(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るキャスターおよび運搬台車について図面を参照して説明する。
図1は運搬台車10の底面図である。
図2は運搬台車10の平面図である。
図3は運搬台車10の側面図である。各図では、運搬台車10の進行方向を前後方向として、前側をFr、後側をRr、右側をR、左側をLで示している。したがって、
図3の側面図は、運搬台車10の進行方向に対して直交する方向から見た図である。なお、本実施形態の運搬台車10は、前側に限られず、前後左右を含め任意の方向に走行することができる。
【0010】
運搬台車10は、台車本体部20、走行部30を備えている。
まず、台車本体部20について説明する。
台車本体部20は、複数のフレーム部などが連結して構成され、平面視で見て左右方向よりも前後方向に長く、一対の長辺と一対の短辺からなる矩形状である。
図1および
図2に示すように、台車本体部20は、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21d、コーナ部材22、補強フレーム部(補強部)25a,25b,25c、載置板29等を有している。
【0011】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、例えばアルミニウム合金製の角状の中空状パイプ等を用いることができる。また、コーナ部材22は、例えば押出し成形により形成されるアルミニウム合金製である。コーナ部材22は、上方に開口する挿入孔23と、下方を閉塞するストッパ部24とを有する。コーナ部材22の挿入孔23には、手押部材70が挿入可能である。挿入孔23に挿入された手押部材70の下端はストッパ部24によって支持される。手押部材70は、例えば、鉄製またはアルミニウム合金製で断面円形の直線状のパイプ、いわゆる単管パイプが適用できる。
【0012】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、および、左側フレーム部21dは、コーナ部材22により4つの角部で結合されることで、矩形状の四方のフレーム枠を構成する。フレーム枠内は複数の補強フレーム部25a,25b,25cが前後左右方向に付き合わされ、ネジ、リベット、溶接などで接合されることで補強される。補強フレーム部25a,25b,25cは、例えばアルミニウム合金製の角状の中空状パイプや断面凹凸状のプレートなどを用いることができる。ここでは、前後方向に長尺な2本の補強フレーム部25a,25bに対して左右方向に短尺な12本の補強フレーム部25cを接合することで、平面視で見て前後方向に3列、左右方向に4列に区分けされた複数の矩形状の空間26が形成される。
また、台車本体部20は、取付部材としての取付板27A,27Bを有する。取付板27A,27Bは、台車本体部20の下面にキャスター31A,31Bを取り付ける。具体的に、取付板27Aは、前側かつ左右方向両側の空間26および後側かつ左右両側の空間26を下側から閉塞するように、各フレーム部や各補強フレーム部にリベット28やネジを介して結合される。取付板27Aは、矩形状の角が切り欠かれた例えばアルミニウム合金製の金属板である。一方、取付板27Bは、前後方向の中央かつ左右方向の両側の空間26を下側から閉塞するように、各フレーム部や各補強フレーム部にリベットやネジを介して結合される。取付板27Bは、矩形状の隣接する角が切り欠かれた例えばアルミニウム合金製の金属板である。
載置板29は、複数の空間26のうち取付板27A,27Bによって閉塞されていない空間26の上部に取り付けられる。載置板29は運搬物を積載するための平面状の板である。載置板29は、各フレーム部や各補強フレーム部にリベット28やネジを介して結合される。
【0013】
走行部30は、台車本体部20および運搬物の荷重を支持しながら走行面を走行する。走行部30は、複数のキャスター31A,31Bを有している。
図1に示すように、走行部30は、台車本体部20の4隅に配置される4つのキャスター31Aと、前後方向の中央であって左右に離れて配置される2つのキャスター31Bとの6つのキャスターを有する。キャスター31Aは取付板27Aを介して台車本体部20に取り付けられる。キャスター31Aは台車本体部20の下面の4隅に配置されるので、運搬台車10を安定した状態で走行させることができる。また、キャスター31Bは取付板27Bを介して台車本体部20に取り付けられる。キャスター31Bは台車本体部20の前後方向の中央で左右に離れて配置されるので、運搬物が載置板29で偏って積載されても、運搬台車10が傾くことなく走行することができる。
