(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6840324
(24)【登録日】2021年2月19日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】ニキビ予防及び/又は改善用皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20210301BHJP
A61K 33/10 20060101ALI20210301BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20210301BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20210301BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20210301BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20210301BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20210301BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20210301BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K33/10
A61K33/06
A61K33/30
A61P31/04
A61P17/10
A61K8/27
A61K8/26
A61Q19/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-46975(P2017-46975)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-150266(P2018-150266A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松末 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】赤座 誠文
【審査官】
山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−111714(JP,A)
【文献】
特開2005−185103(JP,A)
【文献】
特表2007−513162(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/082229(WO,A1)
【文献】
特表2003−503333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸亜鉛を0.0063〜0.025重量%、硫酸アルミニウムカリウムを0.05〜0.2重量%、及び炭酸水素ナトリウムを0.1〜0.4重量%含有することを特徴とするアクネ菌に対する抗菌剤。
【請求項2】
硫酸亜鉛を0.0016〜0.063重量%、硫酸アルミニウムカリウムを0.0032〜0.0125重量%、及び炭酸水素ナトリウムを0.0063〜0.025重量%含有することを特徴とするマラセチアに対する抗菌剤。
【請求項3】
硫酸亜鉛を0.0016〜0.063重量%、硫酸アルミニウムカリウムを0.0032〜0.2重量%、及び炭酸水素ナトリウムを0.0063〜0.4重量%含有することを特徴とするニキビ予防及び/又は改善用皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムを含有することを特徴とするニキビ予防及び/又は改善用皮膚外用剤である。
【背景技術】
【0002】
ニキビは医学的には尋常性ざ瘡と呼ばれており、その炎症にはアクネ菌が関与している。また近年、ニキビの炎症にマラセチアなどのアクネ菌以外の皮膚常在菌も関与していることが明らかとなった(非特許文献1)。アクネ菌やマラセチアが産生するリパーゼは皮脂を分解し、それによって発生した脂肪酸が炎症を引き起こす(非特許文献2、3)。つまり、ニキビの炎症を予防及び/又は改善するためには、アクネ菌やマラセチアの増殖を抑制し、またそれらの微生物が産生するリパーゼの活性を阻害することが重要である。
【0003】
そのため、ニキビの予防及び/又は改善を目的とし、アクネ菌に対する抗菌剤やリパーゼ阻害剤が多く用いられている(特許文献1、2)。また、マラセチアに対する抗菌剤やリパーゼ阻害剤も多く報告されている(特許文献2、3)。
【0004】
また、温泉成分にも、ニキビの予防及び/又は改善効果があることが報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−062059
【特許文献2】特表2012−136447
【特許文献3】特表2013−249293
【特許文献4】特表2002−326942
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Dermatol,Vol.43,PP.906−911(2016)
【非特許文献2】Eur J Dermatol,Vol.14,PP.4−12(2004)
【非特許文献3】J Med Vet Mycol,Vol.31,PP.77−85(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの成分によるニキビに対する効果は必ずしも十分ではなく、効果の高い、新しい成分の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題の解決に向けた鋭意研究の結果、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムの3成分の併用が、アクネ菌及びマラセチアに対する優れた抗菌性と、アクネ菌リパーゼ及びマラセチアリパーゼに対する優れた阻害効果を有することを見出した。さらに、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムの3成分を含有した皮膚外用剤に、ニキビに対する予防及び/又は改善効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明で使用する硫酸亜鉛は、硫酸塩泉の成分であり、ZnSO
