空間4の内壁面5の側面5cとなる。
【実施例】
【0048】
以下において、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0049】
まず、
図1に示すような構成の金型100を以下のように作製した。
【0050】
まず、金型本体2を準備した。金型本体2の材質は、金属である。なお、実施例1〜9、比較例1では、金型本体2の材質をアルミニウム合金としたが、金型本体2の材質がアルミニウム、SUS鋼、ニッケル合金であっても同様の結果となることを確認した。内壁面5によって画定される内部空間4のサイズは、幅300mm、奥行き100mm、高さ10mmである。
【0051】
次に、金型本体2の内壁面5に離型層3を形成した。具体的には、まず、幅方向を向く一対の側面5cのそれぞれにマスクを1カ所ずつ施した。マスクとしては、フォトレジスト材料を使用した。このマスクの面積が露出領域52の面積となる。この各露出領域52の面積は、実施例1〜9、比較例1において異なる。この各露出領域52の面積は、表1に示す通りである。
【0052】
次に、マスクが施された内壁面5に離型剤を塗布した。具体的には、スプレー塗布法によってフッ素系樹脂を内壁面5に塗布した。以上により、離型層3が形成された。
【0053】
次に、内壁面5からマスクを取り外した。これにより、金型本体2の内壁面5に被覆領域51と露出領域52とが形成された。この露出領域52の面積は、表1に示す通りである。
【0054】
[評価方法]
以上のように作製した実施例1〜9、比較例1の金型100を用いてセラミックス成形体をそれぞれ作製した。具体的には、セラミックス粉末(MgO及びAl
2O
3)、多塩基酸エステル(分散媒)、及びヘキサメチレンジイソシアナート(ゲル化剤)を混合して成形用スラリーを調製した。そして、この成形用スラリーを金型100の内部空間4内に注入し、3時間放置して、成形用スラリーを固化させることによって、成形体を形成した。なお、成形用スラリーのセラミックス粉末の材質として、ZrO
2やAl
2O
3、SiO
2など他のセラミックス粉末を使用したものであっても同様の結果となることを確認した。また、成形用スラリーを固化する時間を24時間としても、同様の結果となることを確認した。
【0055】
以上のようにして作成した各実施例及び比較例の成形体に対して、外形寸法精度及び表面状態を評価し、その結果を表1に示した。なお、表1の外形寸法精度における「〇」は、成形体の長手方向の寸法が設計値に対して1%以内であることを意味し、「×」は成形体の長手方向の寸法が設計値に対して1%を超えていることを意味する。
【0056】
また、表1の表面状態とは、金型から取り出した成形体の表面状態を意味する。この表1の表面状態における「〇」は、成形体の表面に欠け及びクラックなどの欠陥が生じていないことを意味する。一方、表1の表面状態における「×」は、成形体の表面に欠け及びクラックなどの欠陥が生じていることを意味する。なお、実施例1〜9、及び比較例1において、露出領域52の面積を除き、同じ条件で外形寸法精度及び表面状態を評価した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、露出領域52を形成することによって、セラミックス成形体の外形寸法精度が向上したことが分かった。
【0059】
また、各露出領域52の面積を1mm
2以下としたことによって、成形体の表面に欠陥が発生することを防止できることが分かった。なお、実施例8では成形体の表面に欠けが発生し、実施例9では成形体の表面にクラックが発生した。
【符号の説明】
【0060】
2 金型本体
3 離型層
4 内部空間
5 内壁面
51 被覆領域
52 露出領域
【要約】
【課題】セラミックス成形体の外形寸法精度を向上可能な金型及びセラミックス成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】金型100は、金型本体2と、離型層3とを備える。金型本体2は、成形用スラリーが注入される内部空間4、及び内部空間4を画定する内壁面5、を含む。離型層3は、内壁面5上を被覆する。内壁面5は、被覆領域51と露出領域52とを有する。被覆領域51は、離型層3によって被覆されている。露出領域52は、離型層3から露出する。内壁面5は、第1主面5a、第2主面5b、及び側面5cを含む。第1主面5a及び側面5cの少なくとも一方は、被覆領域51と露出領域52とを有する。
【選択図】
図1