キャスター31A,31Bは、鉛直軸である旋回軸Oの軸線回りに旋回可能である。また、キャスター31Aは、使用者の操作に応じてブレーキを掛けたり、ブレーキを解除したりすることができるブレーキ付キャスターである。一方、中央に配置されるキャスター31Bは、ブレーキなしキャスターである。
【0014】
ここで、キャスター31Aについて
図4および
図5を参照して説明する。
図4は、キャスター31Aの分解斜視図である。
図5は、キャスター31Aの断面図である。
本実施形態のキャスター31Aは、車輪32、支持部36、旋回部38、ブレーキペダル46などを有している。
車輪32は、内部にベアリングが内蔵されたホイール部33と、ホイール部33の外周に嵌め込まれたタイヤ部34とを有する。
【0015】
支持部36は、車軸35を介して車輪32を回転自在に支持する。支持部36は、車輪32を支持するフォーク部材37と、ブレーキペダル46を揺動自在に支持するペダル保持部材43とを有する。
フォーク部材37は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。フォーク部材37は、車輪32の両側にそれぞれ位置する一対の側壁37aと、一対の側壁37aを車輪32の上側で連結させた円形の天板37bとで一体的に形成される。一対の側壁37aにはそれぞれ車軸35が挿通される車軸孔37cと、ペダル保持部材43を支持するための軸孔37dが形成される。天板37bは旋回部38によって、旋回可能に保持される。天板37bの中央にはキャスター31Aの旋回軸Oと同軸上に挿通孔37eが形成される(
図5を参照)。
【0016】
旋回部38は、旋回軸Oの軸回りに支持部36(具体的にはフォーク部材37の天板37b)を旋回可能に保持する。旋回部38は、上皿部材39、下皿部材40、ベアリング41、ベアリング42を有する。
図5に示すように、フォーク部材37の天板37bには、上面にベアリング41、下面にベアリング42を安定して配置できるように旋回軸Oを中心に環状の収容溝が形成される。
上皿部材39は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。上皿部材39は、天板37bよりもやや大きな円形に形成され、中央には旋回軸Oと同軸上に挿通孔39aが形成される。また、上皿部材39は、下面にベアリング41を安定して配置するために環状の収容溝39bが形成される。このように、環状の収容溝39bを形成することによって、逆に上皿部材39の上面には旋回軸Oを中心とした環状に沿って、断面視で円弧状の突出部39cが形成される。
【0017】
下皿部材40は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。下皿部材40は、天板37bよりも小さな円形に形成され、中央には旋回軸Oと同軸上に挿通孔40aが形成される。また、下皿部材40は、上面にベアリング42を安定して配置するために環状の収容溝40bが形成される。
ここで、上皿部材39と下皿部材40とは、挿通孔39aおよび挿通孔40aの近辺で両者が相対的に回転しないように一体的に結合されている。したがって、フォーク部材37の天板37bは、上皿部材39および下皿部材40に対して、ベアリング41,42を介して旋回軸Oを中心に旋回可能である。
【0018】
図4に戻り、ペダル保持部材43は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。ペダル保持部材43は、車輪32の両側にそれぞれ位置する一対の側壁43aと、一対の側壁43aを上側で連結した連結板43bとで一体的に形成される。一対の側壁43aは、連結板43bから二股状の第1支持部43cと第2支持部43dとが異なる方向に向かって延出して形成される。第1支持部43cの先端側には、フォーク部材37の車軸孔37cと連通し、車軸35が挿通される軸孔43eが形成される。一方、第2支持部43dの先端側には、フォーク部材37の軸孔37dと連通し、軸部材44が挿通される軸孔43fが形成される。
また、側壁43aの上部であって、連結板43bに近接した位置には、ブレーキペダル46を揺動可能に支持するための支持孔43gが形成される。また、側壁43aの支持孔43gの下側には、略前後方向に長い長孔43hが形成される。また、側壁43aの支持孔43gの前側には後述する当接部60を取り付けるための取付孔43iが形成される。
ペダル保持部材43が車軸35および軸部材44を介してフォーク部材37により支持された状態では、連結板43bは後部に向かうにしたがって下側に傾斜する。
【0019】
また、ペダル保持部材43は、軸孔43fを挿通する軸部材44を介して付勢部材としての板バネ45を支持している。板バネ45は、例えばステンレス鋼板をプレス成形することによって形成される。板バネ45は、軸部材44が挿通される支持孔45aと、支持孔45aからそれぞれ異なる方向に延出する一端部45bおよび他端部45cとが形成される。他端部45cの先端側には、一部が上方向に突出する突出部45dが板幅方向に沿って形成される。
【0020】
ブレーキペダル46は、例えば鋼板をプレス成形することによって形成される。ブレーキペダル46は、ペダル本体46aと、ペダル本体46aから一体で延出する操作部としての操作片46bとを有する。ペダル本体46aは、車輪32の両側にそれぞれ位置する一対の側壁46cと、一対の側壁46cを上部で連結した連結板46dとで一体的に形成される。進行方向に沿ってキャスター31Aを見た場合に、ブレーキペダル46は車輪32と重なり合う位置に配置される。ブレーキペダル46は連結板46dをペダル保持部材43の連結板43bと重なるようにして、ペダル保持部材43内に位置させることができる。また、側壁43aの前部かつ上部には、ペダル保持部材43の支持孔43gと連通し、軸部材47が挿通される揺動孔46eが形成される。したがって、ブレーキペダル46は軸部材47を中心にしてペダル保持部材43に対して上下に揺動可能である。また、側壁46cの揺動孔46eの下側には、ペダル保持部材43の長孔43hと連通し、軸部材48が挿通される軸孔46fが形成される。ブレーキペダル46が上下に揺動する場合には軸部材48も連動してペダル保持部材43の長孔43h内を移動する。なお、軸部材48は、板バネ45の他端部45cの上面に常に接している。
【0021】
操作片46bは、略板状であって、使用者の足などでブレーキペダル46の上下の揺動が操作される。操作片46bは、ペダル本体46aの連結板46dの後部から斜めに延出して形成される。操作片46bには、カバー部49が装着される。カバー部49は、合成樹脂製であって、使用者が一目で認識できるように色が施されている。具体的には、カバー部49は、ブレーキペダル46と異なる色、すなわちペダル本体46aおよび操作片46bと異なる色に着色されている。
【0022】
ここで、キャスター31Aについて、ブレーキを解除している状態からブレーキを掛ける状態までの各部材の動作について説明する。
図5に示すように、ブレーキを解除した状態では、ブレーキペダル46は軸部材47を中心として上昇した位置にある。ここでは、板バネ45の一端部45bが天板37bに対して接し、他端部45cが板バネ45自身の付勢力によって軸部材48のみに接している。すなわち、車輪32は何れの部材にも接触していないために、車輪32が自由に回転できる、ブレーキが解除された状態である。
【0023】
一方、使用者が足でブレーキペダル46の操作片46bを下側に踏み込むように操作することで、ブレーキペダル46は板バネ45の付勢および各部材間の摩擦力に抗して軸部材47を中心に下側に向かって揺動する。このとき、ブレーキペダル46の移動に伴って軸部材48は板バネ45の突出部45dに向かって長孔43h内を移動する。
軸部材48が、板バネ45の突出部45dの頂点を乗り越えるほど長孔43h内を移動することで、板バネ45は軸部材48によって車輪32側に向かって押し込まれる。したがって、板バネ45の下面が車輪32の外周面を強固に押圧するために、車輪32が回転できない、ブレーキが掛けられた状態となる。また、軸部材48は板バネ45の突出部45dの頂点を乗り越えた状態で保持されるためにストッパとして機能する。
【0024】
ここでは、キャスター31Aについて説明したが、キャスター31Bはキャスター31Aのうちブレーキに関する部材が省略された構成である。
図10は、キャスター31Bの斜視図である。キャスター31Bは、車輪32、支持部36、旋回部38を有しており、ブレーキペダル46、板バネ45、軸部材48を有していない。したがって、キャスター31Bは、キャスター31Aと同様にフォーク部材37の天板37bが介して旋回軸Oを中心に旋回可能であるが、ブレーキを掛けることができない。
【0025】
次に、キャスター31Aを取付板27Aに結合する結合構造について説明する。
図6は、キャスター31Aと取付板27Aとの結合構造を上側から見た分解斜視図である。ここでは、1箇所のキャスター31Aと取付板27Aとの結合構造を説明するが、他の3箇所の結合構造も同様である。
台車本体部20は、取付板27A、補強部材50、座金部材52、ボルト54、ナット56などを有する。
図6に示すキャスター31Aは、既に組み立てられたものである。
【0026】
取付板27Aは、例えば板状のアルミニウム合金をプレス成形することによって形成される。なお、取付板27Aの略中央には、旋回軸Oと同軸上にボルト54が挿通される挿通孔27aが形成される。挿通孔27aは、ボルト54が挿通されたときにボルト54の頭部54aが取付板27Aの上面(表面)27bから上側に突出しないように上面27bから円錐状に段落ちした位置に形成される。取付板27Aには、旋回軸Oを中心とした環状リブ27cが形成される。環状リブ27cは取付板27Aの下面から膨出する。また、取付板27Aには、環状リブ27cを囲むように複数の矩形状リブ27dが形成される。矩形状リブ27dは、矩形の外形に沿って下面から凹ませることで形成される。すなわち、矩形状リブ27d内の領域は、取付板27Aの下面と面一の平坦面である。複数の矩形状リブ27dのうち、左右の矩形状リブ27d内には補強部材50を所定の位置に位置決めするために、位置決め部としての突起27eが下側に突出して形成される。環状リブ27cおよび矩形状リブ27dが形成することで取付板27Aの剛性を向上させることができる。
なお、取付板27Aの周囲には、リベット28を挿入して取付板27Aを台車本体部20に取り付けるための複数の固定孔27fが形成される。
【0027】
補強部材50は、例えば板状のアルミニウム合金をプレス成形することによって形成される。補強部材50は、キャスター31Aを取付板27Aに結合したときに、キャスター31Aと取付板27Aとの間に配置され、キャスター31Aの上部、すなわち旋回部38の上皿部材39の上部と、取付板27Aの下部との何れにも接触する。補強部材50は、キャスター31Aと取付板27Aとの間に位置する中間部材として機能する。
【0028】
具体的には、補強部材50は旋回軸Oを中心とした円形状の開口部50aが穿設された環状に形成される。開口部50aの内径は、上皿部材39の外径よりも小さく、上皿部材39の円環状の突出部39cの直径よりも大きい。
また、補強部材50は、上皿部材39の上面に接触する下側凸部50bと、取付板27Aの下面に接触する上側凸部50cとが形成される。下側凸部50bは下側に向かって膨出するリブ状であり、旋回軸Oを中心とした円周方向に沿って等間隔の位置に形成される。また、上側凸部50cは下側凸部50bに対して相対的に上側に向かって膨出するリブ状であり、旋回軸Oを中心として円周方向に沿って等間隔の位置に形成される。したがって、補強部材50を平面視で見たときに、下側凸部50bと上側凸部50cとは環状に沿って交互に形成される。
【0029】
各下側凸部50bは、それぞれの中央に最も下側に向かって膨出された膨出部50dを有する。すなわち、下側凸部50bの下面は、開口部50aから膨出部50dに向かうにしたがって下側に傾斜し、膨出部50dを超えると上側に傾斜している。
各上側凸部50cは、それぞれの中央に環状に沿った凹部50eが形成される。凹部50eは、補強部材50の上側凸部50cと取付板27Aの下面とを平面同士で接触させるために、環状リブ27cとの干渉を避けるためのものである。
また、補強部材50のうち左右の端部には、取付板27Aの突起27eに係合する被位置決め部としての位置決め孔50fが形成される。また、補強部材50は、下側凸部50bおよび上側凸部50cよりも外側かつ下面に、旋回軸Oを中心として円状の被当接部50gが形成される(後述する
図9に示す一点鎖線)。被当接部50gは平坦面であって、後述する当接部60が当接される。
【0030】
取付板27Aと補強部材50とは、取付板27Aの突起27eと補強部材50の位置決め孔50fとが係合することによって位置決めされた状態で重なり合う。補強部材50を取付板27Aに重ね合わせた状態では、各上側凸部50cの上面のうち凹部50eよりも外周側は、それぞれ取付板27Aの矩形状リブ27d内に当接される。ここで、取付板27Aの矩形状リブ27d内は平坦面であることから、補強部材50と取付板27Aとはガタつくことなく重なり合う。
【0031】
座金部材52は、例えば板状のアルミニウム合金をプレス成形することによって形成される。座金部材52は、ボルト54の頭部54aと、取付板27Aとの間に配置され、ボルト54が上下方向に直立するようにボルト54の頭部54aを保持する。座金部材52は、旋回軸Oと同軸上にボルト54が挿通される挿通孔52aが形成される。挿通孔52aは、ボルト54が挿通されたときにボルト54の頭部54aが取付板27Aの上面27bから上側に突出しないように円錐状に段落ちした位置に形成される。
【0032】
キャスター31Aを取付板27Aに結合するには、ボルト54を座金部材52の挿通孔52a、取付板27Aの挿通孔27a、補強部材50の開口部50a、上皿部材39の挿通孔39a、天板37bの挿通孔37e、下皿部材40の挿通孔40aの順に挿通させ、フォーク部材37内でナット56を螺合させることで固定する。
図7は、キャスター31Aと取付板27Aとの結合構造を示す一部断面図である。
図7に示すように、補強部材50は、取付板27Aとキャスター31Aとの間に位置し、取付板27Aの下面とキャスター31Aの上面とに接触した状態で配置される。具体的には、補強部材50の上側凸部50cの上面は、取付板27Aの下面に接触する。一方、補強部材50の下側凸部50bでは、下側凸部50bの下面のうち、開口部50aから膨出部50dまでに亘る傾斜部分が、上皿部材39の上面のうち外周側に接触する。
このように、取付板27Aの下面とキャスター31Aの上面との間に生じる隙間を埋めるように補強部材50が配置されている。したがって、キャスター31Aの車輪32が障害物に衝突したときの衝撃は、フォーク部材37から補強部材50を経由して、強度に優れた取付板27Aで受けることができるので、キャスター31Aおよび運搬台車10の強度を向上させることができる。
【0033】
一方、キャスター31Bと取付板27Bとの結合構造は、キャスター31Aと取付板27Aとの結合構造のうち補強部材50を省略した構成である。
図10に示すように、台車本体部20は、取付板27B、座金部材52、ボルト54、ナット56などを有する。キャスター31Bと取付板27Bとの結合構造は、キャスター31Aと取付板27Aとの結合構造と略同様の構成であり、同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
上述したように構成される運搬台車10では例えば1.0[t]や2.0[t]等の耐荷重が設定されている。ここで、耐荷重とは運搬台車10の台車本体部20に積載可能な重量である。通常、運搬台車10にはシールなどで耐荷重の値を貼付することで、耐荷重よりも重量のある運搬物を積載しないように使用者に対して注意喚起している。
しかしながら、使用者は運搬物の重量が分からないことが多く、耐荷重よりも重量がある運搬物を積載してしまう場合がある。この場合、運搬台車10は積載物の荷重に耐え切れず、強度の低い部材から変形したり破断したりしてしまう。上述した運搬台車10のキャスター31A,31Bは、旋回軸Oに対して旋回可能なキャスターである。このようなキャスター31A,31Bでは、支持部36および車輪32が旋回しやすいように、車輪32の接地位置Pが旋回軸Oから離れた位置になるように車輪32がフォーク部材37によって支持される。すなわち、
図5に示すように、フォーク部材37は、旋回軸Oから距離Lだけ離れた位置で車輪32を支持している。運搬物からの荷重は、台車本体部20からフォーク部材37を経由して車輪32に伝達される。このとき、耐荷重よりも重量がある運搬物が積載された場合、旋回軸Oから接地位置Pまで離れた距離Lに起因する回転モーメントがフォーク部材37に発生し、フォーク部材37が破線で示す矢印方向に変形してしまう。キャスター31Aの場合、フォーク部材37が変形することで、ペダル保持部材43の上端が台車本体部20、具体的には補強部材50に対して相対的に近づき、荷重の大きさによってはペダル保持部材43の上端と補強部材50とが接触してしまう。一方、キャスター31Bの場合、フォーク部材37が変形することで、ペダル保持部材43の上端と取付板27Bとが接触してしまう。この場合、キャスター31A,31Bを旋回させようとしても、台車本体部20との間の摩擦によってフォーク部材37が旋回できなくなる虞がある。
【0035】
そこで、本実施形態のキャスター31A,31Bは、支持部36が旋回軸Oの軸回りに旋回するときに台車本体部20側に接する当接部60を有する。当接部60は、キャスター31A,31Bの支持部36が旋回軸Oの軸回りに旋回するときに台車本体部20側に接することで、単に支持部36が台車本体部20側に接するときよりも摩擦を軽減することができる。したがって、キャスター31A,31Bを容易に旋回させることができる。
【0036】
ここで、キャスター31Aが有する当接部60の構成について
図6〜
図9を参照して詳細に説明する。
図7は、キャスター31Aの一部を切断した断面図である。
図8は、キャスター31Aを後側から見た図である。
図9は、キャスター31Aを下側から見た図である。
当接部60は、補強部材50と支持部36、具体的にはペダル保持部材43との間に位置し、支持部36、具体的にはペダル保持部材43に取り付けられる。当接部60は、ブラケット部材61、回転体としての複数(ここでは3つ)のローラ62、複数(ここでは3つ)の支持軸63を有する。
【0037】
ブラケット部材61は、複数のローラ62を回転可能に支持する。ブラケット部材61は、例えば鋼製の板材を折り曲げて形成されている。具体的に、ブラケット部材61は、ローラ支持部61aと、一対の取付部61bとを有する。ローラ支持部61aは、帯状であって外側面に各ローラ62を離間した状態で支持する。ここで、当接部60をペダル保持部材43に取り付けた状態では、旋回軸Oに沿って見たとき、ローラ支持部61aは旋回軸Oを中心とする円に沿った湾曲状である。一対の取付部61bは、ローラ支持部61aの両端から前側に延びた後に略L字状に垂下している。一対の取付部61bは、ペダル保持部材43の一対の側壁43aの外側に嵌め込むことができる間隔に形成されている。一対の取付部61bには、ペダル保持部材43の取付孔43iと連通し、固着具としての軸部材65が挿通される軸孔61cが形成される。
【0038】
ローラ62は、ブラケット部材61によって支持される。ローラ62は、例えばステンレス製の円板状である。3つのローラ62は、ブラケット部材61のローラ支持部61aに固定された3つの支持軸63によってそれぞれ回転自在に支持される。なお、本実施形態のローラ62にはベアリングを有していないが、ベアリングを有していてもよい。
支持軸63は円柱状であって、ローラ支持部61aに外側面から水平方向に突出するように固定される。なお、3つの支持軸63は、ローラ支持部61aから放射状に広がるように突出している。したがって、3つのローラ62は、それぞれ異なる角度で傾斜した状態に配置される。
なお、ローラ62がブラケット部材61によって支持された状態では、ローラ62の上端が、ブラケット部材61のローラ支持部61aの上端よりも上側に位置するように設定されている。
【0039】
当接部60をペダル保持部材43に取り付ける場合、ブラケット部材61の一対の取付部61bをペダル保持部材43の一対の側壁43aの外側に嵌め込み、軸孔61cと取付孔43iとを連通させた状態で、軸部材65を挿通させてナット66で締結する。
ここで、キャスター31Aのペダル保持部材43に取り付けた状態の当接部60について説明する。
図7に示すように、当接部60は、旋回軸O(旋回部38)から車輪32の接地位置P側に離れた位置であって、ペダル保持部材43と補強部材50との間に位置している。当接部60は、下側でペダル保持部材43と接している一方、上側で台車本体部20側との間に隙間がある。具体的には、当接部60は、ブラケット部材61のローラ支持部61aの下端が、ペダル保持部材43の一対の側壁43aの上端および連結板43bと接している。一方、当接部60は、3つのローラ62の上面が、補強部材50の下面から離間している。
【0040】
また、
図9に示すように、キャスター31Aを旋回軸Oに沿って見たとき、当接部60の少なくとも一部が車輪32と重なり合っている。具体的には、3つのローラ62のうち、中央のローラ62は車輪32と重なり合い、両側のローラ62は車輪32と一部が重なり合う。すなわち、中央のローラ62が車輪32の幅方向における略中心に位置し、両側のローラ62が幅方向における中心から離れて位置する。
また、キャスター31Aを旋回軸Oに沿って見たとき、3つのローラ62は旋回軸Oから略同一距離に位置する。また、3つのローラ62は、3つのローラ62を支持する各支持軸63の延長線Nが旋回軸Oに向かって指向し、旋回軸Oで交わるように位置する。したがって、支持部36が旋回軸Oを中心として旋回したときに、3つのローラ62は略同一の軌道に沿って移動する。
【0041】
次に、当接部60の作用について説明する。
まず、運搬台車10の台車本体部20に耐荷重以下の重量の運搬物を積載した場合を想定する。この場合、キャスター31Aのフォーク部材37が積載物の荷重を受けたとしても、フォーク部材37は殆ど変形しない。したがって、ペダル保持部材43が台車本体部20側に向かって近づかないために、当接部60の上側では台車本体部20側との間に隙間を有した状態である。この状態で旋回軸Oを中心に支持部36を旋回しても、当接部60のローラ62が補強部材50の下面と接することがないために、支持部36は自由に旋回する。
【0042】
一方、運搬台車10の台車本体部20に耐荷重よりも重量のある運搬物を積載した場合を想定する。この場合、キャスター31Aのフォーク部材37が積載物の荷重を受けると、フォーク部材37に回転モーメントが発生し、フォーク部材37が変形する。したがって、ペダル保持部材43が台車本体部20側に向かって近づくために、当接部60の上側では台車本体部20側との間の隙間が減少し、当接部60が補強部材50の下面と接してしまう。この状態で旋回軸Oを中心に支持部36を旋回させると、当接部60のローラ62が補強部材50の下面の被当接部50gに接しているものの、ローラ62が回転することで当接部60と補強部材50との間の摩擦を軽減させることができる。したがって、耐荷重よりも重量のある運搬物を積載した場合であっても、キャスター31Aを容易に旋回させることができる。なお、ローラ62が接触する補強部材50の被当接部50gは、旋回軸Oを中心とする環状であって且つ平坦面であるためにより摩擦を軽減させることができる。
なお、本実施形態では、キャスター31Aの作用についてのみ説明したが、キャスター31Bでもキャスター31Aと同様に、キャスター31Bを容易に旋回させることができる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、支持部36は、旋回軸O回りに旋回するときに運搬台車10の台車本体部20側と接する当接部60を有する。当接部60は、支持部36が台車本体部20側と接する場合よりも摩擦を軽減させることができるために、キャスター31A,31Bを容易に旋回させることができる。
また、本実施形態によれば、当接部60は、旋回軸Oから車輪32の接地位置P側に離れて配置されている。したがって、支持部36が変形したときに当接部60が台車本体部20側に接する。
【0044】
また、本実施形態によれば、当接部60は回転可能な回転体を有することから、キャスター31A,31Bを容易に旋回させることができる。なお、上述した実施形態では、当接部50として回転可能な回転体を有する場合について説明したが、この場合に限られず、支持部36が台車本体部20側と接する場合よりも摩擦を軽減させながら台車本体部20側と摺動(摺りながら動く)する摺動体であってもよい。ここで、摺動体には、樹脂製プレートを用いたり、台車本体部20側と接する部分に低摩擦特性のある樹脂でコーティングした部材を用いたりすることができる。また、上述した実施形態では、回転体としてローラ62を用いる場合について説明したが、球状の回転体等の他の回転体を用いてもよい。
また、本実施形態によれば、複数の回転体は、各回転体の支持軸63が旋回軸Oに向かって指向するように配置されている。したがって、支持部36が旋回軸O回りに旋回するときに、回転体は旋回軸Oを中心とした円に沿って回転することができることから、より摩擦を軽減させることができる。
また、本実施形態によれば、複数の回転体は、旋回軸Oから略同一距離に配置されている。したがって、支持部36が旋回軸O回りに旋回するときに、複数の回転体が略同一の軌跡を移動することから、台車本体部20側において回転体が接地するときの領域、すなわち被当接部50gの領域を少なくすることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、当接部60は支持部36が変形しない場合に台車本体部20側から離れている。したがって、支持部36が変形しない場合に、キャスター31A,31Bを容易に旋回させることができる。
また、本実施形態によれば、当接部60は、運搬台車10の耐荷重よりも重量がある運搬物が積載された場合に台車本体部20側と接し、運搬台車10の耐荷重以下の重量の運搬物が積載された場合に台車本体部20側から離れている。したがって、運搬台車10の耐荷重以下の重量の運搬物が積載された場合にキャスター31A,31Bを容易に旋回させることができる。
【0046】
以上、本発明を上述した実施形態と共に説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更などが可能である。
上述した実施形態では、運搬台車10の耐荷重よりも重量がある運搬物が積載された場合に当接部60が台車本体部20側と接する場合について説明したが、この場合に限られず、当接部60は常に台車本体部20側と接してもよい。
また、上述した実施形態では、運搬台車10の耐荷重よりも重量がある運搬物が積載された場合に当接部60が台車本体部20側と接する場合について説明したが、この場合に限られない。通常、運搬台車10の耐荷重には安全率が設定されているために、耐荷重よりも少しでも重量がある運搬物を積載した場合に、当接部60が台車本体部20側と接するとは限られず、耐荷重よりもある程度の荷重がある運搬物を積載できる運搬台車であっても適用することができる。
【0047】
上述した実施形態では、当接部60をペダル保持部材43に取り付ける場合について説明したが、この場合に限られず、フォーク部材37に取り付けてもよい。フォーク部材37に取り付ける場合には当接部60を一対の側壁37aの軸孔37dに取り付けることができる。
また、上述した実施形態では、支持部36がフォーク部材37とペダル保持部材43とを有する場合について説明したが、この場合に限られず、フォーク部材37とペダル保持部材43とが一体で構成されていてもよい。
上述した実施形態では、当接部60が3つのローラ62を有する場合について説明したが、この場合に限られず、1つ、2つ、または、4つ以上のローラを有していてもよい。2つのローラを有する場合には、上述した3つのローラ62の間に配置することができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、キャスター31Aの当接部60が補強部材50に接する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、補強部材50を省略したり、補強部材50の外径を小さくすることで、キャスター31Aの当接部60が取付板27Aの下面に当接するように構成してもよい。すなわち、取付板27Aの下面に被当接部50gを設けてもよい。
また、上述した実施形態では、キャスター31Bの当接部60が取付板27Bに接する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、キャスター31Bと取付板27Bとの間に補強部材50を配置することで、キャスター31Bの当接部60が補強部材50に当接するように構成してもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、キャスター31A,31Bの当接部60が、台車本体部20側として補強部材50または取付板27Bに当接する場合について説明したが、この場合に限られず、台車本体部20側の他の部材に当接してもよい。
また、上述した実施形態では、走行部30は6つのキャスター31A,31Bを有する場合について説明したが、この場合に限られず、4つのキャスター31Aのみであってもよい。また、走行部30の2つキャスター31Bは、前後方向の中央であって左右に離れて配置される場合に限られず、2つのキャスター31Bを前後方向における中央は4つのキャスター31Aに加えて、側面視で前後方向に2つのキャスター31Bを4つのキャスター31Aと重ならないように設けてもよい。