4で表される。製法は特に限定されない。
【0010】
本発明で使用する硫酸アルミニウムカリウムは、明礬(ミョウバン)泉の成分であり、AlK(SO
4)
2で表される。カリウムミョウバン、又はカリミョウバンとも呼ばれる。製法は特に限定されない。
【0011】
本発明で使用する炭酸水素ナトリウムは、炭酸水素塩泉の成分であり、NaHCO
3で表される。重炭酸ナトリウム、重炭酸ソーダ、又は重曹とも呼ばれる。製法は特に限定されない。
【0012】
本発明における硫酸亜鉛の皮膚外用剤(浴用剤を除く)への含有量は、好ましくは0.01〜1重量%である。0.01重量%未満では十分な効果を得にくく、1重量%を超えると効果の増強は小さく、また不経済である。
【0013】
本発明における硫酸アルミニウムカリウムの皮膚外用剤(浴用剤を除く)への含有量は、好ましくは0.01〜1重量%である。0.01重量%未満では十分な効果を得にくく、1重量%を超えると効果の増強は小さく、また不経済である。
【0014】
本発明における炭酸水素ナトリウムの皮膚外用剤(浴用剤を除く)への含有量は、好ましくは0.01〜1重量%である。0.01重量%未満では十分な効果を得にくく、1重量%を超えると効果の増強は小さく、また不経済である。
【0015】
本発明の皮膚外用剤には、その効果を損なわない範囲内で、通常の皮膚外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を含有することもできる。
【0016】
本発明において、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムは、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、軟膏等が挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムの3成分の併用は、アクネ菌及びマラセチアに対する優れた抗菌性と、アクネ菌リパーゼ及びマラセチアリパーゼに対する優れた阻害効果を示した。また、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムの3成分を含有した皮膚外用剤は、ニキビに対する優れた予防及び/又は改善効果を示した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明の処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す含有量の部とは重量部を示す。
【実施例1】
【0019】
処方例1 クリーム
[処方] 含有量
1.硫酸亜鉛 0.03部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.05
3.炭酸水素ナトリウム 0.1
4.スクワラン 5.5
5.オリーブ油 3.0
6.ステアリン酸 2.0
7.ミツロウ 2.0
8.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
9.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
10.ベヘニルアルコール 1.5
11.モノステアリン酸グリセリン 2.5
12.香料 0.1
13.1,3−ブチレングリコール 8.5
14.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
15.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
16.精製水 67.97
[製造方法]成分4〜11を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1〜3及び13〜16を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃にて成分12を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0020】
処方例2 化粧水
[処方] 含有量
1.硫酸亜鉛 0.02部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.1
3.炭酸水素ナトリウム 0.2
4.1,3−ブチレングリコール 8.0
5.グリセリン 2.0
6.キサンタンガム 0.02
7.クエン酸 0.01
8.クエン酸ナトリウム 0.1
9.エタノール 5.0
10.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
11.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
12.香料 0.1
13.精製水 84.25
[製造方法]成分1〜8及び13と、成分9〜12をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0021】
比較例1 化粧水A〜F
処方例2において、成分1〜3を1つ、又は2つを含有し、残りは精製水に置き換えたものを化粧水A〜Fとした。
化粧水A:硫酸亜鉛(成分1)のみ含有
化粧水B:硫酸アルミニウムカリウム(成分2)のみ含有
化粧水C:炭酸水素ナトリウム(成分3)のみ含有
化粧水D:硫酸亜鉛(成分1)及び硫酸アルミニウムカリウム(成分2)のみ含有
化粧水E:硫酸亜鉛(成分1)及び炭酸水素ナトリウム(成分3)のみ含有
化粧水F:硫酸アルミニウムカリウム(成分2)及び炭酸水素ナトリウム(成分3)のみ含有
【0022】
処方例3 乳液
[処方] 含有量
1.硫酸亜鉛 0.03部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.05
3.炭酸水素ナトリウム 0.1
4.スクワラン 5.0
5.オリーブ油 5.0
6.ホホバ油 5.0
7.セタノール 1.5
8.モノステアリン酸グリセリン 2.0
9.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
10.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
(20E.O.)
11.香料 0.1
12.プロピレングリコール 1.0
13.グリセリン 2.0
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.精製水 73.02
[製造方法]成分4〜10を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1〜3及び12〜15を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃にて成分11を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0023】
処方例4 ゲル剤
[処方] 含有量
1.硫酸亜鉛 0.03部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.05
3.炭酸水素ナトリウム 0.1
4.エタノール 5.0
5.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
6.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
7.香料 0.1
8.1,3−ブチレングリコール 5.0
9.グリセリン 5.0
10.キサンタンガム 0.1
11.カルボキシビニルポリマー 0.2
12.水酸化カリウム 0.2
13.精製水 84.02
[製造方法]成分4〜7と、成分1〜3及び8〜13をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0024】
処方例5 パック
[処方] 含有量
1.硫酸亜鉛 0.03部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.05
3.炭酸水素ナトリウム 0.1
4.ポリビニルアルコール 12.0
5.エタノール 5.0
6.1,3−ブチレングリコール 8.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
8.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
9.クエン酸 0.1
10.クエン酸ナトリウム 0.3
11.香料 0.1
12.精製水 73.62
[製造方法]成分1〜12を均一に溶解し製品とする。
【0025】
処方例6 ファンデーション
[処方] 含有量
1.硫酸亜鉛 0.02部
2.硫酸アルミニウムカリウム 0.1
3.炭酸水素ナトリウム 0.2
4.炭酸ナトリウム 0.1
5.ステアリン酸 2.4
6.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 1.0
(20E.O.)
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
8.セタノール 1.0
9.液状ラノリン 2.0
10.流動パラフィン 3.0
11.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
12.パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
13.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
14.ベントナイト 0.5
15.プロピレングリコール 4.0
16.トリエタノールアミン 1.1
17.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
18.二酸化チタン 8.0
19.タルク 4.0
20.ベンガラ 1.0
21.黄酸化鉄 2.0
22.香料 0.1
23.精製水 60.58
[製造方法]成分5〜12を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分23に成分13をよく膨潤させ、続いて、成分1〜4及び14〜17を加えて均一に混合する。これに粉砕機にて粉砕混合した成分18〜21を加え、ホモミキサーにて撹拌し、75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃にて成分22を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0026】
処方例7 浴用剤
[処方] 含有量
1.硫酸亜鉛 5.0部
2.硫酸アルミニウムカリウム 5.0
3.炭酸水素ナトリウム 45.0
4.黄色202号(1) 0.1
5.香料 0.1
6.無水硫酸ナトリウム 44.8
[製造方法]成分1〜6を均一に混合し製品とする。
【実施例2】
【0027】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【0028】
実験例1 抗菌力試験
日本化学療法学会標準法のカンテン平板希釈法に準じて、アクネ菌(Propionibacterium acnes JCM 6425)及びマラセチア(Malasezzia globosa NBRC 101597)に対する硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムの最小発育阻止濃度(MIC、μg/mL)を測定した。すなわち、各成分を16〜16000μg/mL(公比2)となるように加えた培地を用い、アクネ菌及びマラセチアの増殖性を検討した。培地としては、アクネ菌については変法GAM寒天培地(日水製薬)、マラセチアについてはLeeming&Notman agar培地(J Clin Microbiol,Vol.25,PP.2017−2019,1987)を用いた。アクネ菌は、35℃、嫌気条件にて5日間培養した。マラセチアは、32.5℃にて12日間培養した。
【0029】
各成分のアクネ菌に対する抗菌性を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
アクネ菌に対するMICは、硫酸亜鉛単独では500μg/mL(No.1)、硫酸アルミニウムカリウム単独では8000μg/mL(No.2)、炭酸水素ナトリウム単独では16000μg/mL(No.3)であった。2成分併用の場合、硫酸亜鉛:250μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:4000μg/mL(No.4)、硫酸亜鉛:250μg/mLと炭酸水素ナトリウム:8000μg/mL(No.5)、硫酸亜鉛:125μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:8000μg/mL(No.6)、硫酸亜鉛:125μg/mLと炭酸水素ナトリウム:16000μg/mL(No.7)であり、効果は相加的であった。3成分併用の場合、硫酸亜鉛:250μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:500μg/mLと炭酸水素ナトリウム:1000μg(No.8)、硫酸亜鉛:125μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:1000μg/mLと炭酸水素ナトリウム:2000μg(No.9)、硫酸亜鉛:63μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:2000μg/mLと炭酸水素ナトリウム:4000μg(No.10)であり、相乗的な効果が認められた。
【0032】
各成分のマラセチアに対する抗菌性を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
マラセチアに対するMICは、硫酸亜鉛単独では125μg/mL(No.1)、硫酸アルミニウムカリウム単独では500μg/mL(No.2)、炭酸水素ナトリウム単独では1000μg/mL(No.3)であった。2成分併用の場合、硫酸亜鉛:63μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:250μg/mL(No.4)、硫酸亜鉛:63μg/mLと炭酸水素ナトリウム:500μg/mL(No.5)、硫酸亜鉛:32μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:500μg/mL(No.6)、硫酸亜鉛:32μg/mLと炭酸水素ナトリウム:1000μg/mL(No.7)であり、効果は相加的であった。3成分併用の場合、硫酸亜鉛:63μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:32μg/mLと炭酸水素ナトリウム:63μg(No.8)、硫酸亜鉛:32μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:63μg/mLと炭酸水素ナトリウム:125μg(No.9)、硫酸亜鉛:16μg/mLと硫酸アルミニウムカリウム:125μg/mLと炭酸水素ナトリウム:250μg(No.10)であり、相乗的な効果が認められた。
【0035】
実験例2 リパーゼ活性阻害試験
文献(日皮会誌,115,2381−2388,2005)に準じて、アクネ菌(Propionibacterium acnes JCM 6425)及びマラセチア(Malasezzia globosa NBRC 101597)に対する硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムのリパーゼ活性の阻害効果を測定した。アクネ菌については、ブレインハートインヒュージョン培地(栄研化学)を用い、嫌気条件、35℃にて48時間培養した培養物を15000rpm、10分間遠心分離し、得られた上清をアクネ菌リパーゼ液とした。マラセチアについては、Leeming&Notman ager培地を用い、32.5℃にて72時間培養した培養物を、Mcllvaine buffer(pH5.0)に分散し、マラセチアリパーゼ液とした。4.0重量%の硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム又は炭酸水素ナトリウムを含むMcllvaine buffer(アクネ菌:pH7.4、マラセチア:pH5.0)50μLとリパーゼ液50μLを96穴ウェルプレート内で混和後、35℃にて30分間インキュベートした。次に、0.01mM 4−メチルウンベリフェロンオレートを含むMcllvaine bufferを100μL加え、35℃にて30分間インキュベートした。その後、アクネ菌リパーゼについては、マイクロプレートリーダーにて蛍光強度を測定した(Ex:320nm、Em:450nm)。マラセチアリパーゼについては、2000rpmで10分間遠心分離し、得られた上清100μLを新しい96穴ウェルプレートに移し、蛍光強度を測定した。試料を添加しなかった場合の蛍光強度を100として、リパーゼ活性阻害率(%)を求めた。
【0036】
各成分のアクネ菌リパーゼに対する阻害効果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
3成分を併用した場合、アクネ菌リパーゼ活性阻害率は相乗的に上昇した。
【0039】
各成分のマラセチアリパーゼに対する阻害効果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
3成分を併用した場合、マラセチアリパーゼ活性阻害率は相乗的に上昇した。
【0042】
実験例3 ニキビの予防及び/又は改善効果
実施例1の化粧水、比較例1の化粧水A〜Fを用いて、ニキビに悩む女性70人(20〜44才、各化粧水当たり10人)を対象に1ヶ月間の使用試験を行った。使用後、アンケート調査によりニキビの予防及び改善について判定した。
【0043】
結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
表5の結果から、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム又は炭酸水素ナトリウムのいずれか1つ、又は2つを併用した比較例1の化粧水A〜Fと比べて、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムの3つを併用した実施例2の化粧水は、優れたニキビの予防及び改善効果を示した。なお、試験期間中皮膚トラブルは1人もなく、安全性においても問題なかった。
【0046】
実施例1、及び3〜7で得られた皮膚外用剤についても同様に使用試験を行った結果、いずれも十分なニキビの予防及び/又は改善効果を示した。また、試験期間中皮膚トラブルは1人もなく、安全性においても問題なかった。
【0047】
以上のことから、本発明の硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムの3成分の併用は、ニキビ原因菌であるアクネ菌及びマラセチアに対し、相乗的な優れた抗菌効果及びリパーゼ活性阻害効果を示した。また、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム及び炭酸水素ナトリウムの3成分を併用した皮膚外用剤は、優れたニキビの予防及び/又は改善効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム、及び炭酸水素ナトリウムを含有することを特徴とする皮膚外用剤は、ニキビの予防及び/又は改善を目的とする化粧品、医薬部外品及び医薬品に利用可能